以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1~図5は本発明の実施による容器の成形装置の形態の一例を示している。本第一実施例の容器の成形装置によれば、図6に示す如き容器4の容器本体5を製造することができる。容器4の構成は、図29に示した従来例の容器1と概ね同様であり、深皿状の容器本体5と、該容器本体5の上部開口を覆う蓋体6を備えて構成されている。
容器本体5は、発泡プロピレン等の発泡樹脂を素材とする樹脂シートをプレス成形することにより成形される(尚、プレス成形のほかに、必要に応じて例えば真空成形の技術等を併用しても良い)。容器本体5の外周をなす上端部には、上に向かって拡径した形状の拡径部5aと、該拡径部5aの上端から上(開口部側)に向かって縮径した形状の嵌合壁部5bを備えており、嵌合壁部5bは全体として短い截頭円錐の円錐面をなしている。嵌合壁部5bの上端には、さらに径方向外側へ容器本体5の上端面に平行な面をなして突出する鍔部5cが形成されている。
蓋体6は、透明ポリスチレンや透明ポリエチレンといった透明の樹脂シートを真空成形または圧空成形することにより成形される。上に凸な逆皿形状の蓋体6の外周をなす下端部には、外縁から上方へ折れ曲がるように立ち上がり、上に向かって縮径した形状の嵌合壁部6aが形成されており、嵌合壁部6aは全体として短い截頭円錐の円錐面をなしている。嵌合壁部6aの上端には、さらに径方向外側へ蓋体6の下端面に平行な面をなして突出する鍔部6bが形成されている。
本第一実施例の容器の成形装置は、2個の型(雌型10、雄型20)の間に容器の素材である樹脂シートS(図7~図11参照)を挟み込み、プレス成形により図6に示す容器4の容器本体5を成形する装置である。
雌型10は、金属等の硬質の素材で形成された第一および第二の硬質部材11,12と、シリコンゴム等の変形可能な素材で形成された軟質部材13とを備えている。図1~図3に示す如く、第一の硬質部材11は雌型10の底部を構成し、底面11aの周囲に側面11bを形成された深皿型のキャビティ11cを中央部に備えている。キャビティ11cの上端部の径方向外側にあたる部分は、キャビティ11cを取り巻く外周部11dとして形成されている。そして、この外周部11dに後述する軟質部材13および第二の硬質部材12が設置される。
外周部11dは、外壁部11eと、係合凸部11fと、突き当り部11gを備えている。外壁部11eは、キャビティ11cの上端から下方に延び、全体として筒型の壁面をなしている。言い換えれば、底面11aから斜め上方に立ち上がってキャビティ11cの内壁をなす側面11bは、上端で下側に折り返して外壁部11eとなる。係合凸部11fは、外壁部11eから径方向外側へ張り出しており、後述する軟質部材13の係合凹部13bと係合するようになっている。突き当り部11gは、外壁部11eの下端から径方向外側へ向かってキャビティ11cの上端面に平行な面をなして張り出し、外周部11dの床面にあたる部分を構成している。
第二の硬質部材12は、雌型10の上部を構成する部材であり、キャビティ11cの外側を取り巻くよう、第一の硬質部材11の外周部11dに配置される。第二の硬質部材12の上面12aは、容器本体5の鍔部5c(図6参照)の下面にあたる形状をなしている。第二の硬質部材12の内周面12bは、第一の硬質部材11と第二の硬質部材12を組み合わせた状態で、各高さにおける径が第一の硬質部材11の外壁部11eおよび係合部11fの径よりも大きくなるよう寸法を設定されている。そして、外壁部11eと内周面12bの間に後述する軟質部材13が配置されるようになっている。
内周面12bの上側には、下方へ向かうほど径が大きくなるよう、テーパ状に斜面12cが形成され、内周面12bの斜面12cよりも下側の部分は、各高さにおける径が同じ円筒状となっている。内周面12bの下端部の径は、第一の硬質部材11の径方向の寸法よりも小さく設定され、第二の硬質部材12の下面12dが第一の硬質部材11の突き当り部11gに突き当たるようになっている。
軟質部材13は、図4、図5に示す如きリング状の部材であり、短円筒形をなす内周面13aには、径方向外側へ陥没する係合凹部13bが形成されている。リング状をなす軟質部材13は、中心軸がプレス方向に沿うように雌型10に設置される(図1~図3参照)。外周面13cの上側には、下方へ向かうほど径が大きくなるよう、テーパ状に斜面13dが形成され、外周面13cの斜面13dよりも下側の部分は、各高さにおける径が同じ円筒状となっている。
そして、図2、図3に示す如く、係合凹部13bを第一の硬質部材11の係合凸部11fと係合させるようにして、軟質部材13が第一の硬質部材11に対して設置される。内周面13aの係合凹部13bより上側の部分は、第一の硬質部材11の外壁部11eにおける係合凸部11fより上側の部分よりも上下方向の寸法が大きく、軟質部材13を第一の硬質部材11に対して設置した状態において、軟質部材13の上部が第一の硬質部材11のキャビティ11cの上端から上方へはみ出すようになっている。そして、外周面13cの上部の斜面13dに対して上方から外力を加えることにより、図3に示す如く、軟質部材13のうち第一の硬質部材11のキャビティ11cの上端より上に位置する部分が、径方向内側へ突出するように変形するようになっている。この変形状態においては、内周面13aの上側は、上に向かって縮径する形状となる。
ここで、「変形部」とは、軟質部材のうちプレス時に変形し、且つ表面において容器の素材と接触する部分を指すものとし、プレス時に変形部が変形する向きを「変形方向」と称するものとする。変形方向は、型同士の接近時における変形部の変形方向(接近時変形方向)と、離間時における変形方向(離間時変形方向)とを含む。
また、変形部との間に素材を挟み込んで成形する部分を「変形受け部」と称する。すなわち、本第一実施例の場合は、図2~図5中に13eの符号で示す部分(軟質部材13のうち第一の硬質部材11のキャビティ11cの上端より上に位置する部分)が変形部に相当する。また、後述するように、雄型20の側面20cの上端部20dが変形受け部に相当する。
