JP7089864B2 - 防曇性ポリプロピレン系フィルム - Google Patents

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Description

本発明は防曇性ポリプロピレン系フィルムに関するものである。
ポリプロピレンは、透明性、剛性および防湿性が良好であることから、そのフィルムや成形品は、食品や衣料品等包装材料や家電製品部品、自動車内装材などに広く使用されている。
一方、ポリプロピレン樹脂は疎水性であり樹脂表面のぬれ性が著しく低いため、水分含有食品(果物、野菜、食肉等)の包装等大量の水分にさらされる条件において、フィルムの内面に凝結した水が付着し曇りが発生する。曇りにより、たとえば食品容器等では内容物が見えなくなり、商品価値が減じるばかりではなく、結露した水滴が収納された食品に付着することにより、食品の変質を促進してしまうことがある。これらの問題を解決するために各種界面活性剤からなる防曇剤を樹脂に配合して、樹脂表面の濡れ性を上げることにより表面に水滴を形成させないようにする方法が採用されている。
近年、高規則性ポリプロピレン樹脂が得られる触媒の開発やプロセスの開発により、以前に比べて剛性や透明性にさらに優れるポリプロピレンが効率よく得られるようになってきた。しかし、その反面、樹脂の結晶性が上がったことにより、練り込み型防曇剤の性能が発現されにくくなることが問題となってきている。この問題を解決するため、これらの添加剤の高濃度化や、成形品作成後の熱セット時間を長くするなどして内部界面活性剤の表面への移行速度を速める工夫が行われている。しかしながら、高濃度化や熱セット時間の延長による性能向上の試みは、界面活性剤の表面への過剰なブリード現象を引き起こすことが多く過剰ブリードした防曇剤による透明性の悪化が見られた。
この問題の別の解決方法としては、比較的親水性が強く、樹脂中からのブリードアウトが速い組成物で、防曇剤を構成する方法が考えられ、この性質に適したものとしてアミン系の化合物を防曇剤として使用することが、広く行われている。しかしながら、アミン系の化合物は、優れた防曇性を持つ一方、やはり過剰なブリードを示すことがあり、表面に過剰に存在した場合、フィルムのべたつき、保管時のブロッキング、黄変などの原因となり、防曇性の低下なども起こり問題となっていた。また過剰にブリードしたアミン系化合物は食品等に接触したとき、移行による安全衛生面についても懸念される。
これらの問題解決のために、たとえば特許文献1 では、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを主成分とする帯電防止剤が提案されている。しかし、この帯電防止剤ではポリプロピレンに対する十分な相溶性を得ることが困難である。また、特許文献2では、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルおよびアルキルジエタノールアミンの3成分からなる防曇性に優れた帯電防止剤が提案されている。しかし、この帯電防止剤では、帯電防止性、防曇性が一時的に発現するものの、時間経過によりブリード過多となることで起こる透明性の低下や過剰に存在するアミン系化合物によるべたつき、黄変は避けられない。
特開平9-3273号公報 特開平9-286877号公報
本発明は、初期防曇性に優れ、長期保管時にも優れた防曇性、透明性を確保しながら、べたつき、ブロッキング、黄変を起こさない、防曇性ポリプロピレンフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の成分(A)をフィルムの表面に特定量含む防曇性ポリプロピレン系フィルムであれば、上記課題が解決することを発見し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムは、表面の少なくとも1方に防曇層を有する防曇性ポリプロピレン系フィルムであって、前記フィルムが防曇剤を含み、前記防曇剤が脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(A)、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである成分(B)及びグリセリン脂肪酸エステルである成分(C)を含み、前記防曇層の表面に前記成分(A)を0.5~20mg/mの割合で含前記防曇剤のアミン価が50~80mgKOH/g、ケン化価が90~110mgKOH/gであり、前記成分(C)が、グリセリンモノ脂肪酸エステルである成分(C-1)と、グリセリンジ脂肪酸エステルである成分(C-2)とを含み、前記成分(C-1)と前記成分(C-2)との重量比(C-1/C-2)が95/5~50/50である
前記成分(A)が下記一般式(1)で示される化合物であると好ましい。
Figure 0007089864000001
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基であり、その炭素数は8~22であり、aおよびbは0以上でa+b=2~3を満足する数である。)
記防曇層の表面に前記成分(B)を0.5~20mg/mの割合で含むとさらに好ましい。
記成分(B)が、下記一般式(2)で表される脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物モノ脂肪酸エステルである成分(B-1)と、下記一般式(3)で示される脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物ジ脂肪酸エステルである成分(B-2)とを含み、
前記成分(B-1)と前記成分(B-2)との重量比(B-1/B-2)が50/50~90/10であると好ましい。
Figure 0007089864000002
(式中、R、Rはアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基でありその炭素数はR=8~22、R=7~21であり、cおよびdは0以上でc+d=2~3を満足する数である。)
Figure 0007089864000003
