ところで、災害時に汚水が貯留される貯留槽は、汚水から発生する臭気が漏れるという観点から、災害時に破損し難い方が望ましい。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、災害時に汚水が貯留される貯留槽が災害時に破損し難い災害時用トイレシステムを提供することである。
本発明に係る災害時用トイレシステムは、上流端にトイレの便器が接続可能な接続管路と、前記接続管路の下流端が接続された第1排出管路と、上流端に前記第1排出管路の下流端が接続された第2排出管路と、前記第2排出管路の下流端が接続された流入口が形成された流入部分を有し、汚水が貯留される貯留槽と、を備えている。前記貯留槽は、建物における地面よりも高い位置に設けられている。
上記災害時用トイレシステムによれば、災害の一例として津波が発生した場合、地中に埋設された貯留槽、または、地面に載置された貯留槽と比較して、地面より高い位置に設けられた貯留槽に津波が到達し難い。よって、津波によって貯留槽が破損し難い。
本発明の好ましい一態様によれば、前記貯留槽は、前記建物の2階以上の階に設けられている。
上記態様によれば、貯留槽が建物の2階以上の階に設けられているため、津波が貯留槽に到達し難い。よって、津波によって貯留槽が破損し難い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記貯留槽は、排出口が形成され、かつ、底部に位置する排出部分を有している。前記災害時用トイレシステムは、前記排出口を開閉可能な開閉体を備えている。
上記態様によれば、例えば災害時、開閉体によって排出口を閉鎖することで、トイレの便器から排出された汚水を貯留槽に貯留することができる。貯留槽内の汚水を排出する際、開閉体によって排出口を開放する。このことで、自然流下で貯留槽内の汚水を外部に排出することができる。よって、吸引ポンプなどの動力を利用することなく、貯留槽内の汚水を排出し易い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記災害時用トイレシステムは、上流端が前記貯留槽の前記排出口に接続され、下流端が下水本管に接続された第3排出管路を備えている。
上記態様によれば、貯留槽内の汚水を排出する際、開閉体によって排出口を開放する。このことによって、貯留槽内の汚水を、第3排出管路を通じて下水本管に排出することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記災害時用トイレシステムは、前記接続管路の上流端を開閉可能な蓋体を備えている。
上記態様によれば、接続管路の上流端にトイレの便器を接続していないとき、蓋体によって接続管路の上流端を閉鎖する。このことによって、接続管路、第1排出管路、第2排出管路および貯留槽内に汚水が残留していた場合、汚水から発生する臭気を接続管路の上流端から漏れ難くすることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記接続管路の上流端には、前記便器が接続されている。前記災害時用トイレシステムは、下流端が下水本管に接続された第3排出管路と、前記第1排出管路の下流端と前記第2排出管路の上流端との間に配置され、前記第1排出管路の下流端、前記第2排出管路の上流端、および、前記第3排出管路の上流端に接続され、前記第1排出管路から前記第2排出管路に水を流す第1の状態と、前記第1排出管路から前記第3排出管路に水を流す第2の状態とに切り替え可能な流路切替部材と、を備えている。
上記態様によれば、災害時であっても、災害が発生していない通常時であっても、接続管路の上流端にトイレの便器が接続されている。そのため、例えば通常時、流路切替部材の状態を第2の状態にすることで、トイレの便器から排出された汚水を、第1排出管路および第3排出管路を通じて下水本管に排出することができる。一方、例えば災害時、流路切替部材の状態を第1の状態にすることで、便器から排出された汚水を、第1排出管路および第2排出管路を通じて貯留槽に排出することができる。よって、例えば災害時、下水本管が破損した場合であっても、トイレを使用することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記災害時用トイレシステムは、上流端が前記貯留槽の前記排出口に接続され、下流端が前記第3排出管路に接続された第4排出管路を備えている。
上記態様によれば、貯留槽内の汚水を排出する際、開閉体によって排出口を開放する。このことによって、貯留槽内の汚水を、第4排出管路および第3排出管路を通じて下水本管に排出することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記接続管路の上流端は、前記貯留槽が設けられた前記建物の階の床、または、前記貯留槽が設けられた前記建物の階よりも上の階の床に形成された接続口に接続されている。
上記態様によれば、トイレの便器を、貯留槽が設けられた建物の階、または、貯留槽が設けられた建物の階よりも上の階に設置することができる。よって、貯留槽に少なくとも津波が到達する前までは、トイレを使用することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記流入部は、前記貯留槽の上部に位置する。
上記態様によれば、貯留槽は、流入口の位置まで汚水を貯留することが可能である。よって、流入口を貯留槽の上部に形成することで、より多くの汚水を貯留槽に貯留することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、貯留槽は樹脂製である。
上記態様によれば、貯留槽を比較的に軽量化することができる。よって、貯留槽を建物内に設置し易い。例えば、既存の貯留槽が劣化した場合、既存の貯留槽を新しい貯留槽に交換し易い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記建物は、自走式立体駐車場である。