さらに、硬質部材に形成され、プレス時に軟質部材に対して力を加える部分を「加力部」、軟質部材に形成され、プレス時に硬質部材の加力部から力を受ける部分を「受力部」と称する。本第一実施例の場合、第二の硬質部材12の斜面12cが加力部、軟質部材13の斜面13dが受力部に相当する。また、「突き当り部」は、プレス時において受力部を挟んで加力部の反対側に位置し、軟質部材の変形や移動を拘束して変形部の変形方向を規定する部分と定義する。本第一実施例において、突き当り部は第一の硬質部材11の外周部11dに備えられた突き当り部11gであるが、係合凸部11fも突き当り部として機能する。
また、雌型10の四隅には支柱部14が配置されている。支柱部14は、下側にあたる第一の硬質部材11に設けられた第一の孔14aと、該第一の孔14aの中にプレス方向に沿って設けられた支柱14bと、上側にあたる第二の硬質部材12に設けられた第二の孔14cを備えている。第一の孔14aは、第一の硬質部材11の四隅における外周部11dより外側の位置に設けられており、中心に支柱14bが設置されている。第二の孔14cは、第二の硬質部材12の四隅における第一の硬質部材11の第一の孔14aに対応する位置に設けられており、第二の硬質部材12は、支柱14bが第二の孔14cに挿入される形で第一の硬質部材11に対して配置される。孔14a,14cの内周面と、支柱14bの外周面との間には弾性体としてコイルばね14dが配置されている。コイルばね14dは、第二の硬質部材12を第一の硬質部材11に設置した状態において両者の間に位置し、第一の硬質部材11と第二の硬質部材12とを互いに上下方向に離間する向きに付勢する。こうして、第二の硬質部材12が、第一の硬質部材11の外周部11dの上方に支柱部14を介して支持される。そして、第一の硬質部材11と第二の硬質部材12の間に、軟質部材13が挟み込まれる形で雌型10が構成される。軟質部材13の内周面13aは、上述の如く係合凹部13bを係合凸部11fに係合する形で第一の硬質部材11の外壁部11eに接触し、外周面13cは、斜面13dが斜面12cと接触する形で第二の硬質部材12の内周面12bに取り巻かれる。
雄型20は、全体が金属等の硬質の素材で形成され、本第一実施例においては、型10,20の一部を構成する第三の硬質部材としても定義される。雄型20は、第一、第二の硬質部材11,12および軟質部材13により構成される雌型10全体の形状に対応する形状をなし、各部の面が第一、第二の硬質部材11,12および軟質部材13のなす面に対向する。第一の硬質部材11のキャビティ11cに挿入される雄型20の凸部20aは、底面20bおよび側面20cが第一の硬質部材11の底面11aおよび側面11bと対向し、側面20cの上端部20dは、さらに第一の硬質部材11の形成するキャビティ11cから上方へはみ出す軟質部材13の内周面13aと対向する。また、上端部20dの上縁から径方向外側へ突出する外周部20eの下面20fは、第二の硬質部材12の上面12aと対向する。
そして、凸部20aの底面20b、および側面20cの上端部20dより下の部分の形状は第一の硬質部材11の底面11aおよび側面11bの形状に対応し、また、外周部20eの下面20fの形状は第二の硬質部材12の上面12aの形状に対応する。側面20cの上端部20dの形状は軟質部材13の内周面13aの変形部13eにあたる部分の形状に対応するが、ここで、上端部20dの外周面は、変形状態における変形部13eの形状に対応した形状、すなわち、上に向かって縮径した形状となっている。
尚、ここに示した各図は本第一実施例における本発明の要旨を説明する模式図であって
、実際に本発明を実施する際には、雌型10や雄型20の各部にガス抜きの孔や、容器本体5にリブ等を設けるための構造等が設けられるが、ここでは適宜図示を省略している(後に説明する第二・第三実施例および参考例についても同様である)。
また、硬質部材11,12,20の素材としては、上に挙げた金属以外にも、プレス成形において用い得る程度の耐熱性、耐圧性を有する素材であり、且つ容器本体5の形状を良好に成形し得る程度に変形しにくい素材であれば採用することができる。例えば、セラミック等を用いることも原理的には可能である。また、軟質部材13についても、プレス成形において用い得る程度の耐熱性、耐圧性を有する素材であり、且つ容器本体5の一部の形状を成形し得る程度に形状を保持でき、しかも外力により変形し得る素材であれば採用することができる。例えば、シリコンゴムのほかに天然ゴム、人工ゴム等を使用することができる。
次に、上記した本第一実施例の作動を、図7~図11を参照しつつ図12のフローチャートに沿って説明する。
プレス成形による成形工程の開始前においては、図7に示す如く、雄型20と雌型10とは互いに離間している。雌型10においては、軟質部材13の上に第二の硬質部材12が載った状態であり、第二の硬質部材12の重量は、弾性体14d(図1~図3参照)の弾性力と、軟質部材13の変形に反発する力(反発力)のいずれか一方、または両方により支えられている。よって、第一の硬質部材11と第二の硬質部材12は互いに上下に離間しており、また、軟質部材13は変形状態ではない通常の状態である。この状態から、加熱した雄型20と雌型10に素材である樹脂シートSを挟み込んで加圧し、圧延する。
プレス成形にあたっては、まず、図7に示す如く、雄型20と雌型10の間に樹脂シートSを配置し(ステップS1)、ここから図8に示す如く、雄型20の凸部20aが雌型10のキャビティ11cに挿入されるよう、雄型20と雌型10を互いに接近させていく(ステップS2)。樹脂シートSは、雄型20と雌型10の間に挟み込まれていく。
雄型20と雌型10を互いに接近させていくと、図9に示す如く、型同士が互いに一部で当接する(ステップS3)。より具体的には、雄型20の外周部20eの下面20fと、雌型10を構成する第二の硬質部材12の上面12aとが樹脂シートSを間に挟んで当接する。容器本体5の鍔部5c(図6参照)は、ここで成形される。
さらに雄型20を雌型10に対して押し込んでいくと、図10に示す如く、第二の硬質部材12が雄型20の外周部20eにより下方へ押され、弾性体14d(図2、図3参照)の弾性力と、軟質部材13の反発力に抗して下方へ移動する(ステップS4)。