(式中、R、Rはアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基でありその炭素数はR=8~22、R=7~21であり、eおよびfは0以上でe+f=2~3を満足する数である。)
リプロピレン系フィルムが延伸フィルムであると好ましい。
本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムは製膜初期より優れた防曇性を示し、長期保管されても、防曇性、透明性を保ち、べたつきや黄変が無く、食品包装用フィルムとして好適である。
成分(A)の模式図。 成分(A)が単層フィルム表面にブリードアウトした断面図。 成分(A)が積層フィルム表面にブリードアウトした断面図。
〔防曇性ポリプロピレン系フィルム〕
本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムについて説明する。
本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムは、単層フィルム又は積層フィルムを構成する。
(単層フィルム)
単層フィルムとしては、単層延伸ポリプロピレン系フィルム、単層無延伸ポリプロピレン系フィルム(以下CPPフィルムという。)が挙げられる。単層フィルムは、防曇成分を含み、当該単層フィルムを防曇層という。
ポリプロピレン系フィルムが単層延伸ポリプロピレン系フィルムであると、樹脂結晶性が高くなるため防曇剤のブリード量が抑制され、本願課題である長期保管時の透明性やフィルム触感が優れるために好ましい。
延伸ポリプロピレン系フィルムとしては、一軸延伸ポリプロピレン系フィルム、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムが挙げられる。
単層フィルムの厚みは、本願効果が発揮されやすい観点から、5~100μmが好ましく、
10~80μmがより好ましく、20~50μmがさらに好ましい。5μm未満では防曇性能が発現されないことがあり、100μmを超えると防曇剤が過剰にブリードアウトしてべたつきや黄変の原因となることがある。
単層フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体又はプロピレン系ランダム共重合体が挙げられる。
プロピレン系ランダム共重合体は、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。かかるプロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~20のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
本発明のフィルムに必須に含まれる成分(A)を模式的に表すと、図1に示すように、親水基(1)と疎水基(2)を持つ両親媒性物質として表すことができる。
単層フィルム(3)において、製造時に防曇剤が練り込まれた直後には、成分(A)はフィルム内部で分散しているが、その後成分(A)は疎水性である樹脂層から徐々に表面にブリードアウトしてきて、フィルム表面に親水基、フィルム内部に疎水基を残した図2のような状態で表面を覆うものと推測される。なお、フィルムの製造直後から40℃、1日経過後の状態を初期防曇性といい、ブリードアウト現象が安定化する状態である。
表面に親水基が並ぶことによって、曇りの原因となる微細水滴を吸着、表面張力を低下させることで水膜を形成して防曇性を示す。本発明においては、成分(A)の表面濃度を適正に調整することにより、図2のように安定化した表面状態を取ることで、経時的に他の添加剤の過剰ブリードを防ぐことができるため、防曇性、透明性を保持し、べたつき、黄変の無い優れたフィルムを得ることができたものと推測する。なお、経時的な変化とは、フィルムの製造直後から40℃、10日経過後の状態をいう。
(積層フィルム)
積層フィルムは、表面の少なくとも1方に防曇層を有する。
防曇層とは、層に防曇成分が含まれたものであり、防曇成分は、積層フィルムの内層からブリードアウトしたものでもよく、またあらかじめ層に防曇成分を練り込んだものでもよい。
積層フィルムは、前記内層として、防曇層の他に、基材層、熱融着層、ガスバリアー層、防曇剤の揮発防止層、ポリアミド樹脂層、金属蒸着層等が積層されていてもよい。防曇層の厚みは、防曇性の観点からは、特に限定されない。
防曇性ポリプロピレン系フィルムが積層フィルムの場合、防曇性ポリプロピレン系フィルムの厚みは、本願効果が発揮されやすい観点から、5~100μmが好ましく、10~80μmがより好ましく、20~50μmがさらに好ましい。5μm未満では防曇性能が発現されないことがあり、100μmを超えると防曇剤が過剰にブリードアウトしてべたつきや黄変の原因となることがある。
防曇層を構成する樹脂は、単層フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂と同じものを挙げることができる。防曇層の他の、基材層、熱融着層についてのポリマー構成も防曇層の場合と同様である。
本発明の積層フィルムは、製造直後、防曇剤を含む内層と表層が積層されたものとして得られ、成分(A)は内層にのみ分散しているが、その後成分(A)は疎水性である内層および表層を通して、徐々に表面にブリードアウトしてきて、フィルム表面に親水基、フィルム内部に疎水基を残した図3のような状態で表面を覆うものと推測される。
表面に親水基が並ぶことによって、曇りの原因となる微細水滴を吸着、表面張力を低下させることで水膜を形成して防曇性を示す。単層フィルム同様に、成分(A)の表面濃度を適正に調整することにより、図3のように安定化した表面状態を取ることで、時間経過による他の添加剤の過剰ブリードを防ぐことができるため、防曇性、透明性を保持し、べたつき、黄変の無い優れたフィルムを得ることができたものと推測する。
本発明フィルム中には、前記以外にも種々の添加剤を適当量更に配合することができる。かかる添加剤としては、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、顔料、抗菌剤等を挙げることができる。
本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムは、前記防曇層の表面に前記成分(A)を0.5~20mg/mの割合で含むことを特徴とする。成分(A)については、後述する。
