以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
<モデル材用組成物>
本発明のモデル材用組成物は、重合性化合物、光重合開始剤、および、一分子中に1つの重合性基を有し、かつ数平均分子量が300〜10,000であるシロキサン化合物を含む。
本発明のモデル材用組成物をマテリアルジェットノズルから滴下した場合、該モデル材用組成物の液滴の最表面に上記特定の構造を有するシロキサン化合物が速やかに配置する。すなわち、本発明のモデル材用組成物をマテリアルジェットノズルから連続的に滴下する場合、滴下されたモデル材用組成物の液滴の最表面および該組成物の液滴が着弾するモデル材用組成物の硬化物の最表面のいずれにもシロキサン化合物が配置しており、この相対関係により、先に着弾したモデル材用組成物の硬化物表面に対する、滴下されたモデル材用組成物の接触角を大きくすることができる。あわせて、硬化物表面と液滴表面においてシロキサン化合物同士による分子間力を強固に働かすことができ、先に着弾したモデル材用組成物の硬化物と滴下された液滴とが強固に結合する。これら2つの効果により、先に着弾したモデル材用組成物の硬化物とそこに重なる次の層を形成するモデル材用組成物の液滴との間において、歪みやずれが生じ難くなり、また、歪みやずれが生じた場合の修復能力を向上させることができる。このため、本発明のモデル材用組成物は、マテリアルジェットノズルから連続して吐出される場合にも垂直方向に精度よく積み上がることができ、高速造形時における高い造形精度を確保することができる。
本発明において、モデル材用組成物に含まれるシロキサン化合物の数平均分子量は300〜10,000であり、好ましくは400以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは600以上であり、好ましくは9,000以下、より好ましくは8,000以下、さらに好ましくは7,000以下である。シロキサン化合物の数平均分子量が300未満であると、モデル材用組成物をマテリアルジェットノズルから滴下した場合にシロキサン化合物が滴下された液滴内において均質化して埋没してしまうため、液滴の最表面に十分な量のシロキサン化合物を配置させることが困難となる。一方、シロキサン化合物の数平均分子量が10,000を超えると、シロキサン化合物が液滴の最表面に存在し易くはなるものの、液滴表面に偏在し易くなることから、接触するモデル材用組成物の液滴または硬化物との接触角にばらつきが生じやすくなる。シロキサン化合物の数平均分子量が、上記上限下限値の範囲内であると、マテリアルジェットノズルから滴下されたモデル材用組成物の液滴の最表面に十分な量のシロキサン化合物を素早く均一に存在させることができるため、高速造形時の造形精度を向上させることができる。
なお、シロキサン化合物の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)やマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF−MS)を用いて求めることができる。
本発明において、シロキサン化合物は一分子中に1つ含まれる重合性基は、モデル材用組成物中に含まれる光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって、モデル材用組成物中の重合性化合物との架橋反応に関与し得る基であれば特に限定されず、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、光硬化における反応速度や反応効率の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基およびビニルエーテル基からなる群から選択される基が好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がより好ましい。なお、光重合性に乏しい加水分解基となるアルコキシ基は、本発明の対象となる一分子中に1つ含まれる重合性基とみなさない。
特に、シロキサン化合物が有する重合性基が、モデル材用組成物を構成する重合性化合物の有する重合性基よりも反応速度が遅い重合性基であると、マテリアルジェットノズルから滴下されたモデル材用組成物の液滴が着弾し、次の硬化工程において、シロキサン化合物が架橋する前に、シロキサン化合物を液滴の最表面に素早くかつ均質に配置させることができる。このため、本発明においては、シロキサン化合物の有する重合性基が、モデル材用組成物を構成する重合性化合物が有する重合性基よりも反応速度の遅い重合性基であることが好ましい。具体的には、本発明の一実施態様において、シロキサン化合物の重合性基は、例えばメタクリロイル基であることが好ましく、シロキサン化合物の重合性基がメタクリロイル基であり、かつ、モデル材用組成物を構成する重合性化合物の有する重合性基がアクリロイル基であることがより好ましい。
本発明においてシロキサン化合物は、一分子中に1つの重合性基を有し、300〜10,000の数平均分子量を有するものであればその構造は特に限定されず、1つの重合性基を分子の片末端または側鎖に有する、従来公知のシロキサン化合物を用いることができる。シロキサン化合物が2つ以上の重合性基を有する場合、マテリアルジェットノズルから滴下されたモデル材用組成物の液滴において、シロキサン化合物と重合性化合物との架橋反応が進み易くなり、シロキサン化合物を架橋前に液滴の最表面に素早く均質に配置させることが難しく、造形精度を向上させることが難しい。マテリアルジェットノズルから滴下されたモデル材用組成物の液滴において、シロキサン化合物が液滴の最表面に配置し、かつ、シロキサン化合物のシロキサン基が液滴の最も外側に位置していると、高速造形時の造形精度を効果的に向上させることができる。したがって、本発明のモデル材用組成物に含まれるシロキサン化合物は、片末端に重合性基を有するシロキサン化合物であることが好ましい。
本発明において、モデル材用組成物に含まれるシロキサン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物が挙げられる。シロキサン化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。下記式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物を用いることにより、高速造形時の造形精度を効果的に高めることができる。
上記式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、メチル基が好ましい。
R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、メチル基が好ましい。
R3は、(CH2)m、(EO)x、(PO)yおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。mは1〜10であり、2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。(EO)は(C2H4O)を示し、(PO)は(C3H6O)を示し、xおよびyは、それぞれ0〜50である。R3としては、(CH2)mが好ましい。
また、nは3〜220であり、10〜200が好ましく、20〜100がより好ましい。
式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物としては、下記式(2):
〔式中、nは3〜220であり、R
2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。〕
で表されるシロキサン化合物が好ましく、下記式(3):
〔式中、nは3〜220である。〕
で表されるシロキサン化合物がより好ましい。
本発明においては、モデル材用組成物に含まれるシロキサン化合物として市販品を用いてもよい。本発明において適当なシロキサン化合物の市販品としては、例えば、片末端型メタクリロイル基を有する反応性シリコーンオイルとして、X−22−2404(分子量420)、X−22−174ASX(分子量900)、X−22−174BX(分子量2,300)、X−24−8201(分子量2,730)、X−22−174DX(分子量4,600)、KF−2012(分子量4,600)(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