同時に、軟質部材13に対して第二の硬質部材12から加わる力により、軟質部材13が変形する。上述の如く、軟質部材13の外周面13cに設けた受力部である斜面13dは、第二の硬質部材12の内周面12bに設けた加力部である斜面12cと接触しているので、斜面12cから斜面13dへ下向きの力が加わる。この力により、図10に示す如く、軟質部材13は変形部13eが径方向内側へ突出するように変形した変形状態となる。軟質部材13のうち、第一の硬質部材11の側面11bの上端より下に位置する部分(変形部13e以外の部分)は、第一の硬質部材11により径方向内側への移動や変形が制限されるので、変形部13eの径方向内側への突出量は、上に向かうほど大きくなる。こうして、雌型10のキャビティ11cの上端部に、上に向かって縮径する形状が変形部13eによって形成される。第二の硬質部材12は、下面12dが第一の硬質部材11の外周部11dの突き当り部11gに当接したところで止まる。
この工程において、軟質部材13の変形を制御しているのは、第一に斜面12c,13dによる力の向きの操作、第二に硬質部材11,12による移動や変形の制限である。
プレス成形においては、雄型20と雌型10は原則として互いに接近・離間するプレス方向(この場合、上下方向)にのみ動く。ここで、最初に樹脂シートSを介して雄型20と接触する第二の硬質部材12へは、雄型20の外周部20eの下面20fから上面12aへ下向きの力が加わるが、軟質部材13に対しては、第二の硬質部材12から斜面12c,13dを介して力を加えることで、雄型20から下方向に加わる力の向きが径方向内側向きに変換され、変形部13eがプレス方向(上下方向)とは異なる向き(径方向内向き)にはみ出るように変形するのである。このように、加力部12cや受力部13dに斜面を形成すれば、加力部12cから加えられる力の向きに対し、変形部13eの変形方向を簡易な構成で変更することができる。
尚、ここでは互いに接触する第二の硬質部材12と軟質部材13の両方に斜面12c,13dを設けているが、硬質部材の加力部と、軟質部材の受力部との間で力の向きを変換するにあたっては、必ずしも両方に斜面を備える必要はなく、加力部または受力部のうちいずれか一方に斜面を設ければ十分である。ただし、両方に斜面を備えて面接触とした方が、軟質部材にかかる外力を分散し、生じる応力を小さくできるので、軟質部材の耐久性を確保する上で好適である。
また、このとき、変形部13eの径方向内側への変形以外の軟質部材13の変形や移動は、周囲に配置された硬質部材11,12により制限される。径方向外側への変形や移動は、第二の硬質部材12の斜面12cを含む内周面12bで押さえ込まれるし、下方向への変形や移動は、第一の硬質部材11の係合凸部11f、突き当り部11gにより押さえ込まれる。特に、係合凸部11fが変形部13eの下側の係合凹部13bに食い込んでいることで、変形部13eは係合凸部11fを越えた下方向への移動や変形が押さえ込まれ、その変形量が径方向内側へ向かい、変形部13eの変形方向を確実に規定することができるのである。また、変形部13eより下側の部分の径方向内側への移動や変形は、第一の硬質部材11の外壁部11eによって押さえ込まれる。
こうして、軟質部材13の内周面13aの変形部13eに、上向きに縮径する形状が作られる。また、変形部13eと対向する雄型20の側面20cの上端部20dはもともと上向きに縮径する形状であるので、軟質部材13を備えた雌型10と、雄型20との間に相互係合状態が形成される。そして、この状態で変形部13eと、雄型20の側面20cの上端部20dとの間に嵌合壁部5bの形状が成形される。変形部13eは容器本体5(図6参照)の嵌合壁部5bの外面を成形し、上端部20dは変形受け部として嵌合壁部5bの内面を成形する。また、雌型10,雄型20の底面11a,20b同士、側面11b,20c同士の間で、容器本体5の深皿形状が成形される(ステップS5)。
その後、図11に示す如く雄型20と雌型10を互いに離間させ、樹脂シートSを離型する(ステップS6)。雄型20が雌型10から離間するのに伴い、雄型20によって下方に押し付けられていた第二の硬質部材12は弾性体14d(図2、図3参照)の弾性力と、軟質部材13の反発力により上方へ移動する。第二の硬質部材12から加えられる下向きの力により、接近時変形方向である径方向内向きに変形した変形状態にあった軟質部材13は、下向きの力がなくなることで離間時変形方向である径方向外向きに変形し、通常の状態へ復元する。ステップS4、S5においては径方向内側へ変形し、上に向かって縮径する形状をなしていた変形部13eが元の形状に戻るので、雄型20、および容器本体5の形状に成形された樹脂シートSは、支障なく雌型10から上方へ取り出すことができる。尚、樹脂シートSはある程度の変形を許容するので、樹脂シートSの嵌合壁部5bの部分を雄型20の側面20cの上端部20dから取り外すにあたり、上に向かって縮径する嵌合壁部5bや上端部20dの形状が取り外しの妨げになるようなことはない。
このように、本第一実施例においては、雌型10と雄型20とが接近した状態で軟質部材13を変形させながら素材である樹脂シートSを成形し、また、軟質部材13の変形状態を元に戻しつつ型10,20同士を離間させることで、一時的に雌型10と雄型20の間に相互係合状態を発生させている。こうして、アンダーカットにあたる形状(ここでは、上に向かって縮径する形状)を有する容器本体5であっても、プレス成形により成形することができる。
つまり、通常、図6に示す容器本体5のように、開口部側に向かって縮径する形状を備えた容器を作ろうとすれば、型同士の位置関係が相互係合状態となり、型同士のプレス方向の動きが制限されてしまう。このため、変形しない素材のみで構成された通常の型では、嵌合壁部5bのような形状を成形することはできない。本第一実施例においては、成形の過程で型(ここでは雌型10)の一部(軟質部材13の変形部13e)をプレス方向(上下方向)と異なる変形方向(径方向)に変形させ、一時的に相互係合状態を生じさせることで、型10,20同士の動きを制限することなく、開口部側に向かって縮径する形状の成形を可能にしているのである。このように、プレス時に型の一部(雌型10の軟質部材13)をプレス方向とは異なるプレス方向に変形させれば、従来の一般的な型では製造できない多様な形状の容器を成形・製造することを可能である。
