以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1に示す本実施形態に係るコイル装置としてのトランス10は、たとえばEV(Electric Vehicle:電動輸送機器)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle:プラグインハイブリッド自動車)、あるいはコミュータ(車両)用の車載用充電器などに用いられ、たとえばLLC回路の一部を構成するために用いられる。
図2に示すように、このトランス10は、ボビン20と、磁性コア40aおよび40bと、カバー50と、引出ワイヤカバー60と、台座70と、これらを内部に収容するケース90と(図3A参照)、底板92と、絶縁板83,84とを有する。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸は、トランス10の高さ(厚み)に対応する。本実施形態では、トランス10のZ軸方向の下方が、トランスの設置面となる。また、Y軸は、磁性コア40a,40bにおけるベース部44a,44bの長手方向に一致する。さらに、X軸は、ボビン20の長手方向に一致するようになっている。
本実施形態では、図1に示すように、底板92がケース90の底部開口部に、カシメや接着などの手段で取り付けられて、上部が開放してあるケース90が構成される。底板92は、放熱性に優れたアルミニウム銅、鉄などの金属で構成してあることが好ましいが、PPS、PET、PBTなどで構成しても良い。底板92には、後述する磁性コア40のZ軸方向の下端面が接触することから、底板92は、放熱性に優れた材質で構成されることが好ましい。ケース90の下方には、底板92を介して、あるいは、直接に冷却パイプ、冷却フィンなどの冷却装置を装着しても良い。
ケース90の四隅におけるZ軸方向の中間部付近には、ボス部91が形成してある。ボス部91には、たとえばボルト孔やZ軸方向に延びる切り欠きが形成してある。ケース90自体は、金属で構成されるが、合成樹脂などで構成されてもよい。なお、底板92とケース90とをアルミニウムのダイキャスト成形などにより一体成形しても良い。ケース全体を金属で構成することにより、放熱性がさらに高められる。
ケース90の内部には、放熱用樹脂が充填してあってもよい。放熱用樹脂としては、特に限定されないが、たとえば熱伝導率が0.5〜5、好ましくは1〜3W/m・Kである放熱性に優れた樹脂が好ましい。放熱性に優れた樹脂としては、たとえばシリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などがあるが、中でも、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。また、放熱性を高めるために、樹脂中には、熱伝導性の高いフィラーを充填させても良い。
また、本実施形態の放熱用樹脂は、ショアA硬度が100以下、好ましくは60以下であることが好ましい。磁性コア40a,40bやボビン20が熱により変形したとしても、その変形を吸収し、磁性コア40a,40bに過大な応力を発生させないようにするためである。このような樹脂としては、ポッティング樹脂が例示される。
図3Aおよび図3Bに示すように、ボビン20のボビン本体21回りに巻回してあるコイル300は、コイル300の巻回軸(Z軸と略平行)に沿って、第1コイル部301と、第2コイル部302と、これらの第1コイル部301と第2コイル部302との間に位置する中間コイル部303とを有する。すなわち、本実施形態では、コイル300の巻回軸(Z軸方向)に沿って、中間コイル部303が第1コイル部301と第2コイル部302とで挟まれている。
中間コイル部303は、中間ワイヤ37で構成してあり、第1コイル部301および第2コイル部302は、第1コイル部301と第2コイル部302とを形成するための共通ワイヤ38で構成してある。
本実施形態では、共通ワイヤ38は一次コイルを構成し、中間ワイヤ37は二次コイルを構成する。すなわち、図7に示すように、共通ワイヤ38で構成される第1コイル部301および第2コイル部302が1次側巻線、中間ワイヤ37で構成される中間コイル部303が二次側巻線となることにより、両者間でトランスが形成される。
本実施形態では、一次コイルには、二次コイルに比較して高電圧が作用し、二次コイルには比較的に低電圧が作用する。ここで、図7に示すLaは漏れインダクタンスである。
ワイヤ37,38は、それぞれ単線で構成されてもよく、あるいはそれぞれ撚り線で構成されてもよく、あるいは一方が単線で他方が撚り線であってもよい。各ワイヤ37,38は、同じ材質で構成されていても異なっていても良い。ワイヤ37,38の外径は、特に限定されないが、好ましくは1.0〜4.0mmの範囲である。本実施形態では、二次コイルに流れる電流が大きくなるために、中間ワイヤ37の外径が、共通ワイヤ38の外径よりも大きく、たとえば3.0〜4.0mmが好ましい。また、各ワイヤ37,38には、絶縁被膜が形成してあることが好ましい。
図1に示す第1リード部37a,37bは、図6Aに示す中間ワイヤ37の両端部であり、図1に示す第2リード部38a,38bは、図6Aに示す共通ワイヤ38の両端部である。図1に示すように、第1リード部37a,37bおよび第2リード部38a,38bの各端部には、たとえば金属端子で構成された端子94がハンダ付けなどで接続され、それぞれのワイヤ37および38の両端が端子94に電気的に接続してある。
