JP2013070522A - 回転電機用電機子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】線状導体を周回させてなるコイル部を複数有するコイルを備える回転電機用電機子において、各スロット内で径方向に並んで配置される導体辺部の本数を容易に奇数とすることを可能とする。
【解決手段】スロット22を有する電機子コアに巻装されるコイルを備えた回転電機用電機子。コイルは、1本の線状導体を(N+1/2)回周回させてなるコイル部を有して構成される。コイル部のそれぞれが導体辺部33を(2N+1)本備えると共に、これらが(N+1)本の組又はN本の組からなる第一導体辺部組41と第二導体辺部組42とに分けられ、電機子コアが備える全てのスロット22内のそれぞれに、何れかの1つのコイル部の第一導体辺部組41とそれとは別のコイル部の第二導体辺部組42とを合わせて(2N+1)本の導体辺部33が配置されている。
【選択図】図10
【解決手段】スロット22を有する電機子コアに巻装されるコイルを備えた回転電機用電機子。コイルは、1本の線状導体を(N+1/2)回周回させてなるコイル部を有して構成される。コイル部のそれぞれが導体辺部33を(2N+1)本備えると共に、これらが(N+1)本の組又はN本の組からなる第一導体辺部組41と第二導体辺部組42とに分けられ、電機子コアが備える全てのスロット22内のそれぞれに、何れかの1つのコイル部の第一導体辺部組41とそれとは別のコイル部の第二導体辺部組42とを合わせて(2N+1)本の導体辺部33が配置されている。
【選択図】図10
Description
本発明は、円筒状のコア基準面の軸方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されている電機子コアと、電機子コアに巻装されるコイルとを備えた回転電機用電機子、及びその製造方法に関する。
上記のような回転電機用電機子として、特開2007−166849号公報(特許文献1)に記載された方法で製造されるものが知られている。この方法では、線状導体をそれぞれ同じ回数だけ周回させてなるコイル部を複数形成し、コイル部のそれぞれが有する複数の導体辺部の半分をスロットに挿入すると共に残りの半分を未挿入の状態とするように全てのコイル部を各スロットに配置する。その後、未挿入の状態とされた方の導体辺部を周方向に沿って移動させてから径方向に移動させてスロットに挿入する。
このように特許文献1の製造方法では、各コイル部の複数の導体辺部を半分ずつの二組に分け、これらを周方向に相対移動させる前後で2回に分けてスロット内に挿入する。そのため、完成後の回転電機用電機子において各スロット内で径方向に並んで配置される導体辺部の本数は常に偶数であった。しかし、回転電機は、コイルの巻数(ターン数)に応じて発生可能なトルクや逆起電力の大きさが異なり得る。そのため、所望の特性を得るためには各スロット内で径方向に並んで配置される導体辺部の本数を奇数にすることが望ましい場合がある。特許文献1の技術は、そのような要求を適切に満たすことができないという課題があった。
そこで、線状導体を周回させてなるコイル部を複数有するコイルを備える回転電機用電機子において、各スロット内で径方向に並んで配置される導体辺部の本数を容易に奇数とすることが可能な技術の実現が望まれる。
本発明に係る、円筒状のコア基準面の軸方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されている電機子コアと、前記電機子コアに巻装されるコイルと、を備えた回転電機用電機子の特徴構成は、前記コイルは、1本の線状導体を(N+1/2)回(Nは自然数を表す)周回させてなるコイル部を複数有して構成され、前記コイル部のそれぞれが、前記スロット内に配置される部分である導体辺部を(2N+1)本備えると共に、前記コイル部のそれぞれの(2N+1)本の前記導体辺部が、前記スロット内での電流の向きがそれぞれ同じとなる(N+1)本の組とN本の組とに分けられて、これらのうちの一方を第一導体辺部組とし、他方を第二導体辺部組として一対の前記スロット内に配置され、前記コア基準面の径方向一方側を径第一方向とし、径方向他方側を径第二方向として、複数の前記コイル部のうちの第1のコイル部の前記第一導体辺部組が、複数の前記スロットのうちの第1のスロットの前記径第一方向側部分に配置され、前記第1のコイル部の前記第二導体辺部組が、複数の前記スロットのうちの第2のスロットの前記径第二方向側部分に配置され、複数の前記コイル部のうちの第2のコイル部の前記第一導体辺部組が、前記第2のスロットの前記径第一方向側部分に配置され、前記第2のコイル部の前記第二導体辺部組が、複数の前記スロットのうちの第3のスロット又は前記第1のスロットの前記径第二方向側部分に配置され、前記電機子コアが備える全ての前記スロット内のそれぞれに、何れかの1つの前記コイル部の前記第一導体辺部組と当該コイル部とは別のコイル部の前記第二導体辺部組とを合わせて(2N+1)本の前記導体辺部が配置されている点にある。
上記の特徴構成によれば、線状導体を周回させてなるコイル部を複数有するコイルにおいて、各コイル部の周回回数を(N+1/2)回とすることで、スロット内に配置される線状導体の部分である導体辺部を、各コイル部に(2N+1)本ずつ備えさせることができる。各コイル部の(2N+1)本の導体辺部は、(N+1)本の組及びN本の組のうちの一方である第一導体辺部組と、(N+1)本の組及びN本の組のうちの他方である第二導体辺部組とに分けて一対のスロット内に配置される。すなわち、第1のコイル部の第一導体辺部組が第1のスロットの径第一方向側部分に配置されると共に、その第二導体辺部組が第2のスロットの径第二方向側部分に配置される。同様に、第2のコイル部の第一導体辺部組が上記第2のスロットの径第一方向側部分に配置されると共に、その第二導体辺部組が第3のスロット(この第3のスロットは、磁極数によっては上記第1のスロットと同一であっても良い)の径第二方向側部分に配置される。他のコイル部についても同様の態様でスロット内に順次配置することで、全てのスロット内のそれぞれに、何れかの1つのコイル部の第一導体辺部組と、それとは別のコイル部の第二導体辺部組とを合わせて(2N+1)本の導体辺部が配置される。よって、各スロット内で径方向に並んで配置される導体辺部の本数を容易に奇数とすることができる。
なお、各コイル部における第一導体辺部組及び第二導体辺部組はそれぞれスロット内での電流の向きが同じとなる1本以上の導体辺部の組からなり、各導体辺部組の中では導体辺部を流れる電流の向きが統一されている。よって、同じスロット内に配置される全ての導体辺部を流れる電流の向きを容易に揃えることができ、上記のような奇数巻のコイルを適切に構成できる。
ここで、前記第1のコイル部を構成する線状導体の周回方向と前記第2のコイル部を構成する線状導体の周回方向とが、互いに逆方向であると好適である。
