以下、図面を参照しながら本実施形態に係る放射線治療システム及び治療支援装置を説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放射線治療システム1の構成を示す図である。図1に示すように、放射線治療システム1は、治療計画用CT(Computed Tomography)装置2、第1の表面形状計測装置3、放射線治療装置4、第2の表面形状計測装置5、治療計画装置6、PACS(Picture Archiving and Communication System)システム7及び治療支援装置8を有する。治療計画用CT装置2、第1の表面形状計測装置3、放射線治療装置4、第2の表面形状計測装置5、治療計画装置6、PACSシステム7及び治療支援装置8は、ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
図2は、治療計画用CT装置2と第1の表面形状計測装置3との設置環境を示す図である。図2に示すように、治療計画用CT装置2と第1の表面形状計測装置3とは計画用CT室に設置される。治療計画用CT装置2は、撮像用架台21と撮像用寝台22とを有する。また、治療計画用CT装置2は、計画用CT室に隣接する操作室に設置されたコンソール(図示せず)を有する。撮像用架台21は、患者が挿入される開口211を有し、架台21の内部には、X線管(図示せず)とX線検出器(図示せず)とを回転軸Z1回りに回転可能に支持する支持機構(図示せず)が搭載されている。撮像用寝台22は、患者が載置される撮像用天板23と、撮像用天板23を移動自在に支持する基台24とを有する。撮像用天板23は、後述する治療用天板44と同様に平面形状を有している。患者の位置決め精度の向上のため、撮像用天板23は、治療用天板44と同一形状を有していると良い。
CT撮像時において撮像用架台21は、X線管とX線検出器とを高速で回転させながら、X線管によるX線の照射とX線検出器によるX線の検出とを行うことにより、患者によるX線の減弱を示す生データをX線検出器により収集する。生データは、図示しないコンソールに伝送される。コンソールは、生データに基づいて3次元のCT画像データを再構成する。コンソールは、CT画像データとして、X線減弱係数に応じたCT値の空間分布を示す画像データを生成しても良いし、CT値からX線減弱係数を算出し、X線減弱係数の空間分布を示す画像データを生成しても良い。CT画像データは、治療計画装置6、PACSシステム7及び治療支援装置8に送信される。
なお、放射線治療システム1は、治療計画用CT装置2を有するとしているが、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、放射線治療システム1は、患者の治療計画用の3次元医用画像データを生成できる医用画像診断装置であれば、治療計画用CT装置2の代わりに、コーンビームCT装置や磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置等を有しても良い。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、放射線治療システム1は、患者の治療計画用の3次元医用画像データを生成できる医用画像診断装置として治療計画用CT装置2を有するものとする。
第1の表面形状計測装置3は、計画用CT室の壁面に設けられる。例えば、第1の表面形状計測装置3は、天井に吊り下げられる。第1の表面形状計測装置3は、撮像用天板23に載置された患者の体表を計測し、患者の体表に関する3次元の患者体表データを収集する。
図3は、第1の表面形状計測装置3により収集される3次元の患者体表データD1の一例を示す図である。図3に示すように、患者体表データD1は、患者Pの体表に関する患者体表領域RPと撮像用天板23の表面に関する天板表面領域RTとを有する。患者体表データD1は、所定の計測原理に従い計測した患者の体表の形状、位置及び大きさ等の形態を記録したデータである。患者体表データD1は、XYZ直交座標系により規定される。Y軸は鉛直軸に規定され、Z軸は撮像用架台21の中心軸R1に規定され、X軸はY軸及びZ軸に直交する軸に規定される。以下、第1の表面形状計測装置3により収集された、治療計画用CT装置2の撮像用天板に載置された患者の体表に関する3次元の体表データを計画時体表データと呼ぶことにする。計画時体表データは、治療支援装置8に送信される。なお、図3に示す計画時体表データは、患者全身に関する患者体表領域RPを含むとしているが、患者の一部体表に関する患者体表領域RPのみが含まれても良い。すなわち、第1の表面形状計測装置3は、患者の一部の体表のみを光走査しても良い。
第1の表面形状計測装置3による計測原理は幾つかある。例えば、計測原理として光走査法がある。この場合、第1の表面形状計測装置3は、投光部、撮影部及び3次元座標同定部を有する。投光部は、撮像用天板23に載置された患者をレーザでライン状に走査する。撮影部は、レーザの投光に同期して患者上及びその周辺のレーザ光を画像として取り込む。3次元座標同定部は、投光部のレーザ投光源の位置と画像上のレーザ位置とから三次元座標を算出する。この操作によって患者表面形状の一断面が求められる。これをレーザの投光角度を変化させながら繰り返し同定することで、患者表面形状を三次元的に求めることができる。
他の計測原理としては、エピポーラ幾何法がある。この場合、第1の表面形状計測装置3は、画像収集部と画像処理部とを有する。画像収集部は、2つのカメラを有する。画像収集部は、撮像用天板23に載置された患者を、観察角度の異なる2つのカメラで撮影し、観察角度の異なる2つの画像データを収集する。画像処理部は、プロセッサとメモリとを有する。画像処理部は、第1の観察角度に関する画像データの1つのピクセル(着目点)を設定し、当該着目点に対応する第2の観察角度に関する画像データ内の対応点を同定する。なお、着目点は、当該ピクセルを中心に含む小領域であっても良い。同定方法としては一般的に相関演算が使用される。対応点が同定されると、画像処理部は、第1の画像データに含まれる着目点と当該第1の画像データを収集した第1のカメラとを結ぶ画像化軌跡(レイ)と、第2の画像データに含まれる対応点と当該第2の画像データを収集した第2のカメラとを結ぶ画像化軌跡との交差点の3次元座標を、エピポーラ幾何の原理に基づき同定する。画像処理部は、全てのピクセルについて交差点の3次元座標を同定し、交差点の集合を患者の3次元の患者体表データとして同定する。
計測原理として2つの実施例を説明したが、本実施形態に係る第1の表面形状計測装置3の計測原理はこれに限定されず、患者の体表を計測できるのであれば如何なる方法でも良い。以下の説明を具体的に行うため、第1の表面形状計測装置3の計測原理は光走査法であるとする。
図4は、放射線治療装置4と第2の表面形状計測装置5との設置環境を示す図である。図4に示すように、放射線治療装置4と第2の表面形状計測装置5とは治療室に設置される。放射線治療装置4は、治療用架台41と治療用寝台42とを有する。また、放射線治療装置4は、治療室に隣接する操作室に設置されたコンソール(図示せず)を有する。治療用架台41は、治療室の壁面に設置された架台本体411を有する。架台本体411は、照射ヘッド部412を回転軸Z2回りに回転可能に支持する。治療用寝台42は、患者が載置される治療用天板44と、治療用天板44を移動自在に支持する基台45とを有する。治療用天板44は、撮像用天板23と同様に平面形状を有している。
第2の表面形状計測装置5は、治療室の壁面に設けられる。例えば、第2の表面形状計測装置5は、天井に吊り下げられる。第2の表面形状計測装置5は、治療用天板44に載置された患者の体表を計測し、患者の体表に関する3次元の患者体表データを収集する。以下、第2の表面形状計測装置5により収集された、放射線治療装置4の治療用天板に載置された患者の体表に関する3次元の患者体表データを治療時体表データと呼ぶことにする。第2の表面形状計測装置5は、第1の表面形状計測装置3と同様の原理により、治療時体表データを収集する。治療時体表データは、治療支援装置8に送信される。
図5は、放射線治療装置4の構成を示す図である。図5に示すように、放射線治療装置4は、治療用架台41、治療用寝台42及びコンソール46を有する。
治療用架台41は、架台本体411と照射ヘッド部412とを有している。架台本体411は、床面に設置され、照射ヘッド部412を回転軸Z2回りに回転可能に支持している。架台本体411には照射ヘッド部412が取り付けられている。照射ヘッド部412には照射器413が内蔵されている。照射器413は、電子銃等により発生された電子等を加速する加速管(図示せず)と、加速管により加速された電子が衝突する金属ターゲット(図示せず)とを含む。金属ターゲットに電子が衝突することにより、放射線であるX線が発生する。照射器413は、コンソール46の照射制御回路461からの制御信号の供給を受けて放射線を照射する。照射ヘッド部412のビーム軸と回転軸Z2とが交わる点は、空間的に不動であり、アイソ・センタと呼ばれている。
照射ヘッド部412には図示しないマルチリーフ・コリメータ(MLC:Multi Leaf Collimator)が設けられている。マルチリーフ・コリメータは、X線遮蔽物質により形成された複数のリーフを個別に移動可能に支持している。複数のリーフを移動させることにより任意の形状の照射野を形成することが可能である。
架台本体411には架台駆動装置994が内蔵されている。架台駆動装置994は、コンソール46の架台制御回路462からの制御信号の供給を受けて照射ヘッド部412を回転軸Z2回りに回転する。
治療用寝台42には寝台駆動装置451が内蔵されている。寝台駆動装置451は、コンソール46の寝台制御回路463からの制御信号の供給を受けて治療用天板44を移動する。