前記防曇層の表面に含まれる前記成分(A)の割合は0.5~15mg/mが好ましく、1~10mg/mがさらに好ましい。0.5mg/mの未満では、防曇性が不良となり、20mg/mを超えると、フィルムの表面がべたつき、黄変を起こす。
フィルムの内部に前記成分(A)が含まれていても、表面上の濡れ性が向上しないため、本願の課題である優れた初期防曇性が達成されない。
成分(A)の表面濃度の調整方法については、防曇剤組成の変更、防曇剤濃度の増減、フィルム膜厚の増減、フィルムの樹脂組成の変更、コロナ処理等フィルム表面の後処理条件、フィルムのセットリングの条件等が挙げられるが、特に限定はされない。表面濃度を緻密に調整するためにはこれらの方法を適当に組み合わせることが望ましく、防曇剤組成、防曇剤濃度による調整は比較的容易にできることから特に望ましい。
本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムは、前記防曇層の表面に前記成分(B)を0.5~20mg/m含むと、透明性が向上し、べたつきをさらに少なくすることができるため、好ましく、0.5~15mg/mがより好ましく、1~10mg/mがさらに好ましい。0.5mg/m未満では、透明性改良効果およびべたつき防止効果がほとんど見られないことがあり、20/mを超えると、表面の疎水性が高くなりすぎるため、防曇性が若干低下することがある。成分(B)については、後述する。
防曇性ポリプロピレン系フィルムに対する防曇剤の重量割合は、0.05~2.0重量%が好ましく、0.1~1.5重量%がより好ましく、0.2~1.0重量%がさらに好ましい。0.05重量%未満では防曇性が不足することがあり、2.0重量%を超えると防曇剤成分の表面へのブリードアウトが早過ぎ、かつ、必要以上のブリードアウトが起こり易くなり、透明性が低下してべたつきや黄変が発生することがある。
〔防曇剤〕
防曇剤は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(A)を必須に含む。以下、防曇剤の各成分について説明する。
〔成分(A)〕
成分(A)は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物であり、防曇性を付与する成分であり、表面の濡れ性向上効果が高い。
前記成分(A)が上記一般式(1)で示されると、濡れ性が優れていることで本願課題である初期防曇性が優れるために好ましい。
一般式(1)中、Rはアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基である。Rの炭素数は8~22であり、a及びbは0以上であり、a+b=2~3を満足する数である。
としては、アルキル基やアルケニル基が好ましく、一般的に入手が容易であり安定性がよい。Rの炭素数は、8~22であり、8~18が好ましく、12~18がより好ましく、16~18がさらに好ましい。Rの炭素数が8未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多による熱融着強度不足を引き起こすことがある。一方、Rの炭素数が22超であると、平滑性が不足することがある。
成分(A)の具体例としては、たとえば、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
成分(A)の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、脂肪族アミンに酸化エチレンを付加反応させて製造することができる。また、後述する成分(B)合成時に反応比率を調整することで未反応物として含有させることもできる。
防曇剤が、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである成分(B)と、グリセリン脂肪酸エステルである成分(C)とをさらに含むと、防曇成分全体の樹脂への相溶性や、防曇性の即効性が増すために好ましい。
〔成分(B)〕
成分(B)は、ポリプロピレン樹脂との相溶性に優れた成分であり、防曇剤のポリプロピレン樹脂中での分散状態をコントロールするために使用する。また、成分(B)は成分(A)と同時に表面に存在することにより、防曇層の親水―疎水バランスを整えることができるため、さらなるフィルムの透明性向上およびべたつき防止効果を得ることができる。成分(B)は脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである。
本発明の多層ポリプロピレン系延伸フィルムは、上記一般式(2)で示される成分(B-1)と、上記一般式(3)に示される成分(B-2)を含有すると、樹脂相溶性のバランス及びフィルム表面の防曇層における親水―疎水バランスをとりやすいために好ましい。
〔成分(B-1)〕
成分(B-1)は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物モノ脂肪酸エステルであり、上記一般式(2)で示される化合物である。
上記一般式(2)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基である。Rの炭素数は8~22である。
アルキル基としては、直鎖であっても分岐であってもよく、本願効果を発揮する観点から、直鎖が好ましい。
の炭素数は8~22であり、12~18が好ましく、14~18がより好ましく、16~18がさらに好ましい。炭素数が8未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こす。また、防曇層の透明性改良効果や、べたつき防止効果も見られない。一方、炭素数が22を超えると、防曇性が不足する。
の炭素数は、炭素数は7~21であり、好ましくは11~17、さらに好ましくは13~17、特に好ましくは15~17である。炭素数が7未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こすことがある。また、防曇層の透明性改良効果や、べたつき防止効果も見られない。一方、炭素数が21を超えると、防曇性が不足することがある。
