図1は、本発明の加飾シートの一実施形態を示す概略図である。以下において、紙面下側の面を一方面(裏面)、紙面上側の面を他方面(表面)として、詳述する。
加飾シート1は、図1Aに示されるように、被加飾体(後述)に貼着されるシート状の部材であって、加飾層2と、その加飾層2の一方面(裏面)に設けられる粘着層3と、粘着層3の一方面(裏面)に設けられる剥離層4とを備えている。
加飾層2は、被加飾体(後述)に意匠性を付与するために備えられる意匠層であって、少なくとも、表皮層5を備えている。
表皮層5は、被加飾体(後述)に意匠性を付与するために備えられる。表皮層5は、例えば、面方向に延びるシート形状をなし、平面視略矩形状を有している。
表皮層5としては、例えば、樹脂シートが挙げられる。
表皮層5は、例えば、変形開始温度が所定範囲となるように、選択される。
表皮層5の変形開始温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、63℃以上、より好ましくは、65℃以上であり、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、90℃以下である。
表皮層5の変形開始温度は、軟化温度であり、具体的には、測定対象を無負荷状態で加熱したときに変形が開始する温度であり、JIS K 7196(1999年)に準拠して測定される。
なお、表皮層5(樹脂シート)の変形開始温度は、表皮層5(樹脂シート)を構成する樹脂の種類や、その構造などにより異なる。そのため、表皮層5として、好ましくは、上記変形開始温度を有する樹脂シートが、選択される。
表皮層5(樹脂シート)を構成する樹脂として、具体的には、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA、変形開始温度89~113℃)などの結晶性樹脂、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS、変形開始温度95~105℃)、ポリスチレン(PS、変形開始温度95~105℃)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS、変形開始温度110~120℃)、ポリ塩化ビニル(PVC、変形開始温度65~85℃)などの非晶性樹脂などが挙げられる。
これら表皮層5を構成する樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
表皮層5を構成する樹脂として、好ましくは、結晶性樹脂が挙げられ、より好ましくは、ポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。
表皮層5として、上記の樹脂シートを用いれば、優れた意匠性を得ることができる。
表皮層5の厚み(最大厚み(後述するプレス後の厚み))は、例えば、50μm以上、好ましくは、70μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
なお、図1A中の表皮層5のように、厚み方向一方側(裏面)側に向かって突出する凸部と、厚み方向他方側(表面)に向かって突出する凸部とを有する層の最大厚みは、厚み方向一方側(裏面)側に向かって突出する凸部の先端面と、厚み方向他方側(表面)に向かって突出する凸部の先端面との間の長さである。
また、図1A中の接着層3のように、厚み方向一方側(裏面)側が平滑であり、かつ、厚み方向他方側(表面)に向かって突出する凸部を有する層の最大厚みは、厚み方向一方側(裏面)面と、厚み方向他方側(表面)に向かって突出する凸部の先端面との間の長さである。
すなわち、最大厚みとは、最も厚み方向一方側に配置される面と、最も厚み方向他方側に配置される面との間の長さである(以下同様)。
なお、厚みは、ミクロトーム(ライカ社製 EMUC7/EMFC7)で-100℃にてフィルムの面直方向にカットして得られた断面のSEM(日立社製 TM3000)画像から、測定することができる。
加飾層2は、必要に応じて、表皮層5の他方面(表面)に、コート層6を備えることができる。
コート層6は、例えば、表皮層5を保護するために、表皮層5の表面に配置される。
コート層6は、例えば、公知のコーティング剤からなる塗膜として形成される。
コーティング剤としては、例えば、アクリル系コーティング剤、ウレタン系コーティング剤、フッ素系コーティング剤、シリコーン系コーティング剤などが挙げられる。
これらコーティング剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
コーティング剤として、好ましくは、フッ素系コーティング剤が挙げられる。
