以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るウィンドウフィルムは、基材と、当該基材の一方の面側に積層された粘着剤層とを備えて構成される。そして、粘着剤層を構成する粘着剤は、ポリロタキサン化合物を含有する。
ポリロタキサン化合物は、環状分子とそれを貫通する直鎖状分子との機械的結合を有しており、環状分子は直鎖状分子上を自由に移動することが可能となっている。かかる構造に基づくスライディング効果により、得られる粘着剤は、高い応力緩和性と可塑効果とを発揮する。そのため、ポリロタキサン化合物を含有する粘着剤によって構成される粘着剤層は、凹凸形状の転写性に優れたものとなる。したがって、得られるウィンドウフィルムの粘着剤層には、所望の凹凸形状を転写することができ、粘着剤層の粘着面の凹凸形状について選択性を得ることができる。なお、粘着剤層の粘着面とは、粘着剤層における基材とは反対側の面であって、被着体に接触する側の面の全体をいう。
また、粘着剤層を構成する粘着剤がポリロタキサン化合物を含有することにより、粘着剤層の粘着面に凹凸形状が転写された場合に、当該凹凸形状は良好に形状維持され易いものとなる。そのため、当該ウィンドウフィルムを被着体に貼付する時の比較的低い圧力での押圧では、粘着面の凹凸形状が潰れることが抑制される。したがって、被着体貼付時に、粘着剤層の粘着面と被着体との間の空気が、当該粘着面の凹凸形状によって形成される空気の流路を通って外側に抜け易い。これにより、貼付時に粘着面と被着体との間に空気溜まりができることが効果的に抑制される。また、上記のように粘着面の凹凸形状が維持された状態では、粘着剤層と被着体との接触面積が比較的小さく、粘着力も比較的低くなる。したがって、被着体に貼付した初期の段階では、ウィンドウフィルムはリワーク性に優れる。
さらに、粘着剤層を構成する粘着剤がポリロタキサン化合物を含有することにより、被着体に貼付されたウィンドウフィルムを、スキージ等を使用して比較的高い圧力で押圧すると、粘着面の凹凸形状が消失する。そのため、粘着面の凹凸形状の存在によってウィンドウフィルムの透明度が低くなることが抑制され、ウィンドウフィルムとしての機能が問題なく発揮され、外観も良好なものとなる。
本実施形態に係る凹凸形状転写前のウィンドウフィルムにおいては、粘着剤層における基材とは反対側に、剥離面が平面状の剥離シート(第1の剥離シート)が、当該剥離面が粘着剤層に接するように積層されていることが好ましい。また、本実施形態に係る凹凸形状転写後のウィンドウフィルムにおいては、剥離面が凹凸形状となっている剥離シート(第2の剥離シート)が、当該剥離面が粘着剤層に接するように積層されており、もって、粘着剤層の粘着面に、上記第2の剥離シートの剥離面の凹凸形状が転写された凹凸形状が形成されていることが好ましい。ここで、本明細書における剥離シートの剥離面とは、粘着剤層と接触する側の面であって、当該粘着剤層に対して剥離性を有する面をいい、剥離処理の有無は問わない。
〔凹凸形状転写前のウィンドウフィルム〕
本実施形態に係る凹凸形状転写前のウィンドウフィルムの一例としての具体的構成を図1に示す。図1に示すように、本実施形態に係るウィンドウフィルム(凹凸形状転写前)1は、基材2と、基材2の一方の面側に積層された粘着剤層(凹凸形状転写前)3と、粘着剤層3における基材2とは反対側に積層された第1の剥離シート41とを備えて構成される。
1.各部材
1-1.基材
本実施形態に係るウィンドウフィルム1の基材2としては、ウィンドウフィルムに通常用いられる基材を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ-1-ブテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエーテルサルフォン系樹脂;ポリエチレンサルファイド系樹脂;スチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;セルロースアセテート等のセルロース系樹脂等からなるフィルムもしくはそれらの積層フィルム(以下、まとめて「プラスチックフィルム」という場合がある。)、または当該プラスチックフィルムを主体とするものが好ましい。なお、「プラスチックフィルムを主体とする」とは、プラスチックフィルムよりも薄い所望の層を備えていてもよいことを意味する。
上記プラスチックフィルムの中でも、機械的強度や経済性に優れたポリオレフィンフィルムおよびポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
上記プラスチックフィルムは、用途に応じて、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいし、反射膜を備えていてもよい。反射膜を備える場合、プラスチックフィルムに、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、インジウム等の金属が蒸着されていてもよい。
また、上記プラスチックフィルムには、所望の機能性層が積層されていてもよい。例えば、プラスチックフィルムにおける粘着剤層3とは反対側の面には、ハードコート層が積層されていてもよい。
さらに、上記プラスチックフィルムにおいては、粘着剤層3との密着性を向上させる目的で、所望により酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、樹脂フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果及び操作性の面から好ましく用いられる。
基材2の厚さは、特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常、5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。特に、ガラスが割れた時のガラス飛散防止性の観点からは、40μm以上であることが好ましい。また、基材2の厚さは、500μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。
1-2.粘着剤層(凹凸形状転写前)
本実施形態における粘着剤層3を構成する粘着剤は、ポリロタキサン化合物を含有する。当該粘着剤の種類としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、ポリロタキサン化合物の作用が発揮され易く、粘着物性にも優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいが、ポリロタキサン化合物の作用を良好に発揮するために、活性エネルギー線非硬化性のものであることが好ましい。活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤としては、特に架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、ポリロタキサン化合物(C)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)から形成された粘着剤(粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤)であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、前述した効果が発揮され易く、また、良好な粘着力および所定の凝集力を発揮するため、耐久性にも優れたものとなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
