JP5630026B2 - 低温靭性に優れた厚肉高張力熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、原油、天然ガス等を輸送するラインパイプ用として、高靭性が要求される高強度電縫鋼管あるいは高強度スパイラル鋼管の素材用として好適な、厚肉高張力熱延鋼板およびその製造方法に係り、とくに低温靭性の向上に関する。
近年、石油危機以来の原油の高騰や、エネルギー供給源の多様化の要求などから、北海、カナダ、アラスカ等のような極寒地での石油、天然ガスの採掘およびパイプラインの敷設が活発に行われるようになっている。また、一旦は、開発が放棄された腐食性の強いサワーガス田等に対する開発も盛んとなっている。
さらに、パイプラインにおいては、天然ガスやオイルの輸送効率向上のため、大径で高圧操業を行う傾向となっている。パイプラインの高圧操業に耐えるため、輸送管(ラインパイプ)は厚肉の鋼管とする必要があり、厚鋼板を素材とするUOE鋼管が使用されるようになってきている。しかし、最近では、パイプラインの施工コストの更なる低減という強い要望や、UOE鋼管の供給能力不足などのために、鋼管の材料コスト低減の要求も強く、輸送管として、厚鋼板を素材とするUOE鋼管に代わり、生産性が高くより安価な、コイル形状の熱延鋼板(熱延鋼帯)を素材とした高強度電縫鋼管あるいは高強度スパイラル鋼管が用いられるようになってきた。
これら高強度鋼管には、ラインパイプの破壊を防止する観点から、優れた低温靭性を保持することが要求されている。このような高強度と高靭性とを兼備した鋼管を製造するために、鋼管素材である鋼板では、熱間圧延後の加速冷却を利用した変態強化や、Nb、V、Ti等の合金元素の析出物を利用した析出強化等による高強度化と、制御圧延等を利用した組織の微細化等による高靭性化が図られてきた。
また、硫化水素を含む原油や天然ガスの輸送に用いられるラインパイプでは、高強度、高靭性などの特性に加えて、耐水素誘起割れ性(耐HIC性)、耐応力腐食割れ性などのいわゆる耐サワー性にも優れることが要求される。
このような要求に対し、例えば特許文献1には、C:0.005〜0.030%未満、B:0.0002〜0.0100%を含み、Ti:0.20%以下およびNb:0.25%以下のうちから選ばれる1種または2種を(Ti+Nb/2)/C:4以上を満足するように含み、さらにSi、Mn、P、S、Al、Nを適正量含有する鋼を熱間圧延後、5〜20℃/sの冷却速度で冷却し、550℃超〜700℃の温度範囲で巻き取り、組織がフェライトおよび/またはベイニティックフェライトからなるとともに、粒内の固溶C量が1.0〜4.0ppmである、靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法が提案されている。特許文献1に記載された技術では、厚み方向、長さ方向における材質の不均一を伴うことなく、靭性、溶接性、耐サワー性に優れ、かつ低降伏比を有する高強度熱延鋼板を得ることができるとしている。しかし、特許文献1に記載された技術では、粒内の固溶C量が1.0〜4.0ppmであるため、円周溶接時の入熱で、結晶粒成長が起こりやすく、溶接熱影響部が粗大粒になり、円周溶接部の溶接熱影響部の靭性低下が起こりやすいという問題がある。
また、特許文献2には、C:0.01〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.8%、Ti:0.010〜0.030%、Nb:0.01〜0.05%、Ca:0.0005〜0.0050%を、炭素当量:0.40以下、Ca/O:1.5〜2.0を満足するように、含む鋼片を、Ar+100℃以上で熱間圧延を終了し、1〜20秒空冷したのち、Ar点以上の温度から冷却し、20秒以内に550〜650℃まで冷却し、その後450〜500℃で巻き取る、耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板の製造方法が提案されている。特許文献2に記載された技術では、耐水素誘起割れ性を有するAPI規格のX60〜X70グレードのラインパイプ用鋼板を製造できるとしている。しかし、特許文献2に記載された技術では、板厚が厚い鋼板では、所望の冷却時間を確保できなくなり、所望の特性を確保するためには、さらなる冷却能力の向上を必要とするという問題があった。
また、厚鋼板であるが、特許文献3には、C:0.03〜0.06%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.8〜1.5%、S:0.0015%以下、Al:0.08%以下、Ca:0.001〜0.005%、O:0.0030%以下を含み、かつCa,S,Oが特定関係を満足するように含有する鋼を、加熱しAr変態点以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で400〜600℃まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で鋼板表面温度600℃以上、板厚中心部温度550〜700℃まで再加熱し、再加熱終了時の鋼板表面と板厚中心部の温度差を20℃以上とする、耐水素誘起割れ性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法が提案されている。特許文献3に記載された技術では、金属組織中の第2相の分率を3%以下であり、表層と板厚中心部の硬さ差がビッカース硬さで40ポイント以内の鋼板が得られ、耐水素誘起割れ性に優れた厚鋼板となるとしている。しかし、特許文献3に記載された技術では、再加熱工程を必要とし、製造工程が複雑になるとともに、再加熱設備等の更なる配設が必要となるなどの問題があった。
また、厚鋼板であるが、特許文献4には、C:0.01〜0.3%、Si:0.6%以下、Mn:0.2〜2.0%、P、S、Al:0.06%以下、Ti:0.005〜0.035%、N:0.001〜0.006%を含む鋳片を熱間圧延した後の冷却過程のAc−50℃以下の温度で、累積で2%以上の圧延を行い、その後、Ac超Ac未満の温度に加熱し、放冷する、表裏面に粗粒フェライト層を有する鋼材の製造方法が提案されている。特許文献4に記載された技術では、鋼材のSCC感受性や耐候性、耐食性の向上、さらには冷間加工後の材質劣化抑制などに寄与するとしている。しかし、特許文献4に記載された技術では、再加熱工程を必要とし、製造工程が複雑になるとともに、再加熱設備等の更なる配設が必要となるなどの問題があった。
またさらに最近では、極寒冷地用の鋼管には、パイプラインのバースト破壊を防止する観点から、破壊靭性、とくにCTOD特性や、DWTT特性に優れることが要求されることが多い。
このような要求に対し、例えば、特許文献5には、C、Si、Mn、Nを適正量含有し、さらにSi、MnをMn/Siが5〜8を満足する範囲において含有し、さらにNb:0.01〜0.1%を含有する鋼片を、加熱後、1100℃以上で行う最初の圧延の圧下率:15〜30%、1000℃以上での合計圧下率:60%以上、最終圧延の圧下率:15〜30%の条件下で粗圧延を行ったのち、いったん5℃/s以上の冷却速度で、表層部の温度をAr点以下まで冷却しついで、復熱または強制過熱で表層部の温度が(Ac−40℃)〜(Ac+40℃)となった時点で仕上圧延を開始し、950℃以下での合計圧下率:60%以上、圧延終了温度:Ar点以上の条件で仕上圧延を終了し、仕上圧延終了後2s以内に冷却を開始し、10℃/s以上の速度で600℃以下まで冷却し、600〜350℃の温度範囲で巻き取る高強度電縫鋼管用熱延鋼板の製造方法が記載されている。特許文献5に記載された技術で製造された鋼板は、高価な合金元素を添加することなく、また鋼管全体を熱処理することなく、鋼板表層の組織が微細化され、低温靭性、とくにDWTT特性に優れた高強度電縫鋼管が製造できるとしている。しかし、特許文献5に記載された技術では、板厚が厚い鋼板では、所望の冷却速度を確保できなくなり、所望の特性を確保するためには、さらなる冷却能力の向上を必要とするという問題があった。