c及びdはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。c及びdは0以上であり、c+dは2~3を満足する数である。
成分(B-1)としては、特に限定されないが、たとえばラウリルジエタノールアミンモノラウレート、ラウリルジエタノールアミンモノミリステート、ラウリルジエタノールアミンモノパルミテート、ラウリルジエタノールアミンモノステアレート、ラウリルジエタノールアミンモノオレート、ミリスチルジエタノールアミンモノラウレート、ミリスチルジエタノールアミンモノミリステート、ミリスチルジエタノールアミンモノパルミテート、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレート、ミリスチルジエタノールアミンモノオレート、パルミチルジエタノールアミンモノラウレート、パルミチルジエタノールアミンモノミリステート、パルミチルジエタノールアミンモノパルミテート、パルミチルジエタノールアミンモノステアレート、パルミチルジエタノールアミンモノオレート、ステアリルジエタノールアミンモノラウレート、ステアリルジエタノールアミンモノミリステート、ステアリルジエタノールアミンモノパルミテート、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンモノオレート、オレイルジエタノールアミンモノラウレート、オレイルジエタノールアミンモノミリステート、オレイルジエタノールアミンモノパルミテート、オレイルジエタノールアミンモノステアレート、オレイルジエタノールアミンモノオレート等が挙げられ、1種または2種以上であっても良い。
〔成分(B-2)〕
成分(B-2)は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物ジ脂肪酸エステルであり、上記一般式(3)に示される化合物である。
上記一般式(3)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基である。Rの炭素数は8~22である。
アルキル基としては、直鎖であっても分岐であってもよく、本願効果を発揮する観点から、直鎖が好ましい。
の炭素数は8~22であり、12~18が好ましく、14~18がより好ましく、16~18がさらに好ましい。炭素数が8未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こすことがある。また、防曇層の透明性改良効果や、べたつき防止効果も見られない。一方、炭素数が22を超えると、防曇性が不足することがある。
の炭素数は、好ましくは7~21、より好ましくは13~17、さらに好ましくは15~17である。炭素数が7未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こすことがある。また、防曇層の透明性改良効果や、べたつき防止効果も見られない。一方、炭素数が21を超えると、防曇性が不足することがある。
e及びfはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。e及びfは0以上であり、e+fは2~3を満足する数である。
成分(B-2)として具体的にはたとえばラウリルジエタノールアミンジラウレート、ラウリルジエタノールアミンジミリステート、ラウリルジエタノールアミンジパルミテート、ラウリルジエタノールアミンジステアレート、ラウリルジエタノールアミンジオレート、ミリスチルジエタノールアミンジラウレート、ミリスチルジエタノールアミンジミリステート、ミリスチルジエタノールアミンジパルミテート、ミリスチルジエタノールアミンジステアレート、ミリスチルジエタノールアミンジオレート、パルミチルジエタノールアミンジラウレート、パルミチルジエタノールアミンジミリステート、パルミチルジエタノールアミンジパルミテート、パルミチルジエタノールアミンジステアレート、パルミチルジエタノールアミンジオレート、ステアリルジエタノールアミンジラウレート、ステアリルジエタノールアミンジミリステート、ステアリルジエタノールアミンジパルミテート、ステアリルジエタノールアミンジステアレート、ステアリルジエタノールアミンジオレート、オレイルジエタノールアミンジラウレート、オレイルジエタノールアミンジミリステート、オレイルジエタノールアミンジパルミテート、オレイルジエタノールアミンジステアレート、オレイルジエタノールアミンジオレート等が挙げられ、1種または2種以上であっても良い。成分(B-1)および成分(B-2)の合成法について特に限定は無いが、アルキルジエタノールアミンと脂肪酸をエステル化反応する際に脂肪酸の反応比を調整することにより混合物を得たり、アルキルジエタノールアミンと脂肪酸を反応させた後に精製してそれぞれを別個に得たり、することができる。
成分(B-1)と成分(B-2)の重量比(B-1/B-2)は50/50~90/10であり、60/40~90/10が好ましく、63/37~86/14がより好ましい。50/50未満では、防曇成分の疎水性が強くなり防曇成分のブリード不足がおこり、防曇性不足となる。一方、90/10超では、防曇成分の相溶性が下がることによって、べたつきや黄変が起こる。また、防曇層の透明性改良効果や、べたつき防止効果も見られない。
〔成分(C)〕
成分(C)はグリセリン脂肪酸エステルであり、本発明に使用される防曇成分のうちで特に防曇成分全体の即効的なブリードアウトを促進させる成分である。
成分(C)が炭素数8~22の脂肪酸残基を有すると、熱可塑性樹脂との相溶性が良く、透明性が高く、防曇性に優れるために好ましい。
成分(C)の脂肪酸残基の炭素数は、好ましくは12~18、さらに好ましくは14~18、特に好ましくは16~18である。炭素数が8未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多による透明性不良を引き起こすことがある。一方、炭素数が22を超えると、即効性を充分に発現できず防曇性が不足することがある。
成分(C)は、成分(C-1)及び成分(C-2)を必須に含有する。
〔成分(C-1)〕
成分(C-1)は、グリセリンモノ脂肪酸エステルである。
成分(C-1)としては、たとえば、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート等が挙げられ1種または2種以上であっても良い。
