JP7101132B2 - 食品用品質保持剤および食品の品質保持方法 - Google Patents

食品用品質保持剤および食品の品質保持方法 Download PDF

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Description

本発明は、食品用品質保持剤および食品の品質保持方法に関する。
消費者のライフスタイルの変化により、料理を簡便で短時間で行えるようにしたいという要望が高まる一方で、手作り感などの料理へのこだわりもあるのが現状である。そのため、完成品ではなく、スーパーマーケット等の生鮮食品として販売され、家庭で加熱調理するひと手間加えるタイプの加工食品の需要が増加している。
また、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通される食品には、セントラルキッチンなどで加工・製造され、ファミリーレストラン等の外食やコンビニエンスストアで加熱調理して提供されるものもある。近年の人手不足の影響などもあり、このような集約生産化も増加傾向にある。
このように、畜肉や魚肉を含む食品素材を加工し、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通し、喫食や販売前に加熱調理される食品の需要が非常に高まっている。そのため、これらの食品においても微生物の制御が可能な品質保持剤が求められている。
これまでに、クエン酸と、食酢と、炭酸水素ナトリウムとを特定比率で含有し、pHが2.25以下である殺菌剤(例えば特許文献1参照)、グルコマンナン、制菌有効性成分として、グリシン、有機酸及び有機酸の塩から選択された少なくとも1種、アルカリ化剤として、水酸化カルシウム及び炭酸水素ナトリウムの少なくとも一方を含む制菌処理用液で魚介類食材を処理し、グルコマンナンがゲル化する温度で加熱することを含む加熱済み魚介類食品の制菌方法(例えば特許文献2参照)、硬化油を主成分とする被覆材で被覆した被覆有機酸と、特定のHLB値、グリセリン重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルからなる分散剤とを特定比率で含有する日持ち向上剤(例えば特許文献3参照)、酢酸ナトリウム、特定料の酢酸カルシウムおよび被覆有機酸を含有する日持ち向上剤(例えば特許文献4参照)などが提案されている。
しかしながら、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通し、喫食や販売前に加熱調理される食品の中には、畜肉加工品のように乳酸菌が多く発生する食品も含まれており、このような食品にも対応するためには、品質保持剤の制菌力を高める必要がある。品質保持剤の制菌力を高める方法としては、制菌成分の量を増やすことが考えられるが、従来の品質保持剤では、食品の味に影響が出てしまい、優れた制菌力と、良好な食味とを両立することができる品質保持剤は未だ提供されていないのが現状である。
したがって、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通する食品の微生物を制御してその品質を保持することができ、且つ加熱調理後の食品の食味への影響が低減された食品用品質保持剤および食品の品質保持方法の速やかな提供が強く望まれている。
特許第4376293号公報 特開2018-121560号公報 特開2017-212887号公報 特開2016-104005号公報
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通する食品の微生物を制御してその品質を保持することができ、且つ加熱調理後の食品の食味への影響が低減された食品用品質保持剤および食品の品質保持方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、有機酸と、有機酸塩と、常温で流動性ないし液状を呈さない油脂で被覆された炭酸水素ナトリウムとを含有させることにより、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通する食品の微生物を制御してその品質を保持することができ、且つ加熱調理後の食品の食味への影響が低減されることを知見した。
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 有機酸、有機酸塩および炭酸水素ナトリウムを含有し、前記炭酸水素ナトリウムが常温で流動性ないし液状を呈さない油脂で被覆されていることを特徴とする食品用品質保持剤である。
<2> 炭酸水素ナトリウムが、融点40℃以上の油脂で被覆されている前記<1>に記載の食品用品質保持剤である。
<3> 有機酸を5~40質量部、有機酸塩を5~70質量部および油脂で被覆されている炭酸水素ナトリウムを炭酸水素ナトリウムの量として10~30質量部含有する前記<1>または<2>に記載の食品用品質保持剤である。
<4> 炭酸水素ナトリウムと、前記炭酸水素ナトリウムを被覆している油脂との質量比が、10:0.5~5の範囲である前記<1>~<3>のいずれかに記載の食品用品質保持剤である。