図5に示すように、コンソール46は、照射制御回路461、架台制御回路462、寝台制御回路463、演算回路464、通信回路465、表示回路466、入力回路467及び記憶回路468を有する。
照射制御回路461は、治療計画装置6から送信された治療計画に基づく照射条件に従い放射線を照射するために照射器413を制御する。なお、照射条件は、入力回路467を介して、放射線治療従事者等のユーザにより入力されても良い。照射制御回路461は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。
架台制御回路462は、治療計画装置6から送信された治療計画に基づく照射角度から放射線を照射するために架台駆動装置994を制御する。照射角度は、入力回路467を介してユーザにより入力されても良い。架台制御回路462は、ハードウェア資源として、CPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。
寝台制御回路463は、治療用天板44を任意の位置に移動するために制御信号を寝台駆動装置451に送信する。治療用天板44の位置は、入力回路467を介してユーザにより入力されても良い。また、寝台制御回路463は、患者の治療部位の位置をアイソ・センタに一致させるために寝台駆動装置451を制御する。寝台制御回路463は、ハードウェア資源として、CPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。
演算回路464は、放射線治療装置4の中枢として機能する。演算回路464は、記憶回路468等に記憶された本実施形態に係る動作プログラムを実行し、当該動作プログラムに従い各部を制御することにより、本実施形態に係る放射線治療を実行する。演算回路464は、ハードウェア資源として、CPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。
通信回路465は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム1を構成する治療計画装置6やPACSシステム7、治療支援装置8との間でデータ通信を行う。
表示回路466は、種々の情報を表示する。具体的には、表示回路466は、表示インタフェースと表示機器とを有する。表示インタフェースは、表示対象を表すデータを映像信号に変換する。映像信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表す映像信号を表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。表示機器は、架台本体411に設けられても良いし、治療室の壁面に設けられても良い。また、表示機器は、映写機でも良い。
入力回路467は、具体的には、入力機器と入力インタフェースとを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェースは、入力機器からの出力信号をバスを介して演算回路464に供給する。
記憶回路468は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。例えば、記憶回路468は、放射線治療計画等を記憶する。ハードウェアとして記憶回路468は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
図1に示すように、治療計画装置6は、治療計画用CT装置2から送信されたCT画像に基づいて治療計画を立案するコンピュータである。このようにして作成された放射線治療計画は放射線治療装置4や治療支援装置8に送られる。
PACSシステム7は、治療計画用CT装置2により生成されたCT画像データ等の医用画像データを管理する画像サーバを含む。
治療支援装置8は、放射線治療装置4による放射線治療を支援するためのコンピュータである。図6は、第1実施形態に係る治療支援装置8の構成を示す図である。図6に示すように、治療支援装置8は、演算回路81、通信回路83、表示回路85、入力回路87及び記憶回路89を有する。演算回路81、通信回路83、表示回路85、入力回路87及び記憶回路89は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
演算回路81は、ハードウェア資源として、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。演算回路81は、放射線治療支援に関するプログラム(以下、放射線治療支援プログラムと呼ぶ)を実行して、放射線治療装置4による放射線治療の支援を実行する。第1実施形態に係る演算回路81は、放射線治療支援の際、位置比較機能811、統合機能812及びレンダリング機能813を実行する。
位置比較機能811において演算回路81は、第1の表面形状計測装置3により収集された計画時体表データと第2の表面形状計測装置5により収集された治療時体表データとの位置を比較する。
統合機能812において演算回路81は、第1の表面形状計測装置3により収集された計画時体表データと、CT画像データ及びCT画像データに含まれる治療部位データの少なくとも一方との統合データを生成する。統合データは、患者の放射線治療における位置決めに用いられる。
レンダリング機能813において演算回路81は、3次元のCT画像データや計画時統合データ、計画時体表データ、治療時体表データにボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画素値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示用の2次元画像を生成する。
通信回路83は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム1を構成する治療計画用CT装置2、第1の表面形状計測装置3、放射線治療装置4、第2の表面形状計測装置5、治療計画装置6及びPACSシステム7との間でデータ通信を行う。
表示回路85は、種々の情報を表示する。具体的には、表示回路85は、表示インタフェースと表示機器とを有する。表示インタフェースは、表示対象を表すデータを映像信号に変換する。表示信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表す映像信号を表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力回路87は、具体的には、入力機器と入力インタフェースとを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェースは、入力機器からの出力信号をバスを介して演算回路81に供給する。
記憶回路89は、種々の情報を記憶するHDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路89は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
なお、放射線治療システム1は、一台の治療支援装置8を有するものとしている。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、計画用CT室に隣接する操作室と治療室に隣接する操作室との各々に設けられても良い。なお、以下の説明においては、放射線治療システム1は、治療室に隣接する操作室に設けられた一台の治療支援装置8を有するものとする。
次に、第1実施形態に係る放射線治療システム1の動作例について説明する。図7は、第1実施形態に係る放射線治療システム1の動作の典型的な流れを示す図である。図7に示すように、放射線治療システム1の動作は、計画段階と治療段階とに区分される。計画段階の処理はステップSA1-SA4であり、治療段階の処理はステップSA5-SA8である。計画段階は、放射線治療に先立ち治療対象の患者に関する放射線治療計画を策定する段階である。治療段階は、放射線治療計画に従い放射線治療を行う段階である。計画段階と治療段階とは、典型的には、異なる日に行われる。放射線治療は複数日に亘り行われるのが通常である。治療段階の処理は放射線治療を行う日毎に繰り返し行われる。
計画段階においては、まず、治療計画用CT装置2によるステップSA1と第1の表面形状計測装置3によりステップSA2とが並行して又は順番に行われる。ステップSA1において治療計画用CT装置2は、撮像用天板23に載置された患者にCT撮像を実行して当該患者のCT画像データを収集する。ステップSA2において第1の表面形状計測装置3は、治療計画用CT装置2の撮像用天板23に載置された患者の計画時体表データを収集する。
ステップSA1及びSA2の詳細な処理について説明する。まず、放射線治療従事者は、計画CT室に入室した患者を、治療計画用CT装置2の撮像用天板23上に患者を寝かせ、放射線治療時と同様に患者に固定具を設置する。固定具は、例えば、患者と撮像用天板23との間に設置され、患者の体格に応じて整形されたものでも良いし、また患者表面を上から覆い、患者の動きを防止するものでも良い。特に頭部用の固定具は、網目状の部材で形成されており、患者頭部を覆った状態でも呼吸が可能に形成されている。
撮像用天板23が初期位置に配置されている場合において第1の表面形状計測装置3は、撮像用天板23に載置された患者を光走査して3次元の計画時体表データを収集する。初期位置とは、すなわち、撮像用天板23を撮像用架台21の開口211内に挿入するための移動開始前の撮像用天板23の位置である。収集された計画時体表データは、治療支援装置8に送信される。次に、計画用CT装置2は、患者が載置された撮像用天板23を撮像用架台21の開口211内に挿入し、CT撮像を実行してCT画像データを収集する。CT画像データは、治療計画用CT装置2から治療計画装置6及びPACSシステム7に送信される。