また、特許文献6には、C、Si、Mn、Al、Nを適正量含有し、さらにNb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%を含み、Cu、Ni、Moのうちの1種または2種以上を含有し、Pcm値が0.17以下である鋼スラブを、加熱したのち、表面温度が(Ar−50℃)以上の条件で仕上圧延を終了し、圧延後直ちに冷却し700℃以下の温度で巻き取り徐冷する低温靭性および溶接性に優れた高強度電縫管用熱延鋼帯の製造方法が記載されている。

特開平08−319538号公報 特開平09−296216号公報 特開2008−056962号公報 特開2001−240936号公報 特開2001−207220号公報 特開2004−315957号公報
しかしながら、最近、高強度電縫鋼管用鋼板には、低温靭性、とくにCTOD特性、DWTT特性の更なる向上が要求されている。特許文献6に記載された技術では、低温靭性が充分でなく、要求されるCTOD特性、DWTT特性を十分に満足させるほど、優れた低温靭性を具備させることができないという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、多量の合金元素添加を必要とすることなく、高強度と、優れた延性とを兼備し、強度・延性バランスに優れ、さらに、優れた低温靭性、とくに優れたCTOD特性、DWTT特性、とを有する、高強度電縫鋼管用あるいは高強度スパイラル鋼管用として好適な、厚肉高張力熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、ここでいう「高張力熱延鋼板」とは、引張強さTS:510MPa以上の高強度を有する熱延鋼板をいい、また、「厚肉」鋼板とは、板厚11mm以上の鋼板をいうものとする。
また、ここでいう「優れたCTOD特性」とは、ASTM E 1290の規定に準拠して、試験温度:−10℃で実施したCTOD試験における限界開口変位量CTOD値が、0.30mm以上である場合をいうものとする。
また、ここでいう「優れたDWTT特性」とは、ASTM E 436の規定に準拠して行ったDWTT試験で、延性破面率が85%となる最低温度(DWTT温度)が、−35℃以下の場合をいうものとする。
また、ここでいう「強度・延性バランスに優れる」とは、TS×Elが18000MPa%以上である場合をいうものとする。なお、伸びEl(%)は、ASTM E 8の規定に準拠して板状試験片(平行部幅:12.5mm、標点間距離GL:50mm)を用いて試験した場合の値を使用する。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、低温靭性、とくにDWTT特性、CTOD特性に及ぼす各種要因について鋭意考究した。その結果、全厚での靭性試験であるDWTT特性、CTOD特性は、板厚方向の組織均一性に大きく影響されることに思い至った。そして、全厚での靭性試験であるDWTT特性、CTOD特性に及ぼす板厚方向の組織不均一の影響は、板厚:11mm以上の厚肉材で顕在化することを見出した。
また、本発明者らの更なる研究によれば、「優れたDWTT特性」、「優れたCTOD特性」は、表面から板厚方向に1mmの位置(表層部)における低温変態フェライトの平均結晶粒径と板厚中央位置(板厚中心部)における低温変態フェライトの平均結晶粒径との差、ΔDが2μm以下で、かつ表面から板厚方向に1mmの位置(表層部)における第二相の組織分率(体積率)と板厚中央位置(板厚中心部)における第二相の組織分率(体積率)との差、ΔVが2%以下である場合に、確保できることを見出した。
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
質量%で、0.037%C−0.20%Si−1.59%Mn−0.016%P−0.0023%S−0.041%Al−0.061%Nb−0.013%Ti−残部Feからなるスラブを鋼素材として使用した。なお、(Ti+Nb/2)/Cは1.18である。
上記した組成の鋼素材を、1230℃に加熱し、仕上圧延開始温度:980℃、仕上圧延終了温度:800℃とする熱間圧延を施して板厚:12.7mmの熱延板とし、熱間圧延終了後、板厚中央部の温度が750℃以下の温度領域における冷却速度で18℃/sとなる冷却を、種々の冷却停止温度まで施す加速冷却を施し、ついで、種々の巻取温度で巻き取り、熱延鋼板(鋼帯)とした。
得られた熱延鋼板から試験片を採取し、DWTT特性および組織を調査した。組織は、表面から板厚方向に1mmの位置(表層部)、板厚中央位置(板厚中心部)について、低温変態フェライトの平均結晶粒径(μm)、第二相の組織分率(体積%)を求めた。得られた測定値から、表面から板厚方向に1mmの位置(表層部)と板厚中央位置(板厚中心部)との、低温変態フェライトの平均結晶粒径差ΔDおよび第二相の組織分率の差ΔVをそれぞれ算出した。なお、ここでいう「低温変態フェライト」はベイニティックフェライト、あるいはベイナイトあるいはこれらの混合相のいずれかをいう。第二相は、パーライト、マルテンサイト、MA(島状マルテンサイトともいう)、上部ベイナイト、あるいはこれらの2種以上からなる混合相のいずれかである。
得られた結果を、DWTTに及ぼすΔDとΔVとの関係で図1に示す。
図1から、DWTTが−35℃以下となる「優れたDWTT特性」は、ΔDが2μm以下でかつΔVが2%以下となる場合に確実に維持できることを知見した。
つぎに、ΔD、ΔVと冷却停止温度との関係を図2に、ΔD、ΔVと巻取温度との関係を図3に示す。
図2、図3から、ΔDが2μm以下でかつΔVが2%以下とするためには、使用した鋼では、冷却停止温度を620℃以下、巻取温度を647℃以下に調整する必要があることがわかる。
本発明者らの更なる研究によれば、ΔDが2μm以下でかつΔVが2%以下とするために必要な冷却停止温度および巻取温度は、主としてベイナイト変態開始温度に影響する合金元素の含有量や、熱間圧延終了からの冷却速度に依存して決定されることを見出した。すなわち、ΔDが2μm以下でかつΔVが2%以下とするためには、冷却停止温度を、鋼板の板厚中央位置の温度で、次式
BFS(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni−1.5CR
(ここで、C、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni:各元素の含有量(質量%)、CR:冷却速度(℃/s))
で定義されるBFS以下の温度とし、かつ、巻取温度を、鋼板の板厚中央位置の温度で、次式
BFS0(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni
(ここで、C、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni:各元素の含有量(質量%))
で定義されるBFS0以下の温度とすることが肝要となる。
