JP7094487B2 - シリカガラスルツボの製造装置およびシリカガラスルツボの製造方法 - Google Patents

シリカガラスルツボの製造装置およびシリカガラスルツボの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリカガラスルツボの製造装置およびシリカガラスルツボの製造方法に関するものである。
シリコン単結晶は、シリカガラスルツボに充填したシリコン原料(多結晶シリコン)を熔融し、熔融した多結晶シリコンに種結晶を接触させて回転しながら引き上げることで製造される(CZ法:チョクラルスキー法)。このCZ法で使用されるシリカガラスルツボは、回転モールド法によって製造される。
すなわち、シリカガラスルツボの製造方法は、一例では、平均粒径100μm~400μm程度のシリカ粉を回転するカーボンモールドの内側に遠心力を利用して堆積させてシリカ粉層を形成するシリカ粉層形成工程と、モールド側からシリカ粉層を減圧しながら、シリカ粉層をアーク熔融させることによってシリカガラス層を形成するアーク熔融工程とを備える。
アーク熔融工程では、シリカ紛層の最表面全体を薄くガラス化し、その後、強く減圧することによって気泡を除去して透明シリカガラス層(以下、「透明層」とも言う。)を形成し、その後、減圧を弱くすることによって気泡が残留した気泡含有シリカガラス層(以下、「非透明層」とも言う。)を形成する。これにより、内表面側に透明層を有し、外表面側に非透明層を有する例えば二層構造のシリカガラスルツボが形成される。
このようなアーク熔融工程においては、複数の電極棒に高電圧を印加して電極棒の先端付近に高温のアークを発生させて、カーボンモールド内に成形したシリカ粉を熔融する。この際、熔融して蒸発した酸化ケイ素(SiO)などのヒューム(fume)が蒸着物として電極棒に付着する。この蒸着物が製造中のシリカガラスルツボ内に落下すると、完成したシリカガラスルツボに白色異物(付着物)が発生することになる。シリカガラスルツボにこのような付着物が発生すると、このシリカガラスルツボによって引き上げを行うシリコン単結晶の品質(単結晶化率など)に影響を及ぼすことになる。
特許文献1には、アーク熔融におけるカーボン電極に付着する珪素酸化物が成形体内に落下するのを防止できる石英ガラスルツボ製造装置および製造方法が開示される。この石英ガラスルツボ製造装置では、ルツボ成形型の上方に蓋体が設けられ、溶融時、蓋体に設けられた貫通孔を貫通するカーボン電極の貫通孔近傍部位に高圧ガスを吹き付けるノズルが設けられている。このノズルからカーボン電極に向けて高圧ガスを吹き付けることでヒュームを吹き飛ばし、ルツボ内に落下することを防止している。
特許文献2には、石英ガラスるつぼの白点欠陥を最小限にする方法および装置が開示される。この方法および装置では、電極を囲むように設けられたノズル口からガスを噴出してエアーカーテンを構成し、電極でのヒュームの凝結を防止している。
特開2001-089171号公報 特表2002-530258号公報
シリカガラスルツボを用いてCZ引き上げ法でシリコン単結晶を製造する場合、シリカガラスルツボの品質が引き上げて製造されるシリコン単結晶の品質に大きな影響を与える。このため、シリカガラスルツボの品質の一つである白色異物の発生は極力抑える必要がある。このため、シリカガラスルツボの製造工程でアーク熔融を行う際、アークを発生させる電極棒に付着する蒸着物を確実に除去することが望まれる。
本発明は、シリカガラスルツボの製造時に電極棒に付着する蒸着物を効果的に除去することができるシリカガラスルツボの製造装置を提供すること、および高品質のシリカガラスルツボを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、カーボンモールドの内面に沿って成形されたシリカ粉の成形体を熔融してシリカガラスルツボを製造するシリカガラスルツボの製造装置であって、カーボンモールドを載置する載置部と、載置部にカーボンモールドを載置した状態で成形体との相対的な位置を変更可能に設けられ、成形体を熔融するためのアーク放電を行う電極棒と、電極棒に気体を吹き付ける噴射ノズルと、噴射ノズルから噴射され電極棒を経由した気体を吸引する吸引部と、を備える。このような構成によれば、電極棒に付着した蒸着物を噴射ノズルから吹き付けた気体によって吹き飛ばし、吸引部で吸引することができる。
上記シリカガラスルツボの製造装置において、噴射ノズルおよび吸引部は、電極棒を間として互いに対向して配置されていてもよい。これにより、噴射ノズルから噴射した気体が電極棒を経由して吸引部で効果的に吸引される。