<5> 有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、酢酸およびグルコノデルタラクトンからなる群から選択される1種以上であり、有機酸塩が、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸カルシウム、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムおよびグルコン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である前記<1>~<4>のいずれかに記載の食品用品質保持剤である。
<6> 食品原料に対し、食品用品質保持剤が0.1~3.0質量%配合される前記<1>~<5>のいずれかに記載の食品用品質保持剤である。
<7> 前記<1>~<6>のいずれかに記載の食品用品質保持剤を食品の製造前ないし製造過程において配合することを含むことを特徴とする食品の品質保持方法である。
<8> 加熱調理前の食品がpH5.0~6.5の範囲に調整される前記<7>に記載の方法である。
<9> 加熱調理後の食品がpH5.3~6.8の範囲である前記<7>または<8>に記載の方法である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通する食品の微生物を制御してその品質を保持することができ、且つ加熱調理後の食品の食味への影響が低減された食品用品質保持剤および食品の品質保持方法を提供することができる。
図1は、試験例2のハンバーグのpHの経時変化を示したグラフである。
(食品用品質保持剤)
本発明の食品用品質保持剤(以下、「品質保持剤」と称することがある。)は、有機酸と、有機酸塩と、炭酸水素ナトリウムとを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
<食品>
本発明の品質保持剤が対象とする食品としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば畜肉や魚肉を含む食品素材を加工し、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通し、喫食や販売前に加熱調理される食品が好適に挙げられる。そのような食品は、スーパーマーケット等の生鮮食品として販売され、家庭等で加熱調理されるもの、セントラルキッチンで加工・製造され、ファミリーレストラン等の外食やコンビニエンスストアで加熱調理して提供されるものなどが挙げられる。具体的には、ハンバーグ、コロッケやメンチカツ、野菜類の肉詰めおよびその具材、餃子、焼売、雲呑およびその具材、肉まんの具材、肉類・魚介類のつみれやつくね、魚肉の練物などが挙げられる。
<有機酸>
前記有機酸としては、飲食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、酢酸およびグルコノデルタラクトンからなる群から選択される1種以上が好ましい。また、食品の品質保持以外の観点で、炭酸水素ナトリウムと反応して有機酸ナトリウム塩になったときに、呈味性を示すもの、例えばクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、アジピン酸なども好ましい有機酸である。
前記有機酸、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
<有機酸塩>
前記有機酸塩としては、飲食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸カルシウム、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムおよびグルコン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上が好ましく、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、フマル酸ナトリウムがより好ましい。
前記有機酸塩、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
<炭酸水素ナトリウム>
前記炭酸水素ナトリウムは、常温で流動性ないし液状を呈さない油脂、例えば融点40℃以上の油脂で被覆されていることが必要であり、融点45℃以上の油脂で被覆されていることが好ましく、融点45~85℃の油脂で被覆されていることがより好ましく、融点50~80℃の油脂で被覆されていることが特に好ましい。
なお、本発明において常温とは、15~25℃のことをいう。
ここで、常温で流動性ないし液状を呈する油脂、例えば融点40℃未満の油脂で被覆すると、加熱調理前の冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通する過程において、炭酸水素ナトリウムが有機酸と反応してしまうことにより、有機酸による食品中の制菌効果が低下するおそれがある。一方、融点が極度に高い油脂、例えば100℃を超えるような油脂であると、食品の加熱調理の過程で炭酸水素ナトリウムと有機酸との反応が十分に進行せず、有機酸が食品中に残ることで酸味・酸臭等により風味・食味が低下したり、食感向上効果が十分に得られないおそれがある。
