JP6959856B2 - マイクロカプセル剤含有組成物及び積層体 - Google Patents

マイクロカプセル剤含有組成物及び積層体 Download PDF

Info

Publication number
JP6959856B2
JP6959856B2 JP2017251742A JP2017251742A JP6959856B2 JP 6959856 B2 JP6959856 B2 JP 6959856B2 JP 2017251742 A JP2017251742 A JP 2017251742A JP 2017251742 A JP2017251742 A JP 2017251742A JP 6959856 B2 JP6959856 B2 JP 6959856B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
microcapsule
salt
compound
containing layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017251742A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019116571A (ja
Inventor
麻衣 志村
展嵩 上田
秀俊 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toppan Forms Co Ltd
Original Assignee
Toppan Forms Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toppan Forms Co Ltd filed Critical Toppan Forms Co Ltd
Priority to JP2017251742A priority Critical patent/JP6959856B2/ja
Publication of JP2019116571A publication Critical patent/JP2019116571A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6959856B2 publication Critical patent/JP6959856B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Polyurethanes Or Polyureas (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Manufacturing Of Micro-Capsules (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、マイクロカプセル剤含有組成物及び積層体に関する。
医薬、殺菌剤、農薬、香料、及びその他の化学反応剤等をはじめとして、目的とする作用を示す各種の有効成分を芯物質として内包したマイクロカプセル剤は、目的とする環境で効率的に有効成分を放出したり、経時と共に徐々に有効成分を放出する徐放性を調節したりできることから、種々の分野でその利用法が検討されている。ここで、「その他の化学反応剤」とは、特定の化学物質と反応することにより、この化学物質の作用を阻害する、医薬、殺菌剤、農薬及び香料以外の薬剤である。
マイクロカプセル剤は、外殻と、この外殻によって包み込まれた芯物質と、を含んで構成され、外殻の膜を構成する膜形成成分は、通常、重縮合反応により形成される各種樹脂である。
ところで、各種樹脂については、その保存中に経時に伴って、徐々に黄色味を帯びる、所謂黄変が問題となることがある。このような樹脂を用いた製品では、経時によって黄変することで、外観不良となってしまうためである。そこで、経時による黄変が抑制可能な樹脂製の製品や部材が種々検討されている。
このような樹脂製部材としては、例えば、塩化ビニル系樹脂と、光安定剤としてブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミンと、紫外線吸収剤としてベンゾフェノン系化合物と、を含む、印刷物を保護するためのフィルム用基材が開示されている(特許文献1参照)。
一方で、マイクロカプセル剤は、樹脂で構成された膜形成成分を含む。したがって、マイクロカプセル剤を含有するマイクロカプセル剤含有組成物と、この組成物を用いて得られた、マイクロカプセル剤を含有する製品や部材でも、経時による黄変が問題となることがある。そこで、経時による黄変が抑制可能なマイクロカプセル剤含有組成物が検討されている。このような目的を達成するマイクロカプセル剤として、特定の条件下で形成されたポリアミドを膜形成成分とするものが開示されている(特許文献2参照)。
特開2016−37542号公報 特許第2706219号明細書
しかし、特許文献1で開示されている、光安定剤及び紫外線吸収剤を用いて、黄変を抑制する方法は、一般的な樹脂製の製品や部材では有効であっても、マイクロカプセル剤においては有効ではないという問題点があった。
また、特許文献2で開示されているマイクロカプセル剤は、その製造時に特定の工程条件を適用して得られるものであり、製造工程が煩雑であるという問題点があった。そして、特許文献2には、マイクロカプセル剤と、黄変を抑制する成分と、を併用して、これらを含有するマイクロカプセル剤含有組成物の黄変を抑制する方法は開示されていない。
本発明は、マイクロカプセル剤と、それ以外に黄変を抑制する成分と、を含有するマイクロカプセル剤含有組成物であって、この組成物を用いて得られたマイクロカプセル剤含有物の経時による黄変を抑制可能なマイクロカプセル剤含有組成物と、前記イクロカプセル剤含有物と、を提供することを課題とする。
本発明は、マイクロカプセル剤と、酸化防止剤と、を含有し、前記マイクロカプセル剤の膜形成成分が、ポリウレア、ポリウレタン又はポリアミドであり、前記酸化防止剤が有機リン系化合物である、マイクロカプセル剤含有組成物を提供する。
本発明のマイクロカプセル剤含有組成物においては、前記有機リン系化合物が、脂肪族有機リン系化合物であることが好ましい。
また、本発明は、基材と、前記基材上に形成されたマイクロカプセル剤含有層と、を備え、前記マイクロカプセル剤含有層が、前記マイクロカプセル剤含有組成物を用いて形成された、積層体を提供する。
本発明によれば、マイクロカプセル剤と、それ以外に黄変を抑制する成分と、を含有するマイクロカプセル剤含有組成物であって、この組成物を用いて得られたマイクロカプセル剤含有物の経時による黄変を抑制可能なマイクロカプセル剤含有組成物と、前記組マイクロカプセル剤含有物と、が提供される。
本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。 実施例1〜4及び比較例1〜2における、マイクロカプセル剤含有層の経時に伴うΔbの推移を表すグラフである。 実施例1、実施例5〜6及び比較例1における、マイクロカプセル剤含有層の経時に伴うΔbの推移を表すグラフである。 比較例1〜3における、マイクロカプセル剤含有層の経時に伴うΔbの推移を表すグラフである。
<<マイクロカプセル剤含有組成物>>
本発明の一実施形態に係るマイクロカプセル剤含有組成物は、マイクロカプセル剤と、酸化防止剤と、を含有し、前記マイクロカプセル剤の膜形成成分が、ポリウレア、ポリウレタン又はポリアミドであり、前記酸化防止剤が有機リン系化合物となっている。
前記マイクロカプセル剤含有組成物は、このように、酸化防止剤として有機リン系化合物という特定範囲の化合物を含有していることで、経時による黄変が抑制される。そして、この組成物を用いて形成され、かつ前記マイクロカプセル剤を含有する、後述するマイクロカプセル剤含有層等の、マイクロカプセル剤含有物も、経時による黄変が抑制される。
なお、本明細書において、「マイクロカプセル剤含有物」とは、マイクロカプセル剤含有組成物を用いて、これとは組成又は性状が異なるものとして得られたものを意味する。マイクロカプセル剤含有物の一例としては、マイクロカプセル剤含有組成物を乾燥させたものが挙げられるが、マイクロカプセル剤含有物はこれに限定されない。前記マイクロカプセル剤含有層は、マイクロカプセル剤含有物のうち、マイクロカプセル剤含有組成物を用いて、層状に形成されたものであり、マイクロカプセル剤含有物は、層状以外の他の形状であってもよい。
前記マイクロカプセル剤含有組成物は、前記マイクロカプセル剤含有物(例えば、マイクロカプセル剤含有層)を形成するための成分を含有する。
マイクロカプセル剤含有物は、例えば、液状のマイクロカプセル剤含有組成物を、マイクロカプセル剤含有物の形成対象面に塗工し、乾燥させることで形成できる。
<酸化防止剤>
前記酸化防止剤は、有機リン系化合物である。
本明細書において、「有機リン系化合物」とは、構成原子としてリン原子を有する有機化合物を意味する。
前記有機リン系化合物としては、例えば、ホスファイト(亜リン酸エステル)、ホスフェート(リン酸エステル)が挙げられる。
ホスファイトとしては、例えば、下記一般式(P1)、(P2)又は(P3)で表されるものが挙げられる。
ホスフェートとしては、例えば、下記一般式(P4)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006959856
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基又はアリール基であり;nは1、2又は3であり;3個のRは互いに同一であっても、異なっていてもよく、2個又は3個のRは、相互に結合して、環を形成していてもよく;2個のRは互いに同一であっても、異なっていてもよく、2個のRは、相互に結合して、環を形成していてもよく;2個のRは互いに同一であっても、異なっていてもよく;nが2又は3である場合、n個のRは互いに同一であっても、異なっていてもよく、nが2又は3である場合、2個又は3個のRは、相互に結合して、環を形成していてもよい。)
、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基又はアリール基である。
前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
直鎖状及び分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1,2,3−トリメチルペンチル基、1,2,4−トリメチルペンチル基、2,3,4−トリメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1,4,4−トリメチルペンチル基、3,4,4−トリメチルペンチル基、1,1,2−トリメチルペンチル基、1,1,3−トリメチルペンチル基、1,1,4−トリメチルペンチル基、1,2,2−トリメチルペンチル基、2,2,3−トリメチルペンチル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、1,3,3−トリメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルペンチル基、3,3,4−トリメチルペンチル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
環状の前記アルキル基の炭素数は、3〜20であることが好ましい。
このような環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
また、このような環状のアルキル基としては、例えば、先に挙げた環状のアルキル基の1個又は2個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものも挙げられる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、アルキル基として先に例示したものが挙げられる。これら置換基を有する環状のアルキル基の炭素数は、置換基の分も含めて20以下であることが好ましい。
直鎖状及び分岐鎖状の前記アルケニル基の炭素数は、2〜20であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)、オクタデセニル基(オレイル基)等、直鎖状及び分岐鎖状の前記アルキル基において、炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)で置換された構造を有する基が挙げられる。
環状の前記アルケニル基の炭素数は、4〜20であることが好ましい。
このような環状のアルケニル基としては、例えば、シクロヘキセニル基等、環状の前記アルキル基において、炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)で置換された構造を有する基が挙げられる。
前記アリール基の炭素数は、6〜20であることが好ましい。
このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられる。
また、このようなアリール基としては、例えば、先に挙げたアリール基の1個又は2個以上の水素原子が、アリール基又はアルキル基で置換されたものも挙げられる。ここで、水素原子を置換するアリール基としては、先に例示したものが挙げられ、水素原子を置換するアルキル基としては、上述のR〜Rにおけるアルキル基と同じものが挙げられる。これら置換基を有するアリール基の炭素数は、置換基の分も含めて6〜20であることが好ましい。
前記一般式(P1)中、3個のRは互いに同一であっても、異なっていてもよい。すなわち、3個のRは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、2個のみが同一であってもよい。
2個又は3個のRは、相互に結合して、これらRが結合している酸素原子と、これら酸素原子が結合しているリン原子とともに、環を形成していてもよい。この場合の2個又は3個のRの互いの結合位置は特に限定されず、形成される前記環は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
なお、本明細書において、「複数個のRが相互に結合する」ということは、複数個のRが、Rを構成しているそれぞれの炭素原子同士の間で、直接結合を形成することを意味する。この炭素原子同士の間の結合数は、1又は2以上であり、この結合数、Rの数、Rの種類によって、形成している環が単環状及び多環状のいずれであるかが決定される。
これらの点は、Rだけでなく、以下で説明するR及びRにおいても同様である。
前記一般式(P2)中、2個のRは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
2個のRは、相互に結合して、これらRが結合している酸素原子と、これら酸素原子が結合しているリン原子とともに、環を形成していてもよい。この場合の2個のRの互いの結合位置は特に限定されず、形成される前記環は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
前記一般式(P3)中、2個のRは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
前記一般式(P4)中、nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合、n個のRは互いに同一であっても、異なっていてもよい。例えば、nが3である場合、3個のRは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、2個のみが同一であってもよい。
nが2又は3である場合、2個又は3個のRは、相互に結合して、環を形成していてもよい。すなわち、nが2である場合、2個のRは、相互に結合して、これらRが結合している酸素原子と、これら酸素原子が結合しているリン原子とともに、環を形成していてもよい。この場合の2個のRの互いの結合位置は特に限定されず、形成される前記環は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。nが3である場合、2個又は3個のRは、相互に結合して、これらRが結合している酸素原子と、これら酸素原子が結合しているリン原子とともに、環を形成していてもよい。この場合の2個又は3個のRの互いの結合位置は特に限定されず、形成される前記環は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
前記一般式(P1)で表されるホスファイトとしては、例えば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルモノアリールホスファイト、モノアルキルジアリールホスファイト、トリアリールホスファイト、トリアルケニルホスファイト等が挙げられる。
前記一般式(P1)で表されるホスファイトとして、より具体的には、例えば、トリエチルホスファイト((CO)P)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト((CHCHCHCHCH(CHCH)CHO)P)、トリデシルホスファイト((C1021O)P)、トリラウリルホスファイト((C1225O)P)、トリス(トリデシル)ホスファイト((C1327O)P)、トリオレイルホスファイト((C1835O)P)、トリフェニルホスファイト((CO)P)、トリスノニルフェニルホスファイト((C19O)P)、トリクレジルホスファイト((p−CHO)P)、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト((CO)POCHCH(CHCH)CHCHCHCH)、ジフェニルモノデシルホスファイト((CO)POC1021)、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト((CO)POC1327)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(C4263P)等が挙げられる。