上記シリカガラスルツボの製造装置において、電極棒における先端の高さ方向の位置は、噴射ノズルと吸引部とを結ぶ線よりも下方に配置されていてもよい。これにより、噴射ノズルから噴射した気体が電極棒の先端で発生するアークに与える影響を抑制できる。
上記シリカガラスルツボの製造装置において、噴射ノズルおよび電極棒の少なくとも一方は、互いの相対的な高さを変更可能に設けられていてもよい。これにより、噴射ノズルから噴射する気体が当たる電極棒の位置を調整できるようになる。
上記シリカガラスルツボの製造装置において、噴射ノズルから噴射される気体の噴射角度の範囲内に電極棒の先端が含まれないようになっていてもよい。これにより、噴射ノズルから噴射した気体が電極棒の先端で発生するアークに与える影響を効果的に抑制できる。
上記シリカガラスルツボの製造装置において、噴射ノズルによる気体の噴射角度は、0度以上15度以下であってもよい。この噴射角度によって気体を電極棒の特定位置へ効果的に吹き付けることができる。
上記シリカガラスルツボの製造装置において、噴射ノズルから吸引部に向かう線の水平線に対する仰角は、0度よりも大きく60度以下であってもよい。これにより、気体によって飛ばされるヒュームや蒸着物は吹き上げられて吸引部へ向かうことになり、蒸着物のシリカガラスルツボ内への落下が積極的に抑制される。
本発明の一態様は、上記シリカガラスルツボの製造装置によって製造されたシリカガラスルツボである。これにより、電極棒に付着した蒸着物がシリカガラスルツボに落下せず、品質の高いシリカガラスルツボを構成することができる。
本発明によれば、シリカガラスルツボの製造時に電極棒に付着する蒸着物を効果的に除去することができるシリカガラスルツボの製造装置を提供すること、および高品質のシリカガラスルツボを提供することが可能になる。
本実施形態に係るシリカガラスルツボの製造装置を例示する模式図である。 噴射ノズルおよび吸引部を例示する模式平面図である。 噴射ノズルを例示する模式平面図である。 (a)および(b)は、噴射ノズルと吸引部との位置関係を例示する模式図である。 (a)および(b)は、噴射ノズルおよび吸引部の他の配置例を示す模式図である。 噴射ノズルおよび吸引部の他の配置例を示す模式図である。 (a)および(b)は、噴射ノズルおよび吸引部の他の配置例を示す模式図である。 噴射ノズルおよび吸引部の他の配置例を示す模式図である。 シリカガラスルツボの製造工程を概略的に示すフローチャートである。 (a)および(b)は、シリカガラスルツボの製造方法を説明するための模式図である。 (a)および(b)は、シリカガラスルツボの製造方法を説明するための模式図である。 (a)および(b)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボを例示する模式図である。 シリコン単結晶の製造装置である引き上げ装置の全体構成を示す模式図である。 (a)~(c)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボを用いたシリコン単結晶の製造方法を説明する模式図である。 シリコン単結晶のインゴットを例示する模式図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
<シリカガラスルツボの製造装置>
図1は、本実施形態に係るシリカガラスルツボの製造装置を例示する模式図である。
図1に示すように、シリカガラスルツボの製造装置1は、カーボンモールド20の内面に沿って成形されたシリカ粉の成形体(シリカ粉成形体200)を熔融してシリカガラスルツボ11を製造する装置である。製造装置1は、カーボンモールド20を載置する載置部10と、アーク放電を行う電極棒30と、気体を噴射する噴射ノズル50と、気体を吸引する吸引部60とを備える。
製造装置1は、側壁81、天井壁82および床83によって囲まれた空間Wを有し、この空間W内に載置部10およびカーボンモールド20が配置される。また、例えば天井壁82には空間W内の空気を外へ排出する吸気ダクト91が設けられ、側壁81には空間W内に空気を送り込む送気ダクト92が設けられる。これらにより、空間W内の気圧や気流が調整される。
空間W内に配置される載置部10には図示しない回転駆動機構が設けられる。載置部10は、カーボンモールド20を載置するとともに、回転駆動機構によってカーボンモールド20を回転できるようになっている。
