以下に、実施の形態にかかる電動機を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる電動機50の断面図である。電動機50は、可動子1と固定子2とを有する。可動子1は、固定子2に向かい合わせて配置されている。固定子2は、界磁である。可動子1は、界磁との相互作用による推力を得るための電機子である。可動子1は、固定子2に対して直線方向に移動可能である。電動機50は、可動子1を直線動作させる直動電動機である。
固定子2は、可動子1の進行方向を長手方向とする構造体である。固定子2は、固定子鉄心と、固定子鉄心の表面に設けられた複数の永久磁石21および取付座22とを有する。固定子鉄心の図示は省略する。各永久磁石21は、固定子鉄心の表面の取付座22に貼り付けられている。実施の形態1では、固定子2は、4個の永久磁石21を有する。4個の永久磁石21は、固定子2の長手方向に並べられている。
可動子1は、可動子鉄心と、可動子鉄心に取り付けられた複数のコイル14とを有する。可動子鉄心は、可動子1の進行方向へ延ばされたコアバック11と、コアバック11から固定子2の方へ延ばされた複数のティース13とを有する。実施の形態1では、可動子1は、5個のティース13を有する。5個のティース13は、可動子1の進行方向に並べられている。各ティース13のうち界磁側の先端部は、ストレート状である。各コイル14は、ティース13に導線が集中的に巻回されることによって構成されている。コイル14が配置されるスロットは、可動子1の進行方向においてティース13と隣り合う部分である。互いに隣り合うティース13同士は、スロットを構成する。
可動子1には、3相交流電源から電圧が印加される。3相交流電源の図示は省略する。可動子1の磁極の数である磁数をP、可動子1のティース13の数をN、PおよびNの最大公約数をCとする。実施の形態1では、P=4、N=5、C=1である。実施の形態1では、N/C=P/C±1が成り立つ。また、Pは2の自然数倍の整数である。N/Cは、3の倍数以外の整数である。すなわち、Nは3の倍数以外の整数である。電動機50は、これらの条件を満足することによって、コギングトルクを低減させることができる。
実施の形態1では、可動子1の各ティース13に、便宜的にティース番号を割り当てる。各ティース13には、図1において左から右へ向かって、それぞれティース番号であるt1,t2,t3,t4,t5が割り当てられている。また、可動子1の各スロットに、便宜的にスロット番号を割り当てる。各スロットには、図1において左から右へ向かって、それぞれスロット番号であるs1-1,s2,s3,s4,s5,s1-2が割り当てられている。
スロットを構成するティース13同士における、ティース13の中心位置の間の長さを、ティースピッチと称する。ティースピッチは、複数のティース13が並べられている方向である第1の方向の長さである。第1の方向は、可動子1の進行方向でもある。実施の形態1では、複数のティース13の各ティースピッチに、便宜的にティースピッチ番号を割り当てる。各ティースピッチには、図1において左から右へ向かって、それぞれティースピッチ番号であるp1-1,p2,p3,p4,p5,p1-2が割り当てられている。
5個のティース13には、3相のコイル14が取り付けられている。t1のティース13には、-U相のコイル14が取り付けられている。t2のティース13には、-V相のコイル14が取り付けられている。t3のティース13には、+V相のコイル14と-W相のコイル14とが取り付けられている。t4のティース13には、+W相のコイル14が取り付けられている。t5のティース13には、+U相のコイル14が取り付けられている。「+」と「-」とは、コイル14の巻き方向を表す。なお、図1に示す、U-,V-,V+,W-,W+,U+は、それぞれ、-U相、-V相、+V相、-W相、+W相、+U相を表す。
t1,t2,t4,t5の各ティース13は、1相のコイル14のみが取り付けられたティース13である。t3のティース13は、2相のコイル14が取り付けられたティース13である。すなわち、可動子1の複数のティース13は、3相のうち1相のコイル14のみが取り付けられたティース13と、3相のうち複数の相のコイル14が取り付けられたティース13とを含む。基準位置Aは、t3のティース13の中心位置である。t3のティース13は、5個のティース13のうち第1の方向における中心のティース13である。図1には、固定子2の長手方向における固定子2の中心位置に基準位置Aが一致している状態を示している。固定子2の中心位置は、複数の永久磁石21のうち中心に位置する2個の永久磁石21の間の位置である。
5個のティース13に取り付けられた全てのコイル14の線径は同じである。すなわち、可動子1の全てのコイル14は、同一の径の導線により形成されている。これにより、互いの異なる径の導線によって相ごとのコイル14を形成する必要がある場合に比べて、可動子1の製造にかかる時間を短縮することができ、可動子1の生産性を向上させることができる。
ここで、実施の形態1にかかる電動機50の詳細を説明する前に、実施の形態1の比較例にかかる電動機の構成を説明する。図2は、実施の形態1の比較例にかかる電動機51の断面図である。電動機51の可動子1は、コイル14が配置されていない領域12を有する。
図3は、実施の形態1において各ティース13に取り付けられているコイル14の巻数の例を示す図である。図3に示す巻数の例は、比較例の場合と、後述する実施の形態1の場合とにおいて共通であるものとする。図3には、各ティース13における相ごとのコイル14の巻数と、各ティース13の合計巻数とを示す。図3に示す巻数は、複数のティース13全体の巻数を基に規格化された巻数とする。図3に示す合計巻数は、複数のティース13全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。すなわち、可動子1の全体における巻数に対する比によって、各ティース13の巻数と合計巻数とを表す。
t2,t4の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値である0.20よりも大きい。一方、t1,t3,t5の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値である0.20よりも小さい。
図4は、実施の形態1の比較例における各スロットについて、スロットの合計巻数、スロット面積および占積率の例を示す図である。スロット面積は、第1の方向と第2の方向とを含む断面におけるスロットの面積である。第2の方向は、可動子1と固定子2とが向かい合う方向である。第2の方向は、複数の永久磁石21が配置されている面に垂直な方向ともいえる。図1に示す断面と図2に示す断面とは、第1の方向と第2の方向とを含む断面である。なお、s1-1,s1-2の2個のスロットは、スロットの合計巻数、スロット面積、および占積率の計算において、1個のスロットとして扱う。s1は、s1-1のスロットとs1-2のスロットとを表す。p1は、p1-1とp1-2との和を表す。
図4に示すスロットの合計巻数は、複数のスロット全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。すなわち、スロットの合計巻数は、複数のスロット全体の巻数に対する比によって表される。図4に示すスロット面積は、複数のスロット全体のスロット面積を基に規格化されたスロット面積とする。すなわち、スロット面積は、複数のスロット全体のスロット面積に対する比によって表される。占積率は、第1の方向と第2の方向とを含む断面における、スロット面積に対するコイル14の断面積の比を表す。また、図4には、各スロットの隣に位置するティース13のティース番号と、各スロットに対応するティースピッチ番号とを示す。
s2,s5の各スロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.20よりも大きい。一方、s1,s3,s4の各スロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.20よりも小さい。以下、複数のスロットの各々における合計巻数の平均値よりも合計巻数が大きいスロットを第1のスロット、複数のスロットの各々における合計巻数の平均値よりも合計巻数が小さいスロットを第2のスロットと称する。実施の形態1では、s2,s5の各スロットは、第1のスロットである。s1,s3,s4の各スロットは、第2のスロットである。
比較例では、s1,s2,s3,s4,s5の各スロットのスロット面積がいずれも0.20である。すなわち、各スロットのスロット面積はいずれも同じである。また、p1,p2,p3,p4,p5の各ティースピッチは、いずれも、複数のティースピッチの平均値に等しい。図4において「等しい」とは、ティースピッチが、複数のティースピッチの平均値に等しいことを表す。
比較例の場合、各スロットのスロット面積はいずれも同じであるのに対し、合計巻数がスロットごとに異なる。第1のスロットと同じスロット面積が第2のスロットに確保される一方、第2のスロットの合計巻数が第1のスロットの合計巻数よりも小さいことから、第2のスロットには、コイル14が設けられない領域12が形成される。領域12は、第2のスロットであるs1,s3,s4の各スロットに設けられる。
このように、比較例の場合、各スロットの占積率には、ばらつきがある。上述するように全てのコイル14の線径を同じとする場合、占積率が最も大きいスロットに合わせて線径が決定される。このため、電動機51は、占積率が最も大きいスロット以外のスロットにおけるコイル14の抵抗は、占積率が最も大きいスロットにおけるコイル14の抵抗に比べて大きくなる。