前記一般式(P2)で表されるホスファイトとしては、例えば、ジアルキルハイドロジェンホスファイト、ジアリールハイドロジェンホスファイト、ジアルケニルハイドロジェンホスファイト等が挙げられる。
前記一般式(P2)で表されるホスファイトとして、より具体的には、例えば、ジエチルハイドロジェンホスファイト((CO)P(=O)−H)、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロジェンホスファイト((CHCHCHCHCH(CHCH)CHO)P(=O)−H)、ジラウリルハイドロジェンホスファイト((C1225O)P(=O)−H)、ジオレイルハイドロジェンホスファイト((C1835O)P(=O)−H)、ジフェニルハイドロジェンホスファイト((CO)P(=O)−H)等が挙げられる。
前記一般式(P3)で表されるホスファイトとしては、例えば、ビス(アルキル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(アリール)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(アルケニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
前記一般式(P3)で表されるホスファイトとして、より具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
Figure 0006959856
ホスファイトは、前記一般式(P1)で表されるもの、前記一般式(P3)で表されるものが好ましい。
前記一般式(P4)で表されるホスフェートとしては、例えば、モノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、トリアルキルホスフェート、モノアリールホスフェート、ジアリールホスフェート、トリアリールホスフェート、モノアルケニルホスフェート、ジアルケニルホスフェート、トリアルケニルホスフェート、ジアルキルモノアリールホスフェート、モノアルキルジアリールホスフェート、ジアルキルモノアルケニルホスフェート、モノアルキルジアルケニルホスフェート等が挙げられる。
前記一般式(P4)で表されるホスフェートとして、より具体的には、例えば、モノエチルホスフェート(COP(=O)(OH))、ジエチルホスフェート((CO)P(=O)OH)、トリエチルホスフェート((CO)P=O)、モノブチルホスフェート(COP(=O)(OH))、ジブチルホスフェート((CO)P(=O)OH)、トリブチルホスフェート((CO)P=O)、モノ2−エチルヘキシルホスフェート(CHCHCHCHCH(CHCH)CHOP(=O)(OH))、ジ2−エチルヘキシルホスフェート((CHCHCHCHCH(CHCH)CHO)P(=O)OH)、トリ2−エチルヘキシルホスフェート((CHCHCHCHCH(CHCH)CHO)P=O)、モノドデシルホスフェート(C1021OP(=O)(OH))、ジドデシルホスフェート((C1021O)P(=O)OH)、モノトリデシルホスフェート(C1327OP(=O)(OH))、ジトリデシルホスフェート((C1327O)P(=O)OH)、モノテトラデシルホスフェート(C1429OP(=O)(OH))、ジテトラデシルホスフェート((C1429O)P(=O)OH)、モノヘキサデシルホスフェート(C1633OP(=O)(OH))、ジヘキサデシルホスフェート((C1633O)P(=O)OH)、モノオクタデシルホスフェート(C1837OP(=O)(OH))、ジオクタデシルホスフェート((C1837O)P(=O)OH)、モノオレイルホスフェート(モノオクタデセニルホスフェート)(C1835OP(=O)(OH))、ジオレイルホスフェート(ジオクタデセニルホスフェート)((C1835O)P(=O)OH)等が挙げられる。
前記有機リン系化合物は、例えば、脂肪族有機リン系化合物及び芳香族有機リン系化合物のいずれであってもよいが、脂肪族有機リン系化合物であることが好ましい。本明細書において、「脂肪族有機リン系化合物」とは、芳香族基を有さず、脂肪族基のみで構成された有機リン系化合物を意味する。そして、「芳香族有機リン系化合物」とは、芳香族基を有する有機リン系化合物を意味する。
脂肪族有機リン系化合物としては、例えば、トリアルキルホスファイト、トリアルケニルホスファイト、ジアルキルハイドロジェンホスファイト、ジアルケニルハイドロジェンホスファイト、ビス(アルキル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(アルケニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、モノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、トリアルキルホスフェート、モノアルケニルホスフェート、ジアルケニルホスフェート、トリアルケニルホスフェート、ジアルキルモノアルケニルホスフェート、モノアルキルジアルケニルホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましい脂肪族有機リン系化合物としては、例えば、トリアルキルホスファイト、ビス(アルキル)ペンタエリスリトールジホスファイト、モノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート等が挙げられる。
ホスフェートは、前記一般式(P4)で表されるもののうち、nが1又は2であるものがより好ましい。
前記マイクロカプセル剤含有組成物が含有する前記酸化防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
例えば、マイクロカプセル剤含有組成物が2種以上の酸化防止剤を含有する場合、これら2種以上の酸化防止剤は、2種以上のホスファイトのみであってもよいし、2種以上のホスフェートのみであってもよいし、1種又は2種以上のホスファイトと、1種又は2種以上のホスフェートと、であってもよい。
マイクロカプセル剤含有組成物の酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、0.3〜10質量%であることが好ましく、0.3〜8質量%であることがより好ましく、0.3〜6質量%であることがさらに好ましく、0.3〜4質量%であることが特に好ましい。酸化防止剤の含有量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセル剤含有組成物と、これを用いて形成されたマイクロカプセル剤含有物の、経時による黄変の抑制効果がより高くなる。酸化防止剤の含有量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセル剤の安定性と、マイクロカプセル剤含有組成物の取り扱い性と、がより高くなる。
<マイクロカプセル剤>
前記マイクロカプセル剤は、重縮合物であるポリウレア、ポリウレタン又はポリアミドを膜形成成分とし、芯物質を内包する。
本明細書においては、膜形成成分が微小なカプセル状となって、その内部に芯物質を内包しているものを「マイクロカプセル剤」と称する。本明細書において、単なる「マイクロカプセル」との記載は、マイクロカプセル剤のうち、芯物質を除いたものを意味する。
[芯物質]
前記芯物質は、マイクロカプセル剤の使用目的に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。
芯物質としては、例えば、医薬、殺菌剤、農薬、香料、その他の化学反応剤(特定の化学物質と反応することにより、この化学物質の作用を阻害する、医薬、殺菌剤、農薬及び香料以外の薬剤)等が挙げられる。前記その他の化学反応剤で好ましいものとしては、例えば、ホルムアルデヒド反応剤が挙げられる。
建物の内装材や家具等には、ホルムアルデヒドを含む接着剤やバインダーを用いて製造されたものがあり、製品としてホルムアルデヒドを含むものがある。このような製品からは、ホルムアルデヒドが放出されるため、放出されたホルムアルデヒドが室内で滞留し、人や動物に対して健康被害を及ぼすことが問題となっている。前記ホルムアルデヒド反応剤は、このような問題点を解決するものであり、ホルムアルデヒドとの反応性を有する。本明細書において、「ホルムアルデヒドとの反応性を有する」とは、ホルムアルデヒドと反応して、ホルムアルデヒドを別の化合物に変換する能力を有することを意味する。すなわち、ホルムアルデヒド反応剤は、ホルムアルデヒドとの反応性を有する基を含む。ホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒド反応剤との反応によって、別の化合物への変換という形で除去される。
ホルムアルデヒド反応剤は、前記芯物質の中でも、特に好ましいものの一例として挙げられる。
芯物質は、アミノ基及びアミノ基が塩を形成している基(本明細書においては、「アミノ基塩形成基」と略記することがある)を有しないものが好ましい。
芯物質としてアミノ基及びアミノ基塩形成基を有しないものを用いることで、芯物質を内包するマイクロカプセル(すなわちマイクロカプセル剤)を、より安定して形成できる。
前記アミノ基塩形成基としては、例えば、アミノ基が1価のカチオン部となって、このカチオン部がアニオンとともに塩を形成している基が挙げられる。
ここで、前記カチオン部としては、例えば、アミノ基(−NH)の窒素原子に水素イオン(H)が配位結合したものが挙げられる。この場合の前記アニオンの価数は特に限定されず、1(1価)であってもよいし2(2価)以上であってもよい。前記アニオンが1価である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数と、前記カチオン部の個数は、共に1である。また、前記アニオンがn価(nは2以上の整数である)である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数は通常1であり、前記カチオン部の個数はn以下であり、通常はnである。この場合、複数個の前記カチオン部は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
前記アミノ基塩形成基における前記アニオンとしては、後述する、式「−NH−」で表される基が塩を形成している基(「−NH−」塩形成基)におけるアニオン部と同様のものが挙げられる。
芯物質は、有機化合物であることが好ましく、このような芯物質としては、例えば、式「−NH−」で表される基(以下、「「−NH−」基」と略記することがある)及び式「−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「−NH−」塩形成基」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上を有する化合物が挙げられる。これら芯物質において、「−NH−」基は、ホルムアルデヒドとの反応性を示し、「−NH−」塩形成基はそれ自体が、又は「−NH−」基となってこの「−NH−」基が、ホルムアルデヒドとの反応性を示すと推測される。したがって、これら芯物質は、ホルムアルデヒド反応剤として好適である。
芯物質は、「−NH−」基又は「−NH−」塩形成基を有する場合、これら基中の窒素原子は、既に共有結合している1個の水素原子以外に、さらに水素原子と共有結合することはない。
芯物質1分子中の、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の総数は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、これら2個以上の基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、これら2個以上の基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。通常は、目的とする芯物質の調製が容易であることから、これら2個以上の基は、すべて同一であること、すなわち、すべて「−NH−」基であるか、又はすべて同一の「−NH−」塩形成基であることが好ましい。
「−NH−」塩形成基としては、例えば、「−NH−」基が1価のカチオン部となって、このカチオン部がアニオンとともに塩を形成している基が挙げられる。
ここで、前記カチオン部としては、例えば、「−NH−」基の窒素原子に水素イオン(H)が配位結合したものが挙げられる。この場合の前記アニオンの価数は特に限定されず、1(1価)であってもよいし、2(2価)以上であってもよい。前記アニオンが1価である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数と、前記カチオン部の個数は、共に1である。また、前記アニオンがm価(mは2以上の整数である)である場合、前記塩を形成している前記アニオンの個数は通常1であり、前記カチオン部の個数はm以下であり、mであることが好ましい。この場合、複数個の前記カチオン部は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
「−NH−」塩形成基における前記アニオンは、特に限定されず、無機アニオン及び有機アニオンのいずれであってもよい。
好ましい前記無機アニオンとしては、例えば、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられ、前記ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
好ましい前記有機アニオンとしては、例えば、カルボン酸のアニオン、スルホン酸のアニオン等が挙げられる。
前記カルボン酸のアニオンは、モノカルボン酸(1価カルボン酸)のアニオンであってもよいし、ジカルボン酸、トリカルボン酸等の多価カルボン酸のアニオンであってもよい。
芯物質が有する前記アニオンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
すなわち、1分子の芯物質が2個以上の前記アニオンを有する場合、これら2個以上のアニオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
ただし、芯物質は、分子全体として電気的に中性であること、すなわち、芯物質1分子中の前記カチオン部の価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
芯物質1分子中の、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の総数は、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましい。
芯物質の分子中における、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の位置は、特に限定されず、例えば、芯物質が鎖状構造である場合には、分子の末端部以外であれば、いずれの位置であってもよい。
芯物質は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、鎖状構造及び環状構造をともに有していてもよい。
芯物質が環状構造を有する場合、その環は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、脂肪族環及び芳香族環のいずれであってもよく、脂肪族環及び芳香族環が縮環した多環状であってもよい。
芯物質が環状構造を有する場合、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基は、前記環状構造の環骨格を形成していてもよいし、環骨格を形成せずに、環骨格を形成している基に結合していてもよい。
芯物質において、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の窒素原子は、窒素原子又はカルボニル基の炭素原子に結合していることが好ましい。
1個のカルボニル基にこのように結合している「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の総数は、1個のみであってもよいし、2個であってもよい。
1個の窒素原子にこのように結合している「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基の総数は、1個のみであってもよいし、2個であってもよいが、1個であることが好ましい。
すなわち、好ましい芯物質としては、例えば、式「−C(=O)−NH−」で表される基(アミド結合、以下、「「−C(=O)−NH−」基」と略記することがある)、式「−NH−C(=O)−NH−」で表される基(以下、「「−NH−C(=O)−NH−」基」と略記することがある)、式「−C(=O)−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「−C(=O)−NH−」塩形成基」と略記することがある)、式「−NH−C(=O)−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「−NH−C(=O)−NH−」塩形成基」と略記することがある)、式「=N−NH−」で表される基(以下、「「=N−NH−」基」と略記することがある)、式「−HN−N(−)−NH−」で表される基(以下、「「−HN−N(−)−NH−」基」と略記することがある)、式「=N−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「=N−NH−」塩形成基」と略記することがある)及び式「−HN−N(−)−NH−」で表される基が塩を形成している基(以下、「「−HN−N(−)−NH−」塩形成基」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上を有するもの、が挙げられる。ここで、例えば、「−HN−N(−)−NH−」基とは、1個の窒素原子に、2個の「−NH−」基の窒素原子と、さらにもう1個の基と、が単結合で結合しているものを意味する。
