以下、図面を参照しながら本実施形態に係る放射線治療支援装置及び放射線治療支援プログラムを説明する。
図1に示すように、放射線治療システム1は、治療計画用CT(Computed Tomography)装置2、放射線治療計画装置3、放射線治療装置4、放射線治療支援装置5及びPACS(Picture Archiving and Communication System)システム6を有する。治療計画用CT装置2、放射線治療計画装置3、放射線治療装置4、放射線治療支援装置5及びPACSシステム6は、ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
治療計画用CT装置2は、撮像用架台と撮像用寝台とコンソールとを有する。撮像用架台は、X線管とX線検出器とを回転軸回りに回転可能に支持する支持機構を搭載する。撮像用寝台は、患者が載置される撮像用天板と、撮像用天板を移動自在に支持する基台とを有する。撮像用天板は、後述する治療用天板と同様に平面形状を有している。患者の位置決め精度の向上のため、撮像用天板は、治療用天板と同一形状を有しているとよい。撮像用天板に載置された患者には、放射線治療時と同様に固定具がセットされる。固定具は、例えば患者と撮像用天板との間にセットされる。固定具は、患者の体格に応じて整形されたものでもよいし、患者表面を上から覆い、患者の動きを防止するものでもよい。特に頭部用の固定具の覆う素材は、頭部を覆った状態でも呼吸が可能なように網目で構成されている。
CT撮像時において撮像用架台は、X線管とX線検出器とを高速で回転させながら、X線管によるX線の照射とX線検出器によるX線の検出とを行うことにより、患者によるX線の減弱を示す生データをX線検出器により収集する。生データは、コンソールに伝送される。
治療計画用CT装置2のコンソールは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、ディスプレイ、入力インタフェース、通信インタフェースを含むコンピュータを有する。コンソールは、生データに基づいて3次元のCT画像データを再構成する。コンソールは、CT画像データとして、X線減弱係数に応じたCT値の空間分布を示す画像データを生成してもよいし、CT値からX線減弱係数を算出し、X線減弱係数の空間分布を示す画像データを生成してもよい。CT画像データは、放射線治療計画装置3、放射線治療支援装置5及びPACSシステム6に送信される。
なお、放射線治療システム1は、治療計画用CT装置2を有するとしているが、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、放射線治療システム1は、患者の治療計画用の3次元医用画像データを生成できる医用画像診断装置であれば、治療計画用CT装置2の代わりに、コーンビームCT装置や磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置等を有してもよい。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、放射線治療システム1は、患者の治療計画用の3次元医用画像データを生成できる医用画像診断装置として治療計画用CT装置2を有するものとする。
放射線治療計画装置3は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、ディスプレイ、入力インタフェース、通信インタフェースを含むコンピュータである。放射線治療計画装置3は、治療計画用CT装置2から直接的に又はPACSシステム6を介してCT画像データを受信する。放射線治療計画装置3は、受信したCT画像データに基づいて患者に関する治療計画を作成する。
治療計画の作成方法としては、フォーワード・プランニング(Forward Planning)とインバース・プランニング(Inverse Planning)の2種類がある。フォーワード・プランニングは、放射線治療の照射方向数や各照射角度、各照射の放射線強度、各照射のコリメータ開度、ウェッジフィルター等の放射線治療条件を詳細に設定し、それらの条件で最終的に得られる放射線分布を見て、放射線治療条件を評価する。放射線分布を変更する時は、放射線治療条件の一部あるいは全部を変更して再度放射線分布を求める。このようにフォーワード・プランニングにおいては、放射線治療条件を変えながら、少しずつ放射線分布を変化させ、所望の放射線分布が実現できるまで何度も繰り返し放射線条件が変更される。
インバース・プランニングは、腫瘍領域及び適切なマージンを設定し、その領域に照射する放射線量及び許容範囲を設定する。さらに危険臓器などのリスク領域をCT画像データから抽出し、リスク領域に対する放射線量を、所定レベル以上の放射線量にならない安全レベルに設定する。放射線治療装置4は、この放射線分布に対する要求を満足する放射線治療計画を、放射線治療条件を変更しながら逐次的に立案する。放射線治療計画と腫瘍領域の位置は、放射線治療装置4と放射線治療支援装置5とに送信される。
放射線治療装置4は、治療用架台(ガントリ)と治療用寝台とコンソールとを有する。治療用架台は、照射ヘッドを回転軸回りに回転可能に支持する。照射ヘッドには、電子銃等により発生された電子等を加速する加速管と、加速管により加速された電子が衝突する金属ターゲットとが搭載される。金属ターゲットに電子が衝突することにより、放射線であるX線が発生する。照射ヘッドは、放射線治療計画装置3により同定された治療計画に含まれる照射条件に従い放射線を照射する。照射ヘッドからの放射線のビーム軸と回転軸とが交わる点は、空間的に不動であり、アイソ・センタと呼ばれている。治療用寝台は、患者が載置される治療用天板と、治療用天板を移動自在に支持する基台とを有する。治療用天板は、撮像用天板と同様に平面形状を有している。患者の治療部位がアイソ・センタに一致するように放射線治療装置、治療用寝台及び患者が位置合わせされる。
放射線治療支援装置5は、放射線治療計画又は放射線治療を支援するためのコンピュータである。放射線治療支援装置5は、後述するように、干渉チェックツールを用いて干渉チェックを実行する。
PACSシステム6は、治療計画用CT装置2により生成されたCT画像データ等の医用画像データを管理する画像サーバを含む。PACSシステム6は、放射線治療計画装置3や放射線治療支援装置5からの要求を受けて医用画像データを要求元に送信する。
