JP7105222B2 - 粘着フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、粘着フィルムに関する。本出願は、2017年3月3日に出願された日本国特許出願2017-40828号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
レーザ光による加工技術は、各種材料の切断や孔あけ等に広く用いられている。加工に使用するレーザの代表例として、炭酸ガスレーザが挙げられる。かかるレーザ加工の一態様として、補助材料としての粘着フィルムを加工対象物(workpiece)に貼り付けておき、これにレーザ光を照射して上記粘着フィルムごと加工対象物をレーザ加工する態様が例示される。例えば、特許文献1には、銅張板の銅箔面に補助シートの粘着面を圧着し、該補助シートの上から炭酸ガスレーザを照射して上記銅張板に孔をあけることにより孔信頼性や作業性等を向上させる技術が記載されている。
日本国特許出願公開2007-39665号公報 日本国特許出願公開2013-18964号公報
近年、短波長のレーザ光を用いた加工技術に対する関心が高まっている。例えば、炭酸ガスレーザ(主波長9.3μm~10.6μm程度)に代えて、主波長1.0μm~1.1μm程度の短波長レーザを用いてレーザ加工を行いたいとの要請がある。このような短波長のレーザ光を用いることにより、加工に必要なエネルギーを効率よく加工対象物に加えることができるため、加工のスピードアップや微細加工性の観点から有利となり得る。
しかし、これまで炭酸ガスレーザによるレーザ加工に利用されてきた粘着フィルムを短波長レーザによる加工にそのまま転用すると、該粘着フィルムを高品質に切断することができず、レーザ加工の効率や精度が不足する場合があった。また、特許文献2には、主波長1.0μm~1.1μm程度の短波長レーザで切断される用途に適した粘着フィルムが開示されているが、なお改善の余地があった。例えば、短波長レーザによる加工では局所的にレーザ光エネルギーおよびアシストガス圧が集中するため、加工対象物の加工に伴ってレーザ切断される粘着フィルムに縮みや剥がれが生じやすい。かかる事象は、レーザ光による加工後の加工対象物の加工縁部(レーザ光による加工位置に隣接する箇所、例えばレーザ切断により生じた端面に隣接する箇所)において、該レーザ光により切断された粘着フィルムの端から加工対象物の表面が露出する要因となり得る。このような加工対象物表面の露出をよりよく防止または抑制することができれば有益である。
そこで本発明は、主波長1.0μm~1.1μmの短波長レーザで切断される用途に適した粘着フィルムであって、レーザ加工後の加工対象物の保護性に優れた粘着フィルムを提供することを目的とする。なお、ここに開示されるレーザ光を用いた加工技術は、レーザアブレーションとは異なり、パルス幅が長い(より具体的には、パルス幅が1μs以上、または連続出力の)YAGレーザを用いる切断等の、通常のレーザ加工に関するものである。
この明細書により提供される粘着フィルムは、基材としてのプラスチックフィルムと、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える。上記粘着フィルムは、以下の条件(A)~(D)を満たす。
(A)120℃で10分間加熱する熱収縮試験において、流れ方向(MD)の熱収縮率SMDおよび該流れ方向と直交する方向(幅方向;TD)の熱収縮率STDが、いずれも-2%以上2%以下である。
(B)30m/分の剥離速度で測定される高速剥離強度が3N/20mm以上20N/20mm以下である。
(C)30gの荷重を1時間付加する定荷重剥離試験において、剥離距離が50mm未満である。
(D)波長1000nm~1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上である。
このように構成された粘着フィルムは、波長1000nm~1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上であることにより、主波長が1000nm~1100nmの範囲にあるレーザ光(以下、「特定レーザ光」ともいう。)を効率よく吸収することができる。したがって、上記吸収された特定レーザ光のエネルギーを利用して上記粘着フィルムを効果的に切断することができる。また、上記粘着フィルムは、加工対象物に貼り付けられて該加工対象物とともに短波長レーザで切断される態様で使用されても、粘着フィルムの縮みや被着体(加工対象物)からの剥がれが生じにくい。これにより、加工対象物の加工縁部において粘着フィルムの端から加工対象物の表面が露出する事象が抑制され得る。加工縁部の加工対象物表面の露出が抑制されることにより、レーザ加工時に加工対象物に貼り付けられていた粘着フィルムを加工後の加工対象物の搬送や後加工時の保護フィルムとして引き続き利用して、該加工対象物の搬送や後加工の際に加工対象物が搬送装置や加工装置に直接接触する事象をよりよく防止することができる。このことは、加工対象物の傷や汚れによる歩留りの低下抑制、搬送装置や加工装置の損傷抑制等の観点から有意義である。粘着フィルムの基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを好ましく採用し得る。
なお、この明細書において「レーザ光吸収率」とは、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U-4100」またはその相当品)を用いて測定されるサンプルの透過率T(%)および反射率R(%)から、以下の式(I)により算出される値をいうものとする。
吸収率A(%)=100(%)-T(%)-R(%) (I)
この明細書において「波長1000nm~1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率」とは、当該波長範囲における最小のレーザ光吸収率を指すものとする。以下の説明において「レーザ光吸収率」とは、特記しない場合、上記のように波長1000nm~1100nmの範囲における最小のレーザ光吸収率をいう。また、この明細書において「レーザ光吸収剤」とは、当該レーザ光吸収剤を用いない場合に比べて上記レーザ光吸収率を上昇させる作用を発揮し得る材料をいう。
いくつかの態様において、上記粘着剤層を構成する粘着剤は、120℃における弾性率(以下、高温弾性率ともいう。)が50kPa以上150kPa以下の範囲にあることが好ましい。この範囲の高温弾性率を有する粘着剤によると、加工対象物に貼り付けられた粘着フィルムの熱収縮によるズレの防止と、アシストガス圧による浮きの発生防止とを好適に両立しやすい。
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤、すなわちアクリル系粘着剤を用いることができる。いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマーは、ガラス転移温度が-40℃以下である;C4-12アルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有するモノマー原料の重合物である;および、カルボキシ基含有モノマーを0.5重量%以上7重量%以下含むモノマー原料の重合物である;の少なくとも一つに該当することが好ましい。このようなアクリル系ポリマーによると、レーザ切断時の縮みや剥がれがよりよく抑制される傾向にある。
ここに開示される粘着フィルムの厚さは、例えば、10μm以上150μm以下の範囲から選択し得る。この範囲の厚さであると、加工対象物表面の保護性と、粘着フィルムの取扱い性とを好適に両立しやすい。
ここに開示される粘着フィルムのいくつかの態様において、該粘着フィルムのMDおよびTDにおける熱収縮率SMD,STDは、
(a)SMDおよびSTDがいずれも0%であるか、または
(b)|SMD|および|STD|がいずれも0%より大きく、かつ0.5≦|SMD/STD|≦4であることが好ましい。このような粘着フィルムによると、レーザ切断時の縮みや剥がれがよりよく抑制される傾向にある。
ここに開示される粘着フィルムは、上述のように、加工対象物(被着体)に貼り付けられた状態で該加工対象物とともに短波長のレーザ光(例えば、主波長が1000nm~1100nmの範囲にあるレーザ光)で切断されても、該粘着フィルムの縮みや被着体からの剥がれが生じにくい。したがって、上記粘着フィルムの他の側面として、ここに開示されるいずれかの粘着フィルムからなり、主波長1000nm~1100nmのレーザ光で切断して用いられるレーザ切断用粘着フィルムが提供される。
一実施形態に係る粘着フィルムを模式的に示す断面図である。 他の一実施形態に係る粘着フィルムを模式的に示す断面図である。 さらに他の一実施形態に係る粘着フィルムを模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
ここに開示される粘着フィルムは、基材としてのプラスチックフィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。上記基材の一方の面のみに粘着剤層を有する片面粘着フィルム(片面接着性の粘着フィルム)の形態であってもよく、上記基材の一方の面および他方の面にそれぞれ粘着剤層を有する両面粘着フィルム(両面接着性の粘着フィルム)の形態であってもよい。以下、片面粘着フィルムに適用する場合を主な例として本発明をより具体的に説明するが、ここに開示される技術の適用対象を限定する意図ではない。
一実施形態に係る粘着フィルムの構成を図1に模式的に示す。この粘着フィルム1は、基材としてのプラスチックフィルム10と、その一方の面10Aに設けられた粘着剤層20とを備え、該粘着剤層20を被着体に貼り付けて使用される。好ましい一態様では、プラスチックフィルム10の他方の面(背面)10Bが剥離性を有する表面(剥離面)となっている。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の粘着フィルム1は、粘着剤層20の表面(粘着面)20Aがプラスチックフィルム10の背面10Bに当接するようにロール状に巻回され、これにより表面20Aが保護された形態であり得る。あるいは、図2に示す粘着フィルム1のように、粘着剤層20の表面20Aが、少なくとも粘着剤層20側が剥離面となっている剥離ライナー30により保護された形態であってもよい。