〔成分(C-2)〕
成分(C-2)は、グリセリンジ脂肪酸エステルである。
成分(C-2)としては、たとえば、グリセリンジラウレート、グリセリンジミリステート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、グリセリンジベヘネート、グリセリンジオレート等が挙げられ1種または2種以上であっても良い。
成分(C-1)と成分(C-2)の重量比(C-1/C-2)は95/5~50/50であり、90/10~50/50が好ましく、80/20~60/40がより好ましい。95/5超の場合には、べたつきが起こる。一方、50/50未満の場合には、防曇性不足となる。
成分(C-1)および成分(C-2)の合成法について特に限定は無いが、たとえば、グリセリンと脂肪酸とをエステル化反応させたり、グリセリンエステルに脂肪酸エステルをエステル交換反応させたり、する際に反応比率を調製することで混合物を得ることができる。また、それぞれの反応で得られた組成物について、別個に得られた精製物を混合して使用しても良い。
〔成分(D)〕
成分(D)は任意成分であり、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムに成分(D)が含有されると、ブリード過多に対して抑制し、熱融着性低下を防止できる。
成分(D)はポリオキシエチレン基を有するソルビタン脂肪酸エステルである。成分(D)にあるオキシエチレン基の繰り返し単位数pについては、特に限定はないが、好ましくは1~30、さらに好ましくは3~25、特に好ましくは10~22である。オキシエチレン基の繰り返し単位数pが1未満であると、疎水性が強く防曇性が阻害されることがある。一方、オキシエチレン基の繰り返し単位数pが30を越えると親水性が過剰となりポリプロピレン樹脂との相溶性が阻害されることがある。
成分(D)を構成する脂肪酸は、特に限定はなく、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸のエステル等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
成分(D)は、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル等のいずれであってもよく、ソルビタンに対する脂肪酸の反応モル数が1.5や2.5のように中間的なエステル化度のものも使用できる。また、1種または2種以上から構成されていてもよい。
成分(D)の脂肪酸残基の炭素数は、好ましくは8~22、より好ましくは12~18、さらに好ましくは14~18、特に好ましくは16~18である。炭素数が8未満であるとポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変がおこることがある。一方、炭素数が22を超えると、防曇性が不足することがある。
このような脂肪酸残基としては、下記一般式(4)で示される脂肪酸残基(D)を挙げることができる。
CO- (4)
(式中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基であり、その炭素数は7~21である。)
としては、一般的な入手が容易であり安定性が良好な、アルキル基、アルケニル基が好ましい。
成分(D)の具体例としては、たとえば、POE(p)ソルビタンラウレート、POE(p)ソルビタンミリステート、POE(p)ソルビタンパルミテート、POE(p)ソルビタンステアレート等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。ここで、POEは(ポリ)オキシエチレン基を意味し、pはオキシエチレン基の繰り返し単位数を意味し、上記で説明したとおりである。
成分(D)の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、1)ソルビタンと脂肪酸とをエステル化反応させ、得られたエステル化物に酸化エチレンを反応させたり、2)ソルビタンエステルに脂肪酸エステルをエステル交換反応させ、得られたエステル化物に酸化エチレンを反応させたり、3)ソルビタンに酸化エチレンを反応させ、得られた付加物に脂肪酸をエステル化反応させたり、4)ソルビタンエステルに酸化エチレンを反応させ、得られた付加物に脂肪酸エステルをエステル交換反応させたりして製造することができる。これらのうちでも1)の製造方法が好ましい。
〔成分(E)〕
成分(E)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルであり、任意成分である。
成分(E)が、本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムに使用された場合に、ブリード過多に対して抑制し、べたつきや黄変を防止できる。
成分(E)はポリグリセリンのエステル誘導体である。成分(E)を構成するポリグリセリンとしては、たとえば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。成分(E)は脂肪酸エステルであれば特に限定はなく、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸のエステル等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
成分(E)には、さまざまなエステル化度のものを使用でき、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル等のいずれであってもよく、ポリグリセリンに対する脂肪酸の反応モル数が1.5や2.5のように中間的なエステル化度のものも使用できる。また、1種または2種以上から構成されていてもよい。
成分(E)を構成するポリグリセリンの平均重合度や、成分(E)のエステル化度等について特に限定はない。
ポリグリセリンの平均重合度は、好ましくは3~10、さらに好ましくは4~8、特に好ましくは4~6である。ポリグリセリンの平均重合度が3未満であると、ブリード過多を起こし、べたつきや黄変を起こすことがある。一方、ポリグリセリンの平均重合度が10超であると、ブリード不良となり防曇性が阻害されることがある。
