JP7078029B2 - 電縫鋼管およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電縫鋼管およびその製造方法に関する。特に、油井用、自動車用、あるいは建築用などのうちで、ロール成形時の負荷が大きく成形そのものが困難であり、管周方向のひずみと管厚変動の分布を均一にすることが難しいとされる、厚肉の電縫鋼管およびその製造方法に好適である。
電縫鋼管は、寸法精度が良好で表面肌が美麗であり、かつ生産性が高いという優れた特長を有しており、石油や天然ガスなどのラインパイプ用鋼管や自動車用の鋼管、建築用の鋼管等の幅広い用途に用いられている。近年では、従来に比べて高強度や厚肉の電縫鋼管が求められるようになり、電縫鋼管の素材となる熱延鋼板の製造分野では、従来よりも高強度な鋼板や厚肉の鋼板が開発され製造されつつある。ここで、厚肉とは26mm以上32mm以下の鋼板を言う。
図1は、電縫鋼管の製造設備の一例を示す模式図である。電縫鋼管の素材である鋼帯1を、例えばレベラー2により入側矯正した後、複数のロールからなるケージロール群3で中間成形してオープン管とし、次いで複数のロールからなるフィンパスロール群4で管形状に仕上げ成形する。その後、スクイズロール5で圧接しながら鋼帯1の幅端部を溶接機6で電気抵抗溶接して、電縫鋼管7となる。電縫鋼管の製造設備は、通常、一つの成形ラインで、成形ロールの位置調整やロール交換を行うことにより、様々な外径や管厚の鋼管を製造することが可能となっている。
溶接機の上流に配置されている複数段のフィンパスロールでは、鋼板の幅端部をフィンで拘束しながら、曲げ変形および鋼板幅方向の絞り変形が加えられる。これにより、素管形状の凍結や、鋼板の端面適正化により後工程の電縫溶接性が向上する効果が得られる。このフィンパスロールでの絞り量は各スタンドで適切に管理されており、絞り量が過小であれば、素管形状の凍結や、鋼板の端面不良により電縫溶接性が著しく悪化することになる。また、絞り量が過大であれば、特に管底周辺での鋼管の周方向の管厚偏差の拡大や、加工硬化により機械特性が著しく悪化する。特に厚肉鋼管では、鋼管の内外面の周長差が拡大することにより、このような問題が顕著となるため、フィンパス成形の管理が困難であった。
そこで、一つの成形ラインにおける管の製造可能範囲を拡大するため、様々な技術が開発されてきた。例えば、特許文献1には、金型の曲率半径と曲げ角度、および板厚から、板厚中心に必要な絞り量を与えた際の外周長絞り量をスタンドごとで算出し、これに基づいて設計されたフィンパスロールを用いて成形する方法が開示されている。
特許第6007777号公報
しかしながら、上記の特許文献1に開示された方法は、半成形品(オープン管)がフィンパスロールのカリバー周方向全面に接触している状態のものであり、実際は、特にNo.1スタンドのフィンパスロールではロールとオープン管が周方向接触していない領域が存在する。このような場合、素管外周の周方向各位置における曲率半径と曲げ角度は設計通りにならず、過小なもしくは過大な絞りの問題は解消されない。
オープン管を加工成形すると、オープン管はひずみ(加工硬化)を受ける。特にロール成形ではオープン管の管周方向でこの加工硬化の進行が異なる傾向が発生しやすい。そのため、管周方向において、降伏比(YR)および管厚の不均一が生じる。管周方向における降伏比および管厚が不均一であると、衝撃を受けた際に座屈が生じやすい。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、管底周辺において造管による管周方向の管厚の変動が小さく、座屈の抑制が可能な電縫鋼管およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、フィンパスロール入側の半成形品(オープン管)の断面形状と仕上げ成形(フィンパス成形)後の管周方向の管厚の偏差および周方向ひずみ分布の間に相関があり、フィンパス成形後の過剰なひずみ、すなわち加工硬化を抑制し、かつ、管周方向の残留ひずみ分布を均等化できる最適な条件が存在することを見出した。
本発明は上記知見に基づくものであり、その特徴は以下の通りである。
[1]シーム部を有する電縫鋼管であって、前記電縫鋼管の中心を中心座標として、前記シーム部を上にしたときの管底部を起点とする前記管底部からの管周方向の角度θ1が0°~±45°の範囲における前記電縫鋼管の管厚が、管周方向の管厚の平均を基準として95.0%以上105.0%以下の範囲にあることを特徴とする電縫鋼管。
[2]管底部の降伏強さが295MPa以上450MPa以下であり、管底部の引張強さが430MPa以上550MPa以下であることを特徴とする[1]に記載の電縫鋼管。
[3]質量%で、C:0.07~0.20%、Mn:0.3~2.0%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Al:0.01~0.06%、N:0.006%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
管厚中心部の鋼組織が、フェライトからなる主相と、パーライト、擬似パーライトおよび上部ベイナイトから選択される1種または2種以上からなり、その面積分率が8%以上20%以下である第二相とを有し、前記管厚中心部の鋼組織の平均結晶粒径が7μm以上20μm以下であり、
