JP7106925B2 - コイル装置 - Google Patents

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Description

本発明は、たとえばリーケージトランスなどとしても好適に用いることができ、放熱性に優れたコイル装置に関する。
たとえばEV用のバッテリー充電のためなどに用いられるトランスとして、たとえば下記の特許文献1が知られている。このように車載などに用いられるトランスには、高電流が印加され、放熱対策が必要となっている。
一般的なトランスでは、コイルの発熱がボビンに伝わり、ボビンから磁性コアに伝わる伝熱経路を確保しているが、ボビンから磁性コアへの伝熱と、磁性コアから外部への放熱に難点があり、コイル部の内部(ボビンの内部)に貯まっている熱を効率的に逃がすことが困難である。コイル装置の放熱が不十分であると、コイル部の過熱により磁気特性が劣化するおそれがある。
そこで、特許文献2に示すように、コアを複数の分割コアで構成し、ポッティング樹脂を用いなくても放熱性に優れたコイル装置が開発されている。しかしながら、コイル装置の放熱性をさらに高めることが要求され、特許文献2に示すコイル装置にポッティング樹脂を用い、さらに放熱性を高めることが検討されている。
また、特許文献2に示すコイル装置において、リーケージ特性を調整するために、上下の分割コアの中脚部同士の突き合わせ部分に、ギャップ隙間を形成したい場合がある。その場合においては、中脚部の突出長さが外脚部の突出長さに比較して短くなるために、上部の分割コアは、中脚部で沈み込み、分割コアが傾斜してボビンに取り付けられる可能性がある。その場合には、所望のギャップ隙間が得られないおそれがある。
特開2014-36194号公報 特開2016-139699号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、所望のギャップ隙間を確保することが容易であると共に、放熱性に優れたコイル装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
貫通孔を持つボビンと、
前記ボビンに取り付けられるコア組立体と、
前記ボビンの外周に巻回してあるワイヤと、
前記ワイヤが巻回されて前記コア組立体が取り付けられた前記ボビンの外周部を覆うケースと、
前記ケースの内部に収容されて、前記ケースと前記ボビンとの隙間、前記ケースと前記コア組立体との隙間、および前記ボビンと前記コア組立体との隙間に入り込むことが可能な伝熱性樹脂と、を有するコイル装置であって、
前記コア組立体は、分割面で分割してある少なくとも一対の分割コアを有し、
これらの分割コアは、それぞれ、前記ボビンの貫通孔に入り込む中脚部と、前記中脚部に一体化されて前記貫通孔の外側に位置するベース部と、前記ベース部の両側にそれぞれ一体化されて前記ボビンの外側に取り付けられる外脚部とを有し、
前記ベース部からの前記外脚部の突出長さよりも、前記ベース部からの前記中脚部の突出長さが短く、
前記中脚部の突出先端に形成されるギャップ用隙間が、前記伝熱性樹脂で充填してあることを特徴とする。
本発明のコイル装置では、特許文献2に示すコイル装置とは異なり、分割コアは、それぞれ、中脚部と、一対の外脚部とを有する。すなわち、本発明のコイル装置と特許文献2に示すコイル装置とは分割する方向が異なる。
そのため、本発明のコイル装置では、ギャップ用隙間を形成するために中脚部の突出長さを外脚部の突出長さよりも短く成形しても、分割コア単独で自立することが容易であり、分割コアのボビンへの取り付けが容易である。また、特許文献2に示すコイル装置とは異なり、分割コアがボビンに傾いて配置することがなくなり、一定なギャップ用隙間を形成することができる。
また、ギャップ用隙間には、分割コア同士の隙間を通して、容易に伝熱性樹脂が流れ込み、ギャップ用隙間は伝熱性樹脂で充填される。ギャップ用隙間に充填してある伝熱性樹脂は、最も熱が籠もり易い中脚部の先端部からコア組立体の外部に熱を逃がし、放熱性が向上する。
好ましくは、前記ケースの底部が金属で構成してあり、前記ケースの底部に、前記コア組立体の底部が接触している。このように構成することで、コア組立体の内部の熱は、ケースの底部を通して直接に、あるいは、コア組立体が接触している伝熱性樹脂と、それが接触しているケース底部の金属を通して、コイル装置の下方に伝達され、そこで放熱される。
好ましくは、一対の前記分割コアは、それぞれの分割面が相互に所定の分割隙間で向き合って配置してあり、前記分割隙間を通して前記伝熱性樹脂が前記ギャップ用隙間に入り込み、前記分割用隙間と前記ギャップ用隙間とが、前記伝熱性樹脂で充填してある。所定距離の分割隙間を強制的に作るために、ボビンの貫通孔の内周面には、分離用凸部が形成してあっても良い。所定距離の分割隙間を強制的に作ることで、分割用隙間には、伝熱性樹脂が入り込み易くなる。
好ましくは、前記伝熱性樹脂で覆われていない前記コア組立体の上面に接触する上板部と、前記上板部に一体成形されて前記ケースの内部に入り込み前記伝熱性樹脂に接触する側板部とを有する放熱カバーをさらに有する。放熱カバーを設けることで、コア組立体の上部に発生する熱を、伝熱性樹脂を介して、コイル装置の下部に逃がし、放熱性を向上させることができる。
好ましくは、前記コア組立体は、上部コアと、下部コアとから成り、
前記上部コアおよび前記下部コアの少なくとも一方が、一対の前記分割コアを有する。特許文献2に示すコイル装置では、特に上部コアが傾きやすいので、本発明では、特に、上部コアを、本発明に係る分割方向で分割することで、分割コアを傾かせずにボビンに取り付けることが容易になり、所定のギャップ用隙間を容易に形成することができる。
なお、コア組立体における分割の個数は、特に限定されず、上部コアが特定方向に沿って2分割以上に分割されていても良いし、下部コアが特定方向に沿って2分割以上に分割
されていても良い。なお、特定方向に沿った分割とは、コア組立体の一方の外脚部から中脚部を通り他方の外脚部に向かう方向に沿う分割であり、これらの方向を横断する分割ではない。
また本発明では、上部コアまたは下部コアのいずれか一方を板状コアとしても良く、その板状コアは分割されていても良いし、分割されていなくとも良い。