成分(E)においてエステル化度(ポリグリセリン1モルと反応する脂肪酸のモル数)をyとし、ポリグリセリンの平均重合度をxとしたとき、y≦x+2の関係が成り立つ。yは、好ましくはy<xであり、その場合、防曇成分の親水性が良好で、即効性に優れる。また、4≦x≦6の場合、1≦y≦3であると、即効性と過剰なブリードに対する抑制効果のバランスがとれるため特に好ましい。y≧xであると防曇成分の疎水性が高くなりすぎ、即効性が損なわれることがある。
成分(E)を構成する脂肪酸残基の炭素数は、好ましくは8~22、より好ましくは12~18、さらに好ましくは14~18、特に好ましくは16~18である。炭素数が8未満では、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こすことがある。一方、炭素数が22を超えると、防曇性が不足することがある。
成分(E)の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、ポリグリセリンと脂肪酸とをエステル化反応させたり、ポリグリセリンエステルに脂肪酸エステルをエステル交換反応させたりして製造することができる。
〔防曇剤〕
本発明の防曇性ポリプロピレン系フィルムに含まれる防曇剤は、前記成分(A)を必須に含有し、任意成分として、成分(B)、成分(C)、成分(D)又は成分(E)を含有してよい。
防曇剤に対する成分(A)の重量割合は、好ましくは5~50重量%であり、さらに好ましくは8~40重量%、特に好ましくは10~30重量%である。成分(A)の重量割合が5重量%未満であると、防曇性が低下することがある。一方、成分(A)の重量割合が50重量%超であると、ブリード過剰のため、フィルムの表面がべたつき、べたつきや黄変が起こることがある。
本発明のフィルムが、成分(B)を含有する場合、防曇剤に対する成分(B)の重量割合は、好ましくは30~89重量%であり、さらに好ましくは35~80重量%、特に好ましくは40~70重量%である。成分(B)の重量割合が30重量%未満であると、ポリプロピレン樹脂に対する相溶性が悪くなり、防曇成分のブリード過多により、フィルム透明性の悪化やべたつきを起こすることがある。一方、成分(B)の重量割合が89重量%超であると、防曇性が低下することがある。
本発明のフィルムが、成分(C)を含有する場合、防曇剤に対する成分(C)の重量割合は、好ましくは5~50重量%であり、さらに好ましくは8~40重量%、特に好ましくは10~25重量%である。成分(C)の重量割合が5重量%未満であると、ブリードの即効性が阻害され防曇性が低下することがある。一方、成分(B)の重量割合が50重量%超であると、防曇成分のブリード過多により、フィルム透明性の悪化やべたつきを起こすことがある。
本発明のフィルムが、成分(D)または成分(E)を含有する場合、防曇剤に対する成分(D)及び成分(E)の重量割合は、好ましくは1~20重量%であり、さらに好ましくは3~15重量%、特に好ましくは5~10重量%である。成分(D)及び成分(E)の配合割合が1重量%未満であると、防曇成分のブリード過多により、フィルム透明性の悪化やべたつきを起こすことがある。一方、成分(D)及び(E)の配合割合が20重量%超であると、ブリード抑制が必要以上に行われることにより防曇性が低下することがある。
〔防曇性ポリプロピレン系フィルムの製造方法〕
防曇性ポリプロピレン系フィルムを製造する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。フィルムにおける防曇剤の均一分散の観点から、防曇剤を含むマスターバッチを予め製造する方法が好ましい。
(マスターバッチの製造方法)
マスターバッチの製造方法については特に制限は無く、従来のポリオレフィンをベース樹脂としたマスターバッチの製造方法として公知の方法で製造が可能である。例えば、公知の原料を公知の混合装置(例えば、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、スクリューブレンダー、リボンブレンダー等)で均一化したものを溶融混練機(例えば、一軸押出機、二軸以上の多軸押出機、バンバリーミキサーやニーダーなど)で混練する方法を挙げることができる。
混練されたマスターバッチはペレット形状であることが好ましく、これによってマスターバッチの取り扱いは一層容易になる。ペレット化の手法は任意であり、既知の方法が用いられる。例えば、前記の溶融混練機を用いて混練と同時に、あるいは事前に混練されたものを例えばフィーダールーダーなどによって押出しながらホットカットやストランドカットする方法が挙げられる。
(単層無延伸フィルムの製造方法)
単層無延伸フィルムを製造する工程としては、一般的な無延伸フィルムの製造方法を用いれば良く、例えば、上記マスターバッチ及び公知の原料を公知の混合装置(例えば、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、スクリューブレンダー、リボンブレンダー等)で均一化したものを溶融混練機(例えば、一軸押出機、二軸以上の多軸押出機)にて溶融混合してから、公知の方法(例えばインフレーション成形方法やTダイ成形方法等)にてフィルム化する方法が挙げられる。特に透明性が要求される場合においては、T ダイ成形方法や水冷インフレーションフィルム成形方法を用いシートまたはフィルムとすることが好ましい。
(単層延伸フィルムの製造方法)
延伸してフィルムとする延伸工程は、上記無延伸シートに対して延伸工程を施すものであり、例えば逐次延伸、同時延伸、インフレーション等の方法が挙げられるが特に限定するものではない。延伸条件としては特に限定するものではないが、逐次延伸については、通常未延伸フィルムを90~140℃の温度に加熱し、長手方向に3~7倍延伸した後、冷却してから、テンター式延伸機に導き、130~175℃の温度に加熱し、幅方向に7~12倍に延伸した後、所定の温度で熱固定(熱処理)後巻き取る方法が取られている。
(多層無延伸フィルムの製造方法)