鋼管内表面および外表面の鋼組織が、フェライト単相またはベイニティックフェライト単相であり、前記鋼管内表面および外表面の鋼組織の平均結晶粒径が2μm以上20μm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の電縫鋼管。
[4]前記成分組成は、さらに、質量%で、Si:0.4%未満を含有することを特徴とする[3]に記載の電縫鋼管。
[5]前記成分組成は、さらに、質量%で、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下およびV:0.10%以下から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする[3]または[4]に記載の電縫鋼管。
[6]前記成分組成は、さらに、質量%で、B:0.008%以下を含有することを特徴とする[3]~[5]のいずれかに記載の電縫鋼管。
[7]管厚が26mm以上32mm以下であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の電縫鋼管。
[8]鋼帯をケージロール群により中間成形し、オープン管とする中間成形工程と、フィンパスロール群により管状に仕上げ成形する仕上げ成形工程と、前記仕上げ成形工程後に前記鋼帯の幅端部を電気抵抗溶接して管とする溶接工程とを有する電縫鋼管の製造方法において、
前記仕上げ成形工程において、前記オープン管の進行方向と直交する断面における前記フィンパスロール群の第1フィンパスロールにて形成される外周円の中心を位置O、前記オープン管断面における底部の位置を位置Pとし、位置Oを中心として位置Oと位置Pを結ぶ直線から円周方向に角度θ2とした場合、角度θ2が0°~±45°の範囲において、第1フィンパスロール入側の前記オープン管の外径曲率ρと、前記第1フィンパスロールの曲率ρが下記式(1)を満たすように仕上げ成形することを特徴とする電縫鋼管の製造方法。
0.20≦ρ<1.49・・・(1)
本発明によれば、管底周辺において造管による管周方向の管厚の変動が小さく、かつ過剰な加工硬化を抑制し、座屈の抑制が可能な電縫鋼管を製造することができる。
図1は、電縫鋼管製造ラインの一例を示す模式図である。 図2は、フィンパスロールによる仕上げ成形直前のオープン管の断面形状を示す模式図である。 図3は、第1フィンパスロールの成形ロール(上ロール、下ロール、サイドロール)で形成されるロール間隙空間と、オープン管の縦長の成形前形状を重ね合わせた図であり、図3(a)はオープン管8が従来の方法で中間成形され断面が縦長の形状の場合の例を示す図であり、図3(b)はオープン管8の断面が本発明の条件を満たす形状の場合の例を示す図である。 図4は、オープン管の形状が製品の管厚の変動に与える影響を示すグラフである。 図5は、オープン管の形状が製品の管厚中央部の周方向ひずみの分布に与える影響を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、電縫鋼管の製造設備の一例を示す模式図である。前述したように、電縫鋼管の素材である鋼帯1を、例えばレベラー2により入側矯正した後、複数のロールからなるケージロール群3で中間成形してオープン管とし、次いで複数のロールからなるフィンパスロール群4で管形状に仕上げ成形する。その後、スクイズロール5で圧接しながら鋼帯1の幅端部を溶接機6で電気抵抗溶接して、電縫鋼管7となる。ここで、鋼帯1は、炭素鋼の熱延鋼板を例とすることが出来る。
ケージロール群3による中間成形では、仕上げ成形直前(第1フィンパスロールの入り側)の半成形品(以下、オープン管8という)の断面は、図2に示すような縦長の形状となっている。図3は、フィンパスロール群4の第1フィンパスロールの成形ロール(上ロール、下ロール、サイドロール)で形成されるロール間隙空間と、オープン管8の縦長の成形前形状を重ね合わせた図であり、下ロールの中心軸を含むオープン管の進行方向と直交する断面において、ロールカリバーと呼ばれるロール断面の外径線にて概略囲まれる空間の断面に対し、第1フィンパスロールの入側でのオープン管8の進行方向と直交する前記オープン管の断面を、オープン管8の底部の外表面と下ロールのカリバー底を一致させて投影した図である。ここで、図3(a)はオープン管8が従来の方法で中間成形され断面が縦長の形状の場合の例を示す図であり、図3(b)はオープン管8の断面が本発明の条件を満たす形状の場合の例を示す図である。
ここで、オープン管の進行方向と直交する断面において、第1フィンパスロールで形成される外周円の中心を位置O、オープン管8断面における底部の位置を位置Pとし、位置Oを中心として位置Oと位置Pを結ぶ直線から円周方向に角度θ2(度)となるオープン管8の外周位置Xから位置Oまでの距離をr(mm)とすれば、オープン管8の断面形状は位置Oを原点とする極座標(r、θ2)の軌跡で表すことができる。同様に、直線OPから円周方向に角度θ2(度)となる第1フィンパスロールの外周位置X’から位置Oまでの距離をr’(mm)とする。距離r、距離r’を用いて、その逆数である曲がり具合を示す曲率ρ、ρに変換することにより、オープン管8や、第1フィンパスロールの形状を評価でき、その形状の関数をそれぞれP(ρ、θ2)、R(ρ、θ2)として表すことができる。
そこで、オープン管8の断面形状を位置Oと位置Pを結ぶ直線OPを基軸として左右対称であるとし、オープン管8の形状の関数P(ρ、θ2)を変数として、オープン管8の断面の形状が、オープン管8の外周面と仕上げ成形中の(後段の)フィンパスロールのカリバー面との接触状況や、仕上げ成形後の鋼管の管周方向の増肉分布や周方向ひずみ分布などに及ぼす影響について数値解析を行って調べた。ここで、オープン管8の断面形状は第1フィンパスロールの直下から入側方向、すなわち上流方向へ1m離れたところの形状を用いた。
