以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
<モデル材用組成物>
本発明のモデル材用クリア組成物は重合性化合物を含む。本発明のモデル材用クリア組成物は、重合性化合物として、アクリロイルモルホリンを含む。アクリロイルモルホリンはガラス転移温度が高く、高い硬化性を有するため、モデル材用クリア組成物が重合性化合物としてアクリロイルモルホリンを含むことにより、得られる立体造形物に高い硬度を付与することができる。また、アクリロイルモルホリンは希釈剤としても好適に機能するため、組成物の粘度を適度な範囲に維持したまま、得られるモデル材の耐脆性を向上させるために有用となるオリゴマー等の成分をモデル材用クリア組成物中により多く配合し得るため、アクリロイルモルホリンを含むことにより、高い強度と適度な靱性とをバランスよく併せ持つモデル材を得ることができる。さらに、本発明のモデル材用クリア組成物を、後述するような水溶性のサポート材用組成物と組み合わせて用いる場合、極性を有するモノマーであってサポート材を除去する除去溶剤として使用される水などの極性溶媒に溶けやすいアクリロイルモルホリンを、サポート材用組成物に使用することができる。モデル材用クリア組成物が、サポート材用組成物に用いられるアクリロイルモルホリンを含むことにより、表面張力が高いためサポート材とモデル材との界面の混ざりを防ぎながら、サポート材とモデル材との極性を近づけることで、サポート材とモデル材の濡れ性を向上させることができる。このため、アクリロイルモルホリンをモデル材用クリア組成物が含むことにより、光造形物の作製中において、モデル材とサポート材との境界を維持する効果が高くなるため、良好な寸法精度で光造形物を得ることができる。
本発明のモデル材用クリア組成物におけるアクリロイルモルホリンの含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に対して、好ましくは10~70質量%である。アクリロイルモルホリンの含有量が上記下限値以上であると、得られるモデル材の硬度を効果的に向上させることができる。また、アクリロイルモルホリンの含有量が上記上限値以下であると、硬化収縮の度合を抑制しやすく、造形精度に優れるモデル材(造形物)を得ることができる上に、造形物の耐脆性を向上させ得る。本発明のモデル材用クリア組成物において、アクリロイルモルホリンの含有量は、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。また、フェノール系酸化防止剤による高い黄変抑制効果を得る観点から、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
本発明のモデル材用クリア組成物は、重合性化合物として、アクリロイルモルホリンとともに、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が25℃以上である少なくとも1つの単官能または二官能重合性モノマー(以下、「重合性モノマー(A)」ともいう)を含む。重合性モノマー(A)は反応性希釈剤として機能するとともに、アクリロイルモルホリンに加えて、単官能または二官能である重合性モノマー(A)を含むことにより、硬化収縮を抑えながら硬化性を促進し、高い造形精度および硬度を有するモデル材を得ることができる。特に、アクリロイルモルホリンと重合性モノマー(A)、および、好ましくは後述するオリゴマーを組み合わせてモデル材用クリア組成物を構成することにより、硬化性を制御しやすく、硬化収縮を抑えながら、得られるモデル材に高い硬度および耐脆性をバランスよく付与し得るモデル材用クリア組成物を得ることができる。なお、アクリロイルモルホリンは後述する単官能重合性モノマー(A1)に該当するが、本発明においてアクリロイルモルホリンは、単官能重合性モノマー(A1)とは区別して扱われる。すなわち、例えば、単官能重合性モノマー(A1)の含有量は、アクリロイルモルホリンを除く単官能重合性モノマーの総量を意味する。
本発明のモデル材用クリア組成物において、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上である単官能重合性モノマー(以下、「単官能重合性モノマー(A1)」ともいう)としては、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃以上であり、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であって、分子内に重合性基を1つ有する重合性モノマーである。単官能重合性モノマー(A1)が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、光硬化における反応効率や反応速度等の観点から、単官能重合性モノマー(A1)が有する重合性基はラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基がより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がさらに好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方またはいずれかを表し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」等においても同様である。
本発明のモデル材用クリア組成物において、単官能重合性モノマー(A1)は、好ましくは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上であり、分子内にエチレン性二重結合を1つ有する単官能エチレン性不飽和単量体である。具体的には、例えば、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、分子内に、脂環式構造、芳香環構造または複素環構造等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、ならびに(メタ)アクリルアミドおよびN-ビニルラクタム類などの窒素原子を含有する単官能エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。なお、本明細書において、脂環式構造は炭素原子が環状に結合した脂肪族の環状構造を、芳香環構造は炭素原子が環状に結合した芳香族の環状構造を、複素環構造は炭素原子および1以上のヘテロ原子が環状に結合した構造をいう。
ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数5~25の、より好ましくは炭素数5~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタアクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数8~30の、より好ましくは炭素数9~15の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、芳香環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数8~30の、より好ましくは炭素数9~15の芳香環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられる。
ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、複素環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数8~30の、より好ましくは炭素数9~15の複素環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレートとは異なる、窒素原子を含有する単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド〔例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N,N-アクリロイルモルホリン等〕、N-ビニルラクタム類〔例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等〕、N-ビニルホルムアミド等が挙げられる。
これらの中でも、モデル材用クリア組成物が含む単官能重合性モノマー(A1)としては、分子内に環状構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体が好ましい。単官能重合性モノマー(A1)が分子内に環状構造を有するものであると、環状構造を有さない他の単量体と比較して、得られるモデル材造形物のガラス転移温度が高くなる傾向にあり、硬度や耐熱性をより効果的に改善し得る。本発明のモデル材用クリア組成物が重合性モノマー(A)として単官能重合性モノマー(A1)を含む場合、ホモポリマーとして25℃以上のガラス転移温度を有し、分子内に環状構造を有する単官能重合性モノマーの含有量は、単官能重合性モノマー(A1)の総質量に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、モデル材用クリア組成物に含まれる全ての単官能重合性モノマー(A1)が分子内に環状構造を有するものであってもよい。特に、環状構造として多環型の環状構造を有するもの、および、架橋型の環状構造を有する単官能重合性モノマーを用いることにより、得られるモデル材造形物の耐脆性の改善効果に優れる傾向にあるため、単官能重合性モノマー(A1)として多環型または架橋型の環状構造を有する単官能重合性モノマーを含むことが好ましい。単官能重合性モノマー(A1)は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
単官能重合性モノマー(A1)としては、(メタ)アクリレート系の単量体であることが好ましい。特に、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリレート系の単量体であることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよび環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートまたは環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、イソボルニルアクリレートが特に好ましい。中でも、分子内に脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリレート系単量体を含むことにより、他の芳香環構造や複素環構造を有する単量体と比較して、モデル材造形物のガラス転移温度が高くなり、硬度や耐熱性に優れる。
本発明のモデル材用クリア組成物において、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上である二官能重合性モノマー(以下、「二官能重合性モノマー(A2)」ともいう)としては、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃以上であり、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であって、分子内に重合性基を2つ有する重合性モノマーである。二官能重合性モノマー(A2)が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、光硬化における反応効率や反応速度等の観点から、二官能重合性モノマー(A2)が有する重合性基はラジカル重合性基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基がより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がさらに好ましい。
本発明のモデル材用クリア組成物において、二官能重合性モノマー(A2)は、好ましくは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上であり、分子内にエチレン性二重結合を2つ有する二官能エチレン性不飽和単量体である。具体的には、例えば、直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、環状構造含有ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。二官能重合性モノマー(A2)は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、好ましくは、炭素数10~20の直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートであり、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート等が挙げられる。
環状構造含有ジ(メタ)アクリレートは、好ましくは炭素数15~30の環状構造含有ジ(メタ)アクリレートであり、例えば、エトキシ化(EO3mol)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、希釈性と反応性の観点から、(メタ)アクリレート系の単量体であることが好ましく、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートがさらに好ましく、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
