JP7080772B2 - マイクロカプセル剤の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロカプセル剤の製造方法に関する。
医薬、殺菌剤、農薬、香料、及びその他の化学反応剤等をはじめとして、目的とする作用を示す各種の有効成分を芯物質として内包したマイクロカプセル剤は、目的とする環境で効率的に有効成分を放出したり、経時と共に徐々に有効成分を放出する徐放性を調節したりできることから、種々の分野でその利用法が検討されている。ここで、「その他の化学反応剤」とは、特定の化学物質と反応することにより、この化学物質の作用を阻害し、医薬、殺菌剤、農薬及び香料のいずれにも該当しない薬剤である。
このようなその他の化学反応剤の一例としては、ホルムアルデヒド反応剤が挙げられる。
建物の内装材や家具等には、ホルムアルデヒドを含む接着剤やバインダーを用いて製造されたものがあり、製品としてホルムアルデヒドを含むものがある。このような製品からは、ホルムアルデヒドが放出されるため、放出されたホルムアルデヒドが室内で滞留し、人や動物に対して健康被害を及ぼすシックハウス症候群が問題となっている。そこで、ホルムアルデヒド反応剤を内包するマイクロカプセル剤の開発が進められている(特許文献1参照)。
特開2017-42617号公報
マイクロカプセル剤を含む各種内装材においては、その保管時に、圧力が加わることによって、マイクロカプセル剤が破壊されてしまうことがある。このようなマイクロカプセル剤の破壊を抑制する手法の一つとして、マイクロカプセル剤の粒子径を小さくすることが挙げられる。
マイクロカプセル剤の製造方法としては、例えば、特許文献1で開示されているように、芯物質の共存化において、外殻の膜を形成するための成分を重縮合させることによって、この膜で構成されたマイクロカプセルの内部に、芯物質が内包されたマイクロカプセル剤を得る方法が知られている。
ところが、マイクロカプセル剤を大きいスケールで製造した場合、小さいスケールで製造した場合とは異なり、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られにくいという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造する場合であっても、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られる、マイクロカプセル剤の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、芯物質と、乳化剤と、変性ポリエチレングリコールと、溶媒と、の共存下において、原料化合物を重縮合させることにより、前記重縮合の生成物であるマイクロカプセルが前記芯物質を内包する、マイクロカプセル剤を得る、マイクロカプセル剤の製造方法を提供する。
本発明のマイクロカプセル剤の製造方法においては、前記芯物質が、ホルムアルデヒドとの反応性を有するホルムアルデヒド反応剤であることが好ましい。
本発明のマイクロカプセル剤の製造方法においては、前記芯物質が、アミノ基及びアミノ基が塩を形成している基を有しないことが好ましい。
本発明のマイクロカプセル剤の製造方法においては、前記変性ポリエチレングリコールがポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーであり、前記乳化剤がカルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
本発明によれば、大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造する場合であっても、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られる、マイクロカプセル剤の製造方法が提供される。
<<マイクロカプセル剤の製造方法>>
本発明の一実施形態に係るマイクロカプセル剤の製造方法は、芯物質と、乳化剤と、変性ポリエチレングリコールと、溶媒と、の共存下において、原料化合物を重縮合させることにより、前記重縮合の生成物であるマイクロカプセルが前記芯物質を内包する、マイクロカプセル剤を得る製造方法である。
前記製造方法によれば、原料化合物の重縮合時に乳化剤と、変性ポリエチレングリコールと、を共存させておくことで、大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造する場合であっても、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られる、その理由は定かではないが、このような限定的な条件下で反応液を撹拌することによって、たとえ大きいスケールであっても、反応液の撹拌効率が顕著に増大するからではないかと推測される。換言すると、大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造する場合には、小さいスケールでマイクロカプセル剤を製造する場合よりも、反応液の撹拌効率が低下してしまうと推測される。
<原料化合物、膜形成成分(重縮合物)>
前記原料化合物は、重縮合の対象となるものであり、重縮合によって、マイクロカプセル(換言すると、マイクロカプセル剤の外殻の膜)を形成する。すなわち、原料化合物の重縮合物(重縮合の生成物)は膜形成成分であり、この膜形成成分は、芯物質を包み込む。
前記重縮合物は、オリゴマー又はポリマーであり、膜形成能を有する有機化合物であれば特に限定されない。
そして、前記原料化合物は、このような膜形成能を有する重縮合物を生成可能であれば、特に限定されない。
好ましい前記重縮合物としては、例えば、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられる。
ここで、「ポリウレア」とは、式「-NH-C(=O)-NH-」で表される結合(ウレア結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味し、例えば、原料化合物として、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上のアミノ基を有するアミン化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
また、「ポリウレタン」とは、式「-NH-C(=O)-O-」で表される結合(ウレタン結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味し、例えば、原料化合物として、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基(-OH)を有するヒドロキシ化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
また、「ポリアミド」とは、式「-NH-C(=O)-」で表される結合(アミド結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味し、例えば、原料化合物として、2個以上のカルボキシ基(-C(=O)-OH)を有するカルボン酸、又はその1個又は2個以上のカルボキシ基がクロロカルボニル基(-C(=O)-Cl)で置換されてなるカルボン酸クロライドと、2個以上のアミノ基を有するアミン化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
ポリウレア及びポリウレタンを形成するための前記イソシアネート化合物は、アミノ基又は水酸基を有しないものが好ましく、アミノ基及び水酸基をともに有しないものがより好ましい。
前記イソシアネート化合物がその1分子中に有するイソシアネート基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2~6個であることが好ましく、2~5個であることがより好ましく、2~4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
前記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、キシレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート等の有機多価イソシアネート化合物;前記有機多価イソシアネート化合物の誘導体(ただし、イソシアネート基は置換されないものとする);前記有機多価イソシアネート化合物のトリメチロールプロパン付加体;前記有機多価イソシアネート化合物の誘導体(ただし、イソシアネート基は置換されないものとする)のトリメチロールプロパン付加体等が挙げられる。なお、本実施形態において、トリメチロールプロパン付加体は、トリメチロールプロパンアダクト体と称することもある。
重縮合によるポリウレア及びポリウレタンの形成時に用いる前記イソシアネート化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ポリウレアを形成するための前記アミン化合物は、イソシアネート基又は水酸基を有しないものが好ましく、イソシアネート基及び水酸基をともに有しないものがより好ましい。
前記アミン化合物がその1分子中に有するアミノ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2~6個であることが好ましく、2~5個であることがより好ましく、2~4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
前記アミン化合物としては、例えば、メラミン、尿素、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の有機多価アミン化合物等が挙げられる。
重縮合によるポリウレアの形成時に用いる前記アミン化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ポリウレタンを形成するための前記ヒドロキシ化合物は、イソシアネート基又はアミノ基を有しないものが好ましく、イソシアネート基及びアミノ基をともに有しないものがより好ましい。
前記ヒドロキシ化合物が、その1分子中に有する水酸基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2~6個であることが好ましく、2~5個であることがより好ましく、2~4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
前記ヒドロキシ化合物としては、例えば、有機多価ヒドロキシ化合物等が挙げられ、前記有機多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルキレングリコール等が挙げられる。
