以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる粒子線治療システムを説明する。
図1は、本実施形態に係る粒子線治療システム100の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る粒子線治療システム100は、ネットワーク等を介して互いに通信可能に接続された粒子線治療装置1、超音波診断装置3及び治療計画装置5を有する。
超音波診断装置3は、超音波プローブとコンソールとを有する。超音波プローブは、超音波を送受波する。コンソールは、粒子線治療装置1による粒子線治療時において超音波プローブを介して被検体を超音波で走査して被検体の治療対象部位を対象とする超音波画像を収集する。本実施形態において治療対象部位は、粒子線により治療可能な如何なる部位でも良いが、以下、腫瘍であるとする。収集された超音波画像は、粒子線治療装置1に伝送される。本実施形態に係る超音波画像は、2次元状に配列された複数のピクセルから構成される2次元画像でも良いし、3次元状に配列された複数のボクセルから構成される3次元画像でも良い。
治療計画装置5は、例えば、汎用のコンピュータ又はワークステーションである。治療計画装置5は、治療計画時において、予め収集された治療計画画像に基づいて粒子線治療装置1による粒子線治療の治療計画を立案する。具体的には、治療計画装置5は、線量分布やブラッグピークの計画点、粒子線の照射方向、粒子線のビームパス、粒子線の体表入射点等を決定する。線量分布は、粒子線治療により照射されるべき粒子線の線量の空間分布である。ブラッグピークの計画点は、ブラッグピークの照準が合わせられる解剖学上の位置である。粒子線の照射方向は、粒子線を照射する方向である。粒子線のビームパスは、粒子線の透過経路である。粒子線の体表入射点は、被検体の体表に粒子線が入射する位置である。治療計画画像は、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置、X線診断装置等の医用画像診断装置により収集される。収集された治療計画画像は、粒子線治療装置1に伝送される。本実施形態に係る治療計画画像は、2次元状に配列された複数のピクセルから構成される2次元画像でも良いし、3次元状に配列された複数のボクセルから構成される3次元画像でも良い。
粒子線治療装置1は、治療計画装置5により計画された治療計画に従い被検体の腫瘍に粒子線を照射する。粒子線治療時において粒子線治療装置1は、超音波診断装置3により収集される超音波画像を利用して、粒子線のブラッグピークの照準点を即時的に推定する。なお、本実施形態に係る照準点は、粒子線治療時に照射している又は照射する予定の粒子線のブラッグピークの照準が合っている位置に対応する。
図2は、図1の粒子線治療装置1の構成を示す図である。図2に示すように、粒子線治療装置1は、加速器11、加速系制御回路13、輸送系15、ガントリ17、寝台37、照射系制御回路19、駆動制御回路21及びコンソール50を有する。
加速器11は、イオン源等により発生された重粒子や陽子等を、直線加速器11及び円形加速器11等により加速して粒子線を生成する。加速系制御回路13は、コンソール50の主制御回路63による指令に従い加速器11を制御する。輸送系15は、加速器11から射出された粒子線をガントリ17まで輸送する輸送路である。
ガントリ17は、固定部31と回転部33とを有している。固定部31は、床面に設置され、回転部33を回転軸回りに回転可能に支持している。回転部33には照射器35が取り付けられている。照射器35は、輸送系15により輸送された粒子線を、寝台に載置された被検体Pに照射する。照射器35は、マルチリーフコリメータ等の照準器(図示せず)が取り付けられており、照射領域の形状に応じて粒子線を成形可能である。また、照射器35は、横方向の偏向のための電磁偏向板と縦方向の偏向のための電磁偏光板(図示せず)とを有している。なお、横方向は、回転部33の回転方向に一致し、縦方向は横方向に直交する。照射系制御回路19は、コンソール50の主制御回路63による指令に従い電磁偏向板や照準器を駆動して、治療計画に応じた粒子線を被検体Pに照射する。なお、照射系制御回路19は、後述のように、演算回路51により推定されたブラッグピークの照準点の位置等に応じて粒子線の照射と停止とを切り替える。また、回転部33には、粒子線の照射領域を示す可視光を被検体P上に照射する投光器(図示せず)が設けられている。
図7に示すように、寝台37には、アーム52を介して超音波診断装置3の超音波プローブUPが取り付けられている。すなわち、アーム52の一端は、寝台37に固定されている。アーム52の他端は、超音波プローブUPを保持するとともに、超音波プローブUPを被検体Pの体表面に押し当てる構成を有している。具体的には、アーム52は、超音波プローブUPを保持する機構としてバネ等の弾性体54を有している。弾性体54を有することによりアーム52は、被検体Pの呼吸等に伴う超音波プローブUPの動きを許容するとともに、超音波プローブUPを被検体Pに適当な力で押し当てる。
以下、アーム52は、技師等の医療従事者によって手動で位置決めされるものとして説明するが、コンソール50からの入力等に応じて自動で位置決めを行うものであっても良い。
図2に示すように、固定部31には駆動装置39が内蔵されている。駆動装置39は、固定部31が回転部33を回転するための動力を発生する。駆動制御回路21は、コンソール50の主制御回路63による指令に従い駆動装置39を駆動して、所定の回転角度に照射器35を配置する。
図2に示すように、コンソール50は、演算回路51、画像処理回路53、通信回路55、表示回路57、入力回路59、記憶回路61及び主制御回路63を有する。演算回路51、画像処理回路53、通信回路55、表示回路57、入力回路59、記憶回路61及び主制御回路63は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
演算回路51は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。具体的には、演算回路51は、プローブ配置決定機能511、位置合わせ機能512、領域同定機能513、ブラッグピーク計画点特定機能514、ブラッグピーク照準点推定機能515、飛程計測機能516、座標検出機能517及び配置判定機能518を有する。なお、画像処理回路53は、上記機能を実現可能なASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、SPLD(Simple Programmable Logic Device)により実現されても良い。
プローブ配置決定機能511において演算回路51は、照射器35から照射される粒子線の照射方向に基づいて、粒子線治療時における超音波診断装置3による超音波画像の収集ための超音波プローブの配置を決定する。