その結果、角度θ2が周方向0°~±45°の範囲において、第1フィンパスロール入側のオープン管8の外径曲率ρと、前記第1フィンパスロールの曲率ρが、以下の関係式(1)を満足する場合に、周方向0°~±45°の管底部において、ひずみ(加工硬化)の影響が少なく、管周方向における降伏比(YR)および管厚の不均一を抑制できることが判明した。
0.20≦ρ<1.49・・・(1)
なお、上記式(1)において、
ρ:第1フィンパスロール入側のオープン管の外径曲率
ρ:第1フィンパスロールの曲率
である。
ρが0.20未満の場合、オープン管8が第1フィンパスロールを通過するときに、角度θ2の範囲内の曲げ加工が大きくなるため、第1フィンパスロールの負荷が高くなり、仕上げ成形を正常に行うことができなくなる。一方、ρが1.49以上の場合、オープン管8の形状の関数P(ρ、θ2)と、第1フィンパスロールの形状の関数R(ρ、θ2)との乖離が大きくなり、第1フィンパスロールでの仕上げ成形中のオープン管8に十分な曲げ変形が完了せず、所定の曲率をもったオープン管を得ることができない。このような状態でフィンパス成形による絞り加工がおこなわれる場合、オープン管形状は縦長になり、第1フィンパスロールの曲率ρに対して、オープン管8の曲率ρが大きくなり、第1フィンパスロールの成形のみでは、第1フィンパスロールの周方向の領域に対して、オープン管8がなじまないため、第1フィンパスロール直下で、管軸方向の垂直断面における、第1フィンパスロールに接触するオープン管の管周方向の接触部が極度に減少する。その結果、オープン管の周方向位置によってひずみ(加工硬化)が異なり、管周方向において、降伏比(YR)および管厚の不均一が生じ、座屈の原因となる。
また、オープン管8の形状の関数P(ρ、θ)と、第1フィンパスロールの形状の関数R(ρ、θ)との乖離が大きい場合、オープン管8と第1フィンパスロールの非接触部の一部において、曲げ変形が過度になる折れが発生し、曲げ内側の肉厚が過剰に増加しやすくなる。
上記関係式(1)を管底部から周方向0°~±45°に限定した理由については、以下のとおりである。厚肉の素板を成形した場合、オープン管8の形状の関数P(ρ、θ)と、第1フィンパスロールの形状の関数R(ρ、θ)との過大な乖離による折れは、第1フィンパスロールの下ロールにおける成形によって発生する。したがって、第1フィンパスロールの下ロールと接触する管底部から周方向0°~±45°に限定した。
以下に、式(1)の技術的意義について、その詳細を説明する。
図4は、オープン管8の形状が製品の管厚の変動に与える影響を示すグラフであり、管周方向の角度と管厚変動との関係を示している。横軸はシーム部(溶接部)を上にしたときの鋼管の管底からの角度θ1であり、縦軸は管底での管厚を基準としたときの管厚変動率を示す。
また、図5は、オープン管の形状が製品の管厚中央部の周方向ひずみの分布に与える影響を示すグラフであり、管周方向の角度と管厚中央部の周方向ひずみとの関係を示している。横軸はシーム部を上にしたときの鋼管の管底からの角度θ1であり、縦軸は管底の管厚中央部を基準としたときの管厚中央部の周方向ひずみ(測定方法はロール成形に関する有限要素シミュレーションから算出)を示す。
なお、図4、5の横軸について、管は左右対称であるとみなし、角度θ1はプラスの値(0°以上)とした。
従来の製造方法では、例えば、厚さ26mm以上のような厚肉鋼管を成形する場合、所望の形状に成形することが難しく、オープン管8の断面形状が縦長になり、オープン管8の外径曲率ρは第1フィンパスロールの曲率ρに対して大きくなり、オープン管8の角度θ2が周方向0°~±45°の範囲において、ρが1.49以上となる。このような場合、第1フィンパスロールでの仕上げ成形において、オープン管8の角度θ2が周方向0°~±45°の範囲、特に周方向0°~±35°に周方向の圧縮ひずみが増加し、管厚の変動が激しく管厚が増加した。また、特に、オープン管8の角度θ2が0°~±35°に圧縮ひずみが増加していることから加工硬化が顕著となり、管がひずみを大きく受けていることから、管周方向の降伏比分布は不均一になると考えられる。このため、鋼管の塑性変形能が管の周方向位置によって異なり、鋼管に負荷がかかった場合、降伏比が大きな管底付近では変形エネルギーを吸収しきれず、この位置で局所的な変形が進行し、破壊にいたりやすくなる。
なお、オープン管8の角度θ2が周方向0°~±45°の範囲において、ρが0.20以上1.49未満とする方法については、第1フィンパスロールでの仕上げ成形直前までに、管の内面側から外面側へ素管を張り出すインナーロールを適用して、オープン管の形状を制御する方法等があるが、これに限らない。
次に、本発明の製造方法により得られる電縫鋼管について説明する。
本発明の電縫鋼管は、シーム部を有する電縫鋼管であって、電縫鋼管の中心を中心座標として、シーム部を上にしたときの管底部を起点とする管底部からの管周方向の角度θ1が0°~±45°の範囲における電縫鋼管の管厚が、管周方向の管厚の平均を基準として95.0%以上105.0%以下の範囲にあることを特徴とする。
