JP7093650B2 - 筆記具用部材 - Google Patents

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本発明は、筆記具用部材、詳しくは、筆記具のインク収容管に関する。
ボールペン等の一般的な筆記具は、例えば、図2に示すように、リフィールチューブ(インク収容管1)にインク2を充填し、該インク2の後端に接してペースト状のフォロワー3をインク逆流防止剤として充填し、先端にボールと、該ボールを保持しインク収容管1からインク2を供給するための筆記具チップ5を嵌着し、後端に通気手段を設け、かつ、後端部を筆記具本体の軸筒6に嵌着した構造を有する。
筆記具のインク収容管は、ポリプロピレン等の樹脂を押出成形してなるインクチューブが知られる。例えば、特許文献1には、透明または半透明のインク収容管の内壁にインクが付着しにくく、インクの残量が確認でき、インクを使い切ることができる筆記具用インク収容管が開示されている。特許文献1のインク収容管では、所定の平均粗さを有する透明または半透明の結晶性熱可塑樹脂製筒体の内壁面に、変性シリコーンオイルを塗布し、該変性シリコーンオイルを内壁面の凹凸の凹(溝)の部分に入り込ませた後、加熱処理をすることにより、結晶性熱可塑樹脂に結晶粒界の新たな空隙を発生させ、変性シリコーンオイルの有機基の結合を増加させることで、長期間保管した後もインク反撥性が低下しないとされている。
特許文献2には、インクや塗布液等の内容物を外部から確実に視認することができる内容物可視(視認)型筆記具用部材として、内側表面部をプラズマ処理等の活性化処理をした後、シリカゾル溶液を塗布、熱硬化させることにより、SiO2の薄膜を形成し、該SiO2薄膜にシリコーン処理(撥水撥油処理)をした筆記具用部材が開示されている。特許文献2の筆記具用部材では、SiO2薄膜に撥水撥油処理をすることで、筆記具用部材と軸基材との密着性が向上し、インクのハジキ性、残量確認性に優れるとされている。
特許文献3には、インク貯蔵部と筆記部(ペン先)とを接続する部材であるインク誘導部材の経時的なインクの濡れ性や保持性の低下を極力防止することを目的として、活性化処理をした合成樹脂製のインク誘導部材表面に、SiO2、TiO2またはAl23等のコーティング膜を形成したインク誘導部材が開示されている。
インクとインク収容管との親和性が高く、濡れ性が大きいと、インクが収容管内面をコートしたような状態となるため、インク残量が視認できなくなることがある。そのため、特許文献1及び2では、インクとインク収容管との親和性を小さくする手段が採用されている。一方、特許文献3では、合成樹脂製のインク誘導部材に活性化処理をすることにより、該インク誘導部材にインクの濡れ性や保持性を付与している。これらの特許文献では、筆記具用部材において、インクが付着しにくく、使い切ることができる性能(クリアドレイン性)を向上させることが行われている。
特許文献4には、金属製のインク収容部の内側にシリコーンオイルを焼き付けた筆記具が開示されている。特許文献4の筆記具では、インクと接触する表面が固化したシリコーンで覆われるため、シリコーンオイルが流れ出すことがなく、また、インクやインク追従体(フォロワー)の経時的な流れ出しやインクとフォロワーの逆転の問題も発生しにくい、とされている。また、インクと金属面とが直接接触しないため、インク収容部の耐腐食性やインクの変質性も向上できるとされている。
特開2003-72277号公報 特開2005-231084号公報 特開平6-92081号公報 特開2013-151157号公報
本発明は、インク追従性に優れ、かつ、インク収容部が細径になっても、インク吐出量への影響が小さい筆記具用部材を提供することを課題とする。本発明では、インク追従性を、筆記時にペン先からインクが吐出するときに、インク収容部のインクとフォロワーがペン先からのインク吐出を妨げない性能と定義する。インク追従性が良いとは、ペン先からのインク吐出に対するインク収容部のインクとフォロワーの抵抗が小さいことを意味する。
本発明の筆記具用部材は、インク及びフォロワーを収容するインク収容管において、前記インク収容管の内側表面の、少なくとも前記インク及びフォロワーが接している部分が、二酸化ケイ素(SiO2)コーティングを有し、前記インク収容管が、ステンレス鋼(SUS)製であり、かつ、前記インク収容管の内径が1.5~6.5mmであることを特徴とする。
