JP7092586B2 - コンテナ用鮮度保持装置 - Google Patents
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Description
鮮度劣化の要因としては、エチレンや細菌が挙げられる。エチレンは、青果物の成熟を促進する成長ホルモンである。ある種の青果物(例えばアボカド、杏子、バナナなど)は、成熟に伴ってエチレンを多く発生させる。このエチレンが周りの青果物の成熟を早める働きをする。例えばバナナ、レタス、アボカド、杏子、カリフラワー、ブロッコリーなどはエチレン感受性が高く、エチレン含有環境下では成熟・老化が促進されることが知られている。また、腐敗菌などの細菌は、生鮮物の腐敗を促進する。
鮮度保持手段としては、例えばリーファーコンテナを用いて冷却することで、エチレンの発生を抑えたり、細菌の活動を弱めたりしている。鮮度抑制効果を更に高めるために、コンテナ内の雰囲気ガスの酸素濃度を下げることで窒素リッチになるよう組成調節するCA(controlled Atmosphere)コンテナも知られている。
特許文献1の装置においては、棒状電極間の空間に放電を生成するために比較的大きな電力を必要とする。また、棒状電極どうしの間隔を0.5mm程度に保持するのは容易でない。
本発明は、かかる事情に鑑み、生鮮物を収容して輸送、保管等する際、小さな電力で、雰囲気ガス中のエチレン等の成長ホルモンを分解可能かつ殺菌可能であり、生鮮物の鮮度劣化を十分に抑制できる、簡易な構造のコンテナ用鮮度保持装置を提供することを目的とする。
前記コンテナの内部空間に開放された開放空間を画成する装置本体と、
前記装置本体に支持されたプラズマ生成部と、
を備え、前記プラズマ生成部が、前記開放空間に連なるとともにプラズマが生成される放電空間を形成する一対の平らな電極と、前記一対の電極の対向面どうし間に介在されてこれら電極間の距離をマイクロメートルオーダーに保持する絶縁体からなるスペーサを含むことを特徴とする。
マイクロメートルオーダーとは、1μm以上1000μm未満の範囲をいう。
鮮度保持装置の開放空間がコンテナの内部空間に開放されることによって、コンテナ内の雰囲気ガスが開放空間に出入り可能である。更に開放空間に放電空間が連なることによって、前記雰囲気ガスが放電空間に出入り可能である。放電空間における放電によって前記雰囲気ガスがプラズマ化される。これによって、雰囲気ガス中のエチレン等の成長ホルモンが分解される。また、雰囲気ガス中の浮遊細菌が殺菌される。この結果、コンテナ内の生鮮物の鮮度劣化を十分に抑制できる。
前記スペーサによって電極間距離を確実かつ安定的にマイクロメートルオーダーにできる。電極間距離をマイクロメートルオーダーとすることによって十分低い電圧で放電を生成できる。この結果、プラズマ生成部を電池などの自前の電力で比較的長期間、運転可能となる。
必ずしもプラズマ生成部専用の送風手段を設ける必要が無く、所要電力を一層低減できる。
大気圧近傍とは、1.013×104~50.663×104Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×104~10.664×104Paが好ましく、9.331×104~10.397×104Paがより好ましい。
前記一方の電極の誘電体層が、他方の電極へ向かって突出された凸部を有し、前記凸部が前記スペーサを構成していることが、より好ましい。これによって、部品点数を減らすことができる。かつプラズマ生成部の組立性を向上できる。
コンテナ内の雰囲気ガスが貫通穴を通り抜けることができる。該雰囲気ガスの一部が放電空間へ拡散される。或いは、放電空間からプラズマの一部が貫通穴内に漏れ、これに雰囲気ガスが触れる。これによって、エチレン等の成長ホルモンの分解や浮遊細菌の殺菌がなされる。
少なくとも片方の電極における前記対向面と交差する交差面と他方の電極との間で放電が生成されることが好ましい。
前記スペーサによって、電極間距離を確実かつ安定的にマイクロメートルオーダーにできる。スペーサの厚さによって電極間距離を規定できる。更には、プラズマ生成部の構造を簡易化できる。
