以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、基材と、当該基材の一方の面側に積層された第1の粘着剤層とを備えて構成される。そして、基材の厚さは、0.5μm以上、8μm以下であり、第1の粘着剤層の厚さは、1μm以上、10μm以下であり、第1の粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は、20%以上、85%以下である。また、第1の粘着剤層における被着体との接触が想定される面としての接触平面には、粘着剤が存在する粘着部と、粘着剤が存在しない非粘着部とがあり、その接触平面における粘着部の面積の割合は、65%以上、99%以下であり、上記接触平面においては、任意の直径1mmの円内に非粘着部が存在する。
本実施形態に係る粘着シートは、上記の構成および物性を有することにより、粘着力を十分に発揮しつつ、貼付時に良好なエア抜け性を有する。すなわち、第1の粘着剤層の接触平面に非粘着部が所定の面積割合で存在し、かつ、接触平面における任意の直径1mmの円内に非粘着部が存在することにより、被着体貼付時に、第1の粘着剤層の粘着面と被着体との間の空気が、当該非粘着部によって形成される空気の流路を通って外側に抜け易い。これにより、当該粘着シートの基材が上記のように薄くても、さらには、その基材の他方の面側に設けられるシート、特にグラファイトシートが薄くても、貼付時に粘着面と被着体との間に空気溜まりができることが効果的に抑制される。また、第1の粘着剤層の厚さが上記の範囲にあり、第1の粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が上記の範囲にあり、接触平面における粘着部の面積の割合が上記の範囲にあることにより、第1の粘着剤層による粘着力は十分に発揮される。特に、被着体に貼付してから24時間経過以降の粘着力が大きいものとなる。なお、第1の粘着剤層の粘着面とは、第1の粘着剤層における基材とは反対側の面であって、被着体に接触する側の面の全体をいう。
本実施形態に係る粘着シートにおいては、第1の粘着剤層は一体的に形成されており、第1の粘着剤層における基材とは反対側の面に、凹凸形状が形成されていることが好ましい。このような構成を有することにより、第1の粘着剤層から剥離シートを剥離するときに、第1の粘着剤層の欠けや破断を防止することができる。この場合、剥離面が凹凸形状となっている剥離シート(第1の剥離シート)が、第1の粘着剤層における基材とは反対側に、剥離面が第1の粘着剤層側に位置するように積層されており、当該剥離面の凹部が第1の粘着剤層における接触平面の粘着部に対応しており、当該剥離面の凸部が第1の粘着剤層における接触平面の非粘着部に対応していることが好ましい。また、上記剥離シート(第1の剥離シート)の剥離面と第1の粘着剤層との間には、非接触部が存在してもよい。なお、剥離シートの剥離面とは、粘着剤層と接触する側の面であって、当該粘着剤層に対して剥離性を有する面をいい、剥離処理の有無は問わない。
また、本実施形態に係る粘着シートにおける基材の他方の面側には、第2の粘着剤層が積層されていることが好ましい。この場合、上記粘着シートは、芯材としての基材を有する両面粘着シートとなる。さらに、第2の粘着剤層における基材とは反対側には、第2の剥離シートが積層されていてもよい。
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、基材2と、基材2の一方の面側に積層された第1の粘着剤層31と、基材2の他方の面側に積層された第2の粘着剤層32と、第1の粘着剤層31における基材2とは反対側に積層された第1の剥離シート41と、第2の粘着剤層32における基材2とは反対側に積層された第2の剥離シート42とを備えて構成される。
1.各部材
1-1.基材
本実施形態に係る粘着シート1の基材2は、第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層32を支持し、粘着シート1(剥離シート41,42を除く粘着シート1)に所定の剛性を与える機能を有する。これにより、一方の剥離シート(第2の剥離シート42)を剥がす際、他方の剥離シート(第1の剥離シート41)と粘着剤層(第1の粘着剤層31)との界面で発生する浮きや剥がれを有効に防止することができる。
なお、本発明に係る粘着シートにおいて、第2の粘着剤層および第2の剥離シートは必須の構成要件ではない。これらが存在しない場合、基材2は、所望の被着体に貼付される対象物となり得る。
前述した通り、基材2の厚さは、8μm以下である。このように基材2が薄くても、本実施形態に係る粘着シート1は、貼付時に良好なエア抜け性を発揮する。また、上記のように基材2が薄いことにより、後述するグラファイトシート積層体を薄く形成することができる。かかる観点から、基材2の厚さは、6μm以下であることが好ましく、特に4μm以下であることが好ましい。
また、前述した通り、基材2の厚さは、0.5μm以上である。これにより、粘着シート1(剥離シート41,42を除く粘着シート1)に所定の剛性を与えることができる。かかる観点から、基材2の厚さは、1.0μm以上であることが好ましく、特に1.5μm以上であることが好ましい。
基材2としては、上記の厚さを満たし、第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層32を積層することができるものであれば特に限定されるものではない。
かかる基材2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリフェニルサルホンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;アルミニウム、銅等の金属箔;不織布;又はこれらの2種以上の積層体等を主体とするものが好ましい。なお、「主体とする」とは、それらよりも薄い所望の層を備えていてもよいことを意味する。
上記の中でも、薄膜化が容易で平滑性の高いプラスチックフィルムが好ましく、中でも機械的強度や経済性に優れたポリオレフィンフィルムおよびポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムにおいては、その表面に設けられる第1の粘着剤層31および第2の粘着剤層32との密着性を向上させる目的で、所望により酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、樹脂フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果及び操作性の面から好ましく用いられる。
1-2.第1の粘着剤層
本実施形態に係る粘着シート1における第1の粘着剤層31は、所望の被着体に接触して貼着される粘着剤層である。ここで、説明のため、本実施形態に係る粘着シート1において第1の剥離シート41を分離した図を図2に示す。第1の粘着剤層31における被着体との接触が想定される面としての接触平面は、図2中、符号Cで示される。前述した通り、第1の粘着剤層31の接触平面Cには、粘着剤が存在する粘着部と、粘着剤が存在しない非粘着部とがある。本実施形態では、第1の粘着剤層31の粘着面には凹凸形状が形成されており、当該凹凸形状の凸部の先端部が上記粘着部を構成し、凹部の開口部が上記非粘着部に対応する。