本発明のモデル材用組成物における、一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物の含有量は、モデル材用組成物の総質量に対して、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、特に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。シロキサン化合物の含有量が上記上限下限の範囲内にあると、マテリアルジェットノズルから滴下されたモデル材用組成物の液滴の最表面に十分な量のシロキサン化合物を均一に存在させることができ、高速造形時の造形精度を効果的に向上させることができる。なお、一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物を2種以上含む場合、上記含有量の範囲はその含有量の合計として定められる。
本発明において、モデル材用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物以外のシロキサン化合物を含んでいてもよい。一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物以外のシロキサン化合物としては、分子中に重合性基を有さないシロキサン化合物、一分子中に2つ以上の重合性基を分子の側鎖に有するシロキサン化合物、分子の両末端に重合性基を有するシロキサン化合物、分子の側鎖および片末端または両末端に重合性基を有するシロキサン化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリアラルキル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらのシロキサン化合物として市販品を用いてもよく、例えば、分子中に重合性基を有さないシロキサン化合物として、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−378、BYK−UV3510(以上、ビックケミー社製)、一分子中に2つ以上のアクリロイル基を分子の側鎖に有するシロキサン化合物として、TEGO−Rad2100、TEGO−Rad2500(以上、デグサ社製)、一分子中に2つ以上のメタクリロイル基を分子の側鎖に有するシロキサン化合物として、DMS−044、RMS−033、RMS−083(以上、Gelest社製)、分子の両末端にアクリロイル基を有するシロキサン化合物として、BYK−UV3500、BYK−UV3570(以上、ビックケミー社製)、X−22−2445(以上、信越化学工業社製)、分子の両末端にメタクリロイル基を有するシロキサン化合物として、X−22−164、X−22−164AS、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E(以上、信越化学工業社製)、DMS−R05、DMS−R11、DMS−R18、DSM−R22、DSM−R31、DMS−U21(以上、Gelest社製)分子の両末端にビニル基を有するシロキサン化合物として、DMS−V00、DMS−V03、DMS−V05、DMS−V21、DMS−V22、DMS−V25、DMS−V31、DMS−V33、DMS−V35(以上、Gelest社製)等が挙げられる。
モデル材用組成物が、一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物以外のシロキサン化合物を含む場合、その含有量は、モデル材用組成物に含まれる一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物の総質量に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、実質的に含まないことが特に好ましい。一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物以外のシロキサン化合物の含有量が上記範囲内であると、一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物による造形精度の向上効果を十分に得ることができる。一方、一分子中に2つ以上の重合性基を有するシロキサン化合物や、分子中に重合性基を有さないシロキサン化合物等の一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物以外のシロキサン化合物の含有量が多すぎると、造形物の表面性が悪化したり、造形物のガラス転移温度(Tg)が下がり、造形物の硬度や耐熱性が悪化したりする傾向にある。本発明のモデル材用組成物において、一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物以外のシロキサン化合物の含有量の下限値は特に限定されるものではなく、一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物以外のシロキサン化合物を実質的に含んでいなくてもよいが、モデル材用組成物に含まれる一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物の総質量に対して、通常0.05質量%以上であり、例えば0.1質量%以上であってよい。
本発明のモデル材用組成物は、重合性化合物を含み、重合性化合物として単官能エチレン性不飽和単量体(A)を含むことが好ましい。単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であり、分子内にエチレン性二重結合を1つ有する重合性モノマーである。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方またはいずれかを表し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの双方またはいずれかを表す。単官能エチレン性不飽和単量体(A)として1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、単官能エチレン性不飽和単量体(A)としては、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、分子内に、脂環式構造、芳香環構造または複素環構造等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、ならびに(メタ)アクリルアミドおよびN−ビニルラクタム類などの窒素原子を含有する単官能エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。なお、本明細書において、脂環式構造は炭素原子が環状に結合した脂肪族の環状構造を、芳香環構造は炭素原子が環状に結合した芳香族の環状構造を、複素環構造は炭素原子および1以上のヘテロ原子が環状に結合した構造をいう。
直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数4〜30の、より好ましくは炭素数6〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−コハク酸等が挙げられる。
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数6〜20の、より好ましくは炭素数8〜15の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
芳香環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数6〜20の、より好ましくは炭素数8〜15の芳香環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−フタル酸、ネオペンチルグリコール-アクリル酸-安息香酸エステル等が挙げられる。