上述したように、オープン管8の角度θ2が周方向0°~±45°の範囲において、ρが0.20以上1.49未満とすることにより、第1フィンパスロールでの仕上げ成形において、オープン管8の角度θ2、すなわち、電縫鋼管の中心を中心座標として、シーム部を上にしたときの管底部を起点とする管底部からの管周方向の角度θ1が0°~±45°の範囲での圧縮ひずみの増加が小さくなり、電縫鋼管の管厚が、管周方向の管厚の平均を基準として95.0%以上105.0%以下の範囲に収めることができる。したがって、オープン管が受けるひずみ量の周方向位置による変動が従来に比べて小さいため、管周方向において、降伏比(YR)および管厚の均一化を図ることができ、座屈の抑制が可能となることがわかった。
なお、基準となる管周方向の管厚の平均とは、マイクロメータを用いて、シーム位置から管全周の管厚を測定し、平均化した値である。
本発明の電縫鋼管は、管底部の降伏強さが295MPa以上450MPa以下であり、管底部の引張強さが430MPa以上550MPa以下であることが好ましい。鋼管の管底部の降伏強さが450MPa超の場合、厚さ26mm以上の厚肉鋼管を成形することは成形負荷がミルの耐荷重を超過するため、成形が困難である。また、鋼管の管底部の降伏強さが295MPa未満の場合は、厚さ26mm以上の厚肉鋼管の成形であっても、第1フィンパスの成形の入側において、オープン管に予変形が進行し、オープン管に折れが発生することなく第1フィンパスロールにオープン管がなじむため、管底周辺の加工硬化や増肉の問題が発生しにくい。また、鋼管の管底部の引張強さが430MPa未満では、成形後の管の長手方向の反りの問題が発生しやすくなる。また、鋼管の管底部の引張強さが550MPa超えでは、成形管の周方向の円筒形状の寸法精度が悪化する問題がある。
次に、本発明の電縫鋼管は、質量%で、C:0.07~0.20%、Mn:0.3~2.0%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Al:0.01~0.06%、N:0.006%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、管厚中心部の鋼組織が、フェライトからなる主相と、パーライト、疑似パーライトおよび上部ベイナイトから選択される1種または2種以上からなり、その面積分率が8%以上20%以下である第二相とを有し、管厚中心部の鋼組織の平均結晶粒径が7μm以上20μm以下であり、鋼管内表面および外表面の鋼組織がフェライト単相またはベイニティックフェライト単相であり、平均結晶粒径が2μm以上20μm以下であることが望ましい。
本発明の電縫鋼管の好ましい成分組成について、以下に説明する。なお、成分組成を示す単位の%は、全て質量%を意味する。
C:0.07~0.20%
Cは、固溶強化により鋼板の強度を増加させるとともに、第二相の一つであるパーライトの形成に寄与する元素である。所望の引張特性、靱性、さらに所望の鋼板組織を確保するためには、0.07%以上含有させることが好ましい。一方、0.20%を超える含有は電縫鋼管の溶接時にマルテンサイト組織が生成し、溶接割れの原因となる懸念がある。このため、Cは0.07~0.20%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、C:0.09~0.18%である。
Mn:0.3~2.0%
Mnは、固溶強化を介して鋼板の強度を増加させる元素であり、所望の鋼管強度を確保するために、0.3%以上含有させることが好ましく、0.3%未満の含有では、フェライト変態開始温度の上昇を招き、組織が過度に粗大化しやすい。一方、2.0%を超えて含有すると、中心偏析部の硬度が上昇し、電縫溶接時の割れの原因となる懸念がある。このため、Mnは0.3~2.0%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.3~1.6%、さらに好ましくは0.3~1.4%である。
P:0.03%以下
Pは、フェライト粒界に偏析して、靱性を低下させる作用を有する元素であり、本発明では、不純物としてできるだけ低減することが望ましいが、過度の低減は、精錬コストの高騰を招くため、0.002%以上とすることが好ましい、なお、0.03%までは許容できる。このため、Pは0.03%以下であることが好ましい。より好ましくは0.025%以下である。
S:0.015%以下
Sは、鋼中では硫化物として存在し、本発明の組成範囲であれば、主としてMnSとして存在する。MnSは、熱延工程で薄く延伸され、延性、靱性に悪影響を及ぼすため、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。しかし、過度の低減は、精錬コストの高騰を招くため、0.002%以上とすることが好ましい。なお、0.015%までは許容できる。このため、Sは0.015%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.010%以下である。
Al:0.01~0.06%
Alは、脱酸剤として作用するとともに、AlNとしてNを固定する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが好ましい。0.01%未満では、Si無添加の場合に脱酸力が不足し、酸化物系介在物が増加し、電縫鋼管の長手溶接時、特に大気中での溶接の場合に、溶接部に酸化物を形成させる危険性が高くなり、電縫鋼管の溶接部の靱性が低下する。一方、0.06%を超えると、溶接性が悪化するとともに、アルミナ系介在物が多くなり、表面性状が悪化する。このため、Alは0.01~0.06%であることが好ましい。より好ましくは、0.02~0.05%である。
N:0.006%以下