(1)粘着性組成物Pの成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
上記反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(B)との反応性に優れ、被着体への悪影響の少ない水酸基含有モノマーが特に好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、下限値として0.5質量%以上含有することがより好ましく、1質量%以上含有することが好ましく、特に3質量%以上含有することが好ましく、さらには12質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、上限値として30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成されて所定の凝集力を有することとなり、凹凸形状転写性、貼付時における凹凸形状維持性および貼付後における凹凸形状消失性のバランスを良好に図ることができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましく、さらには(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上含有することが好ましく、特に40質量%以上含有することが好ましく、さらには50質量%以上含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の下限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は好適な粘着性を発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを99質量%以下含有することがより好ましく、97質量%以下含有することが好ましく、特に95質量%以下含有することが好ましく、さらには80質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に反応性官能基含有モノマー等の他のモノマー成分を好適な量導入することができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することも好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤を柔軟性に優れたものとすることができる。これにより、粘着剤は、凹凸形状転写性により優れたものとなる。
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の相互間の距離を適切にし、粘着剤により高い応力緩和性を付与する観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に応力緩和性を付与する観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
上記脂環式構造含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた段差追従性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル(脂環式構造の炭素数:10)、(メタ)アクリル酸アダマンチル(脂環式構造の炭素数:10)または(メタ)アクリル酸イソボルニル(脂環式構造の炭素数:7)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。脂環式構造含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の凹凸形状転写性がより優れたものとなる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤に所定の極性を付与し、ある程度の極性を有する被着体(特にガラス等)に対しても、親和性に優れたものとすることができる。上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に2質量%以上含有することが好ましく、さらには3質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該窒素原子含有モノマーを20質量%以下含有することが好ましく、特に15質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤が、ガラス等に対してより優れた粘着力を発揮することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、直鎖状のポリマーであることが好ましい。直鎖状のポリマーであることにより、分子鎖の絡み合いが起こりやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、貼付時に凹凸形状を維持し易い粘着剤が得られ易い。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより、高分子量のポリマーが得られやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、貼付時に凹凸形状を維持し易い粘着剤が得られ易い。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として20万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには40万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記以上であると、得られる粘着剤が貼付時に凹凸形状をより維持し易いものとなる。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましく、さらには100万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記以下であると、得られる粘着剤の凹凸形状転写性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、粘着性組成物Pの加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を良好に形成することが可能となる。これにより、得られる粘着剤は所望の凝集力を有し得るものとなる。
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記範囲にあることで、得られる粘着剤は所定の凝集力を有することとなり、凹凸形状転写性、貼付時における凹凸形状維持性および貼付後における凹凸形状消失性のバランスを良好に図ることができる。
(1-3)ポリロタキサン化合物(C)