上記非粘着部は、接触平面の端まで延在していることが好ましく、特に、複数の非粘着部は、互いに連続していることが好ましい。非粘着部がそのような構成を有することにより、第1の粘着剤層31の粘着面と被着体との間の空気が、粘着シート1の外側に、より抜け易くなり、貼付時のエア抜け性がより優れたものとなる。
本実施形態における第1の粘着剤層31は、一体的に形成されている。すなわち、本実施形態における第1の粘着剤層31は、凹凸形状の凹部においても、粘着剤層が分断されることなく、粘着剤層全体として一体的になっている。かかる構成により、第1の粘着剤層31から第1の剥離シート41を剥離するときに、第1の粘着剤層31が欠けたり破断したりすることを抑制することができる。
第1の粘着剤層31の粘着面の一例を示す平面図を図3に示す。本実施形態における第1の粘着剤層31の粘着面には、複数の平面視正三角形の凸部51と、それら凸部51の相互間に位置する溝状の凹部52とが形成されている。複数の凸部51は、隣り合う正三角形の凸部51同士が、互いに上下逆さの関係になるように交互に形成されている。
凸部51の平面視形状は、正三角形に限定されるものではなく、任意の三角形であってもよいし、四角形、六角形、八角形等の任意の多角形であってもよいし、円形状、楕円形状、∞状等の任意の形状であってもよい。中でも、凹部52の平面視形状を直線状にして、凸部51の被着体に対する接触面積を大きく取ることのできる多角形状が好ましい。
第1の粘着剤層31の粘着面(接触平面)における凸部51(粘着部)の面積割合の下限値は、65%以上であり、75%以上であることが好ましく、特に85%以上であることが好ましい。凸部51(粘着部)の面積割合の下限値が上記であることにより、第1の粘着剤層31と被着体との接触面積を確保し、十分な粘着力を得ることができる。一方、第1の粘着剤層31の粘着面(接触平面)における凸部51(粘着部)の面積割合の上限値は、99%以下であり、97%以下であることが好ましく、特に95%以下であることが好ましい。凸部51(粘着部)の面積割合の上限値が上記であることにより、凹部52(非粘着部)の面積割合を確保し、当該凹部52によるエア抜け効果を得ることができる。
また、第1の粘着剤層31の粘着面(接触平面)においては、任意の直径1mmの円内に凹部52(非粘着部)が存在する。すなわち、第1の粘着剤層31の粘着面において、直径1mmの円をいずれの位置で仮想したとしても、その円内には必ず凹部52が存在する。これにより、粘着シート1を貼付するときに、第1の粘着剤層31の粘着面と被着体との間の空気が凹部52を通ってより排出され易く、凹部52を介したエア抜け性を良好に確保することができる。上記円の直径は、0.5~0.9mmであることが好ましく、特に0.5~0.8mmであることが好ましい。
凸部51の平面視形状が、図3に示されるように正三角形の場合、当該正三角形の一辺の長さは、800μm以上であることが好ましく、特に900μm以上であることが好ましく、さらには1000μm以上であることが好ましい。また、当該正三角形の一辺の長さは、2000μm以下であることが好ましく、特に1750μm以下であることが好ましく、さらには1500μm以下であることが好ましい。正三角形の一辺の長さが上記範囲内にあることにより、粘着力とエア抜け性との両立をより高いレベルで達成することができる。
凹部52の深さの下限値は、0.5μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることが好ましく、さらには3μm以上であることが好ましい。凹部52の深さの下限値が上記であることにより、粘着シート1を貼付するときに、第1の粘着剤層31の粘着面と被着体との間の空気が凹部52を通ってより排出され易く、凹部52を介したエア抜け性をより優れたものにすることができる。一方、凹部52の深さの上限値は、10μm以下であることが好ましく、特に8μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。凹部52の深さの上限値が上記であることにより、貼付後にグラファイトシートが凹部52の部分で落ち込んでグラファイトシートの外観を損なうことを防止することができる。
凹部52の断面形状(側面視形状)は、特に限定されることなく、例えば、矩形であってもよいし、V字状であってもよいし、U字状であってもよい。
凹部52の幅の下限値は、10μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。凹部52の幅の下限値が上記であることにより、粘着シート1を貼付するときに、第1の粘着剤層31の粘着面と被着体との間の空気が凹部52を通ってより排出され易く、凹部52を介したエア抜け性をより優れたものにすることができる。一方、凹部52の幅の上限値は、200μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。凹部52の幅の上限値が上記であることにより、貼付後にグラファイトシートが凹部52の部分で落ち込んでグラファイトシートの外観を損なうことを防止することができる。
第1の粘着剤層31を構成する粘着剤のゲル分率は、20%以上である。当該ゲル分率が20%以上であると、第1の粘着剤層31による粘着力が十分に発揮され、特に、被着体に貼付してから24時間経過以降の粘着力が大きいものとなる。また、粘着剤が所定の凝集力を有することとなり、第1の粘着剤層31の粘着面に形成された凹凸形状が良好に維持され易くなる。かかる観点から、上記粘着剤のゲル分率は、35%以上であることが好ましく、特に50%以上であることが好ましい。
一方、上記粘着剤のゲル分率は、85%以下である。当該ゲル分率が85%以下であると、やはり第1の粘着剤層31による粘着力が十分に発揮される。かかる観点から、上記粘着剤のゲル分率は、80%以下であることが好ましく、特に75%以下であることが好ましい。なお、ゲル分率の測定方法は、後述の試験例に示す通りである。
第1の粘着剤層31を構成する粘着剤の23℃、300秒後の緩和弾性率G(300)は、2500Pa以上、10000Pa以下であることが好ましい。緩和弾性率G(300)がこの範囲内にあることにより、十分な粘着力を有しながら、第1の粘着剤層31の粘着面の凹凸形状が良好に維持され易い。そのため、第1の粘着剤層31から第1の剥離シート41を剥離して、別の剥離シートに貼り替えるような場合でも、粘着面の凹凸形状が消失することが抑制される。すなわち、第1の粘着剤層31は、凹凸形状維持性に優れたものとなる。かかる観点から、上記緩和弾性率G(300)は、2750Pa以上であることが好ましく、特に3000Pa以上であることが好ましい。また、当該緩和弾性率G(300)は、6000Pa以下であることが好ましく、特に4000Pa以下であることが好ましい。
なお、300秒後の緩和弾性率G(300)とは、JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませてから300秒後に測定される緩和弾性率をいうものとする。具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
本実施形態に係る粘着シート1の第1の粘着剤層31を構成する粘着剤としては、上記のゲル分率を満たすものを使用し、好ましくは上記の緩和弾性率G(300)をも満たすものを使用する。第1の粘着剤層31を構成する粘着剤の種類としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、前述した物性を満たし易く、良好な粘着力を発揮し易いアクリル系粘着剤が好ましい。