位置合わせ機能512において演算回路51は、超音波診断装置3により収集された超音波画像と、治療計画画像とを画像処理により位置合わせする。
領域同定機能513において演算回路51は、超音波画像及び治療計画画像に含まれる特定の画像領域を画像処理により同定する。特定の画像領域として、例えば、被検体Pに含まれる治療対象の腫瘍に関する画像領域(以下、腫瘍領域と呼ぶ)、被検体Pの体表に関する画像領域(以下、体表領域と呼ぶ)等が挙げられる。
ブラッグピーク計画点特定機能514において演算回路51は、治療計画時において治療計画装置5等により決定されたブラッグピークの計画点に解剖学的に略一致する、超音波画像におけるブラッグピークの計画点を特定する。
ブラッグピーク照準点推定機能515において演算回路51は、被検体の体表位置に関する情報(以下、体表情報と呼ぶ)と粒子線治療時において照射器35により照射される実際の飛程とに基づいて、粒子線治療時において照射器35により照射される粒子線のブラッグピークの照準点を推定する。本実施形態に係るブラッグピークの照準点は、粒子線治療時において実際にブラッグピークの照準が合わされている解剖学上の点である。被検体の体表情報は、領域同定機能513により同定された体表領域であっても良いし、実空間座標系により規定された被検体の体表の座標であっても良い。実空間座標系により規定された被検体の体表の座標は、例えば、後述のセンサにより計測される。
飛程計測機能516において演算回路51は、超音波画像及び治療計画画像に含まれる被検体Pの体表領域から、ブラッグピーク照準点推定機能515により推定されたブラッグピークの照準点までの距離を計測する。計測された距離は、理想の飛程に対応する。
座標検出機能517において演算回路51は、位置センサからの出力信号に基づいて、超音波画像又は治療計画画像において特定された点の実座標系における座標を検出する。
配置判定機能518において演算回路51は、プローブ配置決定機能511により決定された超音波プローブUPの配置に基づいて、超音波プローブUPの実際の配置が適当であるか否かを判定する。
画像処理回路53は、ハードウェア資源として、CPUやGPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。画像処理回路53は、治療計画画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理回路53は、3次元の治療計画画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示用の2次元の医用画像を生成する。なお、画像処理回路53は、上記画像処理を実現可能なASICやFPGA、CPLD、SPLDにより実現されても良い。
通信回路55は、図示しない有線又は無線を介して、粒子線治療システム100を構成する超音波診断装置3及び治療計画装置5との間でデータ通信を行う。
表示回路57は、種々の情報を表示する。具体的には、表示回路57は、表示インタフェースと表示機器とを有する。表示インタフェースは、表示対象を表すデータを映像信号に変換する。表示信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表す映像信号を表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力回路59は、具体的には、入力機器と入力インタフェースとを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェースは、入力機器からの出力信号をバスを介して主制御回路63に供給する。
記憶回路61は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。例えば、記憶回路61は、治療計画装置5から供給された治療計画情報と治療計画画像を記憶する。また、記憶回路61は、超音波診断装置3から供給された超音波画像を記憶する。ハードウェアとして記憶回路61は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
主制御回路63は、粒子線治療装置1の中枢として機能する。主制御回路63は、記憶回路61等に記憶された本実施形態に係る動作プログラムを実行し、当該動作プログラムに従い各部を制御することにより、本実施形態に係る粒子線治療を実行する。
以下、本実施形態に係る粒子線治療システム100の動作例について説明する。
図3は、本実施形態に係る粒子線治療システム100の大局的な処理の流れを示す図である。図3に示すように、まず、治療計画装置5は、治療対象の被検体Pに関する治療計画を実行する(ステップSA)。ステップSAにおいて治療計画装置5は、予め医用画像診断装置により収集された治療計画画像を利用して治療計画を立案し、治療計画情報を生成する。治療計画情報としては、例えば、線量分布やブラッグピークの計画点、粒子線の照射方向、粒子線のビームパス、粒子線の体表入射点、実飛程等が挙げられる。以下の実施形態において治療計画画像は、X線コンピュータ断層撮影装置により収集されたCT画像であるとする。以下、治療計画に用いるCT画像を治療計画CT画像と呼ぶことにする。治療計画CT画像は、典型的には、直交3次元座標系により規定される3次元画像である。
図4は、治療計画情報が重畳された治療計画CT画像ICの一例を示す図である。図4に示すように、治療計画CT画像ICは、被検体Pに関する画像領域(以下、被検体領域と呼ぶ)RPを含む。被検体領域RPの縁部は、被検体Pの体表に関する画像領域(以下、体表領域と呼ぶ)RSに規定される。体表領域RSは、例えば、治療計画装置5による画像処理により抽出される。被検体領域RPは、治療対象に関する画像領域である治療対象領域RCを含む。以下、治療対象が腫瘍であるとして説明するので、治療対象領域RCを腫瘍領域RCと呼ぶことにする。腫瘍領域RCは、例えば、治療計画装置5による画像処理により抽出される。腫瘍領域RCを通るように粒子線治療における粒子線のビームパスBPが設定される。ビームパスBPの基準軸回りの角度は照射方向に規定される。当該基準軸は、任意に設定可能である。粒子線治療時において当該基準軸は粒子線治療装置1のガントリ17の回転軸に位置決めされる。ビームパスBPは、入力機器等を介してユーザにより手動的に、又は画像処理により自動的に設定される。ビームパスBPと被検体領域RPの縁部(体表領域)との交差点が入射点PEに規定される。腫瘍領域RCには、治療計画装置5によりブラッグピークの計画点PPが設定される。計画点PPは、入力機器等を介してユーザにより手動的に、又は画像処理により自動的に設定される。入射点PEから計画点PPまでの距離が実飛程に設定される。実飛程は、粒子線治療時において実際に観測される飛程に等しい。飛程は粒子線のエネルギーに応じて変化するが、粒子線治療時の粒子線のエネルギーは、治療計画において決定された飛程に基づいて決定されるからである。治療計画情報及び治療計画CT画像ICは、治療計画装置5により粒子線治療装置1に伝送される。