また、例えば、コート層6として樹脂フィルム(例えば、アクリル系樹脂フィルム、ウレタン系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム、シリコーン系樹脂フィルムなど)を用いることもできる。
コート層6を表皮層5に積層する方法としては、特に制限されず、公知の方法が採用される。例えば、上記のコーティング剤を表皮層5に直接塗布および乾燥させてもよく、また、別途用意された上記の樹脂フィルムを、必要により接着剤を介して、表皮層5に貼着してもよい。
コーティング剤および樹脂フィルムのガラス転移温度(測定法:動的粘弾性測定(測定条件:せん断モード、周波数1Hz、昇温速度5℃/分、温度範囲-50~150℃))は、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、60℃以上、さらに好ましくは、70℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、130℃以下、より好ましくは、120℃以下、さらに好ましくは、110℃以下である。
また、ガラス転移温度を動的粘弾性測定により求める場合、動的粘弾性測定装置としては、例えば、TAインスツルメント社製のDMA Q800などが挙げられる(以下同様)。
なお、コート層6の変形開始温度は、通常、コーティング剤および樹脂フィルムのガラス転移温度である。
つまり、コート層6の変形開始温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、60℃以上、さらに好ましくは、70℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、130℃以下、より好ましくは、120℃以下、さらに好ましくは、110℃以下である。
また、加飾層2がコート層6を備える場合、コート層6の厚み(最大厚み(後述するプレス後の厚み))は、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、70μm以下である。
そして、加飾層2の厚み(コート層6を備える場合、表皮層5およびコート層6の総厚み(後述するプレス後の厚み))は、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、例えば、600μm以下、好ましくは、500μm以下である。
また、加飾層2は、凹凸加工されている。具体的には、加飾層2(表皮層5およびコート層6)の表面には、表面側から裏面側に向かって窪む凹部が形成されており、また、加飾層2(表皮層5およびコート層6)の裏面には、裏面側から表面側に向かって窪む凹部が形成されている。
このような凹凸加工における凹部(および各凹部により形成される凸部)は、詳しくは図示しないが、例えば、互いに所定の間隔を隔てて、加飾層2の表面および裏面の全体に分布する、所定のドットパターンとして形成されている。なお、凹凸加工のパターンについては、特に制限されず、目的および用途に応じて、そのピッチ幅やサイズが設定される。例えば、このような凹凸加工のパターンとして、繊維状の意匠を形成するためのパターンなどが挙げられる。
加飾層2の表面および裏面の凹凸深さ(後述するプレス後の深さ)は、例えば、5μm以上であり、例えば、70μm以下、好ましくは、50μm以下、より好ましくは、30μm以下である。
なお、凹凸深さは、後述する実施例に準拠して測定される。具体的には、JIS B0601(1994年)に準拠して、10mm×10mmの面における10点平均粗さ(Rz)として測定される。また、凹凸が離散的な場合、凹凸深さは、好ましくは、非接触の測定機を用いて測定される。測定装置としては、例えば、形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製 VK-X100)などが挙げられる(以下同様)。
粘着層3は、加飾層2を被加飾体(後述)に貼着するために備えられる。
粘着層3は、例えば、公知の粘着剤から形成される。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。
これら粘着剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
粘着剤として、好ましくは、アクリル系粘着剤が挙げられる。
アクリル系粘着剤は、例えば、(メタ)アクリル系アルキルエステルを主成分とする粘着剤であって、公知の方法により得ることができる。
また、粘着剤の形態は、例えば、溶剤系粘着剤、エマルジョン系粘着剤、オリゴマー系粘着剤など、種々の形態を採用することができる。
粘着剤のガラス転移温度(測定法:動的粘弾性測定(測定条件:せん断モード、周波数1Hz、昇温速度5℃/分、温度範囲-50~150℃))は、例えば、-80℃以上、好ましくは、-60℃以上、より好ましくは、-40℃以上、さらに好ましくは、-30℃以上であり、例えば、30℃以下、好ましくは、20℃以下、より好ましくは、0℃以下、さらに好ましくは、-10℃以下である。