本発明のモデル材用クリア組成物に含まれる重合性モノマー(A)はホモポリマーとした際に25℃以上のガラス転移温度を有するが、該ガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。ガラス転移温度が25℃以上であると、モデル材用クリア組成物を光硬化して得られるモデル材に高い硬度を付与することができる。重合性モノマー(A)におけるガラス転移温度の上限は、特に限定されるものではないが、通常、200℃以下であり、好ましくは150℃以下である。なお、上記ガラス転移温度は、単官能重合性モノマー(A1)および二官能重合性モノマー(A2)において同様である。
本発明のモデル材用クリア組成物において、重合性モノマー(A)は、単官能重合性モノマー(A1)のみからなってもよく、二官能重合性モノマー(A2)のみからなってもよく、単官能重合性モノマー(A1)と二官能重合性モノマー(A2)とからなっていてもよい。通常、二官能重合性モノマー(A2)が多くなるほど、モデル材用クリア組成物の硬化速度が速くなり、得られるモデル材の硬度が高くなる傾向にあり、単官能重合性モノマー(A1)と二官能重合性モノマー(A2)とを組み合わせて用いることにより、硬化性、機械的強度および硬度を制御しやすく、これらのバランスに優れたモデル材用クリア組成物を得ることができる。
本発明の一実施態様において、モデル材用クリア組成物における単官能重合性モノマー(A1)の含有量は、重合性モノマー(A)の総質量に対して、好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。単官能重合性モノマー(A1)の含有量が上記下限値以上であると反応希釈剤として好適に機能させることができ、上記上限値以下であると良好な反応性を得ることができる。
本発明の一実施態様において、モデル材用クリア組成物における二官能重合性モノマー(A2)の含有量は、重合性モノマー(A)の総質量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。二官能重合性モノマー(A2)の含有量が上記下限値以上であると反応性が良好であり、上記上限値以下であると硬化収縮の度合を抑制しやすく、得られるモデル材(造形物)の反りの発生を抑制することができる。
本発明のモデル材用クリア組成物における、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上である単官能または二官能の重合性モノマー(A)の含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に対して、好ましくは4質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、さらに特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。重合性化合物(A)の含有量が上記範囲であると、適度な希釈性と反応性を付与できる。なお、2種以上の重合性モノマー(A)を含む場合、上記範囲はその合計含有量に対する範囲を意味する。
本発明のモデル材用クリア組成物は、重合性化合物として、アクリロイルモルホリンおよびホモポリマーとしてのガラス転移温度が25℃以上である単官能または二官能重合性モノマー(A)以外の重合性化合物(以下、「他の重合性化合物」ともいう)を含んでいてもよい。他の重合性化合物としては、例えば、オリゴマーが挙げられる。オリゴマーは、活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分である。オリゴマーを配合することにより、得られるモデル材の破断強度を高め、適度な靱性を有し、曲げても割れにくい光造形品を得ることができる。
ここで、本明細書中において「オリゴマー」とは、重量平均分子量Mwが500~10,000のものをいう。オリゴマーの好ましい重量平均分子量Mwは800以上であり、より好ましくは1,000を超えるものをいう。重量平均分子量Mwは、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。オリゴマーとして1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。オリゴマーとしては、二官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、二官能オリゴマーがより好ましい。また、材料選択の幅が広く、様々な特性を有する材料を選択できる観点から、好ましくはウレタン基を有するオリゴマーであり、より好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、さらに好ましくはウレタンアクリレートオリゴマーである。
オリゴマーのガラス転移温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。オリゴマーのガラス転移温度が上記範囲内であると、硬度を維持したまま粘り強い造形物が作成できる。
本発明のモデル材用クリア組成物がオリゴマーを含有する場合、その含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に対して、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは23質量%以下である。オリゴマーの含有量が上記上限下限の範囲内にあると、モデル材用クリア組成物の粘度を適度な範囲に維持したまま、得られるモデル材の破断強度を高め、適度な靱性を有し、曲げても割れにくい光造形品を得ることができる。
さらに、他の重合性化合物としては、三官能以上の多官能エチレン性不飽和単量体などの多官能重合性化合物、ガラス転移温度が25℃未満の単官能または二官能重合性モノマー等が挙げられる。具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明のモデル材用クリア組成物が、三官能以上の多官能重合性化合物を含む場合、その含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。造形物の硬化収縮による変形を抑制する観点から、本発明の好適な一実施態様において、モデル材用クリア組成物は三官能以上の多官能重合性化合物を含まない。
また、本発明のモデル材用クリア組成物が、25℃未満のガラス転移温度を有する単官能または二官能重合性モノマーを含む場合、その含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に対して、好ましくは10量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、モデル材用クリア組成物は、好ましくは、ガラス転移温度が25℃未満の単官能または二官能重合性モノマーを含まない。