CT撮像完了後、計画用CT装置2は、撮像用天板23を初期位置に戻す。第1の表面形状計測装置3は、初期位置に配置された撮像用天板23に載置された患者を再び光走査して3次元の計画時体表データを収集する。収集された計画時体表データは、治療支援装置8に送信される。
治療支援装置8の演算回路81は、位置比較機能811を実行する。位置比較機能811において演算回路81は、最初の計画時体表データの体表領域と最後の計画時体表データの体表領域との位置ずれ量を算出し、位置ずれ量が予め決められた許容範囲内か否かを判定する。位置ずれ量が許容範囲内にあると判定された場合、最初の計画時体表データと最後の計画時体表データとの何れか一方を、今後の処理に用いる計画時体表データとして選択する。許容範囲外の場合、演算回路81は、CT画像データから同定された患者体表領域と最初の計画時体表データの患者体表領域との位置ずれ量を算出し、CT画像データに含まれる患者体表領域と最後の計画時体表データの患者体表領域との位置ずれ量を算出し、位置ずれ量が少ない計画時体表データを、今後の処理に用いる計画時体表データとして選択する。
ステップSA1及びSA2が行われると治療計画装置6は、ステップSA1において収集されたCT画像データに基づいて放射線治療計画を作成する(ステップSA3)。具体的には、ステップSA3において治療計画装置6は、治療計画用CT装置2から直接的に又はPACSシステム7を介してCT画像データを受信する。治療計画装置6は、CT画像データに基づいて放射線治療計画を作成する。
放射線治療計画の作成方法としては、フォーワード・プランニング(Forward Planning)とインバース・プランニング(Inverse Planning)の2種類がある。フォーワード・プランニングは、放射線治療の照射方向数や各照射角度、各照射の放射線強度、各照射のコリメータ開度、ウェッジフィルター等の放射線治療条件を詳細に設定し、それらの条件で最終的に得られる放射線分布を見て、放射線治療条件を評価する。放射線分布を変更する時は、放射線治療条件の一部あるいは全部を変更して再度放射線分布を求める。このようにフォーワード・プランニングにおいては、放射線治療条件を変えながら、少しずつ放射線分布を変化させ、所望の放射線分布が実現できるまで何度も繰り返し放射線条件が変更される。インバース・プランニングは、腫瘍領域及び適切なマージンを設定し、その領域に照射する放射線量及び許容範囲を設定する。さらに危険臓器などのリスク領域をCT画像データから抽出し、リスク領域に対する放射線量を、所定レベル以上の放射線量にならない安全レベルに設定する。放射線治療装置4は、この放射線分布に対する要求を満足する放射線治療計画を、放射線治療条件を変更しながら逐次的に立案する。放射線治療計画と腫瘍領域の位置とは治療支援装置8に送信される。
ステップSA3が行われると治療支援装置8の演算回路81は、統合機能812を実行する(ステップSA4)。ステップSA4において演算回路81は、CT画像データと腫瘍領域データと計画時体表データとに基づいて計画時統合データを生成する。
統合のために第1の表面形状計測装置3及び治療計画用CT装置2の個別の三次元座標系をレジストレーションする作業が必要になる。これは専用のキャリブレーションファントムを用いて行われる。キャリブレーションファントムは、表面に凹凸を伴う複数のマーカを有している。マーカの個数は、3以上である。第1の表面形状計測装置3は、患者と同様に、キャリブレーションファントムを光走査してキャリブレーションファントムに関する表面形状データを収集する。治療計画用CT装置2は、当該キャリブレーションファントムをCT撮像してCT画像データを収集する。キャリブレーションファントムに関する表面形状データとCT画像データとは、治療計画用CT装置2から治療支援装置8に送信される。
治療支援装置8の演算回路81は、キャリブレーションファントムに関する表面形状データとCT画像データとの各々についてマーカを画像処理により同定し、両マーカの三次元座標系を一致させるための補正パラメータを算出する。演算回路81は、補正パラメータに基づいて患者に関するCT画像データと計画時体表データとを同一3次元座標系で統合して統合データを生成する。また、演算回路81は、患者に関するCT画像データから腫瘍領域を抽出し、抽出された腫瘍領域のCT画像データにおける位置を同定する。演算回路81は、統合データに腫瘍領域の位置を示すマークを、補正パラメータに基づいて位置整合して付す。以下、患者に関するCT画像データと計画時体表データと腫瘍位置との統合データを計画時統合データと呼ぶことにする。計画時統合データは、放射線治療装置4やその他の装置に転送される。以上により、計画段階における処理が終了する。
図8は、ステップSA4において生成される計画時統合データD2の一例を示す図である。図9は、図8の9-9’断面を示す図である。図8及び図9に示すように、計画時統合データD2は、計画時体表データに由来する患者体表領域RP及び天板表面領域RTと、CT画像データICと、腫瘍位置RCとを有する。腫瘍位置RCは、CT画像データICを用いた治療計画時に指定される。
上記の通り、計画時統合データは、計画段階におけるCT撮像時の患者の体表に関する計画時体表データとCT画像データと腫瘍位置とを空間的に統合したデータセットである。本実施形態に係る放射線治療システム1は、この計画時統合データを利用することにより、治療時における腫瘍位置をアイソ・センタに容易且つ正確に合わせることができる。このため、計画段階において従来必要であった患者に対する腫瘍位置のマーキングは、本実施形態においては不要である。
例えば、計画時統合データは、治療段階において以下の様に利用される。治療段階において第2の表面形状計測装置5は、放射線治療装置4の治療用天板44に載置された患者に関する治療時体表データを収集する(ステップSA5)。具体的には、まず、放射線治療従事者は、治療室に入室した患者を治療用天板44に患者を寝かせ、計画段階におけるCT撮像時と同様に患者に固定具を設置する。治療用天板44が初期位置に配置されている段階において第2の表面形状計測装置5は、患者を光走査して三次元の治療時体表データを収集する。初期位置は、治療用天板44を治療用架台41のアイソ・センタへの移動を開始する前の治療用天板の位置である。治療時体表データは、計画時体表データと同様、治療用天板44に載置された患者の体表に関する患者体表領域と、治療用天板44の表面に関する天板表面領域とを有している。治療時体表データは、治療支援装置8に送信される。なお、ステップSA5以降、第2の表面形状計測装置5は、治療用天板44に載置された患者を繰り返し光走査して治療時体表データを繰り返し収集しているものとする。
ステップSA5が行われると治療支援装置の演算回路81は、位置比較機能811を実行する(ステップSA6)。ステップSA6において演算回路81は、計画時統合データに含まれる計画時体表データと第2の表面形状計測装置5により収集された治療時体表データとの位置比較を行い、現在(治療段階)における患者の腫瘍位置を推定する。
以下、位置比較及び腫瘍位置推定の具体例を説明する。
図10は、ステップSA6において治療支援装置8の演算回路81により実行される位置比較及び腫瘍位置推定の処理の流れを模式的に示す図である。なお、図10においては、説明の明確のため、患者体表データD2、D3及びD4を立体的ではなく平面的に示している。図10に示すように、まず演算回路81は、計画時統合データD2と治療時体表データD3とを読み出す。計画時統合データD2は、少なくとも患者体表領域RP2と腫瘍位置RC2とを有している。治療時体表データD3は、患者体表領域RP3を有している。患者体表領域RP3には腫瘍位置が付されていない。
演算回路81は、計画時統合データD2の患者体表領域RP2と治療時体表データD3の患者体表領域RP3との位置比較を行い、患者体表領域RP2と患者体表領域RP3との位置ずれ量を算出する(ステップSA61)。位置ずれ量としては、患者体表領域RP2の基準点と患者体表領域RP3の対応点との差分により規定される。典型的には、撮像用天板23又は治療用天板44が同一高さに位置しているという条件のもとでの、撮像用天板23又は治療用天板44の天板表面内での患者体表領域RP2の基準点と患者体表領域RP3の対応点との差分が位置ずれ量に規定される。基準点と対応点とは複数箇所に亘り設定される。なお、計画時統合データD2の患者体表領域RP2と治療時体表データD3の患者体表領域RP3とで位置比較を行う際、全領域を比較することが望ましくない場合がある。例えば、肝臓の腫瘍を治療する際、計画用CT撮像時と放射線治療時とで首や肩、股関節の角度がずれていた場合、これらを統合的に合致させることにより胴体部のずれを生じてしまう。このような問題を解決するため、演算回路81は、患者体表領域RP2と患者体表領域RP3との各々から頭部、胴体、手、足をおおまかに認識し、腫瘍が含まれる部位のみを使用して位置比較を行う。このように腫瘍が含まれる部位に限定して位置比較を行うことにより、胴体部のずれを生じることがなくなるので、位置比較の精度が向上する。
次に演算回路81は、図10に示すように、位置ずれ量に従い計画時統合データD2を画像変換して当該計画時統合データD2に含まれる患者体表領域RP2の位置を、治療時体表データD3に含まれる患者体表領域RP3の位置に一致させる(ステップSA62)。画像変換としては、移動、回転、拡大及び縮小等の線形変換でも良いし、非線形変換でも良い。位置比較機能811による画像変形は、典型的には、移動又は回転等の線形変換であるとする。すなわち、位置比較機能811による画像変形においては患者体表領域RP2及び患者体表領域RP3の形状は変形されないものとする。