なお、粘着層3の変形開始温度は、加飾層2の変形開始温度(表皮層5の変形開始温度およびコート層6の変形開始温度)よりも低く、通常、粘着剤のガラス転移温度である。
つまり、粘着層3の変形開始温度は、例えば、-80℃以上、好ましくは、-60℃以上、より好ましくは、-40℃以上、さらに好ましくは、-30℃以上であり、例えば、30℃以下、好ましくは、20℃以下、より好ましくは、0℃以下、さらに好ましくは、-10℃以下である。
このような粘着層3が加飾層2に対して接触する面、すなわち、粘着層3の表面(他方面)は、加飾層2の凹凸に追従する凹凸面である。
また、粘着層3が後述する剥離層4と接触する面、すなわち、粘着層3の裏面(一方面)は、平滑面である。
なお、本発明において、平滑面は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、表面粗さを許容する。
換言すれば、粘着層3の裏面が、僅かな凹部および/または僅かな凸部を有していても、その凹凸深さが所定値未満である場合には、平滑面であると定義する。
より具体的には、平滑面が凹部および/または凸部を有する場合、その凹凸深さは、5.0μm未満、好ましくは、4.0μm以下、より好ましくは、3.5μm以下、より好ましくは、3.0μm以下である。
また、粘着層3の厚み(最大厚み(後述するプレス後の厚み))は、例えば、20μm以上、好ましくは、30μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、70μm以下である。
粘着層3の厚みが上記範囲であれば、加飾層2を被加飾体(後述)に良好に貼着でき、かつ、過剰コストを抑制することができる。
剥離層4は、粘着層3を保護し、加飾シートの使用時に剥離可能な保護層である。
剥離層4は、例えば、面方向に延びるシート形状をなし、平面視略矩形状を有している。
剥離層4としては、例えば、樹脂シート、不織布、紙、金属箔などが挙げられ、これらを単独使用または2種類以上併用することができる。剥離層4として、好ましくは、樹脂シートが挙げられる。
なお、剥離層4の変形開始温度は、特に制限されず、適宜選択される。
このような剥離層4(樹脂シート)を構成する樹脂として、具体的には、例えば、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレン(PE、高密度ポリエチレン(HDPE)など)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA、ナイロン6、ナイロン6,6など)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの結晶性樹脂、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチルエステル(PMMA)などの非晶性樹脂などが挙げられる。
これら剥離層4を構成する樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
剥離層4を構成する樹脂として、好ましくは、結晶性樹脂、より好ましくは、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。
剥離層4を構成する樹脂として、上記の樹脂を用いれば、優れた易剥離性を得ることができる。
剥離層4の厚み(後述するプレス後の厚み)は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、90μm以下、好ましくは、80μm以下である。
また、このような加飾シート1には、意匠性の向上を図るため、必要に応じて、任意の柄や模様を、公知の方法で付与することができる。例えば、表皮層5と粘着層3との間や、表皮層5とコート層6との間などに、任意の柄や模様を有する中間意匠層(図示せず)を介在させることができ、また、表皮層5やコート層6を直接加工し、任意の柄や模様を付与することもできる。
加飾シート1の総厚み(後述するプレス後の総厚み)は、例えば、100μm以上、好ましくは、130μm以上、より好ましくは、150μm以上、さらに好ましくは、200μm以上であり、例えば、1200μm以下、好ましくは、1000μm以下、より好ましくは、900μm以下、さらに好ましくは、850μm以下である。
また、加飾シート1の総厚み(後述するプレス後の総厚み)に対する、加飾層2の凹凸深さの比率(凹凸深さ/総厚み)が、例えば、0.01以上、好ましくは、0.02以上、より好ましくは、0.05以上であり、例えば、0.20以下、好ましくは、0.15以下、さらに好ましくは、0.10以下である。