なお、「−NH−C(=O)−NH−」塩形成基及び「−HN−N(−)−NH−」塩形成基において、「−NH−」塩形成基の数は1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
環状構造を有する芯物質で好ましいものとしては、例えば、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基からなる群から選択される1種又は2種以上が、環状構造の環骨格を形成しているものが挙げられ、「−C(=O)−NH−」基、「−NH−C(=O)−NH−」基、「−C(=O)−NH−」塩形成基、「−NH−C(=O)−NH−」塩形成基、「=N−NH−」基、「−HN−N(−)−NH−」基、「=N−NH−」塩形成基及び「−HN−N(−)−NH−」塩形成基からなる群から選択される1種又は2種以上が、環状構造の環骨格を形成している芯物質がより好ましい。
芯物質が環状構造を有する場合、その環骨格の環員数、すなわち、環骨格を形成している原子の数(個)は、単環状である場合には、好ましくは5〜7、より好ましくは5又は6であり、多環状である場合には、好ましくは8〜10である。
特に好ましい芯物質としては、例えば、置換基を有していてもよいヒダントイン及びその塩、置換基を有していてもよい2−イミダゾリジノン及びその塩、置換基を有していてもよい5−ピラゾロン及びその塩、置換基を有していてもよい3−ピラゾロン及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール−3−オン及びその塩、置換基を有していてもよいフタルイミド及びその塩、置換基を有していてもよいグリコールウリル及びその塩、置換基を有していてもよいピラゾール及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,3−トリアゾール及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール及びその塩、並びに置換基を有していてもよい1,2,3−ベンゾトリアゾール及びその塩等が挙げられる。
ヒダントイン、2−イミダゾリジノン、5−ピラゾロン、3−ピラゾロン、1,2,4−トリアゾール−3−オン、フタルイミド、グリコールウリル、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及び1,2,3−ベンゾトリアゾールの構造を以下に示す。
ヒダントイン、2−イミダゾリジノン、5−ピラゾロン、3−ピラゾロン、1,2,4−トリアゾール−3−オン、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾールはいずれも、環員数が5の化合物である。フタルイミド及び1,2,3−ベンゾトリアゾールはいずれも、環員数が9の化合物である。グリコールウリルは環員数が8の化合物である。
なお、ここに示す化合物は、芯物質のごく一例に過ぎない。
Figure 0006959856
ここで、ヒダントインの塩としては、例えば、ヒダントイン中の2個の「−NH−」基のいずれか一方又は両方が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、2−イミダゾリジノンの塩としては、例えば、2−イミダゾリジノン中の2個の「−NH−」基のいずれか一方又は両方が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、5−ピラゾロンの塩としては、例えば、5−ピラゾロン中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、3−ピラゾロンの塩としては、例えば、3−ピラゾロン中の2個の「−NH−」基のいずれか一方又は両方が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、1,2,4−トリアゾール−3−オンの塩としては、例えば、1,2,4−トリアゾール−3−オン中の2個の「−NH−」基のいずれか一方又は両方が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、フタルイミドの塩としては、例えば、フタルイミド中の1個の「−NH−」基が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、グリコールウリルの塩としては、例えば、グリコールウリル中の4個の「−NH−」基の少なくとも1個が、「−NH−」塩形成基となったものが挙げられる。
また、ピラゾールの塩としては、例えば、ピラゾール中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の窒素原子が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,3−トリアゾールの塩としては、例えば、1,2,3−トリアゾール中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,4−トリアゾールの塩としては、例えば、1,2,4−トリアゾール中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
また、1,2,3−ベンゾトリアゾールの塩としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール中の「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となったもの、水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、及び、「−NH−」基が「−NH−」塩形成基となり、かつ水素原子と結合していない方の2個の窒素原子のいずれか一方又は両方が塩を形成したもの、が挙げられる。
なお、本明細書において、「置換基を有する」とは、元の化合物の1個又は2個以上の水素原子(ただし、「−NH−」基及び「−NH−」塩形成基中の水素原子を除く)が水素原子以外の基(置換基)で置換されていることを意味する。
本明細書においては、置換基を有するヒダントインを「ヒダントイン誘導体」と称し、ヒダントイン及びヒダントイン誘導体を包括して「ヒダントイン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するヒダントインの塩、すなわち、ヒダントイン誘導体の塩とは、ヒダントイン誘導体が、ヒダントインの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいヒダントイン及びその塩」とは、換言すると、ヒダントイン系化合物及びその塩のことである。
本明細書において「誘導体」とは、元の化合物の1個又は2個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されているものを意味する。
ヒダントイン以外の化合物の場合も同様である。
すなわち、本明細書においては、置換基を有する2−イミダゾリジノンを「2−イミダゾリジノン誘導体」と称し、2−イミダゾリジノン及び2−イミダゾリジノン誘導体を包括して「2−イミダゾリジノン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する2−イミダゾリジノンの塩、すなわち、2−イミダゾリジノン誘導体の塩とは、2−イミダゾリジノン誘導体が、2−イミダゾリジノンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい2−イミダゾリジノン及びその塩」とは、換言すると、2−イミダゾリジノン系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する5−ピラゾロンを「5−ピラゾロン誘導体」と称し、5−ピラゾロン及び5−ピラゾロン誘導体を包括して「5−ピラゾロン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する5−ピラゾロンの塩、すなわち、5−ピラゾロン誘導体の塩とは、5−ピラゾロン誘導体が、5−ピラゾロンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい5−ピラゾロン及びその塩」とは、換言すると、5−ピラゾロン系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する3−ピラゾロンを「3−ピラゾロン誘導体」と称し、3−ピラゾロン及び3−ピラゾロン誘導体を包括して「3−ピラゾロン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する3−ピラゾロンの塩、すなわち、3−ピラゾロン誘導体の塩とは、3−ピラゾロン誘導体が、3−ピラゾロンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい3−ピラゾロン及びその塩」とは、換言すると、3−ピラゾロン系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する1,2,4−トリアゾール−3−オンを「1,2,4−トリアゾール−3−オン誘導体」と称し、1,2,4−トリアゾール−3−オン及び1,2,4−トリアゾール−3−オン誘導体を包括して「1,2,4−トリアゾール−3−オン系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,4−トリアゾール−3−オンの塩、すなわち、1,2,4−トリアゾール−3−オン誘導体の塩とは、1,2,4−トリアゾール−3−オン誘導体が、1,2,4−トリアゾール−3−オンの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール−3−オン及びその塩」とは、換言すると、1,2,4−トリアゾール−3−オン系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有するフタルイミドを「フタルイミド誘導体」と称し、フタルイミド及びフタルイミド誘導体を包括して「フタルイミド系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するフタルイミドの塩、すなわち、フタルイミド誘導体の塩とは、フタルイミド誘導体が、フタルイミドの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいフタルイミド及びその塩」とは、換言すると、フタルイミド系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有するグリコールウリルを「グリコールウリル誘導体」と称し、グリコールウリル及びグリコールウリル誘導体を包括して「グリコールウリル系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するグリコールウリルの塩、すなわち、グリコールウリル誘導体の塩とは、グリコールウリル誘導体が、グリコールウリルの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいグリコールウリル及びその塩」とは、換言すると、グリコールウリル系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有するピラゾールを「ピラゾール誘導体」と称し、ピラゾール及びピラゾール誘導体を包括して「ピラゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有するピラゾールの塩、すなわち、ピラゾール誘導体の塩とは、ピラゾール誘導体が、ピラゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよいピラゾール及びその塩」とは、換言すると、ピラゾール系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する1,2,3−トリアゾールを「1,2,3−トリアゾール誘導体」と称し、1,2,3−トリアゾール及び1,2,3−トリアゾール誘導体を包括して「1,2,3−トリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,3−トリアゾールの塩、すなわち、1,2,3−トリアゾール誘導体の塩とは、1,2,3−トリアゾール誘導体が、1,2,3−トリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,3−トリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,3−トリアゾール系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する1,2,4−トリアゾールを「1,2,4−トリアゾール誘導体」と称し、1,2,4−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾール誘導体を包括して「1,2,4−トリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,4−トリアゾールの塩、すなわち、1,2,4−トリアゾール誘導体の塩とは、1,2,4−トリアゾール誘導体が、1,2,4−トリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,4−トリアゾール系化合物及びその塩のことである。
本明細書においては、置換基を有する1,2,3−ベンゾトリアゾールを「1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体」と称し、1,2,3−ベンゾトリアゾール及び1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体を包括して「1,2,3−ベンゾトリアゾール系化合物」と称することがある。そして、置換基を有する1,2,3−ベンゾトリアゾールの塩、すなわち、1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体の塩とは、1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体が、1,2,3−ベンゾトリアゾールの場合と同様に、塩を形成したものである。「置換基を有していてもよい1,2,3−ベンゾトリアゾール及びその塩」とは、換言すると、1,2,3−ベンゾトリアゾール系化合物及びその塩のことである。
前記置換基は、特に限定されないが、好ましいものとしては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基(アリールアルキル基)、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
前記置換基におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
環状の前記アルキル基の炭素数は、3〜10であることが好ましい。
このような環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。また、このような環状のアルキル基としては、例えば、先に挙げた環状のアルキル基の1個又は2個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものも挙げられる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、上述の芯物質が有する置換基として挙げたアルキル基と同じものが挙げられる。これら置換基を有する環状のアルキル基の炭素数は、置換基の分も含めて10以下であることが好ましい。
直鎖状及び分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は1〜8であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
前記置換基におけるアルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
直鎖状及び分岐鎖状の前記アルケニル基の炭素数は、2〜10であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)等、直鎖状及び分岐鎖状の前記アルキル基において、炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)で置換された構造を有する基が挙げられる。
環状の前記アルケニル基の炭素数は、4〜10であることが好ましい。
このような環状のアルケニル基としては、例えば、シクロヘキセニル基等、環状の前記アルキル基において、炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)で置換された構造を有する基が挙げられる。
前記置換基におけるアリール基は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
前記アリール基の炭素数は、6〜15であることが好ましい。
このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられる。また、このようなアリール基としては、例えば、先に挙げたアリール基の1個又は2個以上の水素原子が、アリール基又はアルキル基で置換されたものも挙げられる。ここで、水素原子を置換するアリール基及びアルキル基としては、上述の芯物質が有する置換基として挙げたアリール基及びアルキル基と同じものが挙げられる。これら置換基を有するアリール基の炭素数は、置換基の分も含めて15以下であることが好ましい。
前記アリール基の炭素数は6〜10であることがより好ましい。
前記置換基におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)等、前記アルキル基の1個の水素原子が前記アリール基で置換された構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アラルキル基の炭素数は、7〜20であることが好ましく、7〜11であることがより好ましい。