カーボンモールド20には通気孔21が設けられる。シリカ粉成形体200の溶融時には通気孔21を通じてシリカ内部の気体を外層側へ吸引する。載置部10にはこの通気孔21と連通する吸引機構(図示せず)が設けられる。
製造装置1には、アーク熔融を行う際のアークを発生させる複数本(例えば3本)の電極棒30が設けられる。電極棒30は例えばカーボンによって形成されている。各電極棒30は、天井壁82を貫通するように配置される。なお、各電極棒30は部屋内(空間W内)に配置されていてもよい。
各電極棒30は図示しない駆動機構によって移動可能に支持される。駆動機構を動作させることで、各電極棒30の先端301の間隔や、各電極棒30の角度、高さ、シリカ粉成形体200との距離など、電極棒30とシリカ粉成形体200との相対的な位置が調整される。アークを発生させた状態で電極棒30とシリカ粉成形体200との位置関係を調整することでアーク熔融の制御が行われる。
噴射ノズル50は、カーボンモールド20の上方に配置され、電極棒30の側方から電極棒30の方向に気体を噴射する。噴射する気体は空気でもよいし、不活性ガス(窒素やアルゴン等)であってもよい。
吸引部60は、噴射ノズル50から噴射され電極棒30を経由した気体を吸引する。吸引部60は、カーボンモールド20の上方において、電極棒30を間にして噴射ノズル50と対向する位置に配置される。すなわち、気体の噴射方向に噴射ノズル50、電極棒30、吸引部60の順で配置される。
図2は、噴射ノズルおよび吸引部を例示する模式平面図である。
図2では、カーボンモールド20の上側(モールド開口端側)からみた平面図が示される。噴射ノズル50からは電極棒30に向けて気体が噴射される(図中矢印参照)。吸引部60は、電極棒30を間として噴射ノズル50と対向する位置に配置されており、噴射ノズル50から噴射し、電極棒30を経由した気体が効果的に吸引部60で吸引されるようになっている。
噴射ノズル50から噴射する気体の量および圧力を設定することで、アーク熔融中であっても噴射した気体のほとんどをカーボンモールド20側(下方)へ降下させることなく対向側の吸引部60へ到達させることができる。したがって、アーク熔融中に発生したヒュームは噴射ノズル50から噴射される気体によって飛ばされ、吸引部60で吸引される。また、ヒュームによって電極棒30に蒸着物が付着したとしても、噴射ノズル50から噴射される気体によって吹き飛ばされて、カーボンモールド20側のルツボ内へ落下することなく吸引部60で吸引されることになる。
図3は噴射ノズルを例示する模式平面図である。
図3に示すように、噴射ノズル50は配管から供給される気体を先端の噴射面501に設けられた孔から噴射するものである。
一例として、噴射ノズル50に0.5MPaの圧力で250l/minの流量の空気を供給した場合、以下のような仕様の噴射ノズル50が用いられる。
(1)噴射ノズル50の噴射面501から中心軸に沿って距離L=300mmにおける位置P1での気体の噴射速度…10m/s
(2)気体の噴射角度θw…2度
(3)中心軸と直交する方向(x方向)に位置P1からx1=30mm離れた位置P2での気体の噴射速度…2m/s
(4)x方向に位置P1からx2=60mm離れた位置P3での気体の噴射速度…1m/s
噴射ノズル50としては、直進性の強い噴出を行うことができるものが好ましい。これにより、噴射ノズル50から噴射した気体によって電極棒30に付着した蒸着物を確実に吹き飛ばし、落下させずに吸引部60で吸引できるようになる。
図4(a)および(b)は、噴射ノズルと吸引部との位置関係を例示する模式図である。
図4(a)に示す例では、水平方向にみて、電極棒30の先端301の高さ方向の位置が、噴射ノズル50と吸引部60とを結ぶ線L1よりも下方に配置される。ここで、線L1は、噴射ノズル50の噴射面501の中心と、吸引部60の吸引口601の中心とを結ぶ線である。これにより、線L1上に電極棒30の先端301が位置していないことになる。したがって、噴射ノズル50から噴射した気体が電極棒30の先端301で発生するアーク周辺に当たらず、アークを発生させる雰囲気に与える影響を抑制することができる。この際、噴射ノズル50から噴射される気体の噴射角度の範囲内に電極棒30の先端301が含まれないようにすることが望ましい。
また、さらに好ましくは、図4(b)に示すように、噴射ノズル50から吸引部60に向かう方向において線L1を水平線L0に対して仰角θeにする。仰角θeは、例えば0度よりも大きく、60度以下であり、好ましくは10度以上45度以下である。これにより、気体によって飛ばされるヒュームや蒸着物は吹き上げられて吸引部60へ向かうことになる。特に、仰角θeが10度以上45度以下であれば、気体によるヒュームおよび蒸着物の吹き上げとともに、気体の噴出における水平方向成分も十分に得ることができ、効果的にヒュームおよび蒸着物を吹き飛ばすことができる。したがって、蒸着物のシリカガラスルツボ内への落下が積極的に抑制される。