次に演算回路81は、図10に示すように、画像変換後の計画時統合データD4に基づいて現在(治療時体表データの収集時)における患者の腫瘍位置を推定する(ステップSA63)。具体的には、演算回路81は、計画時統合データD4に含まれる腫瘍位置RC4を同定する。そして演算回路81は、アキシャル断面AX4のCT画像データIC4に含まれる腫瘍領域RT4の位置の3次元座標を特定する。特定された腫瘍領域RC4の位置は、第2の表面形状計測装置5により治療時体表データが収集された時点における患者の腫瘍位置であると推定される。腫瘍位置の3次元座標のデータは、放射線治療装置4に送信される。
ステップSA6が行われると放射線治療装置4の寝台制御回路463は、ステップSA6において特定された腫瘍位置が治療用架台41のアイソ・センタに一致するように治療用天板44を移動する(ステップSA7)。寝台制御回路463は、まず、腫瘍位置が治療用架台のアイソ・センタに一致するような治療用寝台42の制御パラメータを決定する。具体的には、寝台制御回路463は、腫瘍位置の3次元座標から治療用架台41のアイソ・センタの3次元座標への距離及び方向を算出し、算出された距離及び方向に応じた制御パラメータを決定し、決定された制御パラメータに応じた駆動信号を寝台駆動装置451に供給する。寝台駆動装置451は、供給された駆動信号を受けて治療用天板44を移動させる。これにより、ステップSA6において特定された腫瘍位置が治療用架台41のアイソ・センタに一致することとなる。すなわち、治療用天板44に載置された患者の位置を手動的に調節することなく、患者の腫瘍位置をアイソ・センタに一致させることができる。このように、本実施形態によれば、計画時統合データを利用することによって、マーカやレーザ照準器等を用いることなく、正確且つ簡便に患者の第一の位置合わせを行うことができる。
ステップSA7が行われると放射線治療装置4は、第二の位置合わせを行う(ステップSA8)。第二の位置合わせは、上記第一の位置合わせを補完する役割を有し、第一の位置合わせに比してより精細な位置合わせである。第二の位置合わせにおいて放射線治療装置4の演算回路464は、例えば放射線治療装置4に付属する2方向のX線画像撮像系で撮像したX線画像と、治療計画用CT画像をあたかも2方向のX線画像撮像系で撮像したかのように投影したDRR(Digitally Reconstructed Radiography)画像を生成する。演算回路464は、DRR画像に含まれる腫瘍領域及び解剖学的特徴点とX線画像に含まれる対応点(同一の腫瘍領域及び解剖学的特徴点)とを比較し、位置ずれ量を算出する。
そして寝台制御回路463は、位置ずれ量に応じて治療用天板44を移動する。これにより、治療計画用CT画像で特定された腫瘍領域をアイソ・センタに精密に一致させることができる。なお、治療計画用CT画像で特定された腫瘍領域がアイソ・センタに一致するように患者自らが移動、あるいは放射線治療従事者により患者を移動しても良い。
第二の位置合わせの他の方法として、演算回路464は、放射線治療装置4に付属するコーンビームCT撮像系で撮像したコーンビームCT画像に含まれる腫瘍領域及び解剖学的特徴点と治療計画用CT画像に含まれる対応点(同一の腫瘍領域及び解剖学的特徴点)とを比較し、位置ずれ量を算出しても良い。寝台制御回路463は、位置ずれ量に応じて治療用天板44を移動する。これにより、治療計画用CT画像で特定された腫瘍領域をアイソ・センタに精密に一致させることが可能である。この他の方法においても、治療計画用CT画像で特定された腫瘍領域がアイソ・センタに一致するように患者自らが移動、あるいは放射線治療従事者により患者を移動しても良い。第二の位置合わせにより、正確な位置合わせが行われる。
ステップSA8が行われると放射線治療装置4は、患者の腫瘍に放射線を照射する(ステップSA9)。例えば、患者正面方向と患者左側面からX線を照射する計画の場合、架台制御回路462は、患者正面に照射ヘッド部412を配置する。次に照射制御回路461は、X線の照射野形状を腫瘍形状に一致させるために、マルチリーフ・コリメータの開口を調整する。なお、マルチリーフ・コリメータの開口の調整の他、X線の低エネルギー成分を除去するためのウェッジフィルター等を挿入しても良い。照射制御回路461は、更にX線強度(管電圧や管電流等)を適切なレベルに設定した上でX線を照射する。
1方向からの照射が終了すると架台制御回路462は、次の角度、この場合は、患者左側面に照射ヘッド部412を回転する。照射制御回路461は、X線の照射野形状を腫瘍形状に一致させるために再度マルチリーフ・コリメータの開口を調整する。また、必要によってはX線の低エネルギー成分を除去するためのウェッジフィルターなどを挿入する。そして照射制御回路461は、X線強度を適切なレベルに設定した上でX線を照射する。これで一回の治療が終了する。治療は数回に亘り行われる。回数は5~30回が一般的である。
なお、放射線治療では非常に強力なX線を照射するため、腫瘍位置がX線照射野から逸れていると正常組織に多大な悪影響を及ぼしてしまう。そこで腫瘍がアイソ・センタ位置にあるかどうかを第二の位置合わせで確認する。確認方法としては2通りある。一つは2方向からのX線撮影画像を使用する方法であり、もう一つはCBCT(コーンビームCT)を使用する方法である。
前者では先ず演算回路464は、治療計画用のCT画像に基づいてDRR画像を生成し、DRR画像とX線撮影画像とを比較してずれを補正する。DRR画像はCT画像で撮像した患者をあたかもX線撮影系で撮影したように、CT画像とX線光学系とを用いて生成された疑似X線画像である。後者では、CBCT装置によりCBCT撮像を行いCBCT画像を生成する。CBCT装置は単体の装置でも良いし、放射線治療装置4に組み込まれても良い。演算回路464は、CBCT画像と治療計画用のCT画像とを比較して位置ずれを補正する。前者は主に骨や分かり易い臓器を元に位置合わせするしかないため、骨と位置合わせすると位置ずれすることが多い。また分かり易い臓器を元に位置合わせする場合は、その臓器に腫瘍が含まれている場合あるいは近接している場合は良いが、離れていると位置ずれが起こり易い。それに対し、CBCTでは臓器形状が明確に描出できるため、位置ずれが起こり難いと言うメリットがある。但しCBCT撮像には30秒から1分かかるため、CBCT画像にはモーションアーチファクトが含まれることがあり、モーションアーチファクトによって臓器形状が不鮮明になったり、あるいはずれてしまうことがある。
このように、放射線治療が行われると、第1実施形態に係る放射線治療システム1の典型的な動作が終了する。
ここで既存のルーチンの位置合わせについて簡単に説明する。既存のルーチンにおいては、治療計画段階において、患者体表上にCT撮像時の基準点を同定し、その基準点から腫瘍までの位置ずれを計測して、その位置ずれを元に体表上に腫瘍位置を示すマーカを正面及び側面から描く。治療段階において、当該マーカを治療室に設置されたレーザ照準器に合わせることにより、腫瘍位置がアイソ・センタに一致するように粗い位置合わせを行う。この体表に描いたマーカは、患者がお風呂に入った時に薄くなったり、消えたりするため、既存ルーチンでは何度か書き直す必要がある。この作業は、誤差を生む要因になる上、面倒な作業である。
しかし、第1実施形態によれば、治療支援装置8の演算回路81は、治療時体表データと計画時統合データに含まれる計画時体表データとの間の位置比較を行い、位置比較結果と計画時統合データとに基づき、治療時体表データの収集時(すなわち、放射線治療段階)における患者の腫瘍位置を推定する。そして放射線治療装置4の寝台制御回路463は、推定された腫瘍位置をアイソ・センタに一致させるために治療用天板44を移動させる。
第1実施形態によれば、既存ルーチンにおいて必要であった、体表にマーカを描く作業は不要になる。これに伴い治療室にレーザ照準器を設ける必要もない。よって第1実施形態によれば、既存ルーチンに比して簡便に放射線治療時の患者の位置合わせを行うことができる。また、第1実施形態によれば、照準器等による人手を介した位置合わせとは異なり、演算回路81による計画時体表データと治療時体表データとの位置比較に基づくので、既存ルーチンに比して正確に放射線治療時の患者の第一の位置合わせを行うことができる。また、第1実施形態によれば、計画段階において一度だけ計画時体表データを収集することにより、複数日に亘る放射線治療において、日毎に治療時体表データを収集し、当該治療時体表データと計画時体表データとの位置比較を行う。位置合わせの基準である計画時体表データはマーカのように不正確なものではないので、複数日に亘る放射線治療においても位置合わせの再現性を高めることができる。
なお、上記実施形態においては、計画時体表データの患者体表領域と治療時体表データの患者体表領域とを一致させるために計画時体表データを含む計画時統合データを画像変換するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、放射線治療装置4の寝台制御回路463は、計画時体表データの患者体表領域とリアルタイムで収集される治療時体表データの患者体表領域とが一致するように、治療用天板44を6軸(X、Y、Z、θx、θy、θz)について移動及び回転させて一致させても良い。ここでθx、θy、θzはそれぞれX、Y、Z軸周りの回転を示す。これにより、実際に治療用天板44に載置されている患者の体表の位置を計画時の患者の体表の位置に合わせることができる。その後、現在の治療用天板44の位置とアイソ・センタとのずれ、更に治療用天板44の基準点とCT基準点とのずれ、CT基準点と腫瘍位置とのずれを総合的に補正するように治療用天板44を移動することで腫瘍位置とアイソ・センタとを一致させることができる。
また、上記実施形態において計画時統合データは、計画時体表データ、医用画像データ及び腫瘍領域を含むとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、計画時統合データは、計画時体表データと医用画像データとの統合データであっても良いし、計画時体表データと腫瘍領域データとの統合データであっても良い。