前記置換基におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基等、前記アルキル基が酸素原子に結合した構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アルコキシ基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
前記置換基におけるアルケニルオキシ基としては、例えば、エテニルオキシ基(ビニルオキシ基)、2−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、シクロヘキセニルオキシ基等、前記アルケニル基が酸素原子に結合した構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アルケニルオキシ基の炭素数は、2〜10であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜6であることが特に好ましい。
前記置換基におけるアリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基等、前記アリール基が酸素原子に結合した構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アリールオキシ基の炭素数は、6〜15であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
前記置換基におけるアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基(フェニルメチルオキシ基)、フェネチルオキシ基(フェニルエチルオキシ基)等、前記アラルキル基が酸素原子に結合した構造を有する1価の基が挙げられる。
前記アラルキルオキシ基の炭素数は、7〜20であることが好ましく、7〜11であることがより好ましい。
1分子の芯物質が有する前記置換基は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、これら置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、2個以上の置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
通常、1分子の芯物質が有する前記置換基は、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましい。
芯物質の分子中における、前記置換基の位置は、特に限定されず、例えば、芯物質が鎖状構造である場合には、分子の末端部であってもよいし、末端部以外の部位であってもよい。
芯物質が2個以上の前記置換基を有する場合、これら置換基の結合位置は、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同じであってもよい。
上述の特に好ましい芯物質のうち、前記置換基を有するものとしては、ヒダントイン誘導体である5,5−ジメチルヒダントイン;5−ピラゾロン誘導体である3−メチル−5−ピラゾロン;ピラゾール誘導体である3,5−ジメチルピラゾール;1,2,4−トリアゾール誘導体である3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール;1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体である4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
5,5−ジメチルヒダントイン、3−メチル−5−ピラゾロン、3,5−ジメチルピラゾール、3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール及び3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールはいずれも、環員数が5の化合物である。4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール及び5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールはいずれも、環員数が9の化合物である。
なお、ここに示す化合物は、前記置換基を有する芯物質のごく一例に過ぎない。
芯物質は、常温で固体であるものが好ましい。そして、常温で固体である芯物質を用いる場合、後述する溶媒を併用することが好ましい。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
芯物質で特に好ましいものとしては、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、2−イミダゾリジノン、5−ピラゾロン、3−メチル−5−ピラゾロン、3−ピラゾロン、3,5−ジメチルピラゾール、フタルイミド、グリコールウリル、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−オン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
マイクロカプセルが内包する芯物質は、その用途によらず、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
マイクロカプセルが内包する芯物質の量(含有量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節できる。
マイクロカプセルが内包する芯物質の量(含有量)は、例えば、後述するマイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
[膜形成成分]
前記膜形成成分は、芯物質を包み込む外殻の膜を形成する成分であり、その構成材料は、ポリウレア、ポリウレタン又はポリアミドである。
これら膜形成成分は、例えば、界面重縮合法により作製できる。
本明細書において、「ポリウレア」とは、式「−NH−C(=O)−NH−」で表される結合(ウレア結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味する。ポリウレアは、例えば、原料化合物として、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上のアミノ基を有するアミン化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
本明細書において、「ポリウレタン」とは、式「−NH−C(=O)−O−」で表される結合(ウレタン結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味する。ポリウレタンは、例えば、原料化合物として、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基(−OH)を有するヒドロキシ化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
本明細書において、「ポリアミド」とは、式「−NH−C(=O)−」で表される結合(アミド結合)を有するオリゴマー又はポリマーを意味する。ポリアミドは、例えば、原料化合物として、2個以上のカルボキシ基(−C(=O)−OH)を有するカルボン酸、又はその1個又は2個以上のカルボキシ基がクロロカルボニル基(−C(=O)−Cl)で置換された構造を有するカルボン酸クロライドと、2個以上のアミノ基を有するアミン化合物と、を重縮合反応させることにより得られる。
ポリウレア及びポリウレタンを製造するための前記イソシアネート化合物は、アミノ基又は水酸基を有しないものが好ましく、アミノ基及び水酸基をともに有しないものがより好ましい。
前記イソシアネート化合物がその1分子中に有するイソシアネート基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
前記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート等の有機多価イソシアネート化合物;前記有機多価イソシアネート化合物の誘導体(ただし、イソシアネート基は置換されないものとする);前記有機多価イソシアネート化合物のトリメチロールプロパン付加体;前記有機多価イソシアネート化合物の誘導体(ただし、イソシアネート基は置換されないものとする)のトリメチロールプロパン付加体等が挙げられる。なお、本明細書において、トリメチロールプロパン付加体は、トリメチロールプロパンアダクト体と称することもある。
前記イソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ポリウレアを製造するための前記アミン化合物は、イソシアネート基又は水酸基を有しないものが好ましく、イソシアネート基及び水酸基をともに有しないものがより好ましい。
前記アミン化合物がその1分子中に有するアミノ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
前記アミン化合物としては、例えば、メラミン、尿素、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の有機多価アミン化合物等が挙げられる。
前記アミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ポリウレタンを製造するための前記ヒドロキシ化合物は、イソシアネート基又はアミノ基を有しないものが好ましく、イソシアネート基及びアミノ基をともに有しないものがより好ましい。
前記ヒドロキシ化合物が、その1分子中に有する水酸基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
前記ヒドロキシ化合物としては、例えば、有機多価ヒドロキシ化合物等が挙げられ、前記有機多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルキレングリコール等が挙げられる。
前記ヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ポリアミドを製造するための前記アミン化合物としては、例えば、カルボキシ基を有しない点以外は、上述のポリウレアを形成するための前記アミン化合物と同じものが挙げられる。
また、ポリアミドを製造するための前記アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタジアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族多価アミン化合物等も挙げられる。
ポリアミドを製造するための前記アミン化合物がその1分子中に有するアミノ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
ポリアミドを製造するための前記アミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ポリアミドを製造するための前記カルボン酸は、アミノ基を有しないものである。
前記カルボン酸がその1分子中に有するカルボキシ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2〜6個であることが好ましく、2〜5個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
前記カルボン酸としては、例えば、アジピン酸(ヘキサン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、テレフタル酸(ベンゼン−1,4−ジカルボン酸)、イソフタル酸(ベンゼン−1,3−ジカルボン酸)等の有機多価カルボン酸(脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸)等が挙げられる。
ポリアミドを製造するための前記カルボン酸クロライドは、前記カルボン酸の1個又は2個以上のカルボキシ基がクロロカルボニル基で置換された構造を有し、前記カルボン酸のすべてのカルボキシ基がクロロカルボニル基で置換された構造を有していてもよい。
ポリアミドを製造するための前記カルボン酸及びカルボン酸クロライドは、いずれも1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記重縮合は公知の方法で行えばよく、その条件は用いる原料化合物の種類等を考慮して、適宜選択すればよい。
例えば、界面重縮合を行う場合には、内包させる芯物質の共存下で、原料化合物を重縮合させることにより、芯物質を内包するマイクロカプセル(すなわちマイクロカプセル剤)が一気に得られる。以下、このように界面重縮合により、膜形成成分を形成するとともに前記マイクロカプセル剤を製造する方法について、説明する。
重縮合させる必須の2群の原料化合物の使用量は、重縮合の方法及び原料化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。ここで、「重縮合させる必須の2群の原料化合物」とは、膜形成成分である重縮合物の主骨格を構成するのに必須の成分を意味し、重縮合物がポリウレアである場合には前記イソシアネート化合物及びアミン化合物を意味し、重縮合物がポリウレタンである場合には前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物を意味し、重縮合物がポリアミドである場合には前記カルボン酸又はカルボン酸クロライド及びアミン化合物を意味する。
例えば、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物を用いて、界面重縮合によりポリウレアを作製する場合には、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物の使用量は、[アミン化合物中のアミノ基のモル数]:[イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]のモル比が、10:90〜60:40となる量であることが好ましく、20:80〜40:60となる量であることがより好ましい。アミン化合物中のアミノ基のモル数が、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数よりも少なくなる様に設定すると、より高品質なマイクロカプセル剤が得られる。
例えば、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物を用いて、界面重縮合によりポリウレタンを得る場合には、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物の使用量は、[ヒドロキシ化合物中の水酸基のモル数]:[イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数]のモル比が、10:90〜60:40となる量であることが好ましく、20:80〜40:60となる量であることがより好ましい。ヒドロキシ化合物中の水酸基のモル数が、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数よりも少なくなる様に設定すると、より高品質なマイクロカプセル剤が得られる。
ここまでは、前記重縮合物として、前記イソシアネート化合物、アミン化合物、ヒドロキシ化合物、カルボン酸及びカルボン酸クロライドのいずれかを重縮合して得られたものについて説明したが、前記重縮合物は、前記イソシアネート化合物、アミン化合物、ヒドロキシ化合物、カルボン酸及びカルボン酸クロライドのいずれにも該当しない他の化合物を重縮合して得られたものであってもよい。
前記他の化合物は、重縮合可能なものであれば、特に限定されない。
前記他の化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
例えば、ポリウレアが、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記イソシアネート化合物及びアミン化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
同様に、ポリウレタンが、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記イソシアネート化合物及びヒドロキシ化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
同様に、ポリアミドが、前記カルボン酸、カルボン酸クロライド及びアミン化合物以外に、前記他の化合物を重縮合して得られたものである場合、前記他の化合物の使用量は、前記カルボン酸、カルボン酸クロライド及びアミン化合物の総使用量(モル数)に対して、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
重縮合時の芯物質の使用量は、特に限定されないが、上述の重縮合させる必須の2群の原料化合物の総使用量100質量部に対して、2〜65質量部であることが好ましく、2〜61質量部であることがより好ましく、2〜57質量部であることが特に好ましい。芯物質の使用量をこのような範囲とすることで、安定性がより高いマイクロカプセル剤を製造できる。
ポリウレア、ポリウレタン又はポリアミドを膜形成成分とする前記マイクロカプセル剤においては、マイクロカプセル剤の構造が特に安定する点では、芯物質がアゾール又はその誘導体であることが好ましい。
このようなアゾール又はその誘導体としては、例えば、上述の置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール−3−オン及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,3−トリアゾール及びその塩、置換基を有していてもよい1,2,4−トリアゾール及びその塩、並びに置換基を有していてもよい1,2,3−ベンゾトリアゾール及びその塩等が挙げられる。