次に、実施の形態1にかかる電動機50の詳細について説明する。実施の形態1では、スロット面積に対する合計巻数の割合が可動子1の複数のスロットにおいて一定となるように、各ティース13のティースピッチが調整されている。すなわち、複数のティース13により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。複数のスロットの各々における占積率が一定であるとは、複数のスロットの各々における占積率が完全に同一である場合に限られない。占積率が一定であるとは、後述するように、可動子1の構造に起因して占積率が変わる場合を加味してティースピッチが調整される場合を含むものとする。
図5は、実施の形態1における各スロットについて、スロットの合計巻数、スロット面積および占積率の例を示す図である。図5に示すスロットの合計巻数は、複数のスロット全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。スロット面積は、複数のスロット全体のスロット面積を基に規格化されたスロット面積とする。実施の形態1では、各スロットの合計巻数に応じて各ティース13のティースピッチが調整されることによって、スロットごとのスロット面積が調整されている。
図1において、位置「a」、位置「b」、位置「c」、位置「d」は、複数のティースピッチが互いに等しいと仮定した場合における各ティース13の中心位置を表す。位置「a」は、t1のティース13の当該仮定における中心位置を表す。位置「b」は、t2のティース13の当該仮定における中心位置を表す。位置「c」は、t4のティース13の当該仮定における中心位置を表す。位置「d」は、t5のティース13の当該仮定における中心位置を表す。
図1に示すように、t2のティース13の中心位置は、位置「b」に対し基準位置A側にある。このため、p3のティースピッチは、t2のティース13の中心位置が位置「b」である場合におけるp3のティースピッチよりも小さい。図5において「小」とは、ティースピッチが、複数のティースピッチの平均値よりも小さいことを表す。p3のティースピッチが「小」であることによって、s3におけるスロット面積は、複数のスロット面積の平均値よりも小さい。図5に示すように、s3におけるスロット面積は、スロット面積の平均値である0.20よりも小さい0.19に調整されている。
図1に示すように、t1のティース13の中心位置は、位置「a」に対し基準位置Aとは逆側にある。p2のティースピッチは、t1のティース13の中心位置が位置「a」である場合におけるp2のティースピッチよりも大きい。図5において「大」とは、ティースピッチが、複数のティースピッチの平均値よりも大きいことを表す。p2のティースピッチが「大」であることによって、s2におけるスロット面積は、複数のスロット面積の平均値である0.20よりも大きい0.22に調整されている。
p2,p3の各ティースピッチと同様に、p1,p4,p5の各ティースピッチも、スロットにおける合計巻数に応じて調整されている。このようにp1,p2,p3,p4,p5の各ティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
このように、実施の形態1では、第1のスロットを構成するティース13同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも大きい。また、第2のスロットを構成するティース13同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも小さい。これにより、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
複数のティース13に取り付けられた全てのコイル14の線径が同じであって、かつ、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定であることによって、複数のスロットの各々におけるコイル14の占積率が一定になる。図5に示すように、各スロットの占積率は、いずれも1.00である。すなわち、s1,s2,s3,s4,s5の各スロットの占積率は、互いに同じである。各スロットの占積率が互いに同じであることによって、電動機50は、複数のスロットにおける抵抗のばらつきを少なくさせ、複数のスロット全体の抵抗を小さくすることができる。
図6は、実施の形態1にかかる電動機50による抵抗の低減について説明するための図である。図6には、比較例にかかる電動機51の抵抗の値を表す棒グラフと、実施の形態1にかかる電動機50の抵抗の値を表す棒グラフとを示す。抵抗の値は、電動機51の抵抗の値を基準とする比によって表される。
実施の形態1では、合計巻数が平均値よりも少ないスロットではスロット面積が小さく、かつ、合計巻数が平均値よりも多いスロットではスロット面積が大きいことによって、各スロットの占積率が一定になる。電動機50は、このように各スロットの占積率が調整されることによって、比較例の場合よりも、複数のスロットにおける占積率の平均値を増加させることができる。電動機50は、比較例の場合よりも、コイル14の線径を拡大させることができ、抵抗を低減させることができる。
ここで、実施の形態1におけるスロットの合計巻数とティースピッチとの関係について説明する。複数のスロットの各々における合計巻数の平均値をNa、各スロットの合計巻数をNs、複数のティース13におけるティースピッチの平均値をLaとして、各スロットを構成するティース13同士のティースピッチであるLは、次の式(1)を満足する。
L=(Ns/Na)×La ・・・(1)
電動機50では、式(1)の関係を基に、スロットの合計巻数に応じてティース13のティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。これにより、スロットごとの占積率が均等になる。ただし、可動子1の構造に起因して、スロットごとの占積率が変わる場合がある。占積率は、例えば、複数の相のコイル14が取り付けられた混相部におけるインシュレータの厚さに応じて変わることがあり得る。実施の形態1では、このような占積率の変化量に相当する余裕を持たせて、ティース13のティースピッチが調整されても良い。
占積率の変化量を考慮して、第1のスロットを構成するティース13同士のティースピッチであるL1は、次の式(2)を満足するように調整されても良い。また、第2のスロットを構成するティース13同士のティースピッチであるL2は、次の式(3)を満足するように調整されても良い。なお、Ns1は、第1のスロットの合計巻数とする。Ns2は、第2のスロットの合計巻数とする。
La<L1≦(Ns1/Na)×1.2×La ・・・(2)
La>L2≧(Ns2/Na)×0.8×La ・・・(3)
式(2)および式(3)は、占積率の0.8倍から1.2倍の変化量を加味した場合の関係式を表す。実施の形態1では、式(1)を満足する場合のみならず、式(2)および式(3)のように占積率の変化量を加味した場合も、複数のスロットの全てにおいて占積率が一定である場合に含まれるものとする。これにより、可動子1の構造に起因して占積率が変わる場合であっても、抵抗を低減させるためのティースピッチの調整が可能となる。
なお、電動機50は、各ティース13に取り付けられたコイル14の巻数が図3に示すように設定されるものに限られない。電動機50は、複数のティース13のうちの1つ以上における巻数が、他のティース13における合計巻数とは異なるものであれば良い。この場合、電動機50は、各ティース13の巻数が図3に示す場合とは異なっていても、実施の形態1による効果を得ることができる。また、複数のティース13におけるティースピッチの「大」または「小」の設定は、図5に示すものに限られず、任意であるものとする。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、可動子1の進行方向における相の順序が図1に示す場合と同じであれば良い。図1に示す場合と相の順序が同じであれば、進行方向における端に位置する相はいずれの相であっても良い。
実施の形態1では、可動子1の構成を、P=4、N=5、C=1を満足する構成とした。可動子1は、P=4、N=5、C=1の構成を単位として、2個以上の単位を有しても良い。すなわち、Cが1より大きい自然数であっても良い。電動機50は、Cが1よりも大きい自然数である場合も、Cが1である場合と同様の効果を得ることができる。
複数のティース13の各々は、界磁側の先端部がストレート状であるものに限られない。ティース13の界磁側の先端部には、進行方向に向けられた突起、またはくぼみが形成されていても良い。電動機50は、ティース13に突起またはくぼみが形成されている場合も、ティース13がストレート状である場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態1では、複数の永久磁石21が固定子鉄心の表面にて取付座22に貼り付けられる構成について説明したが、電動機50は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる構成であっても良い。電動機50は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる場合も、複数の永久磁石21が固定子鉄心の表面に設けられる場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態1によると、電動機50は、複数のティース13のティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対するコイル14の合計巻数の割合が複数のスロットにおいて一定とされている。すなわち、複数のティース13により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。電動機50は、複数のスロットの各々における占積率が一定であることによって、各スロットにおけるコイル14の抵抗を低減できる。これにより、電動機50は、コイル14の発熱量を低減できるという効果を奏する。
実施の形態2.