また、電極棒30に付着する蒸着物は先端301よりも上側(先端301から離れる側)に堆積しやすい。すなわち、電極棒30の先端301においては高温のアークが発生しているが、先端301よりも上側はアークの温度よりも低くなっている。したがって、ヒュームが冷やされて蒸着物として堆積しやすい。図4(a)および(b)に示すように、線L1が電極棒30の先端301よりも上側にあることで、蒸着物が堆積しやすい位置に噴射ノズル50から噴射される気体を当てることができ、効率良く蒸着物を吹き飛ばすことができるようになる。
噴射ノズル50および電極棒30の少なくとも一方は、互いの相対的な高さを変更可能に設けられていることが好ましい。これにより、噴射ノズル50から噴射する気体が当たる電極棒30の位置を調整できるようになり、噴射ノズル50から噴射する気体を蒸着物が体積しやすい位置に確実に吹き付けることが可能となる。
図5~図8は、噴射ノズルおよび吸引部の他の配置例を示す模式図である。
図5(a)~図7(b)では、カーボンモールド20の上側(開口端側)からみた平面図が示される。また、図8では、カーボンモールド20の側方からみた図が示される。
図5(a)に示す例においては、複数箇所(図示する例では3箇所)に噴射ノズル50が配置される。1箇所あたり1つの噴射ノズル50が配置されており、それぞれ異なる方向へ気体を噴射する。噴射ノズル50の噴射範囲の中心は電極棒30に向けられており、噴射ノズル50から噴射された気体は電極棒30に当たることになる。気体が直接的に電極棒30に当たることで、電極棒30に付着した蒸着物を積極的に吹き飛ばして吸引部60で吸引できるようになる。
図5(b)に示す例においては、複数箇所(図示する例では3箇所)に噴射ノズル50の組が配置される。1組あたり2つの噴射ノズル50が配置されており、各組で異なる方向へ気体を噴射する。1組における2つの噴射ノズル50のそれぞれの噴射範囲の中心は、電極棒30の両脇を通過するようになっている。これにより、1つの電極棒30について2つの噴射ノズル50から噴射される気体が電極棒30の両脇をすり抜けるようにして流れ、電極棒30の周縁に付着した蒸着物を広い範囲で吹き飛ばして吸引部60で吸引できるようになる。
図6に示す例においては、複数箇所(図示する例では3箇所)に吸引部60が配置される。また、各吸引部60に対向するように噴射ノズル50が配置される。噴射ノズル50と吸引部60との組が個別に設けられていることで、各組について噴射ノズル50および吸引部60を電極棒30の位置に基づき最適な位置に配置することができる。これにより、複数の噴射ノズル50から噴射される気体の流れを調整しやすくなり、蒸着物を吹き飛ばし、吸引するための最適な気流を設定できるようになる。
図7(a)および(b)に示す例においては、互いに対向して配置される噴射ノズル50と吸引部60との組が、異なる角度で複数箇所(図示する例では3箇所)に配置される。1つの組について噴射ノズル50と吸引部60とを結ぶ線上に電極棒30が配置される。
図7(a)に示す例では、1つの組について噴射ノズル50と吸引部60とを結ぶ線がカーボンモールド20の中央を通過しない配置となっている。一方、図7(b)に示す例では1つの組について噴射ノズル50と吸引部60とを結ぶ線がカーボンモールド20の中央を通過する配置となっている。
図7(a)および(b)に示すいずれの例においても、カーボンモールド20の上側(開口端側)からみた場合、1つの組について噴射ノズル50と吸引部60とを結ぶ線が、他の組について噴射ノズル50と吸引部60とを結ぶ線と交差することになる。しかし、図8に示すように、カーボンモールド20の横から水平方向にみた場合、1つの組について噴射ノズル50と吸引部60とを結ぶ線は、他の組について噴射ノズル50と吸引部60とを結ぶ線とは異なる高さなっており、互いに交差しない。このような配置によって、1つの組の噴射ノズル50から噴射される気体が、他の組の噴射ノズル50から噴射される気体と交差して干渉し合うことがなくなる。
<シリカガラスルツボの製造方法>
図9は、シリカガラスルツボの製造工程を概略的に示すフローチャートである。
また、図10(a)~図11(b)は、シリカガラスルツボの製造方法を説明するための模式図である。