複素環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数5〜20の、より好ましくは炭素数7〜15の複素環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレートとは異なる、窒素原子を含有する単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド〔例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N,N−アクリロイルモルフォリン等〕、N−ビニルラクタム類〔例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等〕、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。
これらの中でも、モデル材用組成物が含む単官能エチレン性不飽和単量体(A)としては、分子内に環状構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体が好ましい。単官能エチレン性不飽和単量体(A)が分子内に環状構造を有するものであると、環状構造を有さない他の単量体と比較して、モデル材用組成物の必須成分となるシロキサン化合物との相溶性に優れ、モデル材造形物のガラス転移温度(Tg)が高く、硬度や耐熱性に優れる。本発明のモデル材用組成物において、分子内に環状構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体の含有量は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)の総質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、モデル材用組成物に含まれる全ての単官能エチレン性不飽和単量体(A)が分子内に環状構造を有するものであってもよい。
また、単官能エチレン性不飽和単量体(A)としては、(メタ)アクリレート系の単量体であることが好ましい。特に、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリレート系の単量体であることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレートおよび環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、イソボルニルアクリレートが特に好ましい。中でも、分子内に脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリレート系単量体を含むことにより、他の芳香環構造や複素環構造を有する単量体と比較して、モデル材用組成物の必須成分となるシロキサン化合物との相溶性に優れ、モデル材造形物のガラス転移温度(Tg)が高く、硬度や耐熱性に優れる。
本発明のモデル材用組成物における単官能エチレン性不飽和単量体(A)の含有量は、モデル材用組成物に含まれる重合性化合物の総質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上である。単官能エチレン性不飽和単量体(A)の含有量が上記下限値以上であると、モデル材用組成物の必須成分となるシロキサン化合物を希釈し、相溶し易くなり、硬化工程において造形物の表面にシロキサン化合物を速やかに配列させることができる。これにより、モデル材用組成物に適度な強度および硬度を付与することができ、得られるモデル材(光造形品)の反りを抑えることができる。また、得られる光造形品の表面性を高めることができる。また、単官能エチレン性不飽和単量体(A)の含有量は、モデル材用組成物に含まれる重合性化合物の総質量に対して、好ましくは95質量%以下であり、より好ましく90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。単官能エチレン性不飽和単量体(A)に加えて多官能エチレン性不飽和単量体(B)やオリゴマー(C)を適量添加することにより、高い機械的強度を有する造形物を得ることができる。
本発明のモデル材用組成物は、重合性化合物として多官能エチレン性不飽和単量体(B)を含むことが好ましい。多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であり、分子内にエチレン性二重結合を2つ以上有する重合性モノマーである。多官能エチレン性不飽和単量体(B)として1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能エチレン性不飽和単量体(B)としては、例えば、炭素数10〜25の直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはアルキレングリコールトリ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールペンタ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールヘキサ(メタ)アクリレートとして、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−nブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1000)ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(700)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等、炭素数10〜30の環状構造含有ジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレートとして、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート等、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、2官能以上のアミノアクリレート類等が挙げられる。
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
2官能以上のアミノアクリレート類は、空気中の酸素による重合阻害を抑制できると考えられ、紫外線照射時、特に、発光ダイオード(LED)を使用した低エネルギーの紫外線照射時における硬化速度を向上できる。2官能以上のアミノアクリレート類として、例えば、アミノ(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエステル(メタ)アクリレート、アミン変性エポキシ(メタ)アクリレート、アミン変性ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、モデル材用組成物の硬化性を向上させる観点から、(メタ)アクリレート系の単量体であることが好ましく、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートおよび2官能以上のアミノアクリレートがより好ましく、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよび2官能以上のアミノアクリレート類がさらに好ましく、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよび2官能以上のアミノアクリレート類が特に好ましい。
本発明のモデル材用組成物における多官能エチレン性不飽和単量体(B)の含有量は、モデル材用組成物に含まれる重合性化合物の総質量に対して、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは28質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下である。多官能エチレン性不飽和単量体(B)の含有量が上記上限下限の範囲内にあると、高速造形時においても高い造形精度および優れた機械的特性を両立することができる。