図7は、実施の形態2にかかる電動機52の断面図である。実施の形態2では、可動子1の進行方向における相の順序が、実施の形態1とは異なる。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
電動機52の可動子1の構成は、コイル14の配置の態様が異なる以外は、実施の形態1の可動子1と同様である。電動機52の固定子2の構成は、実施の形態1の固定子2と同様である。実施の形態2では、実施の形態1と同様に、可動子1の各ティース13には、ティース番号であるt1,t2,t3,t4,t5が割り当てられている。可動子1の各スロットには、スロット番号であるs1-1,s2,s3,s4,s5,s1-2が割り当てられている。可動子1の各ティースピッチには、ティースピッチ番号であるp1-1,p2,p3,p4,p5,p1-2が割り当てられている。
t1のティース13には、+U相のコイル14が取り付けられている。t2のティース13には、+V相のコイル14と-U相のコイル14とが取り付けられている。t3のティース13には、-V相のコイル14が取り付けられている。t4のティース13には、+V相のコイル14と-W相のコイル14とが取り付けられている。t5のティース13には、+W相のコイル14が取り付けられている。
t1,t3,t5の各ティース13は、1相のコイル14のみが取り付けられたティース13である。t2,t4の各ティース13は、2相のコイル14が取り付けられたティース13である。すなわち、可動子1の複数のティース13は、3相のうち1相のコイル14のみが取り付けられたティース13と、3相のうち複数の相のコイル14が取り付けられたティース13とを含む。可動子1の全てのコイル14は、同一の径の導線により形成されている。
ここで、実施の形態2にかかる電動機52の詳細を説明する前に、実施の形態2の比較例にかかる電動機の構成を説明する。図8は、実施の形態2の比較例にかかる電動機53の断面図である。電動機53の可動子1は、コイル14が配置されていない領域12を有する。
図9は、実施の形態2において各ティース13に取り付けられているコイル14の巻数の例を示す図である。図9に示す巻数の例は、比較例の場合と、後述する実施の形態2の場合とにおいて共通であるものとする。図9には、各ティース13における相ごとのコイル14の巻数と、各ティース13のコイル14の合計巻数とを示す。図9に示す巻数は、複数のティース13全体の巻数を基に規格化された巻数とする。図9に示す合計巻数は、複数のティース13全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。すなわち、可動子1の全体における巻数に対する比によって、各ティース13の巻数と合計巻数とを表す。
t1,t3,t5の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値である0.20よりも大きい。一方、t2,t4の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値である0.20よりも小さい。
比較例にかかる電動機53では、実施の形態1の比較例と同様に、s1,s2,s3,s4,s5の各スロットのスロット面積はいずれも同じとする。また、電動機53では、実施の形態1の比較例と同様に、p1,p2,p3,p4,p5の各ティースピッチは、複数のティースピッチの平均値に等しい。電動機53では、各スロットのスロット面積はいずれも同じであるのに対し、合計巻数がスロットごとに異なることによって、各スロットの占積率にはばらつきがある。このため、電動機53では、コイル14の抵抗が大きくなる。
次に、実施の形態2にかかる電動機52の詳細について説明する。実施の形態2では、スロット面積に対する合計巻数の割合が可動子1の複数のスロットにおいて一定となるように、各ティース13のティースピッチが調整されている。
図10は、実施の形態2における各スロットについて、スロットの合計巻数、スロット面積および占積率の例を示す図である。図10に示すスロットの合計巻数は、複数のスロット全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。スロット面積は、複数のスロット全体のスロット面積を基に規格化されたスロット面積とする。実施の形態2では、各スロットの合計巻数に応じて各ティース13のティースピッチが調整されることによって、スロットごとのスロット面積が調整されている。
s1のスロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.20よりも大きい。一方、s2,s3,s4,s5の各スロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.20よりも小さい。実施の形態2では、s1のスロットは第1のスロット、s2,s3,s4,s5の各スロットは第2のスロットである。
図7において、位置「a」、位置「b」、位置「c」、位置「d」は、複数のティースピッチが互いに等しいと仮定した場合における各ティース13の中心位置を表す。位置「a」は、t1のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「b」は、t2のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「c」は、t4のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「d」は、t5のティース13の当該仮定における中心位置を示す。
図7に示すように、t2のティース13の中心位置は、位置「b」に対し基準位置A側にある。このため、p3のティースピッチは、t2のティース13の中心位置が位置「b」である場合におけるp3のティースピッチよりも小さい。p3のティースピッチが「小」であることによって、s3におけるスロット面積は、複数のスロット面積の平均値よりも小さい。図10に示すように、s3におけるスロット面積は、スロット面積の平均値である0.200よりも小さい0.194に調整されている。
図7に示すように、t1のティース13の中心位置は、位置「a」に対し基準位置A側にある。t5のティース13の中心位置は、位置「d」に対し基準位置A側にある。このため、p1のティースピッチは、t1のティース13の中心位置およびt5のティース13の中心位置がそれぞれ位置「a」、位置「d」である場合におけるp1のティースピッチよりも大きい。p1のティースピッチが「大」であることによって、s1におけるスロット面積は、複数のスロット面積の平均値よりも大きい。図10に示すように、s1におけるスロット面積は、スロット面積の平均値である0.200よりも大きい0.219に調整されている。
p1,p3の各ティースピッチと同様に、p2,p4,p5の各ティースピッチも、スロットにおける合計巻数に応じて調整されている。このようにp1,p2,p3,p4,p5の各ティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
このように、実施の形態2では、第1のスロットを構成するティース13同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも大きい。また、第2のスロットを構成するティース13同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも小さい。これにより、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
複数のティース13に取り付けられた全てのコイル14の線径が同じであって、かつ、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定であることによって、複数のスロットの各々におけるコイル14の占積率が一定になる。図10に示すように、各スロットの占積率は、いずれも1.00である。すなわち、s1,s2,s3,s4,s5の各スロットの占積率は、互いに同じである。各スロットの占積率が互いに同じであることによって、電動機52は、複数のスロットにおける抵抗のばらつきを少なくさせ、複数のスロット全体の抵抗を小さくすることができる。
図11は、実施の形態2にかかる電動機52による抵抗の低減について説明するための図である。図11には、比較例にかかる電動機53の抵抗の値を表す棒グラフと、実施の形態2にかかる電動機52の抵抗の値を表す棒グラフとを示す。抵抗の値は、電動機53の抵抗の値を基準とする比によって表される。
実施の形態2では、合計巻数が平均値よりも少ないスロットではスロット面積が小さく、かつ、合計巻数が平均値よりも多いスロットではスロット面積が大きいことによって、各スロットの占積率が一定になる。電動機52は、このように各スロットの占積率が調整されることによって、比較例の場合よりも、複数のスロットにおける占積率の平均値を増加させることができる。電動機52は、比較例の場合よりも、コイル14の線径を拡大させることができ、抵抗を低減させることができる。
電動機52は、実施の形態1にかかる電動機50と同様に、上記の式(1)を満足する。これにより、スロットごとの占積率が均等になる。または、電動機52は、実施の形態1にかかる電動機50と同様に、上記の式(2)および式(3)を満足する。これにより、可動子1の構造に起因して占積率が変わる場合であっても、抵抗を低減させるためのティースピッチの調整が可能となる。
なお、電動機52は、各ティース13に取り付けられたコイル14の巻数が図9に示すように設定されるものに限られない。電動機52は、複数のティース13のうちの1つ以上における巻数が、他のティース13における合計巻数とは異なるものであれば良い。この場合、電動機52は、各ティース13の巻数が図9に示す場合とは異なっていても、実施の形態2による効果を得ることができる。また、複数のティース13におけるティースピッチの「大」または「小」の設定は、図10に示すものに限られず、任意であるものとする。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、可動子1の進行方向における相の順序が図7に示す場合と同じであれば良い。図7に示す場合と相の順序が同じであれば、進行方向における端に位置する相はいずれの相であっても良い。
可動子1は、P=4、N=5、C=1の構成を単位として、2個以上の単位を有しても良い。すなわち、Cが1より大きい自然数であっても良い。電動機52は、Cが1よりも大きい自然数である場合も、Cが1である場合と同様の効果を得ることができる。
ティース13の界磁側の先端部には、進行方向に向けられた突起、またはくぼみが形成されても良い。電動機52は、ティース13に突起またはくぼみが形成されている場合も、ティース13がストレート状である場合と同様の効果を得ることができる。
電動機52は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる構成であっても良い。電動機52は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる場合も、複数の永久磁石21が固定子鉄心の表面に設けられる場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態2によると、電動機52は、複数のティース13のティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対するコイル14の合計巻数の割合が複数のスロットにおいて一定とされている。すなわち、複数のティース13により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。電動機52は、複数のスロットの各々における占積率が一定であることによって、各スロットにおけるコイル14の抵抗を低減できる。これにより、電動機52は、コイル14の発熱量を低減できるという効果を奏する。
実施の形態3.