この構成によれば、上記第1のコイル部の第一導体辺部組を構成する線状導体の電流の向きと、上記第2のコイル部の第二導体辺部組を構成する線状導体の電流の向きとを一致させることができる。よって、同じスロット内に配置される全ての導体辺部を流れる電流の向きを揃えることができる。
また、前記コイルは、位相が互いに異なる交流電流が流れる複数の相コイルを有し、前記相コイルのそれぞれに含まれる複数の前記コイル部は、回転電機の界磁の磁極数に対応した数のグループに分けられており、前記相コイルを流れる電流の方向に沿った前記コイル部の一方端を第一端部、他方端を第二端部とし、前記相コイルのそれぞれにおける周方向に隣り合って配置される一対のグループの対応する位置にある前記コイル部間で、前記第一端部と前記第二端部との前記電機子コアに対する位置関係が当該電機子コアを挟んで互いに逆になっていると好適である。
この構成によれば、周方向に1磁極ピッチ分だけずれて配置される一対のコイル部間で、一方のコイル部を構成する線状導体の周回方向と他方のコイル部を構成する線状導体の周回方向とを互いに逆方向とすることができる。よって、ある1つのコイル部の第一導体辺部組が配置される第1のスロットと、当該コイル部の第二導体辺部組が配置される第2のスロットとが周方向に1磁極ピッチ分ずれて配置される構成の回転電機用電機子を適切に構成できる。
また、前記コイル部のそれぞれが、周方向に見て、当該コイル部を構成する線状導体が交差することなく周回する渦巻状に形成されていると好適である。
この構成によれば、各コイル部について、異なる周方向位置にある一対のスロットに配置される第一導体辺部組と第二導体辺部組との接続部において、線状導体が交差することが抑制される。よって、当該部分における線状導体どうしの擦れや干渉等の発生を抑制することができ、回転電機用電機子の性能を良好に維持できる。
本発明に係る、円筒状のコア基準面の軸方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されている電機子コアと、前記電機子コアに巻装されるコイルと、を備えた回転電機用電機子の製造方法の特徴構成は、線状導体を(N+1/2)回(Nは自然数を表す)周回させてなるコイル部を複数形成するコイル部形成工程と、前記コイル部のそれぞれにおける前記線状導体のうち前記スロット内に配置される部分である導体辺部(2N+1)本を、前記スロット内での電流の向きがそれぞれ同じとなる(N+1)本の組とN本の組とに分け、前記コイル部のそれぞれにおける(N+1)本の組及びN本の組のうちの一方を前記スロットに挿入すると共に(N+1)本の組及びN本の組のうちの他方を未挿入の状態とするように全ての前記コイル部を配置するコイル部配置工程と、前記コイル部のそれぞれにおける(N+1)本の組とN本の組とを一括して周方向に相対移動させて前記コイル部を変形させるコイル部変形工程と、前記コイル部変形工程の後、前記コイル部配置工程において未挿入の状態とされた方の前記導体辺部の組を前記コア基準面の径方向に移動させて前記スロットに挿入するコイル部挿入工程と、を備える点にある。
この特徴構成によれば、線状導体を周回させてなるコイル部を複数有するコイルにおいて、コイル部形成工程で形成される各コイル部の周回回数を(N+1/2)回とすることで、スロット内に配置される線状導体の部分である導体辺部を、各コイル部に(2N+1)本ずつ備えさせることができる。各コイル部の(2N+1)本の導体辺部は、(N+1)本の組とN本の組とに分けて一対のスロット内に配置される。すなわち、コイル部配置工程で各コイル部の(N+1)本の組及びN本の組のうちの一方がスロットに挿入されると共に、(N+1)本の組及びN本の組のうちの他方が未挿入の状態となるように全てのコイル部が配置される。その後、コイル部変形工程で(N+1)本の組とN本の組とを一括して周方向に相対移動させた後、未挿入の状態とされた方の導体辺部の組を、コイル部挿入工程でスロットに挿入する。これにより、全てのスロット内のそれぞれに、何れかの1つのコイル部の(N+1)本又はN本の導体辺部の組とそれとは別のコイル部のN本又は(N+1)本の導体辺部の組とを合わせて(2N+1)本の導体辺部が配置される。よって、各スロット内で径方向に並んで配置される導体辺部の本数を容易に奇数とすることができる。
なお、各コイル部における(N+1)本の組及びN本の組はそれぞれスロット内での電流の向きが同じとなる1本又は複数本の導体辺部の組からなり、各組の中では導体辺部を流れる電流の向きが統一されている。よって、同じスロット内に配置される全ての導体辺部を流れる電流の向きを容易に揃えることができ、上記のような奇数巻のコイルを適切に構成できる。
本発明に係る回転電機用電機子及びその製造方法について、図面を参照して説明する。本実施形態では、回転電機用電機子としての回転電機用のステータ1を例として説明する。なお、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念である。本実施形態に係る製造方法によれば、いわゆる奇数回巻(奇数ターン)のコイル3を備えたステータ1を容易に製造することができる。以下では、ステータ1の構成、及びステータ1の製造方法の順に説明する。
以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「周方向C」、「径方向R」は、ステータコア2の円筒状のコア基準面21の軸心Xを基準として定義している。「軸第一方向L1」は図1における軸方向Lに沿った上方を表し、「軸第二方向L2」は下方を表す。「周第一方向C1」は軸第一方向L1側から見た軸方向L視での時計回り方向を表し、「周第二方向C2」は反時計回り方向を表す。「径第一方向R1」はコア基準面21の径方向Rの外側へ向かう方向を表し、「径第二方向R2」は径方向Rの内側へ向かう方向を表す。なお、コイル3を構成する各部材に関しては、これらがステータコア2に装着された状態での方向として規定している。
また、製造段階での各工程の説明に関しても、完成品としてのステータ1に対応するものとして各方向を規定している。
1.ステータの構成
本実施形態に係るステータ1の構成について、図1を参照して説明する。このステータ1は、インナーロータ型の回転電機のステータである。図1に示すように、ステータ1は、電機子コアとしてのステータコア2と、当該ステータコア2に巻装されるコイル3とを備えている。なお、図1では、ステータコア2から軸方向Lに突出するコイル3の部分であるコイルエンド部については、一部のみを示して他の部分の図示を省略している。ステータコア2の径第二方向R2側には、永久磁石や電磁石等を備えた界磁としてのロータ(図示せず)が配置される。
本実施形態に係るステータ1の構成について、図1を参照して説明する。このステータ1は、インナーロータ型の回転電機のステータである。図1に示すように、ステータ1は、電機子コアとしてのステータコア2と、当該ステータコア2に巻装されるコイル3とを備えている。なお、図1では、ステータコア2から軸方向Lに突出するコイル3の部分であるコイルエンド部については、一部のみを示して他の部分の図示を省略している。ステータコア2の径第二方向R2側には、永久磁石や電磁石等を備えた界磁としてのロータ(図示せず)が配置される。