好ましくは、上部コアおよび下部コアの双方が、2つ以上に分割されている。分割の数が多いほど、コアロスは低減され、伝熱性樹脂が入り込む分割隙間が多くなる傾向にある。
前記ボビンの第1軸方向に沿う長さが、前記第1軸と交差する第2軸方向に沿う長さよりも長くてもよく、前記ボビンの前記第1軸方向の両端部の底部には、ボビン脚部が設置してあってもよい。好ましくは、前記分割面は、前記第2軸に沿って形成してある。ボビン脚部を形成し、ボビン脚部をケースの底面に接触または近づけることで、ボビンからケース底部に向かう熱の伝達経路も確保することが可能になり、放熱性が向上する。ボビン脚部には、ボビンを構成する樹脂よりも放熱性に優れた金属などの部材を配置しても良い。
特許文献2では、一対のボビン脚部を結ぶ方向に沿って、分割コアの分割面が形成してあることから、ボビン脚部と、そのボビン脚部に一体化してあるボビン鍔部とが邪魔になり、伝熱性樹脂が分割面相互間の隙間に流れ込み難くなっている。分割コアの分割面を、一対のボビン脚部を結ぶ方向に平行な第1軸と交差する第2軸に沿って形成することで、ボビン脚部と、そのボビン脚部に一体化してあるボビン鍔部とが邪魔になることが無くなる。
そのため、伝熱性樹脂は、分割コアの分割面の相互間の隙間を通して、分割コアの中脚部のギャップ用隙間に入り込み易くなる。また、ボビンは、第2軸方向に短いので、ボビンの外側から分割コアの中脚部に至るまでの距離も短くなり、その点からも、分割コアの中脚部のギャップ用隙間に伝熱性樹脂は入り込み易くなる。
好ましくは、前記ワイヤは、前記ボビンの外周にα巻きされている。このような構成とすることにより、トランスの低背化を図ることができるとともに、トランスのリーケージ特性の調整を容易にすることができる。
図1は本発明の一実施形態に係るコイル装置としてのトランスの一部分解斜視図である。 図2は図1に示すトランスの全体的な分解斜視図である。 図3は図1に示すIII-III線に沿うトランスの断面図である。 図4は図1に示すIV-IV線に沿うトランスの断面図である。 図5Aは図4に示すVA-VA線に沿うトランスの断面斜視図である。 図5Bは図4に示すVB-VB線に沿うトランスの断面斜視図である。 図5Cは図4に示すVC-VC線に沿うトランスの断面斜視図である。 図5Dは通常巻きしてあるワイヤの斜視図である。 図5Eはα巻してあるワイヤの斜視図である。 図6Aは本発明の他の実施形態に係るトランスに用いるコア組立体の分解斜視図である。 図6Bは本発明のさらに他の実施形態に係るトランスに用いるコア組立体の分解斜視図である。 図6Cは本発明のさらに他の実施形態に係るトランスに用いるコア組立体の分解斜視図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
図1および図2に示すように、本実施形態に係るコイル装置としてのトランス10は、たとえばリーケージトランスなどとして用いられ、たとえば車載用の電源回路などに用いられる。
このトランス10は、ボビン20と、コア組立体40と、放熱カバー70と、これらのZ軸方向の下方部分を囲むケース100とを有し、筐体60の上表面に取り付けられる。筺体60は、たとえばトランス10が取り付けられる板状部材であり、自動車部品の一部であっても良く、その背面(トランス10の取付面とは反対側)には、冷却水が流れていても良い。
図2に示すように、ボビン20は、ボビン本体24と、ボビン本体24のX軸方向の両端上部に一体に成形してある端子台部22,23とを有する。端子台部22および23には、それぞれY軸方向の両端に、リード取付部22a,22bおよび23a,23bが形成してあり、その部分に、後述する第1ワイヤ37のリード部37aおよび第2ワイヤ38のリード部38aが取り付けられる。これらのリード部37a,38aが取り付けられた端子台22および23の上部には、端子カバー25a,25bが取り付けられる。
ボビン本体24のY軸方向の両側には、一対の仕切りカバー50が取り付けられる。仕切りカバー50のカバー本体52は、ボビン20における端子台22および23の間に位置するボビン本体24の外周を覆うような形状を有する。カバー本体52のZ軸方向の両端には、カバー本体52からボビン本体24に向けて略垂直方向に折り曲げられてる係止片54が一体成形してある。カバー本体52のZ軸方向の両側に形成してある一対の係止片54は、ボビン本体24のZ軸方向の上下面を挟み込むように取り付けられる。
また、カバー本体52のX軸方向の両端外面には、それぞれZ軸方向に延びる外脚ガイド片56が一体に成形してある。一対の外脚ガイド片56の間に位置するカバー本体52の外面には、後述するコア組立体40の外脚部48a,48bの内面が接触し、外脚部48a,48bのX軸方向の移動が、一対の外脚ガイド片56により制限されるようになっている。これらの仕切りカバー50は、ボビン20と同様なプラスチックなどの絶縁部材で構成してある。
本実施形態では、コア組立体40は、上部コア40aと、下部コア40bとを有する。これらのコア40a,40bは、それぞれ同じ形状を持つ2つの分割コア42a,42aおよび42b,42bに、それぞれ分割面43a,43bで分離可能である。本実施形態では、各分割コア42a,42aおよび42b,42bは、全て同じ形状であり、Z-Y断面で断面E字形状を有し、E型コアの一種である。
Z軸方向の上部に配置される一対の分割コア42a,42aが組み合わされることにより、Z-Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。Z軸方向の下部に配置される他の一対の分割コア42b,42bも、組み合わされることにより、Z-Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。
Z軸方向の上側に配置される各分割コア42aは、Y軸方向に延びるベース部44aと、ベース部44aのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の外脚部48aと、これらの間に位置するベース部44aの中間部からZ軸方向に突出している中脚部46aとを有する。Z軸方向の下側に配置される各分割コア42bは、Y軸方向に延びるベース部44bと、ベース部44bのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の外脚部48bと、これらの間に位置するベース部44bの中間部からZ軸方向に突出している中脚部46bとを有する。
