JP7081186B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は製膜性と遮光性に優れるポリエステルフィルムに関する。
ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレートなど)樹脂は機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械的特性、電気的特性などから、太陽電池バックシート用材料や給湯器モーター用電気絶縁材料、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料、テープ材料やコンデンサ用材料、包装材料、建築材料、写真用途、グラフィック用途、感熱転写用途などの各種用途に使用されている。
これらの用途の中で、太陽電池バックシート用材料や、電子機器内部に使用されるテープ材料では、遮光性が要求されている。例えば太陽電池バックシート用材料においては、意匠性の観点から発電素子への配線などが外側から見えないことが好ましい。太陽電池バックシート用材料において、遮光性を向上させる検討としては黒色顔料を含有させたポリエステルフィルムを用いる方法がなされている(特許文献1、2)。
また、テープ材料において、スマートフォンなどの電子機器内部に使用されるテープには、内部の光を遮光するために高い遮光性が要求されている。更に電子機器の小型化・薄型化に伴い、テープ材料は遮光性だけでなく、薄膜であることも求められており、従来から、テープ材料において遮光性を向上させる方法としては、ポリエステルフィルムの上に黒色顔料を多く含有する印刷層を設ける方法が検討されている(特許文献3)。
特開2008-56871号公報 特開2011-119651号公報 特許第5651012号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載されている方法のように、ポリエステルに遮光性を付与するため黒色顔料を多量に添加すると、黒色顔料は導電性を有しているものが多いため、その導電性によって押出時の均一な平面性を持つシート採取が困難となり、製膜性が低下するという問題が発生する。そのため、特許文献1、2に記載の方法では、均一な平面性を有するフィルムを得るためには、フィルム中に含有させる黒色顔料濃度に制限があるため、充分な遮光性が得られないという課題がある。一方、特許文献3に記載の方法では、薄膜フィルムにおいても充分な遮光性が得られるものの、印刷インキよる環境汚染の問題があることや、機械特性に優れるポリエステルフィルムの厚み比率が小さいため基材としての強度が不足する問題があり、更には近年普及し始めている赤外線センサーを搭載するウェアラブル端末向けには、遮光性が不足する基材フィルムによって幅方向に光が漏れるため、センサーの動作不良に繋がる問題があった。
本発明の課題は、かかる従来技術を鑑み、製膜性と遮光性に優れ、更には加工性にも優れるポリエステルフィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、黒色顔料を含有するポリエステルフィルムであって、前記黒色顔料の含有量がポリエステルフィルム全体に対して2.0重量%以上、30重量%以下であり、290℃における比抵抗値が1.0×10Ω・cm以上、1.0×108Ω・cm以下であることを特徴とするポリエステルフィルムである。
本発明によれば、製膜性と遮光性に優れ、更には加工性にも優れるポリエステルフィルムを提供することができる。かかるフィルムは電子機器内部に用いられる遮光基材や遮光テープ基材として好適に用いることができる。
本発明のポリエステルフィルムはポリエステル樹脂を主たる構成成分とする。ここでポリエステル樹脂を主たる構成成分とするとは、該フィルムを構成する樹脂成分に対してポリエステル樹脂が60重量%以上含有されていることを示す。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、1)ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジカルボン酸成分」と総称する)とジオール成分もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジオール成分」と総称する)の重縮合、2)一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体と水酸基を有する化合物の重縮合、および1)2)の組み合わせにより得ることができる。また、ポリエステル樹脂の重合は常法により行うことができる。
1)において、ジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸などの芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが代表例としてあげられる。また、これらは単独で用いても、複数種類用いても良い。
また上述のジカルボン酸成分の少なくとも一方のカルボキシ末端に、l-ラクチド、d-ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類およびその誘導体や該オキシ酸類が複数個連なったもの等を縮合させたジカルボキシ化合物も用いることができる。
次にジオール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール、ビスフェノールA、1,3-ベンゼンジメタノール,1,4-ベンセンジメタノール、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香族ジオールが代表例としてあげられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。また、上述のジオール成分の少なくとも一方のヒドロキシ末端にジオール類を縮合させて形成されるジヒドロキシ化合物も用いることができる。
また、2)において一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体と水酸基を有する化合物の例としては、l-ラクチド、d-ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸、およびその誘導体、オキシ酸類のオリゴマー、ジカルボン酸の一方のカルボキシル基にオキシ酸が縮合したもの等が挙げられる。
尚、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂として、3官能成分(3価以上のカルボン酸、3価以上のジオール、3価以上のオキシ酸およびそれらのエステル形成性誘導体)を、本発明の特性を損なわない範囲で含んでいても良い。
ポリエステル樹脂として具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2、6-ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のホモ重合体、およびこれらの共重合体が挙げられ、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は前記のホモ重合体および共重合体の中から1種類を選択して用いても良い。
更に本発明のポリエステルフィルムにおいて、主たる構成成分であるポリエステル樹脂は、ホモ重合体同士、またはホモ重合体と共重合体をブレンドして用いることが好ましい。本発明のポリエステルフィルムの主たる構成成分であるポリエステル樹脂にホモ重合体同士、またはホモ重合体と共重合体をブレンドすることで、ポリエステルの結晶性を制御することが可能となり、ピニングキャスト時の厚みムラを抑制し製膜性を向上させることができる。
本発明のポリエステルフィルムの主たる構成成分であるポリエステル樹脂にブレンドするホモ重合体、または共重合体の含有量としては5.0重量%以上、40重量%以下が好ましく、より好ましくは8.0重量%以上、35重量%以下、更に好ましくは15重量%以上、25重量%以下である。