コンテナ内の雰囲気ガスが、開放空間ひいては貫通穴に入り込むことによって、貫通穴の内周面における沿面状の放電に触れる。これによって、エチレン等の成長ホルモンの分解や浮遊細菌の殺菌がなされる。
前記スペーサが、前記交差面とほぼ面一をなす介在面を有していてもよい。これによって、交差面及び介在面に沿って放電を生成できる。
一対の電極における対向面と交差する交差面どうし間に前記介在面が挟まれ、かつこれら交差面と介在面とが互いにほぼ面一であってもよい。
前記交差面及び介在面は互いに完全に面一であるのに限られず、介在面が交差面より若干(例えば数μm~数百μm程度)突出されていてもよく、逆に若干引っ込んでいてもよい。
前記線状部の端面が前記交差面を構成する。該端面において放電が生成される。線状部を前記スペーサ及び前記他方の電極の広い範囲にわたるように形成することによって、広い範囲で放電を生成できる。
パターン形状としては、格子縞状、櫛歯状、ストライプ状などが挙げられる。
両方の電極がパターン形状であり、かつ一方の電極の線状部が、他方の電極の線状部より幅狭又は小面積であってもよい。
両方の電極がパターン形状であり、かつこれら電極どうしの対向方向から見て、一方の電極が、他方の電極に対してずれていてもよい。
<第1実施形態>
図1~図7は、本発明の第1実施形態を示したものである。
図1に示すように、鮮度保持コンテナ装置1は、コンテナ10と、鮮度保持装置20と備えている。
なお、1つの箱8に複数種の生鮮物9が混載されていてもよい。
前記冷媒に移された熱は、冷凍サイクル15から外気ライン19に移されて放出される。
発電機17によって、冷凍サイクル15の圧縮機(図示省略)や、雰囲気ガスg0の送風ファン16や、外気ライン19の送風ファン(図示省略)が駆動される。
装置本体21は、送風口13の大きさ及び形状に合わせた箱形状ないしは筒形状になっている。装置本体21の内部には室部22(開放空間)が形成されている。装置本体21ひいては室部22の水平な軸線L21に沿う方向の両端部は、開放されている。該装置本体21が、軸線L21を送風口13の軸線と一致させて、コンテナ本体11における送風口13の周りの内壁11wに取付けられている。送風口13に室部22が直接的に連なることで、送風口13からの雰囲ガスg0が室部22を通り抜け可能である。室部22は、雰囲ガスg0の強制流通路10gの一部を構成している。
装置本体21の材質は、樹脂であるが、金属であってもよい。
装置本体21における送風口13とは反対側(図2において右側)を向く出口側開口21bには、指挿入防止ひいて感電防止用のメッシュ28が設けられている。
図3において、プラズマ生成部30の形状は、四角形になっているが、これに限られず、円形でもよく、他の多角形でもよい。
各電極31,32の厚さは、例えば数百μm~数mm程度である。 電極31,32の材質は、好ましくは銅、銀、鉄等の良導電性金属である。一方の電極31の材質と他方の電極32の材質が異なっていてもよい。
なお、図において、電極間距離dは、電極31,32の縦横寸法及び後記貫通穴34の直径などに対して誇張されている。
言い換えると、誘電体層31が、スペーサ36を一体に含んでいる。電極31,32間にスペーサ36が介在されることによって、電極間距離dがマイクロメートルオーダーに保持されている。電極31の外周に沿う環状のスペーサ36が周方向の全域にわたって電極32と当接されることによって、電極間距離dが安定的にマイクロメートルオーダーに保持されている。
例えば図6に示すように、スペーサ36が、電極31の前記対向面における2つの長辺側の縁に沿って線状に延びていてもよい。
図7に示すように、スペーサ36(凸部36)が、複数の小突起状に形成され、電極31の対向面31aにおける四隅のコーナー部及び対向面31aの内側部に整列又は分散して配置されていてもよい。図7の小突起状のスペーサ36は、四角形であるがその他の多角形や円形であってもよい。
環状又は線状のスペーサと小突起状のスペーサが組み合わされていてもよい。
なお、貫通穴34の形状は、円形に限られず、長穴状(スリット状)でもよく、多角形状でもよい。