図2を参照して、放射線治療支援装置5の構成を説明する。図2に示すように、放射線治療支援装置5は、演算回路51、通信インタフェース52、ディスプレイ53、入力インタフェース54、スピーカ55及び記憶回路56を有する。演算回路51、通信インタフェース52、ディスプレイ53、入力インタフェース54、スピーカ55及び記憶回路56は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
演算回路51は、ハードウェア資源として、CPUやGPU等のプロセッサを有する。演算回路51は、放射線治療支援に関するプログラム(以下、放射線治療支援プログラムと呼ぶ)を実行し、治療計画取得部511、リスク値算出部512、視覚情報生成部513、表示制御部514及び音制御部515を実現する。
治療計画取得部511は、対象患者に関する治療計画データを、放射線治療計画装置3から通信インタフェース52等を介して取得する。なお、治療計画取得部511は、放射線治療装置4やPACSシステム6等の放射線治療計画装置3以外のコンピュータから治療計画データを取得してもよいし、可搬型記録媒体を介して治療計画データを取得してもよい。
リスク値算出部512は、干渉チェックツールを実行する。干渉チェックツールにおいてリスク値算出部512は、患者に関する放射線治療の治療計画に基づいて、患者及び放射線治療装置4の要素間の干渉の危険度を定量するリスク値を算出する。具体的には、リスク値算出部512は、放射線治療装置4を模擬する3次元のグラフィックモデル(以下、治療装置モデルと呼ぶ)、治療用寝台を模擬する3次元のグラフィックモデル(以下、寝台モデルと呼ぶ)及び患者を模擬する3次元のグラフィックモデル(以下、患者モデルと呼ぶ)を、治療計画を再現するように3次元画像空間に配置する。次にリスク値算出部512は、治療装置モデル、寝台モデル及び患者モデル各々の要素間についてリスク値を算出する。本実施形態に係る要素は、放射線治療装置、治療用寝台及び患者を含む概念である。また、本実施形態に係る要素は、これら要素を構成する構成部分をも含む概念である。リスク値算出部512は、これら複数の要素の配置を当該要素を模擬する3次元のグラフィックモデルにより模擬し、これら複数の要素間のリスク値を算出する。以下、3次元のグラフィックモデルを単にモデルと呼ぶことにする。
視覚情報生成部513は、ディスプレイ53等に表示される表示画面を生成する。表示画面には、要素間の干渉の危険度を視認可能な視覚情報が表示される。以下、当該視覚情報をリスク可視化情報と呼ぶことにする。視覚情報生成部513は、リスク値算出部512により算出されたリスク値に基づいて、要素間の干渉の危険度を視認可能なリスク可視化情報を生成する。
表示制御部514は、視覚情報生成部513において生成された表示画面であるリスク可視化情報をディスプレイ53に表示する。
音制御部515は、任意の音をスピーカ55を介して出力する。例えば、音制御部515は、リスク値算出部512において算出されたリスク値に応じた音を、スピーカ55を介して出力する。
通信インタフェース52は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療計画装置3や放射線治療装置4、PACSシステム6等との間でデータ通信を行う。例えば、通信インタフェース52は、治療計画用CT装置2からCT画像データを受信し、放射線治療計画装置3から治療計画データを受信する。また、通信インタフェース52は、放射線治療計画装置3からCT画像データと治療計画データとをまとめて取得する。この際、通信インタフェース52は、DICOM-RTを使用して統合情報として同時に取得してもよい。
ディスプレイ53は、種々の情報を表示する。ディスプレイ53は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力インタフェース54は、入力機器を介して受け付けたユーザからの各種指令を入力する。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース54は、入力機器からの出力信号を、バスを介して演算回路51に供給する。
スピーカ55は、電気信号を音波に変換する。スピーカ55としては、マグネチックスピーカ、ダイナミックスピーカ、コンデンサスピーカ、又は当技術分野で知られている他の任意のスピーカが適宜利用可能である。
記憶回路56は、種々の情報を記憶するRAMやROM、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。例えば、記憶回路56は、CT画像データ、治療計画データ、放射線治療支援プログラム等を記憶する。ハードウェアとして記憶回路56は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記録媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
以下、図3を参照して放射線治療支援装置5の動作について説明する。
放射線治療支援装置5の演算回路51は、記憶回路56から干渉チェックツールのプログラムを読み出して実行を開始する(ステップS1)。これにより、演算回路51は、治療計画取得部511、リスク値算出部512、視覚情報生成部513、表示制御部514、音制御部515として機能する。治療計画取得部511は、放射線治療計画装置3から対象患者に関する治療計画を、通信インタフェース52等を介して取得する。治療計画には、放射線治療の照射方向数や各照射角度、各照射の放射線強度、各照射のコリメータ開度、ウェッジフィルター等の放射線治療条件が設定されている。
リスク値算出部512は、まず、干渉チェックツールにおいて使用される3次元画像空間を定義し、当該3次元画像空間に、取得された治療計画における放射線治療装置、治療用寝台及び対象患者の配置を模擬する。具体的には、放射線治療装置を模擬する治療装置モデル、治療用寝台を模擬する寝台モデル及び対象患者を模擬する患者モデルを、治療計画に従い3次元画像空間に配置する。
図4は、干渉チェックツールにおいて定義される3次元画像空間に配置された治療装置モデル60、寝台モデル70及び患者モデル81を示す図である。治療装置モデル60は、回転架台を模擬する架台モデル61、照射ヘッドを模擬する照射ヘッドモデル63、撮像用のX線管を模擬するX線管モデル65及び撮像用のX線検出器を模擬するX線検出器モデル67を有する。寝台モデル70は、基台を模擬する基台モデル71、支持フレームを模擬するフレームモデル73及び治療用天板を模擬する天板モデル75を有する。