ステップSAが行われると粒子線治療装置1は、超音波プローブの配置決定処理を行う(ステップSB)。ステップSBにおいて粒子線治療装置1の演算回路51は、プローブ配置決定機能511を実行する。プローブ配置決定機能511において演算回路51は、粒子線の照射方向に基づいて、粒子線治療時における超音波診断装置3による超音波画像の収集ための超音波プローブの配置を決定する。粒子線の照射方向は、ステップSAにおいて治療計画装置5により治療計画CT画像に設定されている。演算回路51は、例えば、治療計画CT画像を利用して超音波プローブの配置を決定する。画像処理回路53は、治療計画CT画像に3次元画像処理を施して、超音波プローブの配置決定に供されるレンダリング画像を生成する。配置の決定方法としては、例えば、以下の方法がある。
図5は、ステップSBにおいて決定された超音波プローブUPの配置を示す図である。図5に示すように、治療計画CT画像には体表領域RSにより画定された被検体領域RPが含まれる。被検体領域RPには腫瘍領域RCが含まれている。腫瘍領域RCを通るようにビームパスBPが設定され、体表領域RSとビームパスBPとの交点に入射点PEが設定されている。なお、超音波プローブUPの配置決定に利用される治療計画CT画像は、MPR画像やボリュームレンダリング画像等の如何なる種類のレンダリング画像であっても良い。図5において治療計画CT画像は、一例として、アキシャル断面に関するMPR画像であるものとする。
図5に示すように、演算回路51は、超音波走査領域USが腫瘍領域RCを包含可能な超音波プローブUPの配置を決定する。超音波走査領域USには入射点PEは含まれない。配置は、超音波プローブUPの位置及び角度により規定される。超音波プローブUPの位置及び角度は、例えば、治療計画CT画像の3次元画像座標系において定義される。超音波プローブUPの位置PUPは、より詳細には、超音波走査領域USが腫瘍領域RCを包含可能であり、且つ入射点PEに近接する位置に決定される。超音波プローブUPの角度は、粒子線(すなわち、ビームパスBP)の人体入射角度に略一致するように決定される。超音波プローブUPの角度は、超音波プローブUPの主軸と人体接触面との成す角度により規定される。粒子線の人体入射角度は、例えば、粒子線のビーム軸と体表領域RSとの成す角度に規定される。超音波プローブUPと超音波走査領域USとの位置関係は、超音波治療時に使用される超音波プローブとその超音波走査領域とに応じて予め設定されている。なお、超音波走査領域USは、2次元空間(走査面)であっても良いし、一列に配列された複数の走査面により規定される3次元空間であっても良い。超音波走査領域USが2次元空間であるか3次元空間であるかは、ユーザにより任意に選択可能である。
上記の通り、入射点PEの近傍に超音波プローブUPの配置位置を決定することにより、当該配置に位置決めされた超音波プローブUPを介して収集した超音波画像に基づいて飛程を高精度に推定することが可能になる。なお、図5において治療計画CT画像の断面と超音波走査領域USの走査面とが略同一平面であることを前提としているが、本実施形態はこれに限定されない。超音波走査領域USが腫瘍領域RCを包含していれば、治療計画CT画像の断面と超音波走査領域USの走査面とは如何なる位置関係にあっても良い。
ステップSCが行われると粒子線治療装置1は、粒子線治療を行う(ステップSC)。ステップSCにおいて粒子線治療装置1の主制御回路63は、本実施形態に係る動作プログラムを実行する。本実施形態に係る動作プログラムの実行により主制御回路63は、超音波画像を利用してブラッグピークの照準点の即時的推定及び当該照準点を利用した粒子線の制御を行う。
以下、図3のステップSCにおける粒子線治療システム100の処理の流れについて説明する。図6は、図3のステップSCにおける粒子線治療システム100の処理の流れを示す図である。
図6に示すように、まず超音波診断装置3は、粒子線治療装置1による粒子線の照射前において、ステップSBにおいて決定されたプローブ配置位置に配置された超音波プローブを用いて超音波画像を収集する(ステップSC1)。
図7は、粒子線治療時における被検体P周辺の概観図である。図7に示すように、粒子線治療時において図示しない照射器35から粒子線が被検体Pに向けて照射される。技師等の医療従事者は、超音波プローブUPを、ステップSBにおいて決定された配置位置に位置決めする。なお、アーム52が自動で位置合わせされるものである場合は、ステップSBにおいて決定された配置位置に自動的に位置合わせされる。ステップSBにおいて決定された配置は、例えば、治療室等に設置された表示機器に図で表示されると良い。技師等の医療従事者は、表示機器57に表示された図を参照するとともに、投光器により被検体P上に示された粒子線の照射領域内に超音波プローブUPが入らないように、超音波プローブUPを位置合わせする。また、ステップSBにおいて決定された配置は、表示回路57に超音波プローブUPの座標として数値で示しても良い。この場合、医療従事者は、超音波プローブUPに設けられた位置センサや角度センサによって検出される座標がステップSBおいて決定された配置の座標と一致するように、超音波プローブUPを位置合わせする。
また、演算回路51は、上述したように配置判定機能518により、超音波プローブUPの配置が適当であるか否かを判定する。すなわち、演算回路51は、超音波プローブUPの配置が、ステップSBによって決定された配置に対して許容されるずれの範囲内にあるか否かの判定を行う。具体的には、演算回路51は、超音波プローブUPの位置センサや角度センサによって検出される座標とステップSBにおいて決定された配置の座標とのずれを評価したり、治療室内に設けられたカメラによって検出された超音波プローブUPの座標に基づいて当該判定を行うことができる。
超音波診断装置3のコンソール50は、当該超音波プローブUPを介して被検体Pの体内を超音波で走査する。超音波プローブUPがステップSBにおいて決定された配置位置に配置されているので、超音波走査領域には治療対象の腫瘍が含まれている。超音波診断装置3のコンソール50は、超音波プローブUPからのエコー信号に基づいて超音波画像を繰り返し生成する。生成された超音波画像は、例えば、1フレーム単位で粒子線治療装置1に即時的に供給される。粒子線治療時において被検体Pは呼吸をしており、呼吸に伴い胸部や腹部が変形する。粒子線の実飛程は被検体体表の入射点からの距離なので、全ての時相においてブラッグピークの照準を意図したブラッグピークの計画点に合せることは困難である。そのため、本実施形態に係る粒子線治療装置1は、超音波画像を利用して実際にブラッグピークの照準が合っている位置を推定する。