重縮合によるポリウレタンの形成時に用いる前記ヒドロキシ化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ポリアミドを形成するための前記アミン化合物としては、例えば、カルボキシ基を有しない点以外は、上述のポリウレアを形成するための前記アミン化合物と同じものが挙げられる。
また、ポリアミドを形成するための前記アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタジアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族多価アミン化合物等も挙げられる。
ポリアミドを形成するための前記アミン化合物がその1分子中に有するアミノ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2~6個であることが好ましく、2~5個であることがより好ましく、2~4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
重縮合によるポリアミドの形成時に用いる前記アミン化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ポリアミドを形成するための前記カルボン酸は、アミノ基を有しないものである。
前記カルボン酸がその1分子中に有するカルボキシ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2~6個であることが好ましく、2~5個であることがより好ましく、2~4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
前記カルボン酸としては、例えば、アジピン酸(ヘキサン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)、イソフタル酸(ベンゼン-1,3-ジカルボン酸)等の有機多価カルボン酸(脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸)等が挙げられる。
ポリアミドを形成するための前記カルボン酸クロライドは、前記カルボン酸の1個又は2個以上のカルボキシ基がクロロカルボニル基で置換されてなるものであり、前記カルボン酸のすべてのカルボキシ基がクロロカルボニル基で置換されてなるものでもよい。
重縮合によるポリアミドの形成時に用いる前記カルボン酸及びカルボン酸クロライドは、いずれも1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
重縮合させる必須の2群の原料化合物の使用量は、重縮合の方法及び原料化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。ここで、「重縮合させる必須の2群の原料化合物」とは、膜形成成分である重縮合物の主骨格を構成するのに必須の成分を意味し、重縮合物がポリウレアである場合には前記イソシアネート化合物及びアミン化合物を意味し、重縮合物がポリウレタンである場合には前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物を意味し、重縮合物がポリアミドである場合には前記カルボン酸又はカルボン酸クロライド及びアミン化合物を意味する。
通常は、重縮合させる2群の原料化合物の使用量は、[一方の群の原料化合物中の重縮合反応を生じる官能基のモル数]:[他方の群の原料化合物中の重縮合反応を生じる官能基のモル数]のモル比が、10:90~90:10となる量であることが好ましい。
なかでも、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物を用いて、ポリウレアを形成する場合には、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物の使用量は、[アミン化合物中のアミノ基のモル数]:[イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]のモル比が、10:90~60:40となる量であることが好ましく、20:80~40:60となる量であることがより好ましい。アミン化合物中のアミノ基のモル数が、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数よりも少なくなる様に設定すると、より高品質なマイクロカプセルが得られる。
なかでも、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物を用いて、ポリウレタンを形成する場合には、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物の使用量は、[ヒドロキシ化合物中の水酸基のモル数]:[イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]のモル比が、10:90~60:40となる量であることが好ましく、20:80~40:60となる量であることがより好ましい。ヒドロキシ化合物中の水酸基のモル数が、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数よりも少なくなる様に設定すると、より高品質なマイクロカプセルが得られる。
ここまでは、前記重縮合物として、前記イソシアネート化合物、アミン化合物、ヒドロキシ化合物、カルボン酸及びカルボン酸クロライドのいずれかを重縮合して得られたものについて説明したが、前記重縮合物は、前記イソシアネート化合物、アミン化合物、ヒドロキシ化合物、カルボン酸及びカルボン酸クロライドのいずれにも該当しない他の化合物を重縮合して得られたものであってもよい。
前記他の化合物は、重縮合可能なものであれば、特に限定されない。
重縮合時に用いる前記他の化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
例えば、ポリウレアが、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
同様に、ポリウレタンが、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
同様に、ポリアミドが、前記カルボン酸、カルボン酸クロライド及びアミン化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記カルボン酸、カルボン酸クロライド及びアミン化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
前記製造方法は、大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造するのに好適である。例えば、原料化合物の重縮合時において、原料化合物の合計使用量は、1kg以上であることが好ましい。このように、原料化合物の合計使用量が多く、マイクロカプセル剤の製造スケールが大きい方が、本発明の効果がより顕著に得られる。
原料化合物の重縮合時において、原料化合物の合計使用量の上限値は、特に限定されない。例えば、前記原料化合物の合計使用量は、100kg以下であってもよい。
<芯物質>
前記芯物質は、マイクロカプセル剤の使用目的に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。
芯物質としては、例えば、医薬、殺菌剤、農薬、香料、その他の化学反応剤(すなわち、特定の化学物質と反応することにより、この化学物質の作用を阻害し、医薬、殺菌剤、農薬及び香料のいずれにも該当しない薬剤)等が挙げられる。前記その他の化学反応剤で好ましいものとしては、例えば、ホルムアルデヒド反応剤が挙げられる。
建物の内装材や家具等には、ホルムアルデヒドを含む接着剤やバインダーを用いて製造されたものがあり、製品としてホルムアルデヒドを含むものがある。このような製品からは、ホルムアルデヒドが放出されるため、放出されたホルムアルデヒドが室内で滞留し、人や動物に対して健康被害を及ぼすこと(シックハウス症候群)が問題となっている。前記ホルムアルデヒド反応剤は、このような問題点を解決するものであり、ホルムアルデヒドとの反応性を有する。本明細書において、「ホルムアルデヒドとの反応性を有する」とは、ホルムアルデヒドと反応して、ホルムアルデヒドを別の化合物に変換する能力を有することを意味する。すなわち、ホルムアルデヒド反応剤は、ホルムアルデヒドとの反応性を有する基を含む。ホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒド反応剤との反応によって、別の化合物への変換という形で除去される。
ホルムアルデヒド反応剤は、前記芯物質の中でも、特に好ましいものの一例として挙げられる。すなわち、本実施形態においては、前記芯物質がホルムアルデヒド反応剤であることが好ましい。
芯物質は、アミノ基及びアミノ基が塩を形成している基(本明細書においては、「アミノ基塩形成基」と略記することがある)を有しないものが好ましい。
芯物質としてアミノ基及びアミノ基塩形成基を有しないものを用いることで、芯物質を内包するマイクロカプセル(すなわちマイクロカプセル剤)を、より安定して形成できる。
前記アミノ基塩形成基としては、例えば、アミノ基が1価のカチオン部となって、このカチオン部がアニオンとともに塩を形成している基が挙げられる。
ここで、前記カチオン部としては、例えば、アミノ基(-NH)の窒素原子に水素イオン(H)が配位結合したものが挙げられる。この場合の前記アニオンの価数は特に限定されず、1(1価)であってもよいし2(2価)以上であってもよい。前記アニオンが1価である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数と、前記カチオン部の個数は、共に1である。また、前記アニオンがn価(nは2以上の整数である)である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数は通常1であり、前記カチオン部の個数はn以下であり、通常はnである。この場合、複数個の前記カチオン部は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
前記アミノ基塩形成基における前記アニオンとしては、後述する、式「-NH-」で表される基が塩を形成している基(「-NH-」塩形成基)におけるアニオン部と同様のものが挙げられる。
芯物質は、有機化合物であることが好ましく、このような芯物質としては、例えば、式「-NH-」で表される基(以下、「「-NH-」基」と略記することがある)及び式「-NH-」で表される基が塩を形成している基(以下、「「-NH-」塩形成基」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上を有する化合物が挙げられる。これら芯物質において、「-NH-」基は、ホルムアルデヒドとの反応性を示し、「-NH-」塩形成基はそれ自体が、又は「-NH-」基となってこの「-NH-」基が、ホルムアルデヒドとの反応性を示すと推測される。したがって、これら芯物質は、ホルムアルデヒド反応剤として好適である。