次に、本発明者らは、延性の向上に及ぼす冷却条件の影響についてさらに検討した。その結果を、図4に示す。図4は、500℃以上の温度域での冷却を、表層と板厚中央部の平均冷却速度の差を変化させたうえで、500℃未満の温度域での冷却を、表層と板厚中央部の平均冷却速度の差が80℃/s以上となるように一次冷却時の水量密度を増加させ、さらに冷却停止温度と巻取温度とを種々変化させて、強度・延性バランスを調査したものである。図4に示すように、熱間圧延後の冷却に際し、500℃までの温度域で、表層と板厚中央部の平均冷却速度の差が特定範囲(80℃/s未満)となるように冷却条件を調整することにより、低温靭性に加えて延性が顕著に向上し、強度・延性バランスTS×Elが安定して、18000MPa%以上となることを見出した。なお、図4からは、冷却停止温度と巻取温度との差を300℃未満とすると、強度・延性バランスTS×Elがさらに安定して、18000MPa%以上となることがわかる。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.001〜0.05%を含み、かつC、Ti、Nbを次(1)式
(Ti+(Nb/2))/C<4 ‥‥(1)
(ここで、Ti、Nb、C:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材を加熱し、粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施し、ついで熱間圧延終了後に加速冷却を施して熱延鋼板とするにあたり、前記加速冷却を一次加速冷却と二次加速冷却とからなる冷却とし、該一次加速冷却を、板厚中心位置の平均冷却速度が10℃/s以上で、かつ板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s未満である冷却を、表面から板厚方向に1mmの位置での温度が650℃以下500℃以上の温度域の温度となる一次冷却停止温度まで行う冷却とし、前記二次加速冷却を、板厚中心位置の平均冷却速度が10℃/s以上で、板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s以上である冷却を、板厚中心位置の温度が次(2)式
BFS(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni−1.5CR ‥‥(2)
(ここで、C、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni:各元素の含有量(質量%)、CR:冷却速度(℃/s))
で定義されるBFS以下の二次冷却停止温度まで行う冷却とし、該二次加速冷却後に、板厚中心位置の温度で次(3)式
BFS0(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni ‥‥(3)
(ここで、C、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni:各元素の含有量(質量%))
で定義されるBFS0以下の巻取温度で巻き取り、表面から板厚方向に1mmの位置における組織が、低温変態フェライト相を主相として組織分率(体積%)で90%以上含有し、更にポリゴナルフェライトを含有する組織であり、板厚中央位置における組織が、低温変態フェライト相を主相として組織分率(体積%)で90%以上含有する組織であり、表面から板厚方向に1mmの位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径と板厚中央位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径との差ΔDが2μm以下、かつ表面から板厚方向に1mmの位置における第二相の組織分率(体積%)と板厚中央位置における第二相の組織分率(体積%)との差ΔVが2%以下であり、前記低温変態フェライト相がベイナイト相、ベイニティックフェライト相あるいはそれらの混合相のいずれかであり、前記第二相がパーライト相、マルテンサイト相、島状マルテンサイト、上部ベイナイト、あるいはそれらの2種以上からなる混合相のいずれかである組織を有し、板厚が11mm以上、引張強さTSが510MPa以上、ASTM E 1290の規定に準拠して試験温度:−10℃で実施したCTOD試験における限界開口変位量CTOD値が0.30mm以上、ASTM E 436の規定に準拠して行ったDWTT試験で延性破面率が85%となる最低温度(DWTT温度)が−35℃以下、ASTM E 8の規定に準拠して平行部幅:12.5mm、標点間距離GL:50mmの板状試験片を用いて試験した場合の伸びEl(%)と前記引張強さTS(MPa)との積TS×Elが18000MPa%以上である熱延鋼板とすることを特徴とする強度・延性バランスに優れた厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
(2)(1)において、前記一次加速冷却と前記二次加速冷却との間に10s以下の空冷を行うことを特徴とする厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記一次加速冷却および前記二次加速冷却における、板厚中心位置の、750〜650℃の温度域での平均冷却速度10℃/s以上であることを特徴とする厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記二次加速冷却における、表面から板厚方向に1mmの位置での冷却停止温度と、前記巻取温度との差が300℃以内となる、ことを特徴とする厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.01〜0.10%、Mo:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
(7)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.001〜0.05%を含み、かつC、Ti、Nbを次(1)式
(Ti+(Nb/2))/C<4 ‥‥(1)
(ここで、Ti、Nb、C:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、表面から板厚方向に1mmの位置における組織が、低温変態フェライト相を主相として組織分率(体積%)で90%以上含有し、更にポリゴナルフェライトを含有する組織であり、板厚中央位置における組織が、低温変態フェライト相を主相として組織分率(体積%)で90%以上含有する組織であり、表面から板厚方向に1mmの位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径と板厚中央位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径との差ΔDが2μm以下、かつ表面から板厚方向に1mmの位置における第二相の組織分率(体積%)と板厚中央位置における第二相の組織分率(体積%)との差ΔVが2%以下であり、前記低温変態フェライト相がベイナイト相、ベイニティックフェライト相あるいはそれらの混合相のいずれかであり、前記第二相がパーライト相、マルテンサイト相、島状マルテンサイト、上部ベイナイト、あるいはそれらの2種以上からなる混合相のいずれかである組織と、を有し、板厚が11mm以上、引張強さTSが510MPa以上、ASTM E 1290の規定に準拠して試験温度:−10℃で実施したCTOD試験における限界開口変位量CTOD値が0.30mm以上、ASTM E 436の規定に準拠して行ったDWTT試験で延性破面率が85%となる最低温度(DWTT温度)が−35℃以下、ASTM E 8の規定に準拠して平行部幅:12.5mm、標点間距離GL:50mmの板状試験片を用いて試験した場合の伸びEl(%)と前記引張強さTS(MPa)との積TS×Elが18000MPa%以上であることを特徴とする強度・延性バランスに優れた厚肉高張力熱延鋼板。