電源部4は、直流電源4aと、電源回路4cを含む。直流電源4aとしては、乾電池、鉛蓄電池などの電池を用いることができる。直流電源4aの出力電圧は、例えば数V~数十V程度である。電源回路4cは、直流電源4aの直流電圧を好ましくはパルス状の高周波電圧に変換する。高周波電圧の波高値は、例えばVpp=数百V~1.5kV程度であり、好ましくは500V~600V程度であり、プラズマ生成部30の絶縁破壊電圧を越えていることが好ましい。周波数は、例えば数百Hz~数kHzである。
図2に示すように、電源回路4cの給電線4dが、一対の電極31,32のうち何れか一方の電極31に接続されている。他方の電極32は、接地線4eを介して接地されている。電源回路4cからの供給電力は、例えば数mW~10W程度である。
なお、前記直流電圧を交流変換してもよい。
電極間距離dがマイクロメートルオーダーであるため、供給電力が小さくても放電を生成することができる。かつ雰囲気ガスg0の鮮度保持装置20への導入手段として、コンテナ10の送風ファン16を利用できる。したがって、鮮度保持装置20が専用の送風手段を備えている必要がなく、電源部4における所要電力を低減できる。この結果、直流電源4aとして、乾電池や蓄電池などの一次電池、二次電池を用い、比較的長期間、運転可能となる。
雰囲気ガスg0は、貫通穴34を通り抜ければよく、狭隘な放電空間35を通り抜ける必要が無い。したがって、雰囲気ガスg0の圧損を低減できる。
鮮度保持装置の配置場所は送風口13には限られない。
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態を示したものである。
第2実施形態に係る鮮度保持コンテナ装置1Bにおいては、鮮度保持装置20が、コンテナ10の吸気口14に設けられている。雰囲気ガスg0は、吸気口14への取り込み時に、鮮度保持装置20の貫通穴34(通過流路)を通ることでプラズマ化される。
<第3実施形態>
図9及び図10は、本発明の第3実施形態を示したものである。
図9に示すように、第3実施形態に係る鮮度保持コンテナ装置1Cにおいては、鮮度保持装置20Cが、送風口13及び吸気口14から離れて、コンテナ本体11内の雰囲気ガスg0の強制流通路10g上に配置されている。例えば、鮮度保持装置20Cは、コンテナ本体11の天井部11bの長手方向(図9において左右)の中間部に配置されている。
図11~図14は、本発明の第4実施形態を示したものである。
図11に示すように、第4実施形態に係る鮮度保持コンテナ装置1Dにおいては、鮮度保持装置20Dの装置本体21にプラズマ生成部40が垂直に向けられて収容されている。なお、鮮度保持装置20Dは、送風口13に配置されているが、第2実施形態(図8)と同様に吸気口14に配置されていてもよく、第3実施形態(図9)と同様にコンテナ本体11の中間部に配置されていてもよい。
スペーサ43の厚さは、マイクロメートルオーダーであり、好ましくは5μm~500μmである。スペーサ43が厚すぎると、後記電極間距離d’(図14)が広くなり、放電電圧を大きくする必要がある。スペーサ43が薄すぎると、所要の強度を確保できない。
なお、図において、スペーサ43及び電極41,42の厚さは誇張されており、ひいてはプラズマ生成部40の厚さは誇張されている。
図示は省略するが、各電極41,42の表側面(スペーサ43側とは反対側の面)は、保護膜によって覆われていてもよい。
なお、貫通穴44の形状は、円形に限られず、長穴状(スリット状)でもよく、多角形状でもよい。
なお、電極41,42のうち少なくとも一方の貫通穴内周面44a,44bが、スペーサ43における貫通穴内周面44cより少し引っ込んでいてもよい。
貫通穴44の内周(通過流路の内壁面)の周辺部が、プラズマを生成する放電空間40aとなる。放電空間40aは、強制流通路10gに連通または介在されている。
よって、鮮度保持装置20Dが専用の送風用の電力が不要であることと相俟って、電源部4における所要電力を一層低減できる。この結果、直流電源4aとして、乾電池や蓄電池などの一次電池、二次電池を用い、比較的長期間、運転可能となる。