ポリエステルフィルムの主たる構成成分であるポリエステル樹脂にブレンドするホモ重合体、または共重合体の含有量が5.0重量%未満の場合、期待する製膜性の向上効果が不足する場合がある。一方で含有量が40重量%を越えると、結晶性が低下しすぎて厚みムラが大きくなり、遮光性が低下する場合がある。
ここでポリエステル樹脂にブレンドするホモ重合体としては、製膜性の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2、6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリ乳酸が好ましく、中でもポリエステルフィルムの主たる構成成分としては、加工性が容易であることからポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2、6-ナフタレートがより好ましく、製膜性により優れることからポリエチレンテレフタレートが特に好ましく、相溶性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2、6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートを用いることが好ましい。更には結晶性を制御して製膜性を更に向上させる観点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートを用いることがより好ましく、延伸性を向上させる観点からはポリプロピレンテレフタレートを用いることが更に好ましい。
また、ポリエステル樹脂の共重合体とは、ポリエステル樹脂全体の50mol%未満を異なるジカルボン酸成分とジオール成分のいずれか、または両方で構成される共重合体のことを示し、ホモ重合体とのブレンドを想定する場合は、対象のホモ重合体と同じ分子構造が全体の50mol%以上を構成する共重合体を用いることが好ましい。
ここでポリエステル樹脂の共重合体としては、重合適性や熱安定性、ホモ重合体との相溶性に優れる観点からジカルボン酸成分として、脂環族ジカルボン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が、ジオール成分としてはブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコール、スピログリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチレングリコールを共重成分として含むものが好ましく用いられる。具体的にはポリブチレンテレフタレートとトリメチレングリコールの共重合体(PBT/PTMG)、ポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸の共重合体(PET/I)、ポリエチレンテレフタレートとナフタレンジカルボン酸の共重合体(PET/N)、ポリエチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメタノールの共重合体(PET/G)、ポリエチレンナフタレートとテレフタル酸の共重合体(PEN/T)が挙げられ、これらは単独で用いても、必要に応じて組み合わせて用いても良い。中でも結晶性を制御することで製膜性を更に向上させる観点からジカルボン酸成分としてイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸を共重合体成分として含むものや、ジオール成分としてトリメチレングリコールを共重合成分として含むものがより好ましく用いられ、延伸性を向上させる観点からはジカルボン酸成分としてイソフタル酸を共重合成分として含むもの更に好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂において、共重合成分の比率は、全ポリエステル樹脂成分に対して0.5mol%以上、20mol%以下となるように前記の共重合体、およびホモ重合体同士、またはホモ重合体と共重合体のブレンド比を調整することが好ましい。ポリエステル樹脂に共重合成分を導入することで、ポリエステルの結晶性を制御することにより、後述する黒色顔料を多量に含有しても、製膜性に優れたポリエステルフィルムとすることが可能となる。より好ましくは共重合成分の比率が1.0mol%以上、14mol%以下、更に好ましくは2.0mol%以上、10mol%以下、特に好ましくは2.5mol%以上、7.5mol%以下である。
ここでいう共重合成分とは、ポリエステル樹脂全体の50mol%を超えて構成する重合体のジカルボン酸成分、およびジオール成分を第一成分としたとき、ポリエステル樹脂に50mol%未満含まれる第一成分以外のジカルボン酸成分、およびジオール成分を示す。尚、ポリエステルフィルムの共重合成分は、ポリエステルフィルムを溶媒抽出した後、プロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR)やカーボン核磁気共鳴分光法(13C-NMR)によって分析を行うことができる。
ポリエステル樹脂の共重合成分の比率が0.5mol%未満の場合、結晶性を抑えられずに製膜性が低化する場合がある。一方でポリエステル樹脂の共重合成分の比率が20mol%越える場合、ポリエステル樹脂の結晶性が低化し過ぎて延伸後の厚みムラが大きくなり、遮光性が低下する場合がある。
また、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は、二軸延伸性の観点から結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ここでいう結晶性とは、ポリエステルフィルムを、JIS K7122(1987)に準じて、示差走査熱量測定にて昇温速度10℃/分で固体状態から溶融状態まで加熱した際に得られたチャートにおいて熱結晶化による吸熱ピークが観測されることを示す。
本発明のポリエステルフィルムは、遮光性を得るために、可視光領域の光を吸収する黒色顔料を含有する。黒色顔料としては、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、カーボンファイバーなどの炭素系化合物やチタンブラックなどの酸化物系無機粒子が挙げられる。更に、低濃度で優れた遮光性が得られることや、赤外線の透過性を有する特徴から、本発明においては黒色顔料としてカーボンブラックを用いることが好ましく、中でも安価で漆黒性に優れる観点からファーネス法で製造されたカーボンブラックを用いることがより好ましい。
黒色顔料としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックの粒子径は1次粒径として5nm以上、100nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上、80nm以下、更に好ましくは20nm以上、60nm以下である。1次粒径が5nm未満の場合、凝集による欠点発生やポリエステル樹脂の結晶化を過剰に促進させることで延伸性が低化する場合がある。一方で1次粒径が100nmを越えると漆黒性が低化する場合がある。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、黒色顔料としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸油量は30cm/100g以上、170cm/100g以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは40cm/100g以上、130cm/100g以下、更に好ましくは50cm/100g以上、100cm/100g以下である。ここでいうDBP吸油量とはカーボンブラックの2次凝集体の成長し易さを表す指標である。DBP吸油量が200cm/100gを越えるカーボンブラックを用いると、ポリエステル樹脂中でカーボンブラックの2次凝集体が大きくなり過ぎて、後述する抵抗値が低下して製膜性が悪化する場合がある。一方でDBP吸油量が30cm/100g未満のカーボンブラックを用いる場合は、カーボンブラックの2次凝集体が小さくなり、可視光の吸収性能が低下して、結果的に遮光性が低下する場合がある。