自走式立体駐車場は、商業施設や住居施設などの建物と比較して、側壁によって全体が覆われておらず、津波の力を受け難い構造を有している。そのため、自走式立体駐車場は、避難場所として使用され得る。上記態様では、避難場所として使用され得る自走式立体駐車場に、災害時用トイレシステムを導入しているため、特に有用である。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記建物は、自動車が走行するスロープを備えている。前記貯留槽は、前記スロープの下方に配置されている。
上記態様によれば、スロープの下方の空間は、通常時に使用されないデッドスペースになり易い。よって、デッドスペースになり易いスロープの下方に貯留槽を配置することで、貯留槽が邪魔になり難い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記建物は、自動車が駐車する第1駐車スペースと、前記第1駐車スペースと隣接する非駐車スペースと、前記非駐車スペースにおける前記第1駐車スペースが隣接している位置とは反対側の位置において、前記非駐車スペースと隣接し、自動車が駐車する第2駐車スペースと、を備えている。前記貯留槽は、前記非駐車スペースに配置されている。
上記態様によれば、第1駐車スペースと第2駐車スペースの間に位置する非駐車スペースは、デッドスペースになり易い。よって、デッドスペースになり易い非駐車スペースに貯留槽を配置することで、貯留槽が邪魔になり難い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記建物は、支柱を備えている。前記貯留槽は、前記支柱の少なくとも一部を覆う形状を有し、前記支柱の少なくとも一部を覆うように配置されている。
上記態様によれば、支柱の周辺はデッドスペースになり易い。よって、貯留槽を支柱に固定することで、貯留槽が邪魔になり難い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記建物は、側壁を備えている。前記貯留槽は、前記側壁に固定されている。
上記態様によれば、側壁の周辺はデッドスペースになり易い。よって、貯留槽を側壁に固定することで、貯留槽が邪魔になり難い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記建物は、フェンスを備えている。前記貯留槽は、前記フェンスに固定されている。
上記態様によれば、フェンスの周辺はデッドスペースになり易い。よって、貯留槽をフェンスに固定することで、貯留槽が邪魔になり難い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記建物は、天井を備えている。前記貯留槽は、前記天井に固定されている。
上記態様によれば、天井の周辺はデッドスペースになり易い。よって、貯留槽を天井に固定することで、貯留槽が邪魔になり難い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記建物は、エレベータが設置されたエレベータ塔を備えている。前記貯留槽は、前記エレベータ塔に配置されている。
上記態様によれば、エレベータ塔は、利用者が移動する際に使用するものであり、自動車が駐車される塔に比べて、頻繁に使用され難い。よって、貯留槽を頻繁に使用され難いエレベータ塔に配置することで、貯留槽が邪魔になり難い。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記貯留槽は、前記建物と一体的に形成されている。
上記態様によれば、貯留槽は建物に対してずれない。よって、災害時に、貯留槽が建物から落下し難い。また、建物を、貯留槽を構成する部位の一部として使用することができるため、材料コストを抑えることができる。
本発明によれば、災害時に汚水が貯留される貯留槽が災害時に破損し難い災害時用トイレシステムを提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る災害時用トイレシステムについて説明する。ここで説明される各実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作業を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る災害時用トイレシステム100について説明する。図1、図2は、それぞれ第1実施形態に係る災害時用トイレシステム100の正面図である。図1は、建物5にトイレ3の便器4aが設置されている状態を示す図である。図2は、建物5からトイレ3の便器4aが取り外されている状態を示す図である。災害時用トイレシステム100は、地震や津波などの災害時に使用されるトイレ3から排出された汚水が流れるシステムである。災害時用トイレシステム100は、建物5に設置されるシステムである。
図3は、建物5の一例を示す正面図である。建物5は、災害時に避難場所として使用されるものである。建物5の種類は特に限定されないが、ここでは、建物5は、例えば図3に示すように、自走式立体駐車場である。自走式立体駐車場は、自動車を駐車するための立体駐車場であって、運転者が運転して自動車を駐車スペースに駐車する駐車場である。自走式立体駐車場は、商業施設や居住施設などの建物と比較して、側壁によって全体が覆われておらず、特に津波の力を受け難い構造を有している。また、自走式立体駐車場では、所定の階の側壁は、その階の天井まで延びておらず、所定の階の側壁と、当該所定の階の1つ上の階との間には、隙間が形成されている。そのため、自走式立体駐車場は、災害時の避難場所として使用され得る。建物5は、複数の階を有しているが、建物5の階数は特に限定されない。本実施形態では、建物5は、自走式立体駐車場を構成するものを少なくとも有している。例えば、建物5は、各階に設けられた床8aと、各階を繋ぎ、自動車が走行するスロープ8bと、各階において自動車が走行する走行スペース(図示せず)と、駐車スペース(図示せず)と、支柱8cと、側壁8dと、各階の天井8eと、フェンス8fなどを備えている。ここでは、自動車が駐車する塔であって、床8a、スロープ8b、上記走行スペース、上記駐車スペース、支柱8c、側壁8d、天井8eおよびフェンス8fが設けられた塔を、駐車場塔9aという。上述のように、所定の階の側壁8dと、所定の階の1つ上の階の側壁8dとの間には、隙間8daが形成されており、この隙間8daは、水平方向に延びている。隙間8daは、上下に並んだ側壁8dと、左右に並んだ支柱8cに囲まれている。建物5は、階段と、エレベータ8gが設置されたエレベータ塔9bを備えていてもよい。