本発明のモデル材用クリア組成物において、アクリロイルモルホリン以外の重合性化合物の含有量が、アクリロイルモルホリンの含有量と同じまたはアクリロイルモルホリンの含有量より多いことが好ましい。アクリロイルモルホリンの重合物(ホモポリマー)は水に溶解するため、重合性化合物におけるアクリロイルモルホリンの配合比率が高くなると得られるモデル材(造形物)の表面が溶解もしくは膨潤しやすくなる。このため、モデル材用クリア組成物に含まれるアクリロイルモルホリン以外の重合性化合物の総質量に対するアクリロイルモルホリンの配合比率を特定の範囲に制御することにより、硬度の高い造形物を得ることができ、例えば、サポート材の除去時に水に浸漬した場合であっても、モデル材の溶解や膨潤を抑制し、高い造形精度を確保し得る。具体的には、本発明の一実施態様において、アクリロイルモルホリン以外の重合性化合物の総質量とアクリロイルモルホリンの質量比〔アクリロイルモルホリン以外の重合性化合物:アクリロイルモルホリン〕は、好ましくは1:1~9:1であり、より好ましくは2:1~7:1であり、さらに好ましくは3:1~5:1である。
本発明の一実施態様において、モデル材用クリア組成物を構成する重合性化合物は、
アクリロイルモルホリン、好ましくは、モデル材用クリア組成物の総質量に対して10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下であるアクリロイルモルホリン、
重合性モノマー(A)、好ましくは、モデル材用クリア組成物の総質量に対して20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である重合性モノマー(A)、および、
オリゴマー、好ましくは、モデル材用クリア組成物の総質量に対して1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であるオリゴマー
を含む。モデル材用クリア組成物に含まれる重合性化合物が、アクリロイルモルホリン、重合性モノマー(A)およびオリゴマーを上記範囲の含有量で含むと、フェノール系酸化防止剤による高い黄変抑制効果を達成しつつ、得られるモデル材に高い硬度および耐脆性を付与し得るモデル材用クリア組成物を得ることができる。
本発明のモデル材用クリア組成物における重合性化合物の含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に対して、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、好ましくは99.9質量%以下であり、より好ましくは99.5質量%以下である。
本発明のモデル材用クリア組成物に含まれる重合性化合物は、光硬化における反応効率や反応速度等の観点からラジカル重合性化合物であることが好ましい。
また、モデル材用クリア組成物に含まれる重合性化合物は、20,000以下の重量平均分子量を有する重合性化合物のみからなることが好ましく、より好ましくは10000以下、さらに好ましくは5000以下の重量平均分子量を有する重合性化合物のみからなる。モデル材用クリア組成物に含まれる重合性化合物の重量平均分子量が上記上限以下であると、適度な硬度と靱性を付与することができ、マテリアルジェット方式に適した範囲の粘度設計がしやすくなる。
さらに、モデル材用クリア組成物は三官能以上の重合性化合物を含まないことが好ましい。言い換えると、本発明のモデル材用クリア組成物に含まれる重合性化合物は全て単官能または二官能の重合性化合物であることが好ましい。重合性化合物が単官能または二官能の重合性化合物であると、適度な粘性と反応性を維持できる。
本発明において、モデル材用クリア組成物は、重合性化合物としてアクリロイルモルホリン、重合性モノマー(A)およびオリゴマー以外の重合性化合物を含まないことが好ましく、本発明のモデル材用クリア組成物を構成する重合性化合物が、アクリロイルモルホリン、重合性モノマー(A)およびオリゴマーのみからなることがより好ましい。重合性化合物が、アクリロイルモルホリン、重合性モノマー(A)、並びに、オリゴマーのみからなると、硬化性を制御しやすく、硬化収縮を抑えながら、得られるモデル材に高い硬度および耐脆性をバランスよく付与し得るモデル材用クリア組成物を得ることができる。
本発明のモデル材用クリア組成物は、フェノール系酸化防止剤を含む。本発明のモデル材用クリア組成物に必須成分として含まれるアクリロイルモルホリンは、光硬化して得られるモデル材に褐変や黄変などの変色を非常に生じやすいため、高い透明性や透過性が要求されるモデル材を作製するために用いるモデル材用クリア組成物を構成する重合性化合物として配合することは従来困難であると考えられている。本発明においては、重合性化合物としてアクリロイルモルホリンを重合性モノマー(A)に加えて用いることにより、光硬化して得られるモデル材の硬度を効果的に向上させるとともに、フェノール系酸化防止剤を含むことによりアクリロイルモルホリンに起因するモデル材の変色による劣化を抑制し、透明性に優れたモデル材を実現することができる。特に、本発明においては、フェノール系酸化防止剤を含むことにより、従来公知の他の酸化防止剤(例えば、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等)を用いる場合と比較して高い劣化防止効果を達成し得ることが明らかとなった。
本発明においてフェノール系酸化防止剤とは、基本骨格としてフェノール性水酸基を有する酸化防止剤を意味し、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、モノ-、ジ-またはトリ-(α-メチルベンジル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]o-クレゾール、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート-ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。中でも、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましく、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]がより好ましい。フェノール系酸化防止剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のモデル材用クリア組成物におけるフェノール系酸化防止剤の含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に対して、好ましくは0.01~5質量%であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。フェノール系酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であると、本発明のモデル材用クリア組成物の必須成分であるアクリロイルモルホリンによるモデル材の変色劣化を効果的に抑制することができ、上限値以下であると、フェノール系酸化防止剤の溶解を維持しやすい。
