JP5258274B2 - 流動体塗布具 - Google Patents

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Description

本発明は、剪断減粘性を有する油性インキ、修正液などの流動体塗布液を充填した流動体塗布具、特に、修正具等に用いられる、いわゆるボールペンチップの塗布先端部を持つ流動体塗布具に関する。
従来より、流動体塗布具であるゲルインキを収容した修正ボールペンにおいて、環境問題からその修正液(流動体)が充填される流動体収容管は、所謂リフィーラブル化が望まれている。その場合、リフィール単独の輸送や保管時におけるボール先端の保護、かつ先端よりの溶剤の揮発を抑制する必要がある。
このような揮発防止のために、流動体収容管本体を構成する部品を金属又は樹脂製にし、チップ先端を樹脂被覆を施すなどの対策が採られてきている。
この樹脂被膜によるチップ先端をシールしてなる流動体収容管は、従来より数多くの技術が案出されており、例えば、合成樹脂エマルジョンによる樹脂被膜(例えば、特許文献1参照)、加熱溶融熱可塑性樹脂による樹脂被膜(例えば、特許文献2参照)、高分子ラテックスによる被膜(例えば、特許文献3参照)、有色の樹脂被膜(例えば、特許文献4参照)、ホットメルト樹脂による樹脂被膜(例えば、特許文献5参照)、更に、特定のホットメルト樹脂、即ち重合脂肪酸ポリアミドによる樹脂被膜によって、油性インキ(油性の修正液)に多く用いられる有機溶剤に対応するシール方法(例えば、特許文献6参照)などが知られている。
しかしながら、上記特許文献1〜4及び5に記載される樹脂被膜によるシールは、チップ先端部(筆記先端部)からの水性インキや剪断減粘性を有する水性ゲルインキ等の揮発性が高くない溶剤や水の蒸発を防ぐものであり、揮発性の高いn−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン等の溶剤を含有する流動体を充填しているものでは合成樹脂エマルジョンや高分子ラテックス等の樹脂被膜があってもその蒸発を抑制することが未だ不充分であり、製造から使用迄に長期間要する場合等にはシール部分でドライアップのために流動体が固化しやすく流動体がチップから流出できなかったりする課題を有するものである。
また、本発明の流動体塗布具に収容されるものと同様な流動体を収容する場合において、上記の樹脂被膜によるシールはもとより、上記特許文献6に記載される非極性の有機溶剤に対して耐性を持つとされている重合脂肪酸ポリアミドの樹脂被膜によるシールを用いたとしても、製造上のバラつきによっては、揮発性の高い溶剤の蒸発の防止が不十分な製品が見られるという課題を有するものである。
また、上記特許文献5に記載される樹脂被膜によるシールは、修正液、化粧液、接着剤、ペイントなどの粘度の高い塗布液を充填してなる塗布具のチップ先端を包括的な樹脂名であるエチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゴム系樹脂などのホットメルト樹脂によるものであり、本願発明の近接技術を示すものである。
しかしながら、この特許文献5を精査してみると、実施例の記載はなく、具体的な溶剤種及び具体的なホットメルト樹脂名の記載はないものである。特に、揮発性の高いn−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン等の溶剤を含有する流動体を充填しているものでは、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂による樹脂被膜であってもその蒸発を抑制することが未だ不充分であり、上述の水性インキの流動体塗布具と同様に、製造から使用迄に長期間要する場合等にはシール部分でドライアップのために流動体が固化しやすく流動体がチップから流出できなかったりするという課題を有するものである。
特開昭58−96597号公報(特許請求の範囲等) 特開昭61−35294号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開昭57−98396号公報(特許請求の範囲、実施例等) 実用新案登録第3076019号公報(請求の範囲、実施例等) 特開平7−222950号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2005−66892号公報(特許請求の範囲、実施例等)
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、揮発性の高い溶剤を含有する流動体塗布液を充填してなるリフィール型の流動体塗布液収容管を備えた流動体塗布具において、チップ先端からの揮発を確実に防止すると共に、簡便なリフィーラブル化、かつキャップレス化を達成する流動体塗布具を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、少なくとも有機溶剤と着色剤と樹脂とを含む剪断減粘性を有する油性インキ、修正液などの流動体塗布液を充填し、ホットメルト接着剤による樹脂被膜によりボールペンチップ先端部をシールしてなる流動体塗布具において、結晶性ポリエステル樹脂(有機溶剤難溶性)のホットメルトによる被膜を用いると共に、その剥離時の引抜力強度を特定の範囲等とすること、つまり、特定の樹脂被膜のボールペンチップ先端からの被覆長さと被覆幅とすることにより、上記流動体塗布具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。