本実施形態では、図1に示すように、建物5の床8aには、トイレ3の便器4aから排出される汚水が通る接続口6が形成されている。この接続口6上に便器4aが設置されるため、接続口6が形成されている床8aの階にトイレ3が設置される。ここでは、トイレ3は、災害時に使用されるものであり、いわゆる仮設トイレである。災害時において建物5が避難場所になった際に、トイレ3は建物5に設置される。なお、トイレ3が設置される建物5の階は特に限定されないが、災害時に津波が到達しない程度の高さを有する建物5の階であることが好ましい。例えば、トイレ3が設置される建物5の階は、2階以上の階であり、好ましくは3階以上の階、特に好ましくは4階以上の階である。言い換えると、接続口6が形成される床8aは、建物5の2階以上の階の床8aであり、好ましくは3階上の階の床8aであり、特に好ましくは4階以上の階の床8aである。複数のトイレ3は、全て同じ階に設置されていてもよいし、一部のトイレ3は、他のトイレ3と異なる階に設置されていてもよい。なお、本実施形態では、図2に示すように、災害が発生していない通常時には、接続口6上には、便器4aは設置されていない。
本実施形態では、図1に示すように、災害時用トイレシステム100では、トイレ3から排出された汚水は、災害時、後述する貯留槽30に向かって流れ、汚水は上流から下流に向かって流れる。災害時用トイレシステム100は、接続管路10と、第1排出管路21と、第2排出管路22と、第3排出管路23と、貯留槽30と、開閉バルブ40とを備えている。
接続管路10は、トイレ3の便器4aと、第1排出管路21とを繋ぐものである。接続管路10は、例えば建物5の床8aから下方に向かって延びている。本実施形態では、建物5の床8aのうち接続口6が形成された床8aから下方に向かって延びている。接続管路10の上流端は、上方に向かって開口しており、当該上流端には、トイレ3の便器4aを接続することが可能である。ここでは、災害時、接続管路10の上流端に便器4aが接続される。詳しくは、災害時、接続管路10の上流端は、床8aの接続口6を通じて便器4aに接続される。なお、図2に示すように、災害が発生していない通常時には、接続管路10の上流端には、便器4aが接続されていない。通常時、接続管路10の上流端には、蓋体12が嵌め込まれており、蓋体12は接続管路10の上流端を閉鎖する。言い換えると、通常時、蓋体12は、床8aに形成された接続口6を閉鎖する。接続管路10の下流端は、第1排出管路21に接続されている。
本実施形態では、建物5に設置されるトイレ3と同じ数の接続管路10が設けられている。例えば図1では、3つのトイレ3を設置することが可能である。そのため、災害時用トイレシステム100は、3つのトイレ3の便器4aのそれぞれに異なる接続管路10が接続されるように、3つの接続管路10を備えている。しかしながら、建物5に設置可能なトイレ3の数、および、接続管路10の数は特に限定されない。例えばトイレ3の数、および、接続管路10の数は、それぞれ1つであってもよいし、2つまたは4つ以上であってもよい。
なお、本実施形態では、「管路」とは、水を流通させる通路を意味する。「管路」は、一本の管によって構成されていてもよく、複数本の管とそれら管を接続する継手によって構成されていてもよい。また、管路を構成する管は、直線状の管であってもよく、一部が曲がった管であってもよい。また、複数の管路が1つの管で構成されていてもよい。
第1排出管路21は、複数のトイレ3から排出された汚水が集合する管路である。第1排出管路21の少なくとも一部は、接続管路10よりも下方に配置されている。第1排出管路21の途中部分には、接続管路10の下流端が接続されている。本実施形態では、第1排出管路21の上流端には、貯水タンク2が接続されている。貯水タンク2には、例えば水が貯留されている。貯水タンク2内の水は雨水であってもよい。災害時に、貯水タンク2の水が第1排出管路21に排出されることで、第1排出管路21内の汚水を貯留槽30に流すことができる。貯水タンク2は、第1排出管路21に水を排出させる、または、排出させないように切り替え可能な切替えバルブ(図示せず)を備えている。なお、トイレ3に貯水タンク2と同様の機能が設けられている場合、貯水タンク2は、第1排出管路21の上流端に接続されていなくてもよい。
第2排出管路22は、第1排出管路21と貯留槽30とを繋ぐ管路である。第2排出管路22によって、第1排出管路21から排出された汚水を貯留槽30に排出することができる。第2排出管路22の上流端は、第1排出管路21の下流端に接続されている。第2排出管路22の下流端は、貯留槽30に接続されている。
第3排出管路23は、貯留槽30と下水本管7とを繋ぐ管路である。第3排出管路23によって、貯留槽30内の汚水を下水本管7に排出することができる。下水本管7は、通常時、建物5や建物5以外の建物から排出された汚水が流入する管であり、所定の地域内から排出された汚水が集合する管である。下水本管7は、建物5の外であって、地中に埋設されている。本実施形態では、第3排出管路23は、接続管路10、第1排出管路21、第2排出管路22および貯留槽30よりも下方に配置されており、少なくとも一部が上下方向に延びている。第3排出管路23の上流端は、貯留槽30に接続され、第3排出管路23の下流端は、下水本管7に接続されている。そのため、第3排出管路23の一部は、建物5内に配置されているが、第3排出管路23の他の一部は、建物5の外に配置され、地中に埋設されている。