例えば、MRの拡散強調画像データなど、腫瘍領域を認識可能に含む医用画像データがある。この場合、計画時統合データは、計画時体表データと拡散強調画像データとの統合データでも良い。拡散強調画像データに画像処理を施し腫瘍領域データを認識又は特定することにより、腫瘍領域データを生成することが可能である。
上記実施例においては、寝台制御回路463により位置ずれ量に基づき治療用天板33を自動的に移動することにより、自動的に腫瘍位置がアイソ・センタに一致されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、計画時体表データの体表領域と治療時体表データの体表領域との位置ずれ量は、治療支援装置8の表示回路85や放射線治療装置4の表示回路466に表示されても良い。例えば、位置ずれ量は、計画時体表データの体表領域と治療時体表データの体表領域との間の距離を示す数値として表示される。また、位置ずれ量は、位置ずれの方向を示す文字や図形として表示されても良い。あるいは、位置ずれ量は、当該数値と当該方向との両方として表示されても良い。
表示回路85や表示回路466は、例えば、治療室等に設けられたディスプレイである。これにより、ユーザは、目視により位置ずれ量を確認することができる。位置ずれ量を把握しながらユーザは、入力回路467を介して治療用天板33の移動指示を行う。寝台制御回路463は、ユーザによる入力回路467を介した移動指示に従い治療用天板33を移動することで、腫瘍位置をアイソ・センタに一致させることができる。
この際、位置ずれ量は、治療室に設けられたディスプレイに限定されない。例えば、位置ずれ量は、表示回路85や表示回路466として、映写機でも良い。映写機は、位置ずれ量を治療用天板33に載置された患者に投影する。これにより、ユーザは、患者と位置ずれ量との双方を視界に入れることができる。よって、患者と位置ずれ量との関係をより簡便に把握することができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態においては計画時体表データの患者体表領域が治療時体表データの患者体表領域に一致するように計画時統合データを画像変換又は治療用天板44を移動させるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。第2実施形態においては計画時体表データの患者体表領域と治療時体表データの患者体表領域とが一致するように治療用天板44に載置されている患者の位置を調節するものとする。以下、第2実施形態に係る放射線治療システム1について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図11は、第2実施形態に係る放射線治療システム1の動作の典型的な流れを示す図である。なお、図11のステップSB1-SB5は図7のステップSA1-SA5と同一であるため説明を省略する。
ステップSB5が行われると治療支援装置8の表示回路85は、計画時統合データと治療時体表データとを表示する(ステップSB6)。より詳細には、ステップSB6において演算回路81は、レンダリング機能813を実行する。レンダリング機能813において演算回路81は、計画時統合データにレンダリングを施して2次元画像(以下、計画時統合画像と呼ぶ)を生成し、治療時体表データにレンダリングを施して2次元画像(以下、治療時体表画像と呼ぶ)を生成する。計画時統合画像と治療時体表画像とは、同一の視点及び視線に基づく生成される。演算回路81は、生成された計画時統合画像と治療時体表画像とを重畳して表示回路85の表示機器に表示する。
図12は、計画時統合画像I2と治療時体表画像I3との重畳画像IOの一例を示す図である。図12に示すように、重畳画像IOは、互いに位置整合して重畳された計画時統合画像I2と治療時体表画像I3を含む。計画時統合画像I2が治療時体表画像I3に重畳して表示されても良いし、治療時体表画像I3が計画時統合画像I2に重畳して表示されても良い。視認性を高めるため、重畳する画像は半透明で表示され、重畳される画像は不透明で表示されると良い。計画時統合画像I2と治療時体表画像I3とを重畳して表示することにより、計画時体表データの患者体表領域と治療時体表データの患者体表領域との位置ずれ量を簡便且つ正確に把握することができる。
表示機器は、例えば、治療室に設けられたディスプレイであると良い。これにより、治療室内で作業する放射線治療従事者は、容易に計画時統合画像I2と治療時体表画像I3とを観察することができる。また、表示機器は、治療室の天井等の壁面に設けられた映写機であっても良い。映写機の場合、計画時統合画像I2と治療時体表画像I3とを重畳して又は並べて、治療用天板44に載置された患者の体表に投影する。これにより、治療室内で作業する放射線治療従事者は、容易に計画時統合画像I2と治療時体表画像I3とを観察することができる。
例えば、演算回路81は、計画時統合データの患者表面領域のワイヤーフレームモデルを生成し、治療時体表データの患者表面領域のソリッドモデルを生成し、ワイヤーフレームモデルをソリッドモデルに重ねて表示回路85に表示しても良い。これにより表示回路85は、計画段階における患者位置と治療段階におけるリアルタイムの患者位置とを明確に区別して表示することできる。患者又は放射線治療従事者は、計画段階における患者位置と治療段階におけるリアルタイムの患者位置とを明確に区別して把握できるので、患者の位置を簡便且つ正確に調整することできる。従って計画時統合データと治療時体表データとを正確に一致できる。
また、演算回路81は、計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域との両者を半透明のソリッドモデルに変換し、表示回路85は、両者を異なる色で表示しても良い。例えば、表示回路85は、計画時統合データの患者表面領域は青で、治療時体表データの患者表面領域を赤で表示すると良い。更に表示回路85は、分かり易さのため、計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域との重複領域を緑で表示すると良い。また表示回路85は、計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域との非重複領域を赤で強調して表示しても良い。
更に表示回路85は、計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域との色を変えて表示した上で、計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域との合致度に応じて計画時統合データ又は治療時体表データの表示態様を様々に変化させても良い。合致度は、演算回路81の位置比較機能811により算出される。例えば、演算回路81は、計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域との重畳領域のピクセル数又はボクセル数を合致度として計数する。表示回路85は、例えば、合致度が閾値よりも低い場合、計画時統合データの患者体表領域を点滅して表示させると良い。また、表示回路85は、合致度が低いほど点滅を速く、合致度が高いほど点滅を遅くしても良い。この場合、計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域とが完全に一致している場合、表示回路85は、点滅を終了する。あるいは表示回路85は、計画時統合画像I2と治療時体表画像I3との重畳画像に並べて、合致度を数字又はグラフで表示しても良い。
このように計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域とを一致させるために、様々な表示方法が可能である。例えば、放射線治療従事者は、表示回路85に表示されている上記画像を観察し、計画時統合データの患者表面領域と治療時体表データの患者表面領域とを一致させるために患者が動くべき方向及び距離を把握し、患者に対し、「もう少し右にずれて下さい」、「足が真っ直ぐになるよう、体全体を右方向に回転して下さい」などと指示し、患者が動くことによって位置を調整する。あるいは、患者が表示回路85に表示されている上記画像を観察し、患者自身がどのくらいずれているかを把握して、患者が能動的に動くことでずれを補正しても良い。この場合、放射線治療従事者の負担が減るので効率的である。
ステップSB6が行われると演算回路81は、入力回路87等に設けられた移動ボタンが押下されることを待機する(ステップSB7)。患者あるいは放射線治療従事者は、ステップSB6において表示された計画時統合データ(又は計画時統合画像)を確認し、それを元に患者位置や体位を変更して、計画時体表データの患者体表領域とリアルタイムで収集される治療時体表データの患者体表領域との位置を一致させる。これにより、計画時統合データに含まれる腫瘍領域の位置を、実際の患者の腫瘍位置に略一致することなる。
計画時体表データの患者体表領域と治療時体表データの患者体表領域との位置を一致させると、放射線治療従事者は、入力回路87等に設けられた移動ボタンを押下する(ステップSB7:YES)。移動ボタンが押下されると演算回路81は、放射線治療装置4に押下ボタンが押下された旨の信号(以下、押下信号と呼ぶ)を供給する。
押下信号の供給を受けると放射線治療装置4は、腫瘍位置が治療用架台41のアイソ・センタに一致するように治療用天板44を移動する(ステップSB8)。具体的には、寝台制御回路463は、計画時統合データに含まれる腫瘍領域の3次元座標から治療用架台41のアイソ・センタの3次元座標への距離及び方向を算出し、算出された距離及び方向に応じた駆動信号を寝台駆動装置451に供給する。寝台駆動装置451は、供給された駆動信号を受けて治療用天板44を移動させる。これにより、腫瘍位置がアイソ・センタに一致する。なお、2方向からX線撮影画像を取得する、あるいはCBCT画像を生成するなどして、さらに精細な治療用天板44の位置補正を行っても良い。