Nは、転位の運動を強固に固着することで靱性を低下させる作用を有する元素であり、本発明では、不純物として出来るだけ低減することが望ましいが、0.006%までは許容できる。このため、Nは0.006%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.005%以下である。
本発明の電縫鋼管の好ましい主要成分は上記のとおりである。なお、必要に応じて以下の元素を適宜含有させても良い。
Si:0.4%未満
Siは、固溶強化で鋼板の強度増加に寄与する元素であり、所望の鋼板強度を確保するために、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.01%を超えて含有することが望ましいが、0.4%以上の含有は、鋼板表面に赤スケールと称するファイアライトが形成しやすくなり、表面の外観性状が低下する場合が多くなる。このため、含有する場合には、0.4%未満とすることが好ましい。より好ましくは0.2%以下である。なお、特にSiを添加しない場合は、Siは不可避的不純物として、そのレベルは0.01%以下である。
Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下、V:0.10%以下から選択される1種または2種以上
Nb、Ti、Vはいずれも、鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成し、析出強化を通じて鋼の強度向上に寄与する元素である。これらの元素を含有することにより、鋼管成形後の降伏比が高くなる傾向となる。このため、本発明では、含有しないことが望ましいが、電縫鋼管の降伏比が90%以下となるような範囲であれば、強度を調整する目的で含有してもよい。含有する場合は、それぞれ、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下、V:0.10%以下である。
B:0.008%以下
Bは、冷却過程のフェライト変態を遅延させ、低温変態フェライト、すなわち、アシュキュラーフェライト相の形成を促進し、鋼板強度を増加させる作用を有する元素である。Bの含有は、鋼板の降伏比、電縫鋼管の降伏比を増加させる。このため、本発明では、電縫鋼管の降伏比が90%以下となるような範囲であれば、強度を調整する目的で必要に応じて含有できる。含有する場合は、B:0.008%以下が好ましい。より好ましくは0.0001~0.0015%、さらに好ましくは0.0003~0.0008%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、例えばO:0.005%以下が許容できる。
次に、本発明の電縫鋼管の鋼組織について説明する。本発明の鋼組織は、管厚中心部の鋼組織が主相と第二相とからなる。主相はフェライトからなり、主相の面積分率は80%以上92%以下である。また、第二相はパーライト、擬似パーライトおよび上部ベイナイトから選択される1種または2種以上からなり、第二相の面積分率は8%以上20%以下である。第二相の面積分率が8%未満となると所望の引張強さを満足できなくなる。第二相の面積分率が20%を超えると、所望の低温靭性を確保できなくなる。このため、第二相の面積分率を8%以上20%以下の範囲に限定した。そして、管厚中心部の鋼組織の平均結晶粒径は、7μm以上20μm以下である。ここでいう「管厚中心部の鋼組織の平均結晶粒径」とは、主相を構成するフェライト相と、第二相を構成するパーライト相、擬似パーライト相および上部ベイナイト相の全結晶粒について測定した平均結晶粒径を意味する。平均結晶粒径が7μm未満では、微細すぎて、電縫鋼管の降伏比が90%以下を確保できない。一方、平均結晶粒径が20μmを超えて粗大化すると、電縫鋼管の靭性が低下し、所望の靭性を確保できなくなる。なお、更なる高靭性を確保するという観点から、平均結晶粒径は、好ましくは15μm以下である。
管厚中心部の鋼組織は、以下の方法で組織観察することにより、主相および第二相の種類、面積分率、管厚中心部の鋼組織の平均結晶粒径を求める。まず、電縫鋼管から採取した組織観察用試験片について、管軸方向と垂直な断面(C断面)が観察面となるように研磨し、ナイタール腐食を施し、組織観察用試験片表面から管厚1/2t位置を観察中心として、光学顕微鏡(倍率:500倍)、または走査型電子顕微鏡(倍率:500倍)を用いて鋼組織を観察し、撮像する。なお、tは鋼管の厚さである。そして、得られた組織写真について、画像解析装置(画像解析ソフト:Photoshop、Adobe社製)を用いて、主相および第二相の種類を特定し、面積分率を算出し、JIS G 0551記載の方法で管厚中心部(主相と第二相)の鋼組織の平均結晶粒径を算出する。
鋼管内表面および外表面の鋼組織は、フェライト単相またはベイニティックフェライト単相であり、平均結晶粒径が2μm以上20μm以下である。ここでいう単相とは、面積分率が95%以上である場合をいう(なお、残部として、パーライト、マルテンサイト、オーステナイトを5%未満含んでも良い。)。また、電縫鋼管の内表面および外表面とは、具体的には電縫鋼管の両表面からそれぞれ1mmまでの領域のことをいう。平均結晶粒径が2μm未満であると、電縫鋼管の内表面および外表面の降伏強さが過度に上昇し、ロール成形時の負荷が増大し丸形鋼管の成形が困難となる。また、20μmを超えて粗大化すると、電縫鋼管の靭性が低下し、所望の靭性を確保できなくなる。このため、平均結晶粒径は2μm以上20μm以下に限定した。平均結晶粒径は、好ましくは、上限が15μmである。