図6Aに示すように、本実施形態では、第1コイル部301および第2コイル部302における共通ワイヤ38の合計巻数n1と、中間コイル部303を構成する中間ワイヤ37の合計巻数n2とは、等しくなっている。しかしながら、n1とn2は異なっていてもよく、たとえば、n1>n2としてもよく、あるいはn1<n2としてもよい。本実施形態では、これらの巻き数の比率(n1/n2)が大きい場合あるいは小さい場合でも、結合係数を比較的に大きくすることが可能であり、リーケージ特性の安定化に寄与する。
第1コイル部301および第2コイル部302における共通ワイヤ38の合計巻数n1は、第1コイル部301および第2コイル部302に略均等に分けられることが好ましいが、多少異なっていても良い。すなわち、第1コイル部301における共通ワイヤ38の巻き数は、(0.3〜0.7)×n1であることが好ましく、第2コイル部302における共通ワイヤ38の巻き数は、(0.7〜0.3)×n1であることが好ましい。一次コイルと二次コイルとの結合係数を向上させるためである。
図6Bに示すように、共通ワイヤ38は、第1コイル部301と第2コイル部302との間を巻回軸(Z軸)方向に延びるコイル間接続部380を有する。本実施形態では、第1コイル部301と第2コイル部302とが共通ワイヤ38で連続して形成してあるため、共通ワイヤ38には、第1コイル部301と第2コイル部302の間を巻回軸方向に延びるコイル間接続部380が形成されることになる。
図6Bに示すように、コイル間接続部380は、中間コイル部303の内側を通過している。詳細については後述するが、本実施形態では、最初に共通ワイヤ38をボビン20に巻回して、第1コイル部301および第2コイル部302を構成し、次いで中間ワイヤ37をボビン20に巻回して、中間コイル部303を構成している。
このような態様でコイル300をボビン20に装着した場合、コイル間接続部380は、中間コイル部303の内側を通過することになる。この場合、図3Bに示すように、コイル間接続部380を中間コイル部303から絶縁するために、第1絶縁カバー81が、ボビン20に装着してある。第1絶縁カバー81については、後で詳細に説明する。
図6Bに示すように、中間ワイヤ37は、第3コイル部303の一層目と二層目との間を巻回軸(Z軸)方向に延びるコイル間接続部370を有する。本実施形態では、第3コイル部303の一層目と二層目とが中間ワイヤ37で連続して形成してあるため、中間ワイヤ37には、第3コイル部303の一層目と二層目との間を巻回軸方向に延びるコイル間接続部370が形成されることになる。
図3Bおよび図6Aに示すように、第1コイル部301および第2コイル部302からは1対の第1リード部38a,38bが引き出されている。また、中間コイル部303からは1対の第1リード部37a,37bが引き出されている。
より詳細には、図6Aに示すように、中間ワイヤ37の両端に形成してある第1リード部37a,37bは、コイル300の巻回軸(Z軸)方向に延びる立上部371a,371bと、1対の第1リード部37a,37b同士の間隔が広がる方向に向かう方向変化部372a,372bと、コイル300から遠ざかる方向(X軸)に延びる引出本体部373a,373bとを有する。
なお、立上部371a,371bは、Z軸に対して必ずしも平行ではなく傾斜していてもよい。また、引出本体部373a,373bもX軸に対して必ずしも平行ではなく、Y軸および/またはZ軸方向に傾斜していてもよい。また、方向変化部372a,372bは、立上部371a,371bの向かう方向を引出本体部373a,373bの向かう方向に変換する部分であり、直線状でも曲線状でもよい。
本実施形態では、引出本体部373a,373b同士の間隔が、立上部371a,371b同士の隙間間隔よりも広くなるように構成されている。より詳細には、引出本体部373a,373b同士の隙間間隔W1は、好ましくは1〜5mmである。隙間間隔W1を小さくするほど、二次側コイルのリーケージを小さくすることができる。また、引出本体部373a,373bのX軸方向の長さL1は、好ましくは20〜100mmである。また、引出本体部373a,373bのX軸方向の長さL1は、長くなるほどリーケージが大きくなる傾向にあるために、必要最小限が好ましい。
また、図6Aに示すように、共通ワイヤ38の両端に形成してある第2リード部38a,38bは、コイル300の巻回軸(Z軸)方向に延びる立上部381a,381bと、1対の第2リード部38a,38b同士の間隔が広がる方向に向かう方向変化部382a,382bと、コイル300から遠ざかる方向(Y軸)に延びる引出本体部383a,383bとを有する。
なお、立上部381a,381bは、Z軸に対して必ずしも平行ではなく傾斜していてもよい。また、引出本体部383a,383bもX軸に対して必ずしも平行ではなく、Y軸および/またはZ軸方向に傾斜していてもよい。また、方向変化部382a,382bは、方向変化部372a,372bと同様であり、直線状でも曲線状でもよい。
本実施形態では、引出本体部383a,383b同士の間隔が、立上部381a,381b同士の隙間間隔よりも広くなるように構成されている。より詳細には、引出本体部383a,383b同士の隙間間隔W2は、引出本体部373a,373b同士の隙間間隔W1と略同等である。また、引出本体部383a,383bのX軸方向の長さL2は、引出本体部373a,373bのX軸方向の長さL1と略同等である。
なお、本実施形態では、引出本体部373a,373b同士の間隔、および引出本体部383a,383b同士の間隔が、その長手方向各部において一定となっているが、異なっていてもよい。すなわち、引出本体部373a,373bあるいは引出本体部383a,383bは、必ずしも平行に延びていなくてもよい。ただし、トランス10のリーケージ特性を良好にする観点では、引出本体部373a,373b同士の隙間間隔W1を小さくし、隙間間隔W1が長手方向に沿って一定であることが好ましい。