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいが、ゲル分率及び緩和弾性率を適切な範囲に調節する観点から、活性エネルギー線非硬化性のものであることが好ましい。活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤としては、特に架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)から形成された粘着剤(粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤)であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、前述した物性を満たし易く、また、良好な粘着力および所定の凝集力を発揮するため、耐久性にも優れたものとなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
(1)粘着性組成物Pの成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望のゲル分率を有する粘着剤が得られる。
上記反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(B)との反応性の観点から、水酸基含有モノマーを使用することが好ましく、また、粘着力向上の観点から、水酸基含有モノマーとともにカルボキシ基含有モノマーを使用することも好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、粘着力向上の観点から、アクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、下限値として0.5質量%以上含有することが好ましく、1質量%以上含有することがより好ましく、特に8質量%以上含有することが好ましく、さらには12質量%以上であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、上限値として30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成され、所望のゲル分率が得られる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルまたは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上含有することが好ましく、特に40質量%以上含有することが好ましく、さらには50質量%以上含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の下限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は好適な粘着性を発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを99質量%以下含有することが好ましく、97質量%以下含有することがより好ましく、特に95質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に反応性官能基含有モノマー等の他のモノマー成分を好適な量導入することができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することも好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤に柔軟性を付与することができる。これにより、粘着剤は、凹凸形状の維持性に優れたものとなる。
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の相互間の距離を適切にし、粘着剤により高い応力緩和性を付与する観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に応力緩和性を付与する観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
上記脂環式構造含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた段差追従性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル(脂環式構造の炭素数:10)、(メタ)アクリル酸アダマンチル(脂環式構造の炭素数:10)または(メタ)アクリル酸イソボルニル(脂環式構造の炭素数:7)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。脂環式構造含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤は、凹凸形状の維持性により優れたものとなる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤に所定の極性を付与し、ある程度の極性を有する被着体に対しても、親和性に優れたものとすることができる。上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に2質量%以上含有することが好ましく、さらには3質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該窒素原子含有モノマーを20質量%以下含有することが好ましく、特に15質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤が、ステンレス鋼等に対してより優れた粘着力を発揮することができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、酢酸ビニルを含有することも好ましい。酢酸ビニルを含有することにより、粘着剤の凝集力がより優れたものとなる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として酢酸ビニルを含有する場合、当該酢酸ビニルを0.5質量%以上含有することが好ましく、特に1.0質量%以上含有することが好ましく、さらには1.5質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該酢酸ビニルを30質量%以下含有することが好ましく、特に20質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。酢酸ビニルの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤が、凝集力及び粘着力が適切な範囲となる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、直鎖状のポリマーであることが好ましい。直鎖状のポリマーであることにより、分子鎖の絡み合いが起こりやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、凹凸形状を維持し易い粘着剤が得られ易い。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより、高分子量のポリマーが得られやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、凹凸形状を維持し易い粘着剤が得られ易い。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として20万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには40万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記であると、得られる粘着剤が凹凸形状をより維持し易いものとなる。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましく、さらには100万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の粘着力がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、粘着性組成物Pの加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を良好に形成することが可能となる。これにより、得られる粘着剤において前述したゲル分率が満たされ易くなる。