次に、貯留槽30について説明する。図4は、貯留槽30の正面断面図である。図4に示すように、貯留槽30は、内部に密封された空間を有し、災害時に汚水が貯留される槽である。詳しくは、貯留槽30には、災害時、トイレ3から排出された汚水が貯留される。貯留槽30が密封式であることによって、貯留槽30内の汚水から発生する悪臭が外部に漏れないようになっている。貯留槽30の大きさや形状は特に限定されず、建物5に対する設置位置や、設置されるトイレ3の数に応じて設定される。なお、貯留槽30の設置位置は後述する。本実施形態では、貯留槽30は、流入部分31と、排出部分32と、中間部分33とを有している。
流入部分31は、貯留槽30を上下方向に3分割したときの上側の部分に位置する部位である。流入部分31には、流入口31aが形成されている。なお、流入口31aが形成される流入部分31の部位は特に限定されないが、例えば流入口31aは、最も上方に位置する流入部分31の部位に形成されている。このことによって、より多くの汚水を貯留槽30に貯留することができる。ここでは、流入口31aは、上方に開口しているが、側方に開口していてもよい。この流入口31aには、第2排出管路22の下流端が接続されている。トイレ3から排出された汚水は、流入口31aを通じて貯留槽30内に排出される。
排出部分32は、貯留槽30を上下方向に3分割したときの下側の部分に位置する部位である。排出部分32には、排出口32aが形成されている。なお、排出口32aが形成される排出部分32の部位は特に限定されないが、例えば排出口32aは、最も下方に位置する排出部分32の部位に形成されている。このことによって、貯留槽30内の汚水を外部に排出し易い。ここでは、排出口32aは、下方に開口しているが、側方に開口していてもよい。排出口32aには、第3排出管路23の上流端が接続されている。本実施形態では、貯留槽30が設けられている階の床8aには、連通口6bが形成されており、貯留槽30の排出口32aと連通口6bとが連通している。貯留槽30内の汚水は、排出口32aを通じて第3排出管路23および下水本管7(図1参照)に排出される。
中間部分33は、貯留槽30を上下方向に3分割したときの上側の部分と下側の部分との間に位置する部位である。中間部分33は、流入部分31と排出部分32との間に配置されており、流入部分31および排出部分32と連続している。
貯留槽30を形成する材料は特に限定されず、内部の汚水や、汚水の臭気が外部に漏れないような材料によって形成されているとよい。例えば、貯留槽30は樹脂製である。しかしながら、貯留槽30は、コンクリートによって形成されていてもよい。
図1に示すように、貯留槽30は、建物5における地面GLよりも高い位置に設けられている。ここで、「建物5に・・・設けられる」とは、建物5内、すなわち、建物5の内部に貯留槽30が設けられている場合の他に、建物5の外面に貯留槽30が設けられている場合、言い換えると、建物5の外面に貯留槽30が支持されている場合も含まれる。貯留槽30は、建物5の2階以上の階に設けられている。本実施形形態では、貯留槽30は、例えば建物5の3階に設けられているが、2階に設けられていてもよいし、4階以上の階に設けられていてもよい。また、貯留槽30は、建物5の1階の天井8eに吊り下げ支持されていてもよい。なお、本実施形態では、トイレ3が設置される階、言い換えると接続口6が形成された床8aの階は、貯留槽30が設けられた建物5の階、または、貯留槽30が設けられた建物5の階よりも上の階である。例えば貯留槽30が3階に設けられている場合、トイレ3は3階以上の階に設けられているとよい。
本実施形態では、開閉バルブ40は、貯留槽30の排出口32a(図4参照)を開閉可能なものである。作業者が開閉バルブ40を操作することで、排出口32aを開放したり閉鎖したりすることができる。例えば、開閉バルブ40によって排出口32aを開放することで、排出口32aを通じて貯留槽30内の汚水を外部に排出することができる。他方、開閉バルブ40によって排出口32aを閉鎖することで、貯留槽30に汚水を貯留することができる。開閉バルブ40は、本発明の「開閉体」の一例である。ここでは、開閉バルブ40は、第3排出管路23に設けられ、第3排出管路23を開閉するものである。このように、第3排出管路23を開放したり閉鎖したりすることで、排出口32aから汚水を排出することができたり、汚水を排出できなかったりすることができる。開閉バルブ40は、第3排出管路23を開放または閉鎖することで、排出口32aを間接的に開放または閉鎖する。ただし、開閉バルブ40の配置位置は特に限定されず、排出口32aに設けられていてもよい。本実施形態では、開閉バルブ40は、建物5内で操作が可能な位置に配置されている。ここでは、開閉バルブ40は、貯留槽30が設けられた階よりも1つ下の階に設けられているが、貯留槽30が設けられた建物5の階に設けられていてもよい。
次に、本実施形態に係る災害時用トイレシステム100の利用方法について説明する。図2に示すように、災害が発生していない通常時、接続管路10の上流端は、蓋体12によって閉鎖されている。本実施形態では、通常時、災害時用トイレシステム100は、使用されない状態であり、接続管路10、第1排出管路21、第2排出管路22、第3排出管路23および貯留槽30には、汚水が排出されない状態である。通常時、開閉バルブ40は、貯留槽30の排出口32aを閉鎖している。しかしながら、通常時、開閉バルブ40は、排出口32aを開放していてもよい。
災害時に建物5が避難場所として使用される場合、作業者は、図1に示すように、接続管路10の上流端から蓋体12を取り外し、床8aに形成された接続口6上にトイレ3の便器4aを設置すると共に、接続管路10の上流端に便器4aを接続する。このとき、便器4aごとに個室が形成されるように、テントなどの簡易的な囲い4bが床8aに設置される。そして、作業者は、貯水タンク2の上記切替えバルブ(図示せず)を操作して、貯水タンク2内の水を第1排出管路21に排出する状態にすると共に、開閉バルブ40を操作して、貯留槽30の排出口32aを閉鎖する。このような状態にすることで、トイレ3を使用することができる。