一対の中脚部46aは、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の上方から挿入されるようになっている。同様に、一対の中脚部46bは、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の下方から挿入され、貫通孔26の内部において、それら中脚部46aの先端に所定のギャップ用隙間47(図3および図4参照)で向き合うように構成してある。分割コア42aのベース部44aと、分割コア42bのベース部44bとは、貫通孔26には入り込まず、ボビン本体24のZ軸方向の外部に位置する。
図3に示すように、分割コア42aのベース部44aからの外脚部48aのZ軸方向の突出長さよりも、ベース部44aからの中脚部46aのZ軸方向の突出長さを短くすることで、ギャップ用隙間47は形成される。あるいは、分割コア42bのベース部44bからの外脚部48bのZ軸方向の突出長さよりも、ベース部44bからの中脚部46bのZ軸方向の突出長さを短くすることで、ギャップ用隙間47は形成される。
外脚部48a,48bのZ軸方向の先端同士は、ボビン20の外側で、Z軸方向に突き合わされる。これらの外脚部48a,48bのZ軸方向の突出長さよりも短く成形してある中脚部46a,46bのZ軸方向先端相互間には、ギャップ用隙間47が形成されることになる。Z軸方向のギャップ用隙間47は、トランス10のリーケージ特性などに応じて決定される。
図2に示すように、貫通孔26の内部には、貫通孔26をY軸方向に沿って区切るように、Z軸方向に沿って、一対の分離用凸部27が形成してあることが好ましい。分離用凸部27は、一対の中脚部42a,42aの分割面43aの相互間に介在されると共に、中脚部42b,42bの分割面43bの相互間に介在される。その結果、これらの中脚部42a,42aまたは中脚部42b,42bは、分割面43a(43b)の相互が、貫通孔26の内部において、所定の隙間で向き合い、接触しないように配置される。
一対の分離用凸部27により形成される分割面43a,43a(43b,43b)相互間の所定の隙間(X軸方向の分割隙間)は、分離用凸部27のX軸方向の厚みにより調整することができる。隙間を所定範囲とすることで、コアのインダクタンスを必要以上に低下させることなく、後述するポッティング樹脂などの伝熱性樹脂90が入り込み易くなり、放熱性が向上する。
また、貫通孔26の内周面における一対の分離用凸部27のY軸方向の突出長さは、貫通孔26の内部に形成される分割面43a,43a(43b,43b)相互間の所定の隙間(X軸方向の分割隙間)が塞がれないように決定され、貫通孔26のY軸方向の内径の1/10~1/3が好ましい。
中脚部42a,42aまたは中脚部42b,42bは、それぞれ組み合わされた状態で、貫通孔26の内周面形状に一致するように、X軸方向に長い楕円柱形状を有しているが、その形状は、特に限定されず、貫通孔26の形状に合わせて変化させても良い。また、外脚部48a,48bは、ボビン本体24の外周面形状に合わせた内側凹曲面形状を有し、その外面は、X-Z平面に平行な平面を有している。本実施形態では、各分割コア42a,42bの材質は、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸は、後述する第1ワイヤ37および第2ワイヤ38の巻軸と一致し、トランス10の高さ(厚み)に対応する。本実施形態では、トランス10のZ軸方向の下方が、トランスの設置面(筐体60の表面)となる。また、Y軸は、一対の分割コア42a,42aの分割面43aまたは一対の分割コア42b,42bの分割面43bの長手方向に一致する。さらに、X軸は、貫通孔26の長手方向に一致するようになっている。
図3に示すように、本実施形態のトランス10におけるボビン20の巻回筒部28のZ軸方向の両端には、端部隔壁鍔31および32が半径方向の外方に延びるように、X-Y平面に略平行に一体成形してある。端部隔壁鍔31および32のZ軸方向の間に位置する巻回筒部28の外周面には、巻回隔壁鍔33~35が径方向外方に突出するように、Z軸方向に所定間隔で形成してある。
これらの端部隔壁鍔31および32の間に形成された巻回隔壁鍔33~35により、これらの隔壁鍔の間には、Z軸方向の上から順に、巻回区画S1~S4が形成される。なお、巻回隔壁鍔33~34および巻回区画S1~S4の数は、特に限定されない。
本実施形態では、巻回区画S1,S2に、第1ワイヤ37が連続して巻回してあり、区画S3~S4に、第2ワイヤ38が連続して巻回してある。本実施形態では、第1ワイヤ37が一次コイルを構成し、第2ワイヤ38が二次コイルを構成するが、逆であっても良い。
また、本実施形態では、図5Bに示すように、巻回隔壁鍔33には、隣接する各区画S1およびS2相互を連絡する少なくとも1の連絡溝33aが形成してある。図5Bに示すように、連絡溝33aを通して、区画S1に巻回してある第1ワイヤ37が区画S2に通され、この区画S2でボビン20の巻回筒部28の外周に巻回可能になっている。
また、図5Cに示すように、巻回隔壁鍔35には、隣接する各区画S3およびS4相互を連絡する少なくとも1の連絡溝35aが形成してある。この連絡溝35aを通して、区画S3に巻回してある第2ワイヤ38が区画S4に通され、この区画S4でボビン20の巻回筒部28の外周に巻回可能になっている。
なお、巻回鍔部34に関しては、第1ワイヤ37と第2ワイヤ38とを絶縁するために、これらと同様な連絡溝は形成する必要がない。本実施形態では、第1ワイヤ37のための連絡溝32aと、第2ワイヤ38のための連絡溝35aとは、X軸方向の相互に反対側に形成してあることが好ましい。