シリカガラスルツボ11は回転モールド法によって製造される。図9に示すように、回転モールド法では、カーボンモールドへのシリカ粉層の形成(ステップS101)、アーク熔融および減圧(ステップS102)、冷却(ステップS103)、研磨処理(ステップS104)およびリムカットおよびエッジ処理(ステップS105)によってシリカガラスルツボ11を製造する。
先ず、ステップS101に示すカーボンモールドへのシリカ粉層の形成では、図10(a)に示すように、シリカガラスルツボ11の外形に合わせたキャビティを有するカーボンモールド20を用意する。そして、カーボンモールド20を回転させながら第1シリカ粉201を供給し、スクレーパを使用して掻き取り、所定の厚さまで成形する。これにより、モールド内面に沿ったシリカ粉層を形成する。カーボンモールド20は一定速度で回転しているので、供給された第1シリカ粉201は遠心力によってモールド内面に張り付いたまま一定の位置に留まり、その形状が維持される。第1シリカ粉201は、非透明層となることから、天然シリカ粉であることが好ましい。
次に、図10(b)に示すように、第1シリカ粉201の層が形成されたカーボンモールド20内に第2シリカ粉202を供給し、シリカ粉層をさらに厚く形成する。第2シリカ粉202は、モールド内面の第1シリカ粉201の上に所定の厚さにて供給される。第2シリカ粉202は、合成シリカ粉であることが好ましいが、天然シリカ粉であってもよい。
次に、ステップS102に示すアーク熔融および減圧では、図11(a)に示すように、カーボンモールド20のキャビティ内に電極棒30を設置し、カーボンモールド20を回転させながらカーボンモールド20の内側からアーク放電を行い、シリカ粉層全体を1720℃以上に加熱して熔融する。この際、全周にわたり薄いシリカガラス層を形成する。そして、この加熱と同時にカーボンモールド20側から減圧し、カーボンモールド20に設けた通気孔21を通じてシリカ内部の気体を外層側に吸引し、加熱中のシリカ粉層内の空隙を脱気することにより、ルツボ内表面の気泡を除去する。これにより、実質的に気泡を含まない透明層13を形成する。
カーボンモールド20には図示しない冷却手段が設けられている。これにより、シリカガラスルツボ11の外表面となる部分のシリカをガラス化させないようにする。冷却手段による冷却温度は、シリカがガラス化せずに焼結体および粉体として残る温度である。
その後、加熱を続けながら脱気のための減圧を弱め又は停止し、気泡を残留させることにより、多数の微小な気泡を内包する非透明層15を形成する。
このアーク熔融を行う際、熔融して蒸発したSiOなどのヒュームが漂うとともに、電極棒30にはヒュームの蒸着物が付着する。そこで、図11(b)に示すように、噴射ノズル50から電極棒30に向けて気体を吹き付けるとともに、気体を吸引部60から吸引する(プッシュプル形式)。これにより、電極棒30に付着した蒸着物を気体によって吹き飛ばし、吸引部60で吸引する。電極棒30に付着した蒸着物の除去は、アーク熔融の工程中の適宜のタイミングで行ってもよいし、アーク熔融終了後や、次のアーク熔融を行う前に行ってもよい。
アーク熔融工程の途中で除去する場合には、アークを発生させたまま電極棒30をカーボンモールド20の開口よりも上方に移動させて、噴射ノズル50から気体を電極棒30に吹き付ける。その後、再び電極棒30をカーボンモールド20内に移動してアーク熔融を続けるようにする。これにより、電極棒30から蒸着物がシリカガラスルツボ内に落下することを防止して、蒸着物に起因するシリカガラスルツボ11の白色異物の発生を防止することができる。
次いで、ステップS103に示す冷却では、電極棒30への電力供給を停止して、熔融したシリカガラスを冷却してシリカガラスルツボ11の形状を構成する。冷却を行う際には、シリカガラスルツボ11の内表面となるシリカガラスに冷却ガスが吹き付けられる。冷却速度、冷却ガスの吹き付け方など、冷却条件によってシリカガラスルツボ11の内部残留応力の分布が決定される。
次に、ステップS104に示す研磨処理として、シリカガラスルツボ11の外表面OSにサンドブラスト処理を施し、所定の表面粗さに仕上げる。そして、ステップS105に示すリムカットおよびエッジ処理では、カーボンモールド20から取り出したシリカガラスルツボ11の側壁部11aの上端側の一部を切断してシリカガラスルツボ11の高さを調整する。その後、上端面の縁である内周縁および外周縁に面取り加工を施す。リムカット後、洗浄を行ってシリカガラスルツボ11が完成する。
<シリカガラスルツボ>