記憶回路56には放射線治療装置4と治療用寝台との機構情報が記憶されている。演算回路51は、機構情報に基づいて治療装置モデル60と寝台モデル70とを、実物と同様の可動軸で動作させることができる。演算回路51は、治療計画に含まれる照射位置等及び腫瘍位置等の位置情報に基づいて治療装置モデル60、寝台モデル70及び患者モデル81を3次元画像空間内に配置する。
記憶回路56には複数の身体条件に関する複数の標準的な患者モデルが記憶されている。身体条件としては体重や身長、胸囲、腹囲が挙げられる。演算回路51は、複数の標準的な患者モデルの中から対象患者の身体条件に合致する患者モデル81を選択する。演算回路51は、選択された患者モデル81を天板モデルの中央に暫定的に配置する。演算回路51は、腫瘍位置と患者モデルとの対応付けを、腫瘍位置とCT画像情報との対応関係から同定し、患者モデルの中の腫瘍位置がアイソ・センタに一致するように患者モデルを配置する。なお、演算回路51は、対象患者の身体条件に合致するように標準的な患者モデルを変形し、変形後の患者モデルを対象患者の患者モデルとして使用してもよい。
3次元画像空間に配置されるモデルは、上記のモデルのみに限定されず、各種付属器具を模擬するモデルが配置されてもよい。例えば、患者の体位の保持を補助するアクセサリを模擬するモデルやディスプレイを模擬するモデルが配置されてもよい。また、図4に示す架台モデル61は、撮像用のX線管及びX線検出器が搭載された回転架台を模擬しているが、これに拘泥されない。架台モデル61として、撮像用のX線管及びX線検出器を搭載しない回転架台を模擬するモデルが用いられてもよい。この場合、撮像用のX線管及びX線検出器が可動式アームに取り付けられた画像撮像装置を模擬するモデルが用いられてもよい。
リスク値算出部512は、まず、治療装置モデル、寝台モデル及び患者モデル各々に第1のマージンと第2のマージンとを設定する(ステップS2)。
放射線治療装置4、治療用寝台及び患者各々には配置の不確かさが存在する。配置の不確かさは、理想的な配置からの実際の配置のずれを意味する。配置の不確かさの要因としては幾何学的誤差と機械的誤差とを含む。幾何学的誤差としては、例えば、患者の重みによる治療用天板の撓みや照射ヘッドの重みによる回転架台の垂れが挙げられる。他の幾何学的誤差としては、治療用天板における患者の理想的な位置から実際の位置のずれが挙げられる。機械的誤差は、回転架台によるアイソ・センタ回りの回転の誤差が挙げられる。また、回転架台や治療用天板の計測誤差も機械的誤差に含まれる。計測誤差は、実際の位置と計測上の位置との相違である。これら配置の不確かさによって、干渉チェックツールによるシミュレーションでは干渉しないものが現実の装置では干渉することがある。
配置の不確かさに起因する干渉チェックの精度低下を低減するため、第1のマージンと第2のマージンとが設定される。第1のマージンは、放射線治療装置4、治療用寝台及び患者の配置の不確かさに基づいて設定される。第2のマージンは、第1のマージンに更に付加されるマージンである。
図5は、第1のマージンと第2のマージンとを示す図である。なお、図5においてはモデルの一例として照射ヘッドモデル63が示されている。図5に示すように、照射ヘッドモデル63を囲むように第1のマージンM1と第2のマージンM2とが設定される。第1のマージンM1は、照射ヘッドの配置の不確かさを吸収するために設定される。第1のマージンM1より内側の範囲においては照射ヘッドに干渉する危険性が比較的高い。第2のマージンM2は、第1のマージンM1よりも外側に設定される。第1のマージンM1と第2のマージンM2との間の範囲においては照射ヘッドに干渉する危険性が比較的低いがゼロではない。第2のマージンM2よりも外側の範囲においては照射ヘッドに干渉する危険性がゼロ又はゼロに近い。例えば、照射ヘッドモデル63から第1のマージンまでの距離L1は5~10mmの範囲に設定され、照射ヘッドモデル63から第2のマージンまでの距離L3は20~30mmの範囲に設定される。
例えば、記憶回路56は、第1のマージンのサイズと機構種(モデル)とを関連付けたテーブル(LUT:Look Up Table)を記憶する。以下、当該テーブルをマージンテーブルと呼ぶことにする。機構種(モデル種)としては回転架台、照射ヘッド、治療用天板等が挙げられる。演算回路51は、マージン設定対象のモデルに関する第1のマージンのサイズのデータをマージンテーブルから読み出し、マージン設定対象のモデルに第1のマージンを設定する。そして演算回路51は、第1のマージンのサイズに一定の係数を乗じて第2のマージンのサイズを算出し、算出されたサイズを有する第2のマージンをマージン設定対象のモデルに設定する。当該係数の値は、入力インタフェース54等を介してユーザにより任意に変更可能である。なお、マージンテーブルは、第2のマージンのサイズと機構種とを関連付けてもよい。これにより、第2のマージンのサイズを計算無しで決定することが可能になる。
マージンテーブルの内容は、入力インタフェース54等を介してユーザにより任意に変更可能である。これにより、ユーザが第1のマージンを大きい又は小さいと感じた場合、マージンテーブルに登録されている第1のマージンのサイズを所望の値に変更することができる。
ステップS2が行われるとリスク値算出部512は、モデル間の距離を算出する(ステップS3)。より詳細には、ステップS3においてリスク値算出部512は、各モデルのうちの干渉可能性を有する部位を複数の点で表現する。干渉可能性を有する部位は、典型的には、各モデルの表面である。点は、典型的には、一定間隔で配置される。そしてリスク値算出部512は、干渉評価対象の第1のモデルの各点と第2のモデルの各点との間の距離を計算する。計算された点間距離のうちの最短距離が第1のモデルと第2のモデルとの間の距離として採用される。
例えば、図5に示すように、照射ヘッドモデル63と患者モデル81との間の干渉を評価する場合、照射ヘッドモデル63の表面と患者モデル81の表面とに複数の点が設定される。照射ヘッドモデル63の各点と患者モデル81の各点との間の距離が計算される。例えば、照射ヘッドモデル63の点P1と患者モデル81のうちの腕モデル83の点P2との間の距離D1が最短距離として算出される。