図12は、実施の形態3にかかる電動機54の断面図である。実施の形態3では、可動子1の進行方向における相の順序が、実施の形態1または2とは異なる。実施の形態3では、上記の実施の形態1または2と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1または2とは異なる構成について主に説明する。
電動機54の可動子1の構成は、コイル14の配置の態様が異なる以外は、実施の形態1の可動子1と同様である。電動機54の固定子2の構成は、実施の形態1の固定子2と同様である。実施の形態3では、実施の形態1と同様に、可動子1の各ティース13には、ティース番号であるt1,t2,t3,t4,t5が割り当てられている。可動子1の各スロットには、スロット番号であるs1-1,s2,s3,s4,s5,s1-2が割り当てられている。可動子1の各ティースピッチには、ティースピッチ番号であるp1-1,p2,p3,p4,p5,p1-2が割り当てられている。
t1のティース13には、+U相のコイル14と-W相のコイル14とが取り付けられている。t2のティース13には、+V相のコイル14と-U相のコイル14とが取り付けられている。t3のティース13には、-V相のコイル14が取り付けられている。t4のティース13には、+V相のコイル14と-W相のコイル14とが取り付けられている。t5のティース13には、+W相のコイル14と-U相のコイル14とが取り付けられている。
t3のティース13は、1相のコイル14のみが取り付けられたティース13である。t1,t2,t4,t5の各ティース13は、2相のコイル14が取り付けられたティース13である。すなわち、可動子1の複数のティース13は、3相のうち1相のコイル14のみが取り付けられたティース13と、3相のうち複数の相のコイル14が取り付けられたティース13とを含む。可動子1の全てのコイル14は、同一の径の導線により形成されている。
ここで、実施の形態3にかかる電動機54の詳細を説明する前に、実施の形態3の比較例にかかる電動機の構成を説明する。図13は、実施の形態3の比較例にかかる電動機55の断面図である。電動機55の可動子1は、コイル14が配置されていない領域12を有する。
図14は、実施の形態3において各ティース13に取り付けられているコイル14の巻数の例を示す図である。図14に示す巻数の例は、比較例の場合と、後述する実施の形態3の場合とにおいて共通であるものとする。図14には、各ティース13における相ごとのコイル14の巻数と、各ティース13のコイル14の合計巻数とを示す。図14に示す巻数は、複数のティース13全体の巻数を基に規格化された巻数とする。図14に示す合計巻数は、複数のティース13全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。すなわち、可動子1の全体における巻数に対する比によって、各ティース13の巻数と合計巻数とを表す。
t1,t3,t5の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値である0.20よりも大きい。一方、t2,t4の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値である0.20よりも小さい。
比較例にかかる電動機55では、実施の形態1の比較例と同様に、s1,s2,s3,s4,s5の各スロットのスロット面積はいずれも同じとする。また、電動機55では、実施の形態1の比較例と同様に、p1,p2,p3,p4,p5の各ティースピッチは、複数のティースピッチの平均値に等しい。電動機55では、各スロットのスロット面積はいずれも同じであるのに対し、合計巻数がスロットごとに異なることによって、各スロットの占積率にはばらつきがある。このため、電動機55では、コイル14の抵抗が大きくなる。
次に、実施の形態3にかかる電動機54の詳細について説明する。実施の形態3では、スロット面積に対する合計巻数の割合が可動子1の複数のスロットにおいて一定となるように、各ティース13のティースピッチが調整されている。
図15は、実施の形態3における各スロットについて、スロットの合計巻数、スロット面積および占積率の例を示す図である。図15に示すスロットの合計巻数は、複数のスロット全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。スロット面積は、複数のスロット全体のスロット面積を基に規格化されたスロット面積とする。実施の形態3では、各スロットの合計巻数に応じて各ティース13のティースピッチが調整されることによって、スロットごとのスロット面積が調整されている。
s3,s4の各スロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.20に等しい。s1のスロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.20よりも大きい。s2,s5の各スロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.20よりも小さい。実施の形態3では、s1のスロットは第1のスロット、s2,s5の各スロットは第2のスロットである。
図12において、位置「a」は、複数のティースピッチが互いに等しいと仮定した場合におけるt1のティース13の中心位置を表す。位置「d」は、t5のティース13の当該仮定における中心位置を示す。
図12に示すように、t1のティース13の中心位置は、位置「a」に対し基準位置A側にある。t5のティース13の中心位置は、位置「d」に対し基準位置A側にある。このため、p1のティースピッチは、t1のティース13の中心位置およびt5のティース13の中心位置がそれぞれ位置「a」、位置「d」である場合におけるp1のティースピッチよりも大きい。p1のティースピッチが「大」であることによって、s1におけるスロット面積は、複数のスロット面積の平均値よりも大きい。図15に示すように、s1におけるスロット面積は、スロット面積の平均値である0.200よりも大きい0.206に調整されている。
p1の各ティースピッチと同様に、p2,p5の各ティースピッチも、スロットにおける合計巻数に応じて調整されている。s3,s4の各スロットの合計巻数は、合計巻数の平均値に等しい。p3,p4の各ティースピッチは、複数のティースピッチの平均値に等しい。s3,s4の各スロット面積は、スロット面積の平均値に等しい。p1,p2,p5の各ティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
このように、実施の形態3では、第1のスロットを構成するティース13同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも大きい。また、第2のスロットを構成するティース13同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも小さい。これにより、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
複数のティース13に取り付けられた全てのコイル14の線径が同じであって、かつ、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定であることによって、複数のスロットの各々におけるコイル14の占積率が一定になる。図15に示すように、各スロットの占積率は、いずれも1.00である。すなわち、s1,s2,s3,s4,s5の各スロットの占積率は、互いに同じである。各スロットの占積率が互いに同じであることによって、電動機54は、複数のスロットにおける抵抗のばらつきを少なくさせ、複数のスロット全体の抵抗を小さくすることができる。
図16は、実施の形態3にかかる電動機54による抵抗の低減について説明するための図である。図16には、比較例にかかる電動機55の抵抗の値を表す棒グラフと、実施の形態3にかかる電動機54の抵抗の値を表す棒グラフとを示す。抵抗の値は、電動機55の抵抗の値を基準とする比によって表される。
実施の形態3では、合計巻数が平均値よりも少ないスロットではスロット面積が小さく、かつ、合計巻数が平均値よりも多いスロットではスロット面積が大きいことによって、各スロットの占積率が一定になる。電動機54は、このように各スロットの占積率が調整されることによって、比較例の場合よりも、複数のスロットにおける占積率の平均値を増加させることができる。電動機54は、比較例の場合よりも、コイル14の線径を拡大させることができ、抵抗を低減させることができる。
電動機54は、実施の形態1にかかる電動機50と同様に、上記の式(1)を満足する。これにより、スロットごとの占積率が均等になる。または、電動機54は、実施の形態1にかかる電動機50と同様に、上記の式(2)および式(3)を満足する。これにより、可動子1の構造に起因して占積率が変わる場合であっても、抵抗を低減させるためのティースピッチの調整が可能となる。
なお、電動機54は、各ティース13に取り付けられたコイル14の巻数が図14に示すように設定されるものに限られない。電動機54は、複数のティース13のうちの1つ以上における巻数が、他のティース13における合計巻数とは異なるものであれば良い。この場合、電動機54は、各ティース13の巻数が図14に示す場合とは異なっていても、実施の形態3による効果を得ることができる。また、複数のティース13におけるティースピッチの「大」、「小」または「等しい」の設定は、図15に示すものに限られず、任意であるものとする。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、可動子1の進行方向における相の順序が図12に示す場合と同じであれば良い。図12に示す場合と相の順序が同じであれば、進行方向における端に位置する相はいずれの相であっても良い。
可動子1は、P=4、N=5、C=1の構成を単位として、2個以上の単位を有しても良い。すなわち、Cが1より大きい自然数であっても良い。電動機54は、Cが1よりも大きい自然数である場合も、Cが1である場合と同様の効果を得ることができる。
ティース13の界磁側の先端部には、進行方向に向けられた突起、またはくぼみが形成されても良い。電動機54は、ティース13に突起またはくぼみが形成されている場合も、ティース13がストレート状である場合と同様の効果を得ることができる。
電動機54は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる構成であっても良い。電動機54は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる場合も、複数の永久磁石21が固定子鉄心の表面に設けられる場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態3によると、電動機54は、複数のティース13のティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対するコイル14の合計巻数の割合が複数のスロットにおいて一定とされている。すなわち、複数のティース13により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。電動機54は、複数のスロットの各々における占積率が一定であることによって、各スロットにおけるコイル14の抵抗を低減できる。これにより、電動機54は、コイル14の発熱量を低減できるという効果を奏する。
実施の形態4.