加飾シート1の総厚みに対する、加飾層2の凹凸深さの比率(凹凸深さ/総厚み)が上記範囲であれば、優れた意匠性を得ることができる。
以下において、加飾シート1の製造方法について、図2を参照して詳述する。
この方法では、まず、図2Aに示されるように、凹凸加工された加飾層2を、準備する(準備工程)。
凹凸加工された加飾層2は、例えば、表皮層5およびコート層6を貼り合わせ、加飾層2を得た後、その加飾層2を凹凸加工することによって得ることができる。
加飾層2を凹凸加工する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、平板プレス法、エンボスロール法、リップエンボス法などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
好ましくは、エンボスロール法により、加飾層2を凹凸加工する。
なお、凹凸加工の条件は、特に制限されないが、通常、加工温度が、表皮層5の変形開始温度以上、かつ、コート層6の変形開始温度以上であって、通常、表皮層5の溶融温度未満、かつ、コート層6の溶融温度未満である。
例えば、表皮層5がPVCであり、コート層6がフッ素系コーティング剤からなる塗膜である場合、凹凸加工における温度条件は、例えば、60℃以上、好ましくは、70℃以上、より好ましくは、80℃以上であり、例えば、145℃以下、好ましくは、140℃以下、より好ましくは、135℃以下である。
また、凹凸加工における圧力条件は、特に制限されず、所望の凹凸加工が可能な範囲において、適宜設定される。
これにより、凹凸加工された加飾層2を得ることができる。
なお、この方法では、例えば、加飾層5およびコート層6が貼り合わされた加飾層2(凹凸加工前)を市販品として購入して、その加飾層2を凹凸加工してもよく、さらには、例えば、加飾層5およびコート層6が貼り合わされ、かつ、凹凸加工された加飾層2を、市販品として購入してもよい。
さらに、詳しくは図示しないが、加飾層2は、コート層6を備えていなくともよい。このような場合、凹凸加工された表皮層5が、凹凸加工された加飾層2として用いられる。
この方法において、好ましくは、まず、加飾層5およびコート層6を用意し、それらを貼り合わせた後、得られた加飾層2を凹凸加工する。
このようにして得られる加飾層2において、表皮層5の厚み(最大厚み(後述するプレス前の厚み))は、上記したプレス後の厚みよりも大きく、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
また、コート層6の厚み(最大厚み(後述するプレス前の厚み))は、上記したプレス後の厚みよりも大きく、例えば、20μm以上、好ましくは、30μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、70μm以下である。
そして、加飾層2の厚み(コート層6が備えられる場合、表皮層5およびコート層6の総厚み(後述するプレス前の厚み))は、上記したプレス後の厚みよりも大きく、例えば、70μm以上、好ましくは、130μm以上であり、例えば、600μm以下、好ましくは、370μm以下である。
また、加飾層2の表面および裏面の凹凸深さ(後述するプレス前の深さ)は、上記したプレス後の凹凸深さよりも大きく、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、60μm以下である。
次いで、この方法では、図2Bおよび図2Cに示されるように、凹凸加工された加飾層2の一方面(裏面)に、粘着層3および剥離層4を順次積層する(積層工程)。
より具体的には、この工程では、図2Bに示されるように、まず、加飾層2の一方面(裏面)に、粘着層3を積層する(第1積層工程)。
粘着層3を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、加飾層2の一方面(裏面)に、必要に応じて公知のプライマーを塗布した後、さらに、上記した粘着層3を形成するための粘着剤を塗布すればよい。これにより、加飾層2の一方面(裏面)において、粘着層3が形成される。
なお、接着剤の塗布量および塗布条件は、粘着層3の厚みや、粘着剤の種類などに応じて、適宜設定される。
粘着層3の厚み(最大厚み(後述するプレス前の厚み))は、上記したプレス後の厚みよりも大きく、例えば、20μmを超過し、好ましくは、25μm以上、より好ましくは、30μm以上であり、例えば、110μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、70μm以下である。
このとき、粘着層3の一方面(裏面)および他方面(表面)には、加飾層2の凹凸に追従するように、凹凸が形成される。