さらに、本発明のモデル材用組成物において、親水性(水溶性)のエチレン性不飽和単量体の含有量は少ないほど好ましい。モデル材用組成物が親水性のエチレン性不飽和単量体の含有量が少ないと、モデル材用組成物の必須成分となるシロキサン化合物を相溶する効果が増し、硬化工程において造形物の表面に速やかに配列するため、造形精度を高めることができる。また、光硬化時や硬化後の水または吸湿によるモデル材(光造形品)の膨潤変形を抑制することができる。したがって、本発明のモデル材用組成物における親水性のエチレン性不飽和単量体の含有量は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)および多官能エチレン性不飽和単量体(B)、オリゴマー(C)の総質量に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。本発明の好適な一実施態様において、モデル材用組成物は親水性のエチレン性不飽和単量体を含有せず(すなわち0質量%)、言い換えると、単官能エチレン性不飽和単量体(A)および多官能エチレン性不飽和単量体(B)は全て疎水性(非水溶性)の単量体である。なお、本発明において「親水性(水溶性)のエチレン性不飽和単量体」とは、SP値が11.0を超えるエチレン性不飽和単量体を意味する。親水性のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N−ビニルラクタム類、N−ビニルホルムアミド等が挙げられ、より具体的には、後述するサポート材用組成物が含有し得る水溶性単官能エチレン性不飽和単量体として例示する化合物が挙げられる。
本発明においては、モデル材用組成物に含まれるエチレン性不飽和単量体が疎水性であることが好ましく、単官能エチレン性不飽和単量体(A)および多官能エチレン性不飽和単量体(B)のSP値は、それぞれ11.0以下であることが好ましく、より好ましくは10.5以下であり、さらに好ましくは10.0以下である。また、単官能エチレン性不飽和単量体(A)および多官能エチレン性不飽和単量体(B)のSP値の下限値は、好ましくは7.0以上であり、より好ましくは7.2以上であり、さらに好ましくは7.5以上である。なお、SP値の単位としては、従来慣用的に使用される(cal/cm3)1/2を用いる。また、SI単位に変換する場合は、約2.0455倍すると(J/cm3)1/2となる。単官能エチレン性不飽和単量体(A)および多官能エチレン性不飽和単量体(B)のSP値が上記上限下限の範囲内であると、モデル材用組成物の必須成分となるシロキサン化合物のSP値との差が少なくなり、相溶性が良好となるため、造形精度を向上させることができる。また、光硬化時や硬化後の水または吸湿によるモデル材(光造形品)の膨潤変形を抑制することができる。さらに、本発明のモデル材用組成物において、用いるシロキサン化合物のSP値との差が少ないSP値を有する単官能エチレン性不飽和単量体(A)および多官能エチレン性不飽和単量体(B)の割合を高めることにより、得られる造形品の表面性を向上させることができる。
ここで、SP値は溶解度パラメータであり、各単量体のSP値は分子構造から計算により求められることが知られている。本明細書における各エチレン性不飽和単量体の溶解度パラメータは、アクリル系モノマーの溶解度パラメータは分子構造から計算により求められることが知られており、本明細書における各(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータはFedorsの方法(原崎勇次著,「コーティングの基礎科学」,第3章,35頁,1977年,槙書店発行)により得られる25℃での値を意味する。
本発明のモデル材用組成物は、重合性化合物としてオリゴマー(C)を含むことが好ましい。オリゴマー(C)は、活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分である。オリゴマー(C)を配合することにより、得られるモデル材の破断強度を高め、適度な靱性を有し、曲げても割れにくい光造形品を得ることができる。
ここで、本明細書中において「オリゴマー」とは、重量平均分子量Mwが800〜10,000のものをいう。より好ましくは、重量平均分子量Mwの下限値が1,000を超えるものをいう。重量平均分子量Mwは、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。オリゴマー(C)として1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オリゴマー(C)としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。オリゴマー(C)としては、二官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、二官能オリゴマーがより好ましい。また、材料選択の幅が広く、様々な特性を有する材料を選択できる観点から、好ましくはウレタン基を有するオリゴマーであり、より好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、さらに好ましくはウレタンアクリレートオリゴマーである。
本発明のモデル材用組成物におけるオリゴマー(C)の含有量は、モデル材用組成物に含まれる重合性化合物の総質量に対して、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは23質量%以下である。オリゴマー(C)の含有量が上記上限下限の範囲内にあると、モデル材用組成物の粘度を適度な範囲に維持したまま、得られるモデル材の破断強度を高め、適度な靱性を有し、曲げても割れにくい光造形品を得ることができる。
本発明のモデル材用組成物は、重合性化合物として、単官能エチレン性不飽和単量体(A)、多官能エチレン性不飽和単量体(B)およびオリゴマー(C)を含むことが好ましい。重合性化合物として上記3種類の配合量を調整することにより、モデル材用組成物から得られるモデル材の物性や機械的特性(強度や硬度、靱性等)を所望の範囲に制御しやすくなり、優れた機械的特性を有する光造形品を得ることができる。
本発明のモデル材用組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、紫外線、近紫外線または可視光領域の波長の光を照射するとラジカル反応を促進する化合物であれば、特に限定されない。光重合開始剤としては、例えば、炭素数14〜18のベンゾイン化合物〔例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等〕、炭素数8〜18のアセトフェノン化合物〔例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等〕、炭素数14〜19のアントラキノン化合物〔例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等〕、炭素数13〜17のチオキサントン化合物〔例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等〕、炭素数16〜17のケタール化合物〔例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等〕、炭素数13〜21のベンゾフェノン化合物〔例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等〕、炭素数22〜28のアシルフォスフィンオキサイド化合物〔例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド〕、これらの化合物の混合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、モデル材用組成物を光硬化させて得られる造形品に優れた耐光性を付与し、造形品の黄変を抑制することができることから、アセトフェノン化合物およびアシルフォスフィンオキサイド化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、または2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等が好ましい。また、光重合開始剤としては、市販されている製品を用いてもよく、例えば、BASF社製のDAROCURE TPO、IRGACURE184、IRGACURE907等が挙げられる。
モデル材用組成物における光重合開始剤の含有量は、モデル材用組成物の総質量に基づいて、好ましくは2〜15質量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。光重合開始剤の含有量が上記下限値以上であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、モデル材の硬化性を十分に高めることができる。一方、光重合開始剤の含有量が上記の上限以下であると、モデル材中に未反応のまま残存する光重合開始剤の量を低減することができ、未反応の光重合開始剤が残存することにより生じる光造形品の黄変を抑制することができる。