芯物質は、「-NH-」基又は「-NH-」塩形成基を有する場合、これら基中の窒素原子は、既に共有結合している1個の水素原子以外に、さらに水素原子と共有結合することはない。
芯物質1分子中の、「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基の総数は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、これら2個以上の基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、これら2個以上の基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。通常は、目的とする芯物質の調製が容易であることから、これら2個以上の基は、すべて同一であること、すなわち、すべて「-NH-」基であるか、又はすべて同一の「-NH-」塩形成基であることが好ましい。
「-NH-」塩形成基としては、例えば、「-NH-」基が1価のカチオン部となって、このカチオン部がアニオンとともに塩を形成している基が挙げられる。
ここで、前記カチオン部としては、例えば、「-NH-」基の窒素原子に水素イオン(H)が配位結合したものが挙げられる。この場合の前記アニオンの価数は特に限定されず、1(1価)であってもよいし、2(2価)以上であってもよい。前記アニオンが1価である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数と、前記カチオン部の個数は、共に1である。また、前記アニオンがm価(mは2以上の整数である)である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数は通常1であり、前記カチオン部の個数はm以下であり、mであることが好ましい。この場合、複数個の前記カチオン部は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
「-NH-」塩形成基における前記アニオンは、特に限定されず、無機アニオン及び有機アニオンのいずれであってもよい。
好ましい前記無機アニオンとしては、例えば、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられ、前記ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
好ましい前記有機アニオンとしては、例えば、カルボン酸のアニオン、スルホン酸のアニオン等が挙げられる。
前記カルボン酸のアニオンは、モノカルボン酸(1価カルボン酸)のアニオンであってもよいし、ジカルボン酸、トリカルボン酸等の多価カルボン酸のアニオンであってもよい。
芯物質が有する前記アニオンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
すなわち、1分子の芯物質が2個以上の前記アニオンを有する場合、これら2個以上のアニオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
ただし、芯物質は、分子全体として電気的に中性であること、すなわち、芯物質1分子中の前記カチオン部の価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
芯物質1分子中の、「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基の総数は、1~4個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましい。
芯物質の分子中における、「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基の位置は、特に限定されず、例えば、芯物質が鎖状構造である場合には、分子の末端部以外であれば、いずれの位置であってもよい。
芯物質は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、鎖状構造及び環状構造をともに有していてもよい。
芯物質が環状構造を有する場合、その環は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、脂肪族環及び芳香族環のいずれであってもよく、脂肪族環及び芳香族環が縮環した多環状であってもよい。
芯物質が環状構造を有する場合、「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基は、前記環状構造の環骨格を形成していてもよいし、環骨格を形成せずに、環骨格を形成している基に結合していてもよい。
芯物質において、「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基の窒素原子は、窒素原子又はカルボニル基の炭素原子に結合していることが好ましい。
1個のカルボニル基にこのように結合している「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基の総数は、1個のみであってもよいし、2個であってもよい。
1個の窒素原子にこのように結合している「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基の総数は、1個のみであってもよいし、2個であってもよいが、1個であることが好ましい。
すなわち、好ましい芯物質としては、例えば、式「-C(=O)-NH-」で表される基(アミド結合、以下、「「-C(=O)-NH-」基」と略記することがある)、式「-NH-C(=O)-NH-」で表される基(以下、「「-NH-C(=O)-NH-」基」と略記することがある)、式「-C(=O)-NH-」で表される基が塩を形成している基(以下、「「-C(=O)-NH-」塩形成基」と略記することがある)、式「-NH-C(=O)-NH-」で表される基が塩を形成している基(以下、「「-NH-C(=O)-NH-」塩形成基」と略記することがある)、式「=N-NH-」で表される基(以下、「「=N-NH-」基」と略記することがある)、式「-HN-N(-)-NH-」で表される基(以下、「「-HN-N(-)-NH-」基」と略記することがある)、式「=N-NH-」で表される基が塩を形成している基(以下、「「=N-NH-」塩形成基」と略記することがある)及び式「-HN-N(-)-NH-」で表される基が塩を形成している基(以下、「「-HN-N(-)-NH-」塩形成基」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上を有するもの、が挙げられる。ここで、例えば、「-HN-N(-)-NH-」基とは、1個の窒素原子に、2個の「-NH-」基の窒素原子と、さらにもう1個の基と、が単結合で結合しているものを意味する。
なお、「-NH-C(=O)-NH-」塩形成基及び「-HN-N(-)-NH-」塩形成基において、「-NH-」塩形成基の数は1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
環状構造を有する芯物質で好ましいものとしては、例えば、「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基からなる群から選択される1種又は2種以上が、環状構造の環骨格を形成しているものが挙げられ、「-C(=O)-NH-」基、「-NH-C(=O)-NH-」基、「-C(=O)-NH-」塩形成基、「-NH-C(=O)-NH-」塩形成基、「=N-NH-」基、「-HN-N(-)-NH-」基、「=N-NH-」塩形成基及び「-HN-N(-)-NH-」塩形成基からなる群から選択される1種又は2種以上が、環状構造の環骨格を形成している芯物質がより好ましい。
芯物質が環状構造を有する場合、その環骨格の環員数、すなわち、環骨格を形成している原子の数(個)は、単環状である場合には、好ましくは5~7、より好ましくは5又は6であり、多環状である場合には、好ましくは8~10である。
特に好ましい芯物質としては、例えば、置換基を有していてもよいヒダントイン及びその塩、置換基を有していてもよい2-イミダゾリジノン及びその塩、置換基を有していてもよい5-ピラゾロン及びその塩、置換基を有していてもよい3-ピラゾロン及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,4-トリアゾール-3-オン及びその塩、置換基を有していてもよいフタルイミド及びその塩、置換基を有していてもよいグリコールウリル及びその塩、置換基を有していてもよいピラゾール及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,3-トリアゾール及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,4-トリアゾール及びその塩、並びに置換基を有していてもよい1,2,3-ベンゾトリアゾール及びその塩等が挙げられる。
ヒダントイン、2-イミダゾリジノン、5-ピラゾロン、3-ピラゾロン、1,2,4-トリアゾール-3-オン、フタルイミド、グリコールウリル、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール及び1,2,3-ベンゾトリアゾールの構造を以下に示す。
ヒダントイン、2-イミダゾリジノン、5-ピラゾロン、3-ピラゾロン、1,2,4-トリアゾール-3-オン、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール及び1,2,4-トリアゾールはいずれも、環員数が5の化合物である。フタルイミド及び1,2,3-ベンゾトリアゾールはいずれも、環員数が9の化合物である。グリコールウリルは環員数が8の化合物である。
なお、ここに示す化合物は、芯物質のごく一例に過ぎない。
Figure 0007080772000001
ここで、ヒダントインの塩としては、例えば、ヒダントイン中の2個の「-NH-」基のいずれか一方又は両方が、「-NH-」塩形成基となったものが挙げられる。
また、2-イミダゾリジノンの塩としては、例えば、2-イミダゾリジノン中の2個の「-NH-」基のいずれか一方又は両方が、「-NH-」塩形成基となったものが挙げられる。
また、5-ピラゾロンの塩としては、例えば、5-ピラゾロン中の「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、及び、「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、3-ピラゾロンの塩としては、例えば、3-ピラゾロン中の2個の「-NH-」基のいずれか一方又は両方が、「-NH-」塩形成基となったものが挙げられる。