この実施形態の粘着フィルム1は、プラスチックフィルム10の全体または一部として、レーザ光吸収剤402を備えたレーザ光吸収層42を有する。レーザ光吸収層42は、典型的には、レーザ光吸収剤402を含有する樹脂組成物からなる層である。図1、2に示す例では、プラスチックフィルム10がレーザ光吸収層42からなる単層構造であるが、プラスチックフィルム10の構造は単層構造に限定されない。例えば図3に示す粘着フィルム2のように、プラスチックフィルム10が複数の層(ここでは、粘着剤層20側に配置された第一層42およびその背面側に配置された第二層44)を含む積層体であって、それらのうち少なくとも一つがレーザ光吸収層42であってもよい。図3に示す例では、第一層42はレーザ光吸収剤402を含む樹脂組成物からなる層(レーザ光吸収層)であり、第二層44はレーザ光吸収剤を含まない樹脂組成物からなる層である。
ここに開示される粘着フィルムは、波長1000nm~1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上であることによって特徴づけられる。このレーザ光吸収率は、粘着フィルムに照射された特定レーザ光のうち、実際に粘着フィルムに吸収されるレーザ光の割合を意味する。粘着フィルムのレーザ光吸収率が20%以上であると、特定レーザ光の照射による加熱効率が高く、粘着フィルムを適切に分解消失させることができる。
いくつかの態様において、粘着フィルムのレーザ光吸収率は、例えば25%以上であってよく、30%以上でもよく、45%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。上記粘着フィルムは、その基材フィルムがレーザ光吸収層を含むことが好ましい。レーザ光吸収層を含む基材フィルムのレーザ光吸収率は、上述した粘着フィルムと同様、20%以上であることが好ましく、25%以上でもよく、30%以上でもよく、45%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。粘着フィルムまたは基材フィルムのレーザ光吸収率は、100%であってもよいが、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよい。レーザ光吸収層を含む複数の層からなる基材フィルムでは、上記レーザ光吸収層のレーザ光吸収率が20%以上であることが好ましい。上記レーザ光吸収層のレーザ光吸収率は、例えば20%以上であってよく、25%以上が好ましく、30%以上でもよく、45%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。上記レーザ光吸収層のレーザ光吸収率は、100%であり得るが、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよく、85%以下でもよい。
粘着フィルムの透過率および反射率は特に限定されない。いくつかの態様において、粘着フィルムは、波長1000nm~1100nmの範囲でレーザ光吸収率が最小となる波長における特定レーザ光の透過率が70%未満であってよく、例えば50%未満でもよい。また、いくつかの態様において、粘着フィルムは、上記レーザ光吸収率が最小となる波長における特定レーザ光の反射率が50%未満であってよく、例えば40%未満でもよく、20%未満でもよく、10%未満でもよい。上記透過率および上記反射率の少なくとも一方(好ましくは両方)を満たす粘着フィルムは、ここに開示される好ましいレーザ光吸収率を有するものとなりやすい。
レーザ光吸収剤としては、波長1000nm~1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率を上昇させる作用を発揮し得る各種の材料を用いることができる。粘着フィルムに含まれるレーザ光吸収剤の種類は、一種類でもよく、二種類以上でもよい。二種類以上のレーザ光吸収剤を含む粘着フィルムにおいて、それらのレーザ光吸収剤は、ブレンドして用いられてもよく、粘着フィルム内の異なる層にそれぞれ含有されていてもよい。
ここに開示される粘着フィルムに用いられ得るレーザ光吸収剤の例としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、ジルコニウム、タングステン、銅、銀、金、亜鉛、モリブデン、クロムおよびこれらを主成分とする合金等の金属;上記金属の酸化物(例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等)、窒化物、炭化物等の金属化合物;カーボンブラックやカーボンファイバー等の炭素材料;フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、アミニウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、ジイモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、芳香族ジチオール系金属錯体(例えばニッケル錯体)等の有機化合物;等が挙げられる。樹脂組成物中にレーザ光吸収剤を含むレーザ光吸収層において、該レーザ光吸収剤としては、上記レーザ光吸収層を構成する樹脂成分よりも熱分解温度の高い材料を用いることが好ましい。
粉末状のレーザ光吸収剤(レーザ光吸収剤粉末)を用いる場合、該粉末を構成する粒子の形状は特に限定されず、例えば薄片状、球状、針状、多面体状、不規則形状等であり得る。通常は、薄片状、球状または針状のレーザ光吸収剤粉末を好ましく採用し得る。レーザ光吸収剤粉末の平均粒径は特に限定されず、例えば0.01μm以上20μm以下であり得る。いくつかの態様において、レーザ光吸収剤粉末の平均粒径は、例えば0.1μm以上であってよく、0.5μm以上でもよく、また、10μm以下であってよく、5μm以下でもよい。なお、本明細書中において「平均粒径」とは、特記しない場合、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D50と略記する場合もある。)を指す。
いくつかの態様において、上記レーザ光吸収層は、上記レーザ光吸収剤としてカーボンブラックを含み得る。例えば、平均粒径10nm~500nm(より好ましくは10nm~120nm)のカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、単独で用いられてもよく、他のレーザ光吸収剤と組み合わせて用いられてもよい。
また、いくつかの態様において、上記レーザ光吸収層は、レーザ光吸収剤として金属粉末および金属化合物粉末の少なくとも一方を含み得る。かかるレーザ光吸収剤は、特定レーザ光の吸収に伴う発熱に耐えて該特定レーザ光を吸収する性質を適切に維持し得るので好ましい。この種のレーザ光吸収剤の好適例として、酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末、金属アルミニウム粉末等が挙げられる。
レーザ光吸収層は、典型的には、樹脂成分中にレーザ光吸収剤を含む層である。かかる樹脂成分として採用し得る材料の非限定的な例示には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリプロピレン-ポリエチレンブレンド樹脂等のポリオレフィン樹脂;その他、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド系樹脂;等が含まれる。かかる樹脂材料にレーザ光吸収剤を配合してなる樹脂組成物を、典型的にはフィルム状に成形することにより、レーザ光吸収層を形成することができる。
レーザ光吸収剤の使用量は特に限定されない。いくつかの態様において、レーザ光吸収剤の使用量は、例えば、該レーザ光吸収剤を含むレーザ光吸収層の0.01重量%以上であってよく、0.05重量%以上でもよく、0.1重量%以上でもよい。また、レーザ切断残渣の低減や反射率抑制の観点から、いくつかの態様において、レーザ光吸収剤の含有量は、レーザ光吸収剤を含むレーザ光吸収層の例えば10重量%以下であってよく、5重量%以下でもよく、3重量%以下でもよく、2重量%以下でもよい。
基材フィルムの成形方法は特に限定されず、従来公知の押出成形法(例えば、インフレーション押出成形法)、キャスト成形法等を適宜採用することができる。基材フィルムは、無延伸であってもよく、一軸延伸や二軸延伸等の延伸が施されていてもよい。レーザ光吸収層を含む複数の樹脂層を備える基材フィルムは、各樹脂層に対応する樹脂組成物を同時に(例えば、多層インフレーション成形法により)成形する方法、各々の層を成形した後に貼り合わせる方法、先に成形した層の上に他の層をキャストする方法等を、単独で、あるいは適宜組み合わせて採用することにより得ることができる。なお、レーザ光吸収層以外の樹脂層を構成する樹脂成分は、レーザ光吸収層に使用し得る樹脂成分として例示したものと同様のものから適宜採用することができる。
レーザ加工時の熱による粘着フィルムの縮みを抑制する観点から、いくつかの態様において、ポリエステル樹脂により構成された層を含む基材フィルムを好ましく採用し得る。基材フィルムに用いられるポリエステル樹脂の一好適例として、PETが挙げられる。上記ポリエステル樹脂により構成された層は、レーザ光吸収剤を含む層であってよく、含まない層であってもよい。ここに開示される粘着フィルムは、例えば、レーザ光吸収剤を含むポリエステル樹脂層により構成された単層の基材フィルムの片面に粘着剤層を有する構成で好ましく実施され得る。
