JP7109727B2 - 正弦波ノイズ除去装置及び正弦波ノイズ除去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、正弦波ノイズが乗っている信号に対して、正弦波ノイズを除去する正弦波ノイズ除去装置及び正弦波ノイズ除去方法に関する。
電気機器等においては、例えば測定対象の状態等を検知するためのセンサ(温度センサ等)からのセンサ信号等のアナログ信号が使用されており、当該アナログ信号に重畳されたノイズへの対策を要するものとなっている。
ノイズのひとつに交流電源由来等の正弦波ノイズがあり、このような正弦波ノイズへの対策に関する技術が特許文献1で開示されている。
特開昭53-114653号公報
特許文献1の技術は、ノイズの半周期(周期の(1/2+J)倍(Jは整数))の間隔で信号値を取得し、この取得した信号値の移動平均を求めることにより、正弦波ノイズを相殺するものである。
特許文献1の技術は、正弦波ノイズ対策としては簡便且つ有効な方法であるが、移動平均を用いるものであるため、移動平均に使用した信号値の時間間隔に基づく遅れが生じてしまう。例えば、現時点の信号値と1秒前の信号値の2点の信号値の移動平均をとった場合、これによって得られる値は0.5秒前の値に相当し、従って、0.5秒の遅れが生じるのと同義となるものである。
このような時間遅れは、高速で高精度な処理に対する妨げとなるものであった。
本発明は、上記の点に鑑み、正弦波ノイズが乗っている信号に対して移動平均を用いてノイズをキャンセルする技術において生じる時間遅れを解消することが可能な正弦波ノイズ除去装置若しくは正弦波ノイズ除去方法を提供することを目的とする。
(構成1)
正弦波ノイズが乗っている信号に対し、前記正弦波ノイズが相互に打ち消される測定点のペアにおいて前記正弦波ノイズが乗っている信号を測定し、当該測定した測定値の移動平均を前記信号の信号値とする正弦波ノイズ除去部と、前記信号の信号波形の近似式情報を取得する近似式情報取得部と、前記移動平均によって生じる遅れ時間を取得する遅れ時間取得部と、前記近似式情報と前記遅れ時間に基づいて、前記遅れ時間に対応する前記信号値の変化量である信号値変化量を算出する信号値変化量算出部と、前記正弦波ノイズ除去部によって得られた信号値に、前記信号値変化量を加算する遅れ補償部と、を備えることを特徴とする正弦波ノイズ除去装置。
(構成2)
正弦波ノイズが乗っている信号に対し、前記正弦波ノイズが相互に打ち消される測定点のペアにおいて前記正弦波ノイズが乗っている信号を測定し、当該測定した測定値の移動平均を前記信号の信号値とする正弦波ノイズ除去部と、下記の計算式に基づいて、前記正弦波ノイズ除去部によって得られた信号値の遅れ補償処理を行う遅れ補償部と、を備えることを特徴とする正弦波ノイズ除去装置。
Figure 0007109727000001

数1において、bは前記正弦波ノイズ除去部によって取得されたn番目の信号値(nは整数)、cは遅れ補償後の信号値、mは測定点のペア数(整数)。
(構成3)
正弦波ノイズが乗っている信号に対し、前記正弦波ノイズが相互に打ち消される測定点のペアにおいて前記正弦波ノイズが乗っている信号を測定し、当該測定した測定値の移動平均を前記信号の信号値とする正弦波ノイズ除去ステップと、前記信号の信号波形の近似式情報を取得する近似式情報取得ステップと、前記移動平均によって生じる遅れ時間を取得する遅れ時間取得ステップと、前記近似式情報と前記遅れ時間に基づいて、前記遅れ時間に対応する前記信号値の変化量である信号値変化量を算出する信号値変化量算出ステップと、前記正弦波ノイズ除去ステップによって得られた信号値に、前記信号値変化量を加算する遅れ補償ステップと、を備えることを特徴とする正弦波ノイズ除去方法。
(構成4)
正弦波ノイズが乗っている信号に対し、前記正弦波ノイズが相互に打ち消される測定点のペアにおいて前記正弦波ノイズが乗っている信号を測定し、当該測定した測定値の移動平均を前記信号の信号値とする正弦波ノイズ除去ステップと、下記の計算式に基づいて、前記正弦波ノイズ除去ステップによって得られた信号値の遅れ補償処理を行う遅れ補償ステップと、を備えることを特徴とする正弦波ノイズ除去方法。
Figure 0007109727000002