また、1,2,4-トリアゾール-3-オンの塩としては、例えば、1,2,4-トリアゾール-3-オン中の2個の「-NH-」基のいずれか一方又は両方が、「-NH-」塩形成基となったものが挙げられる。
また、フタルイミドの塩としては、例えば、フタルイミド中の1個の「-NH-」基が、「-NH-」塩形成基となったものが挙げられる。
また、グリコールウリルの塩としては、例えば、グリコールウリル中の4個の「-NH-」基の少なくとも1個が、「-NH-」塩形成基となったものが挙げられる。
また、ピラゾールの塩としては、例えば、ピラゾール中の「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、及び、「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,3-トリアゾールの塩としては、例えば、1,2,3-トリアゾール中の「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,4-トリアゾールの塩としては、例えば、1,2,4-トリアゾール中の「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,3-ベンゾトリアゾールの塩としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール中の「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「-NH-」基が「-NH-」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
なお、本明細書において、「置換基を有する」とは、元の化合物の1個又は2個以上の水素原子(ただし、「-NH-」基及び「-NH-」塩形成基中の水素原子を除く)が水素原子以外の基(置換基)で置換されていることを意味する。
本明細書においては、置換基を有するヒダントインを「ヒダントイン誘導体」と称し、ヒダントイン及びヒダントイン誘導体を包括して「ヒダントイン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するヒダントインの塩、すなわち、ヒダントイン誘導体の塩とは、ヒダントイン誘導体が、ヒダントインの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいヒダントイン及びその塩」とは、換言すると、ヒダントイン系化合物及びその塩のことである。
本明細書において「誘導体」とは、元の化合物の1個又は2個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されているものを意味する。
ヒダントイン以外の化合物の場合も同様である。
すなわち、本明細書においては、置換基を有する2-イミダゾリジノンを「2-イミダゾリジノン誘導体」と称し、2-イミダゾリジノン及び2-イミダゾリジノン誘導体を包括して「2-イミダゾリジノン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する2-イミダゾリジノンの塩、すなわち、2-イミダゾリジノン誘導体の塩とは、2-イミダゾリジノン誘導体が、2-イミダゾリジノンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい2-イミダゾリジノン及びその塩」とは、換言すると、2-イミダゾリジノン系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する5-ピラゾロンを「5-ピラゾロン誘導体」と称し、5-ピラゾロン及び5-ピラゾロン誘導体を包括して「5-ピラゾロン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する5-ピラゾロンの塩、すなわち、5-ピラゾロン誘導体の塩とは、5-ピラゾロン誘導体が、5-ピラゾロンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい5-ピラゾロン及びその塩」とは、換言すると、5-ピラゾロン系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する3-ピラゾロンを「3-ピラゾロン誘導体」と称し、3-ピラゾロン及び3-ピラゾロン誘導体を包括して「3-ピラゾロン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する3-ピラゾロンの塩、すなわち、3-ピラゾロン誘導体の塩とは、3-ピラゾロン誘導体が、3-ピラゾロンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい3-ピラゾロン及びその塩」とは、換言すると、3-ピラゾロン系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する1,2,4-トリアゾール-3-オンを「1,2,4-トリアゾール-3-オン誘導体」と称し、1,2,4-トリアゾール-3-オン及び1,2,4-トリアゾール-3-オン誘導体を包括して「1,2,4-トリアゾール-3-オン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,4-トリアゾール-3-オンの塩、すなわち、1,2,4-トリアゾール-3-オン誘導体の塩とは、1,2,4-トリアゾール-3-オン誘導体が、1,2,4-トリアゾール-3-オンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,4-トリアゾール-3-オン及びその塩」とは、換言すると、1,2,4-トリアゾール-3-オン系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有するフタルイミドを「フタルイミド誘導体」と称し、フタルイミド及びフタルイミド誘導体を包括して「フタルイミド系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するフタルイミドの塩、すなわち、フタルイミド誘導体の塩とは、フタルイミド誘導体が、フタルイミドの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいフタルイミド及びその塩」とは、換言すると、フタルイミド系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有するグリコールウリルを「グリコールウリル誘導体」と称し、グリコールウリル及びグリコールウリル誘導体を包括して「グリコールウリル系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するグリコールウリルの塩、すなわち、グリコールウリル誘導体の塩とは、グリコールウリル誘導体が、グリコールウリルの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいグリコールウリル及びその塩」とは、換言すると、グリコールウリル系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有するピラゾールを「ピラゾール誘導体」と称し、ピラゾール及びピラゾール誘導体を包括して「ピラゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するピラゾールの塩、すなわち、ピラゾール誘導体の塩とは、ピラゾール誘導体が、ピラゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいピラゾール及びその塩」とは、換言すると、ピラゾール系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する1,2,3-トリアゾールを「1,2,3-トリアゾール誘導体」と称し、1,2,3-トリアゾール及び1,2,3-トリアゾール誘導体を包括して「1,2,3-トリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,3-トリアゾールの塩、すなわち、1,2,3-トリアゾール誘導体の塩とは、1,2,3-トリアゾール誘導体が、1,2,3-トリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,3-トリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,3-トリアゾール系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する1,2,4-トリアゾールを「1,2,4-トリアゾール誘導体」と称し、1,2,4-トリアゾール及び1,2,4-トリアゾール誘導体を包括して「1,2,4-トリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,4-トリアゾールの塩、すなわち、1,2,4-トリアゾール誘導体の塩とは、1,2,4-トリアゾール誘導体が、1,2,4-トリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,4-トリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,4-トリアゾール系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する1,2,3-ベンゾトリアゾールを「1,2,3-ベンゾトリアゾール誘導体」と称し、1,2,3-ベンゾトリアゾール及び1,2,3-ベンゾトリアゾール誘導体を包括して「1,2,3-ベンゾトリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,3-ベンゾトリアゾールの塩、すなわち、1,2,3-ベンゾトリアゾール誘導体の塩とは、1,2,3-ベンゾトリアゾール誘導体が、1,2,3-ベンゾトリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,3-ベンゾトリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,3-ベンゾトリアゾール系化合物及びその塩のことである。
前記置換基は、特に限定されないが、好ましいものとしては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基(アリールアルキル基)、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
前記置換基におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