基材フィルムには、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、難燃剤、帯電防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等)、酸化防止剤等が挙げられる。
基材フィルムの表面には、必要に応じて、隣接する材料に対する密着性を高め、あるいは離型性を向上させるための適宜の表面処理が施されていてもよい。密着性を高めるための表面処理としては、コロナ放電処理、酸処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布等が例示される。かかる表面処理は、基材フィルムの一方の面(すなわち、粘着剤層が設けられる側の表面)および他方の面のいずれにも好ましく適用され得る。離型性を向上させるための表面処理は、一般的なシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の剥離処理剤を用いて実施することができる。かかる表面処理は、基材フィルムの他方の面(背面)に好ましく適用され得る。
基材フィルムの厚さは特に限定されず、例えば5μm~150μm程度とすることができる。基材フィルムまたは該基材フィルムを備えた粘着フィルムのハンドリング性の観点から、いくつかの態様において、基材フィルムの厚さは、例えば15μm以上であってよく、20μm以上でもよい。また、レーザ加工の迅速性や精密性の観点から、基材フィルムの厚さは、例えば110μm以下であってよく、90μm以下でもよく、70μm以下でもよく、45μm以下でもよい。レーザ光吸収層を含む基材フィルムにおいて、該レーザ光吸収層の厚さ(複数のレーザ光吸収層を含む基材フィルムでは、それらの層の合計厚さ)は、例えば3μm以上であってよく、5μm以上でもよく、10μm以上でもよい。いくつかの態様において、基材フィルム全体の厚さのうちレーザ光吸収層(換言すれば、レーザ光吸収剤が配置された箇所)の厚さは、例えば20%以上であってよく、50%以上でもよく、70%以上でもよく、90%以上でもよい。なお、単一のレーザ光吸収層または複数のレーザ光吸収剤層のみからなる基材フィルムでは、該基材フィルム全体の厚さのうちレーザ光吸収層の厚さが100%である。
ここに開示される技術において、粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種ゴム状ポリマーの一種または二種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。なお、この明細書において粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)をいう。粘着性能やコストの観点から、ゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。ここで、ゴム系粘着剤とはゴム系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤をいい、アクリル系粘着剤とはアクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤をいう。
ゴム系粘着剤の例としては、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等が挙げられる。合成ゴム系粘着剤のベースポリマーたるゴム系ポリマーの具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー;スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレンランダム共重合体、等のスチレン系エラストマー;その他、エチレンプロピレンゴム、プロピレンブテンゴム、エチレンプロピレンブテンゴム等が挙げられる。
粘着特性や粘弾性特性の調節に係る融通性や分子設計のしやすさの観点から、いくつかの態様において、上記粘着剤層を構成する粘着剤としてアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。アクリル系粘着剤は、基材としてのプラスチックフィルム(例えばPETフィルム)に対する粘着剤層の投錨性の観点からも有利となり得る。アクリル系粘着剤のベースポリマーたるアクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数1~20のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート、すなわちC1-20アルキル(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、C1-18アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、C4-12アルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、これらのアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は、直鎖状でもよく分岐状でもよい。
1-20アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート(BA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)およびイソノニルアクリレートが挙げられる。なかでもBAおよび2EHAが好ましい。
アクリル系ポリマーの合成に用いられるモノマー原料全体に占めるC1-20アルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば40重量%以上であってよく、50重量%以上でもよく、65重量%以上でもよい。いくつかの態様において、上記C1-20アルキル(メタ)アクリレートの割合は、70重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、93重量%以上でもよい。アルキル(メタ)アクリレートの割合の上限は特に限定されないが、粘着特性の観点から、通常はモノマー原料全体の99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが適当である。
モノマー原料としてC4-12アルキル(メタ)アクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4-12アルキル(メタ)アクリレートの割合は、通常、50重量%以上とすることが適当であり、70重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、97重量%以上でもよく、100重量%でもよい。いくつかの態様において、上記モノマー原料は、C4-12アルキル(メタ)アクリレートとして、BAを単独で含んでもよく、2EHAを単独で含んでもよく、BAおよび2EHAのみを含んでもよい。
アクリル系ポリマーの一好適例として、モノマー原料全体の50重量%以上が2EHAであるアクリル系ポリマーが挙げられる。いくつかの態様において、モノマー原料全体に占める2EHAの割合は、65重量%以上でもよく、75重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、92重量%以上でもよい。2EHAの使用量の増大により、被着体(加工対象物)表面に対する密着性は向上する傾向にある。このことは、例えば、レーザ加工時のアシストガス圧による剥がれを抑制する観点から有利となり得る。
アクリル系ポリマーのモノマー原料は、n-ブチルメタクリレート(BMA)を含んでいてもよい。上記アクリル系ポリマーは、例えば、BAおよび2EHAの一方または両方に加えてBMAを含む組成のモノマー原料の重合物であり得る。モノマー原料全体に占めるBMAの量は、例えば5重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよく、25重量%以上でもよい。また、モノマー原料全体に占めるBMAの量は、通常、50重量%以下が適当であり、例えば45重量%以下であってよく、40重量%以下でもよく、35重量%以下でもよい。
上記モノマー原料は、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(その他モノマー)を含んでいてもよい。上記その他モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整、粘着性能の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらのうちの好適例として、ビニルエステル類が挙げられる。ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。ここに開示される粘着フィルムのいくつかの態様において、モノマー原料全体に占めるVAcの割合は、40重量%以下に抑えることが好ましい。VAcの使用量が多くなると、アクリル系ポリマーの高温弾性率が高くなりすぎて、アシストガス圧による剥がれが生じやすくなることがあり得る。かかる観点から、VAcの使用量は、例えば10重量%以下であってよく、5重量%以下でもよく、2重量%以下でもよい。モノマー原料がVAcを含まなくてもよい。
また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは接着力の向上に寄与し得るその他モノマーとして、水酸基(OH基)含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレートや4-ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。シアノ基含有モノマーの例としては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが挙げられる。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーの一好適例として、上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が例示される。なかでも、好ましいカルボキシ基含有モノマーとして、AAおよびMAAが挙げられる。