こうして成形された容器本体5に、別途真空成形または圧空成形によって成形された蓋体6を図6に示す如くセットすると、蓋体6の外縁下端が拡径部5aと嵌合壁部5bの間に当接し、嵌合壁部6aの外周面は容器本体5の嵌合壁部5bの内周面に当接して、蓋体6が容器本体5に対して内嵌合された状態となる。容器本体5と蓋体6の鍔部5c,6b同士は重なり、鍔部5c,6bを持つことで、容器4の全体を容易に保持することができる。
この状態において、容器本体5と蓋体6の嵌合壁部5b,6a同士は互いに密接するが、この嵌合壁部5b,6aはそれぞれ上に向かって縮径する形状をなしている。このため、容器本体5と蓋体6同士の固定は強固であり、蓋体6が容器本体5から簡単に外れたり、内部の液体が嵌合壁部5b,6a同士の隙間から漏れてしまうような事態が生じる虞は少ない。一方、容器本体5、蓋体6は樹脂製であり、ある程度の変形は許容するので、嵌合壁部5b,6aの形状が容器本体5に蓋体6を取り付け、また容器本体5から蓋体6を取り外すにあたって妨げになることはない。
こうした容器の特徴や、プレス成形に係る技術思想自体は、上記特許文献1と共通している。しかしながら、本第一実施例の場合、容器本体5の嵌合壁部5bの外側の面を成形する部材が、雌型10の軟質部材13として一体に形成されているという点でより優れている。つまり、雌型10のうち、嵌合壁部5bの外面にあたる部分に隙間がない。このため、上記特許文献1に記載の如き容器の成形装置によって容器を製造する場合と比較して、蓋体6との嵌合状態に関わる嵌合壁部5bの形状に歪みが生じにくい。よって、容器本体5と蓋体6との嵌合状態をより良好にすることができる。また、上記特許文献1に記載の容器の成形装置と比較すると、雌型10の分割構造が単純であるため、雌型10の製造にかかるコストも少なく済む。
尚、このように型10,20の一部を変形させつつプレス成形を行う場合、変形部13eの表面で成形される部分(嵌合壁部5bの外周面)の形状については、精度が多少落ちてしまうことは否めない。一方、容器本体5と蓋体6を嵌合するにあたっては、嵌合壁部5bの形状の精度が重要である。そこで、本第一実施例においては、嵌合壁部5bのうち、より高い精度が求められる内周面を第三の硬質部材である雄型20により成形し、外周面を軟質部材13により成形して、嵌合壁部5bの内周面の精度を確保している。すなわち、図6に示す例のように、容器本体5に対して蓋体6を内嵌合する形式の容器4の場合は、容器本体5の嵌合壁部5bのうち内周面側の精度が特に重要であるので、嵌合壁部5bを成形するにあたり、外周面側を軟質の変形部13eで成形する一方、内周面側を硬質の変形受け部としての側面20cの上端部20dで成形しているのである。
また、上に説明した各型の形状や構成はあくまで一例であって、本発明を実施するにあたっては、型の形状や分割構造、相互の接合構造等については適宜変更し得る。例えば、本第一実施例においては、図6に示す如き容器本体5を形成するにあたり、第一の硬質部材11と軟質部材13を互いに好適に係合させ、且つ変形部13eの変形量や変形時の形状を調整し得るよう、第一の硬質部材11と軟質部材13にそれぞれ係合凸部11fおよび係合凹部13bを設けているが、この係合凸部11fと係合凹部13bは必須ではないし、あるいは他の形状の係合凸部や係合凹部を採用しても良い。本発明における技術思想の根幹は、容器の成形装置に硬質部材と軟質部材により構成される型を備えることであって、型やそれを構成する部材の具体的な形状や構成については、製造される容器の形状やその他の条件に合わせて都度設計すべきものである。
以上のように、上記本第一実施例の容器の成形装置においては、硬質部材11,12と軟質部材13により構成される型10,20を備えて容器の成形装置を構成している。そして、本第一実施例の容器の製造方法においては、硬質部材11,12と軟質部材13とにより構成される型10,20を用い、軟質部材13を変形させつつ容器4の素材Sを成形している。
また、本第一実施例の容器の成形装置において、硬質部材12の加力部12cは、軟質部材13の受力部13dに対してプレス方向に力を加え、軟質部材13の変形部13eは、プレス方向とは異なる変形方向に変形するよう構成されている。そして、本第一実施例の容器の製造方法においては、硬質部材12の加力部12cから軟質部材13の受力部13dに対してプレス方向に加えられる力により、軟質部材13の変形部13eをプレス方向とは異なる変形方向に変形させるようにしている。プレス時に、型(雌型10)をプレス方向とは異なるプレス方向に変形させることで、従来の一般的な型では製造できない多様な形状の容器を成形・製造することが可能である。
また、本第一実施例の容器の成形装置は、軟質部材13の受力部13dを挟んで加力部12cの反対側に、軟質部材13を拘束する突き当り部11f,11gを備えている。このようにすると、変形部13e以外の変形や移動を押さえ込むことで、変形部13eの変形方向をより確実に規定することができる。
また、本第一実施例の容器の成形装置は、加力部12cまたは受力部13dの少なくとも一方に斜面を備えることにより、変形部13eの変形方向を規定するよう構成されている。このようにすると、加力部12cから加えられる力の向きに対し、変形部13eの変形方向を簡易な構成で変更することができる。
また、本第一実施例の容器の成形装置は、軟質部材13が変形することにより、型10,20同士の間に一時的に相互係合状態を形成するよう構成されている。そして、本第一実施例の容器の製造方法においては、変形部13eをプレス時に変形させることにより、型10,20同士の間に相互係合状態を一時的に形成するようにしている。このようにすると、例えば開口部側に向かって縮径するような形状を容器4に成形することが可能である。
本発明の容器の成形装置において、軟質部材13はプレス方向に沿って中心軸を有するリング状をなし、プレス方向に加えられる力に対し径方向に変形するよう構成されている。こうすることで、開口部側に向かって縮径するような形状を容器4に一層簡便に成形することができる。