(溶媒)
前記マイクロカプセル剤は、芯物質を溶解させるために、溶媒を内包していてもよい。この場合、界面重縮合は、水と疎水性溶媒(可塑剤)との混合溶媒中で反応液を乳化させて行うことが好ましい。このように、内包させる芯物質と、疎水性溶媒と、の共存下で、原料化合物を重縮合させることにより、芯物質及び疎水性溶媒を内包するマイクロカプセル剤が一気に得られる。
また、反応液を乳化させる場合には、後述する乳化剤を併用してもよい。
前記疎水性溶媒としては、例えば、アルコール、アミド、ニトリル、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フェノール類(フェノール性水酸基を有する化合物)、硫化炭素、カルボン酸等が挙げられる。
前記疎水性溶媒は、SP値(溶解パラメータ)が12(cal/cm1/2以下であるものが好ましい。このような溶媒を用いることにより、界面重縮合時の反応液が、水の中に油性成分が分散している状態の水中油滴型(O/W型)の分散液となり易く、膜形成成分とマイクロカプセル剤の形成がより容易となる。
すなわち、SP値が12(cal/cm1/2以下である溶媒を内包するマイクロカプセル剤は、本発明におけるマイクロカプセル剤の中でも、特に好ましいものである。
前記疎水性溶媒のSP値の下限値は、特に限定されないが、6.5(cal/cm1/2であることが好ましい。このようなSP値の疎水性溶媒は入手が容易である。
SP値が12(cal/cm1/2以下の溶媒としては、例えば、
1−プロパノール(11.9)、2−プロパノール(11.5)、1−ブタノール(11.4)、シクロヘキサノール(11.4)、2−メトキシエタノール(10.8)、1−ヘキサノール(10.7)、2−メチル−2−プロパノール(10.6)、1−ブトキシ−2−プロパノール(10.4)、2−エチルヘキサノール(9.5)等のアルコール;
ジメチルホルムアミド(12.0)等のアミド;
アセトニトリル(11.8)等のニトリル;
アセトン(10.0)、メチルエチルケトン(9.3)、メチルプロピルケトン(8.7)、メチルイソプロピルケトン(8.5)等のケトン;
フタル酸ジn−ブチル(9.4)、酢酸エチル(9.1)、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(8.7)、酢酸n−ブチル(8.5)、酢酸イソプロピル(8.4)、酢酸イソブチル(8.3)等のエステル(カルボン酸エステル);
ジオキサン(9.9)、テトラヒドロフラン(9.1)、ジエチルエーテル(7.4)、イソプロピルエーテル(6.9)等の鎖状及び環状のエーテル;
ベンゼン(9.2)、トルエン(8.9)、キシレン(8.8)、エチルベンゼン(8.8)、シクロヘキサン(8.2)、n−オクタン(7.6)、n−ヘキサン(7.3)、n−ペンタン(7.0)等の芳香族及び脂肪族炭化水素;
塩化メチレン(9.7)、クロロホルム(9.3)、トリクロロエチレン(9.2)、四塩化炭素(8.6)等のハロゲン化炭化水素(ハロゲン化脂肪族炭化水素);
二硫化炭素(10.0)等の硫化炭素;
フェノール(11.5)等のフェノール類;
酢酸(10.1)等のカルボン酸
等が挙げられる。溶媒名と並記したカッコ内の数値はSP値((cal/cm1/2)を意味する。
前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記溶媒(水も溶媒として取り扱う)の使用量は、特に限定されないが、通常は、芯物質の使用量100質量部に対して、200〜5000質量部であることが好ましく、300〜4000質量部であることがより好ましく、400〜3500質量部であることが特に好ましい。
(乳化剤)
前記乳化剤は、公知のものでよく、特に限定されない。
好ましい乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カイゼン、アラビアゴム、ゼラチン、ロート油、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン硫酸塩、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
前記乳化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記乳化剤の使用量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜調節すればよい。
界面重縮合時の反応温度は、60〜110℃であることが好ましく、65〜100℃であることがより好ましく、70〜90℃であることが特に好ましい。
また、界面重縮合の時間は、0.5〜5時間であることが好ましく、1〜4時間であることがより好ましく、1.5〜3時間であることが特に好ましい。
重縮合後は、例えば、前記マイクロカプセル剤が水分散体として得られる。
得られたマイクロカプセル剤は、そのまま目的とする用途で用いてもよいし、必要に応じて公知の後処理、精製等を行ってから、目的とする用途で用いてもよく、分散媒を除去してから目的とする用途で用いてもよい。
前記マイクロカプセル剤は、例えば、ポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドからなる群から選択される1種又は2種以上を膜形成成分とする場合、本発明の効果を損なわない範囲内において、ポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドのいずれにも該当しない、他のオリゴマー及びポリマーのいずれか一方又は両方を、さらに膜形成成分としていてもよい。
前記他のオリゴマー及びポリマーは、いずれも1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記マイクロカプセル剤において、膜形成成分の総含有量に対する、前記他のオリゴマー及びポリマーの合計含有量の割合は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
すなわち、前記マイクロカプセル剤において、膜形成成分の総含有量に対する、ポリウレア、ポリウレタン及びポリアミドの合計含有量の割合は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
前記マイクロカプセル剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5〜20μmであることが好ましく、0.5〜16μmであることがより好ましく、0.5〜13μmであることがさらに好ましい。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、コールターカウンターを用いる方法で測定された、体積累積分布の中央値D50を意味する。
前記マイクロカプセル剤において、芯物質を包み込んでいる外殻の膜の厚さは、30〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがより好ましい。
前記マイクロカプセルは、その製造方法を反映して、芯物質及び溶媒以外に、他の成分を内包していてもよい。
膜形成成分を上述の重縮合法により作製した場合、前記マイクロカプセル剤含有組成物においては、重縮合させた必須の原料化合物の総使用量に対する、前記酸化防止剤の使用量の割合([酸化防止剤の使用量(質量部)]/[重縮合させた必須の原料化合物の総使用量(質量部)]×100)は、2〜65質量%であることが好ましく、4〜58質量%であることがより好ましく、6〜52質量%であることが特に好ましい。
前記マイクロカプセル剤含有組成物が含有するマイクロカプセル剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
<他の成分>
前記マイクロカプセル剤含有組成物は、マイクロカプセル剤及び酸化防止剤以外に、これらのいずれにも該当しない他の成分を含有していてもよい。例えば、膜形成成分を上述の重縮合法により作製した場合、前記他の成分としては、例えば、重縮合させるのに使用したものの未反応のまま残存した必須の原料化合物、マイクロカプセル剤を形成せずに残存した芯物質、重縮合時に使用した前記溶媒、乳化剤及びこれら(溶媒、乳化剤)以外の任意成分、並びに、重縮合時に未使用の成分等が挙げられる。
前記他の成分のうち、前記任意成分、重縮合時に未使用の成分等としては、例えば、塩(好ましくは無機塩)が挙げられる。
また、重縮合時に未使用の成分としては、例えば、樹脂等も挙げられる。前記樹脂としては、例えば、後述する基材における樹脂と同様のものが挙げられる。
前記マイクロカプセル剤含有組成物が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記マイクロカプセル剤含有組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、後述するマイクロカプセル剤含有層等のマイクロカプセル剤含有物における、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
前記マイクロカプセル剤含有組成物において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、マイクロカプセル剤の含有量の割合(後述するマイクロカプセル剤含有層等の、マイクロカプセル剤含有物のマイクロカプセル剤の含有量)は、35〜70質量%であることが好ましく、55〜60質量%であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、マイクロカプセル剤含有組成物とマイクロカプセル剤含有物において、マイクロカプセル剤を用いたことによる効果が、より顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、マイクロカプセル剤含有組成物とマイクロカプセル剤含有物をより容易に得られる。
前記マイクロカプセル剤含有組成物において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、酸化防止剤の含有量の割合(後述するマイクロカプセル剤含有層等の、マイクロカプセル剤含有物の酸化防止剤の含有量)は、1〜35質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2.5〜15質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、マイクロカプセル剤含有組成物と、これを用いて形成されたマイクロカプセル剤含有物の、経時による黄変の抑制効果がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、マイクロカプセル剤の安定性と、マイクロカプセル剤含有物の取り扱い性とが、より高くなる。
前記マイクロカプセル剤含有組成物において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、マイクロカプセル剤及び酸化防止剤の合計含有量の割合(後述するマイクロカプセル剤含有層等の、マイクロカプセル剤含有物の、マイクロカプセル剤及び酸化防止剤の合計含有量)は、例えば、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上及び90質量%以上のいずれかであってもよい。前記合計含有量の割合が前記下限値以上であることで、マイクロカプセル剤含有組成物とマイクロカプセル剤含有物において、マイクロカプセル剤と酸化防止剤を用いたことによる効果が、より顕著に得られる。前記合計含有量の割合の上限値は、特に限定されず、100質量%であってもよい。
換言すると、前記マイクロカプセル剤含有組成物において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記他の成分の含有量の割合(後述するマイクロカプセル剤含有層等の、マイクロカプセル剤含有物の、前記他の成分の含有量)は、例えば、70質量%未満、60質量%未満、50質量%未満、40質量%未満、30質量%未満、20質量%未満及び10質量%未満のいずれかであってもよい。前記含有量の割合の下限値は、特に限定されず、0質量%であってもよい。
前記マイクロカプセル剤含有組成物及びマイクロカプセル剤含有物においては、マイクロカプセル剤の外部に酸化防止剤が存在し、マイクロカプセル剤及び酸化防止剤が、別々に存在している。
芯物質として、アミノ基及びアミノ基塩形成基を有しないものを選択することにより、膜形成成分が重縮合物であっても、芯物質を内包する前記マイクロカプセル(マイクロカプセル剤)が容易に得られる。
アミノ基又はアミノ基塩形成基を有する芯物質を用いた場合には、マイクロカプセルの製造時において、重縮合物である膜形成成分を形成する際に、重縮合させる必須の原料化合物(例えば、前記イソシアネート化合物、カルボン酸、カルボン酸クロライド等)と、アミノ基又はアミノ基塩形成基を有する芯物質とが反応してしまい、マイクロカプセルの形成が阻害されると推測される。これに対して、アミノ基及びアミノ基塩形成基を有しない芯物質を用いることにより、このようなマイクロカプセルの形成阻害が抑制されるのではないかと推測される。
前記マイクロカプセル剤は、それ自体が経時と共に、内包された芯物質を徐々に外部に放出する徐放性を有する。したがって、例えば、芯物質としてホルムアルデヒド反応剤を用いた場合、前記マイクロカプセル剤は、ホルムアルデヒドの除去効果を長期に渡って持続可能であり、例えば、室内で滞留しがちなホルムアルデヒドを除去する除去剤の成分として好適である。
前記マイクロカプセル剤含有組成物は、例えば、前記マイクロカプセル剤、酸化防止剤、及び必要に応じて前記他の成分を配合することで得られ、さらに溶媒を配合して得られたものが好ましい。
また、マイクロカプセル剤含有組成物は、例えば、前記マイクロカプセル剤を調製して得られた液状物(分散物)に、酸化防止剤、並びに必要に応じて前記他の成分及び溶媒のいずれか一方又は両方を配合することでも得られる。
前記マイクロカプセル剤含有組成物を調製するときの混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
マイクロカプセル剤含有組成物を調製するときの温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、5〜90℃とすることができるが、これは一例である。
マイクロカプセル剤含有組成物を調製するときの時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、10分〜24時間とすることができるが、これは一例である。
<<積層体>>
本発明の一実施形態に係る積層体は、基材と、前記基材上に形成されたマイクロカプセル剤含有層と、を備え、前記マイクロカプセル剤含有層が、前記マイクロカプセル剤含有組成物を用いて形成されたものである。
前記積層体中のマイクロカプセル剤含有層は、前記マイクロカプセル剤含有組成物を用いて形成されているマイクロカプセル剤含有物であるため、経時による黄変が抑制される。
その効果は、例えば、マイクロカプセル剤含有層の経時の前後において、マイクロカプセル剤含有層のL表色系におけるbの値の変化が小さくなることで確認できる。
マイクロカプセル剤含有層のbの値は、例えば、下記方法で測定できる。
すなわち、基材上にマイクロカプセル剤含有組成物を塗工し、乾燥させることで、マイクロカプセル剤含有層を形成する。マイクロカプセル剤含有層の形成条件は、後ほど詳述するが、ここでは、例えば、乾燥温度を100〜110℃、乾燥時間を1〜3分とするができ、マイクロカプセル剤含有層の厚さを15〜30μm、マイクロカプセル剤含有層の形成量を10〜25g/mとすることができる。
形成したマイクロカプセル剤含有層のbの値は、例えば、積分球方式分光測色計等の公知の測定装置を用いて測定できる。
経時前(換言すると製造直後)のマイクロカプセル剤含有層のbの値をb とし、経時日数がt(日)のときのマイクロカプセル剤含有層のbの値をb tとした場合、経時日数がt(日)のときのbの値の変動値Δb tは、下記式(I)により算出できる。本発明に係る積層体においては、このΔb tの値が顕著に小さくなる。
(I): Δb =b −b (式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
このΔb tの値の変動抑制効果は、例えば、マイクロカプセル剤含有層として、前記酸化防止剤(前記有機リン系化合物)を含有しない点以外は、上記と同じものを比較対象とすることで、評価できる。
すなわち、酸化防止剤(前記有機リン系化合物)を含有しない比較用のマイクロカプセル剤含有層について、上記と同じ方法で、経時日数がt(日)のときのbの値の変動値Δb tRを算出する。そして、下記式(II)により、これらΔbの値の差Δ(Δbの値を算出する。このΔ(Δbの値が大きいほど、Δb tの値の変動抑制効果、すなわち、マイクロカプセル剤含有層の経時による黄変の抑制効果が高い。これは、前記酸化防止剤を含有するマイクロカプセル剤含有層(本発明におけるマイクロカプセル剤含有層)の場合には、Δb が小さくなるのに対し、前記酸化防止剤を含有しない比較用のマイクロカプセル剤含有層の場合には、Δb tRが大きくなるからである。
(II): Δ(Δb=[Δb tR]−[Δb ](式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
本発明に係る積層体においては、Δ(Δbが顕著に大きい。例えば、マイクロカプセル剤含有層を、温度40℃、相対湿度90%の条件下で経時させたとき、経時日数が30日(t=30(日))である場合、Δ(Δbに相当するΔ(Δb30は、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.45以上となる。この場合、Δ(Δb30の上限値は、特に限定されない。例えば、マイクロカプセル剤含有層の現実的な得られ易さに優れる点では、Δ(Δb30は、好ましくは1.2以下である。