上記その他モノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。その他モノマーの合計含有量は特に限定されない。例えば、全モノマー成分の凡そ40重量%以下(典型的には、0.001~40重量%)とすることができ、通常は凡そ30重量%以下(典型的には0.01~30重量%、例えば0.1~10重量%)とすることが好ましい。
特に限定するものではないが、上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、モノマー原料全体に占めるカルボキシ基含有モノマーの量は、例えば0.1~15重量%程度とすることができる。加工対象物表面に対して柔軟に密着する粘着剤が得られすいことから、いくつかの態様において、上記カルボキシ基含有モノマーの量は、例えば、モノマー原料全体の10重量%以下であってよく、7重量%以下でもよく、6重量%以下でもよく、5重量%以下でもよい。また、定荷重剥離試験における剥離距離抑制の観点から、モノマー原料全体に占めるカルボキシ基含有モノマーの量は、例えば0.5重量%以上であってよく、1.5重量%以上でもよく、2.5重量%以上でもよく、3.5重量%以上でもよい。
特に限定するものではないが、上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、全モノマー成分の凡そ0.001~10重量%(例えば0.01~5重量%、典型的には0.02~2重量%)とすることが適当である。いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの含有量は、全モノマー成分の凡そ0.05重量%以上であってよく、0.05重量%超でもよく、凡そ0.07重量%以上でもよい。ここに開示される技術は、水酸基含有モノマーを実質的に使用しない態様でも好ましく実施され得る。
ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)のTgは特に限定されない。通常は、凡そ-80℃~-10℃の範囲とすることが適当であり、凡そ-80℃~-20℃の範囲であってもよい。被着体(加工対象物)表面に対する密着性を高めてアシストガス圧による剥がれを抑制する観点から、ベーポリマーのTgは、-35℃以下であることが好ましく、-40℃以下であることがより好ましい。より高い効果を得る観点から、いくつかの態様において、ベースポリマーのTgは、例えば-45℃以下であってよく、-50℃以下でもよく、-55℃以下でもよく、-60℃以下でもよい。ここに開示される技術は、ベースポリマーのTgが-63℃以下である態様でも好適に実施され得る。
ここで、ベースポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用
いるものとする。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
n-ブチルメタクリレート 20℃
アクリロニトリル 104℃
アクリル酸 106℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。上記Polymer Handbookに複数の数値が記載されている場合はconventionalの値を採用する。上記Polymer Handbookに記載のないモノマーについては、モノマー製造企業のカタログ値を採用する。上記Polymer Handbookに記載がなく、モノマー製造企業のカタログ値も提供されていないモノマーのホモポリマーのTgとしては、日本国特許出願公開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
ベースポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類)や、酢酸エチル等の酢酸エステル類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類等が好ましく用いられ得る。
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の一種または二種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005重量部以上凡そ1重量部以下(典型的には凡そ0.01重量部以上凡そ1重量部以下)程度の範囲から選択することができる。
ここに開示される技術において、ベースポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に限定されず、例えば10×10~500×10の範囲であり得る。定荷重剥離試験における剥離距離の抑制と高速剥離強度の抑制とを高レベルで両立させる観点から、いくつかの態様において、ベースポリマーのMwは、例えば10×10~150×10であってよく、20×10~90×10でもよく、35×10~70×10でもよい。ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)に基づく標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgel GMH-H(S)、東ソー社製)を用いることができる。
粘着剤層には架橋剤を含有させることができる。架橋剤の使用により、粘着剤層に適度な凝集力を付与することができる。架橋剤は、高速剥離強度の抑制や高温弾性率の調節にも役立ち得る。架橋剤を含有する粘着剤層は、例えば、該架橋剤を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成することにより得ることができる。上記架橋剤は、架橋反応後の形態、架橋反応前の形態、部分的に架橋反応した形態、これらの中間的または複合的な形態等で粘着剤層に含まれ得る。上記架橋剤は、典型的には、専ら架橋反応後の形態で粘着剤層に含まれている。
架橋剤を使用する場合における使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば0.005重量部以上10重量部以下の範囲とすることができる。ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、例えば0.01重量部以上であってよく、0.1重量部以上でもよく、0.5重量部以上でもよい。また、被着体(加工対象物)表面に対する密着性向上の観点から、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、例えば5.0重量部未満であってよく、4.0重量部未満でもよく、3.5重量部以下でもよく、2.5重量部以下でもよい。ここに開示される技術は、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量が2.0重量部未満または1.5重量部以下である態様でも好適に実施され得る。
使用し得る架橋剤の例には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、過酸化物等の架橋剤が含まれる。上記架橋剤の好適例として、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が挙げられる。架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられ得る。イソシアネート系架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。イソシアネート系架橋剤は、他の架橋剤、例えばエポキシ系架橋剤と組み合わせて用いてもよい。
上記イソシアネート系架橋剤としては、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物を用いることができる。イソシアネート系架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
上記イソシアネート系架橋剤としては、より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製,商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製,商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製,商品名コロネートHX)等のイソシアネート付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名:タケネートD110N)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名:タケネートD120N)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名:タケネートD140N)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名:タケネートD160N);ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート等を挙げることができる。これらのなかでも芳香族イソシアネートや脂環式イソシアネートを用いることが好ましい。
イソシアネート系架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば凡そ0.1重量部以上であってよく、凡そ0.5重量部以上でもよく、凡そ1.0重量部以上でもよく、1.5重量部超でもよい。より高い使用効果を得る観点から、いくつかの好ましい態様に係る粘着剤層において、ベースポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば2.0重量部超であってよく、凡そ2.5重量部以上でもよく、2.5重量部超でもよく、凡そ2.7重量部以上でもよい。また、ベースポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば10重量部以下であってよく、7重量部以下であってもよく、5重量部以下でもよい。