本発明のモデル材用クリア組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、紫外線、近紫外線または可視光領域の波長の光を照射するとラジカル反応を促進する化合物であれば、特に限定されない。光重合開始剤としては、例えば、炭素数14~18のベンゾイン化合物〔例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等〕、炭素数8~18のアセトフェノン化合物〔例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等〕、炭素数14~19のアントラキノン化合物〔例えば、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等〕、炭素数13~17のチオキサントン化合物〔例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等〕、炭素数16~17のケタール化合物〔例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等〕、炭素数13~21のベンゾフェノン化合物〔例えば、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノン等〕、炭素数22~28のアシルフォスフィンオキサイド化合物〔例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス-(2、6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド〕、これらの化合物の混合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、モデル材用クリア組成物を光硬化させて得られる造形品に優れた耐光性を付与し、造形品の黄変を抑制することができることから、アセトフェノン化合物およびアシルフォスフィンオキサイド化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンおよび2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。また、光重合開始剤としては、市販されている製品を用いてもよく、例えば、BASF社のIRGACURE TPO等が挙げられる。
モデル材用クリア組成物における光重合開始剤の含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.5~10質量%である。光重合開始剤の含有量が上記下限値以上であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、モデル材の硬化性を十分に高めることができる。一方、光重合開始剤の含有量が上記の上限以下であると、モデル材中に未反応のまま残存する光重合開始剤の量を低減することができ、未反応の光重合開始剤が残存することにより生じる光造形品の黄変を抑制することができる。
モデル材用クリア組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、保存安定剤、表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤、希釈溶媒、増粘剤等が挙げられる。
表面調整剤は、モデル材用クリア組成物の表面張力を適切な範囲に調整する成分であり、その種類は特に限定されない。モデル材用クリア組成物の表面張力を適切な範囲にすることで、吐出性を安定化させることができるとともに、モデル材用クリア組成物とサポート材用組成物との界面混じりを抑制することができる。その結果、寸法精度が良好な造形物を得ることができる。
表面調整剤としては、例えば、シリコーン系化合物等が挙げられる。シリコーン系化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン系化合物等が挙げられる。具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリアラルキル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらとして、商品名でBYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-315、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-344、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-UV3500、BYK-UV3510、BYK-UV3570(以上、ビックケミー社製)、TEGO-Rad2100、TEGO-Rad2200N、TEGO-Rad2250、TEGO-Rad2300、TEGO-Rad2500、TEGO-Rad2600、TEGO-Rad2700(以上、デグサ社製)、グラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、B-1484、ポリフローATF-2、KL-600、UCR-L72、UCR-L93(共栄社化学社製)等を用いてもよい。また、シリコーン径化合物以外の表面調整剤(例えば、フッ素系表面調整剤等)を用いてもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
モデル材用クリア組成物が表面調整剤を含有する場合、その含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。表面調整剤の含有量が上記の範囲内である場合、モデル材用クリア組成物の表面張力を適切な範囲に調整しやすい。
保存安定化剤は、モデル材用クリア組成物の保存安定性を高めることができる成分である。また、熱エネルギーにより重合性化合物が重合することで生じるヘッド詰まりを防止することができる。本発明のモデル材用クリア組成物においては、通常、フェノール系酸化防止剤が保存安定化剤としての機能も果たすが、フェノール系酸化防止剤以外の保存安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物(HALS)、リン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
モデル材用クリア組成物が保存安定化剤を含有する場合、上記効果を得やすい観点から、その含有量はモデル材用クリア組成物の総質量に基づいて、フェノール系酸化防止剤の含有量との合計で0.01~5質量%であることが好ましい。