上記の経時条件は、通常の経時条件よりも厳しく、通常の条件下で経時させた場合であれば、本発明に係る積層体におけるマイクロカプセル剤含有層の黄変は、さらに顕著に抑制される。すなわち、上記の経時条件は、マイクロカプセル剤含有層の黄変の抑制効果を、高い信頼性で確認するために、特に適している。ただし、マイクロカプセル剤含有層の黄変の抑制効果を確認するときの経時条件は、上記のものだけに限定されない。
前記積層体の形状は、目的に応じて任意に選択でき、例えば、シート状、プレート状(板状)、ブロック状等とすることができる。
以下、図面を参照しながら、前記積層体について、より詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
ここに示す積層体1は、基材11と、基材11上に形成されたマイクロカプセル剤含有層12と、を備えている。換言すると、積層体1は、基材11及びマイクロカプセル剤含有層12が、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
積層体1において、マイクロカプセル剤含有層12は、基材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11a上に設けられており、基材11の他方の面(前記第1面とは反対側の面、本明細書においては、「第2面」と称することがある)11b上に設けられていない。すなわち、積層体1は、基材11の両面のうち、第1面11a上のみに、マイクロカプセル剤含有層12を備えている。そして、基材11の第2面11bは、ここでは露出面となっている。
<基材>
基材11は、フィルム状又はシート状であることが好ましい。
基材11の構成材料としては、例えば、紙、樹脂等が挙げられる。
前記紙としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、レジンコート紙、合成紙等が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル系樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂等の合成樹脂;ポリブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンゴム、プロピレンゴム、シリコンゴム等の合成ゴム等が挙げられる。
基材11における前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルから誘導された構成単位を有する樹脂であり、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルから誘導された構成単位以外の、他の構成単位を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。
基材11は、ここでは1層であるものを示しているが、基材11は、1層(単層)のみであってもよいし、2層以上の複数層であってもよい。基材11が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
基材11の厚さは、特に限定されないが、40〜200μmであることが好ましい。
ここで、「基材11の厚さ」とは、基材11全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材11の厚さとは、基材11を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
基材11の坪量(表面積1mあたりの質量)は、特に限定されないが、20〜200g/mであることが好ましく、製造コスト及び機械的強度の観点では、70〜100g/mであることがより好ましい。
基材11は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
基材11としては、市販品を用いてもよい。
[マイクロカプセル剤含有層]
マイクロカプセル剤含有層12は、前記マイクロカプセル剤含有組成物を用いて形成されたものである。
マイクロカプセル剤含有層12は、前記マイクロカプセル剤、酸化防止剤、及び必要に応じて前記他の成分等、前記マイクロカプセル剤含有組成物に由来する成分を含有し、このマイクロカプセル剤、換言するとマイクロカプセル剤中の芯物質、に由来する作用と、酸化防止剤に由来する作用(すなわち、酸化防止作用)と、を有する。すなわち、積層体1は、マイクロカプセル剤含有層12を備えていることで、マイクロカプセル剤含有層12に特有の効果を発現する。
なお、ここでは、マイクロカプセル剤含有層12を明確な表面を有する層として示しているが、前記マイクロカプセル剤含有組成物の種類によっては、このような明確な表面を有していないこともある。
マイクロカプセル剤含有層12が含有する前記マイクロカプセル剤、酸化防止剤、前記他の成分等の各成分は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
マイクロカプセル剤含有層12の、マイクロカプセル剤、酸化防止剤、前記他の成分等の各成分の含有量は、前記マイクロカプセル剤含有組成物における、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記各成分の含有量の割合と同じとなる。より具体的には、先に説明したとおりである。
マイクロカプセル剤含有層12は、ここでは1層であるものを示しているが、マイクロカプセル剤含有層12は、1層(単層)のみであってもよいし、2層以上の複数層であってもよい。マイクロカプセル剤含有層12が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
マイクロカプセル剤含有層12の厚さは、特に限定されないが、10〜800μmであることが好ましい。
ここで、「マイクロカプセル剤含有層12の厚さ」とは、マイクロカプセル剤含有層12全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるマイクロカプセル剤含有層12の厚さとは、マイクロカプセル剤含有層12を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
なお、マイクロカプセル剤含有層12の表面の凹凸度が高い場合や、上述のようにマイクロカプセル剤含有層12が明確な表面を有していない場合など、マイクロカプセル剤含有層12の状態が一様でない場合には、マイクロカプセル剤含有層12の基材11の第1面11aから最も高い部位の高さを、マイクロカプセル剤含有層12の厚さとすればよい。
マイクロカプセル剤含有層12の基材11上での形成量は、特に限定されないが、10〜800g/mであることが好ましい。
本実施形態の積層体は、図1に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1に示すものにおいて、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、図1に示す積層体1は、基材11上にマイクロカプセル剤含有層12を備えているが、本実施形態の積層体は、これ以外の他の層を備えていてもよい。前記他の層は特に限定されず、その種類、厚さ及び配置位置等は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、積層体1は、マイクロカプセル剤含有層12の基材11側とは反対側に、前記他の層を備えていてもよい。この場合の前記他の層としては、例えば、接着剤層、印刷層、密着層、マイクロカプセル剤含有層12とは別途に設けられたマイクロカプセル剤含有層等が挙げられる。この別途に設けられたマイクロカプセル剤含有層は、マイクロカプセル剤含有層12と同様の形態とすることができ、マイクロカプセル剤含有層12と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
なお、本明細書において、「密着層」とは、隣接する2層の密着度を向上させるための層を意味する。また、「接着剤層」とは、隣接する2層を接着するための層を意味する。
積層体1は、基材11とマイクロカプセル剤含有層12との間に、前記他の層を備えていてもよい。この場合の前記他の層としては、例えば、上記と同じものが挙げられる。
積層体1は、基材11の第2面11b上に、何らかの層を備えていてもよい。前記第2面11b上の層としては、前記第1面11a上のいずれかの層と同様のものが挙げられる。
例えば、前記第2面11b上に、マイクロカプセル剤含有層を備える場合には、このマイクロカプセル剤含有層は、第1面11a上のマイクロカプセル剤含有層12と同様の形態とすることができ、第1面11a上のマイクロカプセル剤含有層12と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、図1に示す積層体1は、基材11の第2面11b上に、基材11とは別途にさらに他の基材を備えていてもよい。前記他の基材は、基材11と同様の形態とすることができ、基材11と同一であってもよいし、異なっていてもよい。そして、前記他の基材は、接着剤層を介して基材11上に積層されていてもよい。
積層体1が備える前記他の層は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよく、2層以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記積層体の用途は、目的(マイクロカプセル剤中の芯物質の種類)に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
例えば、ホルムアルデヒドの除去作用を有する前記積層体は、建物の内装材(例えば、壁紙等)や家具、又はこれら内装材や家具の構成材料等、ホルムアルデヒドの除去対象物に対して設けるのに好適である。
前記積層体は、例えば、その使用対象物に対して、接着剤を用いたり、取り付け用の治具を用いるなど、公知の方法で設けることができる。
<<積層体の製造方法>>
前記積層体は、前記基材上に前記マイクロカプセル剤含有層を積層することにより、製造できる。
マイクロカプセル剤含有層は、例えば、液状の前記マイクロカプセル剤含有組成物を、マイクロカプセル剤含有層の形成対象面に塗工し、乾燥させることで形成できる。ここで、「マイクロカプセル剤含有層の形成対象面」としては、例えば、図1に示す積層体1における、「基材11の第1面11a」や、後述する剥離フィルムの剥離処理面等が挙げられる。
マイクロカプセル剤含有組成物の塗工方法は特に限定されず、液状物を塗工できる方法であれば、いずれであってもよい。具体的な塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、グラビアオフセットコーター等の各種コーター;ワイヤーバーコーター等の装置、を使用する公知の方法が挙げられる。
マイクロカプセル剤含有組成物の乾燥は、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれであってもよい。乾燥温度は、例えば、15〜120℃であってもよい。乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。乾燥時間は、例えば、1分〜24時間であってもよい。
マイクロカプセル剤含有層は、例えば、基材上にマイクロカプセル剤含有組成物を塗工し、乾燥させることで、基材上に積層できる。
また、剥離フィルムの剥離処理面にマイクロカプセル剤含有組成物を塗工し、乾燥させることで、剥離フィルム上にマイクロカプセル剤含有層を形成し、このマイクロカプセル剤含有層の露出面(剥離フィルム側とは反対側の面)を、基材と貼り合わせることでも、マイクロカプセル剤含有層を基材上に積層できる。この場合、剥離フィルムは、積層体の使用時までの任意のタイミングで取り除けばよい。
前記他の層を備える積層体は、上述の製造方法において、前記他の層を適した箇所に積層する工程を、適したタイミングで追加して行うことで、製造できる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<積層体の製造>
(マイクロカプセル剤の製造)
セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(豊国製油社製、55.9g)と、濃度が75質量%であるイソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(IPDI−TMP付加体)の酢酸エチル溶液(三井化学社製「タケネートD−140N」、69.1g、固形分51.8g)と、の混合物に、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(和光純薬社製、27.9g)を添加し、溶解させ、溶液を得た。また、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬社製「セロゲン7A」)を7質量%の濃度で含有し、硫酸カリウム(大塚化学社製)を7質量%の濃度で含有する水溶液(838g)(すなわち、前記水溶液は、カルボキシメチルセルロース及び硫酸カリウムをともに58.7g含有する)を調製した。そして、上記で得られた溶液の全量を、この水溶液に添加し、撹拌翼を用いて、回転数1000rpm、時間15分の条件で撹拌した。次いで、得られたものを、乳化機(太平洋機工社製「マイルダー」)を用いて、回転数15000rpm、ゼネレーターG−M−Fの条件で乳化させた。次いで、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(東京化成工業社製、9.2g)を、上記で得られた乳化液に添加し、80℃で2時間攪拌することで、界面重縮合を行った。
以上により、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、IPDI−TMP付加体と、の重縮合物であるポリウレアを膜形成成分とし、芯物質として5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールと、溶媒としてセバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)及び酢酸エチルと、をそれぞれ内包したマイクロカプセル剤を、水分散体として得た。
重縮合時の5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(芯物質)の使用量は、重縮合させる必須の2群の原料化合物(IPDI−TMP付加体及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)の総使用量100質量部に対して、45.7質量部であった。
上記で得られたマイクロカプセル剤水分散体を、上質紙上にバーコーターを用いて塗工し、105℃で90秒乾燥させ、次いで、電子顕微鏡(日本電子社製)を用いて、500倍の倍率で塗工及び乾燥部位を観察し、目的とするマイクロカプセル剤が得られたことを確認した。コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)を用いて、得られたマイクロカプセル剤の平均粒子径を測定したところ、12.5μmであった。
(マイクロカプセル剤含有組成物の製造)
常温下で、上記で得られたマイクロカプセル剤水分散体(100g)に、酸化防止剤としてトリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト((CHCHCHCHCH(CHCH)CHO)P、城北化学社製「JP−308E」、1.0g)を添加し、撹拌翼を用いて、回転数500rpm、時間10分の条件で撹拌することにより、マイクロカプセル剤含有組成物を得た。
このマイクロカプセル剤含有組成物のトリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの含有量は、1.0質量%であった。
このマイクロカプセル剤含有組成物において、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、IPDI−TMP付加体と、の総使用量に対する、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの使用量の割合([トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの使用量(質量部)]/{[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの使用量(質量部)]+[IPDI−TMP付加体の使用量(質量部)]}×100)は、16.4質量%であった。
(積層体の製造)
ワイヤーバー(No.30)を用いて、紙製基材(三菱製紙社製「DFカラー」110kg、厚さ約130μm)の一方の面に、上記で得られたマイクロカプセル剤含有組成物を塗工し、105℃で2分乾燥させることにより、マイクロカプセル剤含有層(厚さ20μm)を形成した。マイクロカプセル剤含有層の前記基材上での形成量は、20.3g/mであった。なお、前記紙製基材の色は、白色である。
以上により、図1に示すものと同じ構成の積層体を製造した。
<積層体の評価(1)>
(マイクロカプセル剤含有層のbの測定、経時後のマイクロカプセル剤含有層のΔbの算出)
上記で得られた製造直後の積層体中のマイクロカプセル剤含有層について、積分球方式分光測色計(X−Rite社製「SP60シリーズ」)を用いて、b(すなわち、b 0−1)を測定した。