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記範囲にあることで、得られる粘着剤において前述したゲル分率がより満たされ易くなる。
(1-3)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、重合ロジンエステル等のロジン系粘着付与剤、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環系石油樹脂等の石油系粘着付与剤、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン系樹脂等のテルペン系粘着付与剤、およびアルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂、クマロンインデン樹脂等のその他粘着付与剤が挙げられる。これらの粘着付与剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
粘着性組成物Pが粘着付与剤を含有する場合、その含有量は、アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、特に30質量部以上であることが好ましく、さらには50質量部以上であることが好ましい。また、粘着付与剤の含有量は、アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、特に85質量部以下であることが好ましく、さらには70質量部以下であることが好ましい。粘着付与剤の含有量が上記範囲にあることにより、粘着剤の粘着力が効果的に大きいものとなる。
(2)粘着性組成物Pの製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ならびに所望により添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
(3)粘着剤の製造
本実施形態における第1の粘着剤層31を構成する粘着剤は、好ましくは粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋される。このようにして得られる粘着剤は、所望のゲル分率を有し、高い粘着力を発揮するとともに、凹凸形状を維持し易いものとなる。
(4)粘着剤層の厚さ
本実施形態に係る粘着シート1における第1の粘着剤層31の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値;粘着面の凸部51における厚さ)は、前述した通り、1μm以上であり、1.5μm以上であることが好ましく、特に2.0μm以上であることが好ましい。第1の粘着剤層31の厚さが1μm以上であることにより、所望の粘着力を発揮することができるとともに、良好なエア抜け性を有する凹部52を形成することができる。
また、第1の粘着剤層31の厚さは、前述した通り、10μm以下であり、8μm以下であることが好ましく、特に6μm以下であることが好ましい。第1の粘着剤層31の厚さが上記であることにより、被着体からグラファイトシート等への熱伝導をより効率的なものとすることができる。
(5)物性
(5-1)貼付直後の粘着力
本実施形態に係る粘着シート1をステンレス鋼(SUS304 ♯600)に貼付した直後の粘着力は、下限値として0.5N/25mm以上であることが好ましく、特に1.0N/25mm以上であることが好ましく、さらには1.5N/25mm以上であることが好ましい。粘着シート1の粘着力が0.5N/25mm以上であると、グラファイトシートを電子部品に問題なく貼付することができる。一方、上記粘着力の上限値は、貼り直しを考慮すると15N/25mm以下であることが好ましく、12.5N/25mm以下であることがより好ましく、10N/25mm以下であることが特に好ましい。なお、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
(5-2)貼付から24時間後の粘着力
本実施形態に係る粘着シート1をステンレス鋼(SUS304 ♯600)に貼付してから24時間後の粘着力は、下限値として4.0N/25mm以上であることが好ましく、特に6.0N/25mm以上であることが好ましく、さらには8.0N/25mm以上であることが好ましい。粘着シート1の粘着力が4.0N/25mm以上であると、グラファイトシートを電子部品に強固に接着することができる。本実施形態に係る粘着シート1は、第1の粘着剤層31を構成する粘着剤のゲル分率が前述した値を有することにより、上記の粘着力が可能となる。一方、上記粘着力の上限値は、特に制限されないが、40N/25mm以下であることが好ましく、30N/25mm以下であることがより好ましく、20N/25mm以下であることが特に好ましい。
1-3.第1の剥離シート
本実施形態における第1の剥離シート41は、その剥離面に、上記第1の粘着剤層31の粘着面に前述した凹凸形状を形成することのできる凹凸形状が形成されている。具体的には、第1の剥離シート41の剥離面には、第1の粘着剤層31における粘着面の凸部51に対応する形状部分を有する凹部と、第1の粘着剤層31における粘着面の凹部52に対応する形状部分を有する凸部とが形成されている。第1の剥離シート41の剥離面の凹部は、第1の粘着剤層31における接触平面Cの粘着部に対応しており、第1の剥離シート41の剥離面の凸部は、第1の粘着剤層31における接触平面Cの非粘着部に対応している。
本実施形態に係る粘着シート1においては、第1の剥離シート41の剥離面と第1の粘着剤層31との間には、非接触部Uが存在する。具体的には、第1の粘着剤層31における粘着面の凸部51の先端面(図1中では下端面)と、第1の剥離シート41の剥離面における凹部の底面との間に間隙が存在し、当該間隙が非接触部Uとなっている。このように第1の剥離シート41の剥離面と第1の粘着剤層31との間に非接触部Uが存在することにより、第1の粘着剤層31から第1の剥離シート41を剥離するときの剥離力が大きくなり過ぎることが防止され、剥離時に第1の粘着剤層31が欠けてしまうことを抑制することができる。ただし、本発明は上記の構成に限定されるものではなく、第1の粘着剤層31の粘着面(の凹凸)と、第1の剥離シート41の剥離面(の凹凸)とがぴったりと密着していてもよい。