災害時、トイレ3から流出した排泄物が混在した汚水は、接続管路10を通じて第1排出管路21に排出される。そして、第1排出管路21に排出された汚水は、貯水タンク2から排出された水の流れに沿って、第2排出管路22に排出される。第2排出管路22に排出された汚水は、流入口31aを通じて貯留槽30内に排出される。本実施形態では、災害時のトイレ3を使用しているとき、貯留槽30の排出口32aは閉鎖されている状態である。そのため、貯留槽30内に排出された汚水は、貯留槽30に留まった状態となる。そのため、仮に下水本管7が破損した場合であっても、汚水が外部に漏れることなくトイレ3を使用することができる。
なお、建物5における避難場所としての使用が終了したとき、トイレ3は建物5から撤去される。このとき、作業者は、災害時用トイレシステム100の清掃を行う。ここでは、作業者は、まず貯留槽30内の汚水を外部に排出する作業を行う。本実施形態では、作業者は、開閉バルブ40を操作して、貯留槽30の排出口32aを開放する。このことで、貯留槽30内の汚水は、汚水自体の自重によって自然流下することで、排出口32aから第3排出管路23に排出される。第3排出管路23に排出された汚水は、下水本管7に排出される。続いて、作業者は、接続管路10、第1~3排出管路21~23および貯留槽30に、内部を洗浄するための洗浄液を流す。洗浄した後の洗浄液である洗浄廃液は、自然流下することで、貯留槽30の排出口32aを通じて下水本管7に排出される。次に、作業者は、接続管路10、第1~3排出管路21~23および貯留槽30に、内部を消毒するための消毒液を流す。消毒した後の消毒液である消毒廃液は、自然流下することで、貯留槽30の排出口32aを通じて下水本管7に排出される。以上のようにして、災害時用トイレシステム100の清掃を行うことができる。
このように、本実施形態では、図1に示すように、貯留槽30は、建物5内であって、地面GLよりも高い位置に設けられている。貯留槽30は、建物5の2階以上の階に設けられている。このことによって、津波が発生した場合、地中に埋設された貯留槽、または、地面に載置された貯留槽と比較して、津波が貯留槽30に到達し難い。よって、津波によって貯留槽30が破損し難い。
本実施形態では、図4に示すように、貯留槽30は、排出口32aが形成され、かつ、底部に位置する排出部分32を有している。開閉バルブ40は、排出口32aを開閉可能に構成されている。このことによって、災害時、開閉バルブ40によって排出口32aを閉鎖することで、トイレ3の便器4aから排出された汚水を貯留槽30に貯留することができる。貯留槽30内の汚水を排出する際、開閉バルブ40によって排出口32aを開放する。このことで、自然流下で貯留槽30内の汚水を外部に排出することができる。よって、吸引ポンプなどの動力を利用することなく、貯留槽30内の汚水を排出し易い。
また、本実施形態では、災害時用トイレシステム100を清掃する際、貯留槽30には、洗浄廃液や消毒廃液が流入する。これら洗浄廃液や消毒廃液は、自然流下で排出口32aから貯留槽30の外部へ排出される。よって、貯留槽30内の洗浄廃液や消毒廃液を排出し易い。
本実施形態では、流入口31aが形成された流入部分31は、貯留槽30の上部に位置する。貯留槽30は、流入口31aの位置まで汚水を貯留することが可能である。よって、流入口31aを貯留槽30の上部に形成することで、より多くの汚水を貯留槽30に貯留することができる。
本実施形態では、図1に示すように、第3排出管路23の上流端は、貯留槽30の排出口32aに接続され、第3排出管路23の下流端は、下水本管7に接続されている。このことによって、開閉バルブ40によって排出口32aが開放されているとき、貯留槽30内の汚水を、第3排出管路23を通じて下水本管7に排出することができる。
本実施形態では、図2に示すように、蓋体12は、接続管路10の上流端を開閉可能に構成されている。このことによって、接続管路10の上流端にトイレ3の便器4aを接続していないとき、蓋体12によって接続管路10の上流端を閉鎖する。よって、接続管路10、第1排出管路21、第2排出管路22、第3排出管路23および貯留槽30内に汚水が残留していた場合、汚水から発生する臭気を接続管路10の上流端から漏れ難くすることができる。
本実施形態では、図1に示すように、接続管路10の上流端は、貯留槽30が設けられた建物5の階よりも上の階の床8aに形成された接続口6に接続されている。このことによって、トイレ3の便器4aを、貯留槽30が設けられた建物5の階よりも上の階に設置することができる。そのため、貯留槽30に少なくとも津波が到達する前までは、トイレ3を使用することができる。
本実施形態では、貯留槽30は樹脂製である。このことによって、貯留槽30を比較的に軽量化することができる。よって、貯留槽30を建物5内に設置し易い。また、既存の貯留槽30が劣化した場合、既存の貯留槽30を新しい貯留槽30に交換し易い。
本実施形態では、図3に示すように、建物5は、自走式立体駐車場である。自走式立体駐車場は、商業施設や住居施設などの建物と比較して、側壁8dによって全体が覆われておらず、津波の力を受け難い構造を有している。そのため、自走式立体駐車場は、避難場所として使用され得る。本実施形態では、避難場所として使用され得る自走式立体駐車場に、災害時用トイレシステム100を導入しているため、特に有用である。
<第1実施形態の変形例>