更に、本発明のポリエステルフィルムにおいて、黒色顔料としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックを950℃で7分間加熱した際の揮発量が1.5%以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.8%以下である。ここでいう揮発量とはカーボンブラックの表面に存在する官能基量を表す指標であり、本発明においては揮発量が1.5%を越えるカーボンブラックを用いるとポリエステル樹脂への親和性が悪化し、分散加工が困難となる場合がある。揮発量の下限については特に限定されるものでは無いが、凝集を抑制する観点から0.1%以上が好ましい。
更に、本発明のポリエステルフィルムにおいて、黒色顔料としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックのpHは5以上のものを用いることが好ましく、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上である。ここでいうpHはカーボンブラック表面の官能基種類によって変化し、本発明においてはpHが5未満であると、官能基の親水性が高く、押出加工時にポリエステル樹脂の分解を促進して、押出が困難となる場合がある。pHの上限については特に限定されるものでは無いが分散性の観点から12以下が好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、黒色顔料の窒素吸着比表面積(以下、比表面積)が10m/g以上、140m/g以下のものを用いるのが好ましく、より好ましくは20m/g以上、110m/g以下、更に好ましくは25m/g以上、80m/g以下である。黒色顔料としてカーボンブラックを用いた場合、比表面積は一次粒径によって変化することが一般的であり、一次粒径が小さい程、比表面積が大きくなり、一次粒径が大きい程、比表面積が小さくなる。比表面積が10m/g未満の黒色顔料を用いると、後述する凝集体の楕円率が大きくなり、遮光性が低下する場合がある。一方で比表面積が140m/gを超えると、コンパウンド時の凝集物が多くなり、生産性が低下する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、前記の黒色顔料の含有量は2.0重量%以上、30重量%以下であることが必要である。好ましくは4.0重量%以上、20重量%以下が好ましく、より好ましくは6.0重量%以上、14重量%以下、更に好ましくは7.0重量%以上、12重量%以下である。本発明において黒色顔料の含有量が2.0重量%未満では、遮光性が不足するため遮光性が満足できない。一方で黒色顔料の含有量が20重量%を越えると、導電性が高くなり製膜性が低化する。
なお、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果が損なわれない範囲内でその他の添加剤(例えば、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、有機の易滑剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤など)が含有されていてもよい。例えば、難燃性が要求されるような用途に本発明のポリエステルフィルムを用いる場合、ハロゲン系やリン系などの有機系難燃剤やアンチモン系や水酸化金属系などの無機系難燃剤を含有させることで、ポリエステルフィルムの難燃性を向上させることができる。また難燃剤としては着色顔料と併用しても製膜性を維持する観点から有機系難燃剤が好ましく用いられ、環境負荷低減の観点から有機系難燃剤の中でも、リン系難燃剤がより好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムは、290℃における比抵抗値が1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下であることが必要である。好ましくは1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下、より好ましくは1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下、更に好ましくは1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下である。ここでいう比抵抗値とは290℃に加熱された電極間で測定した電気抵抗値と電極とフィルムサンプルが接触している面積、電極間の距離から下記式によって求められる値である。
比抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×接触面積(cm)/電極間距離(cm)
本発明において、290℃における比抵抗値が1.0×10Ω・cm未満であると、製膜時に均一な平面性を持ったシートを採取することが困難となる。また、平面性が悪くなった結果、厚みムラが大きくなり遮光性が低下する場合がある。一方で290℃における比抵抗値が1.0×10Ω・cmを越えると黒色顔料の含有量が不足している、及び/または、分散度が低く遮光性が不足する。
つまり、本発明はポリエステルフィルムに黒色顔料を2.0重量%以上、30重量%以下含有させながら、290℃における比抵抗値が1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下とすることで、優れた遮光性と製膜性を両立することを見出したものである。
尚、前記の290℃における比抵抗値をより好ましい範囲にする手段として、ポリエステルフィルムの主たる構成成分であるポリエステル樹脂にホモ重合体同士、またはホモ重合体と共重合体をブレンドしたものを用いることや、ポリエステル樹脂に含有させる黒色顔料として好ましい特性を有するカーボンブラックを用いることで調整することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、後述する測定法により観察される黒色顔料の凝集体の長径の平均値は300nm以上、1500nm以下が好ましく、より好ましくは350nm以上、900nm以下、さらに好ましくは450nm以上、700nm以下である。ここでいう凝集体の平均径とは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて本発明のポリエステルフィルムの断面観察を行い、得られた画像中の1次粒子が2個以上連なった凝集物を2値化処理して長径を平均化した値である。
本発明において、前記凝集体の長径の平均値が300nm未満の場合、黒色顔料による可視光の吸収性能が低下し、遮光性が低下する場合がある。一方で1500nmを越えると黒色顔料の凝集体間距離が短くなり抵抗値が低下して、結果的に製膜性が低下する場合がある。
本発明において、遮光性を向上させるために黒色顔料の高濃度添加が必要である。そのため製膜性との両立を達成するためには、遮光性と導電性を制御する手段として、凝集体の長径の平均値を300nm以上、1500nm以下とすることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、幅方向断面中における長径200nm以上の黒色顔料の凝集体の楕円率が0.50以上、0.75以下が好ましく、より好ましくは0.53以上0.70以下、さら好ましくは0.55以上0.65以下である。ここでいう幅方向断面中における長径200nm以上の黒色顔料の凝集体の楕円率とは、後述する方法により透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて本発明のポリエステルフィルムの幅方向断面観察を行い、得られた画像中の1次粒子が2個以上連なった凝集物を2値化処理して、短径/長径から楕円率を求めた値である。
ここで、長径、短径とは、フィルム幅方向断面中において観察される凝集体が収まる最小面積の長方形を描き、長方形の長辺の長さを長径、短辺の長さを短径とする。