図4に示すように、ボビン20は、ボビン本体21と、ボビン本体21のX軸方向の両端上部に一体に成形してある端子台22,23とを有する。ボビン20は、たとえばPPS、PET、PBT、LCP、ナイロンなどのプラスチックで構成してあるが、その他の絶縁部材で構成されても良い。ただし、本実施形態では、ボビン20としては、たとえば1W/m・K以上に熱伝導率が高いプラスチックで構成することが好ましく、たとえばPPS、ナイロンなどで構成してある。
端子台22,23は、側壁部221,231と、それぞれX軸方向の両端に形成してある一対の係止部222,232と、を有する。側壁部221,231は、第1リード部37a,37bおよび第2リード部38a,38bが引き出される側を除き、端子台22,23の周縁を包囲するように形成してある。側壁部221,231のY軸方向の両外端壁には、係合突起部224および234がそれぞれ形成してある。係合突起部224,234の機能については後述する。端子台22,23では、一対の係止部222,232のY軸方向の中間位置に分離凸部223,233が形成してある。
図4および図6Aに示すように、一対の係止部222には、立上部381a,381bでZ軸方向に立ち上げられた第1リード部38a,38bが、方向変化部382a,382bの部分でY軸方向の外側から内側に巻き付けられ、引出本体部383a,383bとして相互間の隙間が小さくなった状態でX軸方向の外側に案内される。
同様に、一対の係止部232には、立上部371a,371bでZ軸方向に立ち上げられた第1リード部37a,37bが、方向変化部372a,372bの部分でY軸方向の外側から内側に巻き付けられ、引出本体部373a,373bとして相互間の隙間が小さくなった状態でX軸方向の外側に案内される。
分離凸部223は、Z軸から見て、T字形の形状を有する。分離凸部223は、方向変化部382a,382b同士、または引出本体部383a,383b同士が接触しないように分離するための部材である。
同様に、分離凸部233は、Z軸から見て、T字形の形状を有する。分離凸部233は、方向変化部372a,372b同士、または引出本体部373a,373b同士が接触しないように分離するための部材である。なお、分離凸部223,233の形状は図示の形状に限定されるものではなく、楕円形やその他の多角形などに適宜変更してもよい。
また、図4に示すように、一対の係止部222では、立上部381a,381bでZ軸方向に立ち上げられたリード部38a,38bが、方向変化部382a,382bの部分でY軸方向の内側から外側に巻き付けられ、引出本体部383a,383bとして相互間の隙間が大きくなった状態でX軸方向の外側に案内される。
同様に、一対の係止部232では、立上部371a,371bでZ軸方向に立ち上げられたリード部37aおよび37bが、方向変化部372a,372bの部分でY軸方向の内側から外側に巻き付けられ、引出本体部373a,373bとして相互間の隙間が大きくなった状態でX軸方向の外側に案内される。
リード部38a,38bの方向変化部382a,382bを一対の係止部222に係止することにより、リード部38a,38bの中間に位置するコイル部301,302の巻き解しが防止された状態で、リード部38a,38bをコイル300から遠ざかる方向に引き出すことが可能となる。
同様に、リード部37a,37bの方向変化部372a,372bを一対の係止部232に係止することにより、リード部37a,37bの中間に位置するコイル部303の一層目と二層目の巻き解しが防止された状態で、リード部37a,37bをコイル300から遠ざかる方向に引き出すことが可能となる。
すなわち、本実施形態では、図4に示すように、端子台22には、側壁部221と1対の係止部222により区画された(あるいは、挟まれた)通路が形成してあり、これらの通路を通して、リード部38a,38bをボビン20から遠ざかる方向に引き出すことが可能となる。
同様に、端子台23には、側壁部231と1対の係止部232により区画された(あるいは、挟まれた)通路が形成してあり、これらの通路を通して、リード部37a,37bをボビン20から遠ざかる方向に引き出すことが可能となる。
図2に示すように、端子台22,23のZ軸方向の上方には、引出ワイヤカバー60が覆い被さるように装着される。より詳細には、引出ワイヤカバー60のY軸方向両端の側面には、孔61が形成してあり、この孔61を端子台22,23に形成してある係合突起部224,234に係合させることにより、引出ワイヤカバー60を端子台22,23に装着することができる。これにより、第1リード部37a,37bおよび第2リード部38a,38bが端子台22,23の上方に不要にはみ出すことを防止することができる。
磁性コア40a,40bは、本実施形態では、同じ形状であり、Z−Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。なお、磁性コア40a,40bの態様は図2に示す態様に限定されるものではなく、磁性コア40a,40bを図中一点鎖線(Y軸方向の略中央位置)に沿ってXZ平面に平行に切断してなる分割コアであってもよい。
磁性コア40a,40bを分割コアとする場合、図3Aに示すように、コア40aの上面を覆う部分と、分割されたコア40a,40b(脚部46a,46b)の間の隙間をZ軸方向の下側に向かって延びる部分とからなる放熱用天板100を磁性コア40a,40bに設けてもよい。これにより、コイル装置10の放熱性を効果的に向上させることができる。