(1)軸本体内に装填される塗布液収容管を備え、該塗布液収容管には、少なくとも下記A群より選ばれる有機溶剤と着色剤とを含有する剪断減粘性を有する流動体塗布液が充填されると共に、先端に流出制御機構を有するボールペンチップを具備し、かつ、該ボールペンチップ先端部を樹脂被膜によりシールしてなり、該樹脂被膜のプッシュプル試験機を用いた25℃、60RH%条件下での引抜力が1〜20Nであって、前記チップ先端部をシールする前記樹脂被膜は結晶性ポリエステル樹脂の被膜であることを特徴とする流動体塗布具。
A群:n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン、エチルシクロへキサン、トルエン、キシレン
(2)前記ボールペンチップ先端部の樹脂被膜によるシール部の先端からの長さが、ボールペンチップのボール出寸法を越え、2.8mm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の流動体塗布具。
(3)前記ボールペンチップ先端部の樹脂被膜によるシール部の被覆幅が、ボールペンチップのボール直径を越え、5mm以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の流動体塗布具。
(4)前記樹脂被膜によるシールの断面形状が滴状、逆釣鐘状、円錐状の何れか一つであることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の流動体塗布具。
(5)前記ボールペンチップ先端部を軸本体の後端側に設けたノック機構の押し出し操作及び押し出し解除操作に連動させて出没可能とするノック式のキャップレスとなることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の流動体塗布具。
(6)前記流動体収容管は加圧機構を有する軸本体に収納自在となることを特徴としてなる上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の流動体塗布具。
本発明によれば、ボールペンチップ先端からの揮発の高い溶剤の揮発を、先行する技術に比べ、更に確実に防止できると共に、ボールペンチップ先端部の保護を確実にできる流動体塗布具が提供され、また、簡便なリフィーラブル化、及びキャップレス化が達成されると共に、その使用開始時に樹脂被膜の除去が極めて容易である流動体塗布具が提供される。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の流動体塗布具は、軸本体内に装填される塗布液収容管を備え、前記塗布液収容管には、少なくとも下記A群より選ばれる有機溶剤と着色剤とを含有する剪断減粘性を有する流動体塗布液が充填されると共に、先端に流出制御機構を有するボールペンチップを具備し、かつ、該チップ先端部をホットメルト接着剤による樹脂被膜によりシールしてなる流動体塗布具であって、結晶性ポリエステル樹脂(有機溶剤難溶性)のホットメルトを用い、ボールペンチップ先端部に樹脂被膜を形成することを特徴とし、かつ、前記樹脂被膜のプッシュプル試験機を用いた25℃、60RH%条件下での引抜力が1〜20Nであることを特徴とするものである。
A群:n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン、エチルシクロへキサン、トルエン、キシレン
図1及び図2は、本発明の流動体塗布具の実施形態の一例を示す図面であり、図1は流動体塗布具の部分縦断面図であり、図2は本発明の流動体塗布具の要部を示す拡大部分断面図である。
この流動体収容具Aは、図1及び図2に示すように、軸本体18内に装填される塗布液収容管10を備え、該塗布液収容管10には、少なくとも上記A群より選ばれる有機溶剤と着色剤とを含有する剪断減粘性を有する流動体塗布液30が充填されると共に、先端に流出制御機構を有するペン先となるボールペンチップ12を具備し、かつ、前記ボールペンチップ先端部12をホットメルト接着剤による樹脂被膜Hによりシールしてなるものである。このペン先となるチップ先端部12内部には、超硬等の金属製(又はセラミック製)転写ボール12aが装填されている。
このボールペン型ペン先となるチップ12は、図2に示すように、略円筒形状の外形を呈し、その先端部が尖塔状に形成されている。その先端部には平面視円状の開口部が形成され、該開口部は内蔵される転写ボール12aの外径よりも小さい寸法で開口されている。また、前記先端部の内部には転写ボール12aを抱持するボール抱持部12bが形成され、該ボール抱持部12bは先端側を前記開口部と連通するとともに後端側が塗布液通路と連通されている。