図17は、実施の形態4にかかる電動機56の断面図である。実施の形態4では、可動子1におけるティース13の数が、実施の形態1から3とは異なる。また、実施の形態4では、固定子2における永久磁石21の数が、実施の形態1から3とは異なる。実施の形態4では、上記の実施の形態1から3と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から3とは異なる構成について主に説明する。
実施の形態4では、可動子1は、4個のティース13を有する。固定子2は、3個の永久磁石21を有する。実施の形態4では、P=3、N=4、C=1である。実施の形態4では、N/C=P/C±1が成り立つ。また、N/Cは、3の倍数以外の整数である。すなわち、Nは3の倍数以外の整数である。電動機56は、これらの条件を満足することによって、コギングトルクを低減させることができる。
実施の形態4では、可動子1の各ティース13に、ティース番号であるt1,t2,t3,t4が割り当てられている。可動子1の各スロットには、スロット番号であるs1-1,s2,s3,s4,s1-2が割り当てられている。可動子1の各ティースピッチには、ティースピッチ番号であるp1-1,p2,p3,p4,p1-2が割り当てられている。
t1のティース13には、+U相のコイル14が取り付けられている。t2のティース13には、+V相のコイル14と-U相のコイル14とが取り付けられている。t3のティース13には、+W相のコイル14と-V相のコイル14とが取り付けられている。t4のティース13には、-W相のコイル14が取り付けられている。
t1,t4の各ティース13は、1相のコイル14のみが取り付けられたティース13である。t2,t3の各ティース13は、2相のコイル14が取り付けられたティース13である。すなわち、可動子1の複数のティース13は、3相のうち1相のコイル14のみが取り付けられたティース13と、3相のうち複数の相のコイル14が取り付けられたティース13とを含む。可動子1の全てのコイル14は、同一の径の導線により形成されている。
ここで、実施の形態4にかかる電動機56の詳細を説明する前に、実施の形態4の比較例にかかる電動機の構成を説明する。図18は、実施の形態4の比較例にかかる電動機57の断面図である。電動機57の可動子1は、コイル14が配置されていない領域12を有する。
図19は、実施の形態4において各ティース13に取り付けられているコイル14の巻数の例を示す図である。図19に示す巻数の例は、比較例の場合と、後述する実施の形態4の場合とにおいて共通であるものとする。図19には、各ティース13における相ごとのコイル14の巻数と、各ティース13のコイル14の合計巻数とを示す。図19に示す巻数は、複数のティース13全体の巻数を基に規格化された巻数とする。図19に示す合計巻数は、複数のティース13全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。すなわち、可動子1の全体における巻数に対する比によって、各ティース13の巻数と合計巻数とを表す。
t1,t4の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値である0.25よりも大きい。一方、t2,t3の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値である0.25よりも小さい。
比較例にかかる電動機57では、実施の形態1の比較例と同様に、s1,s2,s3,s4の各スロットのスロット面積はいずれも同じとする。また、電動機57では、実施の形態1の比較例と同様に、p1,p2,p3,p4の各ティースピッチは、複数のティースピッチの平均値に等しい。電動機57では、各スロットのスロット面積はいずれも同じであるのに対し、合計巻数がスロットごとに異なることによって、各スロットの占積率にはばらつきがある。このため、電動機57では、コイル14の抵抗が大きくなる。
次に、実施の形態4にかかる電動機56の詳細について説明する。実施の形態4では、スロット面積に対する合計巻数の割合が可動子1の複数のスロットにおいて一定となるように、各ティース13のティースピッチが調整されている。
図20は、実施の形態4における各スロットについて、スロットの合計巻数、スロット面積および占積率の例を示す図である。図20に示すスロットの合計巻数は、複数のスロット全体の巻数を基に規格化された合計巻数とする。スロット面積は、複数のスロット全体のスロット面積を基に規格化されたスロット面積とする。実施の形態4では、各スロットの合計巻数に応じて各ティース13のティースピッチが調整されることによって、スロットごとのスロット面積が調整されている。
s2,s4の各スロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.25に等しい。s1のスロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.25よりも大きい。s3のスロットにおける合計巻数は、合計巻数の平均値である0.25よりも小さい。実施の形態4では、s1のスロットは第1のスロット、s3のスロットは第2のスロットである。
図17において、位置「a」、位置「b」、位置「c」、位置「d」は、複数のティースピッチが互いに等しいと仮定した場合における各ティース13の中心位置を表す。位置「a」は、t1のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「b」は、t2のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「c」は、t3のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「d」は、t4のティース13の当該仮定における中心位置を示す。
図17に示すように、t1のティース13の中心位置は、位置「a」に対し基準位置A側にある。t4のティース13の中心位置は、位置「d」に対し基準位置A側にある。このため、p1のティースピッチは、t1のティース13の中心位置およびt4のティース13の中心位置がそれぞれ位置「a」、位置「d」である場合におけるp1のティースピッチよりも大きい。p1のティースピッチが「大」であることによって、s1におけるスロット面積は、複数のスロット面積の平均値よりも大きい。図20に示すように、s1におけるスロット面積は、スロット面積の平均値である0.25よりも大きい0.27に調整されている。
図17に示すように、t2のティース13の中心位置は、位置「b」に対し基準位置A側にある。t3のティース13の中心位置は、位置「c」に対し基準位置A側にある。このため、p3のティースピッチは、t2のティース13の中心位置およびt3のティース13の中心位置がそれぞれ位置「b」、位置「c」である場合におけるp3のティースピッチよりも小さい。p3のティースピッチが「小」であることによって、s3におけるスロット面積は、複数のスロット面積の平均値よりも小さい。図20に示すように、s3におけるスロット面積は、スロット面積の平均値である0.25よりも小さい0.23に調整されている。
s2,s4の各スロットの合計巻数は、合計巻数の平均値に等しい。p2,p4の各ティースピッチは、複数のティースピッチの平均値に等しい。s2,s4の各スロット面積は、スロット面積の平均値に等しい。p1,p3の各ティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
このように、実施の形態4では、第1のスロットを構成するティース13同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも大きい。また、第2のスロットを構成するティース13同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも小さい。これにより、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
複数のティース13に取り付けられた全てのコイル14の線径が同じであって、かつ、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定であることによって、複数のスロットの各々におけるコイル14の占積率が一定になる。図20に示すように、各スロットの占積率は、いずれも1.00である。すなわち、s1,s2,s3,s4の各スロットの占積率は、互いに同じである。各スロットの占積率が互いに同じであることによって、電動機56は、複数のスロットにおける抵抗のばらつきを少なくさせ、複数のスロット全体の抵抗を小さくすることができる。
図21は、実施の形態4にかかる電動機56による抵抗の低減について説明するための図である。図21には、比較例にかかる電動機57の抵抗の値を表す棒グラフと、実施の形態4にかかる電動機56の抵抗の値を表す棒グラフとを示す。抵抗の値は、電動機57の抵抗の値を基準とする比によって表される。
実施の形態4では、合計巻数が平均値よりも少ないスロットではスロット面積が小さく、かつ、合計巻数が平均値よりも多いスロットではスロット面積が大きいことによって、各スロットの占積率が一定になる。電動機56は、このように各スロットの占積率が調整されることによって、比較例の場合よりも、複数のスロットにおける占積率の平均値を増加させることができる。電動機56は、比較例の場合よりも、コイル14の線径を拡大させることができ、抵抗を低減させることができる。
電動機56は、実施の形態1にかかる電動機50と同様に、上記の式(1)を満足する。これにより、スロットごとの占積率が均等になる。または、電動機56は、実施の形態1にかかる電動機50と同様に、上記の式(2)および式(3)を満足する。これにより、可動子1の構造に起因して占積率が変わる場合であっても、抵抗を低減させるためのティースピッチの調整が可能となる。
なお、電動機56は、各ティース13に取り付けられたコイル14の巻数が図19に示すように設定されるものに限られない。電動機56は、複数のティース13のうちの1つ以上における巻数が、他のティース13における合計巻数とは異なるものであれば良い。この場合、電動機56は、各ティース13の巻数が図19に示す場合とは異なっていても、実施の形態4による効果を得ることができる。また、複数のティース13におけるティースピッチの「大」、「小」または「等しい」の設定は、図20に示すものに限られず、任意であるものとする。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、可動子1の進行方向における相の順序が図17に示す場合と同じであれば良い。図17に示す場合と相の順序が同じであれば、進行方向における端に位置する相はいずれの相であっても良い。
可動子1は、P=3、N=4、C=1の構成を単位として、2個以上の単位を有しても良い。すなわち、Cが1より大きい自然数であっても良い。電動機56は、Cが1よりも大きい自然数である場合も、Cが1である場合と同様の効果を得ることができる。
ティース13の界磁側の先端部には、進行方向に向けられた突起、またはくぼみが形成されても良い。電動機56は、ティース13に突起またはくぼみが形成されている場合も、ティース13がストレート状である場合と同様の効果を得ることができる。
電動機56は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる構成であっても良い。電動機56は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる場合も、複数の永久磁石21が固定子鉄心の表面に設けられる場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態4によると、電動機56は、複数のティース13のティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対するコイル14の合計巻数の割合が複数のスロットにおいて一定とされている。すなわち、複数のティース13により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。電動機56は、複数のスロットの各々における占積率が一定であることによって、各スロットにおけるコイル14の抵抗を低減できる。これにより、電動機56は、コイル14の発熱量を低減できるという効果を奏する。
実施の形態5.