多層ポリプロピレン系無延伸フィルムを製造する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができるが、多層構成のフラット状シートを押出成形により製膜する工程を含む。
多層構成のフラット状シートを押出成形により製膜する工程は、特に限定されないが、製造効率を考慮すると、多層のうちの各層それぞれを別の押出機にて内部成分と混合融解して、共押出法によって融着させ、公知の方法(例えばインフレーション成形方法やTダイ成形方法等)で融着シートまたはフィルムを得る方法が好ましい。
(多層延伸フィルムの製造方法)
多層ポリプロピレン系延伸フィルムを製造する方法は、上記単層延伸フィルムと同様の方法が挙げられる。
上記のそれぞれのフィルムについては通常のフィルムに於ける後加工工程(コロナ処理、セットリング等)を行ってもよく、特にフィルム印刷性、防曇成分のブリード性向上のため、少なくとも片面にコロナ放電処理を行うことが好ましい。
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例における防曇剤およびポリプロピレン系フィルムの物性評価は、下記の方法にて実施した。
(ケン化価)
防曇成分のケン化価(Sv)を医薬部外品原料規格ケン化価測定法によって測定する。
(アミン価)
防曇成分のアミン価(Amv)を医薬部外品原料規格アミン価測定法第2法によって測定する。なお、上記測定法は本願出願時に規定された測定法とする。
(フィルム表面上の成分(A)の含量)
(1)予めエタノールで脱脂した脱脂ガーゼに20℃のエタノール10gを含浸させたエタノール含浸ガーゼで、縦横20cmの測定対象フィルムの片方の表面全体を2回拭く。
(2)(1)の拭き取り操作を20枚のフィルムに対して行う。
(3)当該ガーゼ20枚分を50℃のエタノール500mlで抽出した後、エタノールを留去し、絶乾物の重量(Wz(g))を測定する。
(4)絶乾物についてガスクロマトグラフを使用して内部標準法により求めた(A)のピーク強度比より、成分(A)の絶対量(W(g))を計算する。
=Wz×((A)のピーク強度比)
(5)最終的に、成分(A)の表面における重量を以下の式で算出する。
フィルム表面上の成分(A)の含量=W/(0.2×0.2×20)(mg/m
(フィルム表面上の成分(B)の含量)
成分(A)と同様に測定した。
(フィルム防曇性)
容量100mlのガラス製ビーカーに30℃の水を60ml入れ、ビーカーの口を40℃にて1日保管後のフィルムの熱融着層面で密閉し塞いだ。次いで、5℃の恒温槽に入れ、24時間後のフィルム内面への水滴の付着状態を目視で観察し、下記に示す等級に基づいて評価した。
防曇性等級
5:全く水滴がなく、全面濡れた状態。
4:曇りはないが、所々にはじかれた水滴が存在している。
3:曇りはないが、はじかれた水が大きな水滴となって点在している。
2:全面に大きな水滴が付着し、曇って中身がほとんど見えない。
1:全体的に白く曇って中身が全く見えない。
防曇性評価基準
○:等級4~5
△:等級3
×:等級1~2
(フィルム透明性)
ポリプロピレン系フィルムを、40℃で10日保管後に、色差・濁度測定器(日本電色工業製)を使用してフィルムのHaze値およびΔHaze(フィルム表面をエタノールで軽く洗い流す前後のHaze値の差)を測定する。ΔHazeについて、下記に示す評価基準に基づいて評価する。
○:0.0以上0.6未満
△:0.6~0.9
×:0.9超
(フィルム触感)
40℃で10日保管後のフィルムについて、手で直接触れて触感について、下記に示す評価基準に基づいて評価する。
○:べたつき感がない
×:不快なべたつき感がある
(フィルムの耐ブロッキング性)
40℃で10日保管後のフィルムを2枚重ね、50Kgf/mの加圧下で同条件にて一日放置後、2枚のフィルムを剥がす時の状態を観察し、下記に示す評価基準に基づいて評価する。
○:抵抗無く剥がすことができる
△:抵抗あるが、剥がせる
×:容易に剥がせない
(フィルムの黄変度)
40℃で10日保管後のフィルムを50枚重ね側面について目視にて観察し、下記に示す評価基準に基づいて評価する。
○:黄変が認められない
△:僅かに黄味がかっている。
×:黄変が認められる
(マスターバッチの製造)
表1に示す配合割合にて防曇剤を調製した。
次いで、ポリプロピレン(ホモポリマー、MFR=2.5g/10min)を準備し、上記防曇剤の含有率がポリプロピレンに対して10重量%となるように、防曇剤を混合し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練して、ストランドを得た。得られたストランドをペレタイザーでカットして、マスターバッチを作製した。
(実施態様1)
次いで、得られたマスターバッチおよび別に用意したポリプロピレンホモポリマーを混合して押出原料を調製し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練し、Tダイより押出した。ここで、押出原料は、防曇剤の含有率がポリプロピレンに対して表1の比率となるように、マスターバッチおよび別に用意したポリプロピレンの量を調整して調製した。
Tダイより押出された押出物をTダイより押出した後、一軸延伸して厚さ20μmのフィルムに成形した。得られたフィルムの表面について、成分(A)の含量は2mg/mだった。その他の測定項目の結果について表2に示す。
(実施例1-2)
(実施態様2)
上記マスターバッチおよび別に用意したポリプロピレンホモポリマーを混合して押出原料を調製し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練し、Tダイより押出し厚さ50μmの無延伸フィルムを得た。ここで、押出原料は、防曇成分の含有率がポリプロピレンに対して表1の比率となるように、マスターバッチおよび別に用意したポリプロピレンの量を調製した。
(実施例1-3)
(実施態様3)
上記マスターバッチおよび別に用意したポリプロピレンホモポリマーを表1に示す比率となるように混合して、押出原料を調製し、1台の二軸押出成形機に投入、他の押出機には、ポリプロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体を投入し、前者を基材層、後者を防曇層として溶融温度230℃にて共押出し、40℃の冷却ドラムにて厚さ300μmのシートとしてロールに回収した。この未延伸シートを3cm×3cmに切断後、150℃に加熱しながら、長手方向に3倍、幅方向に5倍の倍率にてバッチ式同時延伸装置で延伸をかけ、9cm×15cm、厚さ20μm(基材層:18μm、防曇層:2μm)のフィルムを得た。