以下のステップSC2-SC11は超音波画像1フレーム単位で行われる。なお、超音波診断装置3により収集された全てのフレームについてステップSC2-SC11の処理を行う必要はなく、5フレーム毎等の所定フレーム毎に行われても良い。
ステップSC1が行われると粒子線治療装置の主制御回路63は、演算回路51に位置合わせ機能512を実行させる(ステップSC2)。ステップSC2において演算回路51は、治療計画CT画像を超音波画像に位置合わせする。
図8は、ステップSC2の処理を説明するための図である。図8に示すように、ステップSC2において演算回路51は、治療計画CT画像ICを超音波画像IUに位置合わせする。超音波画像IUは、粒子線治療時に即時的に収集され、治療計画CT画像ICは、粒子線治療時よりも前段の治療計画時(あるいは治療計画時よりも前段)に収集されている。すなわち、超音波画像IUは、治療計画CT画像ICに比して、現在の被検体P体内を正確に描出している。位置合わせにより、超音波画像IUの座標系と治療計画CT画像ICの座標系とが一致する。位置合わせの手法としては、線形変換による剛体位置合わせや、非線形変換による非剛体位置合わせ(デフォーマブルレジストレーション)等の如何なる方法が用いられても良い。しかしながら、以下のように飛程を高精度に推定するためには、非剛体位置合わせが良い。
非剛体位置合わせの場合、治療計画CT画像ICに含まれる被検体領域RPCや腫瘍領域RCC等が超音波画像IUに合わせて変形される。計画点PPCは腫瘍領域RCCに含まれる一部領域に設定されるので、計画点PPCも腫瘍領域RCC等の変形に応じて位置が移動することとなる。移動後の計画点PPCの位置は、現在、より詳細には超音波画像IU収集時における、ブラッグピークの照準が合わせられるべき解剖学的点を示している。
ステップSC2が行われると主制御回路63は、演算回路51にブラッグピーク計画点特定機能を実行させる(ステップSC3)。ステップSC3において演算回路51は、超音波画像においてブラッグピークの計画点を特定する。具体的には、演算回路51は、まず治療計画CT画像に設定されている計画点の座標を特定する。特定された座標は、治療計画CT画像の座標系での3次元座標である。次に演算回路51は、超音波画像において、治療計画CT画像の座標系での計画点の座標と同一の座標に点をプロットする。プロットされた点は、超音波画像における計画点に対応することとなる。
ステップSC3が行われると主制御回路63は、演算回路51に領域同定機能を実行させる(ステップSC4)。ステップSC4において演算回路51は、超音波画像に含まれる体表領域を同定する。例えば、演算回路51は、超音波画像の画素の輝度値を対象とする閾値処理により体表領域を同定しても良いし、超音波画像の上端に体表領域が存在するという前提条件を利用して体表領域を同定しても良い。あるいは、演算回路51は、輝度値連結処理等の他の画像処理を利用して体表領域を同定しても良い。前述の通り、超音波プローブは体表入射点の近傍に配置されている。従って超音波画像に含まれる体表領域は体表入射点の近傍に位置している。なお、後述のように超音波画像に体表入射点が描出されている場合、体表領域は体表入射点を包含していることとなる。ステップSC4において演算回路51は、必要に応じて超音波画像に含まれる腫瘍領域等の他の画像領域を同定しても良い。
ステップSC4が行われると主制御回路63は、演算回路51にブラッグピーク照準点推定機能を実行させる(ステップSC5)。ステップSC5において演算回路51は、超音波画像においてブラッグピークの照準点を推定する。具体的には、演算回路51は、超音波画像において体表領域RSUから実飛程に対応する距離だけ体内に向けた位置を照準点PBUとしてプロットする。換言すれば、照準点PBUと体表領域との間の直線距離は実飛程に略等しい。この照準点PBUに対して、粒子線のブラッグピークが実際に照準していると推定される。
ステップSC5が行われると主制御回路63は、表示回路57に表示を行わせる(ステップSC6)。ステップS6において表示回路57は、ブラッグピークの計画点と照準点とを明示して超音波画像を表示する。
図9は、ブラッグピークの計画点PPUと照準点PBUとを明示した超音波画像IUの一例を示す図である。図9に示すように、超音波画像IUには体表領域RSUと腫瘍領域RCUとが含まれている。腫瘍領域RCUにはブラッグピークの計画点PPUが重畳されている。図9に示すように、照準点PBUは、被検体Pの呼吸動等により計画点PPUからずれることが想定される。表示回路57は、図9に示すように、ブラッグピークの計画点PPUと照準点PBUとを明示した超音波画像IUを表示する。当該超音波画像IUが表示されることにより医療従事者は、計画点PPUと照準点PBUとの位置関係を明瞭に把握しながら粒子線治療を施術することができる。計画点PPUと照準点PBUとの明示態様として表示回路57は、例えば、計画点PPUと照準点PBUとを、互いに形状や大きさ、色等が異なるマークで表示すると良い。
なお、ブラッグピークの計画点と照準点との表示形態は上記方法のみに限定されない。表示回路57は、以下のように他の表示形態によりブラッグピークの計画点と照準点とを表示しても良い。
図10は、ブラッグピークの計画点PPUと照準点PBUとを明示した超音波画像IUと治療計画CT画像ICとの重畳画像を示す図である。図10に示すように、治療計画画像ICに超音波画像IUが重畳されている。治療計画画像ICは超音波画像IUに位置合わせされているので、超音波画像IUと治療計画CT画像ICとは高精度に重畳する。超音波画像IUにはブラッグピークの計画点PPUと照準点PBUと明示されている。当該表示形態によれば、医療従事者は、治療計画CT画像におけるブラッグピークの計画点PPUと照準点PBUとの位置を把握することができる。
ステップSC6が行われると主制御回路63は、演算回路51に飛程計測機能を行わせる(ステップSC7)。ステップSC7において演算回路51は、体表領域から計画点までの距離(理想飛程)を計測する。
ステップSC7が行われると主制御回路63は、照射系制御回路19に判定機能を行わせる(ステップSC8)。ステップSC8において照射系制御回路19は、計画上の飛程と実際の飛程との差分が許容範囲にあるか否かを判定する。