図22は、実施の形態5にかかる電動機58の断面図である。実施の形態5では、ティース13のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチが調整されており、かつ、固定子2側では複数のティース13が等ピッチとされている。実施の形態5では、上記の実施の形態1から4と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から4とは異なる構成について主に説明する。
電動機58の可動子1の構成は、ティースピッチの調整の態様が異なる以外は、実施の形態1の可動子1と同様である。電動機58の固定子2の構成は、実施の形態1の固定子2と同様である。実施の形態5では、実施の形態1と同様に、可動子1の各ティース13には、ティース番号であるt1,t2,t3,t4,t5が割り当てられている。可動子1の各スロットには、スロット番号であるs1-1,s2,s3,s4,s5,s1-2が割り当てられている。可動子1の各ティースピッチには、ティースピッチ番号であるp1-1,p2,p3,p4,p5,p1-2が割り当てられている。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、実施の形態1の場合と同様である。可動子1の複数のティース13は、実施の形態1の場合と同様に、3相のうち1相のコイル14のみが取り付けられたティース13と、3相のうち複数の相のコイル14が取り付けられたティース13とを含む。可動子1の全てのコイル14は、同一の径の導線により形成されている。
実施の形態5では、スロット面積に対する合計巻数の割合が可動子1の複数のスロットにおいて一定となるように、複数のティース13のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチが調整されている。
実施の形態5における、スロットの合計巻数、スロット面積および占積率の例は、図5に示す実施の形態1の場合と同様とする。図5において、p1,p2,p3,p4,p5の各ティースピッチについて示される「小」または「大」は、実施の形態5では、複数のティース13のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチに当てはめられる。一方、複数のティース13のうち固定子2側の端部におけるティースピッチは、いずれも、ティースピッチの平均値に等しい。
図22において、位置「a」、位置「b」、位置「c」、位置「d」は、複数のティースピッチが互いに等しいと仮定した場合における各ティース13の中心位置を表す。位置「a」は、t1のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「b」は、t2のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「c」は、t4のティース13の当該仮定における中心位置を示す。位置「d」は、t5のティース13の当該仮定における中心位置を示す。
t2のティース13のうちコアバック11側の端部の中心位置は、位置「b」に対し基準位置A側にある。s3のスロットを構成するt2およびt3のティース13同士において、各ティース13のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチであるp3のティースピッチが、ティースピッチの平均値よりも小さい。また、t2のティース13のうち固定子2側の端部の中心位置は、位置「b」と一致する。t2およびt3のティース13同士では、各ティース13のうち固定子2側の端部におけるティースピッチが、ティースピッチの平均値と同じである。すなわち、t2およびt3のティース13同士において、各ティース13のうち固定子2側の端部におけるティースピッチは、コアバック11側のティースピッチよりも大きい。
t1のティース13のうちコアバック11側の端部の中心位置は、位置「a」に対し基準位置Aとは逆側にある。s2のスロットを構成するt1およびt2のティース13同士において、各ティース13のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチであるp2のティースピッチが、ティースピッチの平均値よりも大きい。また、t1およびt2のティース13同士では、各ティース13のうち固定子2側の端部におけるティースピッチが、ティースピッチの平均値と同じである。すなわち、t1およびt2のティース13同士において、各ティース13のうち固定子2側の端部におけるティースピッチは、コアバック11側のティースピッチよりも小さい。
s2およびs3の各スロットと同様に、s1,s4およびs5の各スロットにおいても、各ティース13のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチであるp1,p4,p5の各ティースピッチが調整されている。s2およびs3の各スロットと同様に、s1,s4およびs5の各スロットにおいても、各ティース13のうち固定子2側の端部におけるティースピッチは、ティースピッチの平均値と同じである。
実施の形態5では、s2,s5の各スロットは、第1のスロットである。s1,s3,s4の各スロットは、第2のスロットである。実施の形態5では、第1のスロットを構成するティース13同士では、ティース13同士の各々のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチがティースピッチの平均値よりも大きく、かつ、ティース13同士の各々のうち界磁側の端部におけるティースピッチがコアバック11側のティースピッチよりも小さい。また、第2のスロットを構成するティース13同士では、ティース13同士の各々のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチがティースピッチの平均値よりも小さく、かつ、ティース13同士の各々のうち界磁側の端部におけるティースピッチがコアバック11側のティースピッチよりも大きい。これにより、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
複数のティース13に取り付けられた全てのコイル14の線径が同じであって、かつ、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定であることによって、複数のスロットの各々におけるコイル14の占積率が一定になる。s1,s2,s3,s4,s5の各スロットの占積率が一定であることによって、電動機58は、複数のスロットにおける抵抗のばらつきを少なくさせ、複数のスロット全体の抵抗を小さくすることができる。また、電動機58は、複数のスロットにおける占積率の平均値を増加させることができる。電動機58は、コイル14の線径を拡大させることができ、抵抗を低減させることができる。
各ティース13のうちコアバック11側の端部のティースピッチは、上記の式(1)を満足する。これにより、スロットごとの占積率が均等になる。または、各ティース13のうちコアバック11側の端部のティースピッチは、上記の式(2)および式(3)を満足する。これにより、可動子1の構造に起因して占積率が変わる場合であっても、抵抗を低減させるためのティースピッチの調整が可能となる。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、可動子1の進行方向における相の順序が図22に示す場合と同じであれば良い。図22に示す場合と相の順序が同じであれば、進行方向における端に位置する相はいずれの相であっても良い。また、複数のティース13におけるコイル14の配置は、実施の形態2から4における配置と同様とされても良い。
可動子1は、P=4、N=5、C=1の構成を単位として、2個以上の単位を有しても良い。すなわち、Cが1より大きい自然数であっても良い。電動機58は、Cが1よりも大きい自然数である場合も、Cが1である場合と同様の効果を得ることができる。
電動機58は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる構成であっても良い。電動機58は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる場合も、複数の永久磁石21が固定子鉄心の表面に設けられる場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態5によると、電動機58は、ティース13のうちコアバック11側の端部におけるティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対するコイル14の合計巻数の割合が複数のスロットにおいて一定とされている。すなわち、複数のティース13により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。電動機58は、複数のスロットの各々における占積率が一定であることによって、各スロットにおけるコイル14の抵抗を低減できる。これにより、電動機58は、コイル14の発熱量を低減できるという効果を奏する。
実施の形態6.