ポリロタキサン化合物(C)は、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、かつ、直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなる化合物である。このポリロタキサン化合物(C)においては、環状分子が直鎖状分子上を自由に移動することが可能であるが、ブロック基により環状分子は直鎖状分子からは抜け出せない構造となっている。すなわち、直鎖状分子および環状分子は、共有結合等の化学結合ではなく、いわゆる機械的結合により、スライディング効果を発揮しつつ、その形態を維持するものとなっている。本実施形態に係る粘着剤(粘着性組成物P)が、かかる機械的結合を有するポリロタキサン化合物(C)を含有することにより、得られる粘着剤は、凹凸形状転写性に優れたものとなり、かつ、貼付時における凹凸形状維持性および貼付後における凹凸形状消失性の効果も良好に発揮される。
本実施形態におけるポリロタキサン化合物(C)は、環状分子として環状オリゴ糖を有することが好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の環状分子として環状オリゴ糖を使用することにより、適切な環径の選択が可能となり、それにより、直鎖状分子上で環状分子が移動することによる効果が発現しやすい。また、上記環状オリゴ糖が反応性基として水酸基を有すると、イソシアネート系架橋剤との反応が容易である。これにより、当該イソシアネート系架橋剤を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とポリロタキサン化合物(C)(の環状分子)とが架橋され、凝集力を高く維持しつつ、架橋体としての柔軟性が著しく向上する。その結果、得られる粘着剤は、凹凸形状転写性、貼付時における凹凸形状維持性および貼付後における凹凸形状消失性のいずれもがより優れたものとなる。さらに、様々な置換基等の導入も容易であり、それにより、ポリロタキサン化合物(C)とその他の成分との相溶性をポリロタキサン化合物(C)によって調整することが可能となる。さらに、環状オリゴ糖であれば、入手も容易であるという利点もある。なお、本明細書において、「環状分子」または「環状オリゴ糖」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で移動可能であれば、環状分子は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
環状オリゴ糖としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく挙げられ、中でも特にα-シクロデキストリンが好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の環状分子は、ポリロタキサン化合物(C)中または粘着剤(粘着性組成物P)中で2種以上混在していてもよい。
ポリロタキサン化合物(C)の環状分子(環状オリゴ糖)が、反応性基として水酸基を有する場合、その水酸基は、環状オリゴ糖がオリジナル(修飾前の状態をいう。)で有する水酸基であってもよいし、環状オリゴ糖に置換基として導入された水酸基であってもよい。
上記環状分子の水酸基価は、下限値として10mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることが特に好ましい。水酸基価の下限値が上記以上であると、ポリロタキサン化合物(C)がイソシアネート系架橋剤と十分に反応することができる。また、上記環状分子の水酸基価は、上限値として1000mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが特に好ましい。水酸基価の上限値が上記の値を超えると、同一の環状分子において多数の架橋が生じることにより、当該環状分子自体が架橋点となる。その結果、ポリロタキサン化合物(C)全体としての架橋点の効果を発揮できなくなり、得られる粘着剤にて所望の緩和弾性率が達成できなくなる場合がある。
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子は、環状分子に包接され、共有結合等の化学結合でなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの直鎖状分子は、粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子の数平均分子量は、下限値として3,000以上であることが好ましく、特に10,000以上であることが好ましく、さらには20,000以上であることが好ましい。数平均分子量の下限値が上記以上であると、環状分子の直鎖状分子上での移動量が確保され、粘着剤の応力緩和性が十分に得られる。また、ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子の数平均分子量は、上限値として300,000以下であることが好ましく、特に200,000以下であることが好ましく、さらには100,000以下であることが好ましい。数平均分子量の上限値が上記以下であると、ポリロタキサン化合物(C)の溶媒への溶解性や(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性が良好になる。
ポリロタキサン化合物(C)のブロック基は、環状分子が直鎖状分子により串刺し状になった形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。
具体的には、ポリロタキサン化合物(C)のブロック基は、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等、あるいは、数平均分子量1,000~1,000,000の高分子の主鎖または側鎖等が好ましく、これらのブロック基は、ポリロタキサン化合物(C)中または粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
以上説明したポリロタキサン化合物(C)は、従来公知の方法(例えば特開2005-154675に記載の方法)によって得ることができる。
本実施形態に係る粘着性組成物P中におけるポリロタキサン化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには5質量部以上であることが好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の含有量の下限値が上記であると、得られる粘着剤層3の凹凸形状転写性、貼付時における凹凸形状維持性および貼付後における凹凸形状消失性のいずれもがより優れたものとなる。また、ポリロタキサン化合物(C)の含有量は、上限値として50質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の含有量の上限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および架橋剤(B)の含有量を確保して、得られる粘着剤の凝集力および粘着力をより優れたものにすることができる。
(1-4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
(2)粘着性組成物Pの製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、ポリロタキサン化合物(C)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ポリロタキサン化合物(C)、ならびに所望により添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