(8)(7)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.01〜0.10%、Mo:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚肉高張力熱延鋼板。
(9)(7)または(8)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする厚肉高張力熱延鋼板。
本発明によれば、板厚方向の組織変動が少なく、強度・延性バランスに優れ、さらに低温靭性、とくにDWTT特性とCTOD特性に優れた厚肉高張力熱延鋼板を容易にしかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、強度・延性バランスに優れ、さらに低温靭性、さらにはパイプライン敷設時の円周溶接性に優れたラインパイプ用電縫鋼管およびラインパイプ用スパイラル鋼管を容易に製造できるという効果もある。
DWTTとΔD、ΔVとの関係を示すグラフである。 ΔD、ΔVと、加速冷却の冷却停止温度との関係を示すグラフである。 ΔD、ΔVと、巻取温度との関係を示すグラフである。 強度・延性バランスTS×Elと、表面から板厚方向に1mmの位置の冷却速度と板厚中央位置の冷却速度との差(冷却速度差)との関係を示すグラフである。
本発明熱延鋼板の製造方法について説明する。
本発明の熱延鋼板の製造方法は、所定の組成を有する鋼素材を加熱し、粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施して熱延鋼板とする。
まず、本発明で使用する鋼素材の組成の限定理由について説明する。なお、とくに断らないかぎり、質量%は単に%と記す。
C:0.02〜0.08%
Cは、鋼の強度を上昇させる作用を有する元素であり、本発明では所望の高強度を確保するために、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.08%を超える過剰な含有は、パーライト等の第二相の組織分率を増大させ、母材靭性および溶接熱影響部靭性を低下させる。このため、Cは0.02〜0.08%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.05%である。
Si:0.01〜0.50%
Siは、固溶強化、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する。このような効果は0.01%以上の含有で認められる。一方、Siは、γ→α変態時にCをγ相に濃化させ、第二相としてマルテンサイト相の形成を促進させる作用を有し、結果として鋼板の靭性を低下させる。また、Siは、電縫溶接時にSiを含有する酸化物を形成し、溶接部品質を低下させるとともに、溶接熱影響部靭性を低下させる。このような観点から、Siはできるだけ低減することが望ましいが、0.50%までは許容できる。このようなことから、Siは0.01〜0.50%に限定した。好ましくは0.40%以下である。
なお、電縫溶接鋼管向け熱延鋼板では、Mnを含有するため、Siは低融点のMn珪酸化物を形成し溶接部からの酸化物排出が容易となるため、Siは0.10〜0.30%含有させてもよい。
Mn:0.5〜1.8%
Mnは、焼入性を向上させる作用を有し、焼入性向上を介し鋼板の強度を増加させる。また、Mnは、MnSを形成しSを固定することにより、Sの粒界偏析を防止してスラブ(鋼素材)割れを抑制する。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、1.8%を超える含有は、スラブ鋳造時の凝固偏析を助長し、鋼板にMn濃化部を残存させ、セパレーションの発生を増加させる。このMn濃化部を消失させるには、1300℃を超える温度に加熱する必要があり、このような熱処理を工業的規模で実施することは現実的でない。このため、Mnは0.5〜1.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.9〜1.7%である。
P:0.025%以下
Pは、鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、鋼の強度を上昇させる作用を有する。しかし、0.025%を超えて過剰に含有すると溶接性が低下する。このため、Pは0.025%以下に限定した。なお、好ましくは0.015%以下である。
S:0.005%以下
Sは、Pと同様に鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、0.005%を超えて過剰に含有すると、スラブ割れを生起させるとともに、熱延鋼板においては粗大なMnSを形成し、延性の低下を生じさせる。このため、Sは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.004%以下である。
Al:0.005〜0.10%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.10%を超える含有は、電縫溶接時の、溶接部の清浄性を著しく損なう。このため、Alは0.005〜0.10%に限定した。なお、好ましくは0.08%以下である。
Nb:0.01〜0.10%
Nbは、オーステナイト粒の粗大化、再結晶を抑制する作用を有する元素であり、熱間仕上圧延におけるオーステナイト未再結晶温度域圧延を可能にするとともに、炭窒化物として微細析出することにより、溶接性を損なうことなく、少ない含有量で熱延鋼板を高強度化する作用を有する。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える過剰な含有は、熱間仕上圧延中の圧延荷重の増大をもたらし、熱間圧延が困難となる場合がある。このため、Nbは0.01〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.09%である。
Ti:0.001〜0.05%
Tiは、窒化物を形成しNを固定しスラブ(鋼素材)割れを防止する作用を有するとともに、炭化物として微細析出することにより、鋼板を高強度化させる。このような効果は、0.001%以上の含有で顕著となるが、0.05%を超える含有は析出強化により降伏点が著しく上昇する。このため、Tiは0.001〜0.05%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.005〜0.035%である。
本発明では、上記した範囲のNb、Ti、Cを含み、かつ下記(1)式
(Ti+(Nb/2))/C<4 ‥‥(1)
を満足するようにNb、Ti、Cの含有量を調整する。
Nb、Tiは、炭化物形成傾向の強い元素で、C含有量が低い場合にはほとんどのCが炭化物となり、フェライト粒内の固溶C量が激減することが想定される。フェライト粒内の固溶C量の激減は、パイプライン施工時の円周溶接性に悪影響を及ぼす。フェライト粒内の固溶C量が極度に低減した鋼板を用いて製造された鋼管をラインパイプとして、円周溶接を行った場合には、円周溶接部の熱影響部における粒成長が顕著となり、円周溶接部の熱影響部靭性が低下する恐れがある。このため、本発明では、Nb、Ti、Cを(1)式を満足するように調整して含有させる。これにより、フェライト粒内の固溶C量を10ppm以上とすることが可能となり、円周溶接部の熱影響部靭性の低下を防止できる。
本発明では、上記した成分が基本成分であるが、この基本の組成に加えてさらに、選択元素として、V:0.01〜0.10%、Mo:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上、および/または、Ca:0.0005〜0.005%を、必要に応じて選択して含有することができる。