上記エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物を用いることができる。エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。上記エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の商品名「テトラッドC」、「テトラッドX」等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。また、エポキシ系架橋剤は、単独で使用してもよく、他の架橋剤、例えばイソシアネート系架橋剤と組み合わせて用いてもよい。エポキシ系架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば0.005~5重量部程度とすることができ、0.01~5重量部としてもよく、0.1~3重量部としてもよい。
粘着剤層には、被着体(加工対象物)から除去(典型的には、引き剥がして除去)する際における作業性改善等の目的で、必要に応じて剥離調整剤を含有させてもよい。剥離調整剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の各種の界面活性剤を用いることができる。そのような界面活性剤の非限定的な例としては、アニオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル等;ノニオン系界面活性剤として、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型、疎水基と親水基がアミド結合で結合しているタイプの脂肪酸アルカノールアミド型等;カチオン系界面活性剤として、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型等;が挙げられる。いくつかの態様において、リン酸エステル系の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンジアルキルアリールリン酸エステル)を好ましく採用し得る。剥離調整剤の量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば0.001重量部以上5重量部以下であってよく、0.005重量部以上2重量部以下でもよく、0.01重量部以上1重量部以下でもよく、0.01重量部以上0.8重量部以下でもよい。あるいは、このような剥離調整剤を実質的に含有しない粘着剤層であってもよい。
粘着剤層には、必要に応じて、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂等の、公知の粘着付与樹脂を含有させることができる。レーザ切断残渣の低減や、被着体からの除去時における作業性向上の観点から、粘着付与樹脂の量は、ベースポリマー100重量部に対して5重量部未満とすることが好ましく、1重量部以下とすることがより好ましい。ここに開示される粘着フィルムは、実質的に粘着付与樹脂を使用しない態様で好ましく実施することができる。
粘着剤層には、必要に応じてレーザ光吸収剤を含有させることができる。粘着剤層に含有させるレーザ光吸収剤としては、上記で例示したレーザ光吸収剤のなかから一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。粘着剤層におけるレーザ光吸収剤の含有量は、通常、該粘着剤層の5重量%以下とすることが適当であり、粘着性能の観点から3重量%以下が好ましく、1重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤層がレーザ光吸収剤を実質的に含有しない態様でも好ましく実施され得る。
その他、粘着剤層は、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を、必要に応じて含有してもよい。このような添加剤は、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
粘着剤層の厚さは、粘着フィルムの用途に応じて適切な粘着性能が得られるように適宜設定することができる。粘着剤層の厚さは、通常、0.5μm~50μmとすることが適当である。加工対象物への密着性向上の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば1.5μm以上であってよく、3μm以上でもよく、5μm以上でもよく、7μm以上でもよい。また、レーザ加工の迅速性や精密性の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば30μm以下であってよく、20μm以下でもよく、15μm以下でもよい。
ここに開示される粘着フィルムの厚さは特に限定されないが、通常は10μm~200μm程度が適当である。粘着フィルムのハンドリング性等の観点から、いくつかの態様において、粘着フィルムの厚さは、例えば20μm以上であってよく、25μm以上でもよく、30μm以上でもよい。また、レーザ加工の迅速性や精密性の観点から、粘着フィルムの厚さは、例えば150μm以下であってよく、120μm以下でもよく、100μm以下でもよく、80μm以下でもよく、55μm以下でもよい。
ここに開示される粘着フィルムのいくつかの態様において、粘着剤層に対する基材フィルムの厚さ比は、例えば10以下であってよく、8以下でもよく、6以下でもよく、5以下でもよく、4.5以下でもよく、4以下でもよい。上記厚さ比(基材/粘着剤層)が小さくなると、基材が熱収縮しようとする応力に耐えて被着体(加工対象物)に対する良好な密着を維持する粘着フィルムが得られやすくなる。また、粘着フィルムのハンドリング性等の観点から、上記厚さ比(基材/粘着剤層)は、例えば1以上であってよく、2以上でもよく、2.5以上でもよく、3以上でもよく、3.5以上でもよい。
ここに開示される粘着フィルムは、120℃で10分間加熱する熱収縮試験における熱収縮率Sが-2%以上2%以下であることが好ましい。より具体的には、条件(A):MD熱収縮率(SMD)およびTD熱収縮率(STD)がいずれも-2%以上2%以下である;を満たす粘着フィルムが好ましい。条件(A)を満たす粘着フィルムは、MDおよびTDのいずれに対しても加熱による寸法変化が少ない。このような粘着フィルムは、例えば加工対象物に貼り付けられて該加工対象物ごと短波長のレーザ光(例えば、主波長が1000nm~1100nmの範囲にあるレーザ光)で切断される態様で用いられても、切断時の局所的な温度上昇に耐えて、加工対象物への貼付け当初の寸法をよりよく維持し得る。これにより、加工対象物のレーザ加工縁部において、粘着フィルムの縮みに起因する加工対象物表面の露出を効果的に抑制することができる。上記熱収縮率は、後述する実施例に記載の方法で求められる。SMDおよびSTDは、例えば、基材フィルムの組成、厚さ、製法等の選択、粘着剤層の組成や厚さの選択、粘着フィルムの作製方法の選択、等により調節することができる。なお、熱収縮率の値がマイナスである(ゼロより小さい)ことは、熱収縮試験によりサンプルの寸法が増加したことを意味する。熱収縮率の値がゼロに近いほど、すなわち熱収縮値の絶対値が小さいほど、熱収縮試験による寸法変化が小さいといえる。
ここに開示される粘着フィルムは、|SMD |および|STD|の少なくとも一方(好ましくは両方)が、1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましい。ここで、|SMD |は、MD熱収縮率の値の絶対値を意味し、|STD |は、TD熱収縮率の値の絶対値を意味する。このような粘着フィルムによると、レーザ加工縁部における加工対象物表面の露出がよりよく抑制される傾向にある。
ここに開示される粘着フィルムのいくつかの態様において、SMD,STDは、以下の条件(a)または(b)を満たすことが好ましい。
(a)SMD=0%、かつSTD=0%である。
(b)0%<|SMD|、0%<|STD|、かつ0.5≦|SMD/STD|≦4である。
ここで、|SMD/STD|は、TD熱収縮率に対するMD熱収縮率の比の絶対値を意味する。以下、|SMD/STD|のことを熱収縮比と表記することがある。
MD=0%、かつSTD=0%である粘着フィルム、すなわち上記条件(a)を満たす粘着フィルムは、MDおよびTDのいずれにおいても加熱に対する寸法安定性に優れるので好ましい。
また、本発明者は、粘着フィルムが上記条件(a)を満たさない場合、SMDおよびSTDのいずれか一方のみが0%であると、SMDおよびSTDのうち残りの一方の熱収縮率の絶対値が大きくなる傾向にあることを見出した。その理由は、特に限定的に解釈されるものではないが、MDおよびTDのいずれか一方の熱収縮率のみが0%である粘着フィルムは、本質的に熱による寸法変化が小さいというよりは、熱による寸法変化の異方性が高い傾向にあるためと考えられる。レーザ加工後の加工対象物保護性向上の観点からは、熱による寸法変化の異方性は低いほうが望ましい。ここに開示される技術では、熱収縮の異方性の程度を把握する指標として、上記熱収縮比(すなわち|SMD/STD|)を用いることができる。この熱収縮比の値が1に近いほど熱収縮の異方性が小さいといえる。例えば上記条件(b)のように熱収縮比が0.5以上4以下である粘着フィルムが好ましい。いくつかの態様において、上記熱収縮比は、例えば3以下であってよく、2以下でもよく、1.5以下でもよい。ここに開示される粘着フィルムは、例えば、上記熱収縮比が0.5以上2以下、または0.7以上1.5以下である態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される粘着フィルムは、30m/分の剥離速度で測定される高速剥離強度が3N/20mm以上であることが好ましい。ここで、剥離速度30m/分とは、短波長レーザ光による加工対象物の加工時に、該加工対象物に貼り付けられた粘着フィルムにアシストガスが吹き付けられる状況を想定して設定された測定条件である。レーザ加工の際に供給される上記アシストガスによって粘着フィルムに浮き(典型的には、レーザ光による切断部からアシストガスがその風圧により加工対象物と粘着フィルムとの接着界面に入り込むことによる部分的な剥がれ)が生じると、粘着フィルムの加工対象物への固定(粘着剤による接合)が解除された状態で該粘着フィルムが熱に曝されることにより熱収縮が大きくなり、加工縁部における加工対象物表面の露出が進行し得る。高速剥離強度が3N/20mm以上である粘着フィルムによると、切断時の浮きを効果的に抑制することができる。