ステップS3が行われるとリスク値算出部512は、ステップS3において算出されたモデル間距離(最短距離)とステップS2において設定された第1のマージン及び第2のマージンとに基づいてリスク値を算出する(ステップS4)。リスク値の算出方法としては、種々の方法が考えられる。一例として、以下の方法が挙げられる。
まずリスク値算出部512は、評価対象のモデル間距離を第1のマージン及び第2のマージンに対して比較し、評価対象のモデル間距離のリスクレベルを決定する。具体的には、リスク値算出部512は、評価対象のモデル間距離と第2のマージンとを比較する。評価対象のモデル間距離が第2のマージンよりも長い場合、リスク値算出部512は、評価対象のモデル間距離を安全レベル(リスク値=0%)に分類する。評価対象のモデル間距離が第2のマージンよりも短い場合、演算回路51は、評価対象のモデル間距離を「リスク有り」に分類する。
「リスク有り」については更に分類される。具体的には、リスク値算出部512は、評価対象のモデル間距離が第2のマージンよりも短い場合、モデル間距離と第1のマージンとを比較する。評価対象のモデル間距離が第1のマージンよりも長く且つ第2のマージンよりも短い場合、リスク値算出部512は、評価対象のモデル間距離を注意レベルに分類する。評価対象のモデル間距離が第1のマージンよりも短い場合、リスク値算出部512は、評価対象のモデル間距離を警告レベルに分類する。リスクレベルは、後述のリスク可視化情報としてディスプレイ53に表示される。
次にリスク値算出部512は、評価対象のモデル間距離と、第1のマージン及び第2のマージンとに基づいてリスク値を算出する。上記の通り、リスク値算出部512は、評価対象のモデル間距離が第2のマージンよりも長い場合、リスク値を0%に決定する。評価対象のモデル間距離が第2のマージンよりも短い場合、リスク値算出部512は、モデル間距離に応じてリスク値を算出する。例えば、リスク値算出部512は、第2のマージンのサイズに対するモデル間距離の比率を百分率で表現した数値をリスク値として算出する。ここで、リスクレベルに応じてリスク値がスケーリングされてもよい。すなわち、モデル間距離が短くなればなるほどリスク値の上昇率が大きくなるとよい。例えば、第2のマージンの外縁から内縁(第1のマージンの外縁)にかけてはリスク値が0%から30%へと線形に割り当てられ、第1のマージンの外縁から内縁(評価対象のモデルの外縁)にかけてはリスク値が30%から100%へと線形に割り当てられるとよい。これにより、干渉の危険性をより正しく評価することができる。
例えば、図5においては、照射ヘッドモデル63と患者モデル81との干渉が評価される。照射ヘッドモデル63と患者モデル81とのうちの基準のモデルが任意に選択される。基準のモデルに対して第1のマージンM1と第2のマージンM2とが設定される。図5においては、照射ヘッドモデル63に対して第1のマージンM1と第2のマージンM2とが設定される。照射ヘッドモデル63の点P1と患者モデル81のうちの腕モデル83の点P2との間の距離D1は、第1のマージンM1よりも短い。従って照射ヘッドモデル63と患者モデル81との干渉に関するリスクレベルは警告レベルに分類される。そして距離D1に応じたリスク値が算出される。なお、図5では簡単化のため、第1のマージンM1と第2のマージンM2は照射ヘッドモデル63にしか表示されていない。しかし実際には患者モデル81にも第1のマージンM1‘と第2のマージンM2’が設定される。そして照射ヘッドモデル63と患者モデル81間のリスク値は、第1のマージンM1+M1‘、第2のマージンM2+M2’、距離D1に基づいて算出される。
ステップS4が行われると視覚情報生成部513は、ステップS4において算出されたリスク値に基づいてリスク可視化情報を生成する(ステップS5)。リスク可視化情報としては種々の視覚情報が考えられる。リスク可視化情報としては、例えば、リスク値を示す数値が挙げられる。そして視覚情報生成部513は、リスク可視化情報を含む表示画面を生成する。例えば、視覚情報生成部513は、3次元画像空間に配置された各種モデルのデータに基づいてレンダリング画像を生成し、レンダリング画像にリスク可視化情報を重ね合わせた表示画面を生成する。
ステップS5が行われると表示制御部514は、ステップS5において生成されたリスク可視化情報を含む表示画面をディスプレイ53に表示する(ステップS6)。
図6は、リスク可視化情報を含む表示画面I1の一例を示す図である。図6に示すように、表示画面I1には、各種モデルが配置された3次元画像空間のデータに基づくレンダリング画像R1が表示される。レンダリング画像R1の視線方向は特に限定されない。レンダリング画像R1には、治療計画に従い配置された患者モデル81と照射ヘッドモデル63とが描出されている。レンダリング画像R1には、リスク可視化情報の一種である表示欄R2が重畳される。表示欄R2には、ステップS4において算出されたリスク値が表示される。例えば、図6の場合、照射ヘッド63の絞り機構の左半分と患者81の前腕とが干渉の危険性の評価対象である。このとき、ステップS4においてリスク値が25%であると算出された場合、リスク値として「干渉リスク:25%」と表示される。表示欄R2は常にレンダリング画像R1の前面に表示されるので、ユーザは、瞬時にリスク値を把握することができる。
表示欄R2には、リスク値に加え、ステップS3において算出されたモデル間距離が表示されてもよい。例えば、図6の場合、「距離16mm」と表示される。リスク値に並べてモデル間距離を表示することにより、ユーザは、評価対象である患者モデル81と照射ヘッドモデル63との干渉の危険性をより正確に把握することができる。
レンダリング画像R1においては、「リスク有り」と判定されたモデルが強調表示される。強調表示対象はモデル全体でもよいし、モデル間距離の算出に用いられた一部分(以下、干渉リスク部分と呼ぶ)のみでもよい。例えば、図6に示すように、照射ヘッドモデル63の絞り機構の左半分R631と患者モデル81の前腕部R831との組合せについて「リスク有り」と判定された場合、左半分R631と前腕部R831とが干渉リスク部分に設定される。そして左半分R631と前腕部R831とが色等で強調される。強調表示された干渉リスク部分は、リスク可視化情報の一種である。強調表示により、干渉の危険性のある部分を視覚的に明瞭に把握することができる。また、干渉リスク部分は、リスクレベルに応じた色で表示されてもよい。例えば、リスクレベルが注意レベルの場合、黄色で表示され、リスクレベルが警告レベルの場合、赤色で表示されるとよい。また、干渉リスク部分は、リスクレベルに応じた周期で点滅されてもよい。なお、リスクレベルが安全レベルの非干渉リスク部分は、デフォルトの色で表示される。