(3)粘着剤の製造
本実施形態における粘着剤層3を構成する粘着剤は、好ましくは粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
加熱処理後は、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けることが好ましい。この養生期間を設けることにより、架橋反応がほぼ完全に完了し、凝集力の高い粘着剤が形成される。
上記の加熱処理および養生により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)(およびポリロタキサン化合物(C))が十分に架橋されて架橋構造が形成された粘着剤が得られる。かかる粘着剤は、優れた応力緩和性および所定の凝集力を有する。そのため、当該粘着剤によって構成される粘着剤層3は、凹凸形状転写性、貼付時における凹凸形状維持性および貼付後における凹凸形状消失性に優れたものとなる。
(4)粘着剤層の厚さ
本実施形態に係るウィンドウフィルム1における粘着剤層3の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として、2μm以上であることが好ましく、特に4μm以上であることが好ましく、さらには25μm以上であることが好ましい。粘着剤層3の厚さの下限値が上記であることにより、凹凸形状の転写性および凹凸形状消失性により優れたものとなる。
また、第1の粘着剤層31の厚さは、上限値として、100μm以下であることが好ましく、特に80μm以下であることが好ましく、さらには60μm以下であることが好ましい。粘着剤層3の厚さの上限値が上記であることにより、貼付時における凹凸形状維持性がより優れたものとなる。
(5)物性
(5-1)ゲル分率
粘着剤層3を構成する粘着剤のゲル分率は、10%以上であることが好ましく、特に20%以上であることが好ましく、さらには30%以上であることが好ましい。また、当該粘着剤のゲル分率は、70%以下であることが好ましく、特に60%以下であることが好ましく、さらには50%以下であることが好ましい。上記粘着剤のゲル分率が上記の範囲にあることで、粘着剤が所定の凝集力を有することとなり、粘着剤層3の凹凸形状転写性、貼付時における凹凸形状維持性および貼付後における凹凸形状消失性がより優れたものとなる。なお、ゲル分率の測定方法は、後述の試験例に示す通りである。
(5-2)緩和弾性率
粘着剤層3を構成する粘着剤の23℃、300秒後の緩和弾性率G(300)は、2500Pa以下であることが好ましく、特に2300Pa以下であることが好ましく、さらには2000Pa以下であることが好ましい。また、当該緩和弾性率G(300)は、500Pa以上であることが好ましく、750Pa以上であることがより好ましく、特に1000Pa以上であることが好ましく、さらには1600Pa以上であることが好ましい。上記粘着剤の緩和弾性率G(300)が上記の範囲にあることで、粘着剤層3の凹凸形状転写性、貼付時における凹凸形状維持性および貼付後における凹凸形状消失性がより優れたものとなる。
なお、300秒後の緩和弾性率G(300)とは、JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませてから300秒後に測定される緩和弾性率をいうものとする。具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
1-3.第1の剥離シート
本実施形態における第1の剥離シート41は、凹凸形状転写前の粘着剤層3を保護するものとして、または凹凸形状転写前の粘着剤層3を形成するための工程シートとして機能する。
本実施形態における第1の剥離シート41は、剥離面が平面状となっている。したがって、第1の剥離シート41としては、一般的な剥離シートを使用することができる。
かかる第1の剥離シート41としては、例えば、プラスチックフィルムの片面に剥離剤層を形成したものを好ましく使用することができる。プラスチックフィルムの種類および剥離剤層を構成する剥離剤としては、後述する第2の剥離シート42にて例示するものを使用することができる。
第1の剥離シート41の厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
2.ウィンドウフィルム(凹凸形状転写前)の製造
ウィンドウフィルム1の一製造例として、粘着剤層3の形成に上記粘着性組成物Pを使用した場合について説明する。
最初に、基材2の片面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成する。その後、当該塗布層に、第1の剥離シート41の剥離面を貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層3となる。これにより、上記ウィンドウフィルム1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
ウィンドウフィルム1の他の製造例としては、第1の剥離シート41の剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に基材2を積層する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層3となる。これにより、上記ウィンドウフィルム1が得られる。
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
以上説明したウィンドウフィルム1における粘着剤層3は、凹凸形状の転写性に優れる。そのため、当該粘着剤層3に対して、所望の凹凸形状を有する剥離シート等を圧着することにより、当該粘着剤層3に所望の凹凸形状を転写することができる。したがって、ウィンドウフィルム1における粘着剤層3は、その粘着面の凹凸形状について選択性を有する。
〔凹凸形状転写後のウィンドウフィルム〕
本実施形態に係る凹凸形状転写後のウィンドウフィルムの一例としての具体的構成を図2に示す。図2に示すように、本実施形態に係るウィンドウフィルム(凹凸形状転写後)1Aは、基材2と、基材2の一方の面側に積層された粘着剤層(凹凸形状転写後)3Aと、粘着剤層3Aにおける基材2とは反対側に積層された第2の剥離シート42とを備えて構成される。
1.各部材
1-1.基材
基材2は、凹凸形状転写前のウィンドウフィルム1の基材2である。
1-2.粘着剤層(凹凸形状転写後)
本実施形態における粘着剤層(凹凸形状転写後)3Aは、剥離面が凹凸形状となっている第2の剥離シート42が積層されていることにより、粘着面に当該凹凸形状が転写され、当該凹凸形状が反転した凹凸形状を有するものとなっている。
粘着剤層3Aが粘着面に有する凹凸形状は、貼付時に粘着面と被着体との間に巻き込まれる空気が、ウィンドウフィルム1Aの外部に抜けるような凹部(溝)と、被着体と密着し、所定の粘着力を確保するための凸部とを有することが好ましい。
粘着剤層3Aの粘着面の一例を示す平面図を図3に示す。本実施形態における粘着剤層3Aの粘着面には、複数の平面視正三角形の凸部51と、それら凸部51の相互間に位置する溝状の凹部52とが形成されている。複数の凸部51は、隣り合う正三角形の凸部51同士が、互いに上下逆さの関係になるように交互に形成されている。