前記ボール抱持部12bに配置された転写ボール12aの後方には、該転写ボール12aの背面より先端方向に付勢するボール押し棒部材11bとコイルバネからなる弾性材11cが配置されている。
本発明において、チップの先端部をシールしてなる樹脂被膜Hは、結晶性ポリエステル樹脂から構成されている。
これらの特性を有する結晶性ポリエステル樹脂による被膜Hとしては、結晶融点を持ち、構造的に凝集力が高く、汎用有機溶剤に難溶性のポリエステル樹脂であり、有機溶剤に難溶性であるものが挙げられ、具体的には、バイロンGM−415、GA−6300、GA−6400、GM−920(以上、東洋紡社製)、ニチゴーSP−165、SP−170、SP−176、SP−180(以上、日本合成化学社製)などを用いて形成することができる。
これらの結晶性ポリエステル樹脂をホットメルト接着剤として使用するために溶融させた時の条件は、溶融粘度(単一円筒回転粘度計、200℃)は150〜4000dPa・sであり、比重(20/30℃)は1.15〜1.26である。この条件の範囲内であれば、後記するような好ましい厚みの樹脂被膜を形成させるのに都合がよい。
この結晶性ポリエステル樹脂をチップ12の先端部に形成(シール)する方法としては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂を200℃以上の温度で加熱溶融せしめたところに、チップ先端部を浸漬せしめた後、チップ先端部を引き上げて冷却(50℃で20分、もしくは自然放冷等)することにより、前記加熱溶融結晶性ポリエステル樹脂を固化させてチップ先端に樹脂被膜を形成する方法等が挙げられる。
なお、上記樹脂被膜Hが結晶性ポリエステル樹脂以外の被膜からなるもの、例えば、非晶質のポリエステル樹脂や重合脂肪酸ポリアミドによる樹脂被膜等では本願発明の効果を達成できないものである。
この樹脂被膜Hは、本発明の効果を達成する点等から、プッシュプル試験機(株式会社イマダ製、FB push−pull scale(50N)、引き抜き速度50mm/min.)を用いた25℃、60RH%条件下で、前記ボールペンチップからの引抜力が1〜20Nであればよく、好ましくは、5〜15Nの範囲内にすることが望ましい。
この引抜力が1N未満であると、ボールペンチップへの密着が不完全であると考えられ、シール性能が不十分である可能性が高い。また、例え完全に密着されていたとしても、輸送時などの擦過、接触、衝撃等で取れ易くなり、本発明の効果が発揮することができない。一方、この引抜力が20Nを越える場合には、密着性が十分であるので製造から使用迄に長期間要する場合等にもそのシール性能は十分達成できるが、使用開始時に、樹脂被膜Hを剥離、除去することが困難となり、また、無理やり引き抜こうとすると、例えば、図2に示すような先端部の構成であると、ボールペンチップを一緒に引き抜いてしまうおそれがあり、好ましくない。
更に、チップ先端からの揮発の高い溶剤の揮発を更に確実に防止すると共に、ボールペンチップ先端部の保護を更に確実にする点から、図2に示すように、ボールペンチップ先端部の樹脂被膜Hによりシールされる部分は、最低限、ボールペンチップ先端部のボールの露頭部及びその露頭部周囲のみでも十分である。好ましくは、ボールペンチップ先端部の樹脂被膜によるシール部の先端からの長さ(L)が、ボールペンチップのボール出寸法を越え、2.8mm以下、好ましくは、2.0〜2.8mm、更に好ましくは、2.4〜2.8mmの長さ方向の被覆であれば不本意な刺激や衝撃によって脱落することもなく、かつ、使用開始時にはシールを先端方向に引き抜きやすい「引き抜き力」とすることができる。
これを先端方向から軸方向の視点で見た場合にも、樹脂被膜Hによりシールされる部分は、最低限、ボールペンチップ先端部のボールの露頭部及びその露頭部周囲のみ(即ち、収容されているボール径程度の広がり)でも十分である。好ましくは、ボールペンチップ先端部の樹脂被膜によるシール部の被覆幅(W)が、ボールペンチップのボール直径を越え、収容されたボールを中心にして直径5mm以下、好ましくは、1.2〜5mm、更に好ましくは、4〜5mmとすれば、シール部が大きく広がることからの「引っかかり」による脱落を起こりにくくすることができる。また、この程度の広がりがあれば、使用開始時にシールを爪などで、容易に引っ掛け引き抜くことができる。更に、これらの樹脂被膜の形状としては、少なくともボールペンチップ先端部のボールの露頭部及びその露頭部周囲を被覆できる形状であれば、特に限定されないが、例えば、略球状、円盤状や、図3に示す断面形状が(a)に示す逆釣鐘状、(b)に示す円錐状、(c)に示す滴状などが挙げられる。
なお、上記のような樹脂被膜の形状、被覆長さ、幅、厚さ等の調整は、溶融温度、引き上げる速さ、静止時間により行うことができ、この被覆物は前記ボールペンチップからの引抜力が1〜20Nとなるものであればよい。