V:0.01〜0.10%、Mo:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上
V、Mo、Cr、Cu、Niはいずれも、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を増加させる元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Vは、焼入性を向上させるとともに、炭窒化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果は0.01%以上の含有で顕著となる。一方、0.10%を超える過剰の含有は、溶接性を劣化させる。このため、Vは0.01〜0.10%とすることが好ましい。なお、さらに好ましくは0.03〜0.08%である。
Moは、焼入性を向上させるとともに、炭窒化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果は0.01%以上の含有で顕著となる。一方、0.50%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Moは0.01〜0.50%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.30%である。
Crは、焼入性を向上させ、鋼板強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で顕著となる。一方、1.0%を超える過剰の含有は、電縫溶接時に溶接欠陥を多発させる傾向となる。このため、Crは0.01〜1.0%に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは0.01〜0.80%である。
Cuは、焼入れ性を向上させるとともに、固溶強化あるいは析出強化により鋼板の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.50%を超える含有は熱間加工性を低下させる。このため、Cuは0.01〜0.50%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.10〜0.40%である。
Niは、焼入性を向上させ、鋼の強度を増加させるとともに、鋼板の靭性をも向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.50%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Niは0.01〜0.50%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.10〜0.40%である。
Ca:0.0005〜0.005%
Caは、SをCaSとして固定し、硫化物系介在物を球状化し、介在物の形態を制御する作用を有し、介在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくし、水素のトラップ能を低下させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.0005%以上含有させることが望ましいが、0.005%を超えて含有すると、CaOの増加を招き、耐食性、靭性を低下させる。このため、Caは含有する場合には、0.0005〜0.005%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0009〜0.003%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、N:0.005%以下、O:0.005%以下、Mg:0.003%以下、Sn:0.005%以下が許容できる。
N:0.005%以下
Nは、鋼中に不可避的に含有されるが、過剰の含有は、鋼素材(スラブ)鋳造時の割れを多発させる。このため、Nは0.005%以下に限定することが望ましい。なお、より好ましくは0.004%以下である。
O:0.005%以下
Oは、鋼中では各種の酸化物として存在し、熱間加工性、耐食性、靭性等を低下させる原因となる。このため、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、0.005%までは許容できる。極端な低減は精錬コスト高騰を招くため、Oは0.005%以下に限定することが望ましい。
Mg:0.003%以下
Mgは、Caと同様に酸化物、硫化物を形成し、粗大なMnSの形成を抑制する作用を有するが、0.003%を超える含有は、Mg酸化物、Mg硫化物のクラスターを多発させ、靭性の低下を招く。このため、Mgは0.003%以下に限定することが望ましい。
Sn:0.005%以下
Snは、製鋼原料として使用されるスクラップ等から混入する。Snは、粒界等に偏析しやすい元素であり、0.005%を超えて多量に含有すると、粒界強度が低下し、靭性の低下を招く。このため、Snは0.005%以下に限定することが望ましい。
鋼素材の製造方法としては、上記した組成の溶鋼を転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とすることが好ましいが、本発明では、これに限定されることはない。
上記した組成の鋼素材に、加熱し熱間圧延を施す。熱間圧延は、鋼素材をシートバーとする粗圧延と、該シートバーを熱延板とする仕上圧延とからなる。
鋼素材の加熱温度は、熱延板に圧延することが可能な温度であればよく、とくに限定する必要はないが、1100〜1300℃の範囲の温度とすることが好ましい。加熱温度が1100℃未満では、変形抵抗が高く圧延負荷が増大し圧延機への負荷が過大となりすぎる。一方、加熱温度が1300℃を超えて高温になると、結晶粒が粗大して低温靭性が低下するうえ、スケール生成量が増大し、歩留りが低下する。このため、熱間圧延における加熱温度は1100〜1300℃とすることが好ましい。
加熱された鋼素材に、粗圧延を施し、シートバーとする。粗圧延の条件は、所望の寸法形状のシートバーが得られればよく、その条件はとくに限定されない。なお、靭性確保の観点からは、粗圧延の圧延終了温度は1050℃以下とすることが好ましい。
得られたシートバーに、さらに仕上圧延を施す。なお、仕上圧延前のシートバーに加速冷却を施すか、あるいはテーブル上でオシレーションなどを行って仕上圧延開始温度を調整することが好ましい。これにより、仕上圧延ミル内での、高靭性化に有効な温度域での圧下率を大きくすることができる。
仕上圧延では、高靭性化の観点から、有効圧下率を20%以上とすることが好ましい。ここで、「有効圧下率」とは、950℃以下の温度域での全圧下量(%)をいう。なお、板厚全体で所望の高靭性化を達成するためには、板厚中央部における有効圧下率が20%以上、より好ましくは40%以上を満足することが好ましい。
熱間圧延(仕上圧延)終了後、熱延板には、ホットランテーブル上で加速冷却を施す。加速冷却の開始は、板厚中央部の温度が750℃以上であるうちに行うことが望ましい。板厚中央部の温度が750℃未満となると、高温変態フェライト(ポリゴナルフェライト)が形成され、γ→α変態時に排出されたCにより、ポリゴナルフェライト周辺に第二相が形成される。このため、板厚中心部で第二相の析出分率が高くなり、上記した所望の組織を形成できなくなる。