図2に示すように、Z軸方向の上側に配置される磁性コア40aは、Y軸方向に延びるベース部44aと、ベース部44aのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の側脚部48aと、これらの側脚部48aの間でY軸方向の中央からZ軸方向に突出する中脚部46aとを有する。Z軸方向の下側に配置される磁性コア40bは、Y軸方向に延びるベース部44bと、ベース部44bのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対の側脚部48bと、これらの側脚部48bの間でY軸方向の中央からZ軸方向に突出する中脚部46bとを有する。
中脚部46aは、ボビン20のコア脚用貫通孔21aの内部にZ軸方向の上側から挿入されるようになっている。同様に、中脚部46bは、ボビン20のコア脚用貫通孔21aの内部にZ軸方向の下側から挿入され、コア脚用貫通孔21aの内部において、それらの先端が向き合うように構成してある。なお、図示の例では、中脚部46bの先端が、コア脚用貫通孔21aの内部において、中脚部46aの先端に接触しているが、中脚部46aの先端と、中脚部46bの先端との間に、所定のギャップ(図示略)が形成してあってもよい。このように、ギャップを形成することにより、ギャップの幅に応じてリーケージ特性を調整することができる。
中脚部46aおよび中脚部46bは、コア脚用貫通孔21aの内周面形状に一致するように、略楕円柱形状を有しているが、その形状は、特に限定されず、コア脚用貫通孔21aの形状に合わせて変化させても良い。また、側脚部48a,48bは、ボビン本体21の外周面形状に合わせた内側凹曲面形状を有し、その外面は、X−Z平面に平行な平面を有している。本実施形態では、各コア40a,40bの材質は、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。
図2に示すように、側脚部48a,48bの内周面とボビン本体21の外周面との間には、それぞれカバー50が配置してある。カバー50のカバー本体52は、ボビン20における端子台22および23の間に位置するボビン本体21の外周を覆うような形状を有する。カバー本体52のZ軸方向の両端には、カバー本体52からボビン本体21に向けて略垂直方向に折り曲げられている係止片54が一体成形してある。カバー本体52のZ軸方向の両側に形成してある一対の係止片54は、図3Aに示すように、ボビン本体21のZ軸方向の上下面を挟み込むように取り付けられる。
また、カバー本体52のX軸方向の両端外面には、それぞれZ軸方向に延びる側脚ガイド片56が一体に成形してある。一対の側脚ガイド片56の間に位置するカバー本体52の外面には、側脚部48a,48bの内面が接触し、側脚部48a,48bのX軸方向の移動が、一対の側脚ガイド片56により制限されるようになっている。これらのカバー50は、ボビン20と同様なプラスチックなどの絶縁部材あるいは金属で構成してある。
図3Aおよび図4に示すように、ボビン20のボビン本体21を構成する巻回筒部28のZ軸方向の両端には、端部隔壁鍔24および25が半径方向の外方に延びるように、XY平面に略平行に一体成形してある。端部隔壁鍔24および25のZ軸方向の間に位置する巻回筒部28の外周面には、巻回隔壁鍔26を構成する第1巻回隔壁鍔26aと、第2巻回隔壁鍔26bと、第3巻回隔壁鍔26cとが径方向外方に突出するように、Z軸方向に所定間隔で形成してある。これらの端部隔壁鍔24および25の間に形成された巻回隔壁鍔26a〜26cにより、これらの隔壁鍔の間には、Z軸方向の下から順に、区画S1〜S4が形成される。なお、巻回隔壁鍔26a〜26cおよび区画S1〜S4の数は、特に限定されない。
本実施形態では、区画S1,S4には、共通ワイヤ38が連続して6ターンずつ巻回されて、第1コイル部301および第2コイル部302が構成され、区画S2,S3には中間ワイヤ37が連続して数ターンずつ巻回され、第3コイル部303が構成される。本実施形態では、第1巻回隔壁鍔26aが、第1コイル部301と、区画S3に巻回してある中間コイル部303の一層目とをZ軸方向に仕切る役割を果たす。また、第2巻回隔壁鍔26bが、区画S3に巻回してある中間コイル部303の一層目と、区画S2に巻回してある中間コイル部303の二層目とをZ軸方向に仕切る役割を果たす。また、第3巻回隔壁鍔26cが、第2コイル部302と、区画S2に巻回してある中間コイル部303の二層目とをZ軸方向に仕切る役割を果たす。
図3Aに示すように、第1コイル部301および第2コイル部302を構成する共通ワイヤ38が巻回される区画S1,S4におけるZ軸に沿っての区画幅T1は、Z軸方向に1本の共通ワイヤ38が入り込める幅に設定してある。ただし、区画幅T1は、Z軸方向に2本以上の共通ワイヤ38が入り込める幅に設定してもよい。また、本実施形態では、区画幅T1は、全て同じであることが好ましいが、多少異なっていても良い。
また、中間コイル部303を構成する中間ワイヤ37が巻回される区画S2,S3におけるZ軸に沿っての区画幅T2は、Z軸方向に1本の中間ワイヤ37が入り込める幅に設定してある。ただし、区画幅T2は、Z軸方向に2本以上の中間ワイヤ37が入り込める幅に設定してもよい。また、本実施形態では、区画S2,S3におけるZ軸に沿っての区画幅T2は、共通ワイヤ38の線径に合わせて、区画幅T1と異なっていることが好ましいが、同じであってもよい。