図7は、リスク可視化情報を含む表示画面I1の他の例を示す図である。図7に示すように、図6のレンダリング画像R1及び表示欄R2に加え、リスク可視化情報の一種である表示欄R3が設けられてもよい。表示欄R3はレンダリング画像R1に重畳して表示される。表示欄R3は、表示欄R2に表示されている評価対象のリスク間距離に関するリスクレベルを提示するための領域である。表示欄R3は、表示画面I1の4隅のうちの何れか一箇所に表示される。リスク部分の視認を妨げないためである。例えば、表示欄R3は、リスクレベルの区分に応じた色で表示される。具体的には、リスクレベルが注意レベルの場合、黄色で表示され、リスクレベルが警告レベルの場合、赤色で表示されるとよい。リスク値が0%よりも大きい部分がない場合、表示欄R3は、例えば、青色等で表示されるとよい。表示欄R3は常にレンダリング画像R1の前面に表示されるので、ユーザは、瞬時にリスクレベルを把握することができる。
図8は、リスク可視化情報を含む表示画面I1の他の例を示す図である。図8に示すように、図6のレンダリング画像R1及び表示欄R2に加え、リスク可視化情報の一種である表示欄R4が設けられてもよい。表示欄R4はレンダリング画像に重畳して表示される。表示欄R4にはリスクレベルの区分に応じたメッセージが表示される。例えば、リスクレベルが注意レベルの場合、表示欄R4には「注意!」等のメッセージが表示され、リスクレベルが警告レベルの場合、表示欄R4には「警告!!」等のメッセージが表示される。表示欄R4は常にレンダリング画像R1の前面に表示されるので、ユーザは、瞬時にリスクレベルを把握することができる。
モデル間の複数種の組合せについて「リスク有り」と判定される場合がある。この場合、視覚情報生成部513は、リスク値が所定値よりも高い組合せを示す一覧を生成する。当該所定値は、例えば、0%である。この場合、「リスク有り」と判定された組合せの一覧が生成される。当該組合せをリスク部位と呼ぶこともある。以下、「リスク有り」と判定された組合せの一覧をリスク部位リストと呼ぶことにする。リスク部位リストは、モデル間の干渉の危険性を可視化するので、リスク可視化情報の一種である。なお、当該所定値は、0%に限らず、45%等の任意の値に設定可能である。
図9は、リスク可視化情報の一種であるリスク部位リストの一例を示す図である。図9に示すように、リスク部位リストは、「リスク部位」、「リスク値」及び「判定」の項目を含む。「リスク部位」の項目には、所定値よりもリスク値が高い組合せ、すなわち、リスク部位に係るモデルの名称が設定される。「リスク値」の項目には、ステップS4において算出されたリスク値が設定される。「判定」の項目には、リスクレベルが設定される。例えば、「リスク部位」が「照射ヘッド-天板」については、「リスク値」として「60%」、「判定」として「警告」が設定される。
リスク部位リストは、レンダリング画像R1に重畳して表示される。これによりユーザは、複数のリスク部位を簡便に把握することができる。また、リスク部位各々について、干渉リスクが許容できるか、あるいは再計画が必要であるかを判断することができる。
リスク部位リストに含まれる複数のリスク部位は、入力インタフェース54等を介して選択可能に表示されるとよい。リスク部位が選択された場合、選択されたリスク部位に対応するリスク部位を詳細に観察するための詳細チェックモードに移行する。詳細チェックモードにおいて視覚情報生成部513は、リスク可視化情報として、モデル間の間隙を遮蔽無く観察可能な視線方向に関する表示画面を、3次元画像空間に配置されたモデルのデータに基づいて生成する。以下、生成される表示画面を、詳細ビュー画面と呼ぶことにする。
図10は、詳細ビュー画面の視線方向の決定方法を説明するための図である。図10に示すように、照射ヘッドモデル63の点P1と患者モデル81の点P2とを結ぶ距離D1が最短距離であるとする。表示制御部514は、点P1と点P2とを結ぶ線分の中点P3を決定し、中点P3を通り当該線分に直交する面PLを同定する。表示制御部514は、面PL内の任意の点に視点を設定し、視点から線分を向く方向を視線方向に設定する。なお、視点と当該線分との間において視線が何らかのモデルに交差する場合、面PL上のうちの当該モデルに視線が交差しない位置に視点が移動される。これにより、評価対象のモデル間の間隙を遮蔽無く観察可能な視線方向に関する詳細ビュー画面を生成することが可能になる。なお、表示制御部514は、視点と当該線分との間において視線が何らかのモデルに交差する場合、当該モデルを透明又は半透明で表示してもよい。
図11は、詳細ビュー画面I2の一例を示す図である。図11に示す詳細ビュー画面I2の視点は、患者の上腕と照射ヘッドに取り付けられた絞り機構(シャドートレイ)とを結ぶ線分の中点に直交する平面に設定されている。従って、図11に示す詳細ビュー画面I2は、患者の上腕とシャドートレイとの間隙を、遮蔽無く描出している。また、詳細ビュー画面I2においては、干渉リスクを有する上腕部R832とシャドートレイ部R632とが強調されている。このような詳細ビュー画面I2を観察することによりユーザは、間隙を詳細に観察することできるので、干渉リスクを正確に評価することができる。
詳細ビュー画面I2を表示する際、表示制御部514は、詳細ビュー画面I2の縦軸又は横軸を、3次元画像空間における検査室の鉛直軸又は患者モデルの体軸に一致させる。例えば、詳細ビュー画面I2の縦軸が検査室の鉛直軸に一致し、詳細ビュー画面I2の横軸が患者モデルの体軸に一致される。これにより、例えば、詳細ビュー画面I2の上下左右方向を検査室の上下左右方向に一致させることができるので、ユーザが詳細ビュー画面I2内の方向性を見失うことを防止することができる。
なお、リスク可視化情報は、上記の例のみに限定されない。例えば、表示画面に含まれる表示枠や背景領域がリスク可視化情報として表示されてもよい。この場合、レンダリング画像R1等の表示枠や背景領域が、リスクレベルに応じた色で表示されたり、リスクレベルに応じた周期で点滅されてもよい。
