JP7093576B2 - 押出しチューブ容器の形成方法 - Google Patents

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本発明は、押出しチューブ容器をバイオマス由来の樹脂で形成することができる押出しチューブ容器の形成方法に関する。
化粧品や香料等の成分を従来の合成樹脂製のチューブ容器に収容すると、流動パラフィンや顔料等がチューブ容器の胴部から染み出し、あるいは滲出するおそれがあった。そのため、化粧品や香料収納時にこれらのおそれを解消する各種のチューブ容器が特許文献1や特許文献2に記載されている。
特許文献1には、胴部と口部材との接続部分においてガスバリヤ性の高いチューブ容器を提供する製造方法が記載されている。この製造方法は、口部材の肩部を外嵌した雄型部と、胴部の先端部に肩部を成形する雌型部との間で、予め形成した胴部と口部材を挟圧して溶着させる製造方法である。
また、特許文献2に記載の押出しチューブ容器は、胴部の構成を、外側層から内側層に向かって、低密度ポリエチレン樹脂層/接着剤層/エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂層/接着剤層/ポリブチレンテレフタレート樹脂層からなる積層構成の共押し出し成形体で形成したものである。
この押し出しチューブ容器によると、化粧品や香料の成分に含まれるリモネン、メントール、フェンチルアルコール等のモノテルペン系化合物が、チューブ容器の胴部から染み出し、あるいは滲出することがなく、化粧品や香料等の保持性能が良好になるというものである。
一方、特許文献3に、チューブ容器の口部材にバイオマス由来の樹脂組成物を使用したチューブ容器が提案されている。このチューブ容器は、口部材(頭部)にバイオマス由来のポリオレフィンを含んだ樹脂組成物を使用することで、チューブ容器全体としての化石燃料の使用量の軽減を図るものである。この結果、二酸化炭素の排出量を低減し、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすということにある。
さらに、特許文献4には、積層体の一部の層にバイオマス由来の樹脂層を備えた積層体が提案されている。この積層体は、従来の化石燃料から得られるポリオレフィン樹脂に代えて、バイオマス由来のバイオマスポリオレフィン樹脂を積層体の一部の層に使用すると、従来の化石燃料から得られるポリオレフィン樹脂の積体と比べて機械的特性等の物性面で遜色のない積層体を提供できるというものである。この結果、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすというものである。
特許第3771372号公報 特許第3639010号公報 特許第6413231号公報 特許第6136273号公報
特許文献1、2のように、成分等の透過を防ぐチューブ容器の口部材や胴部の構造は種々提案されているが、化石燃料の使用量を削減するバイオマス由来の原料を用いたチューブ容器で、成分等の透過を防ぐ押出しチューブ容器の口部材や胴部の構造は未だ提案されていない。
例えば、特許文献3のチューブ容器は、バイオマス由来の原料を用いた口部材(頭部)を有するものであるが、胴部は、積層フィルムを筒状に丸めて両端を重ね合せ、その重合部分を溶着して溶着部を形成した構成である。そのため、胴部に化粧品や香料等を収容すると積層フィルムの溶着部から成分等が透過するおそれがある。したがって、特許文献3のチューブ容器を、化粧品や香料等の透過を防ぐ押出しチューブ容器として使用することは困難である。
一方、特許文献4は、バイオマス由来のバイオマスポリエステル樹脂層とバイオマスポリオレフィン樹脂層とを含むシート状の積層体を使用するものである。そして、この積層体でチューブ容器を形成する場合は、ラミネートチューブ等を形成することになる。したがって、この積層体を化粧品や香料等の透過を防ぐ押出しチューブ容器として使用することはできない。
化粧品等を収容する従来の押出しチューブ容器を、バイオマス由来の成分を含んだ押出しチューブ容器で代替できるようにすると、従来に比べて化石燃料の使用量を削減して環境負荷を減らし、また、化石燃料の使用量の軽減を図り、押出しチューブ容器の二酸化炭素の排出量を低減することが可能になる。