Z軸方向の下方に配置される第2ワイヤ38のリード部38aは、第1ワイヤ37が巻回してあるボビン20の外側を通り、図1に示す第2端子台23に向かう必要がある。本実施形態では、図5A~図5Cに示すように、第2ワイヤ38のリード部38aと第1ワイヤ37との絶縁性を向上させるために、ボビン20のX軸方向の端部で、図1に示す第2端子台23のZ軸方向の下方に、絶縁カバー39が取り付けられる。絶縁カバー39は、たとえばボビン20と同様な樹脂で構成してあり、その外側壁面が第2ワイヤ38のリード部38aをZ軸方向の上側に案内可能になっている。
図3に示すように、第1ワイヤ37が巻回される各区画S1,S2におけるZ軸に沿っての区画幅は、Z軸方向に1本のみの第1ワイヤ37が入り込める幅に設定してある。ただし、区画幅を、二本以上の第1ワイヤ37が入り込める幅に設定してもよい。また、本実施形態では、区画幅は、全て同じであることが好ましいが、多少異なっていても良い。
また、第2ワイヤ38が巻回される各区画S3~S4におけるZ軸に沿っての区画幅は、Z軸方向に1本のみの第2ワイヤ38が入り込める幅に設定してあり、各区画毎に、ワイヤ巻回部分相互を分離可能になっている。本実施形態では、各区画S3~S4におけるZ軸に沿っての区画幅は、第2ワイヤ38の線径に合わせて、区画幅と同じでも異なっていても良い。
また、隔壁鍔31~35の高さ(巻軸に対して半径方向の長さ)は、1本(1層以上)以上のワイヤ37または38が入り込める高さに設定してあり、本実施形態では、好ましくは2~8層のワイヤが巻回できる高さに設定してある。各隔壁鍔31~35の高さは、全て同じであることが好ましいが、異なっていても良い。本実施形態では、各区画S1~S4に巻回されるワイヤ37または38の巻回方法は、特に限定されず、通常巻でもα巻でも良い。
ただし、トランス10の低背化、あるいはトランス10のリーケージ特性の調整の容易化の観点では、ワイヤ37および/または38の巻回方法は、α巻の方が好ましい。
図5Dに示すように、ワイヤ37または38を通常巻し、巻数が5巻のコイルを1層で構成した場合、コイルの巻軸方向の高さはワイヤ2本分の高さとなる。また、図5Dに示すワイヤ37または38を通常巻し、巻き数が5巻のコイルを2層で構成した場合、コイルの巻軸方向の高さはワイヤ3本分の高さとなる。
一方、図5Eに示すように、ワイヤ37または38をα巻し、巻数が5巻のコイルを2層で構成した場合、コイルの巻軸方向の高さはワイヤ2本分の高さとなる。
すなわち、巻層数が2層のコイルを構成する場合、ワイヤ37または38をα巻することにより、ワイヤ37または38を通常巻した場合に比べて、コイルの巻軸方向の高さを、ワイヤ1本分だけ低くすることができる。
より詳細には、通常巻きの場合、ワイヤ37または38のリード部37bまたは38bが、コイルの中心部から半径方向外側に引き出される。そのため、通常巻きの場合、コイルの巻軸方向の高さが、α巻の場合に比べて、リード部37bまたは38bの分だけ(ワイヤ1本分だけ)高くなるのである。
このように、各区画S1~S4に、ワイヤ37または38をα巻きにより巻回することにより、コイルの巻軸方向の高さが大きくなることを防止し、トランス10の低背化を図ることができる。
また、各区画S1~S4に、ワイヤ37または38をα巻きにより巻回した場合、図5Eに示すように、ワイヤ37または38のリード部37a,37bまたは38a,38bが、コイルの最外周部から引き出される。そのため、リード部37a,37bまたは38a,38bの位置がばらつくことを防止することが可能である。したがって、リード部37a,37bまたは38a,38bの位置のばらつきに起因して、トランス10のリーケージ特性がばらつくことを防止することができる。
なお、トランス10のリーケージ特性の調整は、ボビン20の厚み、より詳細には第1ワイヤ37と第2ワイヤ38との間にある巻回隔壁鍔34の厚みを調整し、各ワイヤ37,38で構成される各コイルの結合を調整することにより行うことができる。すなわち、本実施形態では、巻回隔壁鍔34の厚みを調整するだけで、トランス10のリーケージ特性を容易に調整することができる。
ワイヤ37および38は、単線で構成されても良く、あるいは撚り線で構成されても良く、絶縁被覆導線で構成されることが好ましい。ワイヤ37および38の外径は、特に限定されない。第2ワイヤ38は、第1ワイヤ37と同じであっても良いが、異なっていても良い。
図4に示すように、Z軸方向の最下部に位置する端部隔壁鍔32のX軸方向の両端には、それぞれボビン脚部32aが一体に成形してある。各ボビン脚部32aは、端部隔壁鍔32のX軸方向の両端から、Z軸方向の下方に突出して形成してあり、脚部32aの底面には、凹部が形成してあっても良く、その凹部内に、熱伝導性ブロック110が装着してあっても良い。熱伝導性ブロックは、たとえば放熱カバー70と同様な金属で構成してある。
図2に示すボビン20は、たとえばPPS、PET、PBT、LCP、ナイロンなどのプラスチックで構成してあるが、その他の絶縁部材で構成されても良い。ただし、本実施形態では、ボビン20としては、たとえば1W/m・K以上に熱伝導率が高いプラスチックで構成することが好ましく、たとえばPPS、ナイロンなどで構成してある。
図1および図2に示すように、組立後のコア組立体40のZ軸方向の上面およびY軸方向の側面を覆うように、一対の放熱カバー70が配置してある。放熱カバー70は、それぞれ、Z-Y断面において、L字形状となっており、上面カバー部72と、側面カバー部74とを有する。
図3に示すように、放熱カバー70の上面カバー部72は、分割コア42aの上面を覆うようになっている。上面カバー部72のY軸方向先端部は、相互に向き合っているが、接触しないように設計してあることが好ましい。側面カバー74は、コア組立体40のY軸方向対向側面に密着してあることが好ましい。もちろん、上面カバー72も、コア組立体40の上面に密着してあることが好ましい。放熱カバー70を、コア組立体に密着させるために、接着剤を用いても良い。
放熱カバー70は、たとえば単一の板材を折曲加工またはプレス加工して一体に形成することができる。あるいは、複数の板材をレーザ溶接などで接合して形成しても良い。この放熱カバー70は、コア組立体40およびボビン20よりも熱伝達特性が良い材料で構成してあり、たとえばアルミニウム、銅、ステンレス、黄銅、鉄などの金属板により構成される。金属板の厚みは、特に限定されないが、たとえば0.2~1.5mmである。