第1の剥離シート41は、剥離面に上記のような凹凸形状が形成されているものであれば、特に限定されない。第1の剥離シート41は、剥離性を有する剥離基材のみからなってもよいが、凹凸形状を有する剥離面が良好な剥離性を発揮するために、剥離基材と、剥離基材の少なくとも一方の面側に形成された剥離剤層とを備えることが好ましい。
剥離基材としては、例えば、紙基材、紙基材に熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、プラスチックフィルム、不織布、金属箔、あるいはこれらを含む積層シート等が挙げられる。
上記の中でも、剥離基材としては、エンボス加工によって凹凸形状を形成し易いラミネート紙が好ましく、特に紙基材の両面に熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙が好ましい。紙基材の両面に熱可塑性樹脂をラミネートすることにより、紙基材の耐湿性が向上するとともに、安価で性能に優れた基材を得ることができる。
紙基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙、無塵紙、上質紙等が挙げられる。これらの中でも、エンボス加工による凹凸形状の形成のし易さの観点から、グラシン紙が好ましい。
紙基材の厚さは、40μm以上であることが好ましく、特に80μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。また、紙基材の厚さは、500μm以下であることが好ましく、特に400μm以下であることが好ましく、さらには300μm以下であることが好ましい。紙基材の厚さが上記の範囲内にあることにより、第1の剥離シート41は、エンボス加工によって凹凸形状をより形成し易いものとなる。
紙基材にラミネートする熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等が挙げられる。これらの中でも、エンボス加工による凹凸形状の形成のし易さの観点から、ポリオレフィンが好ましく、特にポリエチレンが好ましい。
熱可塑性樹脂からなるラミネート層の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に15μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。また、ラミネート層の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に70μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。ラミネート層の厚さが上記の範囲内にあることにより、当該ラミネート層に対して、エンボス加工によって凹凸形状をより形成し易いものとなる。
剥離剤層を構成する剥離剤としては、特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、アルキッド樹脂系、オレフィン樹脂系、アクリル系、長鎖アルキル基含有化合物系、不飽和ポリエステル樹脂系、ゴム系、ワックス系等の剥離剤が挙げられ、中でも、コストや剥離性の観点からシリコーン樹脂系の剥離剤が好ましい。
剥離剤層の厚さは、10nm以上であることが好ましく、特に30nm以上であることが好ましく、さらには50nm以上であることが好ましい。また、剥離剤層の厚さは、1000nm以下であることが好ましく、特に500nm以下であることが好ましく、さらには300nm以下であることが好ましい。剥離剤層の厚さが上記の範囲内にあることにより、剥離剤層としての機能が十分に発揮され得るとともに、剥離基材の凹凸形状面における凹部を埋めることなく、剥離剤層を形成することができる。
第1の剥離シート41の剥離面に凹凸形状を形成する方法としては、エンボス加工、レーザ加工、バイト加工等が挙げられる。これらの中でも、凹凸形状の形成容易性から、エンボス加工が好ましい。
エンボス加工によって第1の剥離シート41の剥離面に凹凸形状を形成する場合、剥離剤層を形成する前の剥離基材に対してエンボス加工を行うことが好ましい。これにより、エンボス加工によって剥離剤層が剥離基材から脱離することを防止することができる。
エンボス加工は、第1の粘着剤層31の粘着面に形成したい凹凸形状を有するエンボスロールを用意し、当該エンボスロールを第1の剥離シート41の剥離基材の片面(第1の剥離シート41の剥離面側の面)に圧接し、当該剥離基材に上記凹凸形状を転写することにより行うことができる。
第1の剥離シート41の剥離面における凸部の高さの下限値は、1μm超であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには15μm以上であることが好ましい。上記凸部の高さの下限値が上記であることにより、第1の粘着剤層31の粘着面に、前述した好ましい深さの凹部52を確実に形成することができる。また、第1の剥離シート41の剥離面における凸部の高さが、第1の粘着剤層31の厚さよりも大きいことにより、前述した非接触部Uを形成することができる。
一方、第1の剥離シート41の剥離面における凸部の高さの上限値は、50μm以下であることが好ましく、特に40μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましい。上記凸部の高さの上限値が上記であることにより、凹凸形状の転写性と粘着剤面への貼付適性の両立が可能となる。
なお、第1の剥離シート41の剥離面における凸部の幅や凹部の平面形状は、第1の粘着剤層31の粘着面における凹部52の幅や凸部51の平面形状に対応する。
1-4.第2の粘着剤層
第2の粘着剤層32を構成する粘着剤の種類としては、第2の粘着剤層32の被着体、特にグラファイトシートに対して所望の粘着力を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、粘着物性に優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいが、扱いの容易性から、活性エネルギー線非硬化性のものであることが好ましい。活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤としては、特に架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
第2の粘着剤層32を構成する粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体と、架橋剤とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であることが好ましい。
第2の粘着剤層32の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、特に1.0μm以上であることが好ましく、さらには1.5μm以上であることが好ましい。これにより、第2の粘着剤層32は良好な粘着力を発揮することができる。また、第2の粘着剤層32の厚さは、14μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには4μm以下であることが好ましい。これにより、後述するグラファイトシート積層体を薄く形成することができる。
1-5.第2の剥離シート
第2の剥離シート42としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。ただし、粘着シート1の使用時に、通常は第1の剥離シート41より先に第2の剥離シート42が剥がされるため、第1の剥離シート41よりも剥離力の小さいものであることが好ましい。