鋼管内表面および外表面の鋼組織は、組織観察用試験片表面(内側の電縫鋼管表面を鋼管内表面、外側の電縫鋼管表面を鋼管外表面とする。)から管厚1/2t位置を観察中心とする代わりに、観察視野が電縫鋼管表面から1mmの範囲内になるようにする以外は、管厚中心部の鋼組織の観察方法および測定方法と同様にして、鋼組織の種類、平均結晶粒径を求める。
このように、成分組成、管厚中心部の鋼組織の種類、面積分率および平均結晶粒径、ならびに、鋼管内表面および外表面の鋼組織の種類および平均結晶粒径の全てを所望の範囲とすることにより、管周方向における降伏比(YR)および管厚の均一化に加えて、強度や靱性に優れた電縫鋼管を得ることができる。
本発明の電縫鋼管の管厚は、26mm以上32mm以下であることが好ましい。より好ましくは28mm以上である。
次に、本発明の電縫鋼管の素材である鋼帯の製造方法について、説明する。具体的には、上記した組成の鋼素材に、加熱と、熱間圧延と、熱間圧延後の冷却とを施して熱延鋼帯とし、該熱延鋼帯をコイル状に巻取る管素材製造工程を施し、電縫鋼管の素材である鋼帯を得ることができる。
鋼帯の製造条件は特に限定されないが、例えば、上記した組成の鋼素材を、好ましくは1100~1300℃に加熱する。加熱温度が1100℃未満では、変形抵抗が高く圧延負荷が増大し圧延能率が低下する。一方、加熱温度が1300℃を超えて高温になると、結晶粒が粗大して低温靭性が低下するうえ、スケール生成量が増大し表面性状が低下する恐れがある。このため、熱間圧延における加熱温度は1100~1300℃とすることが好ましい。
ついで、加熱された鋼素材に熱間圧延を施す。熱間圧延は、粗圧延と仕上げ圧延からなる圧延とする。粗圧延の条件は、粗圧延終了温度を950~1150℃の範囲で所定寸法形状のシートバーとすることが望ましい。粗圧延終了温度が950℃未満では、粗圧延機の耐荷重、圧延トルクの不足が生じやすくなる。一方、1150℃を超えて高温となると、オーステナイト粒が粗大化し、その後に仕上圧延を施しても、平均結晶粒径:20μm以下という所望の平均結晶粒径を確保することが困難となる。
粗圧延された後の仕上圧延では、仕上圧延開始温度を1100~850℃の範囲で、仕上圧延終了温度(仕上圧延出側温度)を900~750℃の範囲で、所望の製品厚さの製品板(熱延鋼板)にすることが好ましい。仕上圧延開始温度(仕上圧延入側温度)が、850℃未満では、仕上圧延機内で鋼板表面近傍の温度がAr変態点以下となりフェライトが生成する危険性が増大する。生成したフェライトは、その後の仕上圧延加工により圧延方向に伸長したフェライト粒となり、加工性低下の原因となる。一方、仕上圧延開始温度(仕上圧延入側温度)が、1100℃を超えて高温となると、上記した仕上圧延によるγ粒の微細化効果が低減し、平均結晶粒径20μm以下の所望の平均結晶粒径を確保することが困難となる。このため、仕上圧延開始温度は1100~850℃の範囲に限定することが好ましい。仕上圧延開始温度は、より好ましくは1050~850℃である。
仕上圧延終了温度(仕上圧延出側温度)が900℃を超えて高温となると、仕上圧延時に付加される加工歪が不足し、γ粒の微細化が達成されず、したがって、平均結晶粒径20μm以下の所望の平均結晶粒径を確保することが困難となる。一方、仕上圧延終了温度(仕上圧延出側温度)が750℃未満では、仕上圧延機内で鋼板表面近傍の温度がAr変態点以下となり、圧延方向に伸長したフェライト粒が形成され、フェライト粒が混粒となり、加工性が低下する危険性が増大する。このため、仕上圧延終了温度(仕上圧延出側温度)は900~750℃の範囲にすることが好ましい。仕上圧延終了温度は、より好ましくは、上限が850℃である。
仕上圧延終了後、冷却工程を施すことが好ましい。冷却工程では、仕上圧延で得られた熱延板を板厚中心温度で冷却開始から冷却停止(冷却終了)までの平均冷却速度が4℃/s以上25℃/s以下となる冷却速度で冷却停止温度が580℃以下まで冷却することが好ましい。冷却工程で施す冷却は、ノズルから水を噴射する、水柱冷却、スプレー冷却、ミスト冷却等の水冷(水冷却)や、冷却ガスを噴射するガスジェット冷却等で行われる。なお、鋼板(熱延板)の両面が同条件で冷却されるように鋼板両面に冷却操作を施すことが好ましい。
鋼板板厚中心の平均冷却速度が4℃/s未満では、フェライト粒の生成頻度が減少し、フェライト結晶粒が粗大化して、板厚中心部における平均結晶粒径20μm以下という所望の平均結晶粒径を確保できなくなる。一方、25℃/sを超えると、パーライトの生成が抑制され、上部ベイナイト組織が形成するようになるため、板厚中心部における所望の平均結晶粒径を確保できなくなる。このため、板厚中心の平均冷却速度は4℃/s以上25℃/s以下であることが好ましく、より好ましくは、下限が5℃/sであり上限が15℃/sである。板厚中心の平均冷却速度は、((冷却開始時の板厚中心の温度-冷却停止時の板厚中心の温度)/冷却時間)で求められる。鋼板板厚中心の温度は、伝熱解析により鋼板断面内の温度分布を計算し、その結果を実際の外面および内面の温度によって補正することにより求める。冷却停止温度が580℃を超えると、板厚中心部における所望の平均結晶粒径7μm以上20μm以下を満足できなくなる。なお、所望の表裏面鋼組織を得るためには、鋼板表面温度で750℃以上650℃以下の温度域での平均冷却速度は20℃/s以上とすることが好ましい。また、仕上圧延終了から直ちに(5秒以内に)冷却工程を開始することが好ましい。