図3および図4に示すように、コア組立体40の底面は、ケース100の底板80に接触することが好ましい。底板80は、ケース100の底部に取り付けられ、ケース100の内部に、ポッティング樹脂などの伝熱性樹脂90を充填可能になっている。底板80は、放熱カバー70と同様な金属で構成してあることが好ましい。また、ケース100は、ボビン20と同様な樹脂で構成しても良いが、必ずしも同じ樹脂である必要はない。さらに、ケース100は金属で構成してもよい。
ポッティング樹脂としては、注入後も軟質なシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などで構成され、ポッティング樹脂の縦弾性率は、好ましくは0.1~100MPaである。ポッティング樹脂から成る伝熱性樹脂90は、図3および図4に示すように、ケース100とボビン20との隙間、ケース100とコア組立体40との隙間、およびボビン20とコア組立体40との隙間に入り込む。また、ポッティング樹脂から成る伝熱性樹脂90は、ワイヤ37,38とボビン20との隙間にも入り込む。
本実施形態のトランス10では、図2に示すように、分割コア42a,42aは、それぞれ、中脚部46aと、一対の外脚部48aとを有する。また、分割コア42b,42bは、それぞれ、中脚部46bと、一対の外脚部48bとを有する。
本実施形態のトランス10では、図3に示すギャップ用隙間47を形成するために中脚部46aのZ軸方向の突出長さを外脚部48aのZ軸方向の突出長さよりも短く成形してある。それにもかかわらず、本実施形態のトランス10では、分割コア42a単独で自立することが容易であり、分割コア42aのボビン20への取り付けが容易である。また、分割コア42aがボビン20に傾いて配置することがなくなり、一定なギャップ用隙間47を容易に形成することができる。
また、ギャップ用隙間47には、図4に示すように、分割コア42a,42aの分割面43a,43a同士の分割隙間と、分割コア42b,42bの分割面43b,43b同士の分割隙間とを通して、容易に伝熱性樹脂90が流れ込み、ギャップ用隙間47は伝熱性樹脂で充填される。そのギャップ用隙間47に充填される伝熱性樹脂90の空隙率は、5体積%以下が好ましい。ギャップ用隙間47に充填してある伝熱性樹脂90は、最も熱が籠もり易い中脚部46a,46bの先端部からコア組立体40の外部に熱を逃がし、放熱性が向上する。
また、ケース100の底板80が金属で構成してあり、ケース100の底板80に、コア組立体40の底面が接触していることから、コア組立体40の内部の熱は、ケース100の底板80を通して直接に筐体60に伝熱され、そこで放熱される。また、コア組立体40の内部の熱は、コア組立体40が接触している伝熱性樹脂90と、それが接触しているケース100の底板80を通して、筐体60に伝達され、そこで放熱される。そのため、トランス10の大電流化に対応が可能であり、放熱性が向上し、コイル部の過熱による磁気特性の劣化を抑制することができる。
本実施形態では、一対の分割コア42a,42aは、それぞれの分割面43aが相互に所定の分割隙間で向き合って配置してあり、分割隙間を通して伝熱性樹脂90がギャップ用隙間47に入り込み、分割用隙間とギャップ用隙間47とが、伝熱性樹脂90で充填してある。
本実施形態では、図3に示すように、伝熱性樹脂90で覆われていないコア組立体40の上面に接触する上板部72と、上板部72に一体成形されてケース100の内部に入り込み伝熱性樹脂90に接触する側板部74とを有する放熱カバー70をさらに有する。放熱カバー70を設けることで、コア組立体40の上部に発生する熱を、伝熱性樹脂90を介して、トランス10の下部に逃がし、放熱性を向上させることができる。
また、本実施形態では、ボビン20のX軸(第1軸)方向に沿う長さが、X軸と交差するY軸(第2軸)方向に沿う長さよりも長く、ボビン20のX軸方向の両端部の底部には、ボビン脚部32aが設置してある。そして、コア組立体40の分割面43a,43aおよび43b,43bは、Z軸(第3軸)およびY軸に沿って形成してある。ボビン脚部32aを形成し、ボビン脚部32aをケース100の底板80に接触または近づけることで、ボビン20からケース100の底板80に向かう熱の伝達経路も確保することが可能になり、放熱性がさらに向上する。ボビン脚部32aには、ボビンを構成する樹脂よりも放熱性に優れた金属などのブロック110を配置しても良い。
本実施形態の分割コア42a,42aおよび42b,42bの分割面43a,43aおよび43b,43bを、一対のボビン脚部32aを結ぶ方向に平行なX軸と交差するY軸に沿って形成することで、ボビン脚部32aと、そのボビン脚部32aに一体化してあるボビン鍔部32とが邪魔になることが無くなる。
そのため、伝熱性樹脂90は、分割コア42a,42aおよび42b,42bの分割面43a,43aおよび43b,43bの相互間の隙間を通して、ギャップ用隙間47に入り込み易くなる。また、図2に示すように、ボビン20は、Y軸方向に短いので、ボビン20の外側から分割コア42a,42aの中脚部46aに至るまでの距離も短い。その点からも、分割面43a,43aおよび43b,43bの相互間隙間を通して、ギャップ用隙間47に伝熱性樹脂90は入り込み易くなる。
さらに本実施形態では、ボビン20のコア脚用貫通孔26には、分割された分割コア42a,42bの分割脚部46a,46bが挿入される。本発明者等の実験によれば、このような構成にすることで、コアが大型になったとしても、従来のE型コアを用いる場合に比較して、中脚とベースとの交差部に発生する局所的な応力を、分散させることができる。そのため、本実施形態に係るトランス10では、コアに熱応力が発生してもクラックなどが発生することを効果的に抑制することができる。
また、分割コア42a,42bが組み合わされて構成されるE型コアにおける中脚部46a,46bおよびベース部44a,44bは、分割コア42a,42bの分割面43a,43bで分離されており、分割面43a,43bの相互間には所定の隙間を形成することが可能であり、放熱性も向上する。さらに、E型コアを、それぞれが単純な形状を持つ一対の分割コア42a,42bを組み合わせて構成することとなり、コアの製造も容易となり、製造コストの低減も図れる。しかも分割型のE型コアは、全体としては、E型コアと同様な磁力線を有することになるため、コアの磁気特性は、一般的なE型コアと同等である。
