JP7103756B2 - リチウムイオン二次電池用正極材料 - Google Patents
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Ba1-xSrxTiO3 …(I)
[ただし式(I)中、xは0.1≦x≦0.9を満たす。]
により表されてもよい。
図1は、本開示の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極材料を示す概念図である。正極材料は、正極活物質粒子10と、強誘電体20とを含む。強誘電体20は、正極活物質粒子10の表面に配置されている。電池内では、正負極間に電界が生じる。電界により、強誘電体20に誘電分極が生じる。これにより負電荷(-)が生じる。負電荷と、Liイオン(Li+)との間に引力が働くことにより、正極活物質粒子10と電解質(電解液)との界面におけるLiイオンの移動が促進されると考えられる。
「正極活物質粒子」とは、正極活物質を含む粒子である。正極活物質粒子は、実質的に正極活物質のみを含む粒子であり得る。正極活物質粒子10は、一次粒子が集合した二次粒子であってもよい。一次粒子は、たとえば、10nm~1μmの平均粒径を有してもよい。二次粒子は、たとえば、1~30μmの平均粒径を有してもよい。本明細書の平均粒径は、レーザ回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布において微粒側から累積50%の粒径を示す。
「強誘電体」とは、外部電場が無くても自発分極を持ち、かつ分極の向きが電場の方向によって反転する結晶を示す。強誘電体20は、正極活物質粒子10の表面の少なくとも一部に配置されている。強誘電体20は、正極活物質粒子10の表面の全部を覆っていてよいし、表面の一部を覆っていてもよい。表面の少なくとも一部に強誘電体20が配置されていることにより、低温環境における出力特性の向上が期待される。
Ba1-xSrxTiO3 …(I)
[ただし式(I)中、xは、0.1≦x≦0.9を満たす。]
により表される化合物であってもよい。
Ba1-xSrxTiO3-y …(II)
[ただし式(I)中、x、yは、0.1≦x≦0.9、0≦y≦0.9を満たす。]
により表される化合物であってもよい。ここで「y」は、電気的中性が保たれるための酸素欠損量である。
1.正極板の製造
ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)のモル比が、Ni:Co:Mn=1:1:1となるように、Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩が純水に溶解された。これにより硫酸塩水溶液が得られた。水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液が、硫酸塩水溶液に滴下された。これにより正極活物質の前駆体(共沈水酸化物)が生成された。純水により前駆体が洗浄された。洗浄後の前駆体が乾燥された。乾燥後の前駆体が炭酸リチウム(Li2CO3)と混合された。これにより混合物が得られた。混合物が900℃で15時間加熱された。これにより焼成物が得られた。ボールミルにより焼成物が粉砕された。以上より、正極活物質粒子(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)が調製された。正極活物質粒子は、10μmの平均粒径を有するものであった。
導電材:アセチレンブラック
結着材:ポリフッ化ビニリデン
溶媒 :N-メチル-2-ピロリドン
以下の材料が準備された。
負極活物質粒子:天然黒鉛(平均粒径:20μm)
増粘材:カルボキシメチルセルロース
結着材:スチレンブタジエンゴム
溶媒 :水(イオン交換水)
帯状のセパレータが準備された。セパレータを挟んで、正極板と負極板とが対向するように、正極板、セパレータおよび負極板が積層され、さらに渦巻状に巻回された。これにより電極群が構成された。正極板および負極板に端子がそれぞれ接続された。電極群が電池ケースに収納された。
ゾル-ゲル液A(BaアルコキシドおよびTiアルコキシドの溶液)が準備された。40mlのエタノールと、比較例1で調製された正極活物質粒子と、ゾル-ゲル液Aとが所定の容器に投入された。ゾル-ゲル液Aの量は、正極活物質粒子に含まれるNi、CoおよびMnの合計物質量(すなわち正極活物質粒子の物質量)に対して、BaTiO3が1.0mоl%となるように調整された。
ゾル-ゲル液B(Srアルコキシドの溶液)が準備された。ゾル-ゲル液Aおよびゾル-ゲル液Bの混合物が使用されることを除いては、比較例2と同様に、実施例1に係る正極材料が調製された。この正極材料は、正極活物質粒子(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)と、強誘電体(Ba0.9Sr0.1TiO3)とを含む。強誘電体は、正極活物質粒子の表面に配置されている。強誘電体はペロブスカイト構造を有するものである。正極活物質粒子(非処理品)に代えて、実施例1に係る正極材料が使用されることを除いては、比較例1と同様に、電池が製造された。
下記表1に示される強誘電体が生成されるように、ゾル-ゲル液Aとゾル-ゲル液Bとの混合比が変更されることを除いては、実施例1と同様に、正極材料が調製され、電池が製造された。実施例2~9に係る正極材料において、強誘電体はいずれもペロブスカイト構造を有する。
ゾル-ゲル液Aに代えて、ゾル-ゲル液Bが使用されることを除いては、比較例2と同様に正極材料が調製され、電池が製造された。
下記表1に示される強誘電体が生成されるように、各種のゾル-ゲル液が使用されることを除いては、実施例4と同様に、正極材料が調製され、電池が製造された。
下記表1に示される強誘電体が生成されるように、ゾル-ゲル液(Pb、MgおよびNbのアルコキシド溶液)が使用されることを除いては、実施例1と同様に、正極材料が調製され、電池が製造された。
1.電池の活性化および初期容量の測定
25℃において、以下の定電流-定電圧方式(CCCV)充電により、電池が満充電にされた。次いで以下の定電流方式(CC)放電により、電池が放電された。このときの放電容量が初期容量とされた。なお「1C」は、満充電容量を1時間で放電する電流を示す。
CC放電 :CC電流=1/3C、終止電圧=3.0V
電池の開放電圧が3.7Vに調整された。-5℃に設定された恒温槽内に、電池が配置された。20Cの電流により、端子間電圧が3.3Vになるまで電池が放電された。これにより、放電容量が測定された。同様に、5℃、40℃においても、それぞれ放電容量が測定された。結果は下記表1に示されている。-5℃の放電容量が大きい程、低温環境における出力特性に優れることを示している。
60℃に設定された恒温槽内に電池が配置された。以下の充電と放電との一巡が1サイクルとされ、200サイクルが実施された。充電および放電は、いずれも定電流方式(CC)とされた。
CC放電:電流=10C、終止電圧=3.3V
上記表1に示されるように、90℃以下の温度範囲に誘電率の最大ピークを有する実施例は、かかる条件を満たさない比較例に比して、低温環境(-5℃)における出力特性に優れている。
実施例2~9では、上記式(I)中、xが0.2≦x≦0.9を満たしている。
Claims (2)
- 正極活物質粒子と、
強誘電体と
を含み、
前記強誘電体は、前記正極活物質粒子の表面の少なくとも一部に配置されており、
前記強誘電体は、-5℃未満の温度範囲に、誘電率の最大ピークを有し、
前記強誘電体は、下記式(I):
Ba1-xSrxTiO3 …(I)
[ただし式(I)中、xは0.4<x≦0.6を満たす。]
により表される、
リチウムイオン二次電池用正極材料。 - 前記強誘電体は、-70℃以上-50℃以下の温度範囲に、誘電率の最大ピークを有し、
上記式(I)中、xは、0.5≦x≦0.6の関係を満たす、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
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