また、隔壁鍔24〜26の高さ(巻軸に対して半径方向の長さ)H1は、1本以上(1層以上)のワイヤ37または38が入り込める高さに設定してあり、本実施形態では、好ましくは3〜8層のワイヤが巻回できる高さに設定してある。各隔壁鍔24〜26の高さH1は、全て同じであることが好ましいが、異なっていても良い。
本実施形態では、区画S1およびS4に巻回される共通ワイヤ38の巻回方法はα巻であり、図3Bに示すコイル間接続部380から、図3Aに示す各区画S1およびS4に共通ワイヤ38が通されて巻始められ、図3Bに示す各リード部38a,38bに引き出される。
また、本実施形態では、区画S2およびS3に巻回される中間ワイヤ37の巻回方法もα巻であり、図6Bに示すコイル間接続部370から、図3Aに示す各区画S2およびS3に中間ワイヤ37が通されて巻始められ、図3Bに示す各リード部37a,37bに引き出される。
ここで、α巻きについて説明する。たとえば図3Aおよび図3Bに示すボビン20に、共通ワイヤ38をα巻きするには、まず、巻回隔壁鍔26の周方向一部が切り欠かれている部分(図4参照)に、共通ワイヤ38のコイル間接続部380を通して、図3Aに示す区画S1と区画S4とを連絡する。そして、リード部38aに近い側の共通ワイヤ38の一部は、区画S4の内部で、たとえば右回りに巻回筒部28の外周に複数層(本実施形態では、6層)で巻回する。同時に、リード部38bに近い側の共通ワイヤ38の他の一部は、区画S1の内部で、区画S1における巻き方とは逆の方向(または同一方向でもよい)に、巻回筒部28の外周に複数層で巻回する。なお、これらの作業は、自動巻機を用いて行っても良い。
図3Aに示す区画S2,S3に巻回される中間ワイヤ37は、図4に示すように、巻回隔壁鍔26の周方向一部が切り欠かれている部分に、共通ワイヤ38のコイル間接続部380を配置した後、第1絶縁カバー81が装着される。そして、リード部37aに近い側の中間ワイヤ37の一部は、区画S3の内部で、たとえば右回りに巻回筒部28の外周に複数層で巻回する。同時に、リード部37bに近い側の中間ワイヤ37の他の一部は、区画S2の内部で、区画S3における巻き方とは逆の方向(または同一方向でもよい)に、巻回筒部28の外周に複数層で巻回する。なお、これらの作業は、自動巻機を用いて行っても良い。
図4に示すように、Z軸方向の最下部に位置する端部隔壁鍔25のX軸方向の両端には、それぞれボビン脚部29が一体に成形してある。各ボビン脚部29は、端部隔壁鍔25のX軸方向の両端から、Z軸方向の下方に突出して形成してある。各ボビン脚部29には、図2に示す各台座70が収容される。各台座70のZ軸方向の高さは、各台座70を各ボビン脚部29に収容したときに、各台座70の底面がコア部材40bの底面から所定距離だけはみ出す程度に調整してある。すなわち、台座70は高さ調整機構としての機能も有する。
図4に示すように、巻回隔壁鍔26a,26b,26cの端子台23側には、図5Aに示す第1絶縁カバー81のY軸方向幅よりも狭い幅で、切欠部264a,264b,264cが形成してある。また、巻回隔壁鍔26aのZ軸方向の下側表面には、切欠部264aが形成されている周方向位置で、Z軸方向に貫通しないザグリ面261aが形成してある。また、巻回隔壁鍔26cのZ軸方向の上側表面には、切欠部264cが形成されている周方向位置で、Z軸方向に貫通しないザグリ面261cが形成してある。
ザグリ面261aおよび261cに沿って、図5Aに示す第1絶縁カバー81が巻回隔壁鍔26aおよび26cの間に取り付けられ、切欠部264a,264cを閉じるようになっている。図5Aに示すように、第1絶縁カバー81は、たとえば、コイル間接続部380を中間コイル部303から絶縁するためのものである。
図3Bおよび図5Aに示すように、第1絶縁カバー81は、第1部分鍔811と、第2部分鍔812と、中間部分鍔813と、上方部分鍔814と、中間部分筒815(図2参照)と、垂直部816と、第1側方垂直部817と、第2側方垂直部818と、分離凸状部819とを有する。
図2に示すように、中間部分筒815は円筒の一部を構成する。中間部分筒815は、中間コイル部303を構成する中間ワイヤ37の周方向一部が巻回される。図3Bに示すように、中間部分筒815の内周面は、コイル間接続部380を挟んで、ボビン20の巻回筒部28の外周面と対向する。このように、コイル間接続部380と中間ワイヤ37(中間コイル部303)とが隔離されるように、第1絶縁カバー81を介在させることで、両者の絶縁を確実に図ることができる。
図2および図5Aに示すように、第1部分鍔811および第2部分鍔812は、それぞれ中間部分筒815のZ軸方向の一端および他端に、X−Y平面に平行に形成してある。図5Aに示すように、第1部分鍔811の上面のY軸方向両端には、ザグリ面811αが形成してある。ザグリ面811αは、所定のY軸方向幅を有し、X軸方向に所定距離だけ延びるように形成してある。第2部分鍔812の下面のY軸方向両端には、ザグリ面812αが形成してある。ザグリ面812αは、所定のY軸方向幅を有し、X軸方向に所定距離だけ延びるように形成してある。
中間部分鍔813は、第1部分鍔811と第2部分鍔812とで挟まれるように、中間部分筒815のZ軸方向の略中央部に、X−Y平面に平行に形成してある。図示の例では、中間部分鍔813は、Y軸方向一端側およびY軸方向他端側の2つに部分に分離されている。
垂直部816は、所定のY軸方向幅を有し、第1部分鍔811の上面からZ軸方向に延びるように、Y−Z平面に平行に形成してある。第1側方垂直部817は、所定のX軸方向幅を有し、第1部分鍔811の上面のY軸方向一端側からZ軸方向に延びるように、X−Z平面に平行に形成してある。第2側方垂直部818は、所定のX軸方向幅を有し、第1部分鍔811の上面のY軸方向他端側からZ軸方向に延びるように、X−Z平面に平行に形成してある。上方部分鍔814は、垂直部816、第1側方垂直部817および第2側方垂直部818の各々のZ軸方向一端に接続されるように、X−Y平面に平行に形成してある。