また、本実施形態では、第1ワイヤ37および第2ワイヤ38が、各区画S1~S4にα巻きされている。そのため、トランス10の低背化を図ることができるとともに、トランス10のリーケージ特性の調整を容易にすることができる。
第2実施形態
本実施形態のコイル装置としてのトランスは、以下に示す以外は、図1~図5Eに示す第1実施形態のトランス10と同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。以下の説明では、主として、第1実施形態と異なる部分について説明する。
本実施形態では、図6Aに示すように、コア組立体140の構成が、図2に示す第1実施形態のコア組立体40の構成と異なり、それに合わせて、ボビンの形状も異なる。本実施形態においては、図6Aに示すコア組立体140の外形形状に合わせて、図2に示す第1実施形態のボビン20の端子台部22,23の形状が変化するのみである。
図6Aに示すように、本実施形態のコア組立体140は、上部コア140aと、下部コア140bとを有する。これらのコア140a,140bは、それぞれ同じ形状を持つ2つの分割コア142a,142aおよび142b,142bに、それぞれ分割面143a,143bで分離可能である。本実施形態では、各分割コア142a,142aおよび142b,142bは、全て同じ形状であり、Z-Y断面で断面E字形状を有し、E型コアの一種である。
Z軸方向の上部に配置される一対の分割コア142a,142aが組み合わされることにより、Z-Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。Z軸方向の下部に配置される他の一対の分割コア142b,142bも、組み合わされることにより、Z-Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。
Z軸方向の上側に配置される各分割コア142aは、Y軸方向に延びるベース部144aと、ベース部144aのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の外脚部148aと、これらの間に位置するベース部144aの中間部からZ軸方向に突出している中脚部146aとを有する。Z軸方向の下側に配置される各分割コア142bは、Y軸方向に延びるベース部144bと、ベース部144bのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の外脚部148bと、これらの間に位置するベース部144bの中間部からZ軸方向に突出している中脚部146bとを有する。
一対の中脚部146aは、図4に示す第1実施形態と同様に、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の上方から挿入されるようになっている。同様に、一対の中脚部146bは、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の下方から挿入され、貫通孔26の内部において、それら中脚部146aの先端に所定のギャップ用隙間47(図3および図4参照)で向き合うように構成してある。分割コア142aのベース部144aと、分割コア142bのベース部144bとは、貫通孔26には入り込まず、ボビン本体24のZ軸方向の外部に位置する。
図6Aに示す分割コア142aのベース部144aからの外脚部148aのZ軸方向の突出長さよりも、ベース部144aからの中脚部146aのZ軸方向の突出長さを短くすることで、図4に示すギャップ用隙間47は形成される。あるいは、図6Aに示す分割コア142bのベース部144bからの外脚部148bのZ軸方向の突出長さよりも、ベース部144bからの中脚部146bのZ軸方向の突出長さを短くすることで、図4に示すギャップ用隙間47は形成される。
図6Aに示す外脚部148a,148bのZ軸方向の先端同士は、図3に示すボビン20の外側で、Z軸方向に突き合わされる。これらの外脚部148a,148bのZ軸方向の突出長さよりも短く成形してある中脚部146a,146bのZ軸方向先端相互間には、図3に示すギャップ用隙間47が形成されることになる。
図6Aに示すように、本実施形態のコア組立体140は、図2に示す第1実施形態のコア組立体40と材質などは同じであるが、各ベース部144a,144bの全体形状が相違するのみである。本実施形態のベース部144a,144bは、Z軸方向から見て四角形であり、各ベース部144a,144bのX軸に沿って反対側に位置する外側面(分割面143a,143bと反対側)には、外脚部148a,148bから中脚部146a,146bに向かう傾斜側面45a,45bが形成されていない。
本実施形態のコア組立体140では、ベース部144a,144bには傾斜側面45a,45bが形成されていないことから、第1実施形態のコア組立体40に比較して、磁性体で構成してあるベース部144a,144bの体積が増大する。また、傾斜側面45a,45bによりベース部144a,144bの必要部分が削られると、磁気特性が悪化する可能性がある。本実施形態のコア組立体140では、ベース部144a,144bには傾斜側面45a,45bが形成されていないことから、第1実施形態のコア組立体40に比較して、磁気特性が向上する。
第3実施形態
本実施形態のコイル装置としてのトランスは、以下に示す以外は、図6Aに示す第2実施形態のトランスと同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。以下の説明では、主として、第2実施形態と異なる部分について説明する。