より高い効果を得る観点から、いくつかの態様において、粘着フィルムの高速剥離強度は、例えば3.5N/20mm以上であってよく、4.0N/20mm以上でもよく、4.5N/20mm以上でもよい。高速剥離強度の上限は特に制限されないが、加工対象物から粘着フィルムを剥離する際における作業負担軽減や粘着フィルムの千切れ防止の観点から、いくつかの態様において、粘着フィルムの高速剥離強度は、例えば20N/20mm以下であってよく、15N/20mm以下でもよく、10N/20mm以下でもよく、8N/20mm以下でもよい。高速剥離強度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。高速剥離強度は、例えば、粘着剤層のベースポリマーの種類(モノマー原料の組成、Tg、Mw等)の選択、架橋剤の種類や使用量の選択、剥離調整剤や粘着付与樹脂等の任意成分の使用、等により調節することができる。
ここに開示される粘着フィルムは、30gの荷重を1時間付加する定荷重剥離試験において、剥離距離が50mm未満であることが好ましい。この剥離距離が短い粘着フィルムによると、レーザ加工に伴う熱収縮等によってレーザ加工後に残留する応力(内部歪)に耐えて、粘着フィルムが加工対象物表面に密着した状態をよりよく維持することができる。例えば、上記残留応力に起因して粘着フィルムの端がレーザ加工後の加工対象物から剥がれる事象をよりよく防止することができる。このことは、切断後の加工対象物の保護性向上の観点から好ましい。いくつかの態様において、上記剥離距離は、例えば45mm以下であってよく、40mm以下でもよく、35mm以下でもよい。剥離距離の下限は特に制限されないが、高速剥離強度とのバランスを考慮して、例えば10mm以上でもよく、15mm以上でもよい。定荷重剥離試験における剥離距離は、後述する実施例に記載の方法で測定される。上記剥離距離は、例えば、粘着剤層のベースポリマーの種類(モノマー原料の組成、Tg、Mw等)の選択、架橋剤の種類や使用量の選択、剥離調整剤や粘着付与樹脂等の任意成分の使用、等により調節することができる。
特に限定するものではないが、粘着剤層を構成する粘着剤は、高温弾性率(すなわち、120℃における弾性率)が例えば50kPa以上であることが好ましい。より高温弾性率の高い粘着剤によると、例えばレーザ加工時の熱により基材フィルムが収縮しようとするときに、その収縮応力に耐えて粘着フィルムと加工対象物との接合状態をよりよく維持し得る。このことによって加工縁部における加工対象物表面の露出が抑制され得る。かかる観点から、粘着剤の高温弾性率は、例えば60kPa以上であってよく、70kPa以上でもよい。上記高温弾性率は、通常、凡そ150kPa以下とすることが適当である。高温弾性率が高すぎると、常温域における粘着剤の柔軟性が低下して加工対象物への貼付け作業性が低下したり、粘着フィルムと加工対象物との界面の密着性が低下して該界面にアシストガスが入り込むことによる剥がれが生じやすくなったりすることがあり得る。かかる観点から、高温弾性率は、例えば120kPa未満であってよく、100kPa未満でもよく、90kPa未満でもよい。
ここに開示される粘着フィルムは、主波長1.0μm~1.1μmの短波長レーザにより加工される加工対象物に貼り付けられた状態で、該加工対象物のレーザ加工に伴ってレーザ切断される態様で好ましく用いられ得る。上記粘着フィルムによると、レーザ加工時に加わる局所的な熱やアシストガス圧に耐えて、加工後の加工対象物(特に、加工縁部における加工対象物表面)を好適に保護することができる。ここに開示される粘着フィルムが貼り付けられた状態で加工対象物に施されるレーザ加工の種類は特に限定されず、例えば切断、孔開け、切削等であり得る。このようなレーザ加工において、上記粘着フィルムは、加工対象物のレーザ光照射側の表面に貼り付けて用いられてもよく、レーザ光照射側とは反対側の表面(裏面)に貼り付けて用いられてもよく、レーザ照射側およびその反対側の両面に貼り付けて用いられてもよい。このような使用態様において、粘着フィルムは、レーザ加工の前後あるいはレーザ加工中に加工対象物の表面を保護する保護フィルムとしての機能を果たし得る。
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
(1) 基材としてのプラスチックフィルムと、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備えた粘着フィルムであって、
以下の条件:
(A)120℃で10分間加熱する熱収縮試験において、流れ方向の熱収縮率SMDおよび該流れ方向と直交する方向の熱収縮率STDがいずれも-2%以上2%以下である;
(B)30m/分の剥離速度で測定される高速剥離強度が3N/20mm以上20N/20mm以下である;
(C)30gの荷重を1時間付加する定荷重剥離試験において、剥離距離が50mm未満である;および、
(D)波長1000nm~1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上である;
を満たす、粘着フィルム。
(2) 上記粘着剤層を構成する粘着剤は、120℃における弾性率が50kPa以上150kPa以下である、上記(1)に記載の粘着フィルム。
(3) 上記粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む、上記(1)または(2)に記載の粘着フィルム。
(4) 上記アクリル系ポリマーは、ガラス転移温度が-40℃以下である、上記(3)に記載の粘着フィルム。
(5) 上記アクリル系ポリマーは、C4-12アルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有するモノマー原料の重合物である、上記(3)または(4)に記載の粘着フィルム。
(6) 上記アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーを0.5重量%以上7重量%以下含むモノマー原料の重合物である、上記(3)~(5)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(7) 上記プラスチックフィルムはPETフィルムである、上記(1)~(6)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(8) 上記粘着フィルムの厚さが10μm以上150μm以下である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(9) 上記熱収縮率SMD,STDは、
(a)SMDおよびSTDがいずれも0%であるか、または
(b)|SMD|および|STD|がいずれも0%より大きく、かつ0.5≦|SMD/STD|≦4である、上記(1)~(8)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(10) 上記基材はレーザ光吸収剤を含む、上記(1)~(9)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(11) 上記レーザ光吸収剤は、カーボンブラック、金属粉末および金属化合物粉末からなる群から選択される少なくとも一種を含む、上記(10)に記載の粘着フィルム。
(12) 上記基材は、上記レーザ光吸収剤を含む単層のプラスチックフィルムである、上記(10)または(11)に記載の粘着フィルム。
(13) 上記基材は、上記レーザ光吸収剤を含む単層のPETフィルムである、上記(10)~(12)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(14) 上記粘着剤層に対する基材フィルムの厚さ比(基材/粘着剤層)が2以上5以下である、上記(1)~(13)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(15) 上記アクリル系ポリマーは、2-エチルヘキシルアクリレートを75重量%以上含有するモノマー原料の重合物である、上記(3)~(6)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(16) 上記アクリル系ポリマーは、C4-12アルキル(メタ)アクリレートを95重量%以上含み、さらにカルボキシ基含有モノマーを0.5~5重量%含むモノマー原料の重合物である、上記(3)~(6)および(15)にいずれかに記載の粘着フィルム。
(17) 上記粘着剤層は、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む粘着剤組成物により形成されている、上記(1)~(16)のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
(18) 上記(1)~(17)のいずれかに記載の粘着フィルムからなり、主波長1000nm~1100nmのレーザ光で切断して用いられる、レーザ切断用粘着フィルム。
(19) 上記(1)~(17)のいずれかに記載の粘着フィルムが貼り付けられている加工対象物を用意すること、および、