凸部51の平面視形状は、正三角形に限定されるものではなく、任意の三角形であってもよいし、四角形、六角形、八角形等の任意の多角形であってもよいし、円形状、楕円形状、∞状等の任意の形状であってもよい。中でも、凹部52の平面視形状を直線状にして、凸部51の被着体に対する接触面積を大きく取ることのできる多角形状が好ましい。
凹部52の深さの下限値は、1μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることが好ましく、さらには15μm以上であることが好ましい。凹部52の深さの下限値が上記であることにより、ウィンドウフィルム1Aを貼付するときに、粘着剤層3Aの粘着面と被着体との間の空気が凹部52を通って排出され易く、凹部52を介したエア抜け性を良好に確保することができる。一方、凹部52の深さの上限値は、90μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましい。凹部52の深さの上限値が上記であることにより、被着体貼付後に比較的高い圧力でウィンドウフィルム1Aを押圧することにより、凹部52(および凸部51)を消失させ易くなる。
凹部52の断面形状(側面視形状)は、特に限定されることなく、例えば、矩形であってもよいし、V字状であってもよいし、U字状であってもよい。
凹部52の幅の下限値は、10μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。凹部52の幅の下限値が上記であることにより、ウィンドウフィルム1Aを貼付するときに、粘着剤層3Aの粘着面と被着体との間の空気が凹部52を通って排出され易く、凹部52を介したエア抜け性を良好に確保することができる。一方、凹部52の幅の上限値は、200μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。凹部52の幅の上限値が上記であることにより、被着体貼付後に比較的高い圧力でウィンドウフィルム1Aを押圧することにより、凹部52(および凸部51)を消失させ易くなる。
粘着剤層3の粘着面においては、任意の直径0.5~2.0mmの円内に凹部52が存在することが好ましく、特に任意の直径0.5~1.5mmの円内に凹部52が存在することが好ましく、さらには任意の直径1mmの円内に凹部52が存在することが好ましい。これにより、ウィンドウフィルム1Aを貼付するときに、粘着剤層3Aの粘着面と被着体との間の空気が凹部52を通って排出され易く、凹部52を介したエア抜け性を良好に確保することができる。
なお、粘着剤層3の粘着面における上記溝状の凹部52は、エア抜け性の観点から、ウィンドウフィルム1Aの平面方向の端部まで延在していることが好ましく、また各凹部52は互いに連続していることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
粘着剤層3Aの粘着面における凸部51の面積割合の下限値は、80%以上であることが好ましく、特に85%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。凸部51の面積割合の下限値が上記であることにより、ウィンドウフィルム1Aの被着体への貼付初期における凸部51による接触面積を確保し、被着体への位置決めを良好に行うことができる。一方、粘着剤層3Aの粘着面における凸部51の面積割合の上限値は、99%以下であることが好ましく、特に97%以下であることが好ましく、さらには95%以下であることが好ましい。凸部51の面積割合の上限値が上記であることにより、凹部52の面積割合を確保し、当該凹部52によるエア抜け効果を十分に得ることができる。
凸部51の平面視形状が、図2に示されるように正三角形の場合、当該正三角形の一辺の長さは、800μm以上であることが好ましく、特に900μm以上であることが好ましく、さらには1000μm以上であることが好ましい。また、当該正三角形の一辺の長さは、4000μm以下であることが好ましく、特に3000μm以下であることが好ましく、さらには2000μm以下であることが好ましい。正三角形の一辺の長さが上記範囲内にあることにより、エア抜け性および凹凸形状消失性をより優れたものにすることができる。
1-3.第2の剥離シート
本実施形態における第2の剥離シート42は、その剥離面に、上記粘着剤層3の粘着面に前述した凹凸形状を転写することのできる凹凸形状が形成されている。すなわち、第2の剥離シート42の剥離面には、上記粘着剤層3Aの粘着面の凹凸形状を反転させた凹凸形状が形成されている。具体的には、第2の剥離シート42の剥離面には、粘着剤層3Aにおける粘着面の凸部51に対応する形状の凹部と、粘着剤層3Aにおける粘着面の凹部52に対応する形状の凸部とが形成されている。
第2の剥離シート42は、剥離面に上記のような凹凸形状が形成されているものであれば、特に限定されない。第2の剥離シート42は、剥離性を有する剥離基材のみからなってもよいが、凹凸形状を有する剥離面が良好な剥離性を発揮するために、剥離基材と、剥離基材の少なくとも一方の面側に形成された剥離剤層とを備えることが好ましい。
剥離基材としては、例えば、紙基材、紙基材に熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、プラスチックフィルム、不織布、金属箔、あるいはこれらを含む積層シート等が挙げられる。
上記の中でも、剥離基材としては、エンボス加工によって凹凸形状を形成し易いラミネート紙が好ましく、特に紙基材の両面に熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙が好ましい。紙基材の両面に熱可塑性樹脂をラミネートすることにより、紙基材の耐湿性が向上するとともに、安価で性能に優れた基材を得ることができる。
紙基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙、無塵紙、上質紙等が挙げられる。これらの中でも、エンボス加工による凹凸形状の形成のし易さの観点から、グラシン紙が好ましい。
紙基材の厚さは、40μm以上であることが好ましく、特に80μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。また、紙基材の厚さは、500μm以下であることが好ましく、特に400μm以下であることが好ましく、さらには300μm以下であることが好ましい。紙基材の厚さが上記の範囲内にあることにより、第1の剥離シート41は、エンボス加工によって凹凸形状をより形成し易いものとなる。
紙基材にラミネートする熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等が挙げられる。これらの中でも、エンボス加工による凹凸形状の形成のし易さの観点から、ポリオレフィンが好ましく、特にポリエチレンが好ましい。
熱可塑性樹脂からなるラミネート層の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に15μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。また、ラミネート層の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に70μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。ラミネート層の厚さが上記の範囲内にあることにより、当該ラミネート層に対して、エンボス加工によって凹凸形状をより形成し易いものとなる。