環状の前記アルキル基の炭素数は、3~10であることが好ましい。
このような環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。また、このような環状のアルキル基としては、例えば、先に挙げた環状のアルキル基の1個又は2個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものも挙げられる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、上述の芯物質が有する置換基として挙げたアルキル基と同じものが挙げられる。これら置換基を有する環状のアルキル基の炭素数は、置換基の分も含めて10以下であることが好ましい。
直鎖状及び分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は1~8であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~5であることが特に好ましい。
前記置換基におけるアルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
直鎖状及び分岐鎖状の前記アルケニル基の炭素数は、2~10であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)等、直鎖状及び分岐鎖状の前記アルキル基において、炭素原子間の1個の単結合(C-C)が二重結合(C=C)で置換された構造を有する基が挙げられる。
環状の前記アルケニル基の炭素数は、4~10であることが好ましい。
このような環状のアルケニル基としては、例えば、シクロヘキセニル基等、環状の前記アルキル基において、炭素原子間の1個の単結合(C-C)が二重結合(C=C)で置換された構造を有する基が挙げられる。
前記置換基におけるアリール基は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
前記アリール基の炭素数は、6~15であることが好ましい。
このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられる。また、このようなアリール基としては、例えば、先に挙げたアリール基の1個又は2個以上の水素原子が、アリール基又はアルキル基で置換されたものも挙げられる。ここで、水素原子を置換するアリール基及びアルキル基としては、上述の芯物質が有する置換基として挙げたアリール基及びアルキル基と同じものが挙げられる。これら置換基を有するアリール基の炭素数は、置換基の分も含めて15以下であることが好ましい。
前記アリール基の炭素数は6~10であることがより好ましい。
前記置換基におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)等、前記アルキル基の1個の水素原子が前記アリール基で置換された構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アラルキル基の炭素数は、7~20であることが好ましく、7~11であることがより好ましい。
前記置換基におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基等、前記アルキル基が酸素原子に結合した構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アルコキシ基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
前記置換基におけるアルケニルオキシ基としては、例えば、エテニルオキシ基(ビニルオキシ基)、2-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、シクロヘキセニルオキシ基等、前記アルケニル基が酸素原子に結合した構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アルケニルオキシ基の炭素数は、2~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、2~6であることが特に好ましい。
前記置換基におけるアリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基等、前記アリール基が酸素原子に結合した構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アリールオキシ基の炭素数は、6~15であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。
前記置換基におけるアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基(フェニルメチルオキシ基)、フェネチルオキシ基(フェニルエチルオキシ基)等、前記アラルキル基が酸素原子に結合した構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アラルキルオキシ基の炭素数は、7~20であることが好ましく、7~11であることがより好ましい。
1分子の芯物質が有する前記置換基は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、これら置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、2個以上の置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
通常、1分子の芯物質が有する前記置換基は、1~4個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましい。
芯物質の分子中における、前記置換基の位置は、特に限定されず、例えば、芯物質が鎖状構造である場合には、分子の末端部であってもよいし、末端部以外の部位であってもよい。
芯物質が2個以上の前記置換基を有する場合、これら置換基の結合位置は、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同じであってもよい。
上述の特に好ましい芯物質のうち、前記置換基を有するものとしては、ヒダントイン誘導体である5,5-ジメチルヒダントイン;5-ピラゾロン誘導体である3-メチル-5-ピラゾロン;ピラゾール誘導体である3,5-ジメチルピラゾール;1,2,4-トリアゾール誘導体である3-n-ブチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジ-n-ブチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール;1,2,3-ベンゾトリアゾール誘導体である4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
5,5-ジメチルヒダントイン、3-メチル-5-ピラゾロン、3,5-ジメチルピラゾール、3-n-ブチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジ-n-ブチル-1,2,4-トリアゾール及び3,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾールはいずれも、環員数が5の化合物である。4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール及び5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールはいずれも、環員数が9の化合物である。
なお、ここに示す化合物は、前記置換基を有する芯物質のごく一例に過ぎない。
芯物質は、常温で固体であるものが好ましい。そして、常温で固体である芯物質を用いる場合、後述する溶媒を併用することが好ましい。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
芯物質で特に好ましいものとしては、例えば、ヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、2-イミダゾリジノン、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-ピラゾロン、3,5-ジメチルピラゾール、フタルイミド、グリコールウリル、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-n-ブチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジ-n-ブチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール-3-オン、1,2,3-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
原料化合物の重縮合時に用いる芯物質は、その用途によらず、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
原料化合物の重縮合時において、芯物質の使用量は、特に限定されないが、原料化合物の合計使用量100質量部に対して、2~65質量部であることが好ましく、10~60質量部であることがより好ましく、15~55質量部であることが特に好ましい。芯物質の使用量がこのような範囲であることで、安定性がより高いマイクロカプセル剤を製造できる。
ここで、「原料化合物の合計使用量」とは、上述の必須の2群の原料化合物の合計使用量であり、例えば、重縮合物としてポリウレアを形成する場合であれば、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物の合計使用量である。
<乳化剤>
前記乳化剤は、公知のものでよく、特に限定されない。
ただし、本実施形態においては、後述する変性ポリエチレングリコールを、乳化剤として取り扱わない。
好ましい乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、ロート油、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン硫酸塩、エチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。
大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造する場合であっても、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られるという効果が、より高くなり、かつ得られたマイクロカプセル剤の耐水性がより向上するという点では、乳化剤は、カルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