そして、冷却工程では、冷却開始から10s間である初期冷却工程、すなわち、熱延板の冷却を開始してから10秒間(10s間)は、0.2s以上3.0s未満の放冷工程を一回以上設けて冷却することが好ましい。これは、板表裏面においてマルテンサイト組織又は上部ベイナイト組織の生成を抑制するために行なう。初期冷却工程において、放冷工程を設けないか、放冷工程が0.2s未満の場合、板厚表裏面の鋼組織がマルテンサイト組織、ベイナイト組織や上部ベイナイト組織となり、フェライト単相またベイニティックフェライト単相組織を得ることができない。また、初期冷却工程において3.0s以上の放冷工程を設けると、フェライトおよびパーライトからなる組織となり、所望の鋼組織を得ることができない。このため、冷却工程において冷却開始から10秒間である初期冷却工程中に行う放冷工程の時間は0.2s以上3.0s未満が好ましい。放冷工程の時間は、より好ましくは、0.4s以上2.0s以下である。初期冷却工程中に行う放冷工程の回数は冷却設備配列や冷却停止温度などによって適当に決めればよく、上限は特に限定しない。
冷却終了後、巻取工程を施す。巻取工程では、巻取温度580℃以下で巻取り、その後放冷することが好ましい。巻取温度が580℃を超えると、巻取り後にフェライト変態とパーライト変態が進行するため、板厚中心部における所望の平均結晶粒径7μm以上20μm以下を満足できなくなる。巻取温度を低くしても材質上の問題は生じないが、400℃未満となると、特に板厚が26mmを超えるような厚肉鋼板の場合、巻取り変形抵抗が多大になり、きれいに巻き取れない場合がある。このため、巻取り温度は400℃以上とすることが好ましい。
本発明の電縫鋼管は、上記の工程により得られた鋼帯を、上述したケージロール群により中間成形し、オープン管とする中間成形工程と、フィンパスロール群により管状に仕上げ成形する仕上げ成形工程と、前記仕上げ成形工程後に前記鋼帯の幅端部を電気抵抗溶接して管とする溶接工程を経て製造することができる。仕上げ成形工程では、上述した式(1)を満たせばよい。なお、仕上げ成形工程で、後段の溶接工程において良好な溶接部を得るために、絞り成形を行いながら、オープン管の形状凍結や、オープン管端面をフィンに押し当てて形状の適正化を行う必要がある。絞り成形の条件は、管厚中央部を基準に周方向の絞り率を0.05%以上1.4%以下で行うことが好ましい。絞り率が1.4%を超えると、絞り成形による加工硬化の影響が大きくなり、成形管全体の降伏比が過大になる。絞り率を0.05%未満になると、前記の理由から良好な溶接部が得られない。0.2%以上1.0%以下とすることがより好ましい。また、各フィンパスロールのカリバー条件について、1ロールに1種以上の曲率を設計することは可能だが、特に所定の形状に成形できれば、その組み合わせに指定はない。
以上より、本発明によれば、管底周辺で造管による管周方向の管厚の変動が小さく、座屈の抑制が可能な電縫鋼管を得ることができる。すなわち、本発明によれば、座屈に起因すると考えられる、管周方向における降伏比(YR)および管厚を均一化することができる。加えて、本発明では、成分組成および組織を制御することにより、降伏強さ:295MPa以上、引張強さ:430MPa以上で、90%以下の低降伏比を示し、試験温度:0℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが27J以上といった、強度や靱性に優れた電縫鋼管を得ることができる。例えば、本発明の電縫鋼管を角成形により角形鋼管とし、建築構造部材として使用することができる。
以下に、本発明の更なる理解のために実施例を用いて説明する。なお、実施例は本発明を限定するものではない。
表1に示す組成の鋼について、表2に示す製造条件で熱延鋼板を製造した。次いで、得られた熱延鋼板を素材として、冷間でインナーロールの押込み位置でオープン管の形状を制御し、次いで、仕上げ成形(フィンパス成形)および電縫溶接を施すことにより所定の寸法(表3に示す製品管厚および外径)の電縫鋼管を得た。第1フィンパス入側のオープン管の外径曲率ρと、第1フィンパスロールの曲率ρについて、オープン管底部を基準とし、オープン管の管底部から0°~±45°の範囲の曲率とした。0°~±45°の範囲における第1フィンパスロールの曲率ρは一定値である。0°~±45°の範囲における第1フィンパスロールの曲率ρは、外径測定ゲージを用いて、周方向に15度ピッチで測定を行い、その平均値から算出した。また、オープン管の外径曲率ρは第1フィンパスロールの直下から成形方向と逆方向の1m離れた位置で測定を行った。表3に、曲率比(ρ/ρ)および第1フィンパスロールの絞り率(%)を示す。
得られた電縫鋼管に対して、管軸方向の垂直断面に輪切りをし、得られた輪切りサンプルに対してマイクロメーターで管の管厚を測定した。管厚の測定位置は溶接部を基準とし管の周方向を15°ピッチで管厚を測定した。測定した管厚の平均値を管周方向の管厚の平均とした。一方、溶接部の対向に位置する管底部を基準として、管の管底部から0°~±45°の範囲で測定した管厚の最大値を、管周方向の管厚の平均で除した比率を、管周方向の管厚平均を基準とした管底管厚増分率として算出した。
また、電縫鋼管の管底部から試験片を切り出し、引張試験を行った。引張試験の方法は次の通りにした。
(1)引張試験
引張方向が管軸方向となるように、管底からJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTSを測定し、(降伏強さ)/(引張強さ)×100(%)で定義される降伏比YR(%)を算出した。