ステータコア2は、磁性材料を用いて形成されている。ステータコア2は、円筒状のコア基準面21の周方向Cに分散配置された複数のスロット22と、周方向Cに互いに隣接する2つのスロット22の間に形成された複数のティース23とを有する。「円筒状のコア基準面21」は、スロット22の配置や構成に関して基準となる仮想的な面である。本実施形態では、複数のティース23の径第二方向R2側の端面を含む仮想的な円筒状の面(コア内周面)をコア基準面21としている。なお、ステータコア2の径第一方向R1側の面(コア外周面)等をコア基準面21としても良い。
複数のスロット22は、周方向Cに沿って一定間隔で分散配置されている。各スロット22は、軸方向Lに延びると共に、ステータコア2の軸心Xから放射状に径方向Rに延びるように形成されている。各スロット22は、互いに同じ形状とされており、軸方向L及び径方向Rに延びると共に周方向Cに所定の幅を有する溝状に形成されている。各スロット22は、径第二方向R2側に開口(コア内周面に開口)している。
複数のティース23は、それぞれ周方向Cに隣接する2つのスロット22の間に形成され、周方向Cに沿って一定間隔で分散配置されている。各ティース23は、互いに同じ形状とされており、軸方向L及び径方向Rに延びると共に周方向Cに所定の幅を有する厚板状に形成されている。
本実施形態では、回転電機は多相交流(本例では三相交流)で駆動される交流電動機である。ステータ1のコイル3は、三相(U相,V相,W相)のそれぞれに対応して、位相が互いに異なる交流電流が流れる3つの相コイル(U相コイル,V相コイル,W相コイル)を有する。これに応じて、ステータコア2には、U相用、V相用、及びW相用のスロット22が、周方向Cに沿って繰り返し現れるように配置されている。本例では、毎極毎相あたりのスロット数が「2」とされている。つまり、ステータコア2には、各相用のスロット22が、周方向Cに沿って2つずつ繰り返し現れるように配置されている。なお、本例では毎相あたりの磁極数が「8」とされており、ステータコア2には合計48(=2×8×3)個のスロット22が設けられている。
コイル3は、ステータコア2に巻装された状態で当該ステータコア2から軸方向Lに突出するコイルエンド部に、複数の渡り部39を備えている。渡り部39は、ステータコア2の異なるスロット22間をつなぐように少なくとも周方向Cに延びる部分である。図1等に示すように、各渡り部39は、毎極毎相あたりのスロット数(2)と相数(3)とに応じて、互いに6(=2×3)スロットピッチ離れた一対のスロット22どうしを結ぶように配置されている。
各渡り部39は、周第一方向C1側の端部において同じ周方向C位置にある他の渡り部39に対して径第二方向R2側に位置すると共に、周第二方向C2側の端部において同じ周方向C位置にある他の渡り部39に対して径第一方向R1側に位置するように配置されている。各渡り部39は、周第一方向C1側から周第二方向C2側に向かって径第二方向R2側から径第一方向R1側に向かうように配置されている。そして、周方向Cに互いに隣接する2つの渡り部39が、それぞれ径方向R視で重複する部分を有するように配置されている。なお、2つの部材の配置に関して「所定方向視で重複する部分を有する」とは、当該所定方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを意味する。このようにして、複数の渡り部39は、軸方向L視で全体として放射渦巻状に配置されている。
コイル3は、複数のコイル部32を有して構成されている。各コイル部32は、1本の線状導体31を周回させて構成されている。線状導体31は、例えば銅やアルミニウム等の金属により構成された線状の導体である。このような線状導体31としては、複数の細線を束ねた縒り線として構成される導体や、延在方向に直交する断面が一定以上の大きさの所定形状(例えば矩形状)を有する導体等を用いることができる。図1や図5等には前者の例を示している。線状導体31の表面には、樹脂等からなる絶縁皮膜が形成されている。各コイル部32は、線状導体31の一部であってスロット22内に配置される部分である導体辺部33を複数本備えている。複数の導体辺部33は、一対の導体辺部組41,42に分かれて一対のスロット22内に配置される。複数のコイル部32により構成されるコイル3は、重ね巻かつ分布巻によりステータコア2に巻装されている。
2.ステータ製造方法
本実施形態に係るステータ1の製造方法について、図2〜図10を参照して説明する。図2に示すように、本実施形態に係るステータ1は、コイル部形成工程P1、コイル部配置工程P2、コイル部変形工程P3、及びコイル部挿入工程P4を経て製造される。これらの各工程P1〜P4は、記載の順に実行される。以下、各工程について順に説明する。なお、以下では、ステータ1が備える3つの相コイルのうちの1つ(U相コイル3U)に主に注目して説明する。
本実施形態に係るステータ1の製造方法について、図2〜図10を参照して説明する。図2に示すように、本実施形態に係るステータ1は、コイル部形成工程P1、コイル部配置工程P2、コイル部変形工程P3、及びコイル部挿入工程P4を経て製造される。これらの各工程P1〜P4は、記載の順に実行される。以下、各工程について順に説明する。なお、以下では、ステータ1が備える3つの相コイルのうちの1つ(U相コイル3U)に主に注目して説明する。
2−1.コイル部形成工程
コイル部形成工程P1は、線状導体31を複数回周回させてなるコイル部32を複数形成する工程である。コイル部形成工程P1では、巻枠等を用いて線状導体31を(N+1/2)回(Nは自然数を表す)周回させることにより、図3及び図4に示すように(N+1/2)周巻のコイル部32を形成する。なお、本例では、Nが「2」の場合の例を図示している。このとき、各コイル部32において線状導体31は仮想平面上を中心側から外側に向かって周回するように形成されている。各コイル部32は、上記仮想平面に直交する方向(完成後のステータ1では周方向C)から見て、線状導体31が交差することなく周回する渦巻状に形成されている。(N+1/2)周(本例では2.5周)ずつ周回されて形成された各コイル部32は、線状導体31のうちのスロット22内に配置される部分である導体辺部33を、周回数の2倍に相当する(2N+1)本(本例では5本)備える。
コイル部形成工程P1は、線状導体31を複数回周回させてなるコイル部32を複数形成する工程である。コイル部形成工程P1では、巻枠等を用いて線状導体31を(N+1/2)回(Nは自然数を表す)周回させることにより、図3及び図4に示すように(N+1/2)周巻のコイル部32を形成する。なお、本例では、Nが「2」の場合の例を図示している。このとき、各コイル部32において線状導体31は仮想平面上を中心側から外側に向かって周回するように形成されている。各コイル部32は、上記仮想平面に直交する方向(完成後のステータ1では周方向C)から見て、線状導体31が交差することなく周回する渦巻状に形成されている。(N+1/2)周(本例では2.5周)ずつ周回されて形成された各コイル部32は、線状導体31のうちのスロット22内に配置される部分である導体辺部33を、周回数の2倍に相当する(2N+1)本(本例では5本)備える。