上記粘着フィルムが貼り付けられている上記加工対象物に主波長1000nm~1100nmのレーザ光を照射することにより、上記加工対象物をレーザ加工するとともに上記レーザ光により上記粘着フィルムを切断すること、
を包含する、レーザ加工された物品の製造方法。
(20) 上記レーザ光が照射される上記加工対象物には、該加工対象物の上記レーザ光が照射される側の面およびその反対面の少なくとも一方に上記粘着フィルムが貼り付けられている、上記(19)に記載の方法。
(21) 上記レーザ加工後の上記加工対象物をさらに後加工すること、および
上記加工対象物から上記粘着フィルムを引き剥がして除去すること、
をこの順に含む、上記(19)または上記(20)に記載の方法。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。また、特記しない限り、各材料の使用量は有効成分量基準である。
以下の例1~12において粘着フィルムの作製に使用した基材は次のとおりである。
基材A:厚さ38μmの白色PETフィルム(帝人デュポン社製、テトロンフィルムU2)
基材B:厚さ38μmの黒色PETフィルム(東レ社製、ルミラーX30)
基材C:厚さ38μmの黒色PETフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルB100)
基材D:厚さ38μmの白色PETフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルW400)
基材E:厚さ38μmの透明PETフィルム(東レ社製、ルミラーS10)
基材F:低密度ポリエチレン(三井化学社製、スミカセンF208)をインフレーション法にてダイス温度160℃で製膜して厚さ55μmの透明なポリエチレンフィルムを得、その一方の表面(粘着剤層形成面)にコロナ放電処理を施したもの。
基材G:平均粒径20nmのカーボンブラック(CB)1.5%および低密度ポリエチレン(東ソー社製、ペトロセン186R)98.5%を含む樹脂材料をインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して厚さ55μmの黒色ポリエチレンフィルムを得、その一方の表面(粘着剤層形成面)にコロナ放電処理を施したもの。
基材H:平均粒径20nmのカーボンブラック(CB)0.75%およびポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ノバデュラン5505S)99.25%を含む樹脂材料をTダイ法によりダイス温度245℃で成膜して厚さ40μmの黒色PBTフィルムを得、その一方の表面(粘着剤層形成面)にコロナ放電処理を施したもの。
<粘着フィルムの作製>
(例1~3、5~9)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器に、重合溶媒としての酢酸エチルと、モノマー原料としての2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)96部およびアクリル酸(AA)4部と、重合開始剤としてのAIBN0.2部とを入れて窒素気流下で重合反応を行い、アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た(濃度40%)。上記アクリル系ポリマーのMwは50×10であった。この溶液に、該溶液に含まれる不揮発分100部に対してイソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL)1部を添加して、粘着剤組成物Aを得た。表1に示す基材の一方の面に上記粘着剤組成物Aを塗布し、乾燥させて、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。このようにして本例に係る粘着フィルムを得た。
(例4)
2EHA70部、n-ブチルメタクリレート(BMA)28部およびAA2部からなるモノマー原料と、界面活性剤(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)2部および水150部とを混合し、窒素ガスを導入しながら乳化機(ホモミキサー)で乳化させることにより、モノマー原料の乳化液を調製した。
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器に上記乳化液を入れ、窒素気流下で攪拌しながら液温50℃まで加熱した。これに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬工業社製、商品名「V-50」)0.03部を加え、液温を50℃付近に保って5時間重合反応を行った。得られた重合反応液にアンモニア水を加えてpHを8程度に調整した。このようにしてアクリル系ポリマーの水分散液を調製した。上記水分散液に含まれる不揮発分100部に対してエポキシ系架橋剤(DIC社製、CR-5L)2部を混合して、粘着剤組成物Bを得た。表1に示す基材の一方の面に上記粘着剤組成物Bを塗布し、乾燥させて、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。このようにして本例に係る粘着フィルムを得た。
(例10)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器に、重合溶媒としての酢酸エチル、モノマー原料としてのn-ブチルアクリレート(BA)85部、アクリロニトリル(AN)15部およびAA2.5部と、重合開始剤としてのAIBN0.2部とを入れて窒素気流下で重合反応を行い、アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液(濃度25%)を得た。上記アクリル系ポリマーのMwは60×10であった。この溶液に、該溶液に含まれる不揮発分100部に対して、テルペン変性フェノール樹脂(住友ベークライト社製、スミライトレジンPR-12603N)10部、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL)5部、および剥離助剤としてのポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルリン酸(東邦化学工業社製、フォスファノールRE-410、モノエステルとジエステルとの混合体、pKa2.7)1.0部を配合し、粘着剤組成物Cを得た。表1に示す基材の一方の面に上記粘着剤組成物Cを塗布し、乾燥させて、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。このようにして本例に係る粘着フィルムを得た。
(例11)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器に、重合溶媒としての酢酸エチル、モノマー原料としての2EHA90部およびAA10部と、重合開始剤としてのAIBN0.4部とを入れて窒素気流下で重合反応を行い、アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液(濃度30%)を得た。上記アクリル系ポリマーのMwは100×10であった。この溶液に、該溶液に含まれる不揮発分100部に対してエポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、テトラッドC)0.05部を添加して混合し、粘着剤組成物Dを得た。上記基材Bの一方の面に上記粘着剤組成物Dを塗布し、乾燥させて、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。このようにして本例に係る粘着フィルムを得た。
(例12)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器に、重合溶媒としての酢酸エチルと、モノマー原料としての2EHA96部およびAA4部と、重合開始剤としてのAIBN0.2部とを入れて窒素気流下で重合反応を行い、アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た(濃度40%)。上記アクリル系ポリマーのMwは50×10であった。この溶液に、該溶液に含まれる不揮発分100部に対してイソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL)1部およびエポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、テトラッドC)3部を添加して、粘着剤組成物Eを得た。表1に示す基材の一方の面に上記粘着剤組成物Eを塗布し、乾燥させて、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。このようにして本例に係る粘着フィルムを得た。
<性能評価>
上記で作製した粘着フィルムから適切なサイズのサンプルを切り出し、以下の項目を評価した。
1.レーザ光吸収率の測定
(1)透過率
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U-4100」
測定条件:測定モード応用計測、データモード%T、スキャンスピード750nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット自動制御、ホトマル電圧自動1、光量制御モード固定、高分解能測定OFF、減光板未使用、PbS感度1、セル長10mm
測定方法:
(i).測定装置の電源を入れ、装置を安定させるために2時間以上待機した。その後、サンプルをセットせずにベースラインを測定した。
(ii).次いで、測定装置の透過率測定部分にサンプルを、粘着フィルムの背面から入光するようにセットし、上記測定条件にて1000nm~1100nmの波長範囲の透過率を測定した。
(2)反射率
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U-4100」