原料化合物の重縮合時に用いる乳化剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
原料化合物の重縮合時において、乳化剤の使用量は、原料化合物の合計使用量100質量部に対して、40~150質量部であることが好ましく、55~125質量部であることがより好ましく、70~100質量部であることが特に好ましい。
ここで、「原料化合物の合計使用量」とは、先に説明したとおりである。
<変性ポリエチレングリコール>
前記変性ポリエチレングリコールは、ポリオキシエチレン骨格とそれ以外の構造をともに主鎖中に有するポリマーである。
本実施形態においては、変性ポリエチレングリコールを、乳化剤としては取り扱わず、また、添加剤に分類することがある。
変性ポリエチレングリコールは、ポリオキシエチレン骨格とそれ以外の繰り返し構造をともに主鎖中に有するポリマーであることが好ましく、ポリオキシエチレン骨格とそれ以外の繰り返し構造をともに主鎖中に有するブロックポリマー(ブロック共重合体)であることがより好ましい。
変性ポリエチレングリコール中の、前記ポリオキシエチレン骨格以外の構造は、酸化オレフィンから誘導された構造であることが好ましく、前記ポリオキシエチレン骨格以外の繰り返し構造は、ポリオキシオレフィン骨格であることが好ましく、前記ポリオキシオレフィン骨格は、ポリオキシプロピレン骨格であることが好ましい。
本明細書において、ポリオキシエチレン骨格とは、下記一般式(G1)
-(CHCHO)m1- (G1)
(一般式(G1)中、m1は2以上の整数である。)で表されるものを意味する。同様に、ポリオキシプロピレン骨格とは、下記一般式(G2)
-(CHCH(CH)O)n1- (G2)
(一般式(G2)中、n1は2以上の整数である。)で表されるものを意味する。
変性ポリエチレングリコールは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーであることが好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとしては、例えば、下記一般式(G3)
HO-(CHCHO)m2-(CHCH(CH)O)n2-(CHCHO)l2-H (G3)
(一般式(G3)中、m2、n2及びl2は、それぞれ独立に2以上の整数である。)で表されるものが挙げられる。
変性ポリエチレングリコールのHLB(Hydrophilic-Lipophilic Blance)値は、特に限定されないが、6~18であることが好ましく、7.5~17であることがより好ましい。
本明細書において、「HLB値」とは、特に断りのない限り、グリフィン(Griffin)法で算出されたものである。
原料化合物の重縮合時に用いる変性ポリエチレングリコールは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
原料化合物の重縮合時において、変性ポリエチレングリコールの使用量は、原料化合物の合計使用量100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~12質量部であることがより好ましく、3~8質量部であることが特に好ましい。
ここで、「原料化合物の合計使用量」とは、先に説明したとおりである。
前記製造方法においては、変性ポリエチレングリコール及び乳化剤として、ともに好ましいもの同士を組み合わせて用いることが好ましい。
例えば、前記製造方法においては、変性ポリエチレングリコールが、ポリオキシエチレン骨格と、ポリオキシエチレン骨格以外のポリオキシオレフィン骨格と、をともに主鎖中に有するポリマーであり、乳化剤がポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、ロート油、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硫酸塩、エチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体及びポリ(メタ)アクリル酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましく、変性ポリエチレングリコールがポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーであり、乳化剤がカルボキシメチルセルロースであることがより好ましい。
このように、変性ポリエチレングリコール及び乳化剤として、ともに好ましいもの同士を組み合わせて用いることによって、大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造する場合であっても、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られるという効果が、より高くなる。
<溶媒>
前記溶媒は、原料化合物の重縮合時の反応溶媒であるとともに、製造後のマイクロカプセル剤においては、芯物質とともに内包され得る成分であり、芯物質を溶解可能な成分であってもよい。
前記溶媒としては、水、有機溶媒等が挙げられる。
前記有機溶媒は、親水性溶媒及び疎水性溶媒のいずれであってもよいが、疎水性溶媒であることが好ましい。
前記疎水性溶媒としては、例えば、アルコール、アミド、ニトリル、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フェノール類(フェノール性水酸基を有する化合物)、硫化炭素、カルボン酸等が挙げられる。
前記疎水性溶媒は、SP値(溶解パラメータ)が12(cal/cm1/2以下であるものが好ましい。このような溶媒を用いることにより、界面重縮合時の反応液が、水の中に油性成分が分散している状態の水中油滴型(O/W型)の分散液となり易く、膜形成成分とマイクロカプセル剤の形成がより容易となる。
すなわち、SP値が12(cal/cm1/2以下である溶媒を内包するマイクロカプセル剤は、本実施形態におけるマイクロカプセル剤の中でも、特に好ましいものである。
前記疎水性溶媒のSP値の下限値は、特に限定されないが、6.5(cal/cm1/2であることが好ましい。このようなSP値の疎水性溶媒は入手が容易である。
SP値が12(cal/cm1/2以下の溶媒としては、例えば、
1-プロパノール(11.9)、2-プロパノール(11.5)、1-ブタノール(11.4)、シクロヘキサノール(11.4)、2-メトキシエタノール(10.8)、1-ヘキサノール(10.7)、2-メチル-2-プロパノール(10.6)、1-ブトキシ-2-プロパノール(10.4)、2-エチルヘキサノール(9.5)等のアルコール;
ジメチルホルムアミド(12.0)等のアミド;
アセトニトリル(11.8)等のニトリル;
アセトン(10.0)、メチルエチルケトン(9.3)、メチルプロピルケトン(8.7)、メチルイソプロピルケトン(8.5)等のケトン;
フタル酸ジn-ブチル(9.4)、酢酸エチル(9.1)、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)(8.7)、酢酸n-ブチル(8.5)、酢酸イソプロピル(8.4)、酢酸イソブチル(8.3)等のエステル(例えば、カルボン酸エステル);
ジオキサン(9.9)、テトラヒドロフラン(9.1)、ジエチルエーテル(7.4)、イソプロピルエーテル(6.9)等の鎖状及び環状のエーテル;
ベンゼン(9.2)、トルエン(8.9)、キシレン(8.8)、エチルベンゼン(8.8)、シクロヘキサン(8.2)、n-オクタン(7.6)、n-ヘキサン(7.3)、n-ペンタン(7.0)等の芳香族及び脂肪族炭化水素;
塩化メチレン(9.7)、クロロホルム(9.3)、トリクロロエチレン(9.2)、四塩化炭素(8.6)等のハロゲン化炭化水素(例えば、ハロゲン化脂肪族炭化水素);
二硫化炭素(10.0)等の硫化炭素;
フェノール(11.5)等のフェノール類;
酢酸(10.1)等のカルボン酸
等が挙げられる。溶媒名と並記したカッコ内の数値はSP値((cal/cm1/2)を意味する。
原料化合物の重縮合時に用いる溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
原料化合物の重縮合時に用いる溶媒は、水及び有機溶媒の混合溶媒であることが好ましく、水及び疎水性溶媒の混合溶媒であることがより好ましい。
例えば、溶媒として、水及び疎水性溶媒の混合溶媒を用いる場合には、原料化合物の重縮合は、界面重縮合として行うことができる。
原料化合物の重縮合時において、前記溶媒の使用量(例えば、2種以上の溶媒を併用する場合には、これら2種以上の溶媒の合計使用料量)は、特に限定されないが、芯物質の使用量100質量部に対して、200~5000質量部であることが好ましく、300~4000質量部であることがより好ましく、400~3000質量部であることが特に好ましい。
<重縮合条件>
原料化合物を重縮合させるときの温度(すなわち反応温度)は、特に限定されないが、60~110℃であることが好ましく、65~100℃であることがより好ましく、70~90℃であることが特に好ましい。
原料化合物を重縮合させるときの時間(すなわち反応時間)は、0.5~5時間であることが好ましく、1~4時間であることがより好ましく、1.5~3時間であることが特に好ましい。
前記製造方法のいずれかの段階で、乳化液を調製するときの、撹拌手段の回転数は、特に限定されないが、400~1000rpmであることが好ましく、500~800rpmであることがより好ましい。このように比較的低い回転数で、大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造しても、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られる。
重縮合後は、例えば、前記マイクロカプセル剤が分散体として得られ、特に界面重縮合後であれば、前記マイクロカプセル剤が水分散体として得られる。
得られたマイクロカプセル剤は、そのまま目的とする用途で用いてもよいし、必要に応じて公知の後処理、精製等を行ってから、目的とする用途で用いてもよく、分散媒を除去してから目的とする用途で用いてもよい。
前記製造方法で得られたマイクロカプセル剤は、前記原料化合物の重縮合物(重縮合の生成物)を膜形成成分として、この膜形成成分により構成されたマイクロカプセル(換言すると外殻)が、芯物質を内包した構成を有する。
前記マイクロカプセル剤は、芯物質以外に、重縮合時に用いた溶媒も内包し得る。また、重縮合の条件によっては、前記マイクロカプセル剤は、芯物質及び溶媒以外に、さらに他の成分も内包し得る。
前記マイクロカプセル剤が内包する、芯物質、溶媒及び他の成分の量は、特に限定されず、マイクロカプセル剤の製造条件によって調節できる。