したがって、上記本第一実施例によれば、単純な構成の型を採用しつつ、製造可能な容器の形状の自由度を高め得る。
図13、図14は本発明の第二実施例による容器の成形装置を示している。本第二実施例の場合、型30,40のうち雌型30を一個の部材として構成された第一の硬質部材とし、雄型40を第二、第三の硬質部材41,42および軟質部材43により構成している。
雌型30のキャビティ30aの側面30bの上端部30cには、上に向かって拡径する形状の拡径部30dと、該拡径部30dの上端から上に向かって縮径する形状の縮径部30eが形成されており、本第二実施例においては、この拡径部30dと縮径部30eが変形受け部として機能する。縮径部30eの上端は、外周部30fの上面30gに連続している。
第二の硬質部材41は、雌型30のキャビティ30aに挿入される雄型40の凸部を構成し、キャビティ30aの底面および側面に対応した形状を備えている。
第三の硬質部材42は、雄型40の基部を構成し、下側の中央部は支柱部14により第二の硬質部材41と接続されている。支柱部14は、上記第一実施例における支柱部14(図1~図3参照)と同様の構成であり、下側にあたる第二の硬質部材41に設けられた第一の孔14aと、該第一の孔14aの中に設けられた支柱14bと、上側にあたる第三の硬質部材42に設けられた第二の孔14cを備えている。第一の孔14aの内周面と、支柱14bの外周面との間に配置された弾性体(コイルばね14d)により、第二の硬質部材41と第三の硬質部材42とが互いに上下方向に離間する向きに付勢される。
第三の硬質部材42の外周部42aよりも内側寄りの位置には、下面から下方へ突出した略円筒状の突出部42bが設けられている。突出部42bの側面は、下に向かって縮径するテーパ状の斜面42cとして形成されており、ここに軟質部材43が配置される。
第三の硬質部材42の外周部42aは、下面42dが雌型30の外周部30fの上面30gと対向するようになっている。
軟質部材43は、第三の硬質部材42の下側に突出する突出部42bの側面を取り巻くように配置されるリング状の部材であり、内周面が下に向かって縮径するテーパ状の斜面43aとして形成されている。軟質部材43の外周面の下部には、上に向かって拡径するテーパ状の拡径部43bと、拡径部43bの上端から上に向かって縮径するテーパ状の縮径部43cとが設けられている。この拡径部43bと縮径部43cは、プレス成形時、それぞれ雌型30の側面30bの上端部30cに設けられた拡径部30dと縮径部30eに対向するようになっている。軟質部材43の下面43dは、第二の硬質部材41の外周部の上面41aに接している。
第一の硬質部材である雌型30と、第二、第三の硬質部材41,42および軟質部材43により構成される雄型40の間に素材の樹脂シート(ここでは図示せず)を挟み込み、雄型40を雌型30に対して押し付けていくと、第二の硬質部材41の外周部の上面41aと、第三の硬質部材42の突出部42bとの間に位置する軟質部材43の斜面43aが、第三の硬質部材42の突出部42bに形成された斜面42cから下向きに力を受ける。すなわち、本第二実施例では、第三の硬質部材42の斜面42cが加力部、軟質部材43の斜面43aが受力部にあたる。軟質部材43の下面43dが当接している第二の硬質部材41の上面41aは突き当り部として機能し、軟質部材43の下方向への移動や変形を制限する。軟質部材43は、斜面42cから受ける力によって径方向外側へ全体が広がるように変形しつつ、斜面42cに沿って第三の硬質部材42に対し上方へずり上がるように移動する。すなわち、本第二実施例の場合、軟質部材43の全体が変形部にあたる。
そして、径方向外側へ広がった軟質部材43の外周面に設けられた拡径部43bおよび縮径部43cと、雌型30の側面30bの上端部30cに設けられた変形受け部としての拡径部30dおよび縮径部30eの間で素材が成形され、図6に示す容器本体5の拡径部5aや嵌合壁部5bと同様の形状が作られる。同時に、容器本体5の底面や側面、鍔部5cに相当する形状も成形される。
その後、雌型30と雄型40を離間させると、軟質部材43は第三の硬質部材42に対し下方へずり下がると共に、径方向内側に縮んで元の形状に復元する。これにより、雌型30と雄型40は互いに支障なく離間することができる。
このように、本第二実施例の容器の成形装置によれば、図6に示す如き容器4の容器本体5と概ね同様の形状の容器本体5を製造することができる。ただし、本第二実施例の場合、上に向かって縮径する嵌合壁部5bの如き形状を成形するにあたり、内周面を変形部である軟質部材43の縮径部43cで成形し、外周面を変形受け部である第一の硬質部材(雌型)30の縮径部30eで成形することになる。このようにした場合、外周面の形状に関して精度を確保するのが容易となるので、容器本体に対し、蓋体等の部品を外嵌合によりセットする場合に適している。
その他の構成や製造手順、作用効果については上記第一実施例と共通するため説明を省略するが、本第二実施例によっても、単純な構成の型を採用しつつ、製造可能な容器の形状の自由度を高め得る。
図15~図19は本発明の第三実施例による容器の成形装置を示しており、図20~図22は本第三実施例の容器の成形装置により製造される容器7の形態を示している。
容器7は、図20~図22に示す如く、本体部7aと蓋部7bとが境界部7cを挟んで一体に成形されており、境界部7cを折り目として折り曲げることにより、蓋部7bで本体部7aの上部開口を覆うことができるようになっている。本体部7aと蓋部7bは、一枚の板状体7dの両側をそれぞれ凹状に変形させることで成形され、境界部7cは、板状体7dにおける本体部7aと蓋部7bの間の折り曲げ部として設定される。そして、板状体7dの本体部7aと蓋部7bが成形されていない四隅には、互いに対をなすストッパ凹部7eとストッパ凸部7fが計2組成形されている。
一対のストッパ凹部7eとストッパ凸部7fは、境界部7cに関して互いに対称の位置に設けられ、ここに示した例では、本体部7a側に2つのストッパ凹部7eが、蓋部7b側に2つのストッパ凸部7fがそれぞれ成形されている。ストッパ凹部7eは、図20の紙面に関して奥側に凹むように成形され、ストッパ凸部7fは、手前側に突出するように成形される。すなわち、容器7を境界部7cで折り曲げた場合、ストッパ凹部7eとストッパ凸部7fはいずれも下(紙面に関して奥側)に向かって凸となる。そして、ストッパ凸部7fをストッパ凹部7eに差し込むことで容器7を折り曲げた状態に保ち、本体部7aから蓋部7bが離れないように固定できるようになっている。