ステップSB8が行われると放射線治療装置4は、第二の位置合わせを実施する(ステップSB9)。ステップSB9の処理は、ステップSA8と同様であるので、説明を省略する。第二の位置合わせにより、より正確な位置合わせが行われる。
ステップSB9が行われると放射線治療装置4は、放射線治療計画に従い患者の腫瘍に放射線を照射する(ステップSB10)。ステップSB10の処理は、ステップSA8と同様であるので、説明を省略する。
放射線治療が行われると、第2実施形態に係る放射線治療システム1の典型的な動作が終了する。
上記の通り、第2実施形態に係る治療支援装置8は、第1実施形態に係る治療支援装置8とは異なり、計画時体表データと治療時体表データとの間の位置比較をせず、治療用天板44に載置された患者の位置を手動的に調節することにより間接的に計画時体表データの患者体表領域と治療時体表データの患者体表領域とを一致させる。これにより、位置比較の精度が良好でない場合においても、計画時体表データの患者体表領域と治療時体表データの患者体表領域とを一致させることができる。ひいては、既存ルーチンに比して簡便且つ正確に放射線治療時の患者の第一の位置合わせを行うことができる。
(第3実施形態)
放射線治療において、治療用架台41、治療用寝台42及び患者間の干渉の有無をシミュレーションする干渉チェックが行われている。干渉チェックは、仮想患者モデルを用いて行われている。仮想患者モデルの体型は、標準体型、太った体型、痩せ体型、あるいはそれらの中間等の予め用意された標準の50以内の体型から選択されている。そのため実際の患者の体型と仮想患者モデルの体型とが一致しない場合がある。また患者が実際に治療用天板44に寝ている位置と、仮想患者モデルの仮想天板モデル上の位置とが一致しない場合もある。更に、患者が治療用天板44に寝ることにより、患者の体重の影響で治療用天板44がたわむことがあるが、このたわみをシミュレーションで反映することは困難である。これら実際とシミュレーションとの誤差により、干渉リスクを正しく評価することは困難である。
以下、第3実施形態に係る放射線治療システム1について説明する。以下の説明において、第1及び第2実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図13は、第3実施形態に係る治療支援装置8の構成を示す図である。図13に示すように、第3実施形態に係る治療支援装置8の演算回路81は、放射線治療支援の際、位置比較機能811、統合機能812、レンダリング機能813、干渉チェック機能814及び警告機能815を実行する。
干渉チェック機能814において演算回路81は、治療用架台41、治療用天板44及び患者間の干渉の有無を、治療用架台41、治療用天板44及び患者の位置及び動作のシミュレーションに基づいて判定する。
警告機能815において演算回路81は、干渉チェック機能814により干渉有りと判定された場合、警告を発する。警告は、例えば、表示回路85を介したエラーメッセージ等の表示や、図示しないスピーカを介した警告音等の出力等により行われる。
次に、第3実施形態に係る放射線治療システム1の動作例を説明する。
図14及び図15は、第3実施形態に係る放射線治療システム1の動作の典型的な流れを示す図である。なお、図14のステップSC1-SC4は図11のステップSB1-SB4と同一であるため説明を省略する。
ステップSC4が行われると治療支援装置8の演算回路81は、干渉チェック機能814を実行する(ステップSC5)。ステップS5において演算回路81は、ステップSC2において収集された計画時体表データを用いて、ステップSC3において作成された放射線治療計画に従い干渉チェックを行う。例えば、演算回路81は、治療用架台41と治療用寝台42との構造に関する情報及び当該構造の可動範囲に関する情報とを予め上記記憶装置等に記憶している。以下、構造に関する情報及び当該構造の可動範囲に関する情報を機構情報と呼ぶことにする。機構情報は、放射線治療装置4に関する機構設計データ(CAD:Computer-Aided Design)から取得可能である。
演算回路81は、第1の表面形状計測装置3により収集された計画時体表データに含まれる患者体表領域に基づいて患者の体型を模した患者モデルを生成する。すなわち、第3実施形態においては、予めテンプレートとして用意された患者モデルではなく、計画時体表データの患者体表領域に基づいて患者モデルを生成するので、実際の患者の体型を模した患者モデルを使用することができる。また、演算回路81は、計画時体表データに含まれる天板表面領域に基づいて治療用天板44を模した天板モデルを生成する。なお、計画時体表データに含まれる天板表面領域は、撮像用天板23に関する天板表面領域であるが、撮像用天板23と治療用天板44とは略同一形状及び素材であるので、計画時体表データに含まれる天板表面領域に基づいて治療用天板44を模した天板モデルを生成可能である。
次に演算回路81は、計画時体表データに基づいて生成された患者モデルを、患者が適当な位置に寝ているとの仮定の下、天板モデルの適当な位置に配置する。そして演算回路81は、放射線治療計画に従って放射線治療装置4を動かした時に、患者や放射線治療装置4のユニット間(具体的には、照射ヘッド部412、治療用寝台42、あるいはX線撮影用のFPD(Flat Panel Detector)やX線管球など)で干渉が発生しないか、あるいは近接していて干渉するリスクの有無を判定する。
ステップSC5によれば、第1の表面形状計測装置3により収集された計画時体表データを使用して正確な患者体型を用いて干渉チェックを行うことができる。また、患者が治療用天板44に寝ている位置を治療計画用CT装置2と放射線治療装置4で合致させることにより、正しい患者位置を同定することができる。さらに患者が治療用天板44に寝ることによるたわみを、計画時体表データに含まれる天板表面領域を用いることで正しく同定することができる。このような正確な患者モデル及び天板モデルを使用することにより、干渉チェックをほぼ正確に実行することができる。
治療段階において第2の表面形状計測装置5は、患者の治療時体表データを収集する(ステップSC6)。ステップSC6は、ステップSB5と同一の処理なので説明を省略する。
ステップSC6が行われると治療支援装置8の表示回路85は、計画時統合データと治療時体表データとを表示する(ステップSC7)。ステップSC7は、ステップSB6と同一の処理なので説明を省略する。患者又は放射線治療従事者は、ステップSC7において表示された計画時統合データを確認し、患者の位置や体位を変更して、計画時統合データの患者体表領域と治療時体表データの患者体表領域との位置を一致させる。
この際、演算回路81は、位置比較機能811を実行する(ステップSC6)。ステップSC6において演算回路81は、治療時体表データに含まれる患者体表領域と天板表面領域との位置関係が、計画時体表データに含まれる患者体表領域と天板表面領域との位置関係から閾値以上ずれているか否かを判定する。位置関係は、例えば、患者体表領域の基準点と天板表面領域の基準点とを結ぶベクトルにより規定される。患者体表領域の基準点と天板表面領域の基準点とは、任意の位置に設定されれば良い。
具体的には、演算回路81は、治療時体表データに含まれる患者体表領域の基準点と天板表面領域の基準点とを結ぶベクトル(以下、治療時ベクトルと呼ぶ)を算出し、計画時体表データに含まれる患者体表領域の基準点と天板表面領域の基準点とを結ぶベクトル(以下、計画時ベクトルと呼ぶ)を算出し、治療時ベクトルと計画時ベクトルとの長さの差分と角度の差分とを算出する。そして演算回路81は、長さの差分を長さ用の閾値に対して比較し、角度の差分を角度用の閾値に対して比較し、長さの差分及び角度の差分の少なくとも一方が閾値以上であるか否かを判定する。長さの差分及び角度の差分の少なくとも一方が閾値以上である場合、演算回路81は、患者と治療用天板44との位置関係がずれていると判定し(ステップSC8:YES)、長さの差分及び角度の差分の両方が閾値以上でない場合、演算回路81は、患者と治療用天板44との位置関係がずれていないと判定する(ステップSC8:NO)。
なお、上記の位置関係のずれの判定基準は例示であって、上記のみに限定されない。例えば、演算回路81は、長さの差分及び角度の差分の両方が閾値以上である場合、演算回路81は、位置関係がずれていると判定し(ステップSC8:YES)、長さの差分及び角度の差分の少なくとも一方が閾値以上でない場合、位置関係がずれていないと判定しても良い(ステップSC8:NO)。また、演算回路81は、治療時ベクトルと計画時ベクトルとの長さの差分と角度の差分との何れか一方のみを算出しても良い。長さの差分のみを算出する場合、演算回路81は、長さの差分を長さ用の閾値に対して比較し、長さの差分が当該閾値以上である場合、位置関係がずれていると判定し(ステップSC8:YES)、長さの差分が当該閾値以上でない場合、位置関係がずれていないと判定すると良い(ステップSC8:NO)。角度の差分のみを算出する場合も同様に判定可能である。
ステップSC8において患者と治療用天板44との位置関係がずれていると判定された場合(ステップSC8:YES)、治療支援装置の演算回路81は、干渉チェック機能814を実行する(ステップSC9)。ステップSC9において演算回路81は、位置関係のずれ量(すなわち、長さの差分及び角度の差分)に基づいて再度、干渉チェックを行う。
ステップSC9が行われると演算回路81は、干渉チェックの結果を表示回路85に表示する(ステップSC10)。ステップSC10において演算回路81は、警告機能815を実行する。警告機能815において演算回路81は、干渉リスクが高いと判定された場合、ずれを補正することを放射線治療従事者に促すための警告を発する。