ステップS6において演算回路51は、音制御部515を実行してもよい。音制御部515は、リスクレベルに応じた音をスピーカ55から出力する。例えば、記憶回路56にはリスクレベルに応じた音のデータが記憶されている。音は、音声や音楽、警告音等の如何なる音でもよい。例えば、注意レベルに応じた音楽としてスターウォーズのダースベイダーのテーマ曲が挙げられる。警告レベルに応じた警告音としては、救急車のサイレンや警察のサイレン等が挙げられる。音制御部515は、評価対象のリスク間距離のリスクレベルに応じた音データを記憶回路56から読み出し、読み出した音データに対応する音をスピーカ55を介して出力する。このようにリスクレベルに応じた音を出力することにより、ディスプレイ53内の表示画面を観察することなくリスクレベルをユーザに知らせることができる。
このようにしてユーザは、治療計画に基づく放射線治療装置4、治療寝台及び患者の配置による干渉リスクを評価する。そして干渉する危険性が高いと判断した場合、干渉チェックツールにより干渉の危険性が低い配置を探索する。干渉の危険性が低い配置が同定された場合、当該配置のデータは放射線治療計画装置3に送信される。放射線治療計画装置3は、当該配置に基づいて治療計画を再度作成する。
以上により、本実施形態に係る放射線治療支援装置5による放射線治療支援に係る典型的な処理の説明を終了する。
上記の放射線治療支援の処理は一例に過ぎない。上記の放射線治療支援の処理は種々の変形が可能である。例えば、ステップS2とステップS3とは順番が入れ替えられてもよい。
上記ステップS4においてリスク値は、モデル間距離と第1のマージンと第2のマージンとに基づいて算出されるものとした。しかしながら、本実施形態に係るリスク値は、必ずしもモデル間距離と第1のマージンと第2のマージンとに基づいて算出されなければならないわけではない。例えば、リスク値算出部512は、モデル間距離と第1のマージン及び第2のマージンの一方とに基づいてリスク値を算出してもよいし、モデル間距離のみに基づいてリスク値を算出してもよい。
また、リスク値算出部512は、リスク値の算出において放射線治療装置4、治療用寝台及び患者の配置の不確かさの方向性を加味してもよい。この場合、リスク値算出部512は、モデル間距離と、当該モデルに対応する実物毎の幾何学的誤差の方向性及び機械的制約の方向性のうちの少なくとも一つとに基づいてリスク値を算出することとなる。モデル毎の幾何学的誤差の方向性及び機械的制約の方向性を考慮することにより、より実状に合致したリスク値を算出することができる。例えば、リスク値算出部512は、第1のマージンに、対応するモデル毎の幾何学的誤差又は機械的制約の方向性を与える。第1のマージンのサイズは、幾何学的誤差又は機械的制約に応じた方向性を有する。以下、当該算出方法について詳細に説明する。
図12は、天板モデル75の第1のマージンM11及び第2のマージンM12を示す図である。図12に示すように、天板モデル75の実物である治療用天板は、患者が載置されると患者の重みにより鉛直下方に撓む。従って治療用天板には撓みという幾何学的誤差が生じ、当該幾何学的誤差は鉛直下方に生じるという方向性を有している。幾何学的誤差の方向性を考慮し、リスク値算出部512は、第1のマージンM11の鉛直上方のサイズL111に比して鉛直下方のサイズL112が長くなるように第1のマージンM11を設定する。第1のマージンM11の鉛直下方のサイズL112を長くすることにより、鉛直上方のサイズL111と同一にした場合に比して、撓みによる干渉の危険性を正しくリスク値に反映させることができる。なお、第2のマージンM12のサイズは方向に応じて変化させなくてよい。すなわち、第2のマージンの鉛直上方のサイズL12と鉛直下方のサイズL12とは同一に設定される。なお、第2のマージンも第1のマージンと同様、鉛直下方のサイズを鉛直上方のサイズに比して長く設定してもよい。
図13は、照射ヘッドモデル63の第1のマージンM31及び第2のマージンM32を示す図である。図13に示すように、照射ヘッドモデル63の実物である照射ヘッドは、重心方向(すなわち鉛直下方)に垂れる。従って照射ヘッドには垂れという幾何学的誤差が生じ、当該幾何学的誤差は重心方向(鉛直下方)に生じるという方向性を有している。幾何学的誤差の方向性を考慮し、リスク値算出部512は、第1のマージンM31の鉛直上方のサイズL311に比して鉛直下方のサイズL312が長くなるように第1のマージンM31を設定する。第1のマージンM31の鉛直下方のサイズL312を長くすることにより、鉛直上方のサイズL311と同一にした場合に比して、垂れによる干渉の危険性を正しくリスク値に反映させることができる。なお、第2のマージンM32のサイズは方向に応じて変化させなくてよい。すなわち、第2のマージンの鉛直上方のサイズL32と鉛直下方のサイズL32とは同一に設定される。なお、第2のマージンM32も第1のマージンM31と同様、鉛直下方のサイズL312を鉛直上方のサイズL311に比して長く設定してもよい。
図14は、照射ヘッドモデル63の他の第1のマージンM41及び第2のマージンM42を示す図である。図14に示すように、照射ヘッドモデル63の実物である照射ヘッドは、最高地点(患者正面位置)を0°とした場合、-180°から+180°の範囲でしか回転することができない。照射ヘッドが-180°に位置している場合、-179°の方向へは回転ができるが-181°の方向へは機械的制約により回転できない。照射ヘッドが+180°に位置している場合、+179°の方向へは回転ができるが+181°の方向へは機械的制約により回転できない。この-180°又は+180°の位置は回転終端位置と呼ばれる。従って照射ヘッドには回転軸回りの回転に関して機械的制約が存在し、当該機械的制約は回転不能な方向に生じるという方向性を有している。機械的制約の方向性を考慮し、リスク値算出部512は、第1のマージンM41の回転不能方向のサイズL411に比して回転可能方向のサイズL412が長くなるように第1のマージンM41を設定する。第1のマージンM41の回転可能方向のサイズL412を長くすることにより、回転不能方向のサイズL411と同一にした場合に比して、回転に関する機械的制約による干渉の危険性を正しくリスク値に反映させることができる。なお、第2のマージンM42のサイズは方向に応じて変化させなくてよい。すなわち、第2のマージンの回転不能方向のサイズL42と回転可能方向のサイズL42とは同一に設定される。なお、第2のマージンM42も第1のマージンM41と同様、回転可能方向のサイズを回転不能方向のサイズに比して長く設定してもよい。