図21、図22に示す如く、ストッパ凹部7eは、径が上(開口)に向かって縮径する形状を備えている。また、ストッパ凸部7fは、径が下(基部)に向かって縮径する形状を備えている。こうすることにより、ストッパ凸部7fをストッパ凹部7eに差し込んだ際、互いの側面同士が抜け止めとなって、容器7を折り曲げた状態をより強固に保つことができる。
ストッパ凹部7eやストッパ凸部7fをプレス成形により成形しようとすれば、型同士の間に相互係合状態が生じることになるが、このような形状のストッパ凹部7eやストッパ凸部7fを備えた容器7は、図15~図19に示す容器の成形装置によって成形することができる。
本第三実施例の容器の成形装置を構成する雌型50は、第一の硬質部材51と、第一、第二の軟質部材52,53を備えて構成される。雄型60は、第二の硬質部材として構成される。
雌型50を構成する第一の硬質部材51は、容器7の本体部7aおよび蓋部7bにそれぞれ対応するキャビティ51a,51bのほか、軟質部材52,53をそれぞれ配置する間隙51c,51dを備えている。軟質部材52,53は、この間隙51c,51dにそれぞれ埋め込まれる形で配置される。
第一の軟質部材52は、容器7を開いた状態(境界部7cで折り曲げない状態)におけるストッパ凹部7eの下側にあたる外面を成形する部材である。第一の軟質部材52は、図16に示す如く、上面52aが雌型50の上面から僅かに上方にはみ出る形で、間隙51cに埋め込まれている。第一の軟質部材52の中央部には円筒形の孔52bが形成されている。孔52bの径は、各高さにおいて同一である。また、第一の軟質部材52の上面52aには、孔52bの周縁部から径方向外側に向かって下り勾配をなす斜面52cが形成されている。
第二の軟質部材53は、容器7を開いた状態(境界部7cで折り曲げない状態)におけるストッパ凸部7fの下側にあたる内面を成形する部材である。図17に示す如く、第二の軟質部材53の上面53aには、中央部に略円柱形の突起53bが形成されており、第二の軟質部材53は、この突起53bが雌型50の上面から上方へ突出する形で、間隙51dに埋め込まれている。突起53bの径は、各高さにおいて同一であるが、突起53bの上面53cには、中央が僅かに円錐状に凹んだ形の斜面53dが形成されている。
第二の硬質部材である雄型60は、下面60aに雌型50のキャビティ51a,51bにそれぞれ対応する凸部60b,60cを備えているほか、軟質部材52,53の孔52bおよび突起53bにそれぞれ対応するストッパ形成凸部60dおよびストッパ形成凹部60eを備えている。
ストッパ形成凸部60dは、図16に示す如く、第一の軟質部材52の孔52bに対応する形状を有する突起状の部分であるが、上に向かって縮径した形状をなしており、全体として基部側(上)へ向かうほど径の小さい截頭円錐状をなしている。
ストッパ形成凹部60eは、図17に示す如く、第二の軟質部材53の突起53bに対応する形状の孔であるが、下に向かって縮径した形状をなしており、全体として開口部(下側)へ向かうほど径の小さい截頭円錐状をなしている。また、ストッパ形成凹部6eの底部60fには、開口部側(下)に頂点を向けた円錐状の形状(斜面60g)が設けられている。
プレス成形時には、第一の軟質部材52の孔52bと、第二の軟質部材53の突起53bが、それぞれ変形部として機能する。また、雄型60のストッパ形成凸部60dは変形部である孔52bに対する変形受け部として機能し、ストッパ形成凹部60eは変形部である突起53bに対する変形受け部として機能する。尚、本第三実施例の場合、雌型50に備えた第二の軟質部材53の突起53bは、雄型60に備えたストッパ形成凹部60eに挿入され、突起53bとストッパ形成凹部60eとの間でストッパ凸部7fを形成するため、雌型50は突起53bの部分においては雄型として機能し、雄型60はストッパ形成凹部60eの部分においては雌型として機能すると言える。
プレス成形の工程において、雌型50と雄型60とが素材である樹脂シートS(図18、図19参照)を間に挟んで接近していくと、雄型60の凸部60b,60cが雌型50の第一の硬質部材51に設けられたキャビティ51a,51bに入り込み、さらに、ストッパ形成凸部60dが第一の軟質部材52の孔52bに入り込み、ストッパ形成凹部60eに第二の軟質部材53の突起53bが入り込む。雌型50と雄型60との間で加熱・加圧が行われることにより、樹脂シートSは雌型50と雄型60の間に形成される隙間の形状に合わせて変形する。さらに型同士を接近させると、雄型60の下面60aが樹脂シートSを挟んで第一の軟質部材52の上面52aに当接する。また、雄型60の下面60aに設けたストッパ形成凹部60eの底部60fが、第二の軟質部材53に設けた突起53bの上面53cに樹脂シートSを挟んで当接する。
さらに雌型50と雄型60とを互いに押し付けると、第一の軟質部材52は第一の硬質部材51の上面から突出した上面52aにおいて雄型60の下面60aから下向きに力を受ける(図18参照)。このとき、上面52aに設けた斜面52cによって力の向きが変換され、孔52bを構成する素材が径方向内側へ縮径するように変形することになる。つまり、第一の軟質部材52の上面52aに設けられた斜面52cが受力部、斜面52cに対向する雄型60の下面60aが加力部として機能する。同時に、第一の硬質部材51の間隙51cの内壁が突き当り部として機能する。結果として、孔52bは、内周面の径が上へ向かうほど小さくなる形に変形する。
一方、第二の硬質部材である雄型60のストッパ形成凸部60dは、上述の如く上(基部側)に向かって縮径した形状をなしている。したがって、孔52bとストッパ形成凸部60dとの間に相互係合状態が形成され、孔52bとストッパ形成凸部60dとの隙間に上に向かって縮径する形状のストッパ凹部7e(図21参照)が成形される。