この結晶性ポリエステル樹脂による樹脂被膜Hは、特に、揮発性の高い上記A群の溶剤、すなわち、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン等の溶剤を含有する流動体を充填しているものであっても、チップ先端部に優れたシール性能を発揮せしめ、製造から使用迄に長期間要する場合等においてもシール部分からの溶剤等の蒸発は少なくすることができる。前記した特許文献6において使用している、重合脂肪酸変性ポリアミド樹脂被膜は、後述する実施例等で実証されるように、優れたシール性能を発揮できるものであるが、それ以上に結晶性ポリエステル樹脂被膜は、金属製のボールペンチップ、特にステンレスチップに対する接着強度が適度な強度を有するものであり、今までにない格段に優れたシール性能を発揮できるものである。そして、これらの結晶性ポリエステル樹脂をホットメルトにし、金属製のボールペンチップに浸漬することにより樹脂被膜Hを形成し、その形状を調整することで、リフィール内の溶剤の揮発を抑え、かつ、使用開始時の引き抜き力が適度な流動体塗布具とすることができる。
前記流動体塗布液収容管10に充填する流動体塗布液30としては、例えば、カーボンブラックや二酸化チタン等の無機顔料や、有機顔料、樹脂顔料、中空樹脂顔料などの顔料類、油溶性染料などの染料類などの着色剤、上記A群から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤、該有機溶剤に可溶な増粘剤、バインダーとしての樹脂類、界面活性剤類、香料、並びに、筆記具、修正具、接着剤塗布具、化粧具等の流動体の用途に応じたその他の任意成分を適宜溶解もしくは分散させたものが使用される。
これらの配合量については、例えば、流動体塗布液全量(100重量%)に対して、有機溶剤20〜85重量%、顔料等の着色剤10〜60重量%、樹脂類その他の成分が5〜30重量%程度の配合組成物とすることが望ましい。
また、上記流動体塗布液をそのまま使用してもよいが、上記流動体に微粉末シリカ、アルミナ、ジベンジルソルビトール、有機処理ベントナイト、12−ヒドロキシステアリン酸及びその誘導体、硬化ひまし油及びその誘導体、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−α,γ−ジ−n−ブチルアミド、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスなどの粘性付与剤を含有せしめてゲル状インキ(粘性体)として使用してもよい。このゲル状インキとすることにより、流動体に重たい顔料(酸化チタン等)等の着色剤を配合してもこれらの沈降を抑制し易く、更に、紙等の被塗布体にインキや修正液の流動体を塗布した場合、構造粘性を有することにより被塗布体上での「にじみ」が抑制できることとなる。
また、流動体塗布液収容管10に充填するフォロア(追従体)32は、上記流動体塗布液32と相溶しない難揮発性の液状物であり、上述の流動体塗布液30の後端部に接触状態で収容されるものであり、流動体の消費につれて流動体に追従して移動し可動栓としての作用をなすものである。
本発明において、流動体塗布液を収容する塗布液収容管10の材質としては、特に揮発性の無極性溶剤を主溶剤とした上述の有機溶剤の収容管側面からの溶剤揮発問題、収容管自体の溶剤による浸食の問題と、流通段階で必要な強度を確保し、かつ使用時に内容物の残量確認を容易となる視認性を有する材質であれば特に限定されず、例えば、ナイロン12などの脂肪族系ポリアミドからなる成形体、芳香族環又はナフテン環を有するモノマーより得られるポリメタキシリレンアジパミド樹脂、テレフタル酸、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの共重合体による成形体、または、これらの樹脂をブレンドした成形体から構成されるものが挙げられる。
このように構成される流動体塗布具は、従来のボールペン形式と同様に、流動体流出のためにキャップを有する又はキャップを有しない本体部(軸体)に継手(先軸)部材を螺合等の構成により収納自在とした流動体塗布具、または、本願出願人による特開2000−335173号公報記載の加圧ポンピング機構を備えたキャップレスとなるノック式のボールペン型流動体塗布具、図1に示すような加圧機構を有する本体部に収納自在としたキャップレスタイプの加圧型のノック式流動体塗布具として使用に供される。
図1に示す形態の加圧型のノック式流動体塗布具の構成等を簡単に説明すると、先端にボールペンチップ(塗布部の例)12と後方に流動体収容管10を備えたリフィールユニット14が、第1のスプリング16で後方に向けて弾発された状態で軸本体18内に装填されると共に、前記リフィールユニット14のボールペンチップ12を、軸本体18の後端側に設けたノック機構20の押し出し操作及び押し出し解除操作に連動させて先端開口18aから出没可能となる流動体塗布具であって、前記リフィールユニット14の流動体収容管10内の後部10rが開放され、軸本体18内には、該後部10rとノック機構20との間に流動体収容管10内圧力を増加させる加圧機構22が設けられ、加圧機構22は、シール部24と前端開放の筒部26とシール部24及び筒部26を離隔させる方向に弾発させる第2のスプリング28とを有するものであり、前記ノック機構20の押し出し操作終了後に、軸本体18から突出したボールペンチップ12先端を押圧してリフィールユニット14を後退させた場合に、加圧機構22では前記シール部24が後退して相対的に筒部26が前進して内部加圧室40の内部空気を圧縮し、その圧縮された内部空気により逆止弁46を開きシール部24を通して流動体収容管10内を加圧するようになっている。