かかる第2の剥離シート42としては、例えば、プラスチックフィルムの片面に剥離剤層を形成したものを好ましく使用することができる。プラスチックフィルムの種類および剥離剤層を構成する剥離剤としては、第1の剥離シート41にて例示したものを使用することができる。
第2の剥離シート42の厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
1-6.両面粘着シートとしての厚さ
両面粘着シートとしての粘着シート1(剥離シート41,42を除く)の厚さ、本実施形態では、第1の粘着剤層31、基材2および第2の粘着剤層32からなる積層体の厚さは、下限値として、2μm以上であることが好ましく、3.5μm以上であることがより好ましく、特に5μm以上であることが好ましい。上記積層体の厚さの下限値が上記であることにより、取り扱い性が容易なものとなる。
一方、上記積層体の厚さは、上限値として、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、特に20μm以下であることが好ましく、さらには12μm以下であることが好ましい。上記積層体の厚さの上限値が上記であることにより、後述するグラファイトシート積層体を薄く形成することができる。
2.粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例として、第1の粘着剤層31の形成に上記粘着性組成物Pを使用した場合について説明する。
最初に、基材2と、第2の粘着剤層32と、第2の剥離シート42との積層体を製造する。この積層体は、第2の剥離シート42の剥離面に、第2の粘着剤層32を形成した後、当該第2の粘着剤層32に基材2を積層することにより製造してもよいし、基材2の片面に第2の粘着剤層32を形成し、当該第2の粘着剤層32に第2の剥離シート42を積層することにより製造してもよい。
次に、上記で得られた積層体の基材2における第2の粘着剤層32側とは反対側の面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布する。塗布方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
その後、塗布した粘着性組成物Pに対し加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成する。次いで、上記塗布層に対し、第1の剥離シート41の剥離面を重ね合わせて押圧し、当該剥離面の凸部を塗布層に埋め込む。その状態で養生期間をおき、第1の剥離シート41の剥離面の凸部に対応する凹部が粘着面に形成され、もって所定の凹凸形状が粘着面に形成された第1の粘着剤層31を得る。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。このようにして、上記粘着シート1が得られる。
なお、第1の粘着剤層31の厚さよりも第1の剥離シート41の剥離面の凸部の高さが大きい場合であっても、第1の粘着剤層31を形成するための塗布層と第1の剥離シート41とを通常の圧力で押圧する限りは、通常、第1の粘着剤層31は、凹部52で分断されることなく、一体的に形成される。
3.剥離シートの貼り替え
本実施形態に係る粘着シート1においては、第1の剥離シート41を、別の剥離シート、例えば、剥離面が平面状となっている剥離シートに貼り替えてもよい。この剥離シートは、任意の箇所で分割されていてもよい。これにより、工程に応じて、粘着シート1のハンドリング性が向上する。
ここで、前述した通り、第1の粘着剤層31を構成する粘着剤の23℃、300秒後の緩和弾性率G(300)が、2500Pa以上、10000Pa以下であると、第1の粘着剤層31から第1の剥離シート41を剥離して、別の剥離シートに貼り替えるときに、第1の粘着剤層31の粘着面における凹凸形状が消失することが抑制される。
4.粘着シートの用途
本実施例に係る粘着シート1は、グラファイトシートを電子部品に貼合するための両面粘着シートとして好適に使用することができるが、これに限定されるものではない。例えば、自動車部品、電子部品の固定や品名表示ラベル、壁紙貼付等に用いることができる。
〔グラファイトシート積層体〕
図4に示すように、本発明の一実施形態に係るグラファイトシート積層体6は、前述した粘着シート1における第2の剥離シート42の替わりに、グラファイトシート61が積層されてなるものである。すなわち、本実施形態に係るグラファイトシート積層体6は、グラファイトシート61と、第2の粘着剤層32と、基材2と、第1の粘着剤層31と、第1の剥離シート41とが、その順に積層されてなるものである。
グラファイトシート61は、放熱性に優れた部材であり、スマートフォン、タブレット端末、パソコン等の電子機器において、当該電子機器を構成する電子部品から発せられる熱を放熱するのに好ましく使用される。グラファイトシート61の材料は特に限定されず、従来公知のものであってよい。
グラファイトシート61の厚さは、薄型化が要求される電子機器においては、上限値として100μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましい。当該厚さの下限値は、通常、5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。
なお、グラファイトシート61の表面(第2の粘着剤層32側とは反対側の面)には、所望の層、例えば着色シートを積層してもよい。
グラファイトシート積層体6を製造するには、前述した粘着シート1から第2の剥離シート42を剥離し、露出した第2の粘着剤層32をグラファイトシート61に貼付すればよい。
グラファイトシート積層体6は、第1の粘着剤層31を介して所望の電子部品に貼付して使用することができる。電子部品としては、例えば、電池、CPU、パワーデバイス、高輝度LED等の発熱する部品が挙げられる。
グラファイトシート積層体6を被着体(電子部品)に貼付する際には、まず、グラファイトシート積層体6の第1の粘着剤層31から第1の剥離シート41を剥離する。ここで、本実施形態では、第1の粘着剤層31は一体的に形成されており、また、第1の剥離シート41の剥離面と第1の粘着剤層31との間には非接触部Uが存在するため、第1の粘着剤層31から第1の剥離シート41を剥離するときに、第1の粘着剤層31の欠けや破断は効果的に防止される。
次に、露出した第1の粘着剤層31の粘着面を被着体に密着させるようにして、グラファイトシート積層体6を一端部から徐々に被着体に対して押圧する。このとき、被着体と第1の粘着剤層31の粘着面との間の空気は、第1の粘着剤層31の粘着面における凹部52を通って、第1の粘着剤層31が未だ被着体に密着していない方向に排出される。そのため、被着体と第1の粘着剤層31の粘着面との間に空気が巻き込まれ難く、空気溜まりができることが抑制される。第1の粘着剤層31の粘着面の凹部52が粘着シート1の平面方向の端部まで延在している場合には、仮に空気が巻き込まれて空気溜まりができたとしても、その空気溜まり部又は空気溜まり部を含んだ空気溜まり部周辺部を再圧着することにより、空気が凹部52から粘着シート1の外側に抜けて、空気溜まりが消失する。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、粘着シート1における第2の剥離シート42は省略されてもよく、また、さらに第2の粘着剤層32も省略されてもよい。一方、第1の剥離シート41は、第1の粘着剤層31に凹凸形状を形成した後であれば、剥離除去されてもよいし、その後、別の剥離シートが第1の粘着剤層31に積層されてもよい。また、グラファイトシート積層体6における第1の剥離シート41が別の剥離シートに貼り替えられてもよい。さらに、第1の粘着剤層31の厚さよりも、第1の剥離シート41の剥離面における凸部の高さが小さく、それによって、非接触部Uが存在せず、第1の粘着剤層31の粘着面(の凹凸)と、第1の剥離シート41の剥離面(の凹凸)とがぴったりと密着していてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.片面粘着シートの作製