モデル材用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、保存安定剤、シロキサン化合物以外の表面調整剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤、希釈溶媒、増粘剤等が挙げられる。
保存安定化剤は、モデル材用組成物の保存安定性を高めることができる成分である。また、熱エネルギーにより重合性化合物が重合することで生じるヘッド詰まりを防止することができる。保存安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物(HALS)、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。具体的には、ハイドロキノン、メトキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、IRGASTAB UV-10、IRGASTAB UV-22、FIRSTCURE ST−1(ALBEMARLE社製)、t−ブチルカテコール、ピロガロール、BASF社製のTINUVIN 111 FDL、TINUVIN 144、TINUVIN 292、TINUVIN XP40、TINUVIN XP60、TINUVIN 400等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
モデル材用組成物が保存安定化剤を含有する場合、上記効果を得やすい観点から、その含有量はモデル材用組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.05〜3質量%である。
<着色剤>
本発明のモデル材用組成物は、着色剤をさらに含んでいてもよい。但し、本発明のモデル材用組成物が、無色透明のクリア組成物である場合には、着色剤は含まれない。
上記着色剤としては特に限定されないが、本発明のモデル材用組成物は非水系であることから、非水溶性媒体に均一に分散しやすい顔料、溶解しやすい染料が好ましい。
上記顔料としては、無機顔料、有機顔料のいずれも使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、リトポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカ等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系等の有機顔料が挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。さらに、架橋したアクリル樹脂の中空粒子等も有機顔料として用いてもよい。
本発明のモデル材用組成物には、通常、黒色、並びにシアン、マゼンタ、およびイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相を有する顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色または淡色の体質顔料等も目的に応じて用いることができる。
上記着色剤は、1種単独のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、本発明においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。また、打滴する液滴および液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
上記着色剤の分散には、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができ、また、ラインミキサー等の混合機を用いてもよい。さらに、上記着色剤の分散後、着色剤の粗大粒子を除去する目的で、遠心分離機、フィルター、クロスフロー等を用いて分級処理を行ってもよい。
上記着色剤の分散を行う際には、分散剤を添加することができる。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、公知の高分子分散剤を用いることが好ましい。
上記分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、例えば、モデル材用組成物の全質量に対し、0.01〜5質量%と設定できる。
また、上記着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。
上記着色剤の含有量は、色、および使用目的により適宜選択されるが、画像濃度および保存安定性の観点から、モデル材用組成物の全質量に対し、0.05〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがさらに好ましい。
本発明のモデル材用組成物は、該モデル材用組成物の硬化物上に滴下して着弾させたとき、着弾0.3秒後におけるモデル材用組成物の液滴の前記硬化物に対する接触角(以下、「接触角MM」ともいう)が、好ましくは40°以上であり、より好ましくは41°以上であり、さらに好ましくは42°以上であり、特に好ましくは43°以上である。ここで、上記接触角とは、液滴が固体表面と接触した部分における液滴表面と固体表面とが成す角をいい、いわゆる液滴の濡れ性を表す指標である。また、上記接触角の測定時点を上記組成物(液滴)が上記硬化物(固体面)に着弾してから0.3秒後としたのは、上記組成物が着弾後にエネルギー線の照射により硬化するまでの標準的な時間に合わせたものである。モデル材用組成物の接触角MMが上記下限値以上であると、先に着弾したモデル材用組成物の硬化物とそこに重なる次の層を形成するモデル材用組成物との間における過剰な濡れ広がりを抑制でき、歪みやずれが生じ難く、また、歪みやずれが生じた場合の修復能力が高くなり、マテリアルジェットノズルから連続して吐出する場合にも垂直方向に精度よく積み上げることができ、高速造形時における高い造形精度を確保することができる。モデル材用組成物の接触角MMの上限値は特に限定されるものではないが、通常60°以下であり、高い造形精度および優れた機械的特性を両立し得る観点からは54°以下が好ましい。
本発明においてモデル材用組成物の接触角MMは、先に説明した一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物の種類およびその配合量を調整することにより制御することができる。例えば、シロキサン化合物の数平均分子量を300〜10,000の範囲に調整すること、モデル材用組成物の総質量に対して、シロキサン化合物を0.005〜5.0質量%の範囲で添加することにより、接触角MMを大きくすることができる。なお、本発明における接触角MMは、モデル材用組成物の液滴の硬化物に対するモデル材用組成物の液滴のなす接触角であり、その測定方法は後述する実施例に記載する。
本発明のモデル材用組成物の表面張力は、好ましくは24〜30mN/mであり、より好ましくは24.5mN/m以上であり、さらに好ましくは25mN/m以上であり、より好ましくは29.5mN/m以下であり、さらに好ましくは29mN/m以下である。表面張力が上記範囲内であると、マテリアルジェットの高速吐出時においてもノズルからの吐出液滴を正常に形成することができ、適切な液滴量や着弾精度を確保することやサテライトの発生を抑制することが可能であり、造形精度を向上させやすくなる。
本発明においてモデル材用組成物の表面張力は、通常、先に説明した一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物の種類およびその配合量を調整することにより制御することができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、一分子中に1つの重合性基を有するシロキサン化合物以外のシロキサン化合物や、シロキサン化合物以外の表面調整剤(例えば、フッ素系表面調整剤等)を配合して調整してもよい。なお、モデル材用組成物の表面張力は、実施例に記載の方法に従い測定することができる。