また、加圧機構22は、ノック機構20の押し出し解除時における前記リフィールユニット14のボールペンチップ12のペン先の軸本体18内への没入状態で流動体収容管10内の加圧状態を解除するものである。
また、前記リフィールユニット14は、流動体塗布液30とその後端に流動体塗布液30に追従するフォロア32を充填した流動体収容管10と、該流動体収容管10の前方に圧入されたボールペンチップ12とを備えて構成され、ボールペンチップ12先端内部に回動可能に遊嵌されたボールは、押し棒を介してスプリングにより先方に向けて付勢されて背圧が付与されており、非塗布時にはボールペンチップ12先端開口部を塞いでいる。なお、リフィール10内の流動体塗布液30の後部には、流動体塗布液30の溶剤分の揮発を防止する目的でフォロア32が充填されている。
この流動体塗布具Aによれば、ボールペンチップ先端に樹脂被膜によるシールHを形成した場合であっても、非使用時には軸体18の開口部18aより、樹脂被膜の広がり、即ち、外径を小さく製造しておけば、リフィールユニット14は軸本体18内に収容可能な構造となる。使用時には、ノックによりチップ12の先端部を軸本体18から出し(図1参照)、チップ先端12に接着した樹脂被膜Hを指等により脱離せしめることにより使用に供されることとなる。
この流動体塗布具Aでは、流動体塗布液の流量が必要なときには軸本体18より突出したチップ12の先端を塗布面に押し付けることで、流動体収容管10を加圧機構の中に更に押し込ませてより大きな加圧力を流動体収容管10内に加圧することができる。このように使用時のみ加圧できるので、非使用時には修正液の漏れを防止できる。また、ノックしたまま放置しても加圧された空気は徐々にリークするため修正液の漏れの心配はない。また、酸化チタン顔料等の沈降をなくした所定の修正液などの使用を可能にするので修正液を攪拌したりキャップを外したりする煩わしさが無くなる。また、ノックによる動作と連動して同時に加圧することができるので使用者は加圧を意識すること無く使用でき、操作感に優れる。
更に、流動体収容管自体は、透明性、視認性に優れると共に、特に加圧のための部品は必要ないことでリフィールのコストを低く押さえることができ、リフィール交換によるランニングコストを低減できる。
更にまた、ノックを解除することで、筒部の加圧室は大気と通気するため、ノック動作を繰り返しても連続加圧されることはない。また、紙面への流動体塗布液の出すぎといった不具合が生じない。
このように構成される本発明では、ボールペンチップの先端を、結晶性の高いポリエステル樹脂を用い樹脂被膜によってシールし、かつ、その剥離時の引抜力強度を特定の範囲等とすることで、目的の性能となる流動体塗布具を得られるものである。また、その樹脂被膜の形状等を調整することでシール性を更に向上させることができる。たとえ、リフィールに揮発性の高い溶剤を含有する流動体塗布液を充填したものであっても、チップ先端からの溶剤揮発を長期のわたり確実に防止できると共に、チップ先端部の保護を確実にし、簡便なリフィーラブル化、かつキャップレス化を達成する流動体塗布具を要旨とするものであるので、塗布液収容管の構造、この収容管を収納する塗布具本体の構造などは、特に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、塗布液収容管の構造、塗布具本体の構造等は種々変更を加え得ることは勿論である。
次に、実施例及び比較例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって何等限定されるものではない。以下に記載の「部」は重量部を意味する。
〔実施例1〜8及び比較例1〜9〕
下記構成の塗布液収容管に、下記に示す各組成となる樹脂被膜材料を用いて、各方法によりチップ先端部を樹脂被膜等によりシールした流動体塗布具を得た。
得られたチップ先端部をシールした流動体塗布具について、下記方法により、各引抜力の測定、揮発減量値、脱落・割れの状態、引き抜き評価、筆記性の評価について評価した。これらの結果を下記表1に示す。
〔流動体塗布具の構成〕
図1に示すように、先端に、流出抑制機構としてボールペン型ステンレス製ペン先(ボール材質:超硬、ボール径:1.0mm)を具備し、内径6mm、外径8mm、厚さ1mm、長さ80mmのナイロン12、またPOMより構成される収容管に、下記に示される配合組成、粘度の流動体となる修正液を約1.5g注入した。次いで、この流動体の末端部に接触状態で配置されるように下記配合組成及び粘度の追従体0.5gを収容して各流動体塗布具を得た。また、樹脂被膜の形状は図3の(a)、(b)、(c)に示すボールペンチップ先端部の樹脂被膜等とした。
(流動体の配合組成)
・メチルシクロへキサン 40部
・アクリル樹脂 10部
・二酸化チタン 49部
・粉末シリカ 1部
(追従体の配合組成)
・ジグリセリンのエチレンオキサイド13モル付加物 95部
・微粉末シリカ 5部