本発明のモデル材用クリア組成物は、着色剤を含まないか、またはブルーイング剤等の顔料および/または染料を少量含むのみである、高い透明性を有するクリア組成物である。モデル材用クリア組成物における着色剤の含有量は、モデル材用クリア組成物の総質量に基づいて、通常0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下であり、その下限は0質量%以上である。
本発明のモデル材用クリア組成物は、光硬化して得られるモデル材に高い透明性や透過性を付与するとともに、高い硬度を実現できるため、より優れた外観や高い造形精度を求められる複雑で緻密な立体造形物の作製に好適に用いることができる。本発明のモデル材用クリア組成物は、そのような高精細な造形物を作製し得る観点から、1pL以上1nL未満の液滴として吐出されるものであることが好ましく、より好ましくは1pL以上500pL以下の液滴で吐出される。
本発明のモデル材用クリア組成物は、マテリアルジェット光造形法に用いるため、25℃で1mPa・s以上500mPa・s未満の粘度を有することが好ましい。マテリアルジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃における粘度が20~400mPa・sであることが好ましく、20~300mPa・sであることがより好ましい。上記粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。モデル材用クリア組成物の粘度は、重合性化合物の種類およびその配合比率、希釈溶媒や増粘剤の種類およびその添加量等を調整することにより制御することができる。
本発明のモデル材用クリア組成物の表面張力は、好ましくは24~34mN/mであり、より好ましくは28~30mN/mである。表面張力が上記範囲内であると、マテリアルジェットの高速吐出時においてもノズルからの吐出液滴を正常に形成することができ、適切な液滴量や着弾精度を確保することやサテライトの発生を抑制することが可能であり、造形精度を向上させやすくなる。本発明においてモデル材用クリア組成物の表面張力は、表面調整剤の種類およびその配合量等を調整することにより制御することができる。なお、モデル材用クリア組成物の表面張力は、実施例に記載の方法に従い測定することができる。
本発明のモデル材用クリア組成物の製造方法は特に限定されず。例えば、混合攪拌装置等を用いて、モデル材用クリア組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
<マテリアルジェット光造形用組成物セット>
複雑な形状や緻密な形状を高い精度で造形するために、本発明のモデル材用クリア組成物は、立体造形中にモデル材を支持するためのサポート材と組み合わせて用いることが好ましい。したがって、本発明は、本発明のモデル材用クリア組成物と、マテリアルジェット光造形法によりサポート材を造形するためのサポート材用組成物とを含んでなるマテリアルジェット光造形用組成物セットも対象とする。
<サポート材用組成物>
サポート材用組成物は、光硬化によりサポート材を与える、サポート材用の光硬化性組成物である。モデル材を作成後、サポート材をモデル材から物理的に剥離することにより、または、サポート材を有機溶媒もしくは水に溶解させることにより、モデル材から除去することができる。本発明のモデル材用クリア組成物は、サポート材用組成物として従来公知の種々の組成物との組み合わせにおいて用いることができるが、サポート材を除去する際にモデル材を破損することがなく、環境に優しく、細部まできれいにかつ容易にサポート材を除去することができるため、本発明の光造形用組成物セットを構成するサポート材用組成物は水溶性であることが好ましい。
そのような水溶性のサポート材用組成物としては、例えば、アクリロイルモルホリン並びにポリアルキレングリコールを含むものが挙げられる。
サポート材用組成物がアクリロイルモルホリンを含むことにより、水溶解性に優れたサポート材を得ることができる。また、モデル材用クリア組成物とサポート材用組成物がともにアクリロイルモルホリンを含むことにより、得られるモデル材には高い硬度を付与しつつ、硬度が上がり反りやすくなる傾向にあるモデル材用クリア組成物を、高い硬度を有するサポート材が強固に支持することで、反りを生じ難く、良好な寸法精度で光造形物を得ることができる。
サポート材用組成物に含まれるアクリロイルモルホリンの含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、20~90質量部であることが好ましく、より好ましくは30質量部以上であり、さらに好ましくは40質量部以上であり、より好ましくは80質量部以下であり、さらに好ましくは70質量部以下である。アクリロイルモルホリンの含有量が上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させることなく、サポート材の水による除去性を向上させることができる。
本発明において、サポート材用組成物は、アクリロイルモルホリンに加えて、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体を含んでいてもよい。水溶性の単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、炭素数5~15の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等〕、数平均分子量(Mn)200~1,000の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1~4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1~4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、PEG-PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等〕、炭素数3~15の(メタ)アクリルアミド誘導体〔例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等〕等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
サポート材用組成物が水溶性単官能エチレン性不飽和単量体を含む場合、その含有量は、上記サポート材用組成物100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体の含有量が上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させることなく、サポート材の水による除去性を向上させることができる。