前記炭酸水素ナトリウムとしては、飲食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記炭酸水素ナトリウムは、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
前記炭酸水素ナトリウムを被覆する油脂は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
例えば、不飽和脂肪酸を含む液状の油脂に水素添加処理を行って飽和脂肪酸量を増やし、固形化することができる。前記油脂の種類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば菜種油、パーム油、大豆油、米油、ごま油、綿実油、コーン油、牛脂、ラードなどが挙げられる。前記油脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記炭酸水素ナトリウムと、前記炭酸水素ナトリウムを被覆している油脂(以下、「被覆材」と称することがある。)との質量比としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常10:0.5~5の範囲であり、10:1~4の範囲の範囲が好ましい。炭酸水素ナトリウム10質量部に対して被覆材が0.5質量部未満であると、冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通する過程において、炭酸水素ナトリウムが有機酸と反応してしまうおそれがある。一方、炭酸水素ナトリウム10質量部に対して被覆材が5質量部を超えると、加熱調理の過程で炭酸水素ナトリウムと有機酸との反応が十分に進行しないおそれがあるだけでなく、本発明の品質保持剤中における油脂で被覆された炭酸水素ナトリウムの量が多くなり、品質保持剤の設計に支障が生じるおそれがある。
前記油脂による炭酸水素ナトリウムの被覆は、前記炭酸水素ナトリウムの表面の少なくとも一部が被覆されていればよく、全体が被覆されていてもよい。また、前記被覆には、前記炭酸水素ナトリウムの表面に前記油脂が付着している態様も含まれる。
炭酸水素ナトリウムを油脂で被覆(コーティング)する方法としては、特に制限はなく、公知の油脂コーティング方法を採用することができ、例えば特開平01-235567号公報、特開2011-067195号公報、特開2014-223042号公報に記載される方法などが挙げられる。
前記有機酸、有機酸塩および油脂で被覆されている炭酸水素ナトリウムの前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば品質保持剤100質量部において、有機酸を5~40質量部、有機酸塩を5~70質量部、油脂で被覆されている炭酸水素ナトリウムを炭酸水素ナトリウムの量として10~30質量部とすることができる。
有機酸および有機酸塩の量が少ないと、これらによる食品の品質保持効果、制菌効果、特に畜肉や魚肉を含有する食品において問題になりやすい乳酸菌の制菌効果が十分に奏されないおそれがある。一方、有機酸および有機酸塩の量が多くなると有機酸や有機酸塩による酸味・酸臭等により風味・食味が低下するおそれがある。
また、炭酸水素ナトリウムの量が少ないと、食品中に有機酸が多く残留し、食品の食味に影響するおそれがあり、多すぎると炭酸水素ナトリウムが残留し、食品の食味に影響するおそれがある。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば澱粉(未処理の澱粉の他に、α化澱粉、エーテル化、エステル化、架橋及びこれらの組合せの加工処理した加工澱粉等)、糖類(単糖類、二糖類、マルトトリオース、マルトテトラオース、オリゴ糖、デキストリンの他に、糖アルコール、トレハロース等の糖誘導体)、蛋白質加水分解物、ペプチド、穀粉類、セルロース、前記油脂による炭酸水素ナトリウムへの被覆性を向上させるための補助的成分(レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ミツロウ、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、第三カルシウム等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、グリシン、グリセリン脂肪酸エステル、キトサン、ユッカ抽出物等の日持ち性向上素材を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
前記その他の成分の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
<態様>
前記品質保持剤は、前記有機酸と、前記有機酸塩と、前記油脂で被覆されている炭酸水素と、必要に応じて前記その他の成分とを同一の包材に含む態様であってもよいし、前記各成分を別々の包材に入れ、使用時に各成分を混合して食品素材・原料に添加する態様や、各成分をそれぞれ食品素材・原料に添加する態様であってもよい。