加えて、貫通穴44内の空間全域で放電を生成するものではなく、貫通穴44の少なくとも内周面上で放電が生成されればよいから、貫通穴44の断面積を大きくしても、放電生成に支障を来さない。言い換えると、放電生成に支障を来たすことなく、貫通穴44の断面積を大きくできる。そうすることで、雰囲気ガスg0の圧損を低減できる。
一対の電極41,42どうし間にスペーサ43を介在させることによって、電極間距離d’を安定的に保持できる。かつ、プラズマ生成部40の構造を簡易化できる。
図15~図18は、本発明の第5実施形態を示したものである。
図15に示すように、第5実施形態に係る鮮度保持コンテナ装置1Eにおいては、鮮度保持装置20Eが、送風口13及び吸気口14から離れて、コンテナ本体11内の雰囲気ガスg0の強制流通路10g上に配置されている。例えば、鮮度保持装置20Eは、コンテナ本体11の天井部11bの長手方向(図15において左右)の中間部に配置されている。
図16に示すように、両側の開口21c,21dには、それぞれ指挿入防止ひいて感電防止用のメッシュ28が設けられている。
なお、図において、スペーサ53及び電極51,52を含むプラズマ生成部50の厚さは誇張されている。
電極51の表側面51c及び端面51eと、スペーサ53の表側面53aのうち電極51が設けられていない部分とによって、プラズマ生成部50の表面50aが構成されている。
図18に示すように、格子縞電極51の各線状部51aにおける対向面51bと交差する端面51e(交差面)が、全面電極52における対向面52aと、スペーサ53を挟んで相対している。該端面51eが、放電面を構成している。
なお、これとは逆に、全面電極52が電源回路4cの給電線4dに接続され、格子縞電極51が接地されていてもよい。
鮮度保持装置20Eによれば、平板状のプラズマ生成部50が、雰囲気ガスg0の流れ方向に沿うように配置されているため、雰囲気ガスg0の圧損を十分に小さくできる。
<第6実施形態>
図19は、本発明の第6実施形態を示したものである。第6実施形態は、プラズマ生成部50の電極パターン形状の変形態様に係り、スペーサ53の一方側(図19において表側)の電極55が、格子縞状に代えて、櫛歯状のパターン形状になっている。櫛歯電極55の各櫛歯部55a(線状部)は、雰囲気ガスg0の強制流通方向(図19において右方向)に沿っている。複数の櫛歯部55aの端部どうしが、連結部55cによって連ねられている。
なお、櫛歯電極55の各櫛歯部55aが、雰囲気ガスg0の強制流通方向と直交(交差)するように延びていてもよい。
櫛歯電極55の各櫛歯部55aの幅は、例えば0.数mm~数mm程度であり、櫛歯部55aどうしのピッチは、例えば数mm~十数mm程度である。
電源部4からの電力供給によって、櫛歯電極55の端面55eとスペーサ53の表側面53aとで作る隅角部50cに沿って放電50bが生成される。
例えば、装置本体21は、開放空間を画成し、かつプラズマ生成部30,40,50を支持可能であれば必ずしも箱状である必要はなく、フレーム状であってもよい。
装置本体21の開放空間が貫通穴34だけで画成されていてもよい。
第1~第4実施形態(図1~図14)のプラズマ生成部30,40の向きは、垂直に限られず、水平でもよく、斜めでもよい。第5実施形態(図16)のプラズマ生成部50の向きは、水平に限られず、垂直でもよく、斜めでもよい。
複数の鮮度保持装置をコンテナ10の複数箇所に設けてもよい。送風口13と吸気口14の両方に鮮度保持装置を設けてもよい。
第1~第3実施形態(図1~図10)において、スペーサとなる凸部36を両方の誘電体層31d,32dに設けてもよい。
第1~第3実施形態(図1~図10)のプラズマ生成部30において、誘電体層31d,32dの何れか一方を省略してもよい。誘電体層は少なくとも一方の電極の対向面に設けられていればよい。
スペーサが誘電体層31d,32dとは別に設けられていてもよい。
各電極41,42の端面とスペーサ43の端面(介在面)とが互いにほぼ面一になっており、これら端面に沿って放電が生成されるようになっていてもよい。
第5実施形態(図15)のプラズマ生成部50として、第4実施形態(図11)のプラズマ生成部40を用いてもよい。