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、バイオマス由来の成分を含んだ押出しチューブ容器でも、従来の化石燃料から得られる原料で得られる押出しチューブ容器と同様に化粧品や香料等の成分を収容することができる押出しチューブ容器の形成方法の提供を目的とするものである。
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、胴部1と口部材2とをバイオマス由来のポリエチレン樹脂材にて形成する押出しチューブ容器の形成方法であって、前記口部材2を構成する肩部3及び口頸部4をバイオマス由来のポリエチレン樹脂材による射出成形にて形成し、前記胴部1は、内側層から外側層に向かって、バイオマス由来のポリエチレン樹脂層11/接着剤層12/バリア層13/接着剤層14/バイオマス由来のポリエチレン樹脂層15を順に積層して共押出し成形にて形成し、前記バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を使用すると共に、前記バリア層の厚みを0.021~0.06mmに形成することにある。
本発明の押出しチューブ容器は、肩部及び口頸部からなる口部材を、バイオマス由来のポリエチレン樹脂による射出成形で形成したことにより、カーボンニュートラルな押出しチューブ容器を実現できる。しかも、従来の化石燃料から得られる原料から製造された押出しチューブ容器のように、化粧品や香料等の透過を防いで収容できるといった収納特性に全く遜色がないため、従来の押出しチューブ容器の代替とすることができる。この結果、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することが可能になり、環境負荷を減らすことができるものである。
本発明の一実施例を示す要部縦断面図である。 本発明の胴部を示す横断面図である。 図2に示す矢視III-III線断面図である。
本発明は、例えば化粧品や香料等を収容する合成樹脂製の押出しチューブ容器であり、円筒状の胴部1と、該胴部1の一端部に接合している肩部3及び口頸部4からなる口部材2とで構成する(図1参照)。
胴部1は次の積層構成からなる積層体10を共押出し成形体で形成したものである。すなわち、内層から外層に向かって、ポリエチレン樹脂層11/接着剤層12/バリア層13/接着剤層14/ポリエチレン樹脂層15にて構成される(図3参照)。
一方、口部材2は、この胴部1の一端部にバイオマス由来のポリエチレン樹脂材を射出成形して形成する。すなわち、予め押出し成形された胴部1を金型に挿入し、この金型内にバイオマス由来のポリエチレン樹脂材を射出成形し、胴部1の一端部に肩部3と口頸部4とからなる口部材2を接合して押出しチューブ容器を形成するものである。
この結果、胴部1は従来の化石燃料由来の材質で形成され、口部材2はバイオマス由来のポリエチレン樹脂材にて形成された押出しチューブ容器が形成される。
バイオマス由来のポリエチレン樹脂は、市販のものを使用する。例えば、ブラスケン社(Braskem S.A.)製のサトウキビ由来の低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの使用が可能である。
胴部1は、化石燃料由来の成分にて共押出し成形する。また、この他、胴部1の一部にバイオマス由来のポリエチレン樹脂を使用することも可能である。すなわち、胴部1を構成する積層体10のポリエチレン樹脂層11、15に、バイオマス由来のポリエチレン樹脂材を使用して共押出し成形するものである。
すなわち、内側のポリエチレン樹脂層11は、低密度ポリエチレン(LDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との混合樹脂が積層され、厚み0.2mm~0.3mm程度に形成する。また、外側のポリエチレン樹脂層15は、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂が積層されるもので、厚み0.1mm~0.2mm程度に形成する。