この流動体(修正液)の25℃における粘度をTVE−20HT型粘度計(EMD、東機産業社製)1°34′×R24標準コーンプレートにより測定したところ、ずり速度3.83s−1(1rpm)で5000mPa・sec.であり、追従体の粘度は、同様の測定において10,000mPa・sec.であった。
(実施例1)
結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンGM−415)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径3mm、軸方向長さ2.5mmで図3(a)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(実施例2)
結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンGM−920)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径3mm、軸方向長さ2.5mmで図3(b)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(実施例3)
結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンGM−6300)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径3mm、軸方向長さ2.5mmで図3(c)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(実施例4)
結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンGM−6300)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径4mm、軸方向長さ2.5mmで略球形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(実施例5)
結晶性ポリエステル樹脂(、日本合成化学社製、ニチゴーポリエスターSP−165)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径4mm、軸方向長さ2.5mmで前記の収容管軸を中心とする略円盤状の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(実施例6)
結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学社製、ニチゴーポリエスターSP−170)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径6mm、軸方向長さ2.5mmで図3(c)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(実施例7)
結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学社製、ニチゴーポリエスターSP−176)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径3mm、軸方向長さ4mmで図3(b)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(実施例8)
結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学社製、ニチゴーポリエスターSP−180)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径6mm、軸方向長さ4mmで図3(a)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(比較例1)
樹脂被膜を付着させない流動体塗布具をそのまま使用した。
(比較例2)
富士化成社製、トーマイド394(重合脂肪酸変性ポリアミド樹脂、特開2005−66892号公報、実施例1)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径3mm、軸方向長さ2.5mmで図3(a)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(比較例3)
非晶質のポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロン226)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径3mm、軸方向長さ2.5mmで図3(a)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(比較例4)
結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンGM−400)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径3mm、軸方向長さ2.5mmで図3(a)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