前記品質保持剤の製造方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば前記各成分を同一の包材に含む態様では、前記有機酸と、前記有機酸塩と、前記油脂で被覆されている炭酸水素と、必要に応じて前記その他の成分とを混合する方法などが挙げられる。
<配合量>
前記品質保持剤の配合量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、畜肉や魚肉等を含む食品原料に対し、通常0.1~3.0質量%であり、0.5~1.5質量%が好ましい。前記配合量が0.1質量%未満であると食品の品質保持効果、制菌効果、特に畜肉や魚肉を含有する食品において問題になりやすい乳酸菌の制菌効果が十分に奏されないおそれがある。一方、前記配合量が3.0質量%を超えても品質保持効果はそれ程向上せず、却って食品の風味・食味に影響が生じるおそれがある。
(食品の品質保持方法)
本発明の食品の品質保持方法(以下、「品質保持方法」と称することがある。)は、本発明の品質保持剤を食品の製造前ないし製造過程において食品素材・原料に配合する限り、特に制限はなく、食品の種類などに応じて適宜選択することができる。
<配合量>
前記品質保持方法における前記品質保持剤の配合量(以下、「添加量」と称することもある。)としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができるが、上記した本発明の(品質保持剤)の<配合量>の項目に記載した量と同様とすることが好ましい。
また、加熱調理前の食品中の有機酸、有機酸塩および炭酸水素ナトリウムの適正な含有量の範囲の目安としては、例えば有機酸0.005~1.5質量%、有機酸塩0.005~2.5質量%および炭酸水素ナトリウム0.01~1.0質量%とすることができる。
<pH>
前記品質保持方法において、加熱調理前の食品のpHとしては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、5.0~6.5の範囲に調整するのが好ましく、5.3~6.0の範囲に調整することがより好ましい。
前記品質保持方法では、品質保持剤に配合した有機酸と炭酸水素ナトリウムが反応して、有機酸ナトリウムと炭酸が発生し、食品中のpHが加熱調理前から上昇する。
前記品質保持方法において、加熱調理後の食品のpHとしては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常5.3~6.8の範囲になり、5.7~6.5の範囲になることがより好ましい。これにより食品の酸味・酸臭が抑えられ、風味・食味が向上し、また発生する二酸化炭素により食感も向上する。
本発明の品質保持剤および品質保持方法によれば、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通する食品の微生物を制御してその品質を保持することができ、且つ加熱調理後の食品の食味への影響を低減することができ、さらには食感も優れた食品とすることができる。
以下、製造例、実施例、比較例および試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(製造例1:油脂被覆重曹1の製造)
流動層コーティング用装置である高速撹拌機(パウレック社製 VG-05)に炭酸水素ナトリウム(重曹)450gと硬化菜種油(融点:55℃)50gを混合したものを投入し、ブレード回転数500rpm、クロススクリュー回転数2,000rpmの条件下にて25℃で40分間混合した。次いで、45℃の恒温槽にて5時間のテンパリングを行って、硬化油脂でコーティングした油脂被覆重曹1を製造した。
(製造例2:油脂被覆重曹2の製造)
炭酸水素ナトリウムの量を400g、硬化菜種油の量を100gに変更した以外は製造例1と同様にして、油脂被覆重曹2を製造した。
(製造例3:油脂被覆重曹3の製造)
炭酸水素ナトリウムの量を300g、硬化菜種油の量を200gに変更した以外は製造例1と同様にして、油脂被覆重曹3を製造した。
(実施例1~3、比較例1~2:食品用品質保持剤の調製)
下記の表1に示す各成分を混合し、実施例1~3および比較例1~2の製剤(食品用品質保持剤)を調製した。なお、表1中の粉末重曹は油脂でコーティングしていない重曹である。
Figure 0007101132000001
(試験例1)
以下の試験例1では、実施例2の品質保持剤と、比較例3として、従来の品質保持剤(オリエンタル酵母工業株式会社製:酢酸ナトリウム60質量%、グリシン10質量%、クエン酸5質量%、クエン酸ナトリウム5質量%、フマル酸ナトリウム5質量%、デキストリン15質量%)を使用した。
<試験例1-1>
下記の配合により常法に従ってハンバーグ用具材を製造した。この具材100質量部に対して各品質保持剤1質量部で配合した後、混合・成形し、質量100gの生ハンバーグを製造した。また、対照として、品質保持剤を配合しない生ハンバーグも同様にして製造した(以下、「無添加」と称することがある。)。