このような構成を備えることで、インク及びフォロワーを細径のインク収容管に収容した場合においても、筆記時、フォロワーをインクに追従させながら、滑らかにインクを吐出させることができる。
前記インク収容管はステンレス鋼(SUS)製である。二酸化ケイ素(SiO2)コート材は高温での処理を要するが、ステンレス鋼(SUS)製のインク収容管であればこれが可能である。SUSは耐熱性及び耐久性などの点で優れる。
金属製のインク収容管は、樹脂製のインク収容管に比べて薄肉化が可能であるため、インク収容管の外径に対して多くのインクを収容することができる。なお、金属製のインク収容管は、樹脂製のインク収容管に比べてインクが揮発し難いなどの点でも有利である。
本発明によれば、インク収容部の内径を小さくしたときに、インク追従性の低下を軽減する筆記具用部材を提供することができる。
図1は、本発明の筆記具用部材であって、インク収容管の先端に筆記チップを設けた形態の中央断面図である。 図2は、本発明の筆記具用部材を含む筆記具の全体断面図である。
以下、本発明を図面も参照して詳細に説明する。
本発明の筆記具用部材は、図1に示すように、インク2及びフォロワー3を収容するインク収容管1(リフィールチューブ)において、該インク収容管1の内側表面の、少なくとも前記インク2及びフォロワー3が接している部分が、SiO2コーティング4を有する。
本発明の筆記具用部材には、水性インク、油性インク、剪断減粘性を有するインクまたはこれらを混合したインク等や、従来から知られる種々のインクを使用することができる。つまり、上記筆記具用部材には、多様なレオロジー特性をもつインク、例えば、粘度が1~10000mPa・s程度のインク等も好適に使用することができる。
一方、インク2の消費とともにペン先側へ移動するゲル状の尾栓であるフォロワー3にも、従来から知られる種々のものが使用可能である。前記フォロワー3の具体例には、ポリブテンなどのポリオレフィン系オイル、鉱油、シリコーンオイルなどを基油として、これにエラストマー、シリカ、及び金属石鹸などの増粘剤、必要に応じて各種添加剤を配合したものが挙げられる。
インク収容管1には、樹脂製及び金属製のいずれのものも使用できる。樹脂とは、通常、熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、及びナイロン等である。前記ポリオレフィンは、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリα-オレフィン等である。金属製のインク収容管は、ステンレス鋼、アルミニウム、又は真鍮等からなるチューブである。これらのうち、樹脂製のインク収容管の材質にはポリプロピレン(PP)が好ましく、金属製のインク収容管の材質には、ステンレス鋼材(SUS)が好ましい。本発明では、金属製のインク収容管が好ましく、SUS製のインク収容管が特に好ましい。
インク収容管1の内径は、通常1.5~6.5mm、好ましくは1.7~5.6mmである。金属は樹脂よりも機械的強度が高く、また気体透過性が低いので、金属製インク収容管は肉薄で細径とすることが可能となる。
本発明では、インク収容管1の内側表面の、少なくとも前記インク2及びフォロワー3が接している部分に、二酸化ケイ素(SiO2)コートを施す。
SiO2コーティングのためのコーティング材には、二酸化ケイ素(SiO2)を含む水溶性または水分散液等が用いられる。前記コーティング材は、所望する性能に応じて調製してもよいし、市販品を用いてもよい。市販品には、例えば、セルフェイスコート(シリカ:丸昌産業(株)製)等が用いられる。
二酸化ケイ素(SiO2)コートの方法には、流動浸漬法が用いられる。本発明では、流動浸漬法により、例えば、インク収容管を二酸化ケイ素とケイ酸ナトリウム水溶液等の薬液に1~3分間浸漬した後、引き上げて余剰の薬液を振り落とし、150~250℃で加熱することにより被膜を形成する。
本発明の筆記具用部材は、インク収容管1にSiO2コーティング4を有する。本発明の筆記具用部材を、その先端に筆記具チップ5を取り付け、軸筒6に挿入し、後端に閉栓7を取り付けることにより、筆記具を完成する。筆記具は、ボールペン、水性または油性のペンのいずれでもよい。図2は、本発明の筆記具用部材を用いたボールペンの一形態を示している。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により制限されるものではない。
<インク収容管の内壁コーティング>
[作製例1]