上記の黒色顔料の凝集体の楕円率は、小さいほど層状、または棒状の凝集形状を示し、1に近づくほど真球形状で凝集体が分散していることを示している。本発明において、長径200nm以上の凝集体の楕円率が0.50未満であると、黒色顔料同士で形成される導電パスが長くなるため、抵抗値が低下する場合がある。一方で長径200nm以上の凝集体の楕円率が0.75を超えると、球状化した大きな黒色顔料の凝集物によって隠蔽効率が低下し、光が漏れやすくなる場合がある。つまり、長径200nm以上の凝集体の楕円率が0.50以上、0.75以下とすることで、本発明のポリエステルフィルムの製膜性と遮光性の両方を向上させることができる。
なお、本発明において、ポリエステルフィルムの幅方向が不明の場合は、マイクロ波透過型分子配向計MOA-6004((株)王子計測機器社製)を用いてポリエステルフィルムの配向度を測定し、最も配向が強い方向を幅方向とする。
上記の黒色顔料の凝集体形状について、表面積が大きく凝集力の強い粒子顔料は、それぞれが凝集することで表面積を減らそうとする。逆に表面積が小さく凝集力の弱い粒子顔料は、単体で安定して存在するため凝集自体が起こりにくいことが一般的である。
本発明者らが鋭意検討したところ、本発明において黒色顔料として好適に用いられるカーボンブラックのような黒色顔料のポリエステルフィルム中に存在する凝集体の形状を制御するには、空気中に黒色顔料が存在している状況と、ポリエステルフィルムの製造工程で、ポリエステル樹脂に黒色顔料がコンパウンド等で練りこまれた後、押出配管内で滞留している状況を考慮する必要があることを明らかにした。
具体的には、粒径が小さく比表面積が大きい黒色顔料や、DBP吸油量が大きい黒色顔料は、ポリエステル樹脂にコンパウンド等で練りこまれる前に一次粒子が長く連なったストラクチャー構造を形成して、製膜工程にてポリエステル樹脂中で滞留していても構造の変化が起こりにくい。つまり楕円率が小さい凝集体を形成しやすい。
一方で、粒径が大きく比表面積が小さい黒色顔料は、ストラクチャー構造を形成しにくく、一次粒子が単体で存在しやすいが、ポリエステル樹脂中で長時間滞留すると、不安定な一次粒子同士が凝集し始める。つまり、楕円率が大きい凝集体を形成しやすい。
また、粒径が小さく比表面積が大きい黒色顔料で、かつDBP吸油量が小さい黒色顔料は、ストラクチャー構造を形成していても、ポリエステル樹脂中では安定性が不足し、ストラクチャー構造同士で凝集してしまうため、結果的に楕円率が大きい凝集体を形成する傾向がある。
上記傾向を考慮してポリエステルフィルム中に含有する黒色顔料の凝集体の形状を制御することで、ポリエステルフィルムの製膜性、遮光性、導電性を好適にすることが可能となる。
本発明のポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定(DSC)における降温結晶化温度Tmcが185℃以上、207℃以下が好ましく、より好ましくは190℃以上、203℃以下、更に好ましくは192℃以上、201℃以下である。ここでいう示差走査熱量測定における降温結晶化温度Tmcとは、ポリエステルフィルムをJIS K7122(1987)に準じて、昇温速度10℃/分で25℃からポリエステル樹脂の融点Tm+50℃まで加熱後、融点Tm+50℃にてポリエステル樹脂を溶融状態で5分間保持してから、降温速度10℃/分で25℃まで冷却した時に得られる発熱ピークのピークトップの温度を示す。尚、発熱ピークを複数有する場合は最も高温側に位置するピークトップ温度を示す。ここでのポリエステル樹脂の融点Tmは、ポリエステルフィルムを示差走査熱量測定にて昇温速度10℃/分で固体状態から溶融状態まで加熱した際に得られたチャートにおいて、最も高温側で得られる吸熱ピークの温度を示す。
降温結晶化温度Tmcが185℃未満の場合、ポリエステルフィルムの結晶化速度が遅くなり、延伸時に厚みムラが悪化する場合がある。一方で降温結晶化温度Tmcが207℃を超えると結晶性の制御による導電性の抑制効果が不足し、製膜性が低下する場合や、延伸時に配向結晶化が進行し過ぎてフィルムの弾性率が高くなり、結果的に加工性が低下する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは、光学濃度(OD)が1.0以上であることが好ましく、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは5.5以上、特に好ましくは6.0以上である。本発明のポリエステルフィルムの光学濃度(OD)を3.5以上とすることで、内部で光が発生するような電子機器に用いられる遮光基材として好適に用いることができる。
本発明のポリエステルフィルムの弾性率は2.5GPa以上、5.0GPa以下であることが好ましく、より好ましくは3.0GPa以上、4.5GPa以下、更に好ましくは3.2GPa以上、4.2GPa以下である。ここでいうポリエステルフィルムの弾性率とは、ASTM-D882に基づいて、後述するポリエステルフィルムの引っ張り試験を実施して得られる値である。
本発明のポリエステルフィルムの弾性率が2.5GPa未満の場合、フィルムのコシが弱くなり加工時にシワ等が発生する場合がある。一方で弾性率が5.0GPaを越えるとコシが強すぎて、成型加工時に形状が追従しにくい場合がある。つまりポリエステルフィルムの弾性率を2.5GPa以上、5.0GPa以下とすることで、加工性に優れた遮光基材として用いることが可能となる。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものでは無いが3μm以上、250μm以下が好ましい。特に本発明のポリエステルフィルムを例えば電子機器内部に搭載する遮光テープ用の薄膜基材として用いる場合、厚みは3μm以上、28μm以下が好ましく、より好ましくは4μm以上、19μm以下、更に好ましくは5μm以上、16μm以下、特に好ましくは8μm以上、12μm以下である。厚みを3μm以上の範囲で薄くすることで搭載された電子機器を小型化することができる。また28μm以下の範囲で厚くすることで遮光性を向上させることができる。一方で本発明のポリエステルフィルムを赤外線センサー基材用途などに用いる場合、厚みは25μm以上、250μm以下が古好ましく、より好ましくは38μm以上、188μm以下、更に好ましくは50μm以下、125μm以下である。上記範囲の厚みを選択することで、基材としての強度を維持しながら黒色顔料由来の優れた光学特性を両立することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの厚みムラが15%以下であることが好ましい。より好ましくは10%以下、更に好ましくは7%以下である。本発明のポリエステルフィルムはフィルムの厚みによって所望の遮光性を達成することができる。但し、厚みムラが15%を越えると、部分的に厚みが薄い部分で光が透けてしまう遮光欠点となり易く、結果的にポリエステルフィルムの遮光性が低下する場合がある。そのようなポリエステルフィルムを電子機器の遮光テープとして用いると、光漏れが生じてしまう場合があるので、ポリエステルフィルムを電子機器の遮光テープに用いる場合は、フィルムの厚みムラは10%以下であることが好ましい。なお、ポリエステルフィルムの厚みムラを上記の範囲とする方法は特に限られるものでは無いが、厚みムラの発生しにくい黒色顔料を選択する方法(例えば、黒色顔料として、DBP吸油量、揮発量やpHが前述の好ましい範囲のカーボンブラックを用いる方法)などが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、単膜フィルムでも、2層以上からなる積層フィルムのどちらの構成を選択しても構わない。本発明のポリエステルフィルムを単膜フィルムとすることで製造工程を簡略化することができる。また2層以上の積層フィルムとする場合、P2層/P1層/P2層の2種3層構成を用いることで、例えばP2層は着色顔料を含まない層とし、P1層には着色顔料を含む層として機能分離することで、遮光性と新しい機能を両立したフィルムを創出することができる。また前記のP2層に着色顔料を含有させ、P1層に光拡散性を持つ空洞を含有することで、遮光性をより高めることができる。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について具体例を挙げて説明する。本発明は、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