(比較例5)
結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンGM−440)を、この樹脂の軟化点を越えた温度で加熱し溶融させて、チップ先端部に最大径3mm、軸方向長さ2.5mmで図3(a)の形状となるように調整し、樹脂被膜を付着させた。
上記実施例1〜8及び比較例1〜9で得た流動体塗布具を各条件下において項目毎に下記の要領で測定した。
(引抜力の測定方法)
前記した各樹脂被膜付着後、24時間以上経過後、プッシュプル試験機〔push−pull scale(10Nまたは50N)、株式会社イマダ製〕を用いて25℃、65RH%条件下で、50mm/min.での引抜力を測定した。
(引き抜き評価の方法)
前記した各樹脂被膜付着後、24時間以上経過後、1.2mの高さから杉板上にチップを下向きにして落下させ、樹脂被膜の脱落あるいは破損がなかったものについてのみ、無作為に選んだ成人男性10人に樹脂被膜の引き抜きを行わせ、引き抜いた時の感想をまとめた。
引き抜き評価の基準:
H:引き抜き時、1人以上堅いと感じた。
G:引き抜き時、特筆するような抵抗感は無かった。
NG:杉板の落下試験時に樹脂被膜が脱落あるいは破損するものが見られた。
(脱落・割れ、筆記性、揮発減量値の評価方法)
前記した各流動体収容リフィールを50℃の恒温槽に1ヶ月間放置した後、各樹脂被膜の様子を観察し、その後、樹脂被膜が割れたり脱落したりしていないものを、指で剥がして、揮発減量値を測定後、図1に示す塗布具(CLN−250、三菱鉛筆株式会社製)に収容し、書き出し状態を下記評価基準で評価した。(サンプル数:各10本)
筆記性の評価基準:
◎:最初から加圧せずに、流動体が吐出可能である。
○:塗布具により加圧を行えば直ぐに筆記できる。
△:書き出しが鈍いことも含め、カスレる場合がある。
×:筆記不能。
Figure 0005258274
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜8は、本発明の範囲外となる比較例1〜5に較べて、樹脂被膜を違和感無く剥がすことができ、チップ先端からの揮発性の高い溶剤の揮発を確実に防止すると共に、過酷な経時試験後にも筆記性にも優れていることが判明した。
本発明の流動体塗布具は、先端に流出制機構を有するボールペンチップを具備した流動体塗布具であって、使用開始時に樹脂被膜を簡単に剥がすことができ、製造から使用迄に長期間要する場合等にチップのドライアップのために流動体が固化することなく、スムーズに流出して、長期間の保存に有効なものである。
本発明の流動体収容管の実施形態の一例を示す部分縦断面図である。 図1の要部を示す拡大部分縦断面図である。 (a)〜(c)は樹脂被膜Hの各形状を示す部分縦断面図である。
符号の説明
A 流動体塗布具
H 樹脂被膜
10 塗布液収容管
12 ボールペンチップ
30 流動体塗布液
32 追従体

Claims (6)

  1. 軸本体内に装填される塗布液収容管を備え、該塗布液収容管には、少なくとも下記A群より選ばれる有機溶剤と着色剤とを含有する剪断減粘性を有する流動体塗布液が充填されると共に、先端に流出制御機構を有するボールペンチップを具備し、かつ、該ボールペンチップ先端部を樹脂被膜によりシールしてなり、該樹脂被膜のプッシュプル試験機を用いた25℃、60RH%条件下での引抜力が1〜20Nであって、前記チップ先端部をシールする前記樹脂被膜は結晶性ポリエステル樹脂の被膜であることを特徴とする流動体塗布具。
    A群:n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン、エチルシクロへキサン、トルエン、キシレン
  2. 前記ボールペンチップ先端部の樹脂被膜によるシール部の先端からの長さが、ボールペンチップのボール出寸法を越え、2.8mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の流動体塗布具。
  3. 前記ボールペンチップ先端部の樹脂被膜によるシール部の被覆幅が、ボールペンチップのボール直径を越え、5mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の流動体塗布具。
  4. 前記樹脂被膜によるシールの断面形状が滴状、逆釣鐘状、円錐状の何れか一つであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の流動体塗布具。
  5. 前記ボールペンチップ先端部を軸本体の後端側に設けたノック機構の押し出し操作及び押し出し解除操作に連動させて出没可能とするノック式のキャップレスとなることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の流動体塗布具。
  6. 前記流動体収容管は加圧機構を有する軸本体に収納自在となることを特徴としてなる請求項1〜5の何れか一つに記載の流動体塗布具。
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