次いで、この積層体を、温度40℃、相対湿度90%の条件下で静置保存することにより、経時させた。この間、経時(静置保存開始後)1日目、4日目、7日目、14日目、21日目及び30日目の各段階で、積層体中のマイクロカプセル剤含有層について、上記のb 0−1の測定時と同じ方法で、それぞれb(すなわち、b 1−1、b 4−1、b 7−1、b 14−1、b 21−1及びb 30−1)を測定した。そして、下記式(I)−1により、各段階でのΔb(すなわち、Δb 1−1、Δb 4−1、Δb 7−1、Δb 14−1、Δb 21−1及びΔb 30−1)を算出した。結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図2に示す。なお、前記紙製基材の色は、この静置保存中においても、白色のまま色変化していなかった。
(I)−1: Δb t−1=b t−1−b 0−1(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
<積層体の製造及び評価(1)>
[実施例2]
マイクロカプセル剤含有組成物の製造時に、酸化防止剤として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(1.0g)に代えて、トリス(トリデシル)ホスファイト((C1327O)P、城北化学社製「JP−333E」、1.0g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造及び評価した。
としては、b 1−2、b 4−2、b 7−2、b 14−2、b 21−2及びb 30−2を測定し、下記式(I)−2により、Δbとして、Δb 1−2、Δb 4−2、Δb 7−2、Δb 14−2、Δb 21−2及びΔb 30−2を算出した。
結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図2に示す。
(I)−2: Δb t−2=b t−2−b 0−2(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
[実施例3]
マイクロカプセル剤含有組成物の製造時に、酸化防止剤として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(1.0g)に代えて、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト(城北化学社製「JPE−10」、1.0g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造及び評価した。
としては、b 1−3、b 4−3、b 7−3、b 14−3、b 21−3及びb 30−3を測定し、下記式(I)−3により、Δbとして、Δb 1−3、Δb 4−3、Δb 7−3、Δb 14−3、Δb 21−3及びΔb 30−3を算出した。
結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図2に示す。
(I)−3: Δb t−3=b t−3−b 0−3(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
なお、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイトの構造式を以下に示す。
Figure 0006959856
[実施例4]
マイクロカプセル剤含有組成物の製造時に、酸化防止剤として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(1.0g)に代えて、モノブチルホスフェート及びジブチルホスフェートの混合物(城北化学社製「JP−504(ブチルアシッドホスフェート)」、1.0g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造及び評価した。
としては、b 1−4、b 4−4、b 7−4、b 14−4、b 21−4及びb 30−4を測定し、下記式(I)−4により、Δbとして、Δb 1−4、Δb 4−4、Δb 7−4、Δb 14−4、Δb 21−4及びΔb 30−4を算出した。
結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図2に示す。
(I)−4: Δb t−4=b t−4−b 0−4(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
なお、モノブチルホスフェート及びジブチルホスフェートの構造式を以下に示す。
Figure 0006959856
[実施例5]
マイクロカプセル剤含有組成物の製造時に、酸化防止剤であるトリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの配合量を、1.0gに代えて0.5gとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造及び評価した。
このマイクロカプセル剤含有組成物のトリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの含有量は、0.5質量%であった。
このマイクロカプセル剤含有組成物において、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、IPDI−TMP付加体と、の総使用量に対する、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの使用量の割合([トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの使用量(質量部)]/{[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの使用量(質量部)]+[IPDI−TMP付加体の使用量(質量部)]}×100)は、8.2質量%であった。
としては、b 1−5、b 4−5、b 7−5、b 14−5、b 21−5及びb 30−5を測定し、下記式(I)−5により、Δbとして、Δb 1−5、Δb 4−5、Δb 7−5、Δb 14−5、Δb 21−5及びΔb 30−5を算出した。
結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図3に示す。図3には、実施例1及び比較例1での結果もあわせて示している。
(I)−5: Δb t−5=b t−5−b 0−5(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
[実施例6]
マイクロカプセル剤含有組成物の製造時に、酸化防止剤であるトリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの配合量を、1.0gに代えて3.0gとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造及び評価した。
このマイクロカプセル剤含有組成物のトリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの含有量は、2.9質量%であった。
このマイクロカプセル剤含有組成物において、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、IPDI−TMP付加体と、の総使用量に対する、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの使用量の割合([トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの使用量(質量部)]/{[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの使用量(質量部)]+[IPDI−TMP付加体の使用量(質量部)]}×100)は、49.2質量%であった。
としては、b 1−6、b 4−6、b 7−6、b 14−6、b 21−6及びb 30−6を測定し、下記式(I)−6により、Δbとして、Δb 1−6、Δb 4−6、Δb 7−6、Δb 14−6、Δb 21−6及びΔb 30−6を算出した。
結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図3に示す。
(I)−6: Δb t−6=b t−6−b 0−6(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
[比較例1]
マイクロカプセル剤含有組成物の製造時に、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(1.0g)を用いなかった、換言すると、実施例1の場合と同じ方法で得られたマイクロカプセル剤水分散体を、そのまま比較用のマイクロカプセル剤含有組成物として用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造及び評価した。
としては、b 1−1R、b 4−1R、b 7−1R、b 14−1R、b 21−1R及びb 30−1Rを測定し、下記式(I)−1Rにより、Δbとして、Δb 1−1R、Δb 4−1R、Δb 7−1R、Δb 14−1R、Δb 21−1R及びΔb 30−1Rを算出した。
結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図2に示す。
(I)−1R: Δb t−1R=b t−1R−b 0−1R(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
[比較例2]
マイクロカプセル剤含有組成物の製造時に、酸化防止剤として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(1.0g)に代えて、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン(豊通ケミプラス製社製「IRGANOX MD 1024」、1.0g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造及び評価した。
このマイクロカプセル剤含有組成物の、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンの含有量は、1.0質量%であった。
このマイクロカプセル剤含有組成物において、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、IPDI−TMP付加体と、の総使用量に対する、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンの使用量の割合([、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンの使用量(質量部)]/{[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの使用量(質量部)]+[IPDI−TMP付加体の使用量(質量部)]}×100)は、16.4質量%であった。
としては、b 1−2R、b 4−2R、b 7−2R、b 14−2R、b 21−2R及びb 30−2Rを測定し、下記式(I)−2Rにより、Δbとして、Δb 1−2R、Δb 4−2R、Δb 7−2R、Δb 14−2R、Δb 21−2R及びΔb 30−2Rを算出した。
結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図2に示す。
(I)−2R: Δb t−2R=b t−2R−b 0−2R(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
なお、IRGANOX MD 1024の構造式を以下に示す。IRGANOX MD 1024は、ヒンダードフェノール系化合物に分類される。
Figure 0006959856
[比較例3]
マイクロカプセル剤含有組成物の製造時に、酸化防止剤であるN,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンの配合量を、1.0gに代えて10gとした点以外は、比較例2の場合と同じ方法で、積層体を製造及び評価した。
このマイクロカプセル剤含有組成物の、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンの含有量は、9.1質量%であった。
このマイクロカプセル剤含有組成物において、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、IPDI−TMP付加体と、の総使用量に対する、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンの使用量の割合([、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンの使用量(質量部)]/{[1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの使用量(質量部)]+[IPDI−TMP付加体の使用量(質量部)]}×100)は、164質量%であった。
としては、b 1−3R、b 4−3R、b 7−3R、b 14−3R、b 21−3R及びb 30−3Rを測定し、下記式(I)−3Rにより、Δbとして、Δb 1−3R、Δb 4−3R、Δb 7−3R、Δb 14−3R、Δb 21−3R及びΔb 30−3Rを算出した。
結果を表1に示す。また、各段階でのΔbの推移を表すグラフを図4に示す。図4には、比較例1〜2での結果もあわせて示している。
(I)−3: RΔb t−3R=b t−3R−b 0−3R(式中、tはマイクロカプセル剤含有層の経時日数である。)
<積層体の評価(2)>
(経時後のマイクロカプセル剤含有層のΔ(Δb)値の算出)
上記の実施例1、比較例1の結果から、さらに、下記式(II)−1により、経時(静置保存開始後)30日目の段階でのΔ(Δb)として、Δ(Δb30−1を算出した。結果を表1に示す。
(II)−1: Δ(Δb30−1=[Δb 30−1R]−[Δb 30−1
同様に、上記の実施例2、比較例1の結果から、さらに、下記式(II)−2により、経時(静置保存開始後)30日目の段階でのΔ(Δb)として、Δ(Δb30−2を算出した。結果を表1に示す。
(II)−2: Δ(Δb30−2=[Δb 30−1R]−[Δb 30−2
同様に、上記の実施例3、比較例1の結果から、さらに、下記式(II)−3により、経時(静置保存開始後)30日目の段階でのΔ(Δb)として、Δ(Δb30−3を算出した。結果を表1に示す。
(II)−3: Δ(Δb30−3=[Δb 30−1R]−[Δb 30−3
同様に、上記の実施例4、比較例1の結果から、さらに、下記式(II)−4により、経時(静置保存開始後)30日目の段階でのΔ(Δb)として、Δ(Δb30−4を算出した。結果を表1に示す。
(II)−4: Δ(Δb30−4=[Δb 30−1R]−[Δb 30−4
同様に、上記の実施例5、比較例1の結果から、さらに、下記式(II)−5により、経時(静置保存開始後)30日目の段階でのΔ(Δb)として、Δ(Δb30−5を算出した。結果を表1に示す。
(II)−5: Δ(Δb30−5=[Δb 30−1R]−[Δb 30−5
同様に、上記の実施例6、比較例1の結果から、さらに、下記式(II)−6により、経時(静置保存開始後)30日目の段階でのΔ(Δb)として、Δ(Δb30−6を算出した。結果を表1に示す。
(II)−6: Δ(Δb30−6=[Δb 30−1R]−[Δb 30−6
同様に、上記の比較例2、比較例1の結果から、さらに、下記式(II)−2Rにより、経時(静置保存開始後)30日目の段階でのΔ(Δb)として、Δ(Δb30−2Rを算出した。結果を表1に示す。
(II)−2R: Δ(Δb30−2R=[Δb 30−1R]−[Δb 30−2R
同様に、上記の比較例3、比較例1の結果から、さらに、下記式(II)−3Rにより、経時(静置保存開始後)30日目の段階でのΔ(Δb)として、Δ(Δb30−3Rを算出した。結果を表1に示す。
(II)−3R: Δ(Δb30−3R=[Δb 30−1R]−[Δb 30−3R
Figure 0006959856
表1、図2及び図3ら明らかなように、酸化防止剤を用いていない比較例1においては、経時日数の増大とともに、Δbが顕著に大きくなっており、積層体中のマイクロカプセル剤含有層の黄変が明らかに抑制されていなかった。
これに対して、実施例1〜6においては、酸化防止剤としてホスファイト又はホスフェート、すなわち有機リン系化合物を用いており、比較例1と比較すると、経時の各段階で、Δbが明らかに小さかった。これら実施例において、経時30日目の段階でのΔ(Δb)は、0.50以上(0.50〜0.92)と、極めて大きかった。このように、これら実施例においては、積層体中のマイクロカプセル剤含有層の経時による黄変が顕著に抑制されていた。
実施例1、5及び6を比較すると、実施例6、実施例1、実施例5の順に、黄変の抑制効果が高かった。これは、マイクロカプセル剤含有組成物の酸化防止剤の含有量(質量%)又は、マイクロカプセル剤含有組成物における、膜形成成分の形成のために重縮合させた必須の原料化合物の総使用量に対する、酸化防止剤の使用量の割合、が多いほど、黄変の抑制効果が高いことを示していた。
一方、表1、図2及び図4ら明らかなように、比較例2〜3においては、酸化防止剤を用いているものの、この酸化防止剤がヒンダードフェノール系化合物であり、比較例1と比較すると、経時の各段階で、Δbは、僅かに小さいだけであった。比較例2〜3において、経時30日目の段階でのΔ(Δb)は、0.15以下(0.04〜0.15)と極めて小さかった。このように、比較例2〜3においては、積層体中のマイクロカプセル剤含有層の経時による黄変の抑制効果が低かった。
比較例2〜3を比較すると、酸化防止剤の含有量を大幅に増大させても、黄変の抑制効果にはほとんど変化がなく、誤差の範囲内といえる程度であった。これは、ヒンダードフェノール系化合物による黄変の抑制効果が低過ぎるためであった。
本発明は、壁紙をはじめとするホルムアルデヒドの除去材等、マイクロカプセル剤を用いる分野全般で利用可能である。
1・・・積層体、11・・・基材、11a・・・基材の第1面、11・・・基材の第2面、12・・・マイクロカプセル剤含有層