以下、図11を参照しながら、ステップSC7及びSC8を説明する。図11は、超音波画像IUにおける理想飛程DSPと実飛程DSBとを示す図である。図11に示すように、演算回路51は、理想飛程DSPとして、体表領域RSUから計画点PPUまでの距離を計測し、実飛程DSBとして、体表領域RSUから照準点PBUまでの距離を計測する。より詳細には、理想飛程DSPは体表領域RSUのうちの基準点から計画点PPUまでの距離に規定される。基準点は、図11に示すように、体表領域RSUのうちの体内側ではなく、体表側の画素に設定される。基準点は、例えば、図11に示すように、体表領域RSUのうちの体表側の画素のうちの、計画点PPUから最短距離にある画素に設定される。あるいは、基準点は、超音波画像IUに体表入射点が含まれる場合、当該体表入射点に設定されても良いし、超音波画像IUに体表入射点が含まれない場合、当該体表入射点の近傍に設定されても良い。
理想飛程DSPと実飛程DSBとが計測されると照射系制御回路19は、理想飛程DSPと実飛程DSBとの差分を算出し、算出された差分が予め設定された許容範囲に収まるか否かを判定する。当該差分が大きければ大きいほど、実際に照射器35から照射されている粒子線のブラッグピークが計画点PPUから離れた位置に照準していることを意味する。この場合、腫瘍に計画通りの線量を印加することができず、更に正常組織が損傷するおそれがある。なお、許容範囲は、医療従事者等により任意の値に設定可能である。
なお、理想飛程DSPと実飛程DSBとは超音波画像において計測されることに限定されない。すなわち、理想飛程DSPと実飛程DSBとは、位置合わせ後の治療計画CT画像において計測されても良い。
図12は、治療計画CT画像ICにおける理想飛程DSPと実飛程DSBとを示す図である。図12に示すように、治療計画CT画像ICには体表入射点PEが含まれている。従って、超音波画像において計測する場合に比して、理想飛程DSPと実飛程DSBとをより厳密に計測することができる。すなわち、理想飛程DSPは、体表入射点PEから計画点PPCまでの距離、実飛程DSBは、体表入射点PEから照準点PBCまでの距離として計測される。
ステップSC8において差分が許容範囲にあると判定された場合(ステップSC8:YES)、照射系制御回路19は、ユーザからの入力回路59等を介した治療開始指示を契機として粒子線の照射を開始する(ステップSC9)。ステップSC9において照射系制御回路19は、ステップSAにおいて決定された治療計画情報に従い照射器35を制御して粒子線を被検体P体内の治療対象の腫瘍に照射する。例えば、治療計画時において設定された飛程に応じたエネルギーを有する粒子線が照射される。
ステップSC9が行われると主制御回路63は、計画された全照射が終了したか否かを判定する(ステップSC10)。ステップSC10において全照射が終了していないと判定された場合(ステップSC10:No)、主制御回路63は、再びステップSC2に戻り、粒子線の照射下において、次の超音波画像に基づいてステップSC2からステップSC10までの処理を行う。
一方、ステップSC8において差分が許容範囲にないと判定された場合(ステップSC8:No)、照射系制御回路19は、照射器35を制御して粒子線の照射を停止する(ステップSC11)。粒子線の照射を停止することにより、正常組織の損傷を防止することができる。なお、ステップSC8において粒子線が照射されていない段階において差分が許容範囲にないと判定された場合(ステップSC8:No)、粒子線の照射の停止が継続されることとなる。
ステップSC10において全照射が終了したと判定されるまで又はステップSC11において粒子線の照射が停止されるまで、主制御回路63は、最新の超音波画像に基づいてステップSC2からステップSC11までの処理を行う。
そしてステップSC10において全照射が終了したと判定され場合(ステップSC10:Yes)又はステップSC11において粒子線の照射が停止された場合、主制御回路63は、粒子線治療を終了する。
以上により、粒子線治療時における粒子線治療システム100の処理の流れについての説明を終了する。
なお、上記の図6に示す粒子線治療時における粒子線治療システム100の処理の流れは一例であって種々の変形が可能である。例えば、ステップSC7、SC8及びSC9は省略されても良い。この場合、医療従事者は、ステップSC6において表示回路57により表示された照準点と計画点との位置関係を見て粒子線の照射を継続するか否かを判断すれば良い。
また、上記の図6に示す粒子線治療時における粒子線治療システム100の処理の流れのステップSC6が省略されても良い。この場合、ブラッグピークの計画点と照準点とを明示した超音波画像の表示が行われること無く、照射系制御回路19による粒子線の照射と停止との切り替えが行われることとなる。
上記の実施形態においては一門照射を前提としたが、本実施形態は一門照射に限定されず、多門照射にも適用可能である。この場合、粒子線の各照射方向についてステップSC2-SC11が繰り返されれば良い。
上記の実施形態において治療計画CT画像又は粒子線治療時の超音波画像から被検体Pの体表領域が同定されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、粒子線治療直前に、粒子線治療装置1が設置されている治療室に設置されたX線コンピュータ断層撮影装置により被検体Pを撮影することにより収集されたコーンビームCT画像から体表領域が同定されても良い。これにより演算回路51は、治療計画時の治療計画画像よりも粒子線治療時の被検体形状に近い、粒子線治療直前のCT画像を用いて体表領域を同定することができる。よって高精度にブラッグピークの照準点等を推定することができる。
体表領域を同定するための画像として、粒子線治療直前に超音波診断装置により収集された超音波画像が用いられても良い。この場合、体表入射点に超音波プローブを配置することにより超音波画像が収集されると良い。これにより、収集された超音波画像には体表入射点が描出される。また、超音波プローブの角度が粒子線のビームパスの角度に一致するように超音波プローブが配置されると良い。この超音波プローブの配置により、超音波画像に基づいて理想飛程をより高精度に計測することが可能になる。
また、上記の説明において超音波プローブの配置位置は、超音波走査領域USが腫瘍領域RCを包含可能で、且つ超音波プローブUPが粒子線の被検体Pの体表への入射点近傍に位置するように決定されるとした(第1の配置決定方法)。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、以下の第2の配置決定方法や第3の配置決定方法が考えられる。
図13は、第2の配置決定方法により決定された超音波プローブの配置を示す図である。図13に示すように、第2の配置決定方法において演算回路51は、超音波走査領域USが腫瘍領域RCと入射点PEとを包含可能な超音波プローブUPの配置を決定する。超音波プローブUPの位置PUPは、より詳細には、超音波走査領域USが腫瘍領域RCと入射点PEとの両方を包含可能であり且つ入射点PEから離間する位置に決定される。超音波プローブUPの角度については特に制限はない。粒子線の実飛程は、例えば、以下のように計測される。演算回路51は、超音波画像に含まれる体表入射点PEを同定し、腫瘍領域RCUから体表入射点PEOまでの距離を実飛程として計測する。