このとき、二層の接着剤層12、14は、いずれも接着性ポリオレフィンを使用する。例えば、アドマーやモディック等の商品名で市販されている接着性ポリオレフィン樹脂等によって、厚み0.01mm~0.02mm程度に形成する。
そして、バリア層13は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を使用し、厚み0.21mm~0.06mm程度に形成する。本発明押出しチューブ容器に、油脂分を含んだ透過し易い成分や、化粧品・香料等を収容する場合において、バリア層13の厚みは、従来の化石燃料由来のポリエチレン樹脂を使用した場合のバリア層13の厚みより、厚くする必要がある。
たとえば、マヨネーズのような油脂分を含んだ透過し易い成分を収容する場合を想定すると、内層と外層のポリエチレン樹脂層11、15に、従来の化石燃料由来のポリエチレン樹脂を使用した場合、バリア層13が、0.02mmで透過防止効果が得られる厚みとする。
このとき、内層と外層のポリエチレン樹脂層11、15の材料を、従来の化石燃料由来のポリエチレン樹脂からバイオマス由来のポリエチレン樹脂に変更すると、バリア層13の厚みを約2倍程度にすることで透過防止効果が得られるものである。尚、バリア層13以外の各層の厚みは夫々等しいものとする。また、化粧品や香料等を収容する場合は、バリア層13の厚みを更に厚くするもので、従来の3~4倍に形成することで収納した成分等の透過防止効果が得られる。
このように、本発明押出しチューブ容器の胴部1は、バリア層13による酸化防止の作用により収容可能な成分は多岐に亘っているが、特に、油分や化粧品・香料など、収容する成分によりバリア層13の厚みを任意に増加変更することが可能である。
表1、表2は、化粧品や香料等を収容する場合において、本発明押出しチューブ容器と従来のチューブ容器とのバリア層13の厚みを比較する表である。
表1は、従来のチューブ容器に収容する場合で、内層のポリエチレン樹脂層11と外層のポリエチレン樹脂層15とに、石油由来原料の従来のポリエチレン樹脂を使用したときのバリア層13の厚みを示している。この場合、バリア層(エバール)の厚みは0.005~0.02mmで透過防止効果が得られる。
表2は、本発明押出しチューブ容器に収容する場合で、内層のポリエチレン樹脂層11と外層のポリエチレン樹脂層15に、バイオマス原料を使用したとき、透過防止効果が得られるバリア層13の厚みを示している。この場合、バリア層(エバール)の厚みは0.021~0.06mmであり、石油由来原料の従来のポリエチレン樹脂を使用したときのバリア層13と比べて3~4倍の厚みになっている。尚、内層のポリエチレン樹脂層11及び外層のポリエチレン樹脂層15の各層の厚みは、本発明押出しチューブ容器と従来のチューブ容器とで同じ厚みである。
Figure 0007093576000001
Figure 0007093576000002
表1、表2が示すように、本発明押出しチューブ容器に化粧品や香料等を収容する場合、バリア層13の厚みを従来の石油由来原料の3~4倍に形成することで、バリア性及び押出し成形性が良好になる。
以下、本発明押出しチューブ容器の具体的な構成を実施例に基づいて説明する。
<胴部の成形>
5層の共押出し成形機によって、内側層から外側層に向かって、ポリエチレン樹脂層11(0.15mm)/接着剤層12(0.015mm)/バリア層13(0.04mm)/接着剤層14(0.015mm)/ポリエチレン樹脂層15(0.25mm)からなる積層体10を押出し成形し(図3参照)、直径2.5cmの円筒体の胴部1を形成した(図2参照)。
<口部材と押出しチューブ容器の成形>
次に、この胴部1を挿入した金型内にて肩部3と口頸部4とからなる口部材を次の成形条件で射出成形し、胴部1の一方の端部に肩部3と口頸部4とからなる口部材2を接合して押出しチューブ容器を形成した(図1参照)。
[口部材成形条件]
保圧・射出圧力:90
スクリュー温度:一段240 二段210 ノズル温度230
1キャビの周期:21秒
冷却時間:6秒