まず、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の製造方法は、以下の方法で製造することができる。
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体と、ジオールを周知の方法でエステル交換反応、もしくはエステル化反応させることによって得ることができる。従来公知の反応触媒としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることが出来る。好ましくは前記のポリエステル樹脂の製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
次に、ポリエステルフィルムの製造方法は、ポリエステルフィルムを構成する原料を押出機内で加熱溶融させ、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)が好ましく用いられる。またポリエステルフィルムが積層構成の場合は、積層する各層の原料を二台の押出機に投入し溶融してから合流させて、口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)を好ましく用いることができる。
本発明において、上記の溶融押出シートを静電気によりキャストドラムに均一に密着させ冷却固化することで、結晶化を抑えた未延伸シートを作製することができる。この際、製膜性を高めるため、キャストドラムとの均一な密着性を得るには、押出されたポリマーが静電気印加時に電荷を帯電して、尚且つ、金属製のキャストドラム側に電荷が流出しないことが重要である。そのため前述した通り、キャストドラムの密着性を高めて平面性に優れたシートを得るためには、ポリエステルフィルムの290℃における比抵抗値が1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下であることが必要である。
次に本発明のポリエステルフィルムは少なくとも一軸に延伸されていることが好ましく、より好ましくは二軸延伸されることが好ましい。本発明のポリエステルフィルムを延伸して得ることによって、弾性率を高くすることが可能となり、加工性に優れたポリエステルフィルムとすることができる。
その延伸方法として、未延伸シートを70~140℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に延伸し、20~50℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸シートを得ることができる。
二軸延伸をする場合は、続いて前記で得られた一軸延伸シートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、70~150℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に横延伸して二軸延伸したポリエステルフィルムを得ることができる。
この際、延伸倍率は長手方向と幅方向それぞれ2~5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)としては8倍以上が好ましく、より好ましくは9倍以上、更に好ましくは10倍以上である。面倍率の下限としては特に限定されるものでは無いが、6倍未満ではフィルムの弾性率が不足する場合がある。
二軸延伸する方法としては、前記の長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法であっても構わない。
続いて、本発明のポリエステルフィルムに黒色顔料を含有させる方法としては、黒色顔料を高濃度でマスターバッチ化した原料を作製し、押出機に投入する際に黒色顔料を含まないポリエステル樹脂で希望の濃度になるように希釈する方法(マスターバッチ法)が好ましく用いられる。
更に本発明においては、マスターバッチ化するベース原料に共重合されたポリエステル樹脂を用いることも好ましく、かかる方法で得られたマスターバッチは黒色顔料由来の導電性を抑えることが可能となり、遮光性と製膜性を高められる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは上記の方法によって製造することができる。得られたポリエステルフィルムは、遮光性と製膜性に優れ、加工性にも優れる特徴がある。そのため、電子機器内部に用いられる遮光基材やテープ基材はさることながら、赤外線センサー部材やカバーフィルム、太陽電池バックシート用フィルム、モーター用絶縁フィルムなどの工業材料、リチウムイオンバッテリー用の外装フィルム、意匠性フィルム、保護フィルムなどの包装材料、インクリボン用フィルム、建築材料用フィルム、感熱転写フィルム等、様々な用途に好適に用いることができる。
また本発明のポリエステルフィルムが好適に用いることができる電子機器の遮光基材としては、携帯電話、スマートフォン、ウェアラブル端末、ディスクトップ型PC、ノート型PC、タブレット型PC、電子辞書、カーナビゲーション、GPSナビゲーション、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ワイヤレスマウスなどの電子機器の内部に組み込まれて使用される遮光基材や遮光テープ基材が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、遮光性と加工性に優れる性能を有するため遮光テープに好適に用いることができる。本発明のポリエステルフィルムに用いることができる遮光テープの構成としては、例えば、本発明のポリエステルフィルムの片面、もしくは両面に粘着剤層を設けたものを挙げることができる。粘着剤層に用いられる粘着剤としては、特に限定されるものでは無いが、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムを用いた遮光テープにおいて、遮光性をさらに高める場合は、黒色インク層を設けても良い。黒色インク層は、ポリエステルフィルムの粘着剤層が設けられていない方の面や、両面に粘着剤層が設けられている構成ではポリエステルフィルムと粘着剤層の間に設けることができる。更には粘着剤中に黒色顔料を混合して黒色粘着剤層として設けることもできる。黒色インク成分としては特に限定されるものでは無いが、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂からなるバインダーに前述した黒色顔料を含有させた成分が好ましく用いられる。
また、本発明の効果が損なわれない範囲で、その他の添加剤を含有する機能層を新たに設けても良く、前記の粘着剤層や黒色インク層に組み合わせても良い。例えば、粘着剤層の反対側の面に粒径の大きい粒子を含有する層をポリエステルフィルムに設けることで、艶消し性を持つ遮光テープとすることができる。また黒色インク層に放熱性粒子を添加することで、放熱性に優れる遮光テープとすることができる。
次に、ポリエステルフィルム上に粘着剤層や黒色インク層を設ける方法としては、表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗付等の表面処理を行った後、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法およびグラビアロールコーティング法などのコーティング方法や、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷方法を選択することができる。また、ポリエステルフィルムの製膜中に、インラインにて公知のコーティング手法を用いる方法も、工程の簡略化という点で好ましい方法である。
