JP6146358B2 - 高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、土木・建築分野およびパイプライン、油井管などエネルギー分野で用いられる鋼管の素材として好適な、曲げ、低温靭性および強度のバランスに優れた高強度熱延鋼板とその製造方法に関する。
近年、構造物の大型化に伴い、鋼管素材の高強度化、大径化、厚肉化のニーズが高まっている。また、鋼管の使用環境が寒冷地の場合は低温靭性、敷設時または敷設後に変形をする場合には曲げ性が要求される。このような状況下、低温靭性や曲げ性を兼ね備えた鋼管用の高強度熱延鋼板に関しては、数多くの研究が為され、各種技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.045%、Nb:0.005〜0.08%を含有し、残部鉄および不可避的不純物からなる鋼片に、所定の条件で加熱、熱間圧延および冷却を施すことで、板厚1/4位置における全組織に対するベイナイト面積率が80%以上である高強度鋼板とする技術が提案されている。そして、特許文献1には、ベイナイト分率が80%以上である鋼板組織とすることにより、強度と低温靭性のバランスに優れた高強度鋼板が得られると記載されている。
また、特許文献2には、高強度熱延鋼板に関し、質量%でC:0.08〜0.25%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.8〜2.1%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とし、ベイナイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒の平均粒径が、圧延方向に平行な断面で20μm以下で、かつ圧延方向に直交する断面で15μm以下である組織とする技術が提案されている。そして、特許文献2には、ベイナイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒の平均粒径を上記の如く制御することにより、曲げ性と低温靭性に優れた高強度熱延鋼板が得られると記載されている。
更に、特許文献3には、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.001〜0.05%を含み、かつC、Ti、Nbを(Ti+(Nb/2))/C<4を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材を、加熱し、熱間圧延を施した後、表面から板厚方向に1mmの位置の平均冷却速度で80℃/s超で、表面から板厚方向に1mmの位置の温度で、Ms点以下の温度域の冷却停止温度まで冷却する第一段の冷却と、30s以下の空冷を行う第二段の冷却とからなる冷却工程を少なくとも2回行い、表面から板厚方向に1mmの位置の平均冷却速度で80℃/s超で所定の冷却停止温度まで冷却する第三段の冷却と、を順次施し、所定の巻取温度で巻き取ることにより、板厚11mm以上の熱延鋼板を製造する技術が提案されている。
また、特許文献3には、上記に従い熱延鋼板を製造することで、表面から板厚方向に1mmの位置における組織が焼戻マルテンサイト単相組織またはベイナイトと焼戻マルテンサイトの混合組織のいずれかであり、板厚中央位置における組織がベイナイトおよび/またはベイニティックフェライトを主相とし、体積%で2%以下の第二相からなる組織を有し、表面から板厚方向に1mmの位置におけるビッカース硬さHV1mmと板厚中央位置におけるビッカース硬さHV1/2tとの差ΔHVが50ポイント以下である厚肉高張力熱延鋼板が得られると記載されている。更に、特許文献3には、上記の如く熱延鋼板の組織を板厚方向に均一な組織とすることにより、板厚が11mm以上であり且つ低温靭性に優れた厚肉高張力熱延鋼板が得られると記載されている。
特開2013−7101号公報 特開2013−117068号公報 特開2010−196164号公報
しかしながら、上記の従来技術ではいずれも、鋼管用素材として好適な高強度熱延鋼板、すなわち高強度であり且つ低温靭性に優れ、更に造管時の成形条件や敷設後の地殻変動などによる変形に耐え得る十分な曲げ性をも兼ね備えた高強度熱延鋼板を得ることは極めて困難である。
特許文献1に提案された技術では、低温靭性に優れた高強度熱延鋼板が得られるものの、その加工性、特に曲げ性の確保に課題がある。具体的には、曲げ成形時に、鋼板の最表層側において大きな変形を受け、割れ発生などの懸念がある。
特許文献2に提案された技術では、熱延鋼板のC含有量が多く、低温靭性や溶接性を確保できない可能性がある。また、熱延鋼板の引張強さTSが過度に高く、十分な曲げ性が得られない。特許文献3に提案された技術では、熱延鋼板の製造工程、特に熱間圧延後の冷却工程が複雑となり、量産安定性に課題がある。また、鋼板の曲げ性向上には、板厚方向での特性の均一性よりも寧ろ表層特性の均一性の寄与が大きいが、特許文献3に提案された技術では、熱延鋼板のコイル幅、長手方向において、冷却ムラに起因する特性バラツキの懸念がある。そのため、特許文献3に提案された技術では、熱延鋼板の曲げ性の確保に課題がある。