剥離剤層を構成する剥離剤としては、特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、アルキッド樹脂系、オレフィン樹脂系、アクリル系、長鎖アルキル基含有化合物系、不飽和ポリエステル樹脂系、ゴム系、ワックス系等の剥離剤が挙げられ、中でも、コストや剥離性の観点からシリコーン樹脂系の剥離剤が好ましい。
剥離剤層の厚さは、10nm以上であることが好ましく、特に30nm以上であることが好ましく、さらには50nm以上であることが好ましい。また、剥離剤層の厚さは、1000nm以下であることが好ましく、特に500nm以下であることが好ましく、さらには300nm以下であることが好ましい。剥離剤層の厚さが上記の範囲内にあることにより、剥離剤層としての機能が十分に発揮され得るとともに、剥離基材の凹凸形状面における凹部を埋めることなく、剥離剤層を形成することができる。
第2の剥離シート42の剥離面に凹凸形状を形成する方法としては、エンボス加工、レーザ加工、バイト加工等が挙げられる。これらの中でも、凹凸形状の形成容易性から、エンボス加工が好ましい。
エンボス加工によって第2の剥離シート42の剥離面に凹凸形状を形成する場合、剥離剤層を形成する前の剥離基材に対してエンボス加工を行うことが好ましい。これにより、エンボス加工によって剥離剤層が剥離基材から脱離することを防止することができる。
エンボス加工は、粘着剤層3の粘着面に形成したい凹凸形状を有するエンボスロールを用意し、当該エンボスロールを第2の剥離シート42の剥離基材の片面(第2の剥離シート42の剥離面側の面)に圧接し、当該剥離基材に上記凹凸形状を転写することにより行うことができる。
第2の剥離シート42の剥離面における凸部の高さの下限値は、1μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることが好ましく、さらには15μm以上であることが好ましい。また、第2の剥離シート42の剥離面における凸部の高さの上限値は、90μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましい。上記凸部の高さの下限値が上記であることにより、粘着剤層3の粘着面に、前述した好ましい深さの凹部52を確実に形成することができる。
なお、粘着剤層3Aにおける粘着面の凸部の先端面と、第2の剥離シート42の剥離面における凹部の底面との間には、間隙が存在してもよい。このように間隙が存在することにより、粘着剤層3Aから第2の剥離シート42を剥離するときの剥離力を低減させ、粘着剤層3Aに形成された凹凸形状を損なうことなく、第2の剥離シート42を容易に剥離することができる。上記の間隙は、粘着剤層3の厚さよりも、第2の剥離シート42の剥離面における凹凸形状の凸部の高さが大きい場合に形成され得る。
2.ウィンドウフィルム(凹凸形状転写後)の製造
本実施形態に係るウィンドウフィルム1Aを製造するには、前述したウィンドウフィルム1から第1の剥離シート41を剥離し、露出した粘着剤層3に対し、第2の剥離シート42の剥離面を重ね合わせて圧着する。これにより、当該剥離面の凹凸形状を粘着剤層3の粘着面に転写し、当該粘着面に凹凸形状が形成され粘着剤層3Aを得る。このようにして、上記ウィンドウフィルム1Aが製造される。
ここで、粘着剤層3は、架橋構造内にポリロタキサン化合物を含有する。そのため、養生後の粘着剤層3に第2の剥離シート42を積層し、粘着剤層3の粘着面に凹凸形状を転写する場合であっても、粘着剤層3は構成する粘着剤の凝集力を低くする必要がなく、凝集力を高く維持することができる。その結果、粘着剤層3Aは、その粘着面に形成された凹凸形状を維持し易く、ウィンドウフィルム1Aを被着体に貼付する時の押圧によって、当該凹凸形状が潰れることが抑制される。
3.物性
(3-1)貼付直後の粘着力
本実施形態に係るウィンドウフィルム1Aをソーダライムガラスに貼付した直後の粘着力は、下限値として0.5N/25mm以上であることが好ましく、特に1.0N/25mm以上であることが好ましく、さらには1.5N/25mm以上であることが好ましい。上記粘着力の下限値が上記であると、ウィンドウフィルム1Aの被着体への位置決めを良好に行うことができる。一方、上記粘着力の上限値は、25N/25mm以下であることが好ましく、20N/25mm以下であることがより好ましく、15N/25mm以下であることが特に好ましい。上記粘着力の上限値が上記であると、リワーク性に優れたものとなる。なお、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
(3-2)貼付から24時間後の粘着力
本実施形態に係るウィンドウフィルム1Aをソーダライムガラスに貼付してから24時間後の粘着力は、下限値として4N/25mm以上であることが好ましく、特に9.0N/25mm以上であることが好ましく、さらには14N/25mm以上であることが好ましい。上記粘着力の下限値が上記であると、良好な耐久性をもって、ウィンドウフィルム1Aを被着体に貼着させることができる。一方、上記粘着力の上限値は、特に制限されないが、50N/25mm以下であることが好ましく、40N/25mm以下であることがより好ましく、30N/25mm以下であることが特に好ましい。
(3-3)ヘーズ値上昇量
本実施形態に係るウィンドウフィルム1A(凹凸形状転写後)をソーダライムガラスに貼付して得られる積層体のヘーズ値(%;JIS K7136:2000に準じて測定した値。以下同じ)から、前述した実施形態に係るウィンドウフィルム1(凹凸形状転写前)をソーダライムガラスに貼付して得られる積層体のヘーズ値(%)を差し引いた値であるヘーズ値上昇量(ポイント)は、3.0ポイント以下であることが好ましく、1.0ポイント以下であることがより好ましく、特に0.5ポイント以下であることが好ましく、さらには0.3ポイント以下であることが好ましい。上記ヘーズ値上昇量は、粘着面の凹凸形状の残存割合に起因するものである。当該ヘーズ値上昇量が上記であることにより、凹凸形状消失性に優れているということができる。これにより、被着体に貼付したウィンドウフィルム1Aの透明度が低くなることが抑制される。
4.使用方法
ウィンドウフィルム1Aは、粘着剤層3Aを介して所望の被着体に貼付して使用することができる。被着体としては、例えば、自動車、建築物等の窓ガラス(ウィンドウ)の他、スマートフォンやタブレット端末等の電子機器のディスプレイなどが挙げられる。
ウィンドウフィルム1Aを被着体に貼付する際には、まず、ウィンドウフィルム1Aの粘着剤層3Aから第2の剥離シート42を剥離する。
次に、露出した粘着剤層3Aの粘着面を被着体に密着させるようにして、ウィンドウフィルム1Aを一端部から徐々に被着体に対して比較的低圧で押圧する。このとき、粘着剤層3Aの粘着面における凸部51および凹部52の形状は維持される。そして、被着体と粘着剤層3Aの粘着面との間の空気は、当該粘着面における凹部52を通って、粘着剤層3Aが未だ被着体に密着していない方向に排出される。そのため、被着体と粘着剤層3Aの粘着面との間に空気が巻き込まれ難く、空気溜まりができることが抑制される。粘着剤層3Aの粘着面の凹部52がウィンドウフィルム1Aの平面方向の端部まで延在している場合には、仮に空気が巻き込まれて空気溜まりができたとしても、その空気溜まり部又は空気溜まり部を含んだ空気溜まり部周辺部を再圧着することにより、空気が凹部52からウィンドウフィルム1Aの外側に抜けて、空気溜まりが消失する。