図12(a)および(b)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボを例示する模式図である。
図12(a)にはシリカガラスルツボ11の斜視図が示され、図12(b)にはシリカガラスルツボ11の断面図が示される。
シリカガラスルツボ11は、上記説明した製造装置1によって製造される。シリカガラスルツボ11は、相対的に曲率の高いコーナ部11bと、上面に開口した縁部を有する円筒状の側壁部11aと、直線または相対的に曲率の低い曲線からなるすり鉢状の底部11cと、を有する。
本実施形態において、コーナ部11bは、側壁部11aと底部11cを連接する部分であり、コーナ部11bの曲線の接線がシリカガラスルツボ11の側壁部11aと重なる点から、底部11cと共通接線を有する点までの部分のことを意味する。言い換えると、シリカガラスルツボ11の側壁部11aにおいて曲がり始める点が、側壁部11aとコーナ部11bとの境界である。さらに、シリカガラスルツボ11の底の曲率が実質的に一定の部分が底部11cであり、シリカガラスルツボ11の底の中心からの距離が増したときに曲率が変化し始める点が、底部11cとコーナ部11bとの境界である。
シリカガラスルツボ11の肉厚方向(厚さ方向とも言う。)において、内表面IS側には透明層13が設けられ、外表面OS側には非透明層15が設けられる。
透明層13とは、実質的に気泡を含まない層である。ここで、「実質的に気泡を含まない」とは、気泡が原因でシリコン単結晶の単結晶化率が低下しない程度の気泡含有率および気泡サイズのことを意味する。例えば、透明層13の気泡含有率は0.1%以下であり、気泡の平均直径は100μm以下である。
透明層13は合成シリカガラスを内表面IS側に含むことが好ましい。合成シリカガラスとは、例えばケイ素アルコキシドの加水分解により合成された原料を溶融して製造されたシリカガラスを意味する。
非透明層15には多数の気泡が内在する。非透明層15は、この気泡によって白濁した状態に見える層のことである。非透明層15は天然シリカガラスからなることが好ましい。天然シリカガラスとは、天然水晶、ケイ石等の天然質原料を溶融して製造されたシリカガラスを意味する。
<引き上げ装置>
図13は、CZ方によりシリコン単結晶を製造する際に用いられる引き上げ装置の全体構成を示す模式図である。
引き上げ装置500の外観を形成するチャンバ510の内部には、シリコン融液23を収容するシリカガラスルツボ11が設けられ、このシリカガラスルツボ11の外側を覆うようにカーボンサセプタ520が設けられる。カーボンサセプタ520は鉛直方向に平行な支持軸530の上端に固定される。カーボンサセプタ520に嵌合したシリカガラスルツボ11は、カーボンサセプタ520とともに支持軸530によって所定の方向に回転するとともに、シリコン融液の液面を炉内のヒータ540に対して一定の高さに制御できるように(温度勾配が一定となるように)、上下方向に移動可能になっている。
シリカガラスルツボ11およびカーボンサセプタ520の外周面はヒータ540により囲まれている。ヒータ540は、さらに保温筒550により包囲される。シリコン単結晶の育成における原料溶解の過程では、ヒータ540の加熱によりシリカガラスルツボ11内に充填された高純度の多結晶シリコン原料が加熱、溶解されてシリコン融液23になる。
引き上げ装置500のチャンバ510の上端部には引き上げ手段560が設けられる。この引き上げ手段560にはシリカガラスルツボ11の回転中心に向かって垂下されたワイヤケーブル561が取り付けられ、ワイヤケーブル561を巻き取りまたは繰り出す引き上げ用モータ(図示せず)が配備される。ワイヤケーブル561の下端には種結晶24が取り付けられる。引き上げ中、種結晶24は回転し、成長とともにシリコン単結晶25(インゴット)も回転する。
育成中のシリコン単結晶25を囲繞するように、シリコン単結晶25と保温筒550との間に円筒状の熱遮蔽部材570が設けられる。熱遮蔽部材570は、コーン部571と、フランジ部572とを有する。このフランジ部572を保温筒550に取り付けることにより熱遮蔽部材570が所定位置(ホットゾーン)に配置される。このような引き上げ装置500により、シリコン単結晶25を製造することができる。
<シリコン単結晶の製造方法>
図14(a)~(c)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボを用いたシリコン単結晶の製造方法を説明する模式図である。
シリコン単結晶25は、本実施形態に係るシリカガラスルツボ11を上記説明した引き上げ装置500にセットして引き上げることで製造される。