第5実施形態の電極構造(図15~図18)の変形態様として、他方の電極52が、格子縞電極51と同様の格子縞状であり、かつ該電極52の線状部の幅が格子縞電極51の線状部51aの幅より太くてもよい。あるいは、他方の電極52が、格子縞電極51と同じ大きさの格子縞状であり、かつ格子縞電極51に対して平面視でずれていてもよい。
第6実施形態(図19)の変形態様として、他方の電極52が、櫛歯電極55と同様の櫛歯状であり、かつ該電極52の櫛歯部(線状部)の幅が櫛歯電極55の櫛歯部55aの幅より太くてもよい。あるいは、他方の電極52が、櫛歯電極55と同じ大きさの櫛歯状であり、かつ櫛歯電極55に対して櫛歯部55aの幅方向にずれていてもよい。その他のパターン電極形状としては、市松模様状などであってもよい。一対の電極が、スペーサ43の同一面上にマイクロメートルオーダーの距離を置いて配置されていてもよい。
コンテナ10として、組成調節機能付きの調節部12を有するCAコンテナを用いてもよい。CAコンテナにおいては、コンテナ内の雰囲気ガスg0(空気)が吸気口14へ取り込まれ、温度調節(冷却)されるのに加えて、酸素濃度が低下されたうえで、送風口13からコンテナ内に送出される。これによって、コンテナ内を窒素リッチにでき、生鮮物9の呼吸を抑制することで、生鮮物9の鮮度劣化を抑制できる。
コンテナ内室11aに強制流通用の送風ファンが設置されていてもよい。
コンテナ10は、必ずしも温調や組成調節を行なう調節部12を有していなくてもよく、通常のコンテナを用いてもよい。
プラズマ生成部30,40,50が調節部12の発電機17から電力供給を受けるようにしてもよい。
鮮度保持装置に送風ファンなどの送風手段を設けてもよい。
鮮度保持装置を、コンテナ10内の個別の箱8の内部に設けてもよい。
実施例1では、プラズマ生成による単位容積あたりのエチレンガス分解能を調べた。
容積1m3のチャンバーを用意し、該チャンバーに鮮度保持装置を収容した。鮮度保持装置としては、第1実施形態(図2~図5)と同様の一対の電極31,32からなる電極モジュール30(プラズマ生成部)が縦横に4つ並べられた装置を用いた。
各電極31,32の長手寸法は45mmであり、短手寸法は16mmであった。
電極間距離dは、d=30μmであった。
貫通穴34の直径は、3mmであった。各電極における貫通穴34の数は40個であった。
その後、鮮度保持装置を稼働させて電極31,32間に大気圧プラズマを生成した。
直流電源4aの出力電圧は、24Vであった。該直流を電源回路4cによってパルス波状の高周波電圧に変換して電極31,32に供給した。
1つの電極モジュール30あたりの供給電力は、0.6Wであった。
高周波電圧の波高値はVpp=616Vであり、周波数は540Hzであった。
更に鮮度保持装置に内蔵されたファンでチャンバー内の雰囲気ガスを循環させた。
結果を図20に示す。当該測定データから、1つの電極モジュール30あたりのエチレンに対する分解能を計算したところ、約3.4mg/hであった。
例えば青果物の中でもエチレン生成速度が高いアボカドの場合、1kgあたりのエチレン生成量は常温環境下においてピークで数十μg/hとの報告例が知られている(井上弘明, 熱帯農業 35(3) p.187 (1991))。エチレン生成量は温度だけでなく成熟の進行具合や気体組成によっても左右されるが,仮に40μg/hの生成量であるとすると、常温環境下においては1つの前記電極モジュール30によって、85kgのアボカドからのエチレン生成をキャンセルできると推計される。冷蔵環境下においては、アボカドのエチレン生成量は常温時の10分の1以下になる場合もあることから、1つの前記電極モジュール30によって、数百kgオーダーの青果物からのエチレン生成をキャンセルできるものと推計される。
容積40Lの冷蔵容器を用意した。該冷蔵容器内に12個のアボカドを置いた。
冷蔵容器内の中段には鮮度保持装置20を配置した。実施例2における鮮度保持装置20の電極モジュール30の数は1つであった。該電極モジュール30の構造は第1実施形態(図2~5)と同様であった。電極31,32の寸法、電極間距離d、並びに貫通穴34の直径及びの数は、実施例1の各電極モジュールと同じであった。