患者モデルの第1のマージンについても幾何学的誤差を考慮することが可能である。患者モデルの実物である患者は、治療用天板の天板面の長軸方向に関して位置ずれが生じやすいが、短軸方向に関しては位置ずれが生じにくい。このように患者には位置決めに関して幾何学的誤差が存在し、当該幾何学的誤差は天板面の長軸方向に関して生じ易いという方向性を有している。幾何学的誤差の方向性を考慮し、リスク値算出部512は、患者モデルに関する第1のマージンの天板面の長軸方向のサイズに比して短軸方向のサイズが長くなるように第1のマージンを設定する。第1のマージンの天板面の長軸方向のサイズを長くすることにより、短軸方向のサイズと同一にした場合に比して、天板における位置決め誤差による干渉の危険性を正しくリスク値に反映させることができる。なお、天板モデルに関する第2のマージンのサイズは方向に応じて変化させなくてよい。すなわち、第2のマージンの天板面の長軸方向のサイズと短軸方向のサイズとは同一に設定される。なお、第2のマージンも第1のマージンと同様、長軸方向のサイズを短軸方向のサイズに比して長く設定してもよい。
上記の放射線治療支援処理において患者モデルは、標準モデルから選択することとしたが、対象患者に関する実測データが用いられてもよい。患者モデルに当該実測データが用いられることにより、患者モデルと実際の患者との形状の相違を低減することができる。当該形状誤差は幾何学的誤差に分類される。
例えば、リスク値算出部512は、対象患者に関するCT画像やMRI画像等の画像データに基づいて対象患者に関する体表面の実測データを生成する。すなわち、リスク値算出部512は、画像データに画像処理を施して体表面データを抽出し、抽出された体表面データを患者モデルに設定する。
また、リスク値算出部512は、表面形状計測装置により収集された体表面データを患者モデルに設定してもよい。表面形状計測装置による計測原理は幾つかある。例えば、計測原理として光走査法がある。この場合、表面形状計測装置は、投光部、撮影部及び3次元座標同定部を有する。投光部は、撮像用天板等に載置された患者をレーザでライン状に走査する。撮影部は、レーザの投光に同期して患者上及びその周辺のレーザ光を画像として取り込む。3次元座標同定部は、投光部のレーザ投光源の位置と画像上のレーザ位置とから三次元座標を算出する。この操作によって患者表面形状の一断面が求められる。これをレーザの投光角度を変化させながら繰り返し同定することで、患者の体表面データを三次元的に求めることができる。
他の計測原理としては、エピポーラ幾何法がある。この場合、表面形状計測装置は、画像収集部と画像処理部とを有する。画像収集部は、2つのカメラを有する。画像収集部は、撮像用天板等に載置された患者を、観察角度の異なる2つのカメラで撮影し、観察角度の異なる2つの画像データを収集する。画像処理部は、プロセッサとメモリとを有する。画像処理部は、第1の観察角度に関する画像データの1つのピクセル(着目点)を設定し、当該着目点に対応する第2の観察角度に関する画像データ内の対応点を同定する。なお、着目点は、当該ピクセルを中心に含む小領域であってもよい。同定方法としては一般的に相関演算が使用される。対応点が同定されると、画像処理部は、第1の画像データに含まれる着目点と当該第1の画像データを収集した第1のカメラとを結ぶ画像化軌跡(レイ)と、第2の画像データに含まれる対応点と当該第2の画像データを収集した第2のカメラとを結ぶ画像化軌跡との交差点の3次元座標を、エピポーラ幾何の原理に基づき同定する。画像処理部は、全てのピクセルについて交差点の3次元座標を同定し、交差点の集合を患者の3次元の体表面のデータとして同定する。
計測原理として2つの実施例を説明したが、本実施形態に係る表面形状計測装置の計測原理はこれに限定されず、患者の体表を計測できるのであれば如何なる方法でもよい。
上記説明においては、リスク値算出部512により、照射位置における放射線治療装置4、治療用寝台及び患者の配置を模擬することとしていた。しかしながら、リスク値算出部512は、放射線治療装置4、治療用寝台及び患者各々について放射線の照射位置間の移動過程を模擬してもよい。具体的には、リスク値算出部512は、治療装置モデル、寝台モデル及び患者モデルを、第1の照射位置に対応する配置から第2の照射位置に対応する配置へ移動させる。当該移動の過程においてリスク値算出部512は、所定の時間的又は空間的間隔毎に、治療装置モデル、寝台モデル及び患者モデル間のリスク値を算出する。そして視覚情報生成部513は、リスク値に応じたリスク可視化情報を生成し、表示制御部514は、当該リスク可視化情報をディスプレイ53に表示する。これによりユーザは、移動過程においても干渉の危険性を判断することができる。
リスク値が所定値よりも高い場合、リスク値算出部512は、リスク値が低減するように複数のモデルの移動過程を変更する。当該所定値は、例えば、リスク値0%に設定される。リスク値が所定値よりも高い場合、リスク値算出部512は、例えば、複数のモデル各々の移動の順番を変更する。あるいは、リスク値算出部512は、リスク値が低減するように、一方のモデルを一時的に退避する。リスク値算出部512は、移動過程を、ユーザによる入力インタフェース54等を介した指示に従って変更してもよいし、自動的に変更してもよい。
図15は、モデルを一時的に退避する例を模式的に示す図である。図15の左上図と左下図とに示すように、照射ヘッドモデル63を第1の照射位置から第2の照射位置に移動させる場合を考える。直接的に照射ヘッドモデル63を第1の照射位置から第2の照射位置に移動した場合、初期位置PZ1に配置された患者モデル81又は天板モデル75に照射ヘッドモデル63が干渉するとする。この場合、リスク値算出部512は、まず、患者モデル81及び天板モデル75を初期位置PZ1から所定の退避位置PZ2まで退避し、その後、照射ヘッドモデル63を第1の照射位置から第2の照射位置に移動し、その後、患者モデル81及び天板モデル75を退避位置PZ2から初期位置PZ1に戻す。これにより、照射ヘッドモデル63と患者モデル81又は天板モデル75との干渉の危険性を低減させることができる。
(応用例)