第2の配置決定方法により決定された配置に超音波プローブが位置決めされた場合、超音波画像には腫瘍領域と体表入射点とが含まれる。この場合、演算回路51は、超音波画像において体表入射点を特定することができる。例えば、治療計画CT画像に描出された体表入射点の3次元座標を特定し、超音波画像の画素のうちの、特定された3次元座標と同一座標の画素に点をプロットする。プロットされた点が体表入射点に対応する。演算回路51は、超音波画像における体表入射点から計画点までの距離を、理想の飛程として計測することができる。超音波画像におけるブラッグピークの計画点は、図6のステップSC4における方法と同様の方法により特定されれば良い。第2の配置決定方法によれば、上記の第1の配置決定方法に比較して、超音波画像に体表入射点が含まれているので、より厳密に飛程を計測することができる。
図14は、第3の配置決定方法により決定された超音波プローブの配置を示す図である。図14に示すように、第3の配置決定方法において演算回路51は、超音波走査領域USが腫瘍領域RCと当該腫瘍を含む臓器への粒子線の入射点PEOとを包含可能な超音波プローブUPの配置を決定する。第3の配置決定方法は、被検体Pの入射点から腫瘍を含む臓器までの間にエアーがある場合での活用を想定している。具体的には、肺を横切って肝臓内の腫瘍に粒子線を照射する場合が想定される。
図14に示すように、第3の方法に係る治療計画CT画像は、腫瘍を含む肝臓に関する画像領域(以下、肝臓領域と呼ぶ)RLIと、肺臓に関する画像領域(以下、肺臓領域と呼ぶ)RLUとを含む。肺臓領域RLUは肝臓領域RLIよりも体表領域RS側に位置している。腫瘍領域RCUを通るように粒子線のビームパスBPは設定される。粒子線のビームパスBPと肝臓領域RLIの表面との交点は、肝臓領域RLIへの体表入射点PEOに規定される。超音波プローブUPの位置PUPは、超音波走査領域USが腫瘍領域RCと入射点PEOとの両方を包含可能な位置に決定される。超音波プローブUPの角度については特に制限はない。
第3の配置決定方法により決定された配置に超音波プローブが位置決めされた場合、超音波画像には臓器入射点が含まれる。まず演算回路51は、図6のステップSC4における方法と同様の方法により、超音波画像においてブラッグピークの計画点と臓器入射点とを特定する。そして演算回路51は、超音波画像に含まれる肝臓領域への臓器入射点を特定し、臓器入射点から計画点までの第1距離を計測する。次に演算回路51は、治療計画CT画像において体表入射点から臓器入射点までの第2距離を計測する。次に演算回路51は、治療計画CT画像においてビームパスに沿う肺臓領域の経路長(以下、肺臓経路長と呼ぶ)を算出する。そして演算回路51は、第1距離と第2距離との和から肺臓経路長を減じた距離を理想飛程として算出する。第3の配置決定方法によれば、体表入射点から計画点までの間にビームパスに沿ってエアーが存在する場合であっても、より厳密に飛程を計測することができる。
第3の配置決定方法を用いた場合においては、体表情報を用いずに照準点の特定を行うことも可能である。すなわち、肺臓周辺の部位は呼吸による厚みの変化が小さく、第2距離から肺臓経路長を減じた距離は一定とみなすことができるため、超音波画像上において臓器入射点の位置に基づいて照準点を特定することができる。なお、超音波画像上における臓器入射点は、治療計画CT画像ICに基づいて求めても良いし、後述の位置センサによって超音波画像IUと実空間との座標変換を特定することにより、超音波画像IU上にビームパスBPをプロットして求めても良い。
第1の配置決定方法、第2の配置決定方法及び第3の配置決定方法の何れかを用いるかは、予め設定されても良いし、医療従事者等により入力回路59を介して任意に選択されても良い。例えば、第1の配置決定方法と第2の配置決定方法とは、ビームパスに軟部組織が連続している場合に適している。第3の配置決定方法は、ビームパスにエアーが存在している場合に適している。
上記の実施形態において演算回路51は、座標検出機能517を実行し、位置センサからの出力信号を利用して更に高精度にブラッグピークの照準点や実飛程、理想飛程等を推定しても良い。当該位置センサは、例えば、超音波プローブに取り付けられた位置センサや角度センサ(以下、プローブセンサと呼ぶ)である。プローブセンサとしては、例えば、磁気式又は電気式等の既存のセンサ等が利用可能である。また、アーム52の関節部分や伸縮部分にポテンショメータ等によるセンサを設けて、これをプローブセンサとして機能させることもできる。以下、プローブセンサにより規定される実空間座標系を実空間プローブ座標系と呼ぶことにする。
演算回路51は、プローブセンサからの出力信号に基づいて超音波プローブの実空間プローブ座標系における3次元座標を特定する。超音波プローブの実空間プローブ座標系と超音波画像の画像座標系(以下、超音波画像座標系と呼ぶ)とは予め対応付けられている。演算回路51は、超音波プローブの実空間プローブ座標系における3次元座標と、超音波画像に含まれる計画点の超音波画像座標系の座標とに基づいて、当該計画点の実空間プローブ座標系における3次元座標を特定できる。同様に、演算回路51は、超音波プローブの実空間プローブ座標系における3次元座標と、超音波画像に含まれる体表入射点又はその近傍点の超音波画像座標系の座標とに基づいて、当該体表入射点又はその近傍点の実空間プローブ座標系における3次元座標を特定できる。演算回路51は、実空間座標系における体表入射点又はその近傍点の3次元座標と計画点の3次元座標とに基づいて実空間プローブ座標系における理想飛程を推定できる。
体表入射点の実空間プローブ座標系等の実空間座標系における3次元座標の特定は、プローブセンサを利用する方法のみに限定されない。例えば、プローブセンサの代わりに3次元センサが利用されても良い。3次元センサは、距離画像センサや超音波センサが用いられる。3次元センサにより粒子線治療時における体表入射点の3次元座標が検出される。従って3次元センサは、当該3次元センサの感知範囲が被検体Pの体表入射点を含むように設置される。以下、3次元センサにより規定される実空間座標系を実空間3D座標系と呼ぶことにする。当該構成により、演算回路51は、3次元センサからの出力信号に基づいて実空間3D座標系における被検体Pの体表入射点を特定する。これにより、超音波画像に体表入射点が含まれない場合であっても体表入射点の実空間座標系における3次元座標を特定することができる。