本発明のポリエステルフィルムを用いた遮光テープは、ポリエステルフィルムの弾性率の測定方法と同様の方法で測定した弾性率が1.8GPa以上、3.7GPa以下であることが好ましく、より好ましくは2.2GPa以上、3.4GPa以下、更に好ましくは2.5GPa以上、3.1GPa以下である。本発明の遮光テープの弾性率が1.8GPa未満の場合、テープのコシが弱くなり過ぎて、テープカット性が低下する場合があり、取り扱いも困難となる場合がある。一方で弾性率が3.7GPaを越えると、テープのコシが強すぎて貼り付け部位の形状に追従できずに剥離欠点が発生する場合がある。
以上のように、遮光性と加工性に優れる本発明のポリエステルフィルムを用いた遮光テープは、従来、遮光性付与のために用いられている黒色インク層を無くす、または層数を低減することができるため、溶媒に用いられる有機溶剤による環境負荷低減や製造工程の簡略化を達成することができる。更に本発明のポリエステルフィルムを用いた遮光テープは、従来のテープよりも取り扱い性や剥離性が優れる特徴がある。
〔フィルム特性の測定方法および評価方法〕
(1)290℃における比抵抗測定
ジオマテック(株)社製の導電ガラス板(高耐久TCO、厚み1.1mm、検査抵抗値≦5Ω/sq)2枚を導電膜同士が向き合うように重ねた間に、絶縁スペーサーとして直径6mmの円形の穴を空けた厚み2mmのニチアス(株)社製ナフロンシート(TOMBO No.9000-S)を挟み固定して、ホットプレート上で290℃に加熱する。次いで絶縁スペーサーの穴にサンプルを充填して完全に溶融するまで1時間放置した後、2枚の導電ガラス板同士の抵抗値を横河メータ&インスツルメント(株)社製デジタルマルチメーター(Model 7561)で測定し、得られた抵抗値(Ω)から下記式によって比抵抗値を算出した。
比抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×(0.3×3.14)/0.2
(比抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×接触面積(cm)/電極間距離(cm))
(2)示差走査熱量測定(DSC)
JIS K7122(1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC-RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用い、ポリエステルフィルム5mgをサンプルパンに秤量し、昇温速度10℃/分で室温から300℃まで加熱(1stRUNと称する)し、その状態で5分間保持し、次いで降温速度10℃/分で25℃まで冷却し、昇温過程と降温過程の測定チャートを得た。
(2-1)降温結晶化温度Tmcの測定
(2)で得られた、降温過程に現れる発熱ピークについて、ピークトップの温度をポリエステルフィルムの降温結晶化温度Tmcとした。尚、発熱ピークが複数現れる場合は、最も高温側のピークを降温結晶化温度Tmcとする。
(3)黒色顔料の分散形態観察
(3-1)黒色顔料の凝集体の長径測定
凍結超薄切片法にてポリエステルフィルムの任意の箇所の断面出しを行い、JEOL社製透過型電子顕微鏡(JEM-1400Plus)を用い、加速電圧100kVで断面形態を観察した。次いで得られた画像から標本数を400個以上、800個以下とれる視野を選択し、凝集体のコントラスト差を利用して2値化処理を行い、黒色顔料の2次凝集体の長径の平均値を求めた。尚、上記の観察はポリエステルフィルムの長手方向と巾方向断面の観察結果の平均値とした。
(3-2)長径200nm以上の黒色顔料の凝集体の楕円率測定
(3-1)と同様の手順により、ポリエステルフィルムの幅方向に断面出しを行い、標本数が400個以上、800個以下とれる視野内に存在する黒色顔料の2次凝集体の長径と短径を2値化処理によって求める。次いで長径が200nm以上の凝集体の結果のみを抜き出し、短径/長径である楕円率の平均値を求めた。尚、上記の観察はポリエステルフィルムの幅方向断面から10箇所の観察を行い、それらの平均値とした。
(4)厚みムラ測定
任意の場所からA4サイズにカットしたフィルムを、A4サイズのフィルムを長辺、短辺ともに3等分になるようにして得られる9つの長方形サンプルの中心部分を選択して、ダイヤルゲージを用いて、厚み測定を合計9回行った。測定は、A4サイズにカットしたフィルムサンプル3枚について実施し(合計27回測定)、得られたフィルム厚みの平均値と最大値、最小値から次式によって厚みムラを求めた。
厚みムラ(%)=(最大値-最小値)/平均値×100
(5)製膜性評価
ポリエステルフィルムの製膜性は、1時間連続製膜時にフィルム破れが発生しない延伸面倍率から以下の通り判定した。尚、縦延伸、横延伸倍率はいずれも最低2.5倍以上とし、ここでの横延伸倍率はテンター入り口幅と最大幅の比である機械倍率のことを示す。また延伸倍率以外の条件は自由に変更しても良い。
面倍率が10倍以上:A
面倍率が9倍以上10倍未満:B
面倍率が8倍以上9倍未満:C
面倍率が6倍以上8倍未満:D
面倍率が6倍未満、または製膜不可:E
製膜性はA~Dが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(6)遮光性評価
(6-1)光学濃度測定
ポリエステルフィルムの光学濃度測定は、X-lite社製の分光濃度測定器を用いて行った。測定は任意の箇所からフィルムの長手方向、および幅方向の直線上に5cm離れた箇所を選択して行い、計9回の平均値を光学濃度とした。尚、方向性が不明な場合や概念が無い場合は任意の直線上と、その垂直方向の直線上の測定を実施した。
(6-2)遮光性判定
(6-1)で得られた光学濃度の測定結果と、照度1000ルクスに調整した評価部屋Aと、照度1ルクス以下に調整した評価部屋Bにて、アップル社製スマートフォン端末(モデル名:iPhone(登録商標) 6)の背面側に搭載されているLEDフラッシュライトを点灯させた状態で、ポリエステルフィルムを端末の背面上に重ねた時に目視で確認される透過光に応じて、遮光性を以下の通り判定した。尚、判定箇所は任意の箇所からフィルムの長手方向、および幅方向の直線上に5cm離れた箇所を選択して合計9箇所行い、選択箇所によって判定が異なる場合は最も遮光性が低い判定を採用する。
光学濃度が5.5以上であり、かつ、透過光が評価部屋A、Bどちらでも見えない:S
光学濃度が5.5以上であり、かつ、透過光が評価部屋Aでは見えないが、評価部屋Bでは見える:A
光学濃度が5.5以上であり、かつ、透過光が評価部屋A、Bどちらででも見える:B
光学濃度が3.0以上5.5未満であり、透過光が評価部屋A、Bどちらでも見える:C
光学濃度が1.0以上3.0未満であり、透過光が評価部屋A、Bどちらでも見える:D
光学濃度が1.0未満:E
遮光性はS~Dが良好であり、その中でもSが最も優れている。
(7)加工性評価
(7-1)弾性率測定
ポリエステルフィルムの弾性率はASTM-D882に基づいて、フィルムを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの弾性率を測定した。なお、サンプル数はn=5とし、また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、それらの平均値として求めた。
(7-2)加工性判定
(7-1)で得られた弾性率の測定結果から、ポリエステルフィルムの加工性を以下の通り判定した。
弾性率が3.2GPa以上、4.2GPa以下:A
弾性率が3.0GPa以上3.2GPa未満、4.2GPaを越え4.5GPa以下:B
弾性率が2.5GPa以上3.0GPa未満、4.5GPaを越え5.0GPa以下:C
弾性率が2.0GPa以上2.5GPa未満、5.0GPaを越え5.5GPa以下:D
弾性率が2.0GPa未満、または5.5GPaを越える:E
加工性はA~Dが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(8)遮光基材特性評価
ポリエステルフィルム上に(6)遮光性評価の(6-2)遮光性判定でSを達成するために、後述する黒色インク層を形成する際に必要な印刷回数から、遮光基材特性を以下の通り判定した。評価は3回実施し、その平均値を持って評価した。
印刷不要:S
印刷回数が1回:A
印刷回数が2回以上、3回未満:B