ユーザは、治療計画に基づく放射線治療装置4、治療寝台及び患者の配置による干渉リスクを評価する。そして干渉する危険性が高いと判断した場合、干渉チェックツールにより干渉の危険性が低い配置を探索する。
この際、リスク値算出部512は、リスク管理表に従い干渉の危険性が低い配置を探索してもよい。具体的には、「リスク有り」と判定された場合、リスク値算出部512は、放射線治療装置4及び治療用寝台の可動軸各々について所定可動量毎にリスク値を算出する。次に視覚情報生成部513において演算回路51は、可動軸各々についてのリスク値の区分(リスクレベル)毎の可動量の範囲を示すリスク管理表を生成する。リスク管理表は、リスク可視化情報の一種である。リスク管理表を参照することにより、各可動軸について「注意レベル」又は「警告レベル」に属する可動量の範囲を知ることができる。以下、リスク管理表について詳細に説明する。
図16は、治療用寝台90の可動軸について説明するための図である。図16に示すように、天板95の長軸がY軸に規定され、短軸がX軸に規定され、Y軸及びX軸に直交する軸がZ軸に規定される。天板95は、X軸、Y軸及びZ軸に関して個別に移動可能に基台91又はフレーム93に支持されている。X軸に沿う移動は体軸移動と呼ばれ、Y軸に沿う移動は横移動と呼ばれ、Z軸に沿う移動は高さ移動と呼ばれる。また、天板95は、X軸回りに回転可能、Y軸回りに回転可能、Z軸回りに回転可能に基台91又はフレーム93に支持されている。X軸回りの回転はロールと呼ばれ、Y軸回りに回転はピッチと呼ばれ、Z軸回りの回転はヨーと呼ばれる。
図17は、放射線治療装置4の回転架台(ガントリ)の回転角度が0.0°のときのリスク管理表を示す図である。図18は、ガントリの回転角度が90.0°のときのリスク管理表を示す図である。図17及び図18に示すように、リスク管理表は、ガントリ設定に関する表と寝台設定に関する表とを有する。各表は「処方」、「注意レベル(-方向)」、「警告レベル(-方向)」、「注意レベル(+方向)」の項目を有する。+方向及び-方向は各可動軸に関する移動方向である。
図17の場合、ガントリの回転角度が0.0°であり、寝台は体軸方向以外ニュートラルポジションに位置している。体軸方向に関してのみアイソ・センタに腫瘍位置を一致させるため治療用天板が50cm移動されている。治療用天板が当該位置に配置されている場合、ガントリを+方向及び-方向に回転させても治療用天板とガントリとは干渉しない。この場合、ガントリ設定の角度についてリスク値は0%であるので、「注意レベル(-方向)」、「警告レベル(-方向)」及び「注意レベル(+方向)」が空欄に設定される。また、ガントリが0.0°に配置されている場合、治療用天板の全ての可動軸についてリスク値は0%であるので、「注意レベル(-方向)」、「警告レベル(-方向)」、「注意レベル(+方向)」が空欄に設定される。
図18の場合、ガントリの回転角度が90.0°であり、治療用天板は体軸方向以外ニュートラルポジションに位置している。体軸方向に関してのみアイソ・センタに腫瘍位置を一致させるため治療用天板が50cm移動されている。治療用天板が当該位置に配置されている場合、ガントリを+方向及び-方向に回転させても治療用天板とガントリとは干渉しない。この場合、ガントリ設定の角度についてリスク値は0%であるので、「注意レベル(-方向)」、「警告レベル(-方向)」及び「注意レベル(+方向)」が空欄に設定される。
また、ガントリが90.0°に配置されている状態において治療用天板を高さ移動、体軸移動、ピッチ回転、ロール回転しても治療用天板とガントリとは干渉しない。この場合、治療用天板の高さ移動、体軸移動、ピッチ、ロールについてリスク値は0%であるので、「注意レベル(-方向)」、「警告レベル(-方向)」及び「注意レベル(+方向)」が空欄に設定される。一方、治療用天板を横移動又はヨー回転した場合、干渉の危険性を有する。例えば、治療用天板を-10cm~-20cm横移動させた場合、リスクレベルは注意レベルであり、治療用天板を-30cm以上横移動させた場合、リスクレベルは警告レベルである。また、治療用天板を-5°~-7°ヨー回転させた場合、リスクレベルは注意レベルであり、治療用天板を-7°以上ヨー回転させた場合、リスクレベルは警告レベルである。一方、治療用天板を+方向に横移動させた場合や治療用天板を+方向にヨー回転させた場合、リスク値は0%である。
リスク管理表は、表示制御部514によりディスプレイ53に表示される。ユーザは、表示されたリスク管理表を観察することにより、干渉の危険性のある範囲を避けるように各装置の配置を設定することができる。当該配置のデータは放射線治療計画装置3に送信される。放射線治療計画装置3は、当該配置に基づいて治療計画を再度作成する。これにより、干渉の危険性の少ない治療計画を立案することができる。なお、管理表の生成機能及び表示機能は放射線治療計画装置3に実装されてもよい。あるいは放射線治療計画装置3と放射線治療支援装置5との間にインタラクティブなインタフェースを設け、放射線治療計画画面上にリスク管理表を表示してもよい。リスク管理表は放射線治療計画での入力値が放射線治療支援装置5に適宜送信され、その結果としてリスク管理表を放射線治療計画装置3に送ることで実現できる。
(変形例)
上記実施形態において放射線治療支援装置5と放射線治療計画装置3とは別体のコンピュータであるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、放射線治療支援装置5の演算回路51は、放射線治療計画装置3に設けられてもよい。これにより、一台のコンピュータで治療計画と干渉チェックとを行うことができる。これにより、メディカルスタッフ等のユーザが、治療計画作成の際に、放射線治療支援装置5と放射線治療計画装置3との間で移動する手間を省くことができる。
また、放射線治療支援装置5と放射線治療計画装置3とで一箇所に設けられた一台又は複数台のディスプレイを共有してもよい。この形態であっても、メディカルスタッフ等のユーザが、治療計画作成の際に、放射線治療支援装置5と放射線治療計画装置3との間で移動する手間を省くことができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、放射線治療装置、治療用寝台及び患者の要素間の干渉を手間無く正確に評価することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。