体表入射点の3次元座標の特定は、プローブセンサ及び3Dセンサを用いる方法のみに限定されない。例えば、演算回路51は、エピポーラ幾何理論により体表入射点の3次元座標を特定しても良い。具体的には、まず、光学カメラやX線診断装置等により体表入射点を2又は3以上の方向から撮影した画像が収集される。次に演算回路51は、各方向の画像に含まれる体表入射点を、画像処理又は医療従事者等による入力回路59を介した指示に従い特定する。そして演算回路51は、各方向の画像に含まれる体表入射点にエピポーラ幾何を適用して体表入射点の実空間座標系における3次元座標を算出することができる。
更に他の方法により体表入射点の3次元座標を特定しても良い。例えば、粒子線治療時においては被検体Pの呼吸動を抑えるため、被検体Pにベルトが巻かれる。このベルトの表面に磁気式又は電気式等の位置センサが取り付けられても良い。当該位置センサの出力信号に基づいて演算回路51は、実空間座標系における体表入射点の3次元座標を特定することができる。
また、上記図6のステップSC8において照射系制御回路19は、理想飛程と実飛程との差分に応じて粒子線の照射と停止とが切り替えるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、照射系制御回路19は、腫瘍領域又は計画点の位置と実飛程とに基づいて照射と停止とを切り替える。より詳細には、照射系制御回路19は、腫瘍領域又は計画点が粒子線の進行方向に存在し、且つ、腫瘍領域又は計画点が粒子線の実飛程の位置及びその近傍にある場合、粒子線の照射を継続する。一方、照射系制御回路19は、腫瘍領域又は計画点が粒子線の進行方向に存在せず、又は、腫瘍領域又は計画点が粒子線の実飛程の位置及びその近傍にない場合、粒子線を停止する。
腫瘍領域又は計画点が粒子線の進行方向に存在するか否かは、例えば、超音波画像又は治療計画CT画像においてビームパス上又はビームパスの延長線上に腫瘍領域又は計画点が存在するか否かにより判定される。腫瘍領域又は計画点が粒子線の実飛程の位置及びその近傍にあるか否かは、例えば、超音波画像又は治療計画CT画像において、体表領域から実飛程に対応する距離にある位置と腫瘍領域又は計画点の位置との差分を計測し、当該差分が閾値より大きいか否かにより判定される。当該差分が閾値より大きい場合、腫瘍領域又は計画点が粒子線の実飛程の位置及びその近傍にないと判定され、当該差分が閾値より小さい場合、腫瘍領域又は計画点が粒子線の実飛程の位置及びその近傍にあると判定される。この切り替え方式によれば、実飛程と理想飛程との差分のみを考慮する場合に比較して、粒子線のビームパスと腫瘍領域又は計画点との位置関係を考慮して、粒子線の照射と停止とを切り替えることができる。
上記の図6に示す処理の流れにおいては、理想の飛程と実際の飛程との差分が許容範囲にない場合、粒子線の照射が停止されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、差分が許容範囲にない場合、差分が低減されるように実際の飛程が調整されても良い。以下、当該実施例について説明する。
図15は、図3のステップSCにおける粒子線治療システムの処理の他の流れを示す図である。なお以下の説明において、図6と略同一の処理については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図15に示すように、ステップSC1からSC8は図6と同一である。ステップSC8において理想の飛程と実際の飛程との差分が許容範囲にあると判定された場合、(ステップSC8:Yes)、照射系制御回路19は、ユーザからの入力回路59等を介した治療開始指示を契機として粒子線の照射を開始する(ステップSD13)。ステップSD13において照射系制御回路19は、ステップSAにおいて決定された治療計画情報に従い照射器35を制御して粒子線を被検体P体内の治療対象の腫瘍に照射する。例えば、治療計画時において設定された飛程に応じたエネルギーを有する粒子線が照射される。
ステップSD13が行われると主制御回路63は、計画された全照射が終了したか否かを判定する(ステップSD14)。ステップSD14において全照射が終了していないと判定された場合(ステップSD14:No)、主制御回路63は、再びステップSC2に戻り、粒子線の照射下において、次の超音波画像に基づいてステップSC2からステップSD14までの処理を行う。
一方、ステップSC8において差分が許容範囲にないと判定された場合(ステップSC8:No)、照射系制御回路19は、差分を略ゼロにするためのエネルギー変調値を決定する(ステップSD9)。エネルギー変調値は、照射器35から照射される粒子線の現在のエネルギー設定値から変更後のエネルギー設定値の差分に規定される。照射系制御回路19は、例えば、差分/変調値テーブルを利用してエネルギー変調値を決定する。差分/変調値テーブルは、例えば、記憶回路61に記憶される。
図16は、図15のステップSD9において利用される差分/変調値テーブルの一例を示す図である。差分/変調値テーブルは、理想の飛程と実際の飛程との差分各々についてエネルギー変調値を関連付ける。差分は、理想の飛程に対する実際の飛程の減算値に規定される。差分/変調値テーブルにおいては、上限値から下限値まで、例えば、1mm毎に差分値が登録される。エネルギー変調値は、飛程を対応差分値だけ拡大又は縮小させるための、照射器35から照射される粒子線のエネルギーの現在の設定値から変更後の設定値の減算値に規定される。例えば、実際の飛程が理想の飛程よりも-10mmだけ短い場合、実際の飛程を+10mmだけ拡大させる必要がある。実際の飛程を+10mmだけ拡大させるためには、例えば、被検体Pに入射する粒子線のエネルギーが+1MeVだけ増加させる必要があるとする。この場合、図16に示すように、差分値「-10mm」に対応するエネルギー変調値は「+1MeV」である。差分値とエネルギー変調値との関係は、予め実験等により定められると良い。差分値とエネルギー変調値とは、医療従事者等により入力回路59を介して任意に変更可能である。
照射系制御回路19は、ステップSC8において算出された差分に基づいて、差分/変調値テーブルを利用して、当該差分に関連付けられたエネルギー変調値を決定する。具体的には、ステップSC8において算出された差分が差分/変調値テーブルに入力されると当該差分に関連付けられたエネルギー変調値が出力される。なお、エネルギー変調値の決定方法は、差分/変調値テーブルを利用する方法のみに限定されない。例えば、差分値とエネルギー変調値との関係式に従い、差分値からエネルギー変調値が算出されても良い。
ステップSD9が行われた場合、主制御回路63は、エネルギー変調の可否の問い合わせ画面を表示回路57に表示する(ステップSD10)。