分離凸状部819は、所定のZ軸方向幅を有し、垂直部816のY軸方向中央部において、垂直部816の一方の面(リード部37a,37bの引出方向側の面)から、当該面の法線方向に延びるように形成してある。分離凸状部819は、垂直部816のZ軸方向一端からZ軸方向他端にわたって形成してある。分離凸状部819は、中間ワイヤ37のリード部37a(立上部371a)と、リード部37b(立上部371b)とを互いに分離する役割を果たす。
図5Aおよび図5Bに示すように、中間部分鍔813と第1部分鍔811とで挟まれた領域には、中間ワイヤ37(中間コイル部303の一層目に対応)が通過する第1通路820aが形成してある。同様に、中間部分鍔813と第2部分鍔812とで挟まれた領域には、中間ワイヤ37(中間コイル部303の二層目に対応)が通過する第1通路820aが形成してある。
図3Bおよび図5Bに示すように、前者の第1通路820aは、中間ワイヤ37を、第1部分鍔811の上方(後述する第2通路820b)を通過する共通ワイヤ38から隔離するように形成してある。また、後者の第1通路820aは、中間ワイヤ37を、第2部分鍔812の下方を通過する共通ワイヤ38から隔離するように形成してある。このように、中間ワイヤ37(中間コイル部303)と共通ワイヤ38(第1コイル部301および第2コイル部302)とが隔離されるように、第1絶縁カバー81を介在させることで、両者の絶縁を確実に図ることができる。
また、中間ワイヤ37(中間コイル部303の一層目)と、共通ワイヤ38(第1コイル部301)との間に、第1部分鍔811を配置し、第1通路820aを構成することにより、トランス10を大型化することなく、中間ワイヤ37と、共通ワイヤ38との間の沿面距離を十分に確保することができる。
また、中間ワイヤ37(中間コイル部303の二層目)と、共通ワイヤ38(第2コイル部302)との間に、第2部分鍔812を配置することにより、トランス10を大型化することなく、中間ワイヤ37と、共通ワイヤ38との間の沿面距離を十分に確保することができる。
図5Aおよび図5Bに示すように、上方部分鍔814と第1部分鍔811とで挟まれた領域には、共通ワイヤ38が通過する第2通路820bが形成してある。図3Bおよび図5Bに示すように、第2通路820bは、共通ワイヤ38を、上方部分鍔814の上方を通過する中間ワイヤ37のリード部37a,37b(方向変化部372a,372b)から隔離するように形成してある。このように、共通ワイヤ38(第1コイル部301)と中間ワイヤ37のリード部37a,37bとが隔離されるように、第1絶縁カバー81を介在させることで、両者の絶縁を確実に図ることができる。
また、中間ワイヤ37のリード部37a,37b(方向変化部372a,372b)と、共通ワイヤ38(第1コイル部301)との間に、上方部分鍔814を配置し、第2通路820bを構成することにより、トランス10を大型化することなく、中間ワイヤ37のリード部37a,37bと、共通ワイヤ38との間の沿面距離を十分に確保することができる。
垂直部816と、第1側方垂直部817と、分離凸状部819とで囲まれた領域には、中間ワイヤ37のリード部37aが通過する第3通路820cが形成してある。同様に、垂直部816と、第2側方垂直部818と、分離凸状部819とで囲まれた領域には、中間ワイヤ37のリード部37bが通過する第3通路820cが形成してある。各第3通路820cは、それぞれ中間ワイヤ37のリード部37a,37bをZ軸方向一端から他端に向けて案内する役割を果たす。
図3Bおよび図5Bに示すように、前者の第3通路820cは、中間ワイヤ37のリード部37a(立上部371a)を、共通ワイヤ38から隔離するように形成してある。後者の第3通路820cは、中間ワイヤ37のリード部37b(立上部371b)を、共通ワイヤ38から隔離するように形成してある。このように、中間ワイヤ37のリード部37a,37bと共通ワイヤ38(第1コイル部301)とが隔離されるように、第1絶縁カバー81を介在させることで、両者の絶縁を確実に図ることができる。
また、中間ワイヤ37のリード部37a,37b(立上部371a,371b)と、共通ワイヤ38(第1コイル部301)との間に、垂直部814を配置し、第3通路820cを構成することにより、トランス10を大型化することなく、中間ワイヤ37のリード部37a,37bと、共通ワイヤ38との間の沿面距離を十分に確保することができる。
図5Bに示すように、本実施形態では、第1絶縁カバー81は、第1カバー部81Aと、第2カバー部81Bとに大別され、上述した第1絶縁カバー81の各部は、カバー部81A,81Bのいずれかに属する。なお、第1カバー部81Aは、第1部分鍔811を通過する線分cよりも上側にある部分に対応し、第2カバー部81Bは線分cよりも下側にある部分に対応する。
本実施形態では、第1カバー部81Aには、第1部分鍔811の一部(線分cよりも上側にある部分)と、上方部分鍔814と、垂直部816と、第1側方垂直部817と、第2側方垂直部818と、分離凸状部819とが属し、上記各部以外の部分が、第2カバー部81Bに属する。
なお、第1カバー部81Aと第2カバー部81Bの分け方は、これに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。たとえば、線分cを中間部分鍔813に設け、当該線分cよりも上側にある部分を第1カバー部81Aとし、当該線分cよりも下側にある部分を第2カバー部81Bとしてもよい。