測定条件:測定モード応用計測、データモード%R、スキャンスピード750nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット自動制御、ホトマル電圧自動1、光量制御モード固定、高分解能測定OFF、減光板未使用、PbS感度1、セル長10mm
測定方法:
(i).測定装置の電源を入れ、装置を安定させるために2時間以上待機した。その後、反射率測定部分に白色標準板をセットし(サンプルはセットしない。)、ベースラインを測定した。
(ii).次いで、反射率測定部分にサンプルをセットした。このとき、サンプルを透過した光の反射を防止するため、サンプルの入光面と反対側に日東樹脂工業株式会社製の樹脂板、商品名「クラレックス(登録商標)」(黒色、1mm厚)を置き、該樹脂板にサンプルとしての粘着フィルムを貼り合わせた(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復)。そして、上記測定条件にて1000nm~1100nmの波長範囲の反射率を測定した。
(3)吸収率
上記透過率T(%)および反射率R(%)から、次式:100(%)-T(%)-R(%);により、1000nm~1100nmの波長範囲における最小の吸収率を算出した。得られた値を表1のレーザ光吸収率の欄に示した。
2.熱収縮試験
各例に係る粘着フィルムを縦100mm×横100mmのサイズにカットして、測定用のサンプルを作製した。このとき、サンプルの縦方向が粘着フィルムのMDと一致するようにした。25℃において上記サンプルのMD(縦)およびTD(横)の長さを測定し、これをMDおよびTDの初期長さLとした。
次いで、上記サンプルを120℃のオーブン中で10分間加熱した後、25℃の温度下に取り出して1時間以上放置した。このサンプルのMDおよびTDの長さを測定し、これをMDおよびTDの120℃加熱後長さLとした。
そして、MDおよびTDのそれぞれについて、上記初期長さLおよび120℃加熱後長さLから以下の式により熱収縮率Sを求めた。すなわち、下記式におけるLおよびLとして、MDについての値を用いることにより、MD熱収縮率(SMD)を算出した。また、下記式におけるLおよびLとして、TDについての値を用いることにより、TD熱収縮率(STD)を算出した。
熱収縮率S(%)=((L-L)/L)×100
3.定荷重剥離試験
粘着フィルムを幅20mm、長さ150mmのサイズにカットして試験片を作製した。23℃、50%RHの環境下にて、試験片をステンレス鋼板に2kgのローラを1往復させて圧着した。これを上記環境下に30分間放置した。その後、23℃、50%RHの環境下にて、試験片が貼り付けられた面が下方になるようにして被着体を水平に保持した。その試験片の一端に、剥離角度が90度となるように荷重30gを掛けて、1時間後の剥離距離を測定した。
4.高速剥離強度
各例に係る粘着フィルムを、幅20mm、長さ100mmのサイズの短冊状にカットして試験片を作製した。この試験片の粘着面を被着体としてのステンレス鋼板(SUS430BA板)に、JIS Z0237に規定する2kgのゴムローラを1往復させて圧着した。このサンプルを23℃×50%RHの標準環境下に30分間放置した後、該標準環境下にて、万能引張試験機を用いて、引張速度30m/分、剥離角度180度の条件で、高速剥離強度(N/20mm)を測定した。
5.高温弾性率
高温弾性率(kPa)は、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、ARES-G2)を用いて、下記の方法により求めた。
上記粘着剤組成物A~Eを剥離ライナー上に塗布して乾燥させることにより、該剥離ライナー上に厚さ20μmの粘着剤層を作製した。この粘着剤層を積層して約2mmの厚みとし、これをΦ7.9mmに打ち抜き、円柱状のペレットを作製して粘弾性測定用サンプルとした。上記測定サンプルをΦ7.9mmパラレルプレートの治具に固定し、上記動的粘弾性測定装置により下記の条件で貯蔵弾性率G’を測定した。その結果から120℃における貯蔵弾性率を読み取り、高温弾性率の値とした。
測定:せん断モード
温度範囲:-70~150℃
昇温速度:5℃/min
周波数:1Hz
6.レーザ切断試験
加工対象物として厚さ1.0mmのSUS304板(2B仕上げ)を用い、各例に係る粘着フィルムを加工対象物の上面および下面に貼付した。この加工対象物の上面側からレーザビームを照射して切断試験を行った。具体的には、ファイバーレーザ加工機(トルンプ社製、Trulaser5030)を使用し、切断速度1500mm/min、出力3000W、窒素ガス圧力18bar、ノズル直径2.0mm、ノズル高さ2mmにて、レーザビームの焦点を加工対象物(金属板)の上面側より0.5mm下の位置として直線の切断加工を行った。このとき、上面および下面に貼り付けられた粘着フィルムのTDと、レーザビームによる切断線の延びる方向とが一致するようにした。
その後、レーザ加工(ここではレーザ切断)された加工対象物の加工縁部を、マイクロスコープを用いて観察し、加工対象物(金属板)の切断端から粘着フィルムの端までの距離(すなわち、加工対象物の端が粘着フィルムの端から露出した長さ)を測定した。測定は、加工対象物の上面および下面のそれぞれについて10mm間隔で5箇所(合計10箇所)行い、それらの平均値を求めた。得られた結果を、表1の「加工対象物露出幅」の欄に示した。
また、上記加工端部において粘着フィルムの端に浮き、剥がれ、縒れ等がみられた場合には、レーザ加工時における耐浮き性に乏しい(P)と評価し、加工対象物露出幅の測定は行わなかった。粘着フィルムの端に浮き等の接着不具合が認められなかった場合には、耐浮き性良好(G)と評価した。結果を表1の「耐浮き性」の欄に示した。
なお、例5~7の粘着フィルムについては上記の切断試験条件で加工対象物を切断することができなかったため、切断性不足(P)と評価し、耐浮き性および加工対象物露出幅の評価は行わなかった。他の粘着フィルムは上記の切断試験条件で加工対象物を切断することができたため、切断性良好(G)と評価した。
Figure 0007105222000001
表1に示されるように、例1~4の粘着フィルムは良好な切断性および耐浮き性を示し、かつ切断後において良好な加工対象物保護性を示した。具体的には、加工対象物露出幅が0.5mm以下に抑制されていた。これに対して、条件(A)~(D)のうち一または二以上を満たさない例5~12の粘着フィルムは、レーザ切断性、耐浮き性および加工対象物露出幅抑制の少なくともいずれかの点において難のあるものであった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1,2 粘着フィルム
10 プラスチックフィルム(基材、基材フィルム)
10A 一方の面
10B 他方の面(背面)
20 粘着剤層
20A 表面(粘着面)
30 剥離ライナー
42 レーザ光吸収層
402 レーザ光吸収剤

Claims (8)

  1. 主波長1000nm~1100nmのレーザ光で切断して用いられるレーザ切断用粘着フィルムであって、
    基材としてのプラスチックフィルムと、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備えた粘着フィルムであ
    以下の条件:
    (A)120℃で10分間加熱する熱収縮試験において、流れ方向の熱収縮率SMDおよび該流れ方向と直交する方向の熱収縮率STDがいずれも-2%以上2%以下である;
    (B)30m/分の剥離速度で測定される高速剥離強度が3N/20mm以上20N/20mm以下である;
    (C)30gの荷重を1時間付加する定荷重剥離試験において、剥離距離が50mm未満である;および、
    (D)波長1000nm~1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上である;
    を満たし、
    前記基材は、レーザ光吸収剤を含むポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
    前記粘着剤層に対する前記基材の厚さ比が2以上である、粘着フィルム。
  2. 前記粘着剤層を構成する粘着剤は、120℃における弾性率が50kPa以上150kPa以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
  3. 前記粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む、請求項1または2に記載の粘着フィルム。
  4. 前記アクリル系ポリマーは、ガラス転移温度が-40℃以下である、請求項3に記載の粘着フィルム。
  5. 前記アクリル系ポリマーは、C4-12アルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有するモノマー原料の重合物である、請求項3または4に記載の粘着フィルム。
  6. 前記アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーを0.5重量%以上7重量%以下含むモノマー原料の重合物である、請求項3から5のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
  7. 厚さが10μm以上150μm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着フィルム。
  8. 前記熱収縮率SMD,STDは、
    (a)SMDおよびSTDがいずれも0%であるか、または
    (b)|SMD|および|STD|がいずれも0%より大きく、かつ0.5≦|SMD/STD|≦4である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着フィルム。
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