本実施形態では、図6Bに示すように、コア組立体240の構成が、図6Aに示す第2実施形態のコア組立体140の構成と異なる以外は、第2実施形態と同様であり、共通する部材には、共通する符号を付し、その説明は一部省略する。図6Bに示すように、本実施形態のコア組立体240は、上部コア240aと、下部コア240bとを有する。これらのコア240a,240bは、それぞれ同じ形状を持つ2つの分割コア242a,242aおよび242b,242bに、それぞれ分割面143a,143bで分離可能である。本実施形態では、各分割コア242a,242aおよび242b,242bは、全て同じ形状であり、Z-Y断面で断面E字形状を有し、E型コアの一種である。
本実施形態のコア組立体240は、図6Aに示す第2実施形態のコア組立体140と、各ベース部244a,244bの全体形状が相違するのみである。本実施形態のベース部244a,244bは、Z軸方向から見て四角形であり、各ベース部244a,244bのX軸に沿って反対側に位置する外側面には、外脚部148a,148bから中脚部146a,146bに向かう傾斜側面45a,45bが形成されていない点では、第1実施形態と同様である。しかしながら、本実施形態では、各ベース部244a,244bのX軸に沿って反対側に位置する外側面には、Y軸方向の中央部に切欠245a,245bが形成してある。
切欠245a,245bのY軸に沿っての開口幅y1a,y1bは、中脚部146a,146bのY軸方向の最大幅y2a,y2bのそれぞれよりも小さいことが好ましく、y1a/y2aと、y1b/y2bとは、それぞれ0.04~0.30(4%~30%)の範囲内であることが好ましい。なお、それぞれの開口幅y1a,y1bは、同一でも異なっていてもよい。また、これらの切欠245a,245bのX軸方向の底面は、中脚部146a,146bの外周面と一致していてもよい。また、切欠245a,245bの開口幅y1a,y1bは、中脚部146a,146bの外周面に向けて徐々に小さくなっていることが好ましい。切欠245a,245bを成形しやすくするためである。
本実施形態のコア組立体240では、ベース部244a,244bには傾斜側面45a,45bが形成されていないことから、第1実施形態のコア組立体40に比較して、磁性体で構成してあるベース部244a,244bの体積が増大する。また、傾斜側面45a,45bによりベース部244a,244bの必要部分が削られると、磁気特性が悪化する可能性がある。しかしながら、開口幅y1a,y1bが小さい切欠245a,245bであれば、磁気特性が悪化しないことが本発明者等により見出された。本実施形態のコア組立体240では、ベース部244a,244bには傾斜側面45a,45bが形成されていないことから、第1実施形態のコア組立体40に比較して、磁気特性が向上する。
また、ベース部244a,244bに形成してある切欠245a,245bが、図4に示す伝熱性樹脂90の通り道またはエアの抜け道となり、伝熱性樹脂90が中脚部146a,146bの周囲に導かれやすくなり好ましい。
第4実施形態
本実施形態のコイル装置としてのトランスは、以下に示す以外は、図6Aに示す第2実施形態のトランスと同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。以下の説明では、主として、第2実施形態と異なる部分について説明する。
本実施形態では、図6Cに示すように、コア組立体340の構成が、図6Aに示す第2実施形態のコア組立体140の構成と異なる以外は、第2実施形態と同様であり、共通する部材には、共通する符号を付し、その説明は一部省略する。図6Cに示すように、本実施形態のコア組立体340は、上部コア340aと、下部コア340bとを有する。これらのコア340a,340bは、それぞれ同じ形状を持つ2つの分割コア342a,342aおよび342b,342bに、それぞれ分割面143a,143bで分離可能である。本実施形態では、各分割コア342a,342aおよび342b,342bは、全て同じ形状であり、Z-Y断面で断面E字形状を有し、E型コアの一種である。
本実施形態のコア組立体340は、図6Aに示す第2実施形態のコア組立体140と、各ベース部344a,344bの全体形状が相違するのみである。本実施形態のベース部344a,344bは、Z軸方向から見て四角形であり、各ベース部344a,344bのX軸に沿って反対側に位置する外側面には、外脚部148a,148bから中脚部146a,146bに向かう傾斜側面45a,45bが形成されていない点では、第1実施形態と同様である。しかしながら、本実施形態では、各ベース部344a,344bのX軸に沿って反対側に位置する外側面には、Y軸方向の中央部に切欠345a,345bが形成してある。
切欠345a,345bのY軸に沿っての開口幅y1a,y1bは、中脚部146a,146bのY軸方向の最大幅y2a,y2bのそれぞれよりも小さいことが好ましく、y1a/y2aと、y1b/y2bとは、それぞれ図6Bに示す第3実施形態の関係と同様である。ただし、これらの切欠345a,345bのX軸方向の底面は、中脚部146a,146bの外周面と一致せず、図6Bに示す切欠245a,245bのX軸方向の切欠深さよりも浅い切欠深さx1a,x1bを有している。すなわち、切欠深さx1a,x1bは、切欠345a,345bのX軸方向の底面が中脚部146a,146bの外周面に届かない程度の長さであることが好ましい。また、切欠245a,245bと同様に、切欠345a,345bの開口幅y1a,y1bは、中脚部146a,146bの外周面に向けて徐々に小さくなっていることが好ましい。切欠245a,245bを成形しやすくするためである。
本実施形態のコア組立体340では、ベース部344a,344bには傾斜側面45a,45bが形成されていないことから、第1実施形態のコア組立体40に比較して、磁性体で構成してあるベース部344a,344bの体積が増大する。また、傾斜側面45a,45bによりベース部344a,344bの必要部分が削られると、磁気特性が悪化する可能性がある。しかしながら、開口幅y1a,y1bが小さい切欠245a,245bであれば、磁気特性が悪化しないことが本発明者等により見出された。本実施形態のコア組立体240では、ベース部244a,244bには傾斜側面45a,45bが形成されていないことから、第1実施形態のコア組立体40に比較して、磁気特性が向上する。