表3は、本発明の胴部1と口部材2との接合部における機能試験の結果を示す表である。
機能試験は次のように行った。
[検体]
・25φアイムフロリアデリケートブライトニングセラム30ml チューブ・キャップ
(Jl27 AVS-9548) 各10本
[試験方法]
(1)キャップをトルクメーターにて60cN・mでセットする。
(2)試験用ジェルを充填し、裾部をヒートシーラーにて閉じる。
(3)減圧機にて容器横倒し-0.08MPa,15分減圧し、容器外液漏れ有無を確認する。
(4)チューブ中央荷重にて25kgの外圧をかけ、容器外液漏れ有無を確認する。
(5)トルクメーターにてキャップを開け、チューブノズル先端からの漏れが無いことを確認する。
[試験結果]
表3の通り、各検体に液漏れは無かった。
Figure 0007093576000003
次の表4は、本発明の実施例に示す押出しチューブ容器の耐内溶液試験の結果を示している。この試験では、本発明押出しチューブ容器と、比較用とする従来の化石燃料由来のポリエチレン樹脂を使用した押出しチューブ容器とに流動パラフィンを充填し、胴部からの色調滲出有無を確認するチューブ評価試験を行った。
本発明チューブ評価試験の内容は次の通りである。
1.試験目的
化石燃料由来のポリエチレン樹脂材に代えてバイオマス由来のポリエチレン樹脂材を使用した押出しチューブの評価を行う。
2.評価結果
耐内容液試験での胴部からの充填液染み出しは無かった。
よって、製品上の問題は無いと判断する。
3.評価試験
3-1.耐内容液試験
[検体]
A:口部材と胴部にバイオマス原料使用 5本
B:口部材にバイオマス原料使用、胴部に化石燃料由来の原料使用 1本
C:口部材と胴部に化石燃料由来の原料使用(比較用) 1本
[試験方法]
(1)キャップをセットする。
(2)流動パラフィンを充填し、裾部をヒートシーラーにて閉じる。
(3)チューブ正立(キャップ下方向)で40℃恒温槽内に保管。
(4)1日、3日、7日、14日、21日、28日、35日経過ごとに、目視にて胴部か
ら流動パラフィン染み出しの有無を確認する。
(5)35日経過後に胴部裾部をカットし、充填した流動パラフィンを透明容器に
出す。
(6)流動パラフィンへの胴部顔料由来色調滲出有無を確認した。
Figure 0007093576000004
評価試験の結果、全検体にて胴部からの流動パラフィン染み出し・顔料由来色調滲出はなかった。
上記試験の観察結果から明らかなように、本発明押出しチューブ容器は、従来の化石燃料から得られる原料から製造された押出しチューブ容器と比べて、胴部1と口部材2との接合部における液漏れ、及び、胴部からの染み出し・色調滲出・機能で遜色がないため、従来の押出しチューブ容器の代替とすることができる。この結果、本発明押出しチューブ容器は、従来の化石燃料から得られるポリエチレン樹脂を使用したチューブ容器と比べて物性面で遜色のないチューブ容器を提供できるので、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減し環境負荷を軽減するものである。
1 胴部
2 口部材
3 肩部
4 口頸部
10 積層体
11 ポリエチレン樹脂層
12 接着剤層
13 バリア層
14 接着剤層
15 ポリエチレン樹脂層

Claims (1)

  1. 胴部と口部材とをバイオマス由来のポリエチレン樹脂材にて形成する押出しチューブ容器の形成方法であって、
    前記口部材を構成する肩部及び口頸部をバイオマス由来のポリエチレン樹脂材による射出成形にて形成し、
    前記胴部は、内側層から外側層に向かって、バイオマス由来のポリエチレン樹脂層/接着剤層/バリア層/接着剤層/バイオマス由来のポリエチレン樹脂層を順に積層して共押出し成形にて形成し、
    前記バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を使用すると共に、前記バリア層の厚みを0.021~0.06mmに形成することを特徴とする押出しチューブ容器の形成方法
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