加速冷却は、一次加速冷却と二次加速冷却とからなる。一次加速冷却と二次加速冷却とは連続して行っても、一次加速冷却と二次加速冷却との間に10s以内の空冷処理を設けてもよい。一次加速冷却と二次加速冷却との間に空冷を行うことにより、表層の過冷却が防止されることとなる。これにより、マルテンサイトの形成が防止される。なお、空冷の時間は、10s以下とすることが、板厚内部が高温域で滞留することを防止する観点から好ましい。
本発明における加速冷却では、板厚中心位置の平均冷却速度で10℃/s以上の冷却速度で行う。なお、一次加速冷却における板厚中心位置の平均冷却速度は、750℃〜一次冷却停止までの温度域での平均とする。また、二次加速冷却における板厚中心位置の平均冷却速度は、一次冷却停止〜二次冷却停止までの温度域での平均とする。
板厚中央位置における平均冷却速度が10℃/s未満では、高温変態フェライト(ポリゴナルフェライト)が形成されやすくなり、板厚中心部で第二相の析出分率が高くなり、上記した所望の組織を形成できなくなる。このため、熱間圧延終了後の加速冷却は、板厚中央位置の平均冷却速度で10℃/s以上の冷却速度で行うとした。なお好ましくは20℃/s以上である。ポリゴナルフェライトの形成を回避するためには、とくに750〜650℃の温度域で10℃/s以上の冷却速度で行うことが好ましい。
本発明における一次加速冷却では、上記した範囲の冷却速度で、かつ板厚中心位置(板厚中央部)の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置(表層)での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s未満となるように調整した加速冷却とする。なお、平均冷却速度は、仕上圧延の圧延終了温度から一次冷却停止温度の間の平均とする。一次加速冷却を、表層と板厚中央部との冷却速度差が80℃/s未満となるように調整した加速冷却とすることにより、とくに表層近傍においてもベイナイトまたはベイニティックフェライトが形成され延性の低下がなく、所望の強度・延性バランスを確保できる。一方、板厚中心部と表層部との冷却速度差が、80℃/sを超えて大きくなる加速冷却では、表層近傍の組織、さらには板厚方向に5mmまでの領域における組織がマルテンサイト相を含む組織となりやすく、延性が低下する。このようなことから、本発明では、一次加速冷却を、板厚中心位置の平均冷却速度で10℃/s以上の冷却速度で、かつ板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s未満となるように調整した加速冷却に限定した。このような一次加速冷却は、冷却水の水量密度を調整することにより達成できる。
さらに、本発明では上記した一次加速冷却を施したのち施す、二次加速冷却は、上記した範囲の冷却速度(板厚中心位置の平均冷却速度で10℃/s以上の冷却速度)で、かつ板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s以上である冷却を、板厚中心位置の温度が次(2)式
BFS(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni−1.5CR ‥‥(2)
(ここで、C、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni:各元素の含有量(質量%)、CR:冷却速度(℃/s))
で定義されるBFS以下の二次冷却停止温度まで行う冷却とする。二次加速冷却における板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s未満では、板厚中央部の組織を所望の組織(延性に富むベイニティックフェライト相、ベイナイト相またはそれらの混合組織からなる組織)とすることができなくなる。また、二次冷却停止温度がBFS超えでは、ポリゴナルフェライトが形成され、第二相組織分率が増加し、所望の特性を確保できなくなる。このため、二次加速冷却は、板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s以上の冷却を、板厚中心位置の温度でBFS以下の二次冷却停止温度まで行うとした。なお、二次冷却停止温度は、より好ましくは(BFS−20℃)以下である。
上記した二次冷却停止温度以下で、二次加速冷却を停止したのち、熱延板はBFS0以下の巻取温度でコイル状に巻き取られる。なお、より好ましくは(BFS0−20℃)以下である。BFS0は、次(3)式
BFS0(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni ‥‥(3)
(ここで、C、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni:各元素の含有量(質量%))
で定義される。
二次加速冷却の冷却停止温度をBFS 以下の温度とし、かつ巻取温度をBFS0以下の温度とすることにより、図2、図3に示すように、はじめてΔDが2μm以下でかつΔVが2%以下となり、板厚方向の組織の均一性が顕著となる。これにより、優れたDWTT特性および優れたCTOD特性を確保でき、低温靭性が顕著に向上した厚肉高張力熱延鋼板とすることができる。
なお、本発明における二次加速冷却では、二次冷却停止時における、表面から板厚方向に1mmの位置での冷却停止温度と、巻取温度(板厚中央位置での温度)との差が300℃以内となるように、施すことが好ましい。表面から板厚方向に1mmの位置での冷却停止温度と巻取温度の差が、300℃を超えて大きくなると、鋼組成によっては表層にマルテンサイト相を含む複合組織を形成し、延性が低下し、所望の強度・延性バランスを確保できなくなる場合がある。このため、本発明における二次加速冷却では、表面から板厚方向に1mmの位置での冷却停止温度と、巻取温度(板厚中央位置での温度)との差が300℃以内となるように、施すことが好ましいとした。このような二次加速冷却の調整は、水量密度の調整や冷却バンクの選択により達成できる。
なお、冷却速度の上限は、使用する冷却装置の能力に依存して決定されるが、反り等の鋼板形状の悪化を伴わない冷却速度であるマルテンサイト生成冷却速度より遅いことが好ましい。また、このような冷却速度は、フラットノズル、棒状ノズル、円管ノズル等を利用した冷却により達成できる。なお、本発明では、板厚中心部の温度、冷却速度等は、伝熱計算等で算出したものを使用することとした。
なお、コイル状に巻き取られた熱延板は、コイル中央部での冷却速度で20〜60℃/hrで室温まで冷却することが好ましい。冷却速度が20℃/hr未満では、結晶粒の成長が進行するため、靭性が低下する場合がある。また、60℃/hrを超える冷却速度では、コイル中央部とコイル外周部や内周部との温度差が大きくなり、コイル形状の悪化を招きやすい。
上記した製造方法で得られた本発明の厚肉高張力熱延鋼板は、上記した組成を有し、さらに、少なくとも表面から板厚方向に1mmの位置が低温変態フェライト相を主相とする組織を有する。ここでいうフェライト相は、硬質な低温変態フェライトを意味し、ベイナイト相、ベイニティックフェライト相あるいはそれらの混合相のいずれかをいうものとする。軟質な高温変態フェライト(粒状のポリゴナルフェライト)は含まない。第二相は、パーライト相、マルテンサイト相、MA(島状マルテンサイトともいう)、上部ベイナイト、あるいはそれらの2種以上からなる混合相のいずれかである。なお、本発明の厚肉高張力熱延鋼板では、板厚中央位置における組織も同様な低温変態フェライト相を主相とする組織となることは言うまでもない。ここで「主相」とは、組織分率(体積%)で90%以上、さらに好ましくは98%以上の場合をいう。