このような(N+1/2)周巻のコイル部32は、毎極毎相あたりのスロット数(2)及び毎相あたりの磁極数(8)に応じて、16(=2×8)個形成される。なお、図4において、上段には各コイル部32の上記仮想平面を一致させた状態でのU相コイル3Uを示し、下段には各コイル部32を構成する導体辺部33を模式的に示している。図4等において各コイル部32に隣接して付された(a)〜(p)の符号は、U相コイル3U中での各コイル部32を区別するための識別符号であり、最終的にステータコア2に巻装される状態での周方向Cの配列順に対応している。これら16個のコイル部32は、所定の順序で直列接続される。
本実施形態では、各相コイル(ここではU相コイル3U)の複数(16個)のコイル部32は、毎極毎相あたりのスロット数に対応した個数(2つ)ずつ、磁極数に対応した数(8つ)のグループG(G1〜G8)に分けられる。各グループG内におけるコイル部32どうしの接続は、導体辺部33に対して軸第二方向L2側で実現されている。一方、グループG間におけるコイル部32どうしの接続は、導体辺部33に対して軸第一方向L1側で実現されている。
図3及び図4に示すように、各コイル部32は、U相コイル3Uを流れる電流の方向(線状導体31の延在方向)に沿った一方端である第一端部35と、他方端である第二端部36とを有する。例えば、各コイル部32は、第一端部35で動力線(電源)側に接続され、第二端部36で中性点側に接続される。本実施形態では各コイル部32は(N+1/2)周巻とされ、0.5周分の端数周分を有するので、各コイル部32における第一端部35と第二端部36との複数の導体辺部33に対する軸方向Lの位置関係は、当該複数の導体辺部33を挟んで互いに逆になっている。例えば、(a)の符号が付されたコイル部32(以下、「コイル部32(a)」と表す;他のコイル部32に関しても同様)やコイル部32(d)では、第一端部35が軸第一方向L1側に配置され、第二端部36がそれとは逆の軸第二方向L2側に配置されている。コイル部32(b)やコイル部32(c)では、第一端部35が軸第二方向L2側に配置され、第二端部36がそれとは逆の軸第一方向L1側に配置されている。
ここで、グループG間におけるコイル部32どうしの接続が軸第一方向L1側で実現されることを考慮すれば、グループG1とグループG2との間の接続は、コイル部32(b)の第二端部36とコイル部32(d)の第一端部35との間で実現される。コイル部32(b)は、当該コイル部32(b)から見て周方向Cの配列順において隣り合うコイル部32(c)ではなく、コイル部32(c)を跨いでコイル部32(d)に接続される。コイル部32(d)は軸第二方向L2側でコイル部32(c)に接続される。また、グループG2とグループG3との間では、コイル部32(c)は、当該コイル部32(c)から見て周方向Cの配列順において隣り合うコイル部32(d)を跨いで、コイル部32(e)に接続される。以下も同様にして、グループG間におけるコイル部32どうしの接続は、周方向Cの配列順を基準として考えた場合に、他の1つのコイル部32を跨いで実現される。
このような構成では、各相コイル(ここではU相コイル3U)における周方向Cに隣り合って配置される一対のグループGの対応する位置にあるコイル部32間で、第一端部35と第二端部36との導体辺部33(ステータ1の完成後、導体辺部33とステータコア2とは同じ軸方向L位置となる)に対する位置関係は、当該導体辺部33を挟んで互いに逆になっている。ここで、「一対のグループGの対応する位置にある」とは、各グループG内での周方向Cの配列順における位置が互いに等しいことを表す。
例えば、グループG1,G2のそれぞれにおける2つのコイル部32のうち周第二方向C2側に配置されるコイル部32である、コイル部32(a)とコイル部32(c)との関係に注目する。すると、コイル部32(a)に関しては、第一端部35が軸第一方向L1側、第二端部36が軸第二方向L2側に配置されているのに対して、コイル部32(c)に関しては、それとは逆に第一端部35が軸第二方向L2側、第二端部36が軸第一方向L1側に配置されている。また、グループG1,G2のそれぞれにおける2つのコイル部32のうち周第一方向C1側に配置されるコイル部32である、コイル部32(b)とコイル部32(d)との関係に注目する。すると、コイル部32(b)に関しては、第一端部35が軸第二方向L2側、第二端部36が軸第一方向L1側に配置されているのに対して、コイル部32(d)に関しては、それとは逆に第一端部35が軸第一方向L1側、第二端部36が軸第二方向L2側に配置されている。その他に関しても同様である。
これにより、周方向Cに隣り合って配置される一対のグループGの対応する位置にあるコイル部32間で、線状導体31の周回方向は互いに逆方向となる。図4下段の模式図においては、線状導体31に沿って第一端部35から第二端部36に向かう周回方向を考えた場合に、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側へと向かう方向性を有する導体辺部33にハッチングを付し、それとは逆に軸第二方向L2側から軸第一方向L1側へと向かう方向性を有する導体辺部33にハッチングを付さない態様で示している。なお、図4等において各導体辺部33に付された「1」〜「40」の番号は、線状導体31の周回順序を区別するための識別番号であり、同じ番号が付された一対の導体辺部33で線状導体31の1周分が構成される。
コイル部形成工程P1では、上記のようにして形成される相コイルを、3相分それぞれ準備する。
2−2.コイル部配置工程
コイル部配置工程P2は、複数のコイル部32をそれぞれ部分的にスロット22内に配置する工程である。図5及び図6に示すように、このコイル部配置工程P2は、ステータコア2の径第二方向R2側に加工用治具51が配置された状態で行われる。加工用治具51の径第一方向R1側の面には、スロット22の数と同数の径方向Rの溝部52が形成されている。コイル部配置工程P2では、径方向Rに互いに対向するスロット22と溝部52とに亘って複数のコイル部32がそれぞれ配置される。図6等において各スロット22に隣接して付された(1),(2),(7),(8),・・・,(43),(44)の番号は、各スロット22を区別するための識別番号であり、ステータコア2における周方向Cの配列順に対応している。なお、図6においては、U相用のスロット22のみを表示し、他相用のスロット22の表示は省略している。