本発明のモデル材用組成物の粘度は、マテリアルジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃において3〜70mPa・sであることが好ましく、5〜60mPa・sであることがより好ましい。上記粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。モデル材用組成物の粘度は、重合性化合物の種類およびその配合比率、希釈溶媒や増粘剤の種類およびその添加量等を調整することにより制御することができる。
本発明のモデル材用組成物の製造方法は特に限定されず。例えば、混合攪拌装置等を用いて、モデル材用組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
<マテリアルジェット光造形用組成物セット>
本発明のモデル材用組成物は、高速造形時における造形精度に優れており、マテリアルジェットノズルから連続して吐出する場合にも高さ方向に精度よく積み上げることができる。このため、モデル材用組成物のみで三次元立体構造を造形し得るが、立体造形中にモデル材を支持するためのサポート材と組み合わせて用いることにより、複雑な形状や緻密な形状をより高い精度で造形することができる。したがって、本発明は、本発明のモデル材用組成物と、マテリアルジェット光造形法によりサポート材を造形するためのサポート材用組成物とを含んでなるマテリアルジェット光造形用組成物セットも対象とする。
<サポート材用組成物>
サポート材用組成物は、光硬化によりサポート材を与える、サポート材用の光硬化性組成物である。モデル材を作成後、サポート材をモデル材から物理的に剥離することにより、または、サポート材を有機溶媒もしくは水に溶解させることにより、モデル材から除去することができる。本発明のモデル材用組成物は、サポート材用組成物として従来公知の種々の組成物との組み合わせにおいて用いることができるが、サポート材を除去する際にモデル材を破損することがなく、環境に優しく、細部まできれいにかつ容易にサポート材を除去することができるため、本発明の光造形用組成物セットを構成するサポート材用組成物は水溶性であることが好ましい。
そのような水溶性のサポート材用組成物としては、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体と、水溶性樹脂と、光重合開始剤とを含むことが好ましい。優れた水除去性とサポート力とを兼ね備えたサポート材を形成するために、より具体的には、上記サポート材用組成物において、上記水溶性単官能エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリルアミド誘導体を含み、上記水溶性樹脂は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシテトラメチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、上記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤を含むことが好ましい。
サポート材用組成物に含まれる水溶性の単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、炭素数5〜15の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等〕、数平均分子量(Mn)200〜1,000の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、PEG−PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等〕、炭素数3〜15の(メタ)アクリルアミド誘導体〔例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等〕、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
サポート材用組成物に含まれる水溶性単官能エチレン性不飽和単量体の含有量は、上記サポート材用組成物の全質量100質量%に対して、19質量%以上80質量%以下であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させることなく、水除去性を向上させることができる。
サポート材用組成物に含まれる水溶性樹脂は、サポート材に適度の親水性を付与するためのものであり、これを添加することにより水除去性とサポート力とを兼ね備えたサポート材を得ることができる。上記水溶性樹脂は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシテトラメチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。サポート材のサポート力を低下させずに水除去性をより向上できるからである。上記水溶性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオキシテトラメチレンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコール等の、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシテトラメチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。上記水溶性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のサポート材用組成物における上記水溶性樹脂の含有量は、上記サポート材用組成物の全質量100質量%に対して、15質量%以上75質量%以下であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させることなく、水除去性を向上させることができる。
前記水溶性樹脂の数平均分子量Mnは、好ましくは100〜5,000である。水溶性樹脂のMnが前記範囲内であると、光硬化前の前記水溶性樹脂と相溶し、かつ、光硬化後の前記水溶性樹脂と相溶しない。その結果、サポート材用組成物を光硬化させて得られるサポート材の自立性を高め、かつ、サポート材の水への溶解性を高めることができる。水溶性樹脂の数平均分子量Mnは、好ましくは200〜3,000、より好ましくは400〜2,000である。
サポート材用組成物には、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、光重合開始剤、水溶性有機溶剤、酸化防止剤、着色剤、顔料分散剤、保存安定化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、モデル材用組成物に含有され得る光重合開始剤として上記に述べた化合物を同様に使用してよいが、LED光源での硬化性に優れ、かつ造形物の着色が少ないといった観点から、アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤を含むことが好ましい。サポート材用組成物が光重合開始剤を含有する場合、その含有量は、サポート材用組成物の総質量に基づいて、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜10質量%である。光重合開始剤の含有量が上記の下限以上であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、サポート材の硬化性を十分に高めやすい。一方、光重合開始剤の含有量が上記の上限以下であると、未反応の光重合開始剤がサポート材に残存することを回避しやすい。