また、第二の軟質部材53は、突起53bの上面53cが第一の硬質部材51のストッパ形成凹部60eの底部60fから下向きに押される(図19参照)。ストッパ形成凹部60eの底部60fは、突起53bの上面53cと互いに斜面60g,53dにて接触する。つまり、ストッパ形成凹部60eの底部60fに設けた斜面60gが加力部、突起53bの上面53cに設けた斜面53dが受力部としてそれぞれ機能する。下向きの力は、円錐状の斜面60g,53dにおいて径方向外向きに変換され、突起53bは、上に向かうほど径が大きくなる形で径方向外側へ拡径するように変形する。このとき、同時に、第一の硬質部材51の間隙51dの内壁が突き当り部として機能する。
一方、第二の硬質部材である雄型60のストッパ形成凹部60eは、上述の如く下(開口側)に向かって縮径した形状をなしている。したがって、突起53bとストッパ形成凹部60eとの間に相互係合状態が形成され、突起53bとストッパ形成凹部60eとの隙間に下に向かって縮径する形状のストッパ凸部7f(図22参照)が成形される。
同時に、雌型50のキャビティ51a,51bと、雄型60の凸部60b,60cとの間で、容器7の本体部7aと蓋部7bが成形される。
その後、雌型50と雄型60とを互いに離間させる。雄型60から下向きに加わる力がなくなれば、軟質部材52,53の孔52bおよび突起53bの形状は復元し、相互係合状態が解除され、雌型50と雄型60は支障なく離間する。
尚、ここに示した容器7においては、本体部7a側にストッパ凹部7eを、蓋部7b側にストッパ凸部7fをそれぞれ2つずつ配置しているが、ストッパ凹部7e、ストッパ凸部7fの数や配置、組み合わせはこれに限定されない。ストッパ凹部7e、ストッパ凸部7fの組の数はこれより多くても少なくても良いし、また、本体部7a側にストッパ凸部7fを、蓋部7b側にストッパ凹部7eを配置しても良い。本体部7a側と蓋部7b側に、ストッパ凹部7eとストッパ凸部7fがそれぞれ混在していても良い。
また、容器7にストッパ凹部7eやストッパ凸部7fを成形するための構造(孔52bや突起53b、ストッパ形成凸部60dやストッパ形成凹部60e)を雌型50、雄型60に形成するにあたり、ここに示した例では孔52bと突起53bを軟質部材52,53にて形成しているが、これらの構造に関し、軟質部材と硬質部材の組み合わせはこれに限定されない。例えば、ここに示した例とは逆に、孔52bや突起53bにあたる形状を硬質の部材で形成し、ストッパ形成凸部60dやストッパ形成凹部60eにあたる形状を軟質の部材で形成することもできる。ただし、容器7に成形されるストッパ凹部7e、ストッパ凸部7f同士の係合においては、ストッパ凹部7eの内面およびストッパ凸部7fの外面の精度が重要となるため、特に高い精度が必要とされる場合は、やはり図16~図19に示すように、ストッパ凹部7eの内面を整形するストッパ形成凸部60dと、ストッパ形成凹部60eを硬質部材にて形成することがより好ましい。
以上のように、本第三実施例の容器の成形装置において、軟質部材53はプレス方向に沿った軸を有する突起53bをなし、該突起53bはプレス方向に加えられる力に対し拡径するよう構成されている。
また、本第三実施例の容器の成形装置において、軟質部材52はプレス方向に沿った軸を有する孔52bをなし、該孔52bはプレス方向に加えられる力に対し縮径するよう構成されている。このようにしても、開口部側に向かって縮径するような形状を容器7に簡便に成形することができる。
その他の構成や製造手順、作用効果については上記第一、第二実施例と共通するため説明を省略するが、本第三実施例によっても、単純な構成の型を採用しつつ、製造可能な容器の形状の自由度を高め得る。
図23~図27は本発明の参考例による容器の成形装置の形態、および成形の各工程を示している。本参考例の場合、上記第一~第三実施例とは異なり、型同士の間に相互係合状態を形成してのアンダーカットの成形ではなく、プレス方向に沿って細い形状を成形することを目的としている。
本参考例においては、雌型である第一の型70、雄型である第二の型80に加え、薄型の形状を成形するための第三の型90を使用する。
第一の型70は、キャビティ70aを備えた雌型であり、硬質部材71と、軟質部材72により形成されている。硬質部材71は全体として盥状の円筒状の形状をなしており、底部71aの上面は軟質部材72により覆われ、側壁71bの内周面はキャビティ70aに露出している。すなわち、第一の型70のキャビティ70aは、側面を硬質部材71、底面を軟質部材72で形成されている。
キャビティ70aの底面をなす軟質部材72には、外周よりやや径方向内側の位置に被差込部としてのスリット72aが形成されている。スリット72aは、上端が軟質部材72の上面72bに開口しており、軟質部材72内に上下方向に沿った円筒面をなしている。スリット72aは、平面視ではキャビティ70aの底面に刻まれた円形をなす。
第二の型80は、キャビティに70aに対応する凸部80aを備えた雄型であり、硬質の部材により形成される。
第三の型90は、土台部91と、土台部91に対して可動する可動部92を備えている。円筒形状の土台部91の上面には、上下方向に沿って支柱91aが立設されており、この支柱91aに沿って可動部92が上下に移動できるようになっている。
可動部92は、全体として略円筒形状をなし、土台部91の上方で支柱91aに支持される本体部92aと、本体部92aの外縁部の下部に設けられた差込成形部92bを備えている。円筒状の差込成形部92bは、下端が本体部92aから下方に延びており、本体部92aが土台部91に対して下降した場合に、差込成形部92bが土台部91の下面よりも下方へ突出するようになっている。そして、円筒面をなす差込成形部92bは、下端部の径が第一の型70のキャビティ70aに露出したスリット72aの径と一致している。第三の型90のうち、少なくとも差込成形部92bの下端部は硬質部材(第二の硬質部材)として形成される。
型70,80,90を用いたプレス成形の工程を、図28のフローチャートをも参照しながら説明する。