更に鮮度保持装置に内蔵されたファンで冷蔵容器内の雰囲気ガスを循環させた。
17日間にわたって鮮度保持装置20を連続運転した。直流電源4aの出力電圧、電極31,32への供給電力、電圧Vpp及び周波数は、実施例1と同様であった。
鮮度保持装置20の運転期間中、冷蔵容器内のエチレン濃度を測定した。
結果を図21に示す。エチレン濃度は平均2ppm以下に保たれた。高くなったときでも4ppm以下に抑えられた。アボガドが生成するエチレンをプラズマによって連続的に分解することで低濃度を保ったものと考えられる。
17日間経過後のアボカドを観察したところ、表面には緑が多く残っていた。触感は比較的硬かった。アボカド1個あたりの重量減少は平均6.3gであった。
比較例1として、無処理(鮮度保持装置無し)の場合の冷蔵容器内のエチレン濃度を測定した。アボカドの収容個数、冷蔵温度及び相対湿度は実施例1と同じであった。
図21に示すように、比較例1におけるエチレン濃度は数日で10ppmを超え、最大で14ppmになった。およそ10日目以降はエチレン濃度が減少傾向になった。周辺エチレン濃度や熟度の進行の影響でエチレン濃度が飽和したと考えられる。
17日間経過後のアボカドを観察したところ、表面が黒く変色していた。触感は少し柔らかくなっていた。アボカド1個あたりの重量減少は平均8.3gであった。
比較例2として、鮮度保持装置20に代えてオゾナイザーを冷蔵容器内の中段に設置して連続運転し、冷蔵容器内のエチレン濃度を測定した。アボカドの収容個数、冷蔵温度及び相対湿度は実施例1と同じであった。比較例2における運転期間中の冷蔵容器内のオゾン濃度は平均1.5ppmであった。
ちなみに、実施例1における運転期間中の冷蔵容器内のオゾン濃度はオゾンセンサの検出下限以下であった。
17日間経過後のアボカドを観察したところ、表面が黒く変色していた。触感は少し柔らかくなっていた。アボカド1個あたりの重量減少は平均10gであった。
総じてオゾナイザーによる鮮度保持効果は得られなかった。
9 生鮮物
10 コンテナ
10g 強制流通路
11 コンテナ本体
11a コンテナ内室(内部空間)
12 調節部
13 送風口
14 吸気口
20,20C,20D,20E 鮮度保持装置
21 装置本体
22 室部(開放空間)
30 プラズマ生成部(電極モジュール)
30a プラズマ
31 一方の電極
31d 誘電体層
32 他方の電極
32d 誘電体層
34 貫通穴
34a,34b 貫通穴内周面(交差面)
35 放電空間
36 凸部(スペーサ)
40 プラズマ生成部
40a 放電空間
41 一方の電極
41a 対向面
42 他方の電極
42a 対向面
43 スペーサ
44 貫通穴
44a,44b 貫通穴内周面(交差面)
44c 貫通穴内周面(誘電面)
50 プラズマ生成部
50b プラズマ
50c 隅角部(放電空間)
51 格子縞電極(一方の電極)
51a 線状部
51e 端面(交差面)
52 全面電極(他方の電極)
52a 対向面
53 スペーサ
55 櫛歯電極(一方の電極)
55a 櫛歯部(線状部)
Claims (1)
- コンテナに収容された生鮮物の鮮度を保持するコンテナ用鮮度保持装置であって、
前記コンテナの内部空間に開放された開放空間を画成する装置本体と、
前記装置本体に支持されたプラズマ生成部と、
を備え、前記プラズマ生成部が、前記開放空間に連なるとともにプラズマが生成される放電空間を形成する一対の平らな電極と、前記一対の電極の対向面どうし間に介在されてこれら電極間の距離をマイクロメートルオーダーに保持する絶縁体からなるスペーサを含み、前記スペーサが、マイクロメートルオーダーの厚さの薄板状ないしは薄膜状に形成されて前記一対の電極どうしの間を埋めるように設けられており、
少なくとも片方の電極における前記対向面と交差する交差面と他方の電極との間で放電が生成され、
前記片方の電極が、線状部を有するパターン形状であり、
前記スペーサ及び前記他方の電極が、前記片方の電極より大きな面形状であることを特徴とするコンテナ用鮮度保持装置。
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