ステップSC10が行われた場合又はステップSC8において患者と治療用天板44との位置関係がずれていないと判定された場合(ステップSC8:NO)、演算回路81は、移動ボタンが押下されることを待機する(ステップSC11)。患者又は放射線治療従事者は、ステップSC7において表示された計画時統合データを確認し、それを元に患者位置や体位を変更して、計画時体表データと治療時体表データとを一致させる。リアルタイムで収集される治療時体表データを計画時統合データに含まれる計画時体表データに一致させることにより、計画時統合データに含まれる腫瘍領域の位置が、実際の患者の腫瘍位置に略一致することなる。
治療時体表データを計画時統合データに含まれる計画時体表データに一致させると、放射線治療従事者は、入力回路87等に設けられた移動ボタンを押下する(ステップSC11:YES)。移動ボタンが押下されると演算回路81は、放射線治療装置4に押下信号を供給する。押下信号の供給を受けると放射線治療装置4は、腫瘍位置が治療用架台41のアイソ・センタに一致するように治療用天板44を移動する(ステップSC12)。ステップSC12が行われると放射線治療装置4は、第二の位置合わせを実施する(ステップSC13)。ステップSC13が行われると放射線治療装置4は放射線治療計画に従い患者の腫瘍に放射線を照射する(ステップSC14)。ステップSC12-SC14の処理は、ステップSB8-SB10と同様であるので、説明を省略する。
放射線治療が行われると、第3実施形態に係る放射線治療システム1の典型的な動作が終了する。
上記の通り、演算回路81は、ステップSC8において、計画時における患者と撮像用天板23との位置関係が、治療時における患者と治療用天板44との位置関係を正確に再現できているか否かを判定することができる。位置関係を正確に再現できていない場合は、ステップSC9のように、放射線治療の前段において干渉チェックを再度行う。干渉チェックを再度行うことにより、放射線治療時における干渉の発生に伴う放射線治療の停止や、治療計画の修正を行うリスクを低減することができる。
なお、治療計画時における患者と撮像用天板23との位置関係が、治療時における患者と治療用天板44との位置関係を正確に再現できているのであれば、ステップSC8-SC10は、必ずしも行われなくても良い。
位置合わせに係る時間を短縮するため干渉チェック機能が改良されても良い。具体的には、演算回路81は、天板モデルを所定のマージンだけ拡大して拡大天板モデルを生成する。天板許容マージンは、治療計画段階の撮像用天板23に対する実際の治療用天板44の許容可能なずれ量に設定される。同様に、演算回路81は、患者モデルを所定のマージンだけ拡大して拡大患者モデルを生成する。患者許容マージンは、治療計画段階の患者に対する実際の治療時の患者の許容可能なずれ量に設定される。
演算回路81は、放射線治療計画に従い拡大天板モデルと拡大患者モデルとに基づいて干渉チェックを行う。すなわち、演算回路81は、治療用架台モデル、拡大天板モデル及び拡大患者モデルが干渉するか否かをシミュレーションで判定し、干渉しないと判定した場合、位置合わせを完了したと判定する。このような拡大モデルに基づく干渉チェックにより干渉が無いと判定された場合、治療用架台41、治療用寝台42及び患者間にかなり余裕のスペースがあることを意味する。従って、非常に細かい位置合わせが不要となるので、位置合わせに要する時間を大幅に短縮することができる。
一方、演算回路81は、治療用架台モデル、拡大天板モデル及び拡大患者モデルが干渉すると判定した場合、位置合わせが必要であると判定する。この際、演算回路81は、干渉が生じると判定された拡大天板モデル又は拡大患者モデルのマージンを自動的に、あるいは放射線治療従事者による入力回路87を介した指示に従い縮小しても良い。演算回路81は、拡大天板モデル及び拡大患者モデルの全方位のマージンのうちの干渉が判定された部分に限定して縮小しても良いし、拡大天板モデル及び拡大患者モデルのマージンを全方位に亘り縮小しても良い。この際、演算回路81は、拡大天板モデルのマージンと拡大患者モデルのマージンとの両方を縮小しても良いし、何れか一方のみを縮小しても良い。演算回路81は、縮小後の拡大天板モデル又は拡大患者モデルを使用して再度干渉チェックを行う。再度の干渉チェックにより干渉なしと判断された場合においても、放射線治療従事者は、干渉の危険性を認識することができる。再度の干渉チェックにより干渉ありと判断された場合において、放射線治療従事者は、位置合わせをやり直したり、放射線治療計画をやり直すこととなる。この場合、放射線治療装置4において患者位置を比較する場合、これら許容マージン以内を判断するが、少なくしたマージンを使用して判断する。
(第4実施形態)
放射線治療は5週間あるいは6週間等の長期間に亘り行われるため、抗癌剤等の影響により患者の体型が変化することが想定される。体型が大きく変化すれば放射線治療計画を再度作成し直す必要もある。また、上記第3実施形態においては、ステップSC8において、患者と治療用天板44との位置関係に応じて干渉チェックを再度行うか否かが判定されている。しかしながら、患者の体型の変化は患者と治療用天板44との位置関係に反映されないので、体型が大きく変化していても再度の干渉チェックが行われない場合もある。
以下、第4実施形態に係る放射線治療システム1について説明する。以下の説明において、第1、第2及び第3実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図16は、第4実施形態に係る治療支援装置の構成を示す図である。図16に示すように、第4実施形態に係る治療支援装置の演算回路81は、放射線治療支援の際、位置比較機能811、統合機能812、レンダリング機能813、干渉チェック機能814、警告機能815及び体型比較機能816を実行する。
体型比較機能816において演算回路81は、計画段階の患者の体型と治療段階の患者の体型とを比較する。本実施形態においては、計画時体表データ及び治療時体表データに含まれる患者体表領域の垂直方向に関する距離間隔を体型と見做す。すなわち、演算回路81は、計画時体表データの患者体表領域の垂直方向に関する距離間隔と、治療時体表データの患者体表領域の垂直方向に関する距離間隔とを比較する。また、演算回路81は、計画段階において体重センサ等により計測された患者の体重と、治療段階において体重センサ等により計測された患者の体重とを比較しても良い。体重センサは、撮像用寝台22と治療用寝台42とにそれぞれ設けられる。体重センサにより計測された体重のデータは、治療支援装置8に送信される。
次に、第4実施形態に係る放射線治療システム1の動作例を説明する。第3実施形態に係る放射線治療システム1の動作の流れは、第3実施形態に係る放射線治療システム1の動作の流れと略同一であるので、図14及び図15を流用して説明する。
計画段階におけるステップSC2において第1の表面形状計測装置3は、治療計画用CT装置2の撮像用天板23に載置された患者の計画時体表データを収集する。この際、撮像用寝台22に設けられた体重センサにより、計画時体表データの収集時における患者の体重を計測する。体重計測値のデータは、治療支援装置8に供給される。
治療段階におけるステップSC6において第2の表面形状計測装置5は、放射線治療装置4の治療用天板44に載置された患者の治療時体表データを収集する。この際、治療用寝台42に設けられた体重センサにより、治療時体表データの収集時における患者の体重を計測する。体重計測値のデータは、治療支援装置8に供給される。
なお、体重センサは撮像用寝台22及び治療用寝台42に設けられるとしたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、計画室及び治療室の入口に体重センサを設けても良いし、更衣室の中あるいは入口に体重センサが設けられても良い。
ステップSC6が行われると治療支援装置8の表示回路85は、計画時統合データと治療時体表データとを表示する(ステップSC7)。ステップSC7は、ステップSB6と同一の処理なので説明を省略する。患者又は放射線治療従事者は、ステップSC7において表示された計画時統合データを確認し、患者の位置や体位を変更して、計画時統合データの患者体表領域と治療時体表データの患者体表領域との位置を一致させる。
この際、演算回路81は、位置比較機能811を実行する(ステップSC6)。ステップSC6において演算回路81は、治療時体表データに含まれる患者体表領域と天板表面領域との位置関係が、計画時体表データに含まれる患者体表領域と天板表面領域との位置関係から閾値以上ずれているか否かを判定する。
ステップSC6において演算回路81は、位置比較機能811の実行に並行して体型比較機能816を実行する。
図17は、演算回路81の体型比較機能816による処理を模式的に示す図である。図17に示すように、まず演算回路81は、所定のアキシャル断面に関する計画時統合データD2と治療時体表データD3とを読み出す。計画時統合データD2は、計画時体表データに含まれる患者体表領域RP2、計画時体表データに含まれる天板表面領域RT2、CT画像データICT2に含まれる腫瘍領域RC2を含む。治療時体表データD3は、治療時体表データに含まれる患者体表領域RP3と治療時体表データに含まれる天板表面領域RT3とを含む。
図16に示すように、演算回路81は、計画時統合データD2に対し体厚計測処理を実行する(ステップSC61)。ステップSC61において演算回路81は、患者体表領域RP2の垂直方向に関する距離間隔V2を体厚として計測する。なお、垂直方向とは、撮像用天板23の表面に対して垂直な方向を指す。同様に、演算回路81は、治療時体表データD3に対し体厚計測処理を実行する(ステップSC62)。ステップSC62において演算回路81は、患者体表領域RP3の垂直方向に関する距離間隔V3を体厚として計測する。