印刷回数が3回以上、4回未満:C
印刷回数が4回以上、6回未満:D
印刷回数が6回以上:E
遮光基材としては、環境負荷低減や製造工程簡略化の観点からS~Dが良好であり、その中でもSが最も優れている。
(9)遮光テープ特性評価
ポリエステルフィルムに後述する粘着層を設けて作製した遮光テープについて、(7)加工性評価の(7-1)弾性率測定を同様に行い、得られた遮光テープとしての弾性率から遮光テープ特性を以下の通り判定した。
遮光テープの弾性率が2.5GPa以上、3.1GPa以下:A
遮光テープの弾性率が2.2GPa以上2.5GPa未満、3.1GPaを越え3.4GPa以下:B
遮光テープの弾性率が1.8GPa以上2.2GPa未満、3.4GPaを越え3.7GPa以下:C
遮光テープの弾性率が1.5GPa以上1.8GPa未満、3.7GPaを越え4.0GPa以下:D
遮光テープの弾性率が1.5GPa未満、または4.0GPaを越える:E
遮光テープの適性としてはA~Dが良好であり、その中でもAが最も優れている。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、以下では実施例4,12,13,15,16を参考例4,12,13,15,16と読み替えるものとする。
1.ポリエチレンテレフタレート(PET)
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール57.5重量部、酢酸マグネシウム2水和物0.03重量部、三酸化アンチモン0 .03重量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融した。この溶融物を撹拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。エステル交換反応終了後、リン酸0.005重量部をエチレングリコール0.5重量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。このときのポリエステル組成物の固有粘度は0.2未満であった。この後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.65、末端カルボキシル基量が34当量/トンのポリエチレンテレフタレートを得た。
2.ポリエチレンテレフタレート-IPA共重合体(PET/I)
ジカルボン酸成分として、テレフタル酸ジメチル77重量部とイソフタル酸ジメチル23重量部を混合した以外は前記1.項のポリエチレンテレフタレートと同様に重合を行い、イソフタル酸(IPA)が23mol%共重合されたポリエチレンテレフタレートを得た。
3.ポリエチレンテレフタレート-CHDM共重合体(PET/G)
シクロヘキサンジメタノール(CHDM)が30mol%共重合されたポリエチレンテレフタレートとして、イーストマンケミカル社製ポリエステル樹脂「EastarTMCopolyester6763」を用いた。
4.ポリエチレンテレフタレート-NDC共重合体(PET/N)
ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸を用いた以外は前記2.項のポリエチレンテレフタレート-IPA共重合体(PET/I)と同様に重合を行い、ナフタレンジカルボン酸(NDC)が23mol%共重合されたポリエチレンテレフタレートを得た。
5.ポリエチレンナフタレート-TPA共重合体(PEN/T)
ジカルボン酸成分として、2,6-ナフタレンジカルボン酸77重量部とテレフタル酸ジメチル23重量部を混合した以外は前記2.項のポリエチレンテレフタレート-IPA共重合体(PET/I)と同様に重合を行い、テレフタル酸(TPA)が23mol%共重合されたポリエチレンナフタレートを得た。
6.ポリエチレンテレフタレート-CHDM共重合体(PET/G)
シクロヘキサンジメタノール(CHDM)が30mol%共重合されたポリエチレンテレフタレートとして、イーストマンケミカル社製ポリエステル樹脂「EastarTMCopolyester6763」を用いた。
7.ポリブチレンテレフタレート-PTMG共重合体(PBT/PTMG)
トリメチレングリコール(PTMG)が共重合されたポリブチレンテレフタレートとして、東レデュポン(株)社製ポリエステル樹脂「ハイトレル7747」を用いた。
8.ポリプロピレンテレフタレート(PPT)
ジオール成分がポリプロピレングリコールである、ポリプロピレンテレフタレートとして、デュポン(株)社製「ソロナブライト(無粒子品)」を用いた。
9.ポリブチレンテレフタレート(PBT)
ジオール成分がブタンジオールであるポリブチレンテレフタレートとして、東レ(株)社製「トレコン1200S」を用いた。
10.ポリエチレンナフタレート(PEN)
ジカルボン酸成分として、2,6-ナフタレンジカルボン酸を用いた以外は前記1.項のポリエチレンテレフタレートと同様に重合を行い、固有粘度0.61、末端カルボキシル基量が36当量/トンのポリエチレンナフタレートを得た。
11.CBマスターバッチ1(CB-MB1)
上記1.項によって得られたポリエチレンテレフタレート80重量部と、一次粒径50nm、窒素吸着比表面積43m/g、DBP吸油量110cm/100g、揮発量0.6%、pH7.5のファーネス法によって製造されたカーボンブラック(CB-1)20重量部を、ベントした280℃の2軸押出機内で溶融混練し、CBマスターバッチ1を作製した。
12.CBマスターバッチ2(CB-MB2)
一次粒径47nm、窒素吸着比表面積55m/g、DBP吸油量66cm/100g、揮発量0.6%、pH8のファーネス法によって製造されたカーボンブラック(CB-2)を用いた以外は、11.項に記載のCBマスターバッチ1と同様の方法でCBマスターバッチ2を作製した。
13.CBマスターバッチ3(CB-MB3)
一次粒径24nm、窒素吸着比表面積104m/g、DBP吸油量46cm/100g、揮発量1.1%、pH8のファーネス法によって製造されたカーボンブラック(CB-3)を用いた以外は、11.項に記載のCBマスターバッチ1と同様の方法でCBマスターバッチ3を作製した。
14.CBマスターバッチ4(CB-MB4)
一次粒径23nm、窒素吸着比表面積110m/g、DBP吸油量140cm/100g、揮発量1.4%、pH6.4のファーネス法によって製造されたカーボンブラック(CB-4)を用いた以外は、11.項に記載のCBマスターバッチ1と同様の方法でCBマスターバッチ4を作製した。
15.CBマスターバッチ5(CB-MB5)
一次粒径50nm、窒素吸着比表面積43m/g、DBP吸油量175cm/100g、揮発量0.5%、pH7のファーネス法によって製造されたカーボンブラック(CB-5)を用いた以外は、11.項に記載のCBマスターバッチ1と同様の方法でCBマスターバッチ5を作製した。
16.CBマスターバッチ6(CB-MB6)
一次粒径60nm、窒素吸着比表面積27m/g、DBP吸油量68cm/100g、揮発量0.3%、pH7.5のファーネス法によって製造されたカーボンブラック(CB-6)を用いた以外は、11.項に記載のCBマスターバッチ1と同様の方法でCBマスターバッチ6を作製した。
17.CBマスターバッチ7(CB-MB7)
一次粒径90nm、窒素吸着比表面積19m/g、DBP吸油量100cm/100g、揮発量0.8%、pH7.5のファーネス法によって製造されたカーボンブラック(CB-7)を用いた以外は、11.項に記載のCBマスターバッチ1と同様の方法でCBマスターバッチ7を作製した。
18.チタンブラックマスターバッチ(TiB-MB)
三菱マテリアル電子化成(株)社製のチタンブラック粒子(品名:13M)を用いた以外は11.項に記載のCBマスターバッチ1と同様の方法でチタンブラックマスターバッチを作製した。
19.ポリエステルフィルム製膜
1~18.項で作製したポリエステル原料、マスターバッチをブレンドし、180℃で3時間真空乾燥した。次いで280℃に昇温した押出機内で溶融させて吐出し、Tダイから押出した溶融シートを25℃に冷却されたキャスティングドラム上に、ピニング法を用いて密着させて未延伸シートを得た。