Claims (3)

  1. マイクロカプセル剤と、酸化防止剤と、を含有し、
    前記マイクロカプセル剤の膜形成成分が、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上のアミノ基を有するアミン化合物と、の重縮合物であるポリウレアであり、
    前記酸化防止剤が有機リン系化合物である、マイクロカプセル剤含有組成物。
  2. 前記有機リン系化合物が、脂肪族有機リン系化合物である、請求項1に記載のマイクロカプセル剤含有組成物。
  3. 基材と、前記基材上に形成されたマイクロカプセル剤含有層と、を備え、
    前記マイクロカプセル剤含有層が、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル剤含有組成物を用いて形成された、積層体。
JP2017251742A 2017-12-27 2017-12-27 マイクロカプセル剤含有組成物及び積層体 Active JP6959856B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017251742A JP6959856B2 (ja) 2017-12-27 2017-12-27 マイクロカプセル剤含有組成物及び積層体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017251742A JP6959856B2 (ja) 2017-12-27 2017-12-27 マイクロカプセル剤含有組成物及び積層体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019116571A JP2019116571A (ja) 2019-07-18
JP6959856B2 true JP6959856B2 (ja) 2021-11-05

Family

ID=67304044

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017251742A Active JP6959856B2 (ja) 2017-12-27 2017-12-27 マイクロカプセル剤含有組成物及び積層体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6959856B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3399021B2 (ja) * 1993-05-31 2003-04-21 王子製紙株式会社 マイクロカプセル及び該マイクロカプセルを使用した感熱記録体
JP2015153977A (ja) * 2014-02-18 2015-08-24 積水化学工業株式会社 太陽電池用シール材及び太陽電池用積層シール材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019116571A (ja) 2019-07-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6870937B2 (ja) マイクロカプセル及び液状組成物
JP6768741B2 (ja) 熱可塑性ポリマーのための難燃剤−安定化剤の組み合わせ
JP6956753B2 (ja) コア−複合シェルマイクロカプセル
DE60108271T2 (de) Mittel zur flammschutzausrüstung
CN101679582B (zh) 用于聚氨酯生产的水稳性催化剂
AU2013344557B2 (en) An Encapsulated Particle
EP2246380B1 (en) Fast curable epoxy compositions containing imidazole- and 1-(aminoalkyl) imidazole-isocyanate adducts
DE10241373A1 (de) Oberflächenmodifizierte Phosphinsäuresalze
JP2016527356A (ja) カプセル化された触媒
BR112012008277B1 (pt) método para colagem de substratos em formato de filme e filme multicamada
JP6959856B2 (ja) マイクロカプセル剤含有組成物及び積層体
EP3023471A1 (en) Laminate adhesive composition
CN101180378A (zh) 粘接剂及使用其的包装用层压体
US4388426A (en) Stabilization of epoxy systems in non-flammable solvents
JP6627176B2 (ja) マイクロカプセル及び液状組成物
TWI423995B (zh) A reaction catalyst for forming a isocyanurate link, and a method for producing the modified polyisocyanate mixture containing the isocyanurate link thereof
JP6717616B2 (ja) マイクロカプセル及び液状組成物
EP3757146A1 (en) Method for producing aqueous carbodiimide-containing liquid
JP7080772B2 (ja) マイクロカプセル剤の製造方法
JP6749197B2 (ja) 積層体及びその製造方法
JP2019171631A (ja) マイクロカプセル剤積層シート
US4457800A (en) Stabilization of epoxy systems in non-flammable solvents
JP6979905B2 (ja) 積層体及びその製造方法
JP7252030B2 (ja) 液状組成物
JP7068970B2 (ja) 積層体及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201013

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210705

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210713

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210909

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210928

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211008

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6959856

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250