ステンレス鋼(SUS)製のチューブ(3種類の内径:4.2mm、3.5mm、2.3mm;長さ80mm)を、SiO2コーティング剤(丸昌産業(株)製:セルフェイスコート)中に数分浸漬させた後、引き上げ、液滴を振り落として、1分程度、大気中に静置した。次いで、チューブを水中に1分程度浸漬させてから引き上げ、水滴を振り落とした後、200℃で15分間加熱乾燥させた。
<インク及びフォロワーの配合>
[調製例1]インクAの調製
イオン交換水38.04wt%、ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル(阪本薬品工業(株)製:SC-E750)10.00wt%、フッ素系界面活性剤(AGCセイケミカル(株)製:サーフロンS-111N)0.15wt%、シリコーン消泡材(信越シリコーン(株):KM-90)0.01wt%、潤滑剤(東邦化学工業(株)製:フォスファノールRS-710)0.50wt%、キレート剤(キレスト(株)製:キレスト400)0.30wt%、防錆剤(ケミプロ化成(株)製:KEMITEC BT-G)0.30wt%、防腐剤((株)タイショーテクノス製:ビオサイド1700)0.25wt%、pH調整剤(トリエタノールアミン)0.45wt%、顔料分散液(カーボンブラック分散液)40.00wt%、及び増粘剤(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製:TT-935)10.00wt%を配合してインクを調製した。なお、これらの成分の合計を100wt%とする。
[調製例2]インクBの調製
イオン交換水24.05wt%、グリセリン5.00wt%、アニオン性フッ素系界面活性剤(デュポン社製:Capstone FS-10)0.50wt%、シリコーン消泡材(信越シリコーン(株):KM-90)0.50wt%、潤滑剤(東邦化学工業(株)製:フォスファノールRD-510Y)0.40wt%、防錆剤(ケミプロ化成(株)製:KEMITEC BT-G)0.40wt%、防腐剤((株)タイショーテクノス製:ビオサイド1700)0.25wt%、pH調整剤(トリエタノールアミン)0.90wt%、顔料分散液(熱変色性マイクロカプセル分散液(30wt%))50.00wt%、及び増粘剤(キサンタンガム水溶液)18.00wt%を配合してインクを調製した。なお、これらの成分の合計を100wt%とする。
[調製例3]フォロワーの調製
基油(ポリα-オレフィン)97.00wt%及び増ちょう剤(スチレン系エラストマー)3.00wt%を配合してフォロワーを調製した。なお、これらの成分の合計を100wt%とする。
[実施例1]
作製例1のインク収容管のそれぞれに、調製例1で得られたインクAを約50mm相当分充填した後、フォロワーを約8mm相当分充填した。
インクA及びフォロワーを充填したインク収容管の先端に、φ0.5mmのボールを備えた筆記具チップを接合して筆記具を作製し、筆記性能試験を行った。
これらの筆記具では、インク吐出量2.58~2.64mg/mの範囲で筆記することができた。
結果を表1に示す。
Figure 0007093650000001
[比較例1]
未コートのインク収容管(3種類の内径:4.2mm、3.5mm、2.3mm)のそれぞれに、調製例1で得られたインクAを約50mm相当分充填した後、フォロワーを約8mm相当分充填した。
インクA及びフォロワーを充填したインク収容管の先端にφ0.5mmのボールを備えたチップを接合して筆記具を作製し、筆記性能試験を行った。
結果を表2に示す。
Figure 0007093650000002
比較例1の筆記具では、インク収容管が細径になると、インク吐出量が2.51mg/mから2.13mg/mと、大きく低下した。インク収容管の内側をコートしなかったため、細径化によってインク及びフォロワーに対する管抵抗が強く作用し、インクが滑らかに流出しなくなったためと考えられる。
1 インク収容管
2 インク
3 フォロワー
4 SiO2コーティング
5 筆記具チップ
6 軸筒
7 閉栓

Claims (1)

  1. インク及びフォロワーを収容するインク収容管において、
    前記インク収容管の内側表面の、少なくとも前記インク及びフォロワーが接している部分が、二酸化ケイ素(SiO2)コーティングを有し、
    前記インク収容管が、ステンレス鋼(SUS)製であり、かつ、
    前記インク収容管の内径が1.5~6.5mmであることを特徴とする、筆記具用部材。
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