続いて、得られた未延伸シートを80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、85℃の温度に加熱したロールと25℃の温度に調整したロール間で3倍の速度差をつけることで長手方向(縦方向)に3.2倍に延伸した後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸シートを得た。更に一軸延伸シートの両端をクリップで把持しながらテンター内の80℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃に保たれた加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.6倍に延伸し、テンター内の熱処理ゾーンにて230℃で20秒間の熱処理を行い、幅方向に6%弛緩処理を行いながら均一に徐冷し、ポリエステルフィルムを製膜した。
20.ポリエステルフィルム上への黒色インク層形成
一次粒径30nm、DBP吸油量93cm/100g、揮発量1.2%、pH2のファーネス法によって製造されたカーボンブラック(CB-6)に市販のインク用メジウム(ポリウレタン系/塩・酢ビコポリマー)と溶剤(ケトン/芳香族炭化水素/アルコール)を加えて混合・撹拌し、溶剤乾燥後のカーボン含有率が50重量%となる黒色インクを調合した。続いて、ポリエステルフィルム上に前記の黒色インクを用いて、乾燥後の厚みが2μmの黒色インク層を遮光性の要求特性に応じた回数、オフセット印刷にて設けた。
21.ポリエステルフィルム上への粘着剤層形成
イソノニルアクリレート98.9重量部、アクリル酸0.1重量部、N-ビニルカプロラクタム1.0重量部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン0.05重量部及び溶剤として酢酸エチル80重量部を、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入口を備えた五つ口フラスコに仕込み、攪拌した後、窒素ガスで約30分間パージし、モノマー溶液中に残存する酸素を除去した。しかる後、窒素ガスでフラスコ内の空気を置換し、攪拌しつつ昇温し70℃に保持し、熱重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.03重量部を1重量部の酢酸エチルに溶解したものを、滴下ロートから滴下した。反応開始後、そのままの温度で10時間反応させ、アクリル系共重合体溶液を得た。
続いて、ポリエステルフィルムの片面に前記のアクリル系共重合体溶液をダイコーティング方法で塗布し、厚み8μmの粘着剤層を設けた。
(実施例1~14)
表1の通り、ポリエステルフィルム組成を変更して実施例1~14を得た。得られたポリエステルフィルムのフィルム特性、評価結果は表2の通り、いずれも良好な製膜性と遮光性、加工性、遮光基材特性、遮光テープ特性を両立することを確認した。中でも実施例2は非常に優れた特性を有することが分かった。
(実施例15~31)
表3の通り、ポリエステルフィルム組成と厚みを変更して実施例15~31を得た。得られたポリエステルフィルムのフィルム特性、評価結果は表4の通り、いずれも良好な製膜性と遮光性、加工性、遮光基材特性、遮光テープ特性を両立することを確認した。中でも実施例18、22~25、28は非常に優れた特性を有することが分かった。尚、実施例22、23、25は製膜時に破れが見られたが問題無い範囲であった。
(比較例1~4)
表5の通り、ポリエステルフィルム組成を変更して比較例1~4を得た。得られたポリエステルフィルムのフィルム特性、評価結果は表6の通り、製膜性と遮光性、加工性、遮光基材特性、遮光テープ特性のいずれかが劣ることを確認した。
(比較例5)
表7の通り、黒色顔料濃度と種類を変更して比較例5を得た。得られたポリエステルフィルムのフィルム特性、評価結果は表8の通り、製膜性に劣ることを確認した、
(実施例32~36)
表7の通り、黒色顔料濃度と種類を変更して実施例32~36を得た。得られたポリエステルフィルムのフィルム特性、評価結果は表8の通り、いずれも良好な製膜性と遮光性、加工性、遮光基材特性、遮光テープ特性を両立することを確認した。中でも実施例33、34は非常に優れた特性を有することが分かった。尚、実施例36は遮光性にやや劣るが問題無い範囲であった。
Figure 0007081186000001
Figure 0007081186000002
Figure 0007081186000003
Figure 0007081186000004
Figure 0007081186000005
Figure 0007081186000006
Figure 0007081186000007
Figure 0007081186000008
(なお、表中において、「^」は乗数を示す。例えば、2.0×10^4は、2.0×10を表す。)
本発明のポリエステルフィルムは、製膜性と遮光性に優れ、更には加工性にも優れる特徴を有するものであり、電子機器内部に用いられる遮光基材や遮光テープ基材はさることながら、赤外線センサー基材やカバーフィルムや太陽電池バックシート用フィルム、モーター用絶縁フィルムなどの工業材料、リチウムイオンバッテリー用の外装フィルム、意匠性フィルム、保護フィルムなどの包装材料、インクリボン用フィルム、建築材料用フィルム、感熱転写フィルム等の用途に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 黒色顔料を含有するポリエステルフィルムであって、前記黒色顔料の含有量がポリエステルフィルム全体に対して2.0重量%以上30重量%以下であり、290℃における比抵抗値が1.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以下であり、前記ポリエステルフィルムの厚みムラが15%以下であるポリエステルフィルム。
  2. 前記黒色顔料がカーボンブラックである請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 前記ポリエステルフィルムの弾性率が2.5GPa以上、5.0GPa以下である請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
  4. 前記ポリエステルフィルムの幅方向断面中における長径200nm以上の黒色顔料の凝集体の楕円率が0.50以上、0.75以下である請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. 前記ポリエステルフィルム中に観察される黒色顔料の凝集体の長径の平均値が300nm以上、1500nm以下である請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. 前記ポリエステルフィルム中にポリエステル樹脂の共重合体を含む、請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. 前記共重合体がポリブチレンテレフタレートとトリメチレングリコールの共重合体(PBT/PTMG)、ポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸の共重合体(PET/I)、ポリエチレンテレフタレートとナフタレンジカルボン酸の共重合体(PET/N)、ポリエチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメタノールの共重合体(PET/G)、ポリエチレンナフタレートとテレフタル酸の共重合体(PEN/T)から選択される1種類以上の樹脂である請求項に記載のポリエステルフィルム。
  8. 電子機器の遮光基材として用いられる請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  9. 請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルムを用いた遮光テープ。
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