ステップSC61及びSC62が行われると演算回路81は、体厚比較処理を行う(ステップSC63)。ステップSC63において演算回路81は、ステップSC61において計測した計画時の体厚値V2とステップSC62において計測した治療時の体厚値V3とを比較する。より詳細には、演算回路81は、計画時の体厚値V2と治療時の体厚値V3との差分を算出し、当該差分が予め定められた許容範囲にあるか否か、すなわち、再計画の必要の有無を判定する。当該差分が許容範囲にない場合、計画時と治療時とで患者の体格が大きく変化しているので放射線治療計画を再度行った方が良い。当該差分が許容範囲にある場合、計画時と治療時とで患者の体格があまり変化していないので放射線治療計画を再度行わなくても良い。
ステップSC63が行われると演算回路81は、ステップSC63における体厚比較の結果を表示回路85に表示する(ステップSC64)。ここで、演算回路81は、計画時の体厚値V2と治療時の体厚値V3との差分が許容範囲にない場合、警告機能815を実行する。警告機能815において演算回路81は、計画時と治療時とで患者の体格が大きく変化している旨の警告を発する。例えば、演算回路81は、放射線治療装置4に警告信号を送信する。警告信号を受信した放射線治療装置4の演算回路464は、治療室に設けられたディスプレイ466に、放射線治療従事者に対し「患者体型が大きく変わっています。再計画が必要である可能性があります。」と言うワーニングメッセージを表示する。
更に演算回路464は、ワーニングメッセージと共に確認ボタンを表示する。放射線治療従事者は、再計画を行った後、確認ボタンを押下することとなる。好適には、一旦放射線治療を取り止め、放射線治療用CTの再撮像、放射線治療計画の再実施等を実施した上で放射線治療が再開される。この場合、確認ボタンが押下される。演算回路464は、確認ボタンが押下された場合、照射制御回路461に放射線(X線)の照射の許可を通知する。照射の許可が通知されている場合において照射指示がなされた場合、照射制御回路461は、放射線を照射することが可能である。換言すれば、演算回路464は、確認ボタンが押下されない限り放射線の照射を制限することとなる。
演算回路81は、体厚の代わりに、体重センサにより計測された体重を比較しても良い。具体的には、演算回路81は、計画時の体重と治療時の体重との差分を算出し、当該差分が予め定められた許容範囲にあるか否か、すなわち、再計画の必要の有無を判定する。演算回路81は、体厚を比較した場合と同様、体重に関する差分が許容範囲にない場合、計画時と治療時とで患者の体格が大きく変化しているので警告を発する。当該差分が許容範囲にある場合、計画時と治療時とで患者の体格があまり変化していないので放射線治療計画を再度行わなくても良い。
なお、演算回路81は、体厚に関する差分と体重に関する差分との両方を用いて再計画の必要の有無を判定しても良い。例えば、演算回路81は、体厚に関する差分と体重に関する差分との何れか一方が許容範囲にない場合、再計画が必要であると判定して警告を発すると良い。一方、演算回路81は、体厚に関する差分と体重に関する差分との両郷が許容範囲にある場合、再計画が必要でないと判定する。このように体厚に関する差分と体重に関する差分との両方を用いることにより、再計画の必要性の有無の判定を正確に行うことができる。
再計画が必要であると判定された場合、演算回路81は、ステップSC9及びSC10を行う。再計画が必要でないと判定された場合又はステップSC10が行われた場合、演算回路81は、ステップSC11、SC12、SC13及びSC14を行う。
ステップSC13において放射線治療が行われると、第4実施形態に係る放射線治療システム1の典型的な動作が終了する。
なお、上記ステップSC63においては、計画時体表データと治療時体表データとを用いて体厚に関する差分が算出されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、演算回路81は、位置比較機能811により、撮像用天板23又は治療用天板44が同一高さに位置しているという条件の下で、計画時体表データを治療時体表データに対して位置合わせする。具体的には、計画時体表データの患者体表領域が治療時体表データの患者体表領域に一致するように計画時統合データ又は計画時体表データが画像変換される。そして演算回路81は、体型比較機能816により、位置合わせ後の計画時体表データと治療時体表データとの間の垂直方向に関する位置ずれ量を体厚に関する差分として算出する。これにより、より正確な体厚に関する差分を算出することができる。この場合も上記ステップSC64と同様、演算回路81は、体厚に関する差分が許容範囲にない場合、計画時と治療時とで患者の体格が大きく変化している旨の警告を発すると良い。これにより、より正確な情報に基づき警告を発することができ、警告に対する信頼性を向上させることができ、放射線治療の効率を向上させることができる。
(応用例)
上記の実施形態におい計画時統合データや位置ずれ量等の情報は、治療支援装置8の表示回路85により表示されるものとした。しかしながら、本実施形態に係る計画時統合データや位置ずれ量等の情報は、放射線治療従事者等のユーザに装着されたヘッドマウント・ディスプレイに表示されても良い。
図18は、応用例に係る情報表示システムの構成を示す図である。当該情報表示システムは、放射線治療システム1に組み込まれている。図18に示すように、ヘッドマウント・ディスプレイ9は、ユーザの頭部に装着される表示デバイスである。例えば、ヘッドマウント・ディスプレイ9は、図18に示すように、メガネ型の表示デバイスである。
ヘッドマウント・ディスプレイ9は、左目用のレンズ91と右目用のレンズ92とを有する。左目用のレンズ91と右目用のレンズ92とは、テンプル等のフレーム93により支持されている。フレーム93には、ディスプレイ94、位置検出器95及び通信インタフェース96が設けられる。
例えば、左目用のレンズ91の前方に位置するようにディスプレイ94がフレーム93に設けられる。ディスプレイ94は、例えば、半透明のスクリーンと当該スクリーンに映像を映写する映写機との組み合わせにより実現される。
位置検出器95は、例えば、GPS(Global Positioning System)センサや磁気式センサ、電気式センサ等の如何なる位置センサでも良い。位置検出器95は、ヘッドマウント・ディスプレイ9の位置のみを検出する場合、一個で良く、如何なる位置に設けられても良い。しかし、ヘッドマウント・ディスプレイ9の位置及び方向を検出する場合、ヘッドマウント・ディスプレイ9の左側及び右側の各々に設けられる。方向は、各位置検出器9の位置の相対関係に基づいて算出される。方向は、ヘッドマウント・ディスプレイ9を装着しているユーザの視線の方向に略一致する。なお視線方向の算出は、ヘッドマウント・ディスプレイ9に設けられた図示しないCPU等のプロセッサにより行われても良いし、治療支援装置8の演算回路81により行われても良い。以下、位置と視線方向とを総称して位置情報と呼ぶことにする。
通信インタフェース96は、治療支援装置8との間で情報を通信する。例えば、通信インタフェース96は、治療支援装置8に位置情報を送信したり、治療支援装置8から表示用統合データを受信する。
例えば、治療段階の位置合わせ時においてユーザは、ヘッドマウント・ディスプレイ9を装着している。ヘッドマウント・ディスプレイ9の位置検出器9は、当該位置検出器9の位置及び視線方向を繰り返し検出し、位置情報を治療支援装置8に繰り返し送信する。治療支援装置8の演算回路81は、レンダリング機能813において、計画時統合データを、ヘッドマウント・ディスプレイ9に表示するための形式を有する表示用統合データに変換する。具体的には、演算回路81は、計画時統合データと位置情報とに基づいて、ヘッドマウント・ディスプレイ9を視点とする計画時統合データのレンダリング画像データ(表示用統合データ)を生成する。より詳細には、三次元画像空間に計画時統合データが配置され、三次元画像空間内のヘッドマウント・ディスプレイ9の位置に視点が設定される。例えば、計画時統合データは、三次元画像空間において定義された治療位置に配置される。治療位置は、少なくとも腫瘍位置を含む領域に規定される。当該視点から視線方向に沿って計画時統合データを通るレイが設定され、当該レイに基づくボリュームレンダリングが行われる。これにより、ヘッドマウント・ディスプレイ9に視点が設定された、統合データに関するレンダリング画像データ(表示用統合データ)が生成される。表示用統合データは、例えば、半透明で表示される。これにより、表示用統合データに重畳する現実の患者や治療用天板44等を視認することが可能になる。
以上の通り、応用例によれば、あたかも計画時統合データにより表される患者が治療用天板44に横たわっているかのようなシステムを提供することが可能になる。表示用統合データは、計画時統合データに基づいているので、患者体表データに加え腫瘍位置も描出されている。ユーザは、半透明の表示用統合データと当該表示用統合データを介して観察される患者体表とが一致するように、治療用天板44を移動させることができる。これにより、患者の第一の位置合わせを正確且つ簡便に行うことができる。
なお、ヘッドマウント・ディスプレイ9には、計画時統合データが表示されても良い。すなわち、治療支援装置8の演算回路81は、治療段階において、計画時統合データをヘッドマウント・ディスプレイ9に送信し、ヘッドマウント・ディスプレイ9は、受信した計画時統合データを表示すれば良い。この場合、ヘッドマウント・ディスプレイ9に位置検出器95が設けられている必要はない。
かくして、上記の少なくとも1の実施形態によれば、放射線治療時の患者の第一の位置合わせを正確且つ簡便に行うことになる。
本実施形態に係るプロセッサとメモリとの組合せは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、SPLD(Simple Programmable Logic Device)により実現されても良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。