図23は、実施の形態6にかかる電動機59の断面図である。実施の形態6では、コアバック11の第2の方向における厚さがスロットごとに調整されている。実施の形態6では、上記の実施の形態1から5と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から5とは異なる構成について主に説明する。以下の説明において、コアバック11の厚さとは、コアバック11の第2の方向における厚さとする。コアバック11の端とは、コアバック11のうち固定子2側の端の面であって、ティース13の面とともにスロットを構成する面とする。
電動機59の可動子1の構成は、ティースピッチに代えてコアバック11の厚さが調整される点以外は、実施の形態1の可動子1と同様である。電動機59の固定子2の構成は、実施の形態1の固定子2と同様である。実施の形態6では、実施の形態1と同様に、可動子1の各ティース13には、ティース番号であるt1,t2,t3,t4,t5が割り当てられている。可動子1の各スロットには、スロット番号であるs1-1,s2,s3,s4,s5,s1-2が割り当てられている。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、実施の形態1の場合と同様である。可動子1の複数のティース13は、実施の形態1の場合と同様に、3相のうち1相のコイル14のみが取り付けられたティース13と、3相のうち複数の相のコイル14が取り付けられたティース13とを含む。可動子1の全てのコイル14は、同一の径の導線により形成されている。
実施の形態6では、スロット面積に対する合計巻数の割合が可動子1の複数のスロットにおいて一定となるように、コアバック11の厚さがスロットごとに調整されている。また、実施の形態6における、スロットの合計巻数、スロット面積および占積率の例は、図5に示す実施の形態1の場合と同様とする。
図23において、位置「f」は、コアバック11の厚さが、コアバック11の厚さの平均値に等しい場合におけるコアバック11の端の位置を示す。位置「e」は、位置「f」に対し固定子2とは逆側の位置である。コアバック11のうち、コアバック11の端が位置「e」である部分の厚さは、コアバック11の厚さの平均値よりも小さい。位置「g」は、位置「f」に対し固定子2側の位置である。コアバック11のうち、コアバック11の端が位置「g」である部分の厚さは、コアバック11の厚さの平均値よりも大きい。
実施の形態6では、s2,s5の各スロットは、第1のスロットである。すなわち、図5に示すように、s2,s5の各スロットの合計巻数は、複数のスロットの各々における合計巻数の平均値よりも大きい。s2,s5の各スロットにおいて、コアバック11の端の位置は、位置「e」である。これにより、s2,s5の各スロットでは、スロット面積が、スロット面積の平均値よりも大きくなるように調整されている。
実施の形態6では、s1,s3,s4の各スロットは、第2のスロットである。すなわち、図5に示すように、s1,s3,s4の各スロットの合計巻数は、複数のスロットの各々における合計巻数の平均値よりも小さい。s1,s3,s4の各スロットにおいて、コアバック11の端の位置は、位置「g」である。これにより、s1,s3,s4の各スロットでは、スロット面積が、スロット面積の平均値よりも小さくなるように調整されている。
このように、実施の形態6では、第1のスロットでは、コアバック11の厚さが、コアバック11の全体における厚さの平均値よりも小さく、かつ、第2のスロットでは、第2の方向におけるコアバック11の厚さが、コアバック11の全体における厚さの平均値よりも大きい。これにより、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
なお、複数のスロットにおいて割合が一定であるとは、複数のスロットにおいて割合が完全に同一である場合に限られない。複数のスロットにおいて割合が一定であるとは、実施の形態1におけるティースピッチの調整と同様に、可動子1の構造に起因して占積率が変わる場合を考慮してコアバック11の厚さが調整される場合を含むものとする。
複数のティース13に取り付けられた全てのコイル14の線径が同じであって、かつ、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定であることによって、複数のスロットの各々におけるコイル14の占積率が一定になる。s1,s2,s3,s4,s5の各スロットの占積率が一定であることによって、電動機59は、複数のスロットにおける抵抗のばらつきを少なくさせ、複数のスロット全体の抵抗を小さくすることができる。また、電動機59は、複数のスロットにおける占積率の平均値を増加させることができる。電動機59は、コイル14の線径を拡大させることができ、抵抗を低減させることができる。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、可動子1の進行方向における相の順序が図23に示す場合と同じであれば良い。図23に示す場合と相の順序が同じであれば、進行方向における端に位置する相はいずれの相であっても良い。また、複数のティース13におけるコイル14の配置は、実施の形態2から4における配置と同様とされても良い。
可動子1は、P=4、N=5、C=1の構成を単位として、2個以上の単位を有しても良い。すなわち、Cが1より大きい自然数であっても良い。電動機59は、Cが1よりも大きい自然数である場合も、Cが1である場合と同様の効果を得ることができる。
電動機59は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる構成であっても良い。電動機59は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる場合も、複数の永久磁石21が固定子鉄心の表面に設けられる場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態6によると、電動機59は、コアバック11の厚さがスロットごとに調整されることによって、スロット面積に対するコイル14の合計巻数の割合が複数のスロットにおいて一定とされている。すなわち、複数のティース13により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。電動機59は、複数のスロットの各々における占積率が一定であることによって、各スロットにおけるコイル14の抵抗を低減できる。これにより、電動機59は、コイル14の発熱量を低減できるという効果を奏する。
実施の形態7.
図24は、実施の形態7にかかる電動機60の断面図である。実施の形態7では、複数のティース13の各々の第1の方向における幅が調整されている。実施の形態7では、上記の実施の形態1から6と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から6とは異なる構成について主に説明する。以下の説明において、ティース13の幅とは、ティース13の第1の方向における幅とする。
電動機60の可動子1の構成は、ティースピッチに代えてティース13の幅が調整される以外は、実施の形態1の可動子1と同様である。電動機60の固定子2の構成は、実施の形態1の固定子2と同様である。実施の形態7では、実施の形態1と同様に、可動子1の各ティース13には、ティース番号であるt1,t2,t3,t4,t5が割り当てられている。可動子1の各スロットには、スロット番号であるs1-1,s2,s3,s4,s5,s1-2が割り当てられている。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、実施の形態1の場合と同様である。可動子1の複数のティース13は、実施の形態1の場合と同様に、3相のうち1相のコイル14のみが取り付けられたティース13と、3相のうち複数の相のコイル14が取り付けられたティース13とを含む。可動子1の全てのコイル14は、同一の径の導線により形成されている。
実施の形態7において、各ティース13に取り付けられているコイル14の巻数の例は、図3に示す実施の形態1の場合と同様とする。t2,t4の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値よりも大きい。一方、t1,t3,t5の各ティース13における合計巻数は、複数のティース13の各々における合計巻数の平均値よりも小さい。以下、複数のティース13におけるコイル14の巻数の平均値よりも巻数が大きいティース13を第1のティース、複数のティース13におけるコイル14の巻数の平均値よりも巻数が小さいティース13を第2のティースと称する。t2,t4の各ティース13は、第1のティースである。t1,t3,t5の各ティース13は、第2のティースである。
図24において、w1は、第1のティースであるt2,t4の各ティース13の幅である。w2は、第2のティースであるt1,t3,t5の各ティース13の幅である。w1>w2が成り立つ。すなわち、電動機60では、第1のティースの幅が第2のティースの幅よりも大きい。実施の形態7では、このように各ティース13の幅が調整されることによって、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
なお、複数のスロットにおいて割合が一定であるとは、複数のスロットにおいて割合が完全に同一である場合に限られない。複数のスロットにおいて割合が一定であるとは、実施の形態1におけるティースピッチの調整と同様に、可動子1の構造に起因して占積率が変わる場合を考慮してティース13の幅が調整される場合を含むものとする。
複数のティース13に取り付けられた全てのコイル14の線径が同じであって、かつ、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定であることによって、複数のスロットの各々におけるコイル14の占積率が一定になる。s1,s2,s3,s4,s5の各スロットの占積率が一定であることによって、電動機60は、複数のスロットにおける抵抗のばらつきを少なくさせ、複数のスロット全体の抵抗を小さくすることができる。また、電動機60は、複数のスロットにおける占積率の平均値を増加させることができる。電動機60は、コイル14の線径を拡大させることができ、抵抗を低減させることができる。
複数のティース13におけるコイル14の配置は、可動子1の進行方向における相の順序が図24に示す場合と同じであれば良い。図24に示す場合と相の順序が同じであれば、進行方向における端に位置する相はいずれの相であっても良い。また、複数のティース13におけるコイル14の配置は、実施の形態2から4における配置と同様とされても良い。
可動子1は、P=4、N=5、C=1の構成を単位として、2個以上の単位を有しても良い。すなわち、Cが1より大きい自然数であっても良い。電動機60は、Cが1よりも大きい自然数である場合も、Cが1である場合と同様の効果を得ることができる。
電動機60は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる構成であっても良い。電動機60は、複数の永久磁石21が固定子鉄心の内部に埋め込まれる場合も、複数の永久磁石21が固定子鉄心の表面に設けられる場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態7によると、電動機60は、第1のティースの幅が第2のティースの幅よりも大きくなるように各ティース13の幅が調整されることによって、スロット面積に対するコイル14の合計巻数の割合が複数のスロットにおいて一定とされている。すなわち、複数のティース13により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。電動機60は、複数のスロットの各々における占積率が一定であることによって、各スロットにおけるコイル14の抵抗を低減できる。これにより、電動機60は、コイル14の発熱量を低減できるという効果を奏する。
実施の形態8.