コイル部配置工程P2は、複数のコイル部32をそれぞれ部分的にスロット22内に配置する工程である。図5及び図6に示すように、このコイル部配置工程P2は、ステータコア2の径第二方向R2側に加工用治具51が配置された状態で行われる。加工用治具51の径第一方向R1側の面には、スロット22の数と同数の径方向Rの溝部52が形成されている。コイル部配置工程P2では、径方向Rに互いに対向するスロット22と溝部52とに亘って複数のコイル部32がそれぞれ配置される。図6等において各スロット22に隣接して付された(1),(2),(7),(8),・・・,(43),(44)の番号は、各スロット22を区別するための識別番号であり、ステータコア2における周方向Cの配列順に対応している。なお、図6においては、U相用のスロット22のみを表示し、他相用のスロット22の表示は省略している。
コイル部配置工程P2では、各コイル部32の(2N+1)本の導体辺部33は、第一導体辺部組41と第二導体辺部組42とに分けられる。第一導体辺部組41及び第二導体辺部組42はそれぞれ、(N+1)本(本例では3本)の導体辺部33の組、又はN本(本例では2本)の導体辺部33の組として構成される。すなわち、各コイル部32について、(N+1)本の導体辺部33の組及びN本の導体辺部33の組の、いずれか一方が第一導体辺部組41とされ、いずれか他方が第二導体辺部組42とされる。
本実施形態では、各グループGのそれぞれにおける2つのコイル部32のうち周第二方向C2側に配置される方のコイル部32(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m),(o)(以下、「第一コイル部群」と称する)では、第一導体辺部組41は(N+1)本の導体辺部33からなり、第二導体辺部組42はN本の導体辺部33からなる。一方、各グループGのそれぞれにおける2つのコイル部32のうち周第一方向C1側に配置される方のコイル部32(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n),(p)(以下、「第二コイル部群」と称する)では、第一導体辺部組41はN本の導体辺部33からなり、第二導体辺部組42は(N+1)本の導体辺部33からなる。
図6等から理解できるように、各コイル部32において、第一導体辺部組41を構成する(N+1)本又はN本の導体辺部33は、それぞれを流れる電流の向きが互いに同じである。同様に、各コイル部32において、第二導体辺部組42を構成する(N+1)本又はN本の導体辺部33も、それぞれを流れる電流の向きが互いに同じである。
コイル部配置工程P2では、各コイル部32おける第一導体辺部組41及び第二導体辺部組42のうちの一方(ここでは第一導体辺部組41)をスロット22に挿入すると共に、他方(ここでは第二導体辺部組42)をスロット22には未挿入の状態とするように全てのコイル部32を配置する。なお、スロット22に未挿入のままとされる第二導体辺部組42は、加工用治具51の溝部52に挿入される。
本実施形態では、第一コイル部群に対しては、(N+1)本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41をスロット22に挿入し、N本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42を加工用治具51の溝部52に挿入する。一方、第二コイル部群に対しては、N本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41をスロット22に挿入し、(N+1)本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42を加工用治具51の溝部52に挿入する。なお、各コイル部32は、スロット22及び溝部52に対して軸方向Lに沿って挿入される。このとき、周方向Cに隣り合って配置される一対のグループGの対応する位置にあるコイル部32の第一導体辺部組41間、及び、対応する位置にあるコイル部32の第二導体辺部組42間で、導体辺部33を流れる電流の向きは互いに逆方向となる。
コイル部配置工程P2では、コイル部形成工程P1で形成された3相分の相コイルを、それぞれ上述した態様で、毎極毎相あたりのスロット数に対応する数のスロットピッチ(2スロットピッチ)ずつずらしながら順に配置する。
2−3.コイル部変形工程
コイル部変形工程P3は、複数のコイル部32を変形させる工程である。図7に示すように、コイル部変形工程P3では、ステータコア2と加工用治具51とを軸心Xを中心として相対回転させる。これにより、各コイル部32における第一導体辺部組41と第二導体辺部組42とを一括して周方向Cに相対移動させて、全ての相コイルの全てのコイル部32を一括して変形させる。このときの相対回転角度は45°(電気角で「π」)であり、相対移動距離は6スロットピッチ(1磁極ピッチ)分である(図5及び図7を参照)。
コイル部変形工程P3は、複数のコイル部32を変形させる工程である。図7に示すように、コイル部変形工程P3では、ステータコア2と加工用治具51とを軸心Xを中心として相対回転させる。これにより、各コイル部32における第一導体辺部組41と第二導体辺部組42とを一括して周方向Cに相対移動させて、全ての相コイルの全てのコイル部32を一括して変形させる。このときの相対回転角度は45°(電気角で「π」)であり、相対移動距離は6スロットピッチ(1磁極ピッチ)分である(図5及び図7を参照)。
これにより、図8に示すように、第一コイル部群に関しては、コイル部32(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m),(o)の(N+1)本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41が配置されたスロット22に対向する溝部52に、コイル部32(o),(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m)のN本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42がそれぞれ配置される。第二コイル部群に関しては、コイル部32(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n),(p)のN本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41が配置されたスロット22に対向する溝部52に、コイル部32(p),(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n)の(N+1)本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42がそれぞれ配置される。
2−4.コイル部挿入工程