本実施形態では、第1カバー部81Aと第2カバー部81Bとが一体的に形成してあるが、各カバー部81A,81Bは着脱自在に構成してあってもよい。すなわち、第1絶縁カバー81を、第1カバー部81Aと第2カバー部81Bとに物理的に分離(分割)し、これら各カバー部81A,81Bを一体的に組み合わせることにより、第1絶縁カバー81を構成してもよい。第1カバー部81Aと第2カバー部81Bとを別々に製造することで成形が容易になる。
図4および図5Aに示すように、第1絶縁カバー81は、第1部分鍔811のザグリ面811αが第1巻回隔壁部26aのザグリ面261aに当接し、第2部分鍔812のザグリ面812αが第3巻回隔壁部26cのザグリ面261cに当接して、スライド挿入可能に、ボビン20に固定される。図6Bに示すように、本実施形態では、コイル間接続部380は、中間コイル部303の内側を通過するが、図3Bに示すように、コイル間接続部380と中間コイル部303とが中間部分筒815を介して絶縁される。
図3Bに示すように、巻回隔壁鍔26a,26cの端子台22側には、図2に示す第2絶縁カバー82が取り付けられるように、切欠部264a,264cが形成してある。図3Bに示すように、第2絶縁カバー82は、共通ワイヤ38のリード部38aの立上部381aを、中間コイル部303から絶縁するとともに、中間コイル部303を第1コイル部301および第2コイル部302から絶縁するためのものである。
図5Cに示すように、第2絶縁カバー82は、そのZ軸方向の両端にX−Y軸平面で平行に形成してある第1部分鍔821および第2部分鍔822と、壁部823と、一対の側部824とを有する。図3Bに示すように、第2絶縁カバー82は、部分鍔821,822を端子台22側の巻回隔壁鍔26a,26cに形成してある切欠部264a,264cにはめ込み、部分鍔821,822を端子台22側の巻回隔壁鍔26a,26cに形成してあるザグリ面261a,261cに当接させてスライド挿入することにより、ボビン20に固定される。
図3Bおよび図5Cに示すように、共通ワイヤ38のリード部38a(立上部381a)がコイルの上方に向かって引き出される途中で、中間コイル部303と隔離されるように、立上部381aと中間コイル部303との間に第2絶縁カバー82を介在させることで、両者の絶縁を確実に図ることができる。
また、第1コイル部301および第1コイル部302と中間コイル部303とが隔離されるように、第1コイル部301および第1コイル部302と中間コイル部303との間に第2絶縁カバー82を介在させることで、両者の絶縁を確実に図ることができる。
これらの絶縁カバー81,82は、ボビン20と同様または異なるプラスチックなどの絶縁部材で構成してある。絶縁カバー81,82は、ボビン20とは別に成形されて、ボビン20の周方向の一部に取り付けられる。
本実施形態に係るトランス10は、図2に示す各部材を組み立てると共に、ボビン20に中間ワイヤ37および共通ワイヤ38を巻回することによって製造される。以下に、トランス10の製造方法の一例を、図2などを用いて説明する。トランス10の作製においては、まず、ボビン20を準備する。ボビン20の材質は特に限定されないが、ボビン20は、樹脂等の絶縁材料によって形成される。
次に、ボビン20の巻回筒部28の外周に共通ワイヤ38をα巻により巻回し、第1コイル部301および第2コイル部302を形成する。第1コイル部301および第2コイル部302の形成に使用される共通ワイヤ38としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。また、第1コイル部301および第2コイル部302を形成する際の共通ワイヤ38の末端部である第2リード部38a,38bは、たとえば端子94にハンダ付けされて接続される。
次に、共通ワイヤ38が巻回されたボビン20に第1絶縁カバー81を装着する。なお、第1絶縁カバー81は、共通ワイヤ38をボビン20の外周に巻回する前にボビン20に装着してもよい。
次に、ボビン20の巻回筒部28の外周に中間ワイヤ37を巻回し、中間コイル部303を形成する。中間コイル部303の形成に使用される中間ワイヤ38としては、共通ワイヤ38と同じでもよいし、異なっていてもよい。また、中間コイル部303を形成する際の中間ワイヤ37の末端部である第1リード部37a,37bは、たとえば端子94にハンダ付けされて接続される。
次に、中間コイル部303から第1リード部37a,37bを巻回軸上方に引き出し、係止部222,222に係止させつつ、コイル300から遠ざかる方向に引き出す。
また、ボビン20に第2絶縁カバー82を装着して、第1コイル部301および第2コイル部302から第2リード部38a,38bを巻回軸上方に引き出し、係止部232,232に係止させつつ、コイル300から遠ざかる方向に引き出す。そして、端子台22,23の上方に、引出ワイヤカバー60を装着する。なお、第2絶縁カバー82は、共通ワイヤ38をボビン20の外周に巻回する前にボビン20に装着してもよい。
次に、絶縁板83,84をボビン20におけるX軸方向の両側に取り付ける。これにより、ケース90のX軸方向一端側と、中間ワイヤ37のリード部37a,37bとの絶縁を図ることができる。また、ケース90のX軸方向他端側と、共通ワイヤ38のリード部38a,38bとの絶縁を図ることができる。