そして、鋼板表面から板厚方向に1mmの位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径と板厚中央位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径(μm)との差ΔDが2μm以下で、かつ表面から板厚方向に1mmの位置における第二相の組織分率(体積%)と板厚中央位置における第二相の組織分率(体積%)との差ΔVが2%以下である組織を有する。
ΔDが2μm以下でかつΔVが2%以下となる場合にのみ、厚肉高張力熱延鋼板の低温靭性、とくに全厚試験片を用いるDWTT特性やCTOD特性が顕著に向上する。ΔDまたはΔVのいずれか一つが、所望の範囲外となる場合には、図1からも明らかなように、DWTTが−35℃より高くなり、DWTT特性が低下し、低温靭性が劣化する。このようなことから、本発明では、組織を、鋼板表面から板厚方向に1mmの位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径と板厚中央位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径(μm)との差ΔDが2μm以下、かつ表面から板厚方向に1mmの位置における第二相の組織分率(体積%)と板厚中央位置における第二相の組織分率(体積%)との差ΔVが2%以下である組織に限定した。このような組成と組織を有することにより、強度・延性バランスに優れた鋼板とすることができる。
なお、ΔDが2μm以下でかつΔVが2%以下となる組織を有する熱延鋼板は、鋼板表面から板厚方向に1mmの位置と板厚1/4位置との低温変態フェライト相の平均結晶粒径(μm)の差ΔD*が2μm以下、第二相の組織分率(%)の差ΔV*が2%以下を満足し、また鋼板表面から板厚方向に1mmの位置と板厚3/4位置との低温変態フェライト相の平均結晶粒径(μm)の差ΔD**も2μm以下、第二相の組織分率(%)の差ΔV**も2%以下を満足することを確認している。
以下、さらに実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
表1に示す組成のスラブ(鋼素材)(肉厚:215mm)を用いて、表2に示す熱間圧延条件で熱間圧延を施し、熱間圧延終了後、表2に示す冷却条件で冷却し、表2に示す巻取温度でコイル状に巻取り、表2に示す板厚の熱延鋼板(鋼帯)とした。なお、これら熱延鋼板を素材として、冷間でのロール連続成形によりオープン管とし、該オープン管の端面同士を電縫溶接して、電縫鋼管(外径660mmφ)とした。
得られた熱延鋼板から試験片を採取し、組織観察、引張試験、衝撃試験、DWTT試験、CTOD試験を実施した。なお、DWTT試験、CTOD試験は電縫鋼管についても実施した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
得られた熱延鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向断面を研磨、腐食し、光学顕微鏡(倍率:1000倍)または走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)で各2視野以上観察し、撮像して組織の種類を同定し、さらに画像解析装置を用いて、低温変態フェライト相の平均結晶粒径、および第二相の組織分率(体積%)を測定した。観察位置は、鋼板表面から板厚方向に1mmの位置、および板厚中央部とした。なお、低温変態フェライト相の平均結晶粒径は、各低温変態フェライト粒の面積を測定し、該面積から円相当径を算出し、得られた各低温変態フェライト粒の円相当径を算術平均し、該位置における平均結晶粒径とした。
(2)引張試験
得られた熱延鋼板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるように、板状の試験片(平行部幅:12.5mm、標点間距離:50mm)を採取し、ASTM E 8の規定に準拠して、室温で引張試験を実施し、引張強さTS、伸びElを求め、強度・延性バランスTS×Elを算出した。
(3)衝撃試験
得られた熱延鋼板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−80℃での吸収エネルギー(J)を求めた。なお、試験片は3本とし、得られた吸収エネルギー値の算術平均をもとめ、その鋼板の吸収エネルギー値vE−80(J)とした。vE−80が300J以上である場合を「靭性が良好である」と評価した。
(4)DWTT試験
得られた熱延鋼板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにDWTT試験片(大きさ:板厚×幅3in.×長さ12in.)を採取し、ASTM E 436の規定に準拠して、DWTT試験を行い、延性破面率が85%となる最低温度(DWTT)を求めた。DWTTが、−35℃以下の場合を「優れたDWTT特性」を有すると評価した。
なお、DWTT試験は、電縫鋼管の母材部からも試験片の長手方向が管周方向となるように、DWTT試験片を採取し、鋼板と同様に試験した。
(5)CTOD試験
得られた熱延鋼板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにCTOD試験片(大きさ:板厚×幅(2×板厚)×長さ(10×板厚))を採取し、ASTM E 1290の規定に準拠して、試験温度:−10℃でCTOD試験を行い、−10℃での限界開口変位量(CTOD値) を求めた。なお、試験荷重は、三点曲げ方式で負荷し、切欠部に変位計を取り付け、限界開口変位量CTOD値を求めた。CTOD値が0.30mm以上である場合を、「優れたCTOD特性」を有すると評価した。
なお、CTOD試験は、電縫鋼管からも、管軸方向に直交する方向が試験片の長手方向となるように、CTOD試験片を採取し、ノッチを母材部およびシーム部に導入して、鋼板と同様に試験した。
得られた結果を表3に示す。なお、表中の組織記号のうち、「F」はポリゴナルフェライトであり、低温変態フェライト相、第二相のいずれにも該当しない。また、表中の組織記号のうち、「BF」はベイニティックフェライト、「B」はベイナイトであり、いずれも低温変態フェライト相(主相)に該当する。
Figure 0005630026
Figure 0005630026
Figure 0005630026
本発明例はいずれも、適正な組織を有し、TS:510MPa以上の高強度と、vE−80が300J以上、CTOD値が0.30mm以上、−35℃以下のDWTTと、優れた低温靭性とを有し、さらにTS×El:18000MPa%以上の優れた強度・延性バランスを有する熱延鋼板となっている。また、本発明例の熱延鋼板を使用した電縫鋼管も、母材部、シーム部ともに、0.30mm以上のCTOD値、−20℃以下のDWTTを有し、優れた低温靭性を有する鋼管となっている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、vE−80が300J未満であるか、CTOD値が0.30mm未満であるか、−35℃超えのDWTTであるかして、低温靭性が低下しているか、あるいは伸びが低く、強度・延性バランスが所望の値を確保できていない。

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C:0.02〜0.08%、 Si:0.01〜0.50%、
    Mn:0.5〜1.8%、 P:0.025%以下、
    S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
    Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.001〜0.05%