数2において、bは前記正弦波ノイズ除去ステップによって取得されたn番目の信号値(nは整数)、cは遅れ補償後の信号値、mは測定点のペア数(整数)。
本発明の正弦波ノイズ除去装置によれば、正弦波ノイズが乗っている信号に対して移動平均を用いてノイズをキャンセルする技術において生じる時間遅れを、解消することが可能となる。
本発明に係る実施形態の正弦波ノイズ除去装置の構成の概略を示すブロック図 正弦波ノイズ除去について説明するための説明図 正弦波ノイズ除去の時間遅れ補償について説明するための説明図 正弦波ノイズ除去装置の処理動作の概略を示すフローチャート
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
図1は本実施形態の正弦波ノイズ除去装置の構成の概略を示すブロック図である。
正弦波ノイズ除去装置1は、入力部11と、入力部11に入力されるアナログ信号(例えば温度センサからの信号等)を、A/D変換してマイコン13に入力するA/D変換部12と、正弦波ノイズ除去処理や、遅れ補償処理を行うマイコン13と、出力部14と、を備える。
正弦波ノイズの除去は、正弦波が正負で対称な波形であることに基づいて、正負で対称な点をペアとしてこれの移動平均を取ることによって、ノイズをキャンセルするものである。ペア数をmとした場合、測定点は2mとなる。各測定点の測定間隔を正弦波ノイズの周期の1/2mとすることで、正負で対称なペアとなる測定点を得ることができる。
図2には、簡単化のため0出力の信号に対して正弦波ノイズが乗っているものを例示した。図2は、正弦波ノイズ1周期の中で2つのペアの測定点、即ち、正弦波ノイズ1周期の中に4つの測定点を設けた例であり、従って、各測定点の間隔は正弦波ノイズ周期の1/4である。
図2から理解されるように、測定点aと測定点an-2、測定点an-1と測定点an-3がそれぞれペアとなり、これらを加算すると0になる。即ち、ペア数をmとした場合において、2mの測定点を正弦波ノイズの周期の1/2m間隔で測定し、これらを加算すると、正弦波ノイズがキャンセルされる。
図2では、信号出力を0としているが、信号出力がある場合には、各測定点a~an-3の加算によって信号出力も加算されることになるため、これを測定点の数(ここでは4)で除算する(即ち、移動平均をとる)ことによって、正弦波ノイズが除去された信号値bを得ることができる。
正弦波ノイズが除去された信号値bは、下記の数3によって算出することができる。
Figure 0007109727000003

は正弦波ノイズ除去がされたn番目の信号値(nは整数)であり、mは測定点のペア数(整数)である。aは各測定点における測定値である。
上記の移動平均による正弦波ノイズ除去は、移動平均の算出に使用した測定点の時間間隔に基づく遅れが生じてしまう。
図2の例において、測定点a~an-3に基づいて移動平均を算出した場合、これによって得られる信号値bは、信号波形が一次関数である場合、測定点a~an-3の真ん中の時点(an-1とan-2の真ん中)における信号値に相当する。即ち、3/8周期の遅れが生じているのに等しい結果となる。測定点aとan-2の1つのペアに基づいて移動平均を算出した場合、これによって得られる信号値bは、aとan-2の真ん中における信号値に相当する。即ち、1/4周期の遅れが生じているのに等しい結果となる。
図3はこの遅れと、その補償に関する説明図である。
図3における実線は信号の測定値(信号値に正弦波ノイズが重畳されているもの)としてのラインであり、一点鎖線は移動平均による正弦波ノイズ除去後の信号値を示すラインである。これに対し、点線は、真の信号値を示すラインである。
図3は測定点のペア数mが1、即ち測定点が2つである場合の例である。
前述のごとく、測定点が2つ(2つの測定点の間隔が1/2周期)である場合、遅れ(以下、「遅れ時間」という)は1/4周期となる。即ち、点線で示した真の信号値に対して、一点鎖線で示した正弦波ノイズ除去後の信号値は、1/4周期の遅れが生じているのに等しい結果となる。
この遅れは、正弦波ノイズ除去後の信号値bに対して、遅れ時間(ここの例では1/4周期)の間に信号値が変化した変化量(以下、「信号値変化量」という)を加算することによって補償することができる。
信号値変化量は、信号波形が一次関数である場合には、下記の数4によって算出することができる。なお、“信号波形が一次関数である場合”とは、bn-1とbの時間間隔における信号波形を一次関数とみなし得る場合を含む。
Figure 0007109727000004