本発明は、従来技術が抱える上記の問題を解決し、鋼管用素材として好適な熱延鋼板、すなわち高強度であり且つ低温靭性に優れ、更に曲げ性にも優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、靭性に優れたベイニティックフェライトに着目し、ベイニティックフェライト主体の組織を有する熱延鋼板について、靭性を確保しつつ、曲げ性向上および強度向上を図る手段について検討した。
熱延鋼板の曲げ性向上には、表層をある程度軟質化する必要がある。また、先述のとおり、熱延鋼板の曲げ性向上を図るうえでは、表層特性を均一化することが極めて重要である。
そこで、本発明者らは先ず、鋼板表層の硬さ上昇を抑制するとともに、鋼板表層の特性を均一化する手段について検討した。そして、鋼板の極表層の組織において、軟質なフェライト相を活用して鋼板表層を軟質化することに想到した。また、鋼板の極表層において、フェライト相を活用するとともにベイニティックフェライト相の結晶粒径を微細化することで、鋼板表層の組織が均一化し、鋼板の曲げ性が格段に向上することを見出した。更に、鋼板内部において残留オーステナイト相を活用することにより、延性が向上し、熱延鋼板の曲げ性がより一層向上することを明らかとした。
一方、軟質なフェライト相を活用する場合、熱延鋼板の強度低下は免れない。このような問題に対し、本発明者らは、鋼板表層および鋼板内部において、マルテンサイト相を活用し、鋼板強度を確保することに想到した。このようにマルテンサイト相を活用すれば、省合金成分で熱延鋼板の高強度化が可能である。また、一般に、残留オーステナイト相およびマルテンサイト相は靭性に好ましくないが、これらの組織分率を最適化し、更に鋼板内部のマルテンサイト相の結晶粒径を制御することにより、優れた低温靭性を得ることが可能であることを明らかとした。更に、本発明者らは、熱延鋼板を製造するに際し、特に仕上げ圧延中に鋼板を水冷するとともに、その水冷条件を最適化し、更に熱延終了後の冷却条件を制御することにより、上記した所望の組織を有する熱延鋼板が得られるという知見を得た。
本発明は上記の知見に基づき為されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 質量%で、C:0.020%以上0.080%以下、Si:0.05%以上0.50%以下、Mn:1.00%以上2.00%以下、P:0.001%以上0.020%以下、S:0.0001%以上0.0050%以下、 Al:0.005%以上0.050%以下、N:0.0010%以上0.0060%以下、Nb:0.040%以上0.080%以下、Ti:0.005%以上0.050%以下、Ca:0.0005%以上0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率が38%以上58%以下、ベイニティックフェライト相の面積比率が41%以上60%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下、かつ上記3相以外の相の合計面積比率が5%以下である組織を有し、鋼板表面から板厚方向25μmの位置において、ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下である組織を有し、鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が90%以上98%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下かつ該マルテンサイト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下、残留オーステナイト相の面積比率が1%以上5%以下である組織を有することを特徴とする板厚が16.0mm以上25.4mm以下の高強度熱延鋼板。
[2] 前記[1]において、前記組成に加えて更に、質量%で、V:0.001%以上0.100%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下、Ni:0.01%以上0.50%以下、Cr:0.01%以上0.50%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、B:0.0001%以上0.0040%以下のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする高強度熱延鋼板。
[3] 前記[1]または[2]に記載の組成からなる連続鋳造鋳片を、600℃以下の温度域に冷却した後、1050℃以上1300℃以下の温度域に再加熱し、粗圧延後、仕上げ圧延圧下率を40%以上90%以下とし、仕上げ圧延中に1回あたりの平均単位幅流量200l/min/m以上2000l/min/m以下の冷却水で5回以上15回以下の鋼板冷却をし、仕上げ圧延終了温度を720℃以上820℃以下の温度域とする仕上げ圧延を施し、該仕上げ圧延終了後1s以上10s以内に加速冷却を開始し、鋼板表面において、600℃以下500℃以上の温度域の平均冷却速度を100℃/s以上500℃/s以下とし、200℃以上400℃以下の加速冷却終了温度まで冷却し、加速冷却終了後、放冷し、その後、350℃以上550℃以下の温度域で巻き取り、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率が38%以上58%以下、ベイニティックフェライト相の面積比率が41%以上60%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下、かつ上記3相以