以上、第1実施形態に係る災害時用トイレシステム100について説明した。次に、第1実施形態の変形例について説明する。図5は、第1実施形態の変形例に係る災害時用トイレシステム100Aの正面図である。図5に示すように、第1実施形態に係る第3排出管路23(図1参照)は、省略することが可能である。すなわち、貯留槽30の排出口32aには、第3排出管路23が接続されていなくてもよい。本変形例では、排出口32aを開閉するものは、開閉バルブ40(図1参照)に限定されず、例えば排出口32aを閉鎖可能なキャップ40Aであってもよい。キャップ40Aが本発明の「開閉体」の一例となる。また、本変形例では、排出口32aは、床8a(詳しくは、貯留槽30が設けられている階の床8a)に形成された連通口6bと連通している。この場合、キャップ40Aは、連通口6bに嵌め込まれてもよい。
本変形例では、キャップ40Aが排出口32aを閉鎖することで、トイレ3から排出された汚水を貯留槽30に貯留することができる。なお、貯留槽30内の汚水を外部に排出する場合には、例えば貯留槽30が設けられた建物5の階の下の階に、汚水搬送車を待機させる。この汚水搬送車は、汚水を搬送する自動車であり、汚水を貯留するための容器を備えている。作業者は、汚水搬送車の容器を排出口32aの真下に配置した状態で、キャップ40Aを取り外す。なお、このとき、排出口32aと汚水搬送車の容器とは、ホースなどの部材によって繋がっていてもよい。この場合、排出口32aを開閉するバルブが設けられているとよい。この場合、上記バルブで排出口32aを閉鎖した状態で、キャップ40Aを取り外すと共に、排出口32aと汚水搬送車の容器とをホースで繋ぐ。その後、上記バルブを操作して排出口32aを開放する。このことによって、貯留槽30内の汚水は、排出口32aを通じて汚水搬送車の容器に排出される。
本変形例において、接続管路10、第1排出管路21、第2排出管路22および貯留槽30を洗浄および消毒する際には、洗浄廃液および消毒廃液が排出口32aを通じて汚水搬送車の容器に排出される。なお、本変形例に係る災害時用トイレシステム100Aの清掃が終了した後、排出口32aにキャップ40Aを装着し、汚水搬送車を建物5の外へ移動させる。このことで、トイレ3から排出された汚水などを搬出することができる。
ここでは、建物5は、自走式立体駐車場である。そのため、貯留槽30が設けられた建物5の階の下の階に、汚水搬送車を移動させ易い。よって、貯留槽30内の汚水を外部に排出させ易い。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る災害時用トイレシステム200について説明する。図6は、第2実施形態に係る災害時用トイレシステム200の正面図である。第1実施形態では、図1および図2に示すように、トイレ3の便器4aは、災害時に接続管路10の上流端に接続されるものであり、災害が発生していない通常時には使用されないものであった。しかしながら、本実施形態では、図6に示すように、接続管路10の上流端には、トイレ103の便器104aが常時接続された状態である。すなわち、トイレ103は、通常時であっても使用されるトイレである。
本実施形態では、災害時用トイレシステム200は、接続管路10と、第1排出管路21と、第2排出管路22と、貯留槽30と、開閉バルブ40を備えている。接続管路10、第1排出管路21、第2排出管路22、貯留槽30および開閉バルブ40は、第1実施形態と同じであるため、ここでの説明は適宜省略する。本実施形態では、第2排出管路22の上流端は、後述する切替ます150を介して第1排出管路21の下流端に接続されている。
本実施形態では、災害時用トイレシステム200は、更に、第3排出管路123と、第4排出管路124と、切替ます150と、を備えている。第3排出管路123は、第1排出管路21と下水本管7とを繋ぐ管路である。第3排出管路123の上流端は、切替ます150を介して第1排出管路21の下流端に接続されている。第3排出管路123の下流端は、下水本管7に接続されている。
第4排出管路124は、貯留槽30と、第3排出管路123とを繋ぐ管路である。ここでは、第4排出管路124の上流端は、貯留槽30の排出口32aに接続されている。なお、開閉バルブ40は、第4排出管路124に設けられ、第4排出管路124を開閉することで、排出口32aを間接的に開閉可能に構成されている。第4排出管路124の下流端は、第3排出管路123の途中部分に接続されており、第3排出管路123と連通している。
切替ます150は、本発明の流路切替部材の一例である。ただし、本発明の流路切替部材は、汚水の流路を切り替え可能な継手であってもよい。切替ます150は、第1排出管路21の下流端と第2排出管路22の上流端との間に配置されている。切替ます150は、第1排出管路21の下流端、第2排出管路22の上流端、および、第3排出管路123の上流端に接続されている。切替ます150は、第1排出管路21から第2排出管路22に汚水を流す第1の状態と、第1排出管路21から第3排出管路123に汚水を流す第2の状態とに切替え可能なものである。なお、切替ます150の具体的な構成は特に限定されない。
図7は、切替ます150の平面図である。図8は、切替ます150の正面断面図である。図7および図8に示すように、切替ます150は、ます本体151と、閉鎖体152とを備えている。ます本体151は、内部に空間を有し、上方に開口している。ます本体151には、上方に開口した点検口161と、側方に開口した流入口162と、側方に開口した第1流出口163と、下方に開口した第2流出口164が形成されている。点検口161には、点検筒180(図6参照)が接続されている。図6に示すように、点検筒180の上端は、床8aと略同じ高さである。点検筒180の上端には、蓋体181が配置されている。図8に示すように、流入口162には、第1排出管路21の下流端が接続されている。第1流出口163には、第3排出管路123の上流端が接続されている。第2流出口164には、第2排出管路22の上流端が接続されている。
閉鎖体152は、第2流出口164を閉鎖可能なものである。閉鎖体152は、汚水が流れるインバート171(図7参照)と、第2流出口164と嵌合可能な嵌合部172とを備えている。本実施形態では、閉鎖体152を取り外した状態が、第1の状態である。第1の状態では、第1排出管路21内の汚水は、流入口162を通じてます本体151内に流入する。ます本体151内に流入した汚水は、第2流出口164を通じて第2排出管路22に流出する。