前記マイクロカプセル剤が内包する芯物質、溶媒及び他の成分は、いずれも、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記製造方法で得られたマイクロカプセル剤の平均粒子径は、特に限定されないが、20μm以下であることが好ましく、例えば、15μm以下であってもよい。前記製造方法によれば、大きいスケールでマイクロカプセル剤を製造しても、このように粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られる。
前記マイクロカプセル剤の平均粒子径の下限値は、特に限定されず、小さいほど好ましい。例えば、前記平均粒子径が2μm以上であるマイクロカプセル剤は、大きいスケールであっても、その製造がより容易である。
前記マイクロカプセル剤の平均粒子径は、上述の下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記マイクロカプセル剤の平均粒子径は、5~20μmであることが好ましく、例えば、5~15μmであってもよい。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、コールターカウンターを用いる方法で測定された、体積累積分布の中央値D50を意味する。
前記マイクロカプセル剤は、例えば、ポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドからなる群より選択される1種又は2種以上を膜形成成分とする場合、本発明の効果を損なわない範囲内において、ポリウレアと、ポリウレタンと、ポリアミドと、のいずれにも該当しない、他のオリゴマー及びポリマーのいずれか一方又は両方を、さらに膜形成成分としていてもよい。
前記他のオリゴマー及びポリマーは、いずれも1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記マイクロカプセル剤において、膜形成成分の総含有量に対する、膜形成成分中の前記他のオリゴマー及びポリマーの合計含有量の割合([マイクロカプセル剤の膜形成成分中の前記他のオリゴマー及びポリマーの合計含有量(質量部)]/[マイクロカプセル剤の膜形成成分の総含有量(質量部)]×100)は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
換言すると、前記マイクロカプセル剤において、膜形成成分の総含有量に対する、膜形成成分中のポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドの合計含有量の割合([マイクロカプセル剤の膜形成成分中のポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドの合計含有量(質量部)]/[マイクロカプセル剤の膜形成成分の総含有量(質量部)]×100)は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
前記マイクロカプセル剤において、芯物質を包み込んでいる外殻(換言するとマイクロカプセル)の膜の厚さは、特に限定されず、例えば、50~1000nmであってもよい。
前記マイクロカプセル剤における、外殻(換言するとマイクロカプセル)の膜の厚さは、例えば、以下に示す方法で測定できる。
すなわち、まず、上述の製造方法で同時に得られた複数個のマイクロカプセル剤を含有する層(以下、「マイクロカプセル剤含有層」と称する)を形成する。マイクロカプセル剤含有層は、例えば、上述の製造方法で得られた重縮合の反応生成物を、フィルム状又はシート状の基材上に塗工し、乾燥させることで形成できる。次いで、マイクロカプセル剤含有層を裁断して、電子顕微鏡を用いて、生じた断面を観察する。そして、観察視野の中から無作為に、断面が生じている20個のマイクロカプセル剤を選択し、さらに、これらマイクロカプセル剤1個ごとに、マイクロカプセル(外殻)の潰れ等の変形が認められない領域の中から、マイクロカプセルの膜の厚さが最大である箇所、最小である箇所、及びそれ以外の箇所の3箇所を選択し、これらの箇所でのマイクロカプセルの膜の厚さを測定して、これらすべての測定値(60個の測定値)から算出した平均値を、外殻(マイクロカプセル)の膜の厚さとして採用する。
前記マイクロカプセル剤は、経時と共に、内包された芯物質を徐々に外部に放出する徐放性を有する。したがって、前記マイクロカプセル剤は、芯物質の有効成分としての作用を長期に渡って持続させることができる。例えば、芯物質としてホルムアルデヒド反応剤を用いた場合には、前記マイクロカプセル剤は、ホルムアルデヒドの除去効果を長期に渡って持続させることができる。
前記マイクロカプセル剤の用途は、特に限定されない。
例えば、前記マイクロカプセル剤を含有する液状組成物を調製するか、又は、前記重縮合の反応生成物をそのまま用いることで、インク又は塗料が得られる。さらに、これらインク又は塗料を塗工し、乾燥させることで、塗工品が得られる。
また、前記マイクロカプセル剤を含有する樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を成形することで、樹脂成形体が得られる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
<<マイクロカプセルの製造>>
[実施例1]
セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)(豊国製油社製、1.12kg)と、濃度が75質量%であるイソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(IPDI-TMP付加体)の酢酸エチル溶液(三井化学社製「タケネートD-140N」、1.38kg、IPDI-TMP付加体として1.04kg)と、の混合物に、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(東京化成工業社製、0.56kg)を添加し、溶解させた。
次いで、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(HLB値16.2)の水分散液(第一工業製薬社製「エパン785」)に、カルボキシメチルセルロースを溶解させ、液状組成物(16.76kg)を調製した。この液状組成物において、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの含有量は0.3質量%とし、カルボキシメチルセルロースの含有量は6質量%とした。すなわち、この液状組成物は、その16.76kg中に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを0.05kg含有し、カルボキシメチルセルロースを1.01kg含有していた。
次いで、この液状組成物の全量に、上記で得られた溶液(5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールを溶解させて得られた溶液)の全量を添加し、撹拌機(中央理化社製)を用いて、常温下で、得られた混合物を回転数600rpm、時間10分の条件で撹拌した。次いで、得られた撹拌物を、さらに、乳化分散機(大平洋機工社製「マイルダー」)を用いて、常温下で、回転数600rpmの条件で乳化させた。
次いで、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(東京化成工業社製、0.18kg)を、上記で得られた乳化液に添加し、80℃で2時間撹拌することで、界面重縮合を行った。
以上により、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、IPDI-TMP付加体と、の重縮合物を膜形成成分とし、芯物質(より具体的にはホルムアルデヒド反応剤)として5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールを内包し、溶媒としてセバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)及び酢酸エチルを内包したマイクロカプセル(すなわちマイクロカプセル剤)を、水分散体として得た。
上記で得られたマイクロカプセル剤水分散体を、上質紙上にバーコーターを用いて塗工し、105℃で90秒乾燥させ、次いで、電子顕微鏡(日本電子社製)を用いて、500倍の倍率で塗工及び乾燥部位を観察し、目的とするマイクロカプセル剤が得られたことを確認した。コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)を用いて、得られたマイクロカプセル剤の平均粒子径を測定したところ、10.0μmであった。結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(HLB値16.2)の水分散液(第一工業製薬社製「エパン785」)に代えて、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(HLB値8.6)の水分散液(第一工業製薬社製「エパン720」)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤を水分散体として得た。前記水分散液を用いて得られた液状組成物において、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの含有量は0.3質量%とし、カルボキシメチルセルロースの含有量は6質量%とした。すなわち、この液状組成物は、その16.76kg中に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを0.05kg含有し、カルボキシメチルセルロースを1.01kg含有していた。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、目的とするマイクロカプセル剤が得られたことを確認した。このマイクロカプセル剤の平均粒子径を測定したところ、18.2μmであった。結果を表1に示す。
[比較例1]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(HLB値16.2)の水分散液(第一工業製薬社製「エパン785」)に代えて、水を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤を水分散体として得た。前記水を用いて得られた液状組成物において、カルボキシメチルセルロースの含有量は6質量%とした。すなわち、この液状組成物は、その16.76kg中に、カルボキシメチルセルロースを1.01kg含有していた。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤が得られたことを確認した。このマイクロカプセル剤の平均粒子径を測定したところ、29.8μmであった。結果を表1に示す。