コイル部挿入工程P4は、コイル部変形工程P3で変形後の複数のコイル部32を押し出してスロット22に挿入する工程である。コイル部挿入工程P4では、溝部52から径方向Rに沿って進退自在に構成された板状の押出部材を、径第一方向R1側に向かって放射状に突出させる。これにより、図9及び図10に示すように、コイル部配置工程P2及びコイル部変形工程P3においてスロット22には未挿入の状態とされた(溝部52に挿入された)第二導体辺部組42を、一括してスロット22に挿入する。
コイル部挿入工程P4は、コイル部変形工程P3で変形後の複数のコイル部32を押し出してスロット22に挿入する工程である。コイル部挿入工程P4では、溝部52から径方向Rに沿って進退自在に構成された板状の押出部材を、径第一方向R1側に向かって放射状に突出させる。これにより、図9及び図10に示すように、コイル部配置工程P2及びコイル部変形工程P3においてスロット22には未挿入の状態とされた(溝部52に挿入された)第二導体辺部組42を、一括してスロット22に挿入する。
その結果、図10に示すように、第一コイル部群に関しては、コイル部32(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m),(o)の(N+1)本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41が各スロット22の径第一方向R1側部分に配置され、各スロット22の径第二方向R2側部分に、コイル部32(o),(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m)のN本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42がそれぞれ配置される。第二コイル部群に関しては、コイル部32(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n),(p)のN本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41が各スロット22の径第一方向R1側部分に配置され、各スロット22の径第二方向R2側部分に、コイル部32(p),(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n)の(N+1)本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42がそれぞれ配置される。
なお、各スロット22内における導体辺部33の径第一方向R1側からの径方向R位置を「層」で表した場合、各スロット22の第1層〜第N層(本例では第1層と第2層)には、第一導体辺部組41を構成する導体辺部33のうちのN本(本例では2本)が配置される。各スロット22の第(N+2)層〜第(2N+1)層(本例では第4層と第5層)には、第二導体辺部組42を構成する導体辺部33のうちのN本が配置される。各スロット22の第(N+1)層(本例では第3層)には、各相の相コイル毎に、第一導体辺部組41を構成する導体辺部33のうちの1本と第二導体辺部組42を構成する導体辺部33のうちの1本とが交互に配置される。
このようにして、複数のコイル部32のうちの第1のコイル部の、第一導体辺部組41が複数のスロット22のうちの第1のスロットの径第一方向R1側部分に配置され、第二導体辺部組42が複数のスロット22のうちの第2のスロットの径第二方向R2側部分に配置される。更に、複数のコイル部32のうちの第2のコイル部の、第一導体辺部組41が上記第2のスロットの径第一方向R1側部分に配置され、第二導体辺部組42が複数のスロット22のうちの第3のスロットの径第二方向R2側部分に配置される。以上が、各相コイルの第一コイル部群及び第二コイル部群のそれぞれについて、周方向Cの全域に亘って順次繰り返される。
これにより、ステータコア2が備える全てのスロット22内のそれぞれに、何れかの1つのコイル部32の第一導体辺部組41と、それとは別のコイル部32の第二導体辺部組42とを合わせて、(2N+1)本(本例では5本)の導体辺部33が配置される。以上のようなステータ1の製造方法によれば、各スロット22内で径方向Rに並んで配置される導体辺部33の本数を容易に奇数とすることができる。なお、このとき各コイル部32の(2N+1)本の導体辺部33は、スロット22内での電流の向きがそれぞれ同じとなる第一導体辺部組41と第二導体辺部組42とに分かれて、一対のスロット22に配置される。そして、同じスロット22内で径方向Rに並んで配置される(2N+1)本の導体辺部33は、流れる電流の向きがそれぞれ同じとなる。
その後、各相の相コイルは中性点で互いに接続されると共に、それぞれ動力線(電源)に接続される(図示せず)。以上のようにして、奇数回巻(奇数ターン)のコイル3を適切に構成することができる。
3.その他の実施形態
最後に、本発明に係る回転電機用電機子及びその製造方法の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
最後に、本発明に係る回転電機用電機子及びその製造方法の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態では、毎極毎相あたりのスロット数が「2」とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、毎極毎相あたりのスロット数は任意の自然数に設定することができる。図11〜図14に、毎極毎相あたりのスロット数を「3」とする場合における変形例を示す。これらの図は、上記の実施形態における図4、図6、図8、及び図10に対応している。なお、これらの図では、相コイルの一部のみを表示し、他の部分は適宜省略している。
図11に示すコイル部形成工程P1では、各相の相コイル毎に、各グループG内におけるコイル部32どうしの接続、及びグループG間におけるコイル部32どうしの接続は、これらを特に区別することなく、導体辺部33に対して軸第一方向L1側と軸第二方向L2側とで交互に実現されている。この例のように毎極毎相あたりのスロット数が奇数である構成では、各相の相コイル毎に、周方向Cの配列順において隣り合うコイル部32どうしがいずれも互いに接続される。この場合であっても、各相コイルにおける周方向Cに隣り合って配置される一対のグループGの対応する位置にあるコイル部32間で、第一端部35と第二端部36との複数の導体辺部33に対する位置関係は、当該複数の導体辺部33を挟んで互いに逆である。また、周方向Cに隣り合って配置される一対のグループGの対応する位置にあるコイル部32間で、線状導体31の周回方向は互いに逆方向である。