は正弦波ノイズが除去されたn番目の信号値(nは整数)であり、mは測定点のペア数(整数)である。
本実施形態の正弦波ノイズ除去装置1は、正弦波ノイズ除去後の信号値bに対して、信号値変化量を加算することによって、遅れ補償した信号値cを得るものである。
上記に基づき、遅れ補償した信号値cは、下記の数5によって算出することができる。
Figure 0007109727000005
図4は、本実施形態の正弦波ノイズ除去装置1の処理動作の概略を示すフローチャートである。なお、以下では処理主体の記載を省略しているが、下記の処理は、A/D変換部12においてA/D変換された信号値が入力されるマイコン13において実行されるものである。
ステップ401では、初期化処理として、sに1を代入、nに0を代入する。sは測定値の順番を示す変数、nは正弦波ノイズが除去された信号値の順番を示す変数である。なお、定数として、mに移動平均処理を行う測定点のペア数が入力されている(デフォルトで設定されているものであってもよいし、ユーザによって決定、入力されるものであってもよい)。
ステップ402では、A/D変換部12から入力される信号の値を、測定値aとして取得する処理を行う。
続くステップ403では、sが2m以上であるか否かを判別する。即ち、測定済みの測定点の数が移動平均処理を行うための測定点の数に至ったか否かを判別しているものである。
移動平均処理を行うための測定点の数に至っていない場合には、ステップ408へと移行して、正弦波ノイズ周期の1/2m間隔の経過を待つ。上記で説明した、各測定点の間隔に相当する時間経過を待つもの、即ち、次の測定点の測定時を待っているものである。
次の測定点の測定時が到来した場合には、sをインクリメントし(ステップ408:Yes→ステップ409)、ステップ402へと戻り、A/D変換部12から入力される信号の値を、測定値aとして取得する処理を行う。
処理開始当初の、ステップ402、403、408、409の処理の繰り返しにより、測定済みの測定点の数が移動平均処理を行うための測定点の数に至った場合には、nをインクリメントする(ステップ403:Yes→ステップ404)。
ステップ405では、上述した数3に基づく計算を行い、これをbに代入する。
即ち、マイコン13は、「正弦波ノイズが乗っている信号に対し、前記正弦波ノイズが相互に打ち消される測定点のペアにおいて前記正弦波ノイズが乗っている信号を測定し、当該測定した測定値の移動平均を前記信号の信号値とする正弦波ノイズ除去部」として機能するものである。
続くステップ406では、nが1であるか否かを判別する。即ちbが1つしかないか否かを判別しているものであり、nが1(bが1つ)である場合には、ステップ408へ移行して、上記処理を繰り返す。
一方、nが1でない場合はbが複数あることを意味し、この場合にはステップ407へと移行して、上述した数5に基づく計算を行い、これをcに代入する。
即ち、マイコン13は、「数5に基づいて、前記正弦波ノイズ除去部によって得られた信号値の遅れ補償処理を行う遅れ補償部」として機能するものである。
以降、上記説明した処理を繰り返すことによって、正弦波ノイズ周期の1/2m間隔毎に、各測定点の測定が行われて、正弦波ノイズ除去後の信号値bが算出され、当該信号値bに遅れ補償が行われた信号値cが算出されていくものである。
以上のごとく、本実施形態の正弦波ノイズ除去装置1によれば、正弦波ノイズが乗っている信号に対して移動平均を用いてノイズをキャンセルする技術において生じる時間遅れを解消することが可能となる。これにより、サンプリング周波数が非常に高くなり、高速応答が求められる処理に対しても遅れなく対応することが可能となる。例えば、ボンディング装置に用いられるパルスヒートユニットの瞬間加熱制御における、温度センサの信号値のサンプリング制御等にも高精度で対応することが可能となるものである。
なお、本実施形態では、信号波形が一次関数とみなせる場合において数4によって信号値変化量を算出するものを例としているが、その基本概念は、移動平均による正弦波ノイズ除去において生じる「遅れ時間」の間に信号値が変化した変化量を求めるものであり、当該概念は、任意の波形の信号に対して適用することが可能である。
即ち、信号値bを何点か取得することによって、信号波形の近似式を算出することが可能であり、また、当該近似式と、移動平均によって算出された値と、移動平均の算出に使用した測定点の時間間隔等に基づいて、遅れ時間を算出することが可能である。そして、信号波形の近似式に基づいて、遅れ時間の間に信号値が変化する変化量を算出することができ、これを信号値bに加算することによって、遅れ補償した信号値cを算出する処理を、マイコン13において実行できるものである。
この場合、マイコン13は、「信号波形の近似式情報を取得する近似式情報取得部と、移動平均によって生じる遅れ時間を取得する遅れ時間取得部と、前記近似式情報と前記遅れ時間に基づいて、前記遅れ時間に対応する前記信号値の変化量である信号値変化量を算出する信号値変化量算出部と、前記正弦波ノイズ除去部によって得られた信号値に、前記信号値変化量を加算する遅れ補償部」として機能するものである。
なお、サンプリング周波数が十分に高い場合には、信号波形をサンプリング周期レベルでみると、信号波形を一次関数とみなせることが多く、本実施形態で説明した各数式(若しくはこれを適宜変形させた式)による算出方法で対応可能である。
上記説明では、制御処理の主体としてマイコンを例としているが、制御主体をマイコンに限るというものではなく、上記説明した各処理を実行できる任意のデバイスを用いることができる。また、各機能部(正弦波ノイズ除去部、近似式情報取得部、遅れ時間取得部、信号値変化量算出部、遅れ補償部)がマイコン上でソフトウェア的に実装されるものを例としているが、各機能部の何れか若しくは全てをハード的に(専用回路等によって)実装するものであってもよい。
1...正弦波ノイズ除去装置
12...A/D変換部
13...マイコン(正弦波ノイズ除去部、近似式情報取得部、遅れ時間取得部、信号値変化量算出部、遅れ補償部)