また、管底部を基準にθ=±30°、±60°、±90°、±120°、±150°から引張試験片を切出し、降伏比YRをそれぞれ算出し、算出した降伏比YRの中で最小値を求めた。この最小値と、管底部から切出した引張試験片から求めた降伏比YRとの差を算出した。降伏比YRの差が15%以下を合格とした。
また、電縫鋼管の鋼組織を観察し、平均結晶粒径を求めた。なお、測定方法は上述した通りである。
また、電縫鋼管の靱性については、得られた電縫鋼管の管底の管厚中央部から、JIS Z 2242の規定に準拠して、円周方向にVノッチシャルピー試験片を採取し、試験温度0℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーvE(J)を求めた。なお、試験片本数は各3本の平均値で測定した。
測定結果を表3に示す。
Figure 0007078029000001
Figure 0007078029000002
Figure 0007078029000003
表3の結果から、本発明例では、管底部から0°~±45°の範囲で、管周方向の厚みの平均を基準として95.0%以上105.0%以下の範囲に収まっている。加えて、鋼管No.1~4、13~15、18~23の本発明例は、成分組成および組織を制御することにより、降伏強さ:295MPa以上、引張強さ:430MPa以上で、90%以下の低降伏比を示し、試験温度:0℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが27J以上といった、強度や靱性に優れた電縫鋼管を得ることができる。
1 鋼帯
2 レベラー
3 ケージロール群
4 フィンパスロール群
5 スクイズロール
6 溶接機
7 電縫鋼管
8 オープン管
θ1 オープン管断面における底部の位置を位置Pとし、位置Oを中心として位置Oと位置Pを結ぶ直線から円周方向の角度
θ2 電縫鋼管の中心を中心座標として、シーム部を上にしたときの管底部を起点とする管底部からの管周方向の角度

Claims (6)

  1. シーム部を有する電縫鋼管であって、前記電縫鋼管の中心を中心座標として、前記シーム部を上にしたときの管底部を起点とする前記管底部からの管周方向の角度θ1が0°~±45°の範囲における前記電縫鋼管の管厚が、管周方向の管厚の平均を基準として95.0%以上105.0%以下の範囲にあり、
    管厚が27mm以上32mm以下であり、
    質量%で、C:0.09~0.20%、Mn:0.3~2.0%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Al:0.01~0.06%、N:0.006%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    管厚中心部の鋼組織が、フェライトからなる主相と、パーライト、擬似パーライトおよび上部ベイナイトから選択される1種または2種以上からなり、その面積分率が8%以上20%以下である第二相とを有し、前記管厚中心部の鋼組織の平均結晶粒径が7μm以上20μm以下であり、
    鋼管内表面および外表面の鋼組織が、フェライト単相またはベイニティックフェライト単相であり、前記鋼管内表面および外表面の鋼組織の平均結晶粒径が2μm以上20μm以下であることを特徴とする電縫鋼管。
  2. 管底部の降伏強さが295MPa以上450MPa以下であり、管底部の引張強さが430MPa以上550MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の電縫鋼管。
  3. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Si:0.4%未満を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電縫鋼管。
  4. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下およびV:0.10%以下から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電縫鋼管。
  5. 前記成分組成は、さらに、質量%で、B:0.008%以下を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電縫鋼管。
  6. 請求項1~のいずれかに記載の電縫鋼管の製造方法であって、
    鋼帯をケージロール群により中間成形し、オープン管とする中間成形工程と、フィンパスロール群により管状に仕上げ成形する仕上げ成形工程と、前記仕上げ成形工程後に前記鋼帯の幅端部を電気抵抗溶接して管とする溶接工程とを有する電縫鋼管の製造方法において、
    前記仕上げ成形工程において、前記オープン管の進行方向と直交する断面における前記フィンパスロール群の第1フィンパスロールにて形成される外周円の中心を位置O、前記オープン管断面における底部の位置を位置Pとし、位置Oを中心として位置Oと位置Pを結ぶ直線から円周方向に角度θ2とした場合、角度θ2が0°~±45°の範囲において、
    第1フィンパスロール入側の前記オープン管の外径曲率ρと、前記第1フィンパスロールの曲率ρが下記式(1)を満たすように仕上げ成形することを特徴とする電縫鋼管の製造方法。
    0.20≦ρ<1.49・・・(1)
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