図12に示すコイル部配置工程P2、図13に示すコイル部変形工程P3、及び図14に示すコイル部挿入工程P4は、基本的に上記の実施形態で説明したものと同様に考えることができる。このようにして製造されるステータ1では、図14に示すように、各グループGのそれぞれにおける3つのコイル部32のうち最も周第二方向C2側に配置される第一コイル部群に関しては、コイル部32(a),(d),(g),(j),(m),(p),(s),(v)の(N+1)本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41が各スロット22の径第一方向R1側部分に配置され、各スロット22の径第二方向R2側部分に、コイル部32(v),(a),(d),(g),(j),(m),(p),(s)のN本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42がそれぞれ配置される。各グループGのそれぞれにおける3つのコイル部32のうち周方向Cの中央に配置される第二コイル部群に関しては、コイル部32(b),(e),(h),(k),(n),(q),(t),(w)のN本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41が各スロット22の径第一方向R1側部分に配置され、各スロット22の径第二方向R2側部分に、コイル部32(w),(b),(e),(h),(k),(n),(q),(t)の(N+1)本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42がそれぞれ配置される。各グループGのそれぞれにおける3つのコイル部32のうち最も周第一方向C1側に配置される第三コイル部群に関しては、コイル部32(c),(f),(i),(l),(o),(r),(u),(x)の(N+1)本の導体辺部33からなる第一導体辺部組41が各スロット22の径第一方向R1側部分に配置され、各スロット22の径第二方向R2側部分に、コイル部32(x),(c),(f),(i),(l),(o),(r),(u)のN本の導体辺部33からなる第二導体辺部組42がそれぞれ配置される。
すなわち、複数のコイル部32のうちの第1のコイル部の、第一導体辺部組41が複数のスロット22のうちの第1のスロットの径第一方向R1側部分に配置され、第二導体辺部組42が複数のスロット22のうちの第2のスロットの径第二方向R2側部分に配置される。更に、複数のコイル部32のうちの第2のコイル部の、第一導体辺部組41が上記第2のスロットの径第一方向R1側部分に配置され、第二導体辺部組42が複数のスロット22のうちの第3のスロットの径第二方向R2側部分に配置される。以上が、各相コイルの第一コイル部群、第二コイル部群、及び第三コイル部群のそれぞれについて、周方向Cの全域に亘って順次繰り返される。これにより、ステータコア2が備える全てのスロット22内のそれぞれに、何れかの1つのコイル部32の第一導体辺部組41と、それとは別のコイル部32の第二導体辺部組42とを合わせて、流れる電流の向きが揃った(2N+1)本の導体辺部33が配置される。
(2)或いは、毎極毎相あたりのスロット数を「4」としても良い。この場合における変形例を図15及び図16に示す。これらの図は、上記の実施形態における図4の上段に対応している。なお、これらの図では、相コイルの一部のみを表示し、他の部分は省略している。これらの例のように毎極毎相あたりのスロット数が偶数である構成では、上記の実施形態のようにグループG間におけるコイル部32どうしの接続は、導体辺部33に対して軸第一方向L1側でのみ実現される。そして、グループG間におけるコイル部32どうしの接続は、周方向Cの配列順を基準として考えた場合に、他の奇数個のコイル部32を跨いで実現される。なお、図15には他の1つのコイル部32を跨いでグループG間におけるコイル部32どうしの接続が実現される場合の例を示し、図16には他の3つのコイル部32を跨いで上記接続が実現される場合の例を示している。
これらの場合、各相コイルにおける周方向Cに隣り合って配置される一対のグループGの対応する位置にあるコイル部32間で、第一端部35と第二端部36との複数の導体辺部33に対する位置関係は、当該複数の導体辺部33を挟んで互いに逆となる。また、周方向Cに隣り合って配置される一対のグループGの対応する位置にあるコイル部32間で、線状導体31の周回方向は互いに逆方向となる。そして、各工程P1〜P4を経て製造されるステータ1では、詳細な説明は省略するが、ステータコア2が備える全てのスロット22内のそれぞれに、何れかの1つのコイル部32の第一導体辺部組41と、それとは別のコイル部32の第二導体辺部組42とを合わせて、流れる電流の向きが揃った(2N+1)本の導体辺部33が配置されることとなる。
なお、毎極毎相あたりのスロット数はこれらに限られず、「1」、或いは「5」以上とすることも可能である。
(3)上記の実施形態では、界磁としてのロータの磁極数が「8」とされ、各相の相コイルの複数のコイル部32が磁極数に応じて8つのグループGに分けられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、磁極数は任意の偶数とすることができ、「2」、「4」、「6」、或いは「10」以上とすることができる。このとき、各相の相コイルの複数のコイル部32は、磁極数に応じた数のグループGに分けられる。
なお、磁極数が「2」とされ、各相の相コイルの複数のコイル部32が2つのいずれかのグループGに分けられる場合には、複数のコイル部32のうちの第1のコイル部の、第一導体辺部組41が複数のスロット22のうちの第1のスロットの径第一方向R1側部分に配置され、第二導体辺部組42が複数のスロット22のうちの第2のスロットの径第二方向R2側部分に配置される。更に、複数のコイル部32のうちの第2のコイル部の、第一導体辺部組41が上記第2のスロットの径第一方向R1側部分に配置され、第二導体辺部組42が上記第1のスロットの径第二方向R2側部分に配置されることになる。
(4)上記の実施形態では、各コイル部32が、周方向Cから見て、線状導体31が交差することなく周回する渦巻状に形成された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、少なくとも第一導体辺部組41及び第二導体辺部組42のそれぞれにおいて複数の導体辺部33を流れる電流の向きが揃っていれば、各コイル部32を構成する線状導体31が周方向Cから見て一部交差した構成としても良い。
(5)上記の実施形態では、Nが「2」とされ、各コイル部32が2.5周ずつ周回されると共に、全てのスロット22内のそれぞれに5本の導体辺部33が配置される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、Nは任意の自然数とすることができる。
(6)上記の実施形態では、三相交流で駆動される回転電機用のステータ1を一例とし、コイル3が3つの相コイルを有する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、コイル3が有する相コイルの個数は、これ以外にも「1」、「2」、或いは「4」以上とすることもできる。
(7)上記の実施形態では、インナーロータ型の回転電機用のステータ1を例として説明した。しかし、本発明の適用対象はこれに限定されない。すなわち、アウターロータ型の回転電機用のステータ1に対しても、本発明を適用することができる。