アクリル酸ブチル95.5質量部と、酢酸ビニル3質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1質量部と、アクリル酸0.5質量部とを共重合させることにより、重量平均分子量1000000のアクリル酸エステル共重合体を調製した。
次に、上記アクリル酸エステル共重合体100質量部(固形分換算;以下同じ)に対し、水添ロジンエステル(荒川化学工業社製,製品名「パインクリスタル KE-100」,軟化点:100℃)25質量部、重合ロジンエステル(荒川化学工業社製,製品名「ペンセル D-135」,軟化点:135℃)4質量部及び石油系樹脂(三井化学社製,製品名「FTR6100」,軟化点:95℃)24質量部を添加し、混合することで、粘着成分を得た。その粘着成分をトルエンに溶解し、固形分濃度13質量%の粘着剤溶液を調製した。当該粘着剤溶液に、架橋剤としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)を1.07質量部添加し、粘着剤組成物溶液(固形分濃度13質量%)を得た。
その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン系剥離剤で剥離処理された剥離シート(第2の剥離シート;リンテック社製,製品名「SP-PLS381021」,厚さ38μm)の剥離処理面に、上記粘着剤組成物溶液を塗布し、乾燥することにより、厚さ2μmの粘着剤層(第2の粘着剤層)を形成した。次いで、その粘着剤層に、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,製品名「PET 2 F51L」,厚さ2μm)を貼り合わせ、基材/第2の粘着剤層/第2の剥離シートからなる片面粘着シートを得た。
2.第1の剥離シートの作製
紙基材としてのグラシン紙(リンテック社製,製品名「マルKゲンシ シロ 110.0G」,厚さ110μm)の両面にポリエチレン(中密度ポリエチレン(密度0.93g/cm3))をラミネートし、紙基材の両面に厚さ20μmのポリエチレン層を有するラミネート紙を作製した。
一方、エンボスロールとして、表面に図2に示すような凹凸形状を有する彫刻金属ロール(スチールからなる金属ロール,直径:30cm)を用意した。具体的には、当該エンボスロールの表面には、一辺が1mmの平面視正三角形が凸部として複数形成され、それら凸部同士の間隙部が幅70μm、深さ20μmの溝状の凹部として形成されている。複数の正三角形の凸部は、隣り合う正三角形の凸部同士が、互いに上下逆さの関係になるように交互に形成されている。
上記で作製したラミネート紙を、上記エンボスロールとシリコーンゴムロールとの間を通過させることにより、ラミネート紙における片面のポリエチレン層にエンボス加工を施して、エンボスロールの凹凸形状を当該ポリエチレン層に転写した。その後、凹凸形状が転写されたポリエチレン層の表面に、シリコーン系剥離剤(信越化学社製,製品名「KS-847H」)を塗布し、乾燥することにより、厚さ50nmの剥離剤層を形成して、第1の剥離シートを得た。得られた第1の剥離シートの剥離面における凹凸形状の凸部の高さは20μmであった。
3.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル65質量部、アクリル酸イソボルニル15質量部、N-アクリロイルモルホリン5質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル15質量部とを共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
4.粘着性組成物の調製
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.25質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
5.粘着シートの製造
上記で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、前述した片面粘着シートの基材上に、ナイフコーターで塗布し、90℃で1分間加熱処理して、塗布層を形成した。
次いで、粘着性組成物の塗布層に、第1の剥離シートにおける凹凸形状が形成された剥離面を重ね合わせ、16g/cm2の荷重をかけて、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、粘着面に凹凸形状が形成された、厚さ6μm(粘着面の凸部における厚さ)の第1の粘着剤層を形成した。このようにして、第2の剥離シート/第2の粘着剤層/基材/第1の粘着剤層/第1の剥離シートからなる粘着シートを得た。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
〔実施例2〕
第1の粘着剤層を形成するための粘着性組成物の調製において、架橋剤(B)の添加量を0.15質量部に変更した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
〔実施例3〕
アクリル酸ブチル95.5質量部、酢酸ビニル3質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1質量部およびアクリル酸0.5質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)100万であった。
次いで、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対し、水添ロジンエステル(荒川化学工業社製,製品名「パインクリスタル KE-100」,軟化点:100℃)25質量部、重合ロジンエステル(荒川化学工業社製,製品名「ペンセル D-135」,軟化点:135℃)4質量部および石油系樹脂(三井化学社製,製品名「FTR6100」,軟化点:95℃)24質量部を添加し、混合することで、粘着成分を得た。この粘着成分に、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.25質量部を添加し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
第1の粘着剤層を形成するための粘着性組成物の塗布溶液として、上記で得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用した以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
〔実施例4〕