本実施形態では、閉鎖体152の嵌合部172を第2流出口164に嵌め込んだ状態が、第2の状態である。第2の状態では、第1排出管路21内の汚水は、流入口162を通じてます本体151内に流入する。そして、ます本体151内に流入した汚水は、インバート171を通り、第1流出口163から第3排出管路123へ流出する。
次に、本実施形態に係る災害時用トイレシステム200の利用方法について説明する。図6に示すように、災害が発生していない通常時、切替ます150によって、第1排出管路21から第3排出管路123に汚水を流す第2の状態となっている。そのため、トイレ103から排出された汚水は、第1排出管路21から第3排出管路123に向かって排出される。そして、第3排出管路123に排出された汚水は、下水本管7に排出される。
災害時に建物5が避難場所として使用される場合、作業者は、切替ます150を操作することで、第2の状態から第1の状態に切り替える。このことで、第1排出管路21から第2排出管路22に汚水を流す状態に切り替えることができる。また、作業者は、開閉バルブ40を操作して、貯留槽30の排出口32aを閉鎖した状態にする。
災害時、トイレ103から流出した排泄物が混在した汚水は、接続管路10を通じて第1排出管路21に排出される。そして、第1排出管路21に排出された汚水は、第2排出管路22に排出される。第2排出管路22に排出された汚水は、流入口31aを通じて貯留槽30内に排出される。本実施形態では、災害時、貯留槽30の排出口32aは閉鎖されている状態である。そのため、貯留槽30内に排出された汚水は、貯留槽30に留まった状態となる。そのため、仮に下水本管7が破損した場合であっても、汚水が外部に漏れることなくトイレ103を使用することができる。
なお、建物5における避難場所としての使用が終了したとき、作業者は、災害時用トイレシステム200の清掃を行う。ここでは、作業者は、開閉バルブ40を操作して、貯留槽30の排出口32aを開放する。このことで、貯留槽30内の汚水は、汚水自体の自重によって自然流下することで、排出口32aから第4排出管路124に排出される。第4排出管路124に排出された汚水は、第3排出管路123を通じて下水本管7に排出される。続いて、作業者は、接続管路10、第1~4排出管路21、22、123、124、貯留槽30および切替ます150を洗浄および消毒するために、内部に洗浄液および消毒液を流す。このとき、洗浄廃液および消毒廃液は、貯留槽30の排出口32aを通じて自然流下で下水本管7に排出される。以上のようにして、災害時用トイレシステム200の清掃を行うことができる。
このように、本実施形態では、災害時であっても、災害が発生していない通常時であっても、接続管路10の上流端にトイレ103の便器104aが接続されている。そのため、例えば通常時、切替ます150の状態を第2の状態にすることで、トイレ103の便器104aから排出された汚水を、第1排出管路21および第3排出管路123を通じて下水本管7に排出することができる。一方、例えば災害時、切替ます150の状態を第1の状態にすることで、便器104aから排出された汚水を、第1排出管路21および第2排出管路22を通じて貯留槽30に排出することができる。よって、災害時、下水本管7が破損した場合であっても、トイレ103を使用することができる。
本実施形態では、第4排出管路124の上流端は貯留槽30の排出口32aに接続され、第4排出管路124の下流端は第3排出管路123に接続されている。貯留槽30内の汚水を排出する際、開閉バルブ40によって排出口32aを開放する。その結果、貯留槽30内の汚水を、第4排出管路124および第3排出管路123を通じて下水本管7に排出することができる。
<他の実施形態>
次に、貯留槽が設けられる位置、および、貯留槽の形状について説明する。上記各実施形態では、上述のように、貯留槽30は、地面GLよりも高い位置(例えば、建物5の2階以上の階)に設けられている。貯留槽30は、地面GLよりも高い位置であればどの位置に配置されてもよいが、通常時には、建物5は駐車場として使用され、かつ、貯留槽30は使用されないという観点から、貯留槽30は、建物5のいわゆるデッドスペースに配置されているとよい。ここで、デッドスペースとは、自動車が走行しないスペースであって、自動車が駐車されないスペースである。デッドスペースは、駐車している自動車がドアを開けたときにドアが位置するスペースを除いたスペースであるとよい。また、デッドスペースは、通常時、運転者などの利用者の通行の妨げにならないようなスペースであってもよい。貯留槽が設けられる位置の一例として、以下の位置が挙げられる。図9~図16は、貯留槽が設けられる位置を示す図である。
例えば図9に示すように、建物5は、自動車が走行するスロープ8bを備えている。スロープ8bは、所定の階と所定の階の1つ上の階とを繋ぐものであり、スロープ8bの下方には空間が形成されていることがあり得る。貯留槽30は、スロープ8bの下方に位置する床8aに配置されていてもよい。
例えば図10に示すように、建物5の各階には、複数の駐車スペース108a、108bが設けられている。複数の駐車スペース108aおよび複数の駐車スペース108bは、それぞれ自動車の走行方向Dに沿って並ぶように配置されている。駐車スペース108a、108bには、車止め108cが設けられていてもよい。駐車スペース108aと駐車スペース108bとの間には、非駐車スペース109が設けられている。非駐車スペース109は、走行方向Dに沿って延びている。ここでは、駐車スペース108bは、非駐車スペース109における駐車スペース108aが隣接している位置とは反対側の位置において、非駐車スペース109と隣接している。この非駐車スペース109は、駐車スペース108a、108bと隣接しており、自動車が走行する走行スペースとは異なるスペースであり、自動車を駐車することができないスペースである。貯留槽30bは、非駐車スペース109に配置されていてもよい。この場合の貯留槽30bの形状は、例えば走行方向Dに沿って延びた板状である。貯留槽30bの高さは、駐車スペース108a、108bに駐車している自動車のバックドアを開けたとき、当該バックドアと接触しない程度の高さであるとよい。