[ハンバーグ用具材の配合]
・ 合挽肉 ・・・ 100質量部
・ 玉ねぎ(炒め) ・・・ 30質量部
・ 卵 ・・・ 13質量部
・ パン粉 ・・・ 2.5質量部
・ 塩 ・・・ 0.7質量部
・ こしょう ・・・ 0.3質量部
・ ナツメグ ・・・ 0.2質量部
計 146.7質量部
<<評価-1>>
製造した生ハンバーグを10℃で1~3日間保存した。
フィルターバッグに保存した生ハンバーグを5~10g採り、その10倍量の生理食塩水を入れ、ストマッカーで2分間粉砕処理した。粉砕したものを検体とし、検体1mLをシャーレに入れ、そこに15~20mLの標準寒天培地(日水製薬株式会社製:Easy Medium「ニッスイ」標準寒天培地:組成は下記参照)を流し込み、寒天培地が固まったら、37℃で2日間培養し、培養後、菌数をカウントした。結果を下記の表2-1に示す。
[培地組成(23.5g中(1L分))
・ 酵母エキス ・・・ 2.5g
・ ペプトン ・・・ 5.0g
・ ブドウ糖 ・・・ 1.0g
・ 寒天 ・・・ 15.0g
また、ハンバーグのpHを下記のようにして測定した。
ハンバーグの表面をはがして中から15gを50mLチューブに取り、氷水中で5分間冷却し、ガラス電極でpHを測定した。
Figure 0007101132000002
<<評価-2>>
製造した生ハンバーグを下記の調理条件で焼成した。焼成後のハンバーグを室温まで放冷し、ハンバーグの表面に菌液(Bacillus cereus、植菌量はハンバーグの重量に対して10cfu/g)を塗布し、その後30℃で24時間保存した。
各ハンバーグについて、<<評価-1>>と同様にして、pHと一般生菌数を測定した。結果を下記の表2-2に示す。
[調理条件]
フライパンを加熱し、強火で片面1分間ずつ計2分間焼成した後、コンベクションオーブン(スチーム)に入れて10分間加熱した。
Figure 0007101132000003
<試験例1-2>
下記の配合により常法に従って鶏つくね用具材を製造した。この具材100質量部に対して各品質保持剤1質量部で配合した後、混合・成形し、生の鶏つくねを製造した。また、対照として、品質保持剤を配合しない生の鶏つくねも同様にして製造した(以下、「無添加」と称することがある。)。
[鶏つくね用具材の配合]
・ 鶏ひき肉 ・・・ 200質量部
・ 玉ねぎ(みじん切り) ・・・ 135質量部
・ しょうが(すりおろし) ・・・ 40質量部
・ 醤油 ・・・ 12質量部
・ 砂糖 ・・・ 6質量部
<<評価>>
製造した生の鶏つくねを10℃で1~2日間保存した。
各鶏つくねについて、<試験例1-1>の<<評価-1>>と同様にして、pHと一般生菌数を測定した。結果を下記の表2-3に示す。
Figure 0007101132000004
<試験例1-3>
下記の配合により常法に従って餃子用具材を製造した。この具材100質量部に対して実施例2の品質保持剤1質量部で配合した後、混合し、生の餃子の具を製造した。また、対照として、品質保持剤を配合しない生の餃子の具も同様にして製造した(以下、「無添加」と称することがある。)。
[餃子用具材の配合]
・ 豚ひき肉 ・・・ 235質量部
・ キャベツ ・・・ 90質量部
・ ニラ ・・・ 30質量部
・ 酒 ・・・ 15質量部
・ ごま油 ・・・ 15質量部
・ 醤油 ・・・ 12質量部
・ 砂糖 ・・・ 0.5質量部
・ 塩 ・・・ 1質量部
<<評価>>
製造した生の餃子の具を10℃で2日間保存した。
各餃子の具について、<試験例1-1>の<<評価-1>>と同様にして、pHと一般生菌数を測定した。結果を下記の表2-4に示す。
Figure 0007101132000005
以上の結果から、本発明の品質保持剤は、従来の品質保持剤よりも有機酸および有機酸塩の量が少ない場合であっても、様々な食品において、従来の品質保持剤と同等以上の制菌効果が得られることが確認された。また、調理前のみならず、調理後においても従来の品質保持剤と同等以上の制菌効果が得られることが確認された。
(試験例2:物性、食感、食味・風味)
食品の一例として<試験例1-1>と同様にして製造した生のハンバーグを用い、調理後の物性、pHの経時変化、食感、食味・風味を下記のとおり評価した。なお、調理条件は、<試験例1-1>の<<評価-2>>と同様とした。
また、実施例1および3、比較例1および2の製剤を用い、同様に製造したハンバーグについての食感、食味・風味も評価した。
<物性:体積(比体積)>
生ハンバーグを80gで成形し、上記調理条件で加熱調理した。加熱調理後のハンバーグの品温が室温になるまで放冷した。レーザー体積計(アステックス社製:Selnac-WinVM2100)にてハンバーグの体積を測定し、比体積(体積/質量)を算出した。比較例3の製剤を用いたハンバーグの比体積を100とした相対値を下記の表3-1に示す。
<物性:硬さ(破断強度)>