また、ベース部344a,344bに形成してある切欠345a,345bが、図4に示す伝熱性樹脂90の通り道またはエアの抜け道となり、伝熱性樹脂90が中脚部146a,146bの周囲に導かれやすくなり好ましい。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本実施形態のトランス10では、コア組立体40(140,240,340も同様/以下同様)は、上部コア40aと、下部コア40bとから成り、それぞれを分割コア42a,42bで構成したが、上部コアおよび下部コアの少なくとも一方が、一対の分割コア42a,42aまたは42b,42bを有していればよい。特に、上部コア40aを、Y軸方向に沿う分割方向で分割することで、分割コア42a,42aを傾かせずにボビン20に取り付けることが容易になり、図3に示す所定のギャップ用隙間47を容易に形成することができる。
なお、コア組立体40における分割の個数は、特に限定されず、上部コア40aがX軸方向に2分割以上に分割されていても良いし、下部コア40bがX軸方向に2分割以上に分割されていても良い。なお、分割は、コア組立体40の一方の外脚部48a,48bから中脚部46a,46bを通り他方の外脚部48a,48bに向かう方向に沿う分割であり、これらの方向を横断する分割ではない。
また本実施形態では、上部コアまたは下部コアのいずれか一方を板状コアとしても良く、その板状コアは分割されていても良いし、分割されていなくとも良い。前述した実施形態のように、好ましくは、上部コア40aおよび下部コア40bの双方が、2つ以上に分割されている。
上述した実施形態においては、上部コアまたは下部コアの分割の数が多いほど、コアロスは低減され、伝熱性樹脂90が入り込む分割隙間が多くなる傾向にある。分割の数としては、上部コア40aまたは下部コア40bのそれぞれにおいて、2~4が好ましい。このような範囲での分割数にすることで、コアロスが低減されると共に、伝熱性樹脂90がコア組立体40の中心部に入り込み易くなり、伝熱性が向上すると共に、十分なインダクタンスを確保することができる。
また、本実施形態では、ボビン20の形状や構造、ワイヤ37および38の巻回数や巻回方法なども、図示する実施形態に限定されず、種々に改変しても良い。さらに、底板80には、放熱フィンなどのヒートシンクを具備させても良い。
10… トランス
20… ボビン
22,23… 端子台部
22a,22b,23a,23b… リード取付部
24… ボビン本体
25a,25b… 端子カバー
26… コア脚用貫通孔
28… 巻回筒部
31,32… 端部隔壁鍔
33~35… 巻回隔壁鍔
37… 第1ワイヤ
38… 第2ワイヤ
40… コア組立体
40a… 上部コア
40b… 下部コア
42a,42b… 分割コア
43a,43b… 分割面
44a,44b… ベース部
46a,46b… 中脚部
47… ギャップ用隙間
48a,48b… 外脚部
50… 仕切りカバー
60… 筺体
70… 放熱カバー
80… 底板
90… 伝熱性樹脂(ポッティング樹脂)
100… ケース
110… 熱伝導性ブロック

Claims (6)

  1. 貫通孔を持つボビンと、
    前記ボビンに取り付けられるコア組立体と、
    前記ボビンの外周に巻回してあるワイヤと、
    前記ワイヤが巻回されて前記コア組立体が取り付けられた前記ボビンの外周部を覆うケースと、
    前記ケースの内部に収容されて、前記ケースと前記ボビンとの隙間、前記ケースと前記コア組立体との隙間、および前記ボビンと前記コア組立体との隙間に入り込むことが可能な伝熱性樹脂と、を有するコイル装置であって、
    前記コア組立体は、分割面で分割してある少なくとも一対の分割コアを有し、
    前記ボビンの第1軸方向に沿う長さが、前記第1軸と交差する第2軸方向に沿う長さよりも長く、
    前記ボビンの前記第1軸方向の両端部の底部には、前記ケースの底板に接触または近づけてあるボビン脚部が設置してあり、
    前記分割面は、前記第2軸に沿って形成してあり、
    これらの分割コアは、それぞれ、前記ボビンの貫通孔に入り込む中脚部と、前記中脚部に一体化されて前記貫通孔の外側に位置するベース部と、前記ベース部の両側にそれぞれ一体化されて前記ボビンの外側に取り付けられる外脚部とを有し、
    前記ベース部からの前記外脚部の突出長さよりも、前記ベース部からの前記中脚部の突出長さが短く、
    前記中脚部の突出先端ギャップ用隙間が形成してあり、
    一対の前記分割コアは、それぞれの分割面が相互に所定の分割用隙間で向き合って配置してあり、前記分割用隙間と前記ギャップ用隙間が連通してあり、
    前記分割用隙間を通して前記伝熱性樹脂が前記ギャップ用隙間に入り込み、前記分割用隙間と前記ギャップ用隙間とが、前記伝熱性樹脂で充填してあることを特徴とするコイル装置。
  2. 前記ケースの底部が金属で構成してあり、
    前記ケースの底部に、前記コア組立体の底部が接触していると共に、前記ボビン脚部または前記ボビン脚部に配置してある熱伝導性ブロックが接触または近づいている請求項1に記載のコイル装置。
  3. 前記貫通孔の短手方向には、前記分割用隙間を所定の範囲に調整する分離用凸部が形成されていると共に、前記分割コアのベース部には、前記第1軸と前記第2軸との双方に垂直な第3軸に沿って切欠が形成してあり、前記切欠が前記伝熱性樹脂の通り道またはエアの向け道となる請求項1または2に記載のコイル装置
  4. 前記伝熱性樹脂で覆われていない前記コア組立体の上面に接触する上板部と、前記上板部に一体成形されて前記ケースの内部に入り込み前記伝熱性樹脂に接触する側板部とを有する放熱カバーをさら有し、
    前記放熱カバーは、前記分割用隙間を塞がないように、各分割コアに対応して分離してある請求項1~3のいずれかに記載のコイル装置。
  5. 前記コア組立体は、上部コアと、下部コアとから成り、
    前記上部コアおよび前記下部コアの少なくとも一方が、一対の前記分割コアを有する請求項1~4のいずれかに記載のコイル装置。
  6. 前記ワイヤは、前記ボビンの外周にα巻きされている請求項1~5のいずれかに記載のコイル装置。

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