サポート材用組成物に含まれるポリアルキレングリコールとしては、オキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を有し、直鎖型、多鎖型のいずれであってもよい。オキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールを含むことにより、サポート材のサポート力を低下させずに水除去性をより向上し得ることができる。また、水に溶解するものであれば、末端にアルキル基を含んでいてもよく、例えば、好ましくは炭素数6以下のアルキル鎖を含んでいてもよい。
このようなオキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールとして、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールの数平均分子量(Mn)は、100~5000であることが好ましく、より好ましくは、200~3000である。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が上記範囲内であると、硬化前の組成物中ではアクリロイルモルホリンや水溶性単官能エチレン性不飽和単量体と相溶しやすくなる一方、光照射後のアクリロイルモルホリンや水溶性単官能エチレン性不飽和単量体の硬化物とは相溶し難くなり、サポート材の水または水溶性溶剤による除去が容易になる。
サポート材用組成物におけるオキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールの含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、例えば、20~95質量部であってよく、好ましくは20質量部以上であり、好ましくは49質量部以下である。オキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコールの含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上させることができる。
さらに、サポート材用組成物は水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。水溶性有機溶剤は、サポート材用組成物を光硬化させて得られるサポート材の水への溶解性を向上させる成分である。また、サポート材用組成物を低粘度に調整する機能も有する。
水溶性有機溶剤としては、グリコール系溶剤を用いることが好ましく、具体的には、例えば、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアセテート、テトラエチレングリコールモノアセテート、テトラプロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテートなどのグリコールエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールモノエーテルアセテート系溶剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、低粘度のサポート材組成物を調製しやすく、また、硬化して得られるサポート材が水溶解性に優れる点から、水溶性有機溶剤としては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
サポート材用組成物における水溶性有機溶剤の含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、35質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、また、より好ましくは30質量部以下である。水溶性有機溶剤の含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上させることができる。
また、サポート材用組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、モデル材用クリア組成物に含有され得る光重合開始剤として上記に述べた化合物を同様に使用することができる。サポート材用組成物における光重合開始剤の含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは1~5質量部である。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、サポート材の硬化性を十分に高めやすい。
本発明におけるサポート材用組成物の粘度は、マテリアルジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃において1~500mPa・sであることが好ましく、20~400mPa・sであることがより好ましい。上記粘度の測定は、JIS Z 8 803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。
本発明において、サポート材用組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、混合攪拌装置等を用いて、サポート材用組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
<光造形物の製造方法>
本発明は、本発明のモデル材用組成物、または、本発明のマテリアルジェット光造形用組成物セットを用いて、マテリアルジェット方式による光造形法により立体造形物を製造する、光造形品の製造方法も提供する。
本発明の光造形品の製造方法は、本発明のモデル材用組成物または光造形用組成物セットを用いて、マテリアルジェット方式による光造形法により立体造形物を製造する方法である限り特に限定されないが、本発明の好ましい一実施態様において、本発明の製造方法は、モデル材用組成物を光硬化させてモデル材を得ると共に、サポート材用組成物を光硬化させてサポート材を得る工程と、モデル材からサポート材を除去する工程とを含む。
本発明の製造方法において、例えば、作製する物体の3次元CADデータをもとに、マテリアルジェット方式で積層して立体造形物を構成するモデル材用組成物のデータ、および、作製途上の立体造形物を支持するサポート材用組成物のデータを作製し、さらにマテリアルジェット方式の3Dプリンタで各組成物を吐出するスライスデータを作製し、作製したスライスデータに基づきモデル材用およびサポート材用の各組成物を吐出後、光硬化処理を層ごとに繰り返し、モデル材用組成物の硬化物(モデル材)およびサポート材用組成物の硬化物(サポート材)からなる光造形物を作製することができる。
本発明の製造方法において、モデル材用クリア組成物は1pL以上1nL未満、好ましくは1pL以上500pL以下の液滴として吐出される。これにより、寸法精度が良好で、高精細な光造形物を得ることができる。