すなわち、粘着層3の凹凸深さ(後述するプレス前の深さ)は、加飾層2の凹凸深さ以下であり、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、例えば、60μm以下、好ましくは、50μm以下である。
次いで、この工程では、図2Cに示されるように、粘着層3の一方面(裏面)に、剥離層4を積層する(第2積層工程)。
より具体的には、この工程では、まず、上記の加飾層2および粘着層3とは別途、剥離層4を準備する。
剥離層4を粘着層3の一方面(裏面)に積層する方法としては、特に制限されず、公知の方法が採用される。例えば、加飾層2に積層された粘着層3の一方面(裏面)に、剥離層4を、公知の方法で接触させる。
これにより、粘着層3の一方面(裏面)、すなわち、凹凸面に対して、剥離層4が積層される。
剥離層4の厚み(最大厚み(後述するプレス前の厚み))は、上記したプレス後の厚みよりも大きく、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、80μm以下である。
このようにして、加飾層2と、加飾層2の一方面に設けられる粘着層3と、粘着層3の一方面に設けられる剥離層4とを備える積層体11が得られる。
なお、積層体11は、後述するプレス処理される前の加飾シート1である。
積層体11の厚み(総厚み)は、上記したプレス後の加飾シートの厚みよりも大きく、例えば、300μm以上、好ましくは、400μm以上であり、例えば、1500μm以下、好ましくは、1000μm以下、より好ましくは、700μm以下である。
また、積層体11の総厚み(後述するプレス前の総厚み)に対する、加飾層2の凹凸深さの比率(凹凸深さ/総厚み)が、例えば、0.02以上、好ましくは、0.03以上であり、例えば、0.20以下、好ましくは、0.15以下である。
また、この工程では、積層体11において、粘着層3の裏面と剥離層4との間、すなわち、粘着層3の凹凸面と剥離層4との間には、粘着層3の凹凸深さに応じた空隙12が形成される。
そして、この方法では、図2Dに示されるように、上記で得られた積層体11をプレスし、加飾層2に追従して形成された粘着層3の凹凸を、平滑化する(プレス工程)。
積層体11をプレスする方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールプレス法、ダブルベルトプレス法、平板プレス法などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、ロールプレス法、平板プレス法が挙げられる。
ロールプレス法が採用される場合には、好ましくは、図2Dにおいて2点鎖線で示されるように、プレス補助シート8が用いられる。
すなわち、ロールプレス法は、製造ライン中における連続プレスが可能であるため、生産性に優れるが、単に、積層体11をロールプレスするだけでは、粘着層3の凹凸を、平滑化できない場合がある。
そのため、ロールプレス法においては、好ましくは、剥離層4の一方面(裏面)に、粘着層3の凹凸を平滑化するためのプレス補助シート8を添えた状態で、ロールプレスする。
プレス補助シート8としては、例えば、樹脂シート、不織布、紙、金属箔などが挙げられ、これらを単独使用または2種類以上併用することができる。プレス補助シート8として、好ましくは、樹脂シートが挙げられる。
また、プレス補助シート8としては、変形開始温度が所定範囲であるものが、選択される。
プレス補助シート8の変形開始温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、より好ましくは、95℃以上であり、例えば、120℃以下、好ましくは、110℃以下、より好ましくは、105℃以下である。
プレス補助シート8の変形開始温度は、軟化温度であり、具体的には、測定対象を無負荷状態で加熱したときに変形が開始する温度であり、JIS K 7196(1999年)に準拠して測定される。
また、プレス補助シート8が樹脂シートである場合、変形開始温度は、樹脂シートを構成する樹脂の種類や、その構造などにより異なる。
そのため、プレス補助シート8として、好ましくは、上記範囲の変形開始温度を有する樹脂シートが、選択される。
また、プレス補助シート8が樹脂シートである場合、樹脂シートを構成する樹脂として、具体的には、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA、変形開始温度89~113℃)などの結晶性樹脂、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS、変形開始温度95~105℃)、ポリスチレン(PS、変形開始温度95~105℃)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS、変形開始温度110~120℃)、ポリ塩化ビニル(PVC、変形開始温度65~85℃)などの非晶性樹脂などが挙げられる。