(8)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、円筒状のコア基準面の軸方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されている電機子コアと、電機子コアに巻装されるコイルとを備えた回転電機用電機子、及びその製造方法に好適に利用することができる。
1 ステータ(回転電機用電機子)
2 ステータコア(電機子コア)
3 コイル
3U U相コイル(相コイル)
21 コア基準面
22 スロット
31 線状導体
32 コイル部
33 導体辺部
35 第一端部
36 第二端部
41 第一導体辺部組
42 第二導体辺部組
L 軸方向
R 径方向
R1 径第一方向
R2 径第二方向
C 周方向
G グループ
P1 コイル部形成工程
P2 コイル部配置工程
P3 コイル部変形工程
P4 コイル部挿入工程
2 ステータコア(電機子コア)
3 コイル
3U U相コイル(相コイル)
21 コア基準面
22 スロット
31 線状導体
32 コイル部
33 導体辺部
35 第一端部
36 第二端部
41 第一導体辺部組
42 第二導体辺部組
L 軸方向
R 径方向
R1 径第一方向
R2 径第二方向
C 周方向
G グループ
P1 コイル部形成工程
P2 コイル部配置工程
P3 コイル部変形工程
P4 コイル部挿入工程
Claims (5)
- 円筒状のコア基準面の軸方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されている電機子コアと、前記電機子コアに巻装されるコイルと、を備えた回転電機用電機子であって、
前記コイルは、1本の線状導体を(N+1/2)回(Nは自然数を表す)周回させてなるコイル部を複数有して構成され、
前記コイル部のそれぞれが、前記スロット内に配置される部分である導体辺部を(2N+1)本備えると共に、前記コイル部のそれぞれの(2N+1)本の前記導体辺部が、前記スロット内での電流の向きがそれぞれ同じとなる(N+1)本の組とN本の組とに分けられて、これらのうちの一方を第一導体辺部組とし、他方を第二導体辺部組として一対の前記スロット内に配置され、
前記コア基準面の径方向一方側を径第一方向とし、径方向他方側を径第二方向として、
複数の前記コイル部のうちの第1のコイル部の前記第一導体辺部組が、複数の前記スロットのうちの第1のスロットの前記径第一方向側部分に配置され、
前記第1のコイル部の前記第二導体辺部組が、複数の前記スロットのうちの第2のスロットの前記径第二方向側部分に配置され、
複数の前記コイル部のうちの第2のコイル部の前記第一導体辺部組が、前記第2のスロットの前記径第一方向側部分に配置され、
前記第2のコイル部の前記第二導体辺部組が、複数の前記スロットのうちの第3のスロット又は前記第1のスロットの前記径第二方向側部分に配置され、
前記電機子コアが備える全ての前記スロット内のそれぞれに、何れかの1つの前記コイル部の前記第一導体辺部組と当該コイル部とは別のコイル部の前記第二導体辺部組とを合わせて(2N+1)本の前記導体辺部が配置されている回転電機用電機子。 - 前記第1のコイル部を構成する線状導体の周回方向と前記第2のコイル部を構成する線状導体の周回方向とが、互いに逆方向である請求項1に記載の回転電機用電機子。
- 前記コイルは、位相が互いに異なる交流電流が流れる複数の相コイルを有し、
前記相コイルのそれぞれに含まれる複数の前記コイル部は、回転電機の界磁の磁極数に対応した数のグループに分けられており、
前記相コイルを流れる電流の方向に沿った前記コイル部の一方端を第一端部、他方端を第二端部とし、
前記相コイルのそれぞれにおける周方向に隣り合って配置される一対のグループの対応する位置にある前記コイル部間で、前記第一端部と前記第二端部との前記電機子コアに対する位置関係が当該電機子コアを挟んで互いに逆になっている請求項1又は2に記載の回転電機用電機子。 - 前記コイル部のそれぞれが、周方向に見て、当該コイル部を構成する線状導体が交差することなく周回する渦巻状に形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機用電機子。
- 円筒状のコア基準面の軸方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されている電機子コアと、前記電機子コアに巻装されるコイルと、を備えた回転電機用電機子の製造方法であって、
線状導体を(N+1/2)回(Nは自然数を表す)周回させてなるコイル部を複数形成するコイル部形成工程と、
前記コイル部のそれぞれにおける前記線状導体のうち前記スロット内に配置される部分である導体辺部(2N+1)本を、前記スロット内での電流の向きがそれぞれ同じとなる(N+1)本の組とN本の組とに分け、前記コイル部のそれぞれにおける(N+1)本の組及びN本の組のうちの一方を前記スロットに挿入すると共に(N+1)本の組及びN本の組のうちの他方を未挿入の状態とするように全ての前記コイル部を配置するコイル部配置工程と、
前記コイル部のそれぞれにおける(N+1)本の組とN本の組とを一括して周方向に相対移動させて前記コイル部を変形させるコイル部変形工程と、
前記コイル部変形工程の後、前記コイル部配置工程において未挿入の状態とされた方の前記導体辺部の組を前記コア基準面の径方向に移動させて前記スロットに挿入するコイル部挿入工程と、
を備える回転電機用電機子の製造方法。
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JP2011207552A JP2013070522A (ja) | 2011-09-22 | 2011-09-22 | 回転電機用電機子及びその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017041975A (ja) * | 2015-08-20 | 2017-02-23 | 三菱電機株式会社 | 回転電機の製造方法とその回転電機に用いられるステータの製造装置 |
JP2018068058A (ja) * | 2016-10-20 | 2018-04-26 | 住友重機械工業株式会社 | モータ |
KR20190064805A (ko) | 2017-12-01 | 2019-06-11 | 이일환 | 악취방지용 워터스크린장치 |
JP2021132470A (ja) * | 2020-02-19 | 2021-09-09 | 株式会社神戸製鋼所 | 三相電動機及びコイル巻線方法 |
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2011
- 2011-09-22 JP JP2011207552A patent/JP2013070522A/ja not_active Withdrawn
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