図25は、実施の形態8にかかる電動機61の断面図である。実施の形態8にかかる電動機61は、回転電機である。実施の形態8では、上記の実施の形態1から7と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から7とは異なる構成について主に説明する。
電動機61は、固定子3と回転子4とを有する。固定子3は、回転子4を囲う円環状の構造物である。固定子3は、回転子4に向かい合わせて配置されている。回転子4は、界磁である。固定子3は、界磁との相互作用による推力を得るための電機子である。回転子4は、固定子3に対して回転可能である。電動機61は、回転子4を回転動作させる。
回転子4は、シャフト41と、シャフト41の表面に固定された複数の永久磁石42とを有する。実施の形態8では、回転子4は、4個の永久磁石42を有する。4個の永久磁石42は、回転子4の回転方向、すなわち円周方向に並べられている。
固定子3は、固定子鉄心と、固定子鉄心に取り付けられた複数のコイル33とを有する。固定子鉄心は、固定子3の外縁をなす円環状のコアバック31と、コアバック31から回転子4の方へ延ばされた複数のティース32とを有する。各ティース32は、固定子3の径方向へ延ばされている。実施の形態8では、回転子4は、5個のティース32を有する。5個のティース32は、円周方向に並べられている。各ティース32のうち界磁側の先端部には、回転方向に向けられた突起が形成されている。各コイル33は、ティース32に導線が集中的に巻回されることによって構成されている。コイル33が配置されるスロットは、円周方向においてティース32と隣り合う部分である。互いに隣り合うティース32同士は、スロットを構成する。
実施の形態8では、固定子3の各ティース32に、便宜的にティース番号を割り当てる。各ティース32には、図25においてある位置のティース32から時計回りに、それぞれティース番号であるt1,t2,t3,t4,t5が割り当てられている。また、固定子3の各スロットに、便宜的にスロット番号を割り当てる。各スロットには、t1と隣り合うスロットから時計回りに、それぞれスロット番号であるs1,s2,s3,s4,s5が割り当てられている。
固定子3におけるティースピッチは、複数のティース32が並べられている方向である第1の方向の長さである。第1の方向は、円周方向でもある。実施の形態8では、複数のティース32の各ティースピッチに、便宜的にティースピッチ番号を割り当てる。各ティースピッチには、t5およびt1のティース32同士のティースピッチから時計回りに、それぞれティースピッチ番号であるp1,p2,p3,p4,p5が割り当てられている。
固定子3には、3相交流電源から電圧が印加される。3相交流電源の図示は省略する。複数のティース32におけるコイル33の配置は、実施の形態1における複数のティース13におけるコイル14の配置と同様である。固定子3の複数のティース32は、3相のうち1相のコイル33のみが取り付けられたティース32と、3相のうち複数の相のコイル33が取り付けられたティース32とを含む。固定子3の全てのコイル33は、同一の径の導線により形成されている。
図26は、実施の形態8の比較例にかかる電動機62の断面図である。電動機62の固定子3は、コイル33が配置されていない領域34を有する。実施の形態8と、実施の形態8の比較例とにおいて、スロットの合計巻数、スロット面積および占積率の例は、図5に示す実施の形態1の場合と同様とする。スロット面積は、第1の方向と第2の方向とを含む断面におけるスロットの面積である。第2の方向は、径方向である。第2の方向は、固定子3と回転子4とが向かい合う方向であって、複数の永久磁石42が配置されている面に垂直な方向でもある。図25に示す断面と図26に示す断面とは、第1の方向と第2の方向とを含む断面である。
比較例にかかる電動機62では、実施の形態1の比較例と同様に、s1,s2,s3,s4,s5の各スロットのスロット面積はいずれも同じとする。また、電動機62では、実施の形態1の比較例と同様に、p1,p2,p3,p4,p5の各ティースピッチは、複数のティースピッチの平均値に等しい。電動機62では、各スロットのスロット面積はいずれも同じであるのに対し、合計巻数がスロットごとに異なることによって、各スロットの占積率にはばらつきがある。このため、電動機62では、コイル33の抵抗が大きくなる。
次に、実施の形態8にかかる電動機61の詳細について説明する。実施の形態8では、スロット面積に対する合計巻数の割合が固定子3の複数のスロットにおいて一定となるように、各ティース32のティースピッチが調整されている。すなわち、複数のティース32により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。
図25において、位置「a」、位置「b」、位置「c」、位置「d」は、複数のティースピッチが互いに等しいと仮定した場合における各ティース32の中心位置を表す。位置「a」は、t1のティース32の当該仮定における中心位置を示す。位置「b」は、t2のティース32の当該仮定における中心位置を示す。位置「c」は、t4のティース32の当該仮定における中心位置を示す。位置「d」は、t5のティース32の当該仮定における中心位置を示す。なお、中心位置とは、円周方向における中心位置とする。
実施の形態8では、s2,s5の各スロットは、第1のスロットである。すなわち、図5に示すように、s2,s5の各スロットの合計巻数は、複数のスロットの各々における合計巻数の平均値よりも大きい。t1のティース32の中心位置が位置「a」から反時計回りの方へシフトしており、かつ、t2のティース32の中心位置が位置「b」から時計回りの方へシフトしている。これにより、s2のスロット面積は、スロット面積の平均値よりも大きくなるように調整されている。t4のティース32の中心位置が位置「c」から反時計回りの方へシフトしており、かつ、t5のティース32の中心位置が位置「d」から時計回りの方へシフトしている。これにより、s5のスロット面積は、スロット面積の平均値よりも大きくなるように調整されている。
実施の形態8では、s1,s3,s4の各スロットは、第2のスロットである。すなわち、図5に示すように、s1,s3,s4の各スロットの合計巻数は、複数のスロットの各々における合計巻数の平均値よりも小さい。各ティース32の中心位置がシフトしていることによって、s1,s3,s4の各スロット面積は、スロット面積の平均値よりも小さくなるように調整されている。
実施の形態8では、第1のスロットを構成するティース32同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも大きい。また、第2のスロットを構成するティース32同士において、ティースピッチは、複数のスロットにおけるティースピッチの平均値よりも小さい。これにより、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定とされる。
複数のティース32に取り付けられた全てのコイル33の線径が同じであって、かつ、スロット面積に対する合計巻数の割合が複数のスロットの全てにおいて一定であることによって、複数のスロットの各々におけるコイル33の占積率が一定になる。s1,s2,s3,s4,s5の各スロットの占積率が一定であることによって、電動機61は、複数のスロットにおける抵抗のばらつきを少なくさせ、複数のスロット全体の抵抗を小さくすることができる。
実施の形態8では、合計巻数が平均値よりも少ないスロットではスロット面積が小さく、かつ、合計巻数が平均値よりも多いスロットではスロット面積が大きいことによって、各スロットの占積率が一定になる。電動機61は、このように各スロットの占積率が調整されることによって、比較例の場合よりも、複数のスロットにおける占積率の平均値を増加させることができる。電動機61は、比較例の場合よりも、コイル33の線径を拡大させることができ、抵抗を低減させることができる。
電動機61は、実施の形態1にかかる電動機50と同様に、上記の式(1)を満足する。これにより、スロットごとの占積率が均等になる。または、電動機61は、実施の形態1にかかる電動機50と同様に、上記の式(2)および式(3)を満足する。これにより、固定子3の構造に起因して占積率が変わる場合であっても、抵抗を低減させるためのティースピッチの調整が可能となる。
実施の形態8における固定子3の構成は、実施の形態1における可動子1の構成を応用したものである。固定子3の構成は、実施の形態1における可動子1の構成のみならず、実施の形態2から7における各可動子1の構成のいずれかを応用したものであっても良い。
固定子3は、P=4、N=5、C=1の構成を単位として、2個以上の単位を有しても良い。すなわち、Cが1より大きい自然数であっても良い。電動機61は、Cが1よりも大きい自然数である場合も、Cが1である場合と同様の効果を得ることができる。
ティース32は、界磁側の先端部に突起が形成されているものに限られない。ティース32の界磁側の先端部には、くぼみが形成されていても良い。ティース32のうち界磁側の先端部は、ストレート状であっても良い。電動機61は、くぼみが形成されている場合または先端部がストレート状である場合も、突起が形成されている場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態8によると、電動機61は、複数のティース32のティースピッチが調整されることによって、スロット面積に対するコイル33の合計巻数の割合が複数のスロットにおいて一定とされている。すなわち、複数のティース32により構成される複数のスロットの各々における占積率が一定である。電動機61は、複数のスロットの各々における占積率が一定であることによって、各スロットにおけるコイル33の抵抗を低減できる。これにより、電動機61は、コイル33の発熱量を低減できるという効果を奏する。
以上の各実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。各実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。各実施の形態の構成同士が適宜組み合わせられても良い。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、各実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。