生ハンバーグを80gで成形し、上記調理条件で加熱調理した。加熱調理後のハンバーグの品温が室温になるまで放冷した。ハンバーグ上面の表面を包丁でトリミングしたものについて、クリープメーター(山電株式会社製:RHEONERII)にて破断強度を測定した。測定は、くさび型プランジャーを使用し、測定値は、歪率20%のときの値を採用した。比較例3の製剤を用いたハンバーグの破断強度を100とした相対値を下記の表3-1に示す。
Figure 0007101132000006
<pHの経時変化>
生ハンバーグを80gで成形し、上記調理条件で加熱調理した際のpHの経時変化を調べた。具体的には、成形時(未焼成)、フライパン焼成後(調理時間2分間)、スチーム加熱5分間後(調理時間7分間)、スチーム加熱10分間後(調理時間12分間)のハンバーグについて、<試験例1-1>の<<評価-1>>と同様にしてpHを測定した。結果を図1に示す。なお、図1中、「△」は比較例3、「□」は実施例2の製剤を用いたハンバーグのpHの変化を示す。
<官能評価>
加熱調理後、室温まで放冷した後のハンバーグの食感と食味・風味を下記の評価基準により評価した。なお、評価は5名で行い、表3-2には最も多かった評価結果を示した。結果を下記の表3-2に示す。
[評価基準]
-食感-
A : 軟らかい。
B : やや軟らかい。
C : やや硬い。
D : 硬い。
-食味・風味-
A : 酸味・酸臭を感じない。
B : わずかに酸味・酸臭を感じる。
C : やや酸味・酸臭を感じる。
D : 酸味・酸臭を感じる。
Figure 0007101132000007
以上の結果から、本発明の品質保持剤によれば、食味・風味が良好な食品が得られることが確認された。さらに、本発明の品質保持剤を用いることで、食品の食感を良好なものとすることもでき、食感と物性値が相関することも確認された。
(実施例4~7:食品用品質保持剤の調製)
下記の表4に示す各成分を混合し、実施例4~9の製剤(食品用品質保持剤)を調製した。
<評価>
製剤として実施例4~9の製剤を用いた以外は、<試験例1-1>と同様にして製造した生のハンバーグを用い、(試験例2)と同様にして、調理後の食感、食味・風味を評価した。また、調理前(加熱前)と調理後(加熱後(スチーム加熱10分間後))のハンバーグについて、<試験例1-1>の<<評価-1>>と同様にしてpHを測定した。結果を下記の表4に示す。
Figure 0007101132000008
以上の結果から、有機酸および有機酸塩を様々な組合せとした場合においても、常温で流動性ないし液状を呈さない油脂で被覆された炭酸水素ナトリウムを共に用いることで、本発明の効果が得られることが確認された。また、油脂で被覆された炭酸水素ナトリウムの量を変えても、本発明の効果が得られることが確認された。
本発明の品質保持剤によれば、加熱調理前および加熱調理後において従来の品質保持剤と同等以上の制菌効果が得られ、且つ加熱調理後の食品の食味・風味を良好なものとすることができ、さらには食感も向上させることができるので、加熱調理前に冷蔵/チルドまたは冷凍で保存・流通し、喫食や販売前に加熱調理される食品に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 有機酸、有機酸塩および炭酸水素ナトリウムを含有し、前記炭酸水素ナトリウムが常温で流動性ないし液状を呈さない油脂で被覆されていることを特徴とする食品用品質保持剤。
  2. 炭酸水素ナトリウムが、融点40℃以上の油脂で被覆されている請求項1に記載の食品用品質保持剤。
  3. 有機酸を5~40質量部、有機酸塩を5~70質量部および油脂で被覆されている炭酸水素ナトリウムを炭酸水素ナトリウムの量として10~30質量部含有する請求項1または2に記載の食品用品質保持剤。
  4. 炭酸水素ナトリウムと、前記炭酸水素ナトリウムを被覆している油脂との質量比が、10:0.5~5の範囲である請求項1~3のいずれかに記載の食品用品質保持剤。
  5. 有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、酢酸およびグルコノデルタラクトンからなる群から選択される1種以上であり、有機酸塩が、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸カルシウム、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムおよびグルコン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である請求項1~4のいずれかに記載の食品用品質保持剤。
  6. 食品原料に対し、食品用品質保持剤が0.1~3.0質量%配合される請求項1~5のいずれかに記載の食品用品質保持剤。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の食品用品質保持剤を食品の製造前ないし製造過程において配合することを含むことを特徴とする食品の品質保持方法。
  8. 加熱調理前の食品がpH5.0~6.5の範囲に調整される請求項7に記載の方法。
  9. 加熱調理後の食品がpH5.3~6.8の範囲である請求項7または8に記載の方法。
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