なお、上記のように粘着剤層3Aの粘着面における凸部51および凹部52の形状が維持される段階では、粘着剤層3Aと被着体との接触面積が比較的小さいため、ウィンドウフィルム1Aの被着体に対する粘着力は比較的低い。したがって、被着体に貼付した初期の段階では、ウィンドウフィルム1Aはリワーク性に優れる。
続いて、被着体に貼付されたウィンドウフィルム1Aを、スキージ等を使用して比較的高圧で被着体に押圧する。これにより、粘着剤層3Aの粘着面における凸部51および凹部52の形状が消失する。そのため、粘着剤層3Aの粘着面の凹凸形状の存在によってウィンドウフィルム1Aの透明度が低くなることが防止される。それにより、ウィンドウフィルム1Aとしての機能が問題なく発揮され、外観も良好なものとなる。
上記のようにウィンドウフィルム1Aが貼付された被着体においては、ガラスが割れた時のガラス飛散防止や、太陽光中の紫外線カット、プライバシーの保護、装飾、防犯等の所望の効果が発揮される。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、ウィンドウフィルム1における第1の剥離シート41は省略されてもよい。また、ウィンドウフィルム1Aにおける第2の剥離シート42は、粘着剤層3に凹凸形状を転写した後であれば、剥離除去されてもよいし、その後、通常の剥離シートが粘着剤層3Aに積層されてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.第2の剥離シートの作製
紙基材としてのグラシン紙(リンテック社製,製品名「マルKゲンシ シロ 110.0G」,厚さ110μm)の両面にポリエチレン(中密度ポリエチレン(密度0.93g/cm3))をラミネートし、紙基材の両面に厚さ20μmのポリエチレン層を有するラミネート紙を作製した。
一方、エンボスロールとして、表面に図3に示すような凹凸形状を有する彫刻金属ロール(スチールからなる金属ロール,直径:30cm)を用意した。具体的には、当該エンボスロールの表面には、一辺が1mmの平面視正三角形が凸部として複数形成され、それら凸部同士の間隙部が幅70μm、深さ20μmの溝状の凹部として形成されている。複数の正三角形の凸部は、隣り合う正三角形の凸部同士が、互いに上下逆さの関係になるように交互に形成されている。
上記で作製したラミネート紙を、上記エンボスロールとシリコーンゴムロールとの間を通過させることにより、ラミネート紙における片面のポリエチレン層にエンボス加工を施して、エンボスロールの凹凸形状を当該ポリエチレン層に転写した。その後、凹凸形状が転写されたポリエチレン層の表面に、シリコーン系剥離剤(信越化学社製,製品名「KS-847H」)を塗布し、乾燥することにより、厚さ50nmの剥離剤層を形成して、第2の剥離シートを得た。得られた第2の剥離シートの剥離面における凹凸形状の凸部の高さは20μmであった。
2.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル65質量部、アクリル酸イソボルニル15質量部、4-アクリロイルモルホリン5質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル15質量部とを共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
3.粘着性組成物の調製
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.25質量部と、ポリロタキサン化合物(C)(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製,製品名「セルム スーパーポリマー SH3700P」,直鎖状分子:ポリエチレングリコール,環状分子:ヒドロキシプロピル基およびカプロラクトン鎖を有するα-シクロデキストリン,ブロック基:アダマンタン基,重量平均分子量(Mw)70万,水酸基価72mgKOH/g)7.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
4.ウィンドウフィルム(凹凸形状転写前)の製造
上記で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,「ルミラーT60」,厚さ50μm)の片面にナイフコーターで塗布し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。次いで、その塗布層に、第1の剥離シートとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PLS251130」)の剥離面を貼り合わせた。
その後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ6μmの粘着剤層を形成した。これにより、基材/粘着剤層(凹凸形状転写前)/第1の剥離シートからなる、凹凸形状転写前のウィンドウフィルムを得た。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
5.ウィンドウフィルム(凹凸形状転写後)の製造
最後に、上記凹凸形状転写前のウィンドウフィルムから第1の剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層の粘着面に、第2の剥離シートにおける凹凸形状が形成された剥離面を重ね合わせ、16g/cm2の荷重をかけて、23℃、50%RHの条件下で3日間圧着した。このようにして第2の剥離シートの剥離面の凹凸形状を粘着剤層の粘着面に転写することにより、当該粘着面に凹凸形状を形成して、凹凸形状転写後のウィンドウフィルム(基材/粘着剤層(凹凸形状転写後)/第2の剥離シート)を得た。
〔実施例2〕
粘着剤層を形成するための粘着性組成物の調製において、架橋剤(B)の添加量を0.15質量部に変更した以外、実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
〔実施例3〕
粘着剤層を形成するための粘着性組成物の調製において、架橋剤(B)の添加量を0.1質量部に変更した以外、実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
〔実施例4〕
粘着剤層の厚さを40μmに変更した以外、実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
〔比較例1〕
粘着剤層を形成するための粘着性組成物の調製において、ポリロタキサン化合物(C)を添加しなかった以外、実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
〔比較例2〕
粘着剤層を形成するための粘着性組成物の調製において、架橋剤(B)を添加しなかった以外、実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
〔参考例〕
実施例1と同様にして、基材/粘着剤層(凹凸形状転写前)/第1の剥離シートからなる、凹凸形状転写前のウィンドウフィルムを製造し、これを参考例のウィンドウフィルムとした。すなわち、実施例1において、第1の剥離シートを第2の剥離シートに貼り替えないものを、参考例のウィンドウフィルムとした。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔試験例1〕(緩和弾性率の測定)