なお、非駐車スペース109は、駐車スペース108aと駐車スペース108aの間、または、駐車スペース108bと駐車スペース108aの間に配置されていてもよい。この場合、非駐車スペース109は、平面視において走行方向Dと直交する方向に延びたスペースとなる。
例えば図11に示すように、建物5は、上下方向に延びた支柱8cを備えている。この支柱8cは、所定の階の床8aから天井8eに向かって延びている。貯留槽30cは、支柱8cの少なくとも一部を覆う形状を有し、支柱8cの少なくとも一部を覆うように配置されていてもよい。貯留槽30cの少なくとも一部が支柱8cに接触するように配置されている。図11の一例では、支柱8cの横断面の形状は、矩形状である。この場合の貯留槽30cは、縦長の形状であって、貯留槽30cの横断面は、例えばL字状である。ただし、貯留槽30cの横断面の形状は、特に限定されず、例えばコの字状であってもよいし、内周面が矩形状のドーナツ形状であってもよい。また、貯留槽30cの上下方向の長さは、支柱8cの上下方向の長さと同じであってもよいし、支柱8cの上下方向の長さよりも短くてもよい。
例えば図12に示すように、建物5は、側壁8dを備えている。側壁8dは、上下方向に延びており、自走式立体駐車場では、側壁8dと側壁8dが設けられた階の天井8eとの間には、外部と連通する空間が形成され得る。貯留槽30dは、側壁8dに固定されていてもよい。この場合、貯留槽30dは、側壁8dの内側(言い換えると、駐車場側)に設けられていてもよいし、側壁8dの外側(言い換えると、駐車場の反対側)に設けられていてもよい。この場合、貯留槽30dは、側壁8dに沿って延びた形状を有しており、例えば所定の厚みを有する板状のものであってもよい。
例えば図13に示すように、建物5は、天井8eを備えている。貯留槽30eは、天井8eに固定されていてもよい。例えば貯留槽30eは、天井8eに吊り下げ支持されていてもよい。この場合、貯留槽30eと床8aとの間には、空間が形成されている。
例えば図14に示すように、建物5は、フェンス8fを備えている。フェンス8fには、側壁8dとは異なり、隙間が形成されている。そのため、フェンス8f越しに反対側の景色を見ることができる。貯留槽30fは、フェンス8fに固定されていてもよい。
例えば図15に示すように、建物5は、駐車場塔9aと、エレベータ塔9bとを備えている。駐車場塔9aは、自動車が走行可能な塔であり、かつ、自動車が駐車される塔である。エレベータ塔9bとは、エレベータ8gが設置された塔であり、自動車の運転者や同乗者などの利用者が移動する際に使用される塔である。エレベータ塔9bには、自動車を乗り入れることができない。貯留槽30gは、エレベータ塔9bに配置されていてもよい。例えば、貯留槽30gは、エレベータ塔9bの側壁に配置されていてもよいし、エレベータ塔9bの天井に吊り下げ支持されていてもよい。
以上のように、スロープ8b(図9参照)の下方の位置、非駐車スペース109(図10参照)、支柱8cの周辺(図11参照)、側壁8dの周辺(図12参照)、天井8eの周辺(図13参照)および、フェンス8fの周辺(図14参照)は、それぞれ通常時に使用されないデッドスペースとなり易い。このようなデッドスペースに貯留槽を配置することで、貯留槽が邪魔になり難い。デッドスペースを有効活用することができる。
また、図15に示すように、エレベータ塔9bは、運転者や同乗者などの利用者が移動する際に使用するものであり、自動車が駐車される駐車場塔9aに比べて、頻繁に使用され難い。よって、貯留槽30gを頻繁に使用され難いエレベータ塔9bに配置することで、貯留槽30gが邪魔になり難い。
なお、各実施形態に係る貯留槽は、汚水が貯留されていない状態において、比較的に軽いものである。そのため、貯留槽は、交換することが可能である。そこで、貯留槽は、建物5のデッドスペースであり、かつ、貯留槽を交換し易い位置に配置されていてもよい。例えば、建物5のデッドスペースであって、かつ、作業者が床8aに立った状態で、手に届く位置に貯留槽が配置されていてもよい。
また、図16に示すように、貯留槽30hは、建物5と一体的に形成されていてもよい。例えば、貯留槽30hは、建物5を構成する側壁8dの内部に形成されていてもよい。この場合、例えば側壁8dの内部には、空間が形成されており、その側壁8d内の空間が貯留槽30hとなる。この場合、側壁8dによって貯留槽30hが形成され、側壁8dと貯留槽30hとは一体的に形成されている。このことによって、貯留槽30hが建物5に対してずれない。よって、災害時、貯留槽30hが建物5から落下し難い。また、建物5を、貯留槽30hを構成する部位の一部として使用することができるため、材料コストを抑えることができる。また、貯留槽30hを建物5と一体的に形成することで、建物5内において貯留槽30h用のスペースを確保しなくてもよい。
なお、貯留槽30hは、支柱8cの内部に形成されていてもよいし、フェンス8fの内部に形成されていてもよい。また、貯留槽30hは、所定の階の天井8eと当該所定の階の1つの上の階の床8aとの間の空間であってもよい。
上記各実施形態では、貯留槽30には、排出口32aが形成されていた。しかしながら、排出口32aは形成されていなくてもよい。この場合、例えば吸引ポンプを使用して、流入口31aから貯留槽30内の汚水を吸引することで、貯留槽30内の汚水を外部に排出することができる。
上記各実施形態では、建物5に設けられた貯留槽30の数は1つであったが、貯留槽30は複数であってもよい。貯留槽30が複数の場合、それら貯留槽30の内部は、例えば互いに連通しているとよい。