次に、カバー50をボビン20におけるY軸方向の両側に取り付け、その後に、Z軸方向の上下方向から磁性コア40a,40bを取り付ける。すなわち、磁性コア40a,40bの中脚46a,46bの先端同士の間に必要に応じてギャップを持たせつつ、側脚48a,48bの先端同士を接合する。磁性コア40a,40bの材質としては、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。
次に、台座70をボビン脚部29の内部に収容する。なお、ボビン脚部29には、予め台座70が装着してあってもよい。その後、底板92をケース90の底部開口部に接着し、上部が開放してあるケース90に上記組立体を収納するとともに、ケース90の内部に放熱用樹脂を充填する。以上のような工程により、本実施形態に係るトランス10を製造することができる。
本実施形態に係るトランス10では、中間コイル部303を、第1コイル部301と第2コイル部302とで挟む構造(サンドイッチ構造)である。そのため、これらのコイル部間の結合を高くすることができ、リーケージ特性の安定化を図ることが容易となる。また、高周波帯においても、安定したリーケージ特性を得ることができる高結合なトランス10を実現することができる。
特に、本実施形態に係るトランス10では、中間ワイヤ37がボビン20にα巻きしてある。α巻きは、巻数を増大させても、巻軸方向の層数を少なくすることができるために、トランス10の低背化、小型化に寄与する。さらにα巻きにすることで巻線中心部からのワイヤ引き出しがなくなるため、中間ワイヤ37が重ならないことからトランス10の低背化に寄与する。
また、中間コイル部303において、α巻きにすることによって、リーケージ特性の安定化に寄与する。また、中間コイル部37の一層目と二層目との間でコイルの巻き数を同じにすることも容易であり、また、巻き数を変化させることも容易である。
また、第1コイル部301と第2コイル部302とは、共通ワイヤ38で連続して形成してある。このような構成とすることにより、第1コイル部301および第2コイル部302のいずれか一方に、電流が偏って流れることが防止できる。電流が偏って流れることが防止されるため、いずれか一方のコイル部301または302が異常発熱することを防止することができる。また、第1コイル部301および第2コイル部302を別々のワイヤで構成する場合に比較して、第1コイル部301および第2コイル部302を構成する共通ワイヤ38のワイヤ長を短くすることが可能になり、銅損を小さくすることができる。銅損を小さくできれば、効率が向上し、発熱も低減することができる。
また、本実施形態では、一次コイルと二次コイルとの結合係数が高いため、一次コイルの巻き数と二次コイルの巻き数とが大きく異なる場合であっても、リーケージ特性の安定化を図ることが容易である。すなわち、本実施形態によれば、第1コイル部301および第2コイル部302における共通ワイヤ38の巻数と、中間コイル部303における中間ワイヤ37の巻数との巻数比が大きい場合でも効果が大きい。具体的には共通ワイヤ38の合計巻数n1と中間ワイヤ37の巻数n2との巻数比n1/n2が、2以上、3以上、5以上の場合でも、より顕著な効果が得られる。
また、本実施形態では、共通ワイヤ38は、ボビン20にα巻きされている。このような構成とすることで、単一の共通ワイヤ38を用いて、巻回軸方向に離れて配置される第1コイル部301と第2コイル部302とを容易に形成することができる。また、第1コイル部301と第2コイル部302とでコイルの巻き数を同じにすることも容易であり、また、巻き数を変化させることも容易である。
さらに、図3Aに示すように、第1コイル部301および第2コイル部302において、巻回軸方向に沿って単一のワイヤ38のみが存在するようにボビン20の鍔部24〜26(26a〜26c)の間隔T1およびT2を調整することで、一層当たりのワイヤ37および38の巻回数のバラツキを防止することが容易になり、リーケージ特性の安定化に寄与する。すなわち、一次コイルと二次コイルとの結合係数を厳密に制御することが容易になる。
また、α巻きは、巻数を増大させても、巻軸方向の層数を少なくすることができるために、トランス10の低背化、小型化に寄与する。さらにα巻きにすることで巻線中心部からのワイヤ引き出しがなくなるため、ワイヤが重ならないことからトランス10の低背化に寄与する。
また、本実施形態では、第1カバー部81Aには第1通路820aが形成してあり、第2カバー部81Bには第2通路820bと、第3通路820cとが形成してある。そのため、中間ワイヤ37は第1通路820aを通過し、共通ワイヤ38は第2通路820bを通過し、中間ワイヤ37のリード部37a,37bは第3通路820cを通過する。このように、中間ワイヤ37と、共通ワイヤ38と、中間ワイヤ37のリード部37a,37bは、それぞれ異なる通路を通過し、しかも各通路は隔離されているため、各々の絶縁を確実に図ることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえばボビン20の外周にコイル300を装着する他の態様としては、最初に中間ワイヤ37をボビン20に巻回して、中間コイル部303を構成し、次いで共通ワイヤ38をボビン20に巻回して、第1コイル部301および第2コイル部302を構成する態様も考えられる。このような態様でコイル300をボビン20に装着した場合、コイル間接続部380は、中間コイル部303の外側を通過することになる。
また、上述した一次コイルと二次コイルの関係は逆にしてもよい。すなわち、共通ワイヤ38が二次コイルを構成し、中間ワイヤ37は、一次コイルを構成してもよい。また、その場合には、各ワイヤの外径の大小関係は、上述した例と逆であってもよい。あるいは、これらのワイヤの外径は、同じであってもよい。