[比較例2]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(HLB値16.2)の水分散液(第一工業製薬社製「エパン785」)に代えて、ポリエチレングリコール(HLB値20以上、和光純薬社製「PEG20000」)の水溶液を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤の製造を試みた。前記水溶液を用いて得られた液状組成物において、ポリエチレングリコールの含有量は0.3質量%とし、カルボキシメチルセルロースの含有量は6質量%とした。すなわち、この液状組成物は、その16.76kg中に、ポリエチレングリコールを0.05kg含有し、カルボキシメチルセルロースを1.01kg含有していた。
しかし、前記乳化分散機を用いても、乳化液が得られず、マイクロカプセル剤が得られなかった。このとき、乳化条件を実施例1の場合よりも激しくしても、乳化液は得られなかった。
[比較例3]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(HLB値16.2)の水分散液(第一工業製薬社製「エパン785」)に代えて、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(HLB値16.3)の水分散液(第一工業製薬社製「ノイゲンXL-160」)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤を水分散体として得た。前記水分散液を用いて得られた液状組成物において、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルの含有量は0.3質量%とし、カルボキシメチルセルロースの含有量は6質量%とした。すなわち、この液状組成物は、その16.76kg中に、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルを0.05kg含有し、カルボキシメチルセルロースを1.01kg含有していた。
前記ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルは、下記一般式:
R-O[(CHCHXO)n3(CHCHO)m3]H
(一般式中、Rは分岐デシル基である)で表される。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤が得られたことを確認した。このマイクロカプセル剤の平均粒子径を測定したところ、25.0μmであった。結果を表1に示す。
[比較例4]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(HLB値16.2)の水分散液(第一工業製薬社製「エパン785」)に代えて、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(HLB値16.3)の水分散液(第一工業製薬社製「ノイゲンTDS-200D」)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤を水分散体として得た。前記水分散液を用いて得られた液状組成物において、ポリオキシエチレントリデシルエーテルの含有量は0.3質量%とし、カルボキシメチルセルロースの含有量は6質量%とした。すなわち、この液状組成物は、その16.76kg中に、ポリオキシエチレントリデシルエーテルを0.05kg含有し、カルボキシメチルセルロースを1.01kg含有していた。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤が得られたことを確認した。このマイクロカプセル剤の平均粒子径を測定したところ、26.0μmであった。結果を表1に示す。
[比較例5]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(HLB値16.2)の水分散液(第一工業製薬社製「エパン785」)に代えて、ショ糖脂肪酸エステル(HLB値16.0)の水分散液(第一工業製薬社製「DKエステルF-160」)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセル剤の製造を試みた。前記水分散液を用いて得られた液状組成物において、ショ糖脂肪酸エステルの含有量は0.3質量%とし、カルボキシメチルセルロースの含有量は6質量%とした。すなわち、この液状組成物は、その16.76kg中に、ショ糖脂肪酸エステルを0.05kg含有し、カルボキシメチルセルロースを1.01kg含有していた。
しかし、前記乳化分散機を用いても、乳化液が得られず、マイクロカプセル剤が得られなかった。このとき、乳化条件を実施例1の場合よりも激しくしても、乳化液は得られなかった。
Figure 0007080772000002
上記結果から明らかなように、添加剤として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを用いた実施例1~2においては、マイクロカプセル剤の平均粒子径が18.2μm以下(より具体的には10.0~18.2μm)であった。このように、実施例1~2においては、大きいスケールであっても、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られた。
これに対して、添加剤を用いなかった比較例1においては、マイクロカプセル剤の平均粒子径が29.8μmであった。このように、添加剤を用いずに大きいスケールで製造を行った比較例1においては、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られなかった。
添加剤として、ポリエチレングリコールを用いた比較例2においては、マイクロカプセル剤の製造時に乳化液が得られず、界面重縮合を行うことができず、マイクロカプセル剤が得られなかった。
添加剤としてポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルを用いた比較例3、添加剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテルを用いた比較例4、においては、マイクロカプセル剤の平均粒子径が25.0μm以上(より具体的には25.0~26.0μm)であった。このように、実施例1とは異なる群の添加剤を用いて、大きいスケールで製造を行った比較例3~4においては、粒子径が小さいマイクロカプセル剤が得られなかった。
添加剤として、ショ糖脂肪酸エステルを用いた比較例5においては、マイクロカプセル剤の製造時に乳化液が得られず、界面重縮合を行うことができず、マイクロカプセル剤が得られなかった。このように、特定範囲の添加剤を用いた場合にも、マイクロカプセル剤が得られなかった。
本発明は、マイクロカプセル剤の製造に利用可能である。

Claims (2)

  1. 芯物質と、乳化剤と、変性ポリエチレングリコールと、溶媒と、の共存下において、原料化合物として、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上のアミノ基を有するアミン化合物と、を重縮合させるか、又は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基を有するヒドロキシ化合物と、を重縮合させることにより、前記重縮合の生成物であるポリウレア又はポリウレタンを膜形成成分とするマイクロカプセルが前記芯物質を内包する、マイクロカプセル剤を得る、マイクロカプセル剤の製造方法であって、
    前記芯物質が、ヒダントイン及びその塩、5,5-ジメチルヒダントイン及びその塩、2-イミダゾリジノン及びその塩、5-ピラゾロン及びその塩、3-メチル-5-ピラゾロン及びその塩、3-ピラゾロン及びその塩、3,5-ジメチルピラゾール及びその塩、フタルイミド及びその塩、グリコールウリル及びその塩、1,2,3-トリアゾール及びその塩、1,2,4-トリアゾール及びその塩、3-n-ブチル-1,2,4-トリアゾール及びその塩、3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール及びその塩、3,5-ジ-n-ブチル-1,2,4-トリアゾール及びその塩、3,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール及びその塩、1,2,4-トリアゾール-3-オン及びその塩、1,2,3-ベンゾトリアゾール及びその塩、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール及びその塩、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール及びその塩、並びにピラゾール及びその塩からなる群から選択される1種又は2種以上であり、
    前記乳化剤がカルボキシメチルセルロースであり、
    前記変性ポリエチレングリコールがポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーであり、
    前記芯物質の使用量が、前記原料化合物の合計使用量100質量部に対して、2~65質量部であり、
    前記乳化剤の使用量が、前記原料化合物の合計使用量100質量部に対して、40~150質量部であり、
    前記イソシアネート化合物及びアミン化合物を用いて、前記ポリウレアを形成する場合には、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物の使用量は、[アミン化合物中のアミノ基のモル数]:[イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]のモル比が、10:90~60:40となる量であり、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物を用いて、前記ポリウレタンを形成する場合には、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物の使用量は、[ヒドロキシ化合物中の水酸基のモル数]:[イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]のモル比が、10:90~60:40となる量であり、
    前記変性ポリエチレングリコールの使用量が、前記原料化合物の合計使用量100質量部に対して、1~20質量部である、マイクロカプセル剤の製造方法。
  2. 前記芯物質が、ホルムアルデヒドとの反応性を有するホルムアルデヒド反応剤である、請求項1に記載のマイクロカプセル剤の製造方法。
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