先ず、図14(a)に示すように、シリカガラスルツボ11内に多結晶シリコンを充填し、この状態でシリカガラスルツボ11の周囲に配置されたヒータで多結晶シリコンを加熱して熔融させる。これにより、シリコン融液23を得る。
次に、ワイヤケーブル561に取り付けられた種結晶24の先端を下降させてシリコン融液23に接触させる。そして、ワイヤケーブル561を回転させながらゆっくりと引き上げる。これにより、図14(b)に示すように、種結晶24の下部にシリコン単結晶25を成長させる。引き上げ速度を制御しながら引き上げを続けることで、図14(c)に示すようにシリコン単結晶25をインゴットに成長させる。
このようなCZ法によるシリコン単結晶の製造方法において、本実施形態に係るシリカガラスルツボ11を用いた引き上げでは、ルツボ内表面における白色異物の発生が抑制されていることから、品質(例えば、単結晶化率)の優れたシリコン単結晶を製造することが可能となる。
<シリコン単結晶のインゴット>
図15は、シリコン単結晶のインゴットを例示する模式図である。
シリコン単結晶のインゴット600は、本実施形態に係るシリカガラスルツボ11を引き上げ装置500にセットして、上記のシリコン単結晶の製造方法によって引き上げることで製造される。
インゴット600は、種結晶24側の肩部610と、肩部610から連続する直胴部620と、直胴部620から連続する尾部630とを有する。なお、インゴット600において種結晶24は除去されている場合もある。肩部610の径は、種結晶24側から直胴部620にかけて漸増する。直胴部620の径はほぼ一定である。尾部630の径は、直胴部620から離れるに従い漸減していく。
インゴット600の品質は、引き上げを行うシリカガラスルツボ11の品質と密接に関連する。例えば、シリカガラスルツボ11の不純物(例えば、白色異物)は、インゴット600におけるシリコン単結晶の有転位化に繋がる。また、シリカガラスルツボ11の内表面の滑らかさ(見た目で分かるような凹凸)、表面付近の気泡の量、大きさによっては、ルツボ表面の欠け、気泡の割れ、潰れによるシリコン内への微小な破片(ルツボから剥離した粒子など)がシリコン融液へ脱落すると、これがインゴット中に混入して有転位化することに繋がる。
本実施形態に係るシリカガラスルツボ11では、内表面ISの白色異物の発生が抑制されているため、このシリカガラスルツボ11によって引き上げたインゴット600の結晶欠陥の発生が抑制される。したがって、インゴット600から切り出したウェーハを用いて製造した半導体装置の電気的特性の安定化および劣化抑制を図ることができる。
本実施形態に係るシリカガラスルツボの製造装置1を用いてシリカガラスルツボ11を製造し、このシリカガラスルツボ11を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。以下、実施例を比較例とあわせて説明する。
実施例1~5では、噴射ノズル50および吸引部60が設けられている。
実施例1では、噴射ノズル50の角度が10度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり1本である。
実施例2では、噴射ノズル50の角度が45度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり1本である。
実施例3では、噴射ノズル50の角度が5度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり1/3本である。
実施例4では、噴射ノズル50の角度が0度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり1本である。
実施例5では、噴射ノズル50の角度が-10度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり1/3本である。
ここで、噴射ノズル50の角度が「+」の場合は仰角、「-」の場合は俯角である。
比較例1~4では、噴射ノズル50のみ設けられており、吸引部60が設けられていない。
比較例1では、噴射ノズル50の角度が-5度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり1本である。
比較例2では、噴射ノズル50の角度が10度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり2本である。