Claims (2)

  1. 正弦波ノイズが乗っている信号に対し、前記正弦波ノイズが相互に打ち消される測定点のペアにおいて前記正弦波ノイズが乗っている信号を測定し、当該測定した測定値の移動平均を前記信号の信号値とする正弦波ノイズ除去部と、
    下記の計算式に基づいて、前記正弦波ノイズ除去部によって得られた信号値の遅れ補償処理を行う遅れ補償部と、を備えることを特徴とする正弦波ノイズ除去装置。
    Figure 0007109727000006

    数1において、bは前記正弦波ノイズ除去部によって取得されたn番目の信号値(nは整数)、cは遅れ補償後の信号値、mは測定点のペア数(整数)。
  2. 正弦波ノイズが乗っている信号に対し、前記正弦波ノイズが相互に打ち消される測定点のペアにおいて前記正弦波ノイズが乗っている信号を測定し、当該測定した測定値の移動平均を前記信号の信号値とする正弦波ノイズ除去ステップと、
    下記の計算式に基づいて、前記正弦波ノイズ除去ステップによって得られた信号値の遅れ補償処理を行う遅れ補償ステップと、を備えることを特徴とする正弦波ノイズ除去方法。
    Figure 0007109727000007

    数2において、bは前記正弦波ノイズ除去ステップによって取得されたn番目の信号値(nは整数)、cは遅れ補償後の信号値、mは測定点のペア数(整数)。
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