図17は、図15のステップSD10において表示される問い合わせ画面ISの一例を示す図である。問い合わせ画面ISは、表示欄IS1、承諾ボタンIS2及び拒否ボタンIS3を有する。表示欄IS1は、エネルギー変調を許可するか否かの問い合わせに関するメッセージが表示される。例えば、図17に示すように、「ブラッグピークの照準点を計画点に合わせるために粒子線エネルギーを変更しますか?」が表示される。承諾ボタンIS2は、エネルギー変調の承諾を粒子線治療装置1に通知するための表示ボタンである。承諾ボタンIS2が押下された場合、エネルギー変調の許可信号が主制御回路63に供給される。拒否ボタンIS3は、エネルギー変調の拒否を粒子線治療装置1に通知するための表示ボタンである。拒否ボタンIS3が押下された場合、エネルギー変調の拒否信号が主制御回路63に供給される。
問い合わせ画面ISが表示されると主制御回路63は、入力回路59を介した、医療従事者からの回答を待機する(ステップSD11)。エネルギー変調が拒否された場合(ステップSD11:NO)、主制御回路63は、拒否信号を照射系制御回路19に供給する。照射系制御回路19は、照射器35を制御して粒子線の照射を停止する。
一方、エネルギー変調が許可された場合(ステップSD11:YES)、主制御回路63は、許可信号とエネルギー変調値とを照射系制御回路19に供給する。照射系制御回路19は、実際の飛程と計画上の飛程との差分を略ゼロにするために、エネルギー変調値に従い照射器35を制御する。エネルギーの変調は、例えば、回転部33に設けられたリッジフィルタ、ボーラスフィルタ、マルチリーフコリメータ、レンジシフタ等の種々の粒子線フィルタの粒子線照射方向に関する厚みを変更することにより行われる。例えば、横方向位置に応じて厚みが異なる粒子線フィルタがアクチュエータ等により当該横方向にスライド可能に照射器35に内蔵される。粒子線エネルギーを増大させる場合、照射系制御回路19は、アクチュエータを駆動して当該粒子線フィルタを横方向にスライドして、ビームパス上における当該粒子線フィルタの厚みを増大させる。粒子線エネルギーを減少させる場合、照射系制御回路19は、アクチュエータを駆動して当該粒子線フィルタを横方向にスライドして、ビームパス上における当該粒子線フィルタの厚みを低減させる。
なお、エネルギーの変調は、加速器11により与えられる粒子線のエネルギーを変更することにより行われても良い。この場合、主制御回路63は、許可信号とエネルギー変調値とを加速系制御回路13に供給する。加速系制御回路13は、エネルギー設定値とエネルギー変調値との加算値を算出し、当該加算値に対応するエネルギーの粒子線が照射器35から照射されるように粒子線を加速させる。これにより、理想の飛程と実際の飛程との差分を略ゼロにすることができる。
ステップSD14において全照射が終了した判定されるまで又はステップSD12において粒子線の照射が停止された場合、主制御回路63は、最新の超音波画像に基づいてステップSC2からステップSD14が繰り返される。そして、ステップSD14において全照射が終了した判定された場合(ステップSD14:YES)又はステップSD12において粒子線の照射が停止された場合、主制御回路63は、粒子線治療を終了する。
このように、本実施形態によれば、理想の飛程と実際の飛程との差分が略ゼロになるように、被検体Pに入射する粒子線のエネルギーを調節することができる。これにより、実際の飛程を理想の飛程に略リアルタイムで追従させることができる。従って図6に示す処理の流れとは異なり、図15に示す処理の流れは、差分が許容範囲にない場合であっても粒子線の照射を停止することなく、粒子線治療を続行させることができる。これにより、粒子線治療のスループットを向上させることができる。
なお、図15に示す処理の流れはこれに限定されない。例えば、図15に示す処理の流れは、ステップSC8において差分が許容範囲でない場合、エネルギー変調値が決定されている。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップSC8において差分が許容範囲から大きく外れている場合、エネルギー変調値が決定されず、粒子線の照射が停止されても良い。例えば、差分/変調値テーブルに登録されている差分値の最大値よりも、ステップSC8において算出された差分が大きい場合、粒子線の照射が停止されても良い。
また、上記の実施形態においてプローブ配置決定機能511、位置合わせ機能512、領域同定機能513、ブラッグピーク計画点特定機能514、ブラッグピーク照準点推定機能515、飛程計測機能516及び座標検出機能517は、粒子線治療装置1の演算回路51が実行するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、プローブ配置決定機能511、位置合わせ機能512、領域同定機能513、ブラッグピーク計画点特定機能514、ブラッグピーク照準点推定機能515、飛程計測機能516及び座標検出機能517の少なくとも一機能は、超音波診断装置3や治療計画装置5に実装されても良い。
また、上記の実施形態においては、粒子線治療時において収集された超音波画像を利用して図6又は図15の処理が行われるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、放射線治療前に同一患者の同一治療部位について時系列の超音波画像が収集されている場合、当該超音波画像に基づいて図6のステップSC2-SC10又は図15のステップSC2-SD14が行われても良い。
上記の説明の通り、本実施形態に係る粒子線治療システム100は、ガントリ17、超音波診断装置3、演算回路51及び表示回路57を有する。ガントリ17は、被検体Pに粒子線を照射する。超音波診断装置3は、超音波プローブを介して前記被検体Pを超音波で走査し、被検体Pの腫瘍に関する超音波画像を収集する。演算回路51は、治療計画時において決定されたブラッグピークの第1の計画点に解剖学的に略一致する、超音波画像におけるブラッグピークの第2の計画点を特定する。演算回路51は、超音波画像に含まれる体表領域とガントリ17により照射される粒子線の実際の飛程とに基づいて、ガントリ17により照射される粒子線のブラッグピークの照準点を推定する。表示回路57は、第2の計画点と照準点とを明示して超音波画像を表示する。
上記の構成により、本実施形態に係る演算回路51は、粒子線治療時においてガントリ17から照射されている粒子線のブラッグピークが照準している位置である照準点を、比較的安価且つコンパクトな超音波診断装置により収集される超音波画像に基づいて推定することができる。表示回路57は、推定された照準点と計画点とを明示して超音波画像を表示することにより、医療従事者等に照準点と計画点との位置関係を明瞭に把握させることができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、簡易にブラッグピークの位置を確認することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。