エンボスロールとして、当該エンボスロールの表面に、一辺が1mmの平面視正三角形が凸部として複数形成され、それら凸部同士の間隙部が幅200μm、深さ20μmの溝状の凹部として形成されているものを用意した。このエンボスロールを使用し、実施例1と同様にして、剥離面に凹凸形状を有する第1の剥離シートを作製した。得られた第1の剥離シートの剥離面における凹凸形状の凸部の高さは20μmであった。
得られた第1の剥離シートを使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
〔比較例1〕
実施例1と同様にして、片面粘着シートの基材上に、粘着性組成物の塗布層を形成した。次いで、粘着性組成物の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET751130」)とを、当該剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ6μmの第1の粘着剤層を形成した。
その後、第1の粘着剤層から上記剥離シートを剥離して、露出した第1の粘着剤層の粘着面に、実施例1と同様にして得た第1の剥離シートにおける凹凸形状が形成された剥離面を重ね合わせ、16g/cm2の荷重をかけて、23℃、50%RHの条件下でさらに7日間養生して、粘着シート(第2の剥離シート/第2の粘着剤層/基材/第1の粘着剤層/第1の剥離シート)を得た。
〔比較例2〕
第1の粘着剤層を形成するための粘着性組成物の調製において、架橋剤(B)を添加しなかった以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で調製した第1の粘着剤用の粘着性組成物の塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シートの剥離処理面に塗布し、90℃で1分間加熱処理して、塗布層を形成した。そして、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ6μmの第1の粘着剤層を形成した。
80mm×80mmのサイズに裁断し、剥離シートから剥離した上記第1の粘着剤層を、ポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表1に示す。
〔試験例2〕(緩和弾性率の測定)
試験例1と同様にして形成した第1の粘着剤層を複数層積層し、厚さ1mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ1mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
上記サンプルについて、JIS K7244-1に準拠し、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR300」)を用いて、以下の条件で粘着剤をひずませて緩和弾性率Gを測定し、緩和時間300秒の緩和弾性率G(300)(Pa)を取得した。結果を表1に示す。
測定温度:23℃
ひずみ:10%
測定点:1000点(対数プロット)
〔試験例3〕(凹凸形状形成性の評価)
実施例および比較例で製造した粘着シートから第1の剥離シートを剥がし、露出した第1の粘着剤層の粘着面を、コンフォーカル顕微鏡(レザーテック社製,製品名「HD100D」,倍率:20倍)によって観察し、粘着面に凹凸形状が形成されている否かを確認した。そして、以下の基準に基づいて、凹凸形状形成性を評価した。結果を表1に示す。
◎…凹凸形状が精確に形成されていた。
〇…凹凸形状がほぼ精確に形成されていた。
×…凹凸形状が形成されていなかった。
また、上記と同様にして第1の粘着剤層の粘着面を観察し、第1の粘着剤層の粘着面(接触平面)における凸部(粘着部)の面積割合(%)を算出するとともに、第1の粘着剤層の粘着面(接触平面)における任意の1mmの円内に凹部(非粘着部)が存在するか否かを確認した。結果を表1に示す。
なお、実施例で製造した粘着シートにおける第1の粘着剤層の粘着面には、図2に示されるように、一辺が1mmの平面視正三角形が凸部として複数形成され、それらの間隙部が幅70μm、深さ4μmの溝状の凹部として形成されていた。
〔試験例4〕(凹凸形状維持性の評価)
実施例および比較例(比較例1以外)で製造した粘着シートから第1の剥離シートを剥がし、露出した第1の粘着剤層に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET751130」)を、当該剥離シートの剥離処理面が第1の粘着剤層に接触するように貼合した。そして、16g/cm2の荷重をかけて、23℃、50%RHの条件下で7日間養生した。
その後、剥離シート越しに、第1の粘着剤層の粘着面に、凹凸形状が残っているか否かを目視により確認した。そして、以下の基準に基づいて、凹凸形状維持性を評価した。結果を表1に示す。
◎…凹凸形状が完全に残っていた。
○…凹凸形状がほぼ残っていた。
×…凹凸形状が残っていなかった。
〔試験例5〕(エア抜け性の評価)
実施例および比較例で製造した粘着シートを6cm×6cmの大きさにカットし、これをサンプルとした。得られたサンプルを、7cm×7cmのガラス板に対し、当該サンプルの中央部に空気溜まりが残るように貼付した。その後、空気溜まりを指で押圧し、空気溜まりが消失するか否かを確認した。そして、以下の基準に基づいて、エア抜け性を評価した。結果を表1に示す。
◎…空気溜まりが完全に消失した。
○…空気溜まりがほぼ消失した。
×…空気溜まりが全て残った。
〔試験例6〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを25mm幅、100mm長に裁断した。23℃、50%RHの環境下にて、上記粘着シートから第1の剥離シートを剥離し、露出した第1の粘着剤層をステンレス鋼板(SUS304,♯600)に貼付した。このとき、2kgのローラーで1往復粘着シートを加圧することにより貼付した。その貼付直後の粘着力(N/25mm)と、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してからの粘着力(N/25mm)を、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表1に示す。
〔試験例7〕(グラファイトシート積層体の貼付性の評価)
実施例および比較例で製造した粘着シートを50mm×100mmに裁断した。この粘着シートから第2の剥離シートを剥離し、露出した第2の粘着剤層を48mm×98mmのグラファイトシート(Selen社製,製品名「SGS-025-APH」,厚さ25μm)に貼付した。次いで、当該グラファイトシートの表面に、50mm×100mmの黒色着色シート(リンテック社製,製品名「MO-P001-5V2」,厚さ5μm)を貼付し、これをグラファイトシート積層体とした。
得られたグラファイトシート積層体から第1の剥離シートを剥離し、露出した第1の粘着剤層をステンレス鋼(SUS304)製の筺体に貼付した。そして貼付後の外観を目視で確認し、以下の基準に基づいて、グラファイトシート積層体の貼付性を評価した。結果を表1に示す。
◎…空気溜まりが無く良好な外観であった。
〇…空気溜まりが殆ど無かった。
×…空気溜まりが多く又は大きく、外観不良であった。
表1から分かるように、実施例の粘着シートを使用したグラファイトシート積層体は、粘着力を十分に発揮しつつ、第1の粘着剤層における凹凸形状形成性および凹凸形状維持性に優れ、貼付時に良好なエア抜け性を有していた。