これらプレス補助シート8を構成する樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
プレス補助シート8を構成する樹脂として、好ましくは、非晶性樹脂が挙げられ、より好ましくは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)が挙げられる。換言すれば、プレス補助シート8として、好ましくは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂からなる樹脂シートが挙げられる。
プレス補助シート8として、上記の樹脂シートを用いれば、粘着層3の凹凸を良好に平滑化できる。
プレス補助シート8の厚みは、特に制限されないが、例えば、30μm以上、好ましくは、80μm以上であり、例えば、800μm以下、好ましくは、600μm以下である。
すなわち、剥離層4の裏面にプレス補助シート8を添えた状態で、積層体11をロールプレスすることにより、粘着層3の凹凸を平滑化して、生産性よく加飾シート1を得ることができる。
一方、平板プレス法が採用される場合には、上記したプレス補助シート8を用いることなく(剥離層4にプレス補助シート8を添えることなく)、積層体11をプレスすることができる。
すなわち、平板プレス法では、積層体11の裏面が平らであるため、プレス補助シート8を用いなくとも、粘着層3の凹凸を良好に平滑化できる。
このようなプレスにおける条件(温度条件、圧力条件、プレス時間)は、粘着層3の一方面(裏面)の凹凸を平滑化でき、かつ、加飾層2の凹凸が平滑化されない範囲において、適宜設定される。
具体的なプレスの条件は、例えば、粘着層3の種類、加飾層2の種類などにより異なるが、例えば、動的粘弾性測定(周波数1Hz、昇温速度5℃/分、温度範囲-50~150℃)において、粘着層3のせん断貯蔵弾性率G’が、例えば、80kPa以下、好ましくは、30kPa以下、より好ましくは、10kPa以下を示す温度である。
また、プレス温度の下限は、例えば、粘着層3の変形開始温度を基準として、設定される。
具体的には、プレス温度は、例えば、粘着層3の変形開始温度以上、好ましくは、粘着層3の変形開始温度+20℃、より好ましくは、粘着層3の変形開始温度+40℃、さらに好ましくは、粘着層3の変形開始温度+80℃以上、とりわけ好ましくは、粘着層3の変形開始温度+100℃以上である。
なお、粘着層3の変形開始温度は、通常、粘着剤のガラス転移温度である。
より具体的には、例えば、粘着層3が、ガラス転移温度-20℃のアクリル系粘着剤から形成されている場合、プレス温度は、例えば、-20℃以上(粘着層3の変形開始温度以上)、好ましくは、0℃以上(粘着層3の変形開始温度+20℃以上)、より好ましくは、20℃以上(粘着層3の変形開始温度+40℃以上)、さらに好ましくは、60℃以上(粘着層3の変形開始温度+60℃以上)、とりわけ好ましくは、80℃以上(粘着層3の変形開始温度+60℃以上)である。
また、プレス温度の上限は、例えば、加飾層2の変形開始温度を基準として、設定される。
具体的には、プレス温度の上限は、加飾層2の変形開始温度+60℃以下、好ましくは、加飾層2の変形開始温度+55℃以下、より好ましくは、加飾層2の変形開始温度+50℃以下、さらに好ましくは、加飾層2の変形開始温度+45℃以下、とりわけ好ましくは、加飾層2の変形開始温度+40℃以下である。
なお、加飾層2が、表皮層5およびコート層6を備える場合、それらの変形開始温度のうちの低い方が、加飾層2の変形開始温度とされる。
より具体的には、例えば、表皮層5が、変形開始温度85℃のポリ塩化ビニル(PVC)から形成され、また、コート層6が、85℃より高い変形開始温度(具体的には、90℃)のフッ素系コーティング剤から形成される場合、加飾層2の変形開始温度は、85℃である。
そして、このような場合、プレス温度の上限は、例えば、145℃(加飾層2の変形開始温度+60℃)以下、好ましくは、140℃以下(加飾層2の変形開始温度+55℃)以下であり、より好ましくは、135℃(加飾層2の変形開始温度+50℃)以下、さらに好ましくは、130℃以下(加飾層2の変形開始温度+45℃以下)、とりわけ好ましくは、125℃以下(加飾層2の変形開始温度+40℃)以下である。
プレス温度が上記範囲であれば、粘着層3を変形させて、粘着層3の凹凸を平滑化できるとともに、加飾層2の変形を抑制して、加飾層2の凹凸を維持し、意匠性を確保することができる。
また、プレス圧力およびプレス時間は、プレス温度に応じて、適宜設定される。
すなわち、プレス温度が比較的高い場合には、プレス圧力を比較的低くすることができ、また、プレス時間を比較的短くすることができる。
また、プレス温度が比較的低い場合には、プレス圧力を比較的高くすることができ、また、プレス時間を比較的長くすることができる。