まず、図23に示す如く、第一の型70のキャビティ70aに第二の型80の凸部80aを挿入して加熱・加圧を行い、キャビティ70aと凸部80aの間で素材である樹脂シートSを深皿型に成形する(ステップS11)。第二の型80を取り外し、図24に示す如く、第一の型70の軟質部材72の上面72bが樹脂シートSを介して土台部91の下面と接するよう、第三の型90をキャビティ70aに設置する(ステップS12)。このとき、差込成形部92bの位置を、平面視で軟質部材72に設けられたスリット72aの位置と一致させる。
そして、図25に示す如く、可動部92を土台部91に対してプレス方向である下方へ移動させると、差込成形部92bは軟質部材72に設けられたスリット72a内に進入する(ステップS13)。軟質部材72の素材は、プレス方向とは異なる変形方向である径方向に押し退けられるように変形する。スリット72aに面して差込成形部92bに対向する軟質部材72の素材のうち、差込成形部92bの径方向外側に位置する部分は径方向外向きを接近時変形方向として、径方向内側に位置する部分は径方向内向きを接近時変形方向として、それぞれ変形する。
このとき、ステップS12(図24参照)の時点ではスリット72aの上側に位置していた樹脂シートSの素材が、差込成形部92bの先端により下方へ引き伸ばされ、差込成形部92bと共にスリット72a内に進入する。つまり、差込成形部92bの両面が樹脂シートSにより覆われ、それを挟むように軟質部材72が位置している状態である。
この後、可動部92を上方へ移動させると、図26に示す如く、樹脂シートSをスリット72a内に残したまま、差込成形部92bがスリット72aから引き抜かれる(ステップS14)。差込成形部92bにより押し退けられていた軟質部材72の素材は、差込成形部92bが引き抜かれると共に反発力によってスリット72aを閉じる向きに復元しようとする。つまり、スリット72aに面した軟質部材72の素材のうち、径方向外側に位置する部分は径方向内向きを離間時変形方向として、径方向内側に位置する部分は径方向外向きを離間時変形方向として、それぞれ変形する。これにより、差込成形部92bを挟む形でスリット72a内に進入していた樹脂シートSが、スリット72aのなす面と直交する向き(径方向)に互いに押し付けられて閉じ合わされ、スリット72aの形状に沿った円筒面状に成形される。
樹脂シートSを第一の型70から離型すると(ステップS15)、図27に示す如く、深皿型の本体部8aの底面に、短い円筒面をなす薄型の脚部8bを設けた形状の容器8が得られる。
容器8は、本体部8aの表面から細い部材(脚部8b)が突出し、この部分においてT字状の断面をなしているが、通常のプレス成形では、このような形状を有する容器を製造することは困難である。T字状の断面を有する形状とはすなわち、第一の面に対して第二の面の縁部を突き当てた形状であるが、通常の雄型と雌型を用いたプレス成形では、雄型と雌型の間に第一の面を成形することはできても、その際に同時に第二の面を成形することはできない。仮に、例えば雌型に第二の面に対応する形状の溝を形成しておいたとしても、プレス成形の場合、そのような細い溝には素材がうまく入り込まないのである。特に、発泡樹脂のような流動性の低い素材であれば尚更である。
そこで、本参考例では、前記第一の面に対応する本体部8aの素材(樹脂シート)Sを、薄型の差込成形部92bによりスリット72aに押し込むことで、細い隙間であるスリット72aにも素材Sが入り込むようにしている。ここで、スリット72aは軟質部材72に設けられているため、素材Sと共に差込成形部92bをスリット72aに押し込んでから差込成形部92bを引き抜くと、スリット72a内に残った樹脂シートSは、スリット72aの反発力により閉じ合わされる。よって、脚部8bにあたる部分は成形時、差込成形部92bが入り込んで一時的に中空の状態となるが、最終的には一枚の板状の部材として成形される。こうして、脚部8bのように、本体部8aの片面から突出した細い形状を有するT字断面の容器8を成形することができる。
本参考例の場合、差込成形部92bが加力部として機能すると共に、一時的に変形受け部として機能する。また、被差込部であるスリット72aが受力部であり、且つ変形部として機能する。また、第一の硬質部材71のうち、底部71aと、軟質部材72の外周にあたる側壁71bが突き当り部に相当する。さらに、軟質部材72の径方向中心部も突き当り部として機能すると言える。
尚、本参考例の場合、一度目のプレス方向(第一、第二の型70,80同士のプレス方向) と、二度目のプレス方向(第一、第三の型70,90同士のプレス方向。すなわち、差込成形部92bの移動方向)が一致しているが、このようにプレスを複数回行う場合、各プレス工程のプレス方向は必ずしも一致する必要はなく、一度目のプレス方向と二度目のプレス方向が異なっている場合もあり得る。例えば、本体部8aの側面から突出するような形状を作る場合には、一度目と二度目で互いに異なる方向にプレス成形を行うことになる。
以上のように、上記本参考例の容器の成形装置は、硬質部材として、軟質部材72の被差込部72aに対してプレス方向に差し込まれる差込成形部92bを備えている。
また、本参考例の容器の成形装置において、差込成形部92bはプレス方向に沿って延びる形状をなし、被差込部72aは軟質部材72に形成されたスリットとし、容器8の素材Sを差込成形部92bと共にスリット72aに差し込んだ後、差込成形部92bをスリット72aから抜き出し、スリット72aで容器8の素材Sを成形するよう構成することができる。
そして、本参考例の容器の製造方法においては、硬質部材として、軟質部材72の被差込部72aに対してプレス方向に差し込まれる差込成形部92bを備え、容器の素材Sを差込成形部92bと共に被差込部72aに差し込んだ後、差込成形部92bを被差込部72aから抜き出し、被差込部72aで容器8の素材Sを成形するようにしている。こうすることにより、例えば表面から細い部材(脚部8b)が突出した形状をプレス成形により成形することができる。
その他の構成や製造手順、作用効果については上記第一~第三実施例と共通するため説明を省略するが、本参考例によっても、単純な構成の型を採用しつつ、製造可能な容器の形状の自由度を高め得る。
尚、本発明の容器の成形装置および製造方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。