    を含み、かつC、Ti、Nbを下記(1)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材を加熱し、粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施し、ついで熱間圧延終了後に加速冷却を施して熱延鋼板とするにあたり、
    前記加速冷却を一次加速冷却と二次加速冷却とからなる冷却とし、該一次加速冷却を、板厚中心位置の平均冷却速度が10℃/s以上で、かつ板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s未満である冷却を、表面から板厚方向に1mmの位置での温度が650℃以下500℃以上の温度域の温度となる一次冷却停止温度まで行う冷却とし、前記二次加速冷却を、板厚中心位置の平均冷却速度が10℃/s以上で、板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s以上である冷却を、板厚中心位置の温度が下記(2)式で定義されるBFS以下の二次冷却停止温度まで行う冷却とし、該二次加速冷却後に、板厚中心位置の温度で下記(3)式で定義されるBFS0以下の巻取温度で巻き取り、
    表面から板厚方向に1mmの位置における組織が、低温変態フェライト相を主相として組織分率(体積%)で90%以上含有し、更にポリゴナルフェライトを含有する組織であり、板厚中央位置における組織が、低温変態フェライト相を主相として組織分率(体積%)で90%以上含有する組織であり、表面から板厚方向に1mmの位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径と板厚中央位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径との差ΔDが2μm以下、かつ表面から板厚方向に1mmの位置における第二相の組織分率(体積%)と板厚中央位置における第二相の組織分率(体積%)との差ΔVが2%以下であり、前記低温変態フェライト相がベイナイト相、ベイニティックフェライト相あるいはそれらの混合相のいずれかであり、前記第二相がパーライト相、マルテンサイト相、島状マルテンサイト、上部ベイナイト、あるいはそれらの2種以上からなる混合相のいずれかである組織を有し、板厚が11mm以上、引張強さTSが510MPa以上、ASTM E 1290の規定に準拠して試験温度:−10℃で実施したCTOD試験における限界開口変位量CTOD値が0.30mm以上、ASTM E 436の規定に準拠して行ったDWTT試験で延性破面率が85%となる最低温度(DWTT温度)が−35℃以下、ASTM E 8の規定に準拠して平行部幅:12.5mm、標点間距離GL:50mmの板状試験片を用いて試験した場合の伸びEl(%)と前記引張強さTS(MPa)との積TS×Elが18000MPa%以上である熱延鋼板とすることを特徴とする強度・延性バランスに優れた厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。

    (Ti+(Nb/2))/C<4 ‥‥(1)
    BFS(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni−1.5CR ‥‥(2)
    BFS0(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni ‥‥(3)
    ここで、C、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni:各元素の含有量(質量%)
    CR:冷却速度(℃/s)
  2. 前記一次加速冷却と前記二次加速冷却との間に10s以下の空冷を行うことを特徴とする請求項1に記載の厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
  3. 前記一次加速冷却および前記二次加速冷却における、板厚中心位置の、750〜650℃の温度域での平均冷却速度が10℃/s以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
  4. 前記二次加速冷却における、表面から板厚方向に1mmの位置での冷却停止温度と、前記巻取温度との差が300℃以内となることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.01〜0.10%、Mo:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の厚肉高張力熱延鋼板の製造方法。
  7. 質量%で、
    C:0.02〜0.08%、 Si:0.01〜0.50%、
    Mn:0.5〜1.8%、 P:0.025%以下、
    S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
    Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.001〜0.05%
    を含み、かつC、Ti、Nbを下記(1)式を満足するように含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、表面から板厚方向に1mmの位置における組織が、低温変態フェライト相を主相として組織分率(体積%)で90%以上含有し、更にポリゴナルフェライトを含有する組織であり、板厚中央位置における組織が、低温変態フェライト相を主相として組織分率(体積%)で90%以上含有する組織であり、表面から板厚方向に1mmの位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径と板厚中央位置における低温変態フェライト相の平均結晶粒径との差ΔDが2μm以下、かつ表面から板厚方向に1mmの位置における第二相の組織分率(体積%)と板厚中央位置における第二相の組織分率(体積%)との差ΔVが2%以下であり、前記低温変態フェライト相がベイナイト相、ベイニティックフェライト相あるいはそれらの混合相のいずれかであり、前記第二相がパーライト相、マルテンサイト相、島状マルテンサイト、上部ベイナイト、あるいはそれらの2種以上からなる混合相のいずれかである組織と、を有し、板厚が11mm以上、引張強さTSが510MPa以上、ASTM E 1290の規定に準拠して試験温度:−10℃で実施したCTOD試験における限界開口変位量CTOD値が0.30mm以上、ASTM E 436の規定に準拠して行ったDWTT試験で延性破面率が85%となる最低温度(DWTT温度)が−35℃以下、ASTM E 8の規定に準拠して平行部幅:12.5mm、標点間距離GL:50mmの板状試験片を用いて試験した場合の伸びEl(%)と前記引張強さTS(MPa)との積TS×Elが18000MPa%以上であることを特徴とする強度・延性バランスに優れた厚肉高張力熱延鋼板。

    (Ti+(Nb/2))/C<4 ‥‥(1)
    ここで、Ti、Nb、C:各元素の含有量(質量%)
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.01〜0.10%、Mo:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項7に記載の厚肉高張力熱延鋼板。
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項7または8に記載の厚肉高張力熱延鋼板。
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