より具体的には、プレス圧力は、例えば、0.05MPa以上、好ましくは、0.10MPa以上、より好ましくは、0.20MPa以上であり、例えば、30MPa以下、好ましくは、20MPa以下、より好ましくは、10MPa以下である。
プレス圧力が上記範囲であれば、粘着層3を変形させて、粘着層3の凹凸を平滑化できるとともに、加飾層2の変形を抑制して、加飾層2の凹凸を維持し、意匠性を確保することができる。
また、プレス時間は、例えば、0.1秒以上、好ましくは、1.0秒以上、より好ましくは、3秒以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、1時間以下、より好ましくは、1分以下、さらに好ましくは、10秒以下である。
プレス時間が上記範囲であれば、粘着層3を変形させて、粘着層3の凹凸を平滑化できるとともに、加飾層2の変形を抑制して、加飾層2の凹凸を維持し、意匠性を確保することができる。
なお、プレス工程におけるプレス条件は、粘着層3の粘着層3の変形開始温度以上(ガラス転移温度以上)の領域において粘着層3が塑性変形可能なプレス温度、プレス圧力およびプレス時間として、適宜設定される。
すなわち、例えば、プレス温度が比較的高い場合には、プレス圧力を比較的低く、および/または、プレス時間を比較的短くすることができる。
一方、プレス温度が比較的低い場合には、プレス圧力を比較的高く、および/または、プレス時間を比較的長くすることができる。
また、例えば、プレス圧力が比較的高い場合には、プレス温度を比較的低く、および/または、プレス時間を比較的短くすることができる。
一方、プレス圧力が比較的低い場合には、プレス温度を比較的高く、および/または、プレス時間を比較的長くすることができる。
さらに、プレス時間が比較的長い場合には、プレス温度を比較的低く、および/または、プレス圧力を比較的低くすることができる。
一方、プレス時間が比較的短い場合には、プレス温度を比較的高く、および/または、プレス圧力を比較的高くすることができる。
工業生産性の観点から、好ましくは、プレス温度を比較的高くし、また、プレス圧力を比較的高くし、さらに、プレス時間を比較的短くする。これにより、加飾シート1の生産性の向上を図ることができる。
表皮層4が変形開始温度85℃のポリ塩化ビニル(PVC)から形成され、粘着層3がガラス転移温度-20℃のアクリル系粘着剤から形成される場合、とりわけ好ましくは、プレス条件は、以下の通りである。
すなわち、温度条件が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、より好ましくは、100℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、130℃以下、より好ましくは、120℃以下である。
また、圧力条件が、例えば、0.10MPa以上、好ましくは、0.20MPa以上、より好ましくは、0.30MPa以上であり、例えば、1.50MPa以下、好ましくは、1.30MPa以下、より好ましくは、1.00MPa以下である。
また、プレス時間が、例えば、0.5秒以上、好ましくは、1.0秒以上、より好ましくは、3秒以上であり、例えば、30秒以下、好ましくは、20秒以下、より好ましくは、10秒以下である。
そして、このようなプレスによって粘着層3が変形すると、空隙12が、その周囲の粘着剤によって充填され、粘着層3の一方面の凹凸が平滑化される。
なお、平滑とは、上記した通り、凹凸深さが5.0μm未満、好ましくは、4.0μm以下、より好ましくは、3.5μm以下、より好ましくは、3.0μm以下である状態を示す。
一方、このプレス工程では、粘着層3だけでなく加飾層2も加圧されるが、プレス条件が、加飾層2の凹凸が平滑化されない範囲において設定される。そのため、プレス後においても、加飾層2は、表面に凹凸を有する。
なお、プレスによって、加飾層2の凹凸深さが小さくなることは、許容される。
そして、上記の方法によって、図1Aに示されるように、加飾層2の表面が凹凸であり、粘着層3の裏面が平滑である加飾シート1が得られる。
上記のプレスにおける圧縮率(プレス後の加飾シート1の厚み/プレス前の積層体11の厚み)は、例えば、30%以上、好ましくは、40%以上であり、例えば、90%以下、好ましくは、80%以下である。
このような加飾シート1は、図1Bに示されるように、剥離層4が粘着層3から剥離された後、粘着層3の露出面が被加飾体10に圧着され、加飾層2が被加飾体10に貼着されることによって、被加飾体を加飾することができる。
とりわけ、粘着層3の厚みが上記範囲であり、加飾シート1の総厚みに対する、加飾層2の凹凸深さの比率(凹凸深さ/総厚み)が上記範囲であれば、加飾層2を被加飾体10に良好に貼着でき、かつ、過剰コストを抑制することができ、さらに、意匠性にも優れる。