得られた延伸フィルムの防曇層に対して表面張力が40dyne/cmとなるようにコロナ放電処理を行い、40℃にて8時間ヒートセットした。得られたフィルムの表面について、成分(A)の含量は2mg/mだった。その他の測定項目の結果について表2に示す。
(実施例2~12、2-2、2-3、3-2、3-3、比較例1~9)
防曇剤について実施例1、で使用した成分を表1に記載した成分に置換した以外は同様にして、実施例2~12及び比較例1~9についてフィルムを作製し、フィルムの表面に係る成分(A)の含量及びその他の測定項目を評価した。また、実施態様2にて実施例2-2、3-2について、また、実施態様3にて実施例2-3、3-3について延伸フィルムを作製し評価した。その結果を表2に示す。ただし、実施例1、1-2、1-3、2、2-2、2-3、3、3-2、3-3、4は、それぞれ参考例1、1-2、1-3、2、2-2、2-3、3、3-2、3-3、4とする。
Figure 0007089864000004
Figure 0007089864000005
表1及び表2から分かるように、本発明のポリプロピレン系フィルムは、初期防曇性が優れており、長期保管時にも防曇性、透明性を保ち、フィルムのべたつきやブロッキングを起こさず、黄変も起こらないことが確認された。
それに対して、比較例1、2のフィルムは実施例1のフィルムと同一組成の防曇剤を含有したものだが、比較例1では、フィルムに対する防曇剤の濃度が低いため、成分(A)の表面含有量が少なくなり、充分な初期防曇性が得られず、比較例2では、フィルムに対する防曇剤の濃度が高いことにより成分(A)が表面に過剰にあるため、初期防曇性は良好であったが、経時的には、防曇性が劣るだけでなく、透明性も不良となり、フィルムを触るとべたつきを感じ、ブロッキングを起こす可能性が高く、黄変が観察された。
また、比較例3、5のフィルムは、防着剤に占める成分(A)の重量割合が多いことに起因して成分(A)が表面に過剰にあるため、初期防曇性は良好であったが、経時的には、防曇性が劣るだけでなく、透明性も不良となり、フィルムを触るとべたつきを感じ、ブロッキングを起こす可能性が高く、黄変が観察された。
比較例4,6、7のフィルムは成分(A)の表面含有量が少ないため、充分な初期防曇性が得られなかった。
比較例4及び6のフィルムは、防曇剤に含まれる成分(A)の重量割合は適正であるにも拘わらず、併用成分の親水性等の影響により、成分(A)がフィルムの表面へ移行しないためか、成分(A)の表面含有量が少ない。
比較例8及び9のフィルムは、若干の初期防曇性を示すが、フィルム中に成分(A)が含まれないため、適正な表面状態を保つことができず、経時的に防曇性、透明性が悪化する結果となった。
1 親水基
2 疎水基
3 成分(A)
4 防曇層
5 基材層

Claims (5)

  1. 表面の少なくとも1方に防曇層を有する防曇性ポリプロピレン系フィルムであって、前記フィルムが防曇剤を含み、前記防曇剤が脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(A)、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである成分(B)及びグリセリン脂肪酸エステルである成分(C)を含み、前記防曇層の表面に前記成分(A)を0.5~20mg/mの割合で含
    前記防曇剤のアミン価が50~80mgKOH/g、ケン化価が90~110mgKOH/gであり、
    前記成分(C)が、グリセリンモノ脂肪酸エステルである成分(C-1)と、グリセリンジ脂肪酸エステルである成分(C-2)とを含み、前記成分(C-1)と前記成分(C-2)との重量比(C-1/C-2)が95/5~50/50である、
    防曇性ポリプロピレン系フィルム。
  2. 前記成分(A)が下記一般式(1)で示される化合物である、請求項1に記載の防曇性ポリプロピレン系フィルム。
    Figure 0007089864000006
    (式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基であり、その炭素数は8~22であり、aおよびbは0以上でa+b=2~3を満足する数である。)
  3. 前記防曇層の表面に前記成分(B)を0.5~20mg/mの割合で含む、請求項1又は2に記載の防曇性ポリプロピレン系フィルム。
  4. 前記成分(B)が、下記一般式(2)で表される脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物モノ脂肪酸エステルである成分(B-1)と、下記一般式(3)で示される脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物ジ脂肪酸エステルである成分(B-2)とを含み、
    前記成分(B-1)と前記成分(B-2)との重量比(B-1/B-2)が50/50~90/10である、請求項1~のいずれかに記載の防曇性ポリプロピレン系フィルム。
    Figure 0007089864000007
    (式中、R、Rはアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基でありその炭素数はR=8~22、R=7~21であり、cおよびdは0以上でc+d=2~3を満足する数である。)
    Figure 0007089864000008
    (式中、R、Rはアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基でありその炭素数はR=8~22、R=7~21であり、eおよびfは0以上でe+f=2~3を満足する数である。)
  5. ポリプロピレン系フィルムが延伸フィルムである、請求項1~のいずれかに記載の防曇性ポリプロピレン系フィルム。
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