水溶性有機溶剤は、サポート材用組成物を光硬化させて得られるサポート材の水への溶解性を向上させる成分である。また、サポート材用組成物を低粘度に調整する成分である。サポート材用組成物が水溶性有機溶剤を含有する場合、その含有量は、サポート材用組成物の総質量に基づいて、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。また、上記含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。サポート材用組成物中の水溶性有機溶剤の量が多すぎると、サポート材用組成物を光硬化させる際に、水溶性有機溶剤の浸み出しが生じ、サポート材の上層に成形されたモデル材の寸法精度が悪化することがある。水溶性有機溶剤の含有量が上記の上限以下である場合、このような浸み出しを抑制しやすい。また、サポート材用組成物中の水溶性有機溶剤の含有量が上記の下限以上であると、サポート材の水への溶解性を向上させやすく、かつ、サポート材用組成物を低粘度に調整しやすい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、直鎖状または分枝状のアルキレン基を有するアルキレングリコールモノアセテート〔例えばエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアセテート、テトラエチレングリコールモノアセテート、テトラプロピレングリコールモノアセテート等〕、直鎖状または分枝状のアルキレン基を有するアルキレングリコールモノアルキルエーテル〔例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等〕、直鎖状または分枝状のアルキレン基を有するアルキレングリコールジアセテート〔例えばエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート等〕、直鎖状または分枝状のアルキレン基を有するアルキレングリコールジアルキルエーテル〔例えばエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジブチルエーテル等〕、直鎖状または分枝状のアルキレン基を有するアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート〔例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等〕等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、サポート材の水への溶解性を向上させやすく、かつ、サポート材用組成物を低粘度に調整しやすい観点から、水溶性有機溶剤は、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、または、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることがより好ましい。
本発明のサポート材用組成物の粘度は、マテリアルジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃において3〜70mPa・sであることが好ましく、5〜60mPa・sであることがより好ましい。上記粘度の測定は、JIS Z 8 803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。
本発明のサポート材用組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、混合攪拌装置等を用いて、サポート材用組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
<光造形品の製造方法>
本発明は、本発明の光造形用組成物セットを用いて、マテリアルジェット方式による光造形法により立体造形物を製造する、光造形品の製造方法も提供する。本発明の製造方法において、パーソナルコンピュータと、パーソナルコンピュータに接続される三次元造形装置とを少なくとも備える三次元造形システムを用いてもよい。
本発明の光造形品の製造方法は、本発明の光造形用組成物セットを用いて、マテリアルジェット方式による光造形法により立体造形物を製造する方法である限り特に限定されないが、本発明の好ましい一実施態様において、本発明の製造方法は、モデル材用組成物を光硬化させてモデル材を得ると共に、サポート材用組成物を光硬化させてサポート材を得る工程(I)と、モデル材からサポート材を除去する工程(II)とを含む。上記工程(I)および上記工程(II)は、特に限定されないが、例えば、以下の方法により行ってよい。
<工程(I)>
図1は、本実施態様に係る光造形品の製造方法における工程(I)を模式的に示す図である。図1に示すように、三次元造形装置1は、マテリアルジェットヘッドモジュール2および造形テーブル3を含む。マテリアルジェットヘッドモジュール2は、モデル材用組成物4’を充填したモデル材用マテリアルジェットヘッド7と、サポート材用組成物5’を充填したサポート材用マテリアルジェットヘッド8と、ローラー9と、光源10とを有する。
まず、マテリアルジェットヘッドモジュール2を図1中の造形テーブル3に対して相対的に、X方向およびY方向に走査させるとともに、モデル材用マテリアルジェットヘッド7からモデル材用組成物4’を吐出させ、かつ、サポート材用マテリアルジェットヘッド8からサポート材用組成物5’を吐出させることにより、モデル材用組成物4’とサポート材用組成物5’とからなる樹脂組成物層を形成する。そして、上記樹脂組成物層の上面を平滑にするために、ローラー9を用いて、余分なモデル材用組成物およびサポート材用組成物を除去する。次いで、モデル材用組成物4’とサポート材用組成物5’とからなる樹脂組成物層に、光源10を用いて光を照射することにより、造形テーブル3上に、モデル材4およびサポート材5からなる硬化層を形成する。
次に、造形テーブル3を、上記硬化層の厚み分だけ、図1中のZ方向に降下させる。その後、上述と同様の方法で、上記硬化層の上にさらにモデル材4およびサポート材5からなる硬化層を形成する。これらの工程を繰返し行うことにより、モデル材4およびサポート材5からなる硬化物6を作製する。
モデル材用組成物およびサポート材用組成物を硬化させる光としては、例えば、遠赤外線、赤外線、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、α線、γ線およびエックス線等の活性エネルギー線が挙げられる。これらの中でも、硬化作業の容易性および効率性の観点から、近紫外線または紫外線であることが好ましくい。
光源10としては、ランプ方式、LED方式等が挙げられる。これらの中でも、設備を小型化することができ、かつ、消費電力が小さいという観点から、LED方式であることが好ましい。
本発明の好適な一実施態様において、モデル材用組成物の硬化は、320〜410nmの波長域において1レイヤーあたりの積算光量が300mJ/cm2以上の活性エネルギー線を照射することにより行われる。320〜410nmの波長域において、高い積算光量の活性エネルギー線を照射することにより、反応速度の比較的速い重合性基(例えばアクリロイル基等)を有する成分の架橋反応が促進される。このため、例えば、重合性基としてアクリロイル基を有する重合性化合物を用い、アクリロイル基より反応速度の遅い重合性基(例えばメタクリロイル基)を有するシロキサン化合物を用いることにより、マテリアルジェットノズルから吐出されたモデル材用組成物の液滴が着弾して硬化するまでの時間において、先に重合性化合物の架橋反応が促進され、シロキサン化合物の架橋が遅れるため、シロキサン化合物をモデル材用組成物の液滴の最表面に配列させるための時間を与えることができ、モデル材用組成物の造形精度を向上させることができると考えられる。本発明において、上記積算光量は300mJ/cm2以上であることがより好ましく、500mJ/cm2以上であることがさらに好ましい。上記ピーク照度の上限値は特に限定されないが、通常、省エネルギー量や基材ダメージを防ぐ観点から2,000mJ/cm2以下である。
<工程(II)>
図2は、本実施態様に係る光造形品の製造方法における工程(II)を模式的に示す図である。工程(II)において、工程(I)で作製したモデル材4およびサポート材5からなる硬化物6を、容器11に入れた溶媒12中に浸漬させる。これにより、サポート材5を溶媒12に溶解させて、除去することができる。
サポート材を溶解させる溶媒12としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、水道水、井戸水等が挙げられる。これらの中でも、不純物が比較的少なく、かつ、安価に入手できるという観点から、イオン交換水であることが好ましい。
以上の工程によりモデル材用組成物を光硬化させて、三次元立体等の光造形品を製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
1.モデル材用組成物
各実施例および比較例において用いたモデル材用組成物を構成する成分の詳細および略号を表1〜表4に示す。