モデル材用組成物およびサポート材用組成物を硬化させる光としては、例えば、遠赤外線、赤外線、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、α線、γ線およびエックス線等の活性エネルギー線が挙げられる。これらの中でも、硬化作業の容易性および効率性の観点から、近紫外線または紫外線であることが好ましくい。
光源としては、従来公知の高圧水銀灯、メタルハライドランプ、UV-LEDなどが挙げられる。これらの中でも、設備を小型化することができ、かつ、消費電力が小さいという観点からは、LED方式であることが好ましい。光量は、造形品の硬度および寸法精度の観点から、200~500mJ/cm2が好ましい。光源としてUV-LEDを用いる場合、光が深層まで届きやすくなり、造形物の硬度および寸法精度を向上させることができることから、中心波長が385~415nmのものを用いることが好ましい。
立体造形物を構成する各層の厚みは、造形精度の観点からは薄いほうが好ましいが、造形速度とのバランスからは5~30μmが好ましい。
得られた造形品は、モデル材とサポート材とが組み合わされたものである。かかる造形品からサポート材を除去してモデル材である光造形品を得る。サポート材の除去は、例えば、サポート材を溶解させる除去溶剤に得られた造形品を浸漬し、サポート材を柔軟にした後、ブラシなどでモデル材表面からサポート材を除去して行うことが好ましい。サポート材の除去溶剤には水、水溶性溶剤、例えばグリコール系溶剤、アルコール系溶剤などを用いてもよい。これらは、単独で、あるいは複数用いてもよい。
以上の工程により光造形品が得られる。このような本発明の光造形用組成物セットを用いて製造された光造形品は、改善された靱性を有し、機械的強度に優れるとともに寸法精度が良好である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
1.モデル材用クリア組成物
実施例において用いたモデル材用クリア組成物を構成する成分の詳細および略号を表1に示す。
(1)モデル材用クリア組成物の調製
表2に示す各組成に従い、各モデル材用クリア組成物を構成する成分を、それぞれ、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、実施例1~10および比較例1~6のモデル材用クリア組成物を調製した。
(2)モデル材用クリア組成物の物性
上記実施例および比較例において調製した各モデル材用クリア組成物の粘度およびガラス転移温度を、以下に示す方法に従い測定した。結果を表2に示す。
<粘度の測定>
各モデル材用クリア組成物の粘度は、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーン回転数5rpmの条件下測定した。
<ガラス転移温度の測定>
各モデル材用クリア組成物のガラス転移温度は、TG-DTA2000S Thermo Plus Evo II、DSC8230(株式会社リガク社製)を用いて測定した。測定は、昇温温度10℃/分、測定温度範囲-60℃~200℃の範囲で行った。
(3)モデル材クリア用組成物の硬化物の物性および特性の評価
上記実施例および比較例において調製したモデル材用クリア組成物から硬化物を作製し、各硬化物の物性および特性を、以下に示す方法に従い評価した。各結果を表3に示す。
<モデル材用クリア組成物の硬化物の作製>
シリコンゴムシート(厚さ:5mm、アズワン社製)を40mm×40mmの長方形に切り取った後、該長方形の中心部分から、20mm×20mmの正方形をくり抜くことにより、正方形の枠を作製した。該正方形の枠を、56mm×32mmのガラス板(S9224、松浪硝子工業社製)の上に圧着して貼り付けることにより、型を作製した。前記型の枠内に、実施例および比較例のモデル材用クリア組成物を2g流し入れ、紫外線照射装置(LEDランプ、365nm、照射光量:500mJ/cm2)を用いて照射した。さらに、室温まで十分に冷却した後、硬化物を型から外すことにより、実施例および比較例の評価用サンプルを作製した。前記評価用サンプルを用いて、デュロメーター硬さ、色味の評価を行った。
<タイプDデュロメーター硬さ>
JIS K7215に準拠し、タイプAデュロメーターを用いて、実施例および比較例の評価用サンプルのデュロメーター硬さを測定した。デュロメーター硬さが低すぎると、硬化物が柔らかくなりすぎるため、デュロメーター硬さは、70以上であることが好ましい。
<色味変化の評価(アクリル板との比較)>
型枠と同じアクリル板(クラレ社製コモグラスCG P)を用意する。色相測定時に外環境の影響を受けないようにするため、前記アクリル板の上面以外の5面を白色PETフィルムである帝人社製テイジンテトロンフィルムU292Wにて覆い、フィルムの覆っていない上面よりX-Rite939にて条件:光源D65、視野角10℃にて色相L*a*b*の値を測定した。同様に実施例および比較例において調製したモデル材用クリア組成物から得た硬化物を同様の方法で色相を測定し、基準であるアクリル板との色相の差ΔE1を算出した。ΔE1が小さいほどアクリル板の色相に近く、色味変化が小さく、かつ、着色が少ないことを示す。なお、ΔE2の値は、酸化防止剤を配合しない比較例1のモデル材における上記ΔE1と、酸化防止剤の種類または量以外の組成が同じである実施例1、2および比較例2~5の各モデル材における各ΔE1との差である。ΔE2の値が大きいほど、酸化防止剤を配合しない組成物と比較した色味変化が大きいことを意味し、色相が改善されることを示す。
表3の結果から明らかな通り、フェノール系酸化防止剤を含む本発明のモデル材用クリア組成物(実施例1~10)では、酸化防止剤を配合しない比較例1のモデル材用組成物、アミン系酸化防止剤を含む比較例2、3のモデル材用組成物およびリン系酸化防止剤を含む比較例4,5のモデル材用組成物と比較して、ΔE1の値が小さく、アクリル板との比較における色味変化が小さく、着色の少ないクリアなモデル材が得られた。また、酸化防止剤を配合しない比較例1のモデル材用組成物との比較におけるΔE2の値が、アミン系酸化防止剤を含む比較例2、3のモデル材用組成物およびリン系酸化防止剤を含む比較例4,5のモデル材用組成物と比較して大きく、フェノール系酸化防止剤の色味変化の抑制効果が高いことが確認された。これに対して、酸化防止剤としてアミン系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤を用いた場合では、その含有量を多くしても色味変化の抑制効果は低かった(比較例3および5)。また、アクリロイルモルホリンの含有量が低くなると着色の少ないモデル材が得られる傾向にあるが、アクリロイルモルホリンが10質量部である実施例10のモデル材用クリア組成物では、硬度がやや低かった。同様に、重合性モノマー(A)を含まない比較例6のモデル材用組成物では、硬度が上がらず、柔らかいモデル材となった。