一方、粘着層3の厚みが上記範囲であり、加飾シート1の総厚みに対する、加飾層2の凹凸深さの比率(凹凸深さ/総厚み)が上記範囲である場合、加飾層2の凹凸に追従して、粘着層3に凹凸が転写されやすくなる。
そのため、上記のように、積層体11をプレスしない場合、粘着層3の裏面に凹凸および空隙12が形成される(図2C参照)。このような加飾シート1から、剥離層4を剥離して、被加飾体10に粘着層3を貼着すると、被加飾体10と粘着層3との間隙に空隙12が残留する。そして、加飾シート1の貼着後に、空隙12内の空気および水が膨張するなどして外観不良を惹起するという不具合がある。
これに対して、上記の加飾シート1の製造方法では、図2Dに示されるように、積層体11をプレスして、空隙12を粘着剤で充填して、粘着層3の一方面(裏面)の凹凸を平滑化する。
そのため、上記の加飾シート1の製造方法によれば、被加飾体10と粘着層3との間における空気および水の残留を抑制することができ、膨張などによる外観不良を抑制できる。
その結果、得られる加飾シート1は、各種被加飾体の加飾において、好適に使用される。
被加飾体10としては、特に制限されないが、例えば、自動車のバンパー、ルーフパネル、サイドパネル、スポイラー、インストルメントパネル、ドアトリム、ピラーなどの自動車内外装材、その他、建造物の内外装材などが挙げられる。好ましくは、自動車外装材が挙げられ、具体的には、凹凸面を有する自動車外板パネルが挙げられる。換言すれば、加飾シート1は、好ましくは、凹凸面を有する自動車外板パネルを加飾するための自動車外板加飾シートである。
そして、このような加飾シート1は、上記した通り、加飾層2の凹凸に追従して粘着層3に凹凸が転写される場合にも、プレスにより粘着層の凹凸が平滑化されているため、被加飾体と粘着層3との間における空気および水の残留を抑制することができ、膨張などによる外観不良を抑制できる。
そのため、上記の加飾シート1は、意匠性を要する各種産業分野、具体的には、自動車などの車両、さらには、建造物、家具などの各種外装分野および内装分野において、好適に用いられ、好ましくは、車両用加飾シートとして、好適に用いられる。とりわけ好ましくは、上記の加飾シート1は、自動車用加飾シートとして、好適に用いられる。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
1.層構成
コート層:フッ素系フィルム(ガラス転移温度(変形開始温度)90℃)、厚み50μm
表皮層:ポリ塩化ビニル樹脂シート(PVC、軟化温度(変形開始温度)85℃)、厚み150μm
粘着層:アクリル系粘着剤(ガラス転移温度(変形開始温度)-20℃)、厚み50μm
剥離層:未延伸ポリプロピレン樹脂シート(CPP、融点160℃、荷重たわみ温度(0.45MPa)100℃)、厚み60μm
プレス補助シート:アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体シート(ABS、軟化温度(変形開始温度)95~105℃)、厚み500μm
2.実施例および比較例
実施例1~17および比較例1~6
表皮層(ポリ塩化ビニル樹脂シート(PVC、変形開始温度85℃))の表面に、フッ素系フィルム(変形開始温度90℃)を積層し、コート層を形成した。これにより、表皮層およびコート層を備える加飾層を得た。
次いで、得られた加飾層を、エンボスロール法により、135℃で凹凸加工した(図2A参照)。
次いで、凹凸加工された加飾層の裏面に、ガラス転移温度-20℃のアクリル系粘着剤を塗布し、粘着層を形成した(図2B参照。)。
次いで、粘着層の裏面に、剥離層(CPP)を積層した。これにより、加飾層、粘着層および剥離層の積層体を得た(図2C参照)。
その後、得られた積層体の裏面に、プレス補助シート(ABS)を添えて、表1に記載の温度および圧力条件で、5秒、プレス成形した(図2D参照。)。
20×100×100mmの鋼製ブロック2個を、表1に記載の温度に電気炉で加熱し、その電気炉から鋼製ブロックを取り出して、速やかに積層体を挟み、ハンドプレスで5秒間加圧した。その後、速やかにフィルムを取り出し、室温で冷却した。
これにより、加飾シートを製造した。
3.評価
各実施例および各比較例で得られた加飾シートにについて、加飾層の表面の凹凸状態と、粘着層の裏面の凹凸状態とをJIS B0601(1994年)に準拠して、形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製 VK-X100)を用いて10mm×10mmの面における10点平均粗さ(Rz)として求めた。
そして、凹凸深さが5μm未満のものを、凹凸なし(×)とし、また、凹凸深さが5μm以上のものを凹凸あり(○)として評価した。その結果を、表1に示す。