表1中、単官能エチレン性不飽和共重合体(A)および多官能エチレン性不飽和単量体(B)のSP値は、Fedorsの方法(原崎勇次著,「コーティングの基礎科学」,第3章,35頁,1977年,槙書店発行)により得られる25℃での値を意味し、以下の方法に従い算出した値である。
Fedorsは、凝集エネルギー密度とモル体積の両方が、置換基の種類および数に依存していると考え、以下の式と各々の置換基に応じた定数を提案している。
δ=(ΔE/V)1/2 =(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
ここで、δはSP値(cal/cm3)1/2、ΔEは凝集エネルギー密度、Vはモル体積、Δeiは各々の原子又は原子団の蒸発エネルギー(cal/mol)、Δviは各々の原子または原子団のモル体積(cm3/mol)である。
また、Tgが25℃以上の化合物については、モル体積に次の値を加算する。化合物中の繰り返し単位中の主鎖骨格原子数をnとした場合、n<3のときはΔviに4nを加え、n≧3のときはΔviに2nを加える。
(1)モデル材用組成物の調製
表5に示す組成に従い、各モデル材用組成物を構成する成分を、それぞれ、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、実施例1〜6のモデル材用組成物1〜6および比較例1〜7のモデル材用組成物C1〜C7を調製した。
また、実施例7および8については、250mlプラスチック製ビンに、表4に示す着色材、分散剤、分散助剤と保存安定剤とを、分散溶媒として表1に示すIBOAとを、表5に示す配合比率で合計65重量部となるよう計り取り、これに直径0.3mmジルコニアビーズ250重量部を加えて、この混合物をペイントコンディショナー(東洋精機社製)により2時間分散処理して、顔料分散体を得た。次に、この顔料分散体50.5重量部に、表5に示す配合比率で着色剤、分散剤、分散助剤、保存安定剤とIBOA以外の残りの材料49.5重量部を添加して、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、実施例7および8のモデル材用組成物7および8を調製した。
(2)モデル材用組成物の物性
上記実施例1〜8および比較例1〜7において調製したモデル材用組成物の粘度および表面張力を、以下に示す方法に従い測定した。結果を表5に示す。
<粘度の測定>
各モデル材用組成物の粘度は、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーン回転数5rpmの条件下測定した。
<表面張力の測定>
各モデル材用組成物の表面張力は、25℃における、測定開始から20秒後の値を、全自動平衡式エレクトロ表面張力計ESB−V(協和界面科学社製)を用いて測定した。
(3)モデル材用組成物の硬化膜物性および造形特性の評価
上記実施例1〜8および比較例1〜7において調製したモデル材用組成物の硬化膜物性および造形特性を、以下に示す方法に従い評価した。各結果を表6に示す。
<濡れ性(ピペット液滴径)>
実施例1で作製したモデル材用組成物を、バーコーター(♯14)を用いて、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製の白色PETフィルム、商品名“U292W”)上に塗布し、厚さ3μmの印字膜を形成した。印字膜を硬化する光源は、UV−LED硬化装置(日亜化学社製アルミ基板モジュールNSSU100AT、LEDピーク波長365nm)を用いて、照度508mW/cm2(UVチェッカーGSユアサ・ライティング製UVR−N1にて実測)の条件にて照射した。この印字膜を仮硬化の後、酸素阻害抑制効果を付与するためにUVカット機能のない透明PETフィルムを印字膜の表面に貼合し、仮硬化を含めた全積算光量が23mJ/cm2となるように紫外線を照射して硬化させて、貼合したPETフィルムを剥がしてモデル材硬化膜Aとした。
続いて、モデル材硬化膜Aの表面に対して、マイクロピペットを用いて、モデル材用をドロップ体積5.0±0.2μL滴下し、20秒後に、前述のUV−LED硬化装置を用いて、全積算光量が138mJ/cm2となるように紫外線を照射して硬化させて、直径の長さを測定した。なお、表6の測定値は、同一組成物により3回評価を実施し、その平均値を表示した。
実施例2〜8および比較例1〜7で作製したモデル材用組成物を用いて、上記実施例1と同様の方法によりモデル材硬化膜B〜HおよびI〜Oを作製した。
実施例9として、実施例2のモデル材用組成物を用いて、上記「濡れ性」試験におけるUV−LED硬化装置(日亜化学社製アルミ基板モジュールNSSU100AT、LEDピーク波長365nm)を用いて全積算光量が23mJ/cm2とする代わりに、下記「造形物の反り」試験における高圧水銀ランプ硬化装置(アイグラフィックス社ECS−151Sユニット、高圧水銀ランプH015−L312、ピーク波長365nm)を用いて、照度330mW/cm2(UVチェッカーGSユアサ・ライティング製UVR−N1にて実測)の条件にて照射した。この印字膜を全積算光量が570mJ/cm2となるように紫外線を照射して硬化させて、モデル材硬化膜Pを作製した。
<接触角MM>
上述の各モデル材硬化膜の表面に対して、株式会社マツボー社製の接触角測定装置“PG−X”を用いて、動的モードをドロッピングモードとし、各モデル材硬化膜を構成するモデル材用組成物を、それぞれ、ドロップ体積1.8±0.1μLで吐出させ、組成物の液滴がモデル材硬化膜上に着弾した0.3秒後における液滴の接触角を測定した。表6において、モデル材硬化膜に対するモデル材用組成物の接触角をMMと表示した。
<造形精度>
上記実施例1〜8および比較例1〜7で作製したモデル材用組成物を、それぞれ、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置(冨士フィルム社 DMP−2831、ヘッド10pL仕様)を用いて、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製の透明PETフィルム、商品名“ルミラーQT92”)上に積層し、造形精度を評価した。このインクジェット記録装置におけるヘッド吐出条件として、電圧は30V、周波数は20kHz、ヘッド温度は40℃、ヘッドとPETフィルムとのクリアランスは2mmとした。また、光源としてUV−LED硬化装置(日亜化学社製アルミ基板モジュールNVSU119C、LEDピーク波長375nm、照度800mW/cm2)をヘッドと併走するように設置した。モデル材用組成物がPETフィルムもしくは下層となるモデル材硬化膜に着弾した0.4秒後に、全積算光量が43mJ/cm2となるように調整し、紫外線を照射して硬化させた。造形物のインプットデータとして、1辺0.3mm四角を1レイヤーとし、四角柱を作製するため、100レイヤー積層した。以下の基準によりその柱の高さを計測し、造形精度を評価した。なお、実施例9は、実施例2で調製したモデル材用組成物2を用いて、1レイヤーあたりの全積算光量を43mJ/cm2の代わりに、430mJ/cm2として評価した。
<評価基準>
評価◎:高さ2000μm以上
評価○:高さ1000〜2000μm
評価×:高さ1000μm未満
<造形物の表面性>
上述の濡れ性試験において作製した各モデル材硬化膜の表面状態を目視にて確認し、ピンポールやハジキ、ブツなど欠点の頻度を観察した。以下の基準により造形物の表面性を評価した。
<評価基準>
評価◎:全く欠点なし
評価○:わずかに欠点あり
評価×:多数、欠点あり。
<造形物の反り>
上記実施例1〜8および比較例1〜7で作製したモデル材用組成物を、それぞれ、バーコーター(♯36)を用いて、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製の透明PETフィルム、商品名“ルミラー75S10”)上に塗布し、厚さ8μmの印字膜を形成した。印字膜を硬化する光源は、高圧水銀ランプ硬化装置(アイグラフィックス社ECS−151Sユニット、高圧水銀ランプH015−L312、ピーク波長365nm)を用いて、照度330mW/cm2(UVチェッカーGSユアサ・ライティング製UVR−N1にて実測)の条件にて照射した。この印字膜を全積算光量が570mJ/cm2となるように紫外線を照射して硬化させて、造形物の反りを評価するための各モデル材硬化膜を得た。以下の基準により、反りのレベルを確認した。
<評価基準>
評価◎:全く反りなし
評価○:わずかに反りあり
評価×:大きく反りあり