実施例、比較例および参考例で製造した凹凸形状転写前のウィンドウフィルムにおける粘着剤層を複数層積層し、厚さ1mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ1mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
上記サンプルについて、JIS K7244-1に準拠し、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR300」)を用いて、以下の条件で粘着剤をひずませて緩和弾性率Gを測定し、緩和時間300秒の緩和弾性率G(300)(Pa)を取得した。結果を表1に示す。
測定温度:23℃
ひずみ:10%
測定点:1000点(対数プロット)
〔試験例2〕(ゲル分率の測定)
実施例、比較例および参考例で製造した凹凸形状転写前のウィンドウフィルムを80mm×80mmのサイズに裁断して、粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表1に示す。
〔試験例3〕(粘着力の測定)
実施例、比較例および参考例で製造した凹凸形状転写後のウィンドウフィルム(参考例は凹凸形状転写前のウィンドウフィルム)を25mm幅、100mm長に裁断した。23℃、50%RHの環境下にて、上記ウィンドウフィルムから第2の剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をガラス板(セントラルガラス社製,製品名「青板(ソーダガラス)」)に貼付した。このとき、2kgのローラーで1往復ウィンドウフィルムを加圧することにより貼付した。その貼付直後の粘着力(N/25mm)と、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してからの粘着力(N/25mm)を、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表1に示す。
〔試験例4〕(凹凸形状転写性の評価)
実施例および比較例で製造した凹凸形状転写後のウィンドウフィルムから第2の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の粘着面を、コンフォーカル顕微鏡(レザーテック社製,製品名「HD100D」,倍率:20倍)によって観察し、粘着面に凹凸形状が転写されている否かを確認した。そして、以下の基準に基づいて、凹凸形状転写性を評価した。結果を表1に示す。
○…凹凸形状が精確に転写されていた。
×…凹凸形状が転写されていなかった。
また、上記と同様にして粘着剤層の粘着面を観察し、粘着剤層の粘着面における凸部の面積割合(%)を算出するとともに、粘着剤層の粘着面における任意の1mmの円内に凹部が存在するか否かを確認した。結果を表1に示す。
なお、実施例で製造したウィンドウフィルムにおける粘着剤層の粘着面には、図3に示されるように、一辺が1mmの平面視正三角形が凸部として複数形成され、それらの間隙部が幅70μmの溝状の凹部として形成されていた。当該凹部の深さは、実施例1~3のウィンドウフィルムにおいては4μm、実施例4のウィンドウフィルムにおいては20μmであった。
〔試験例5〕(エア抜け性の評価)
実施例、比較例および参考例で製造した凹凸形状転写後のウィンドウフィルム(参考例は凹凸形状転写前のウィンドウフィルム)を6cm×6cmの大きさにカットし、これをサンプルとした。サンプルは、各例5サンプルずつ用意した。次に、各サンプルを、7cm×7cmのガラス板(セントラルガラス社製,製品名「青板(ソーダガラス)」)に対し、当該サンプルの中央部に空気溜まりが残るように貼付した。その後、空気溜まりを指で押圧し、空気溜まりが消失するか否かを確認した。そして、以下の基準に基づいて、エア抜け性を評価した。結果を表1に示す。
◎…5サンプル全てにおいて空気溜まりが完全に消失した。
○…5サンプル中2~4サンプルにおいて空気溜まりが完全に消失した。
△…5サンプル中1サンプルのみにおいて空気溜まりが完全に消失した。
×…5サンプル全てにおいて空気溜まりが残った。
〔試験例6〕(凹凸形状消失性の評価)
実施例および比較例で製造した凹凸形状転写後のウィンドウフィルムを6cm×6cmの大きさにカットし、これをサンプルとした。得られたサンプルを7cm×7cmのガラス板(セントラルガラス社製,製品名「青板(ソーダガラス)」)に貼付した後、スキージを使用して、比較的高い圧力でサンプルをガラス板に押圧した。そして、以下の基準に基づいて、凹凸形状消失性を評価した。結果を表1に示す。
◎…凹凸形状が消失し、凹凸形状の視認が非常に困難であった。
○…凹凸形状がほぼ消失し、凹凸形状の視認が困難であった。
△…凹凸形状が初期よりも見え難くなった。
×…凹凸形状が初期と同様にはっきりと視認できた。
〔試験例7〕(ヘーズ値上昇量の測定)
実施例および比較例で製造した凹凸形状転写後のウィンドウフィルムを80mm×100mmに裁断した。当該ウィンドウフィルムから第2の剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、90mm×150mmの大きさのガラス板(セントラルガラス社製,製品名「青板(ソーダガラス)」,厚さ:1.8mm)に貼り合わせた。このとき、比較的低い圧力でウィンドウフィルムをガラス板に押圧した。その後、スキージを使用して、比較的高い圧力でウィンドウフィルムをガラス板に押圧した。そして、常温で24時間放置して、これをサンプル(a)とした。得られたサンプル(a)のヘーズ値(A;%)を、濁度計(日本電色工業社製,製品名「NDH 5000」)を用いて測定した。
一方、各サンプル(a)に対応する凹凸形状転写前のウィンドウフィルムを使用して、上記と同様にしてサンプル(b)を作製した。そして、当該サンプル(b)のヘーズ値(B;%)を、上記と同様にして測定した。次いで、ヘーズ値(A)からヘーズ値(B)を差し引くことにより、粘着面の凹凸形状の残存割合に起因するヘーズ値上昇量(ポイント)を求めた。結果を表1に示す。
〔試験例8〕(ガラス飛散防止性の評価)
実施例、比較例および参考例で製造した凹凸形状転写後のウィンドウフィルム(参考例は凹凸形状転写前のウィンドウフィルム)を80mm×100mmに裁断した。当該ウィンドウフィルムから第2の剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、90mm×150mmの大きさのガラス板(セントラルガラス社製,製品名「青板(ソーダガラス)」,厚さ:1.8mm)に貼り合わせた。このとき、比較的低い圧力でウィンドウフィルムをガラス板に押圧した。その後、スキージを使用して、比較的高い圧力でウィンドウフィルムをガラス板に押圧した。そして、常温で24時間放置して、これをサンプルとした。
その後、高さ70cmの高さから358gの鉄球を上記サンプルの中心部分に落下させ、ガラス板の面積(135cm2)に対する飛散したガラスの面積(ガラスの飛散率)を測定した。この結果に基づき、以下の基準によりガラス飛散防止性を評価した。結果を表1に示す。
〇…ガラス飛散率が1%未満であった。
×…ガラス飛散率が1%以上であった。
表1から分かるように、実施例のウィンドウフィルムは、粘着剤層における凹凸形状転写性に優れ、貼付時に良好なエア抜け性を有していた。また、実施例のウィンドウフィルムは、貼付後には凹凸形状消失性にも優れており、さらには、ガラス飛散防止性にも優れていた。