比較例3では、噴射ノズル50の角度が0度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり1/3本である。
比較例4では、噴射ノズル50の角度が-10度、噴射ノズル50の本数が電極1本あたり1/3本である。
各実施例および各比較例についてシリカガラスルツボを製造し、製造したシリカガラスルツボの白色異物の発生率と、このシリカガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った際のシリコン単結晶の単結晶化率を調べた。その結果を表1に示す。なお、表1に示す単結晶化率は、単結晶化率=単結晶重量/原料重量×100%で定義される。
Figure 0007094487000001
表1に示す結果から、実施例1~5のように噴射ノズル50および吸引部60の両方を設けることで、比較例1~4(吸引部60無し)に比べてシリカガラスルツボの白色異物の発生率が抑制され、シリコン単結晶の単結晶化率も高いことが分かる。
以上説明したように、本実施形態によれば、シリカガラスルツボの製造時に電極棒に付着する蒸着物を効果的に除去することができるシリカガラスルツボの製造装置を提供すること、および高品質のシリカガラスルツボを提供することが可能になる。
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
1…製造装置
10…載置部
11…シリカガラスルツボ
11a…側壁部
11b…コーナ部
11c…底部
13…透明層
15…非透明層
20…カーボンモールド
21…通気孔
23…シリコン融液
23a…液面
24…種結晶
25…シリコン単結晶
30…電極棒
50…噴射ノズル
60…吸引部
81…側壁
82…天井壁
83…床
91…吸気ダクト
92…送気ダクト
200…シリカ粉成形体
201…第1シリカ粉
202…第2シリカ粉
301…先端
500…引き上げ装置
501…噴射面
510…チャンバ
520…カーボンサセプタ
530…支持軸
540…ヒータ
550…保温筒
560…引き上げ手段
561…ワイヤケーブル
570…熱遮蔽部材
571…コーン部
572…フランジ部
600…インゴット
601…吸引口
610…肩部
620…直胴部
630…尾部
IS…内表面
L0…水平線
OS…外表面
W…空間
θe…仰角
θw…噴射角度

Claims (7)

  1. カーボンモールドの内面に沿って成形されたシリカ粉の成形体を熔融してシリカガラスルツボを製造するシリカガラスルツボの製造装置であって、
    前記カーボンモールドを載置する載置部と、
    前記載置部に前記カーボンモールドを載置した状態で前記成形体との相対的な位置を変更可能に設けられ、前記成形体を熔融するためのアーク放電を行う電極棒と、
    前記電極棒に気体を吹き付ける噴射ノズルと、
    前記噴射ノズルから噴射され前記電極棒を経由した前記気体を吸引する吸引部と、
    を備え
    前記噴射ノズルおよび前記吸引部は、前記電極棒を間として互いに対向して配置された、シリカガラスルツボの製造装置。
  2. 前記電極棒における先端の高さ方向の位置は、前記噴射ノズルと前記吸引部とを結ぶ線よりも下方に配置される、請求項1記載のシリカガラスルツボの製造装置。
  3. 前記噴射ノズルおよび前記電極棒の少なくとも一方は、互いの相対的な高さを変更可能に設けられた、請求項1または2に記載のシリカガラスルツボの製造装置。
  4. 前記噴射ノズルから噴射される前記気体の噴射角度の範囲内に前記電極棒の先端が含まれない、請求項1~のいずれか1項に記載のシリカガラスルツボの製造装置。
  5. 前記噴射角度は、0度以上15度以下である、請求項記載のシリカガラスルツボの製造装置。
  6. 前記噴射ノズルから前記吸引部に向かう線の水平線に対する仰角は、0度よりも大きく60度以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のシリカガラスルツボの製造装置。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載のシリカガラスルツボの製造装置を用いたシリカガラスルツボの製造方法であって、
    前記成形体を熔融するためのアーク放電を行う際、前記噴射ノズルから前記電極棒に向けて前記気体を吹き付けるとともに、前記気体を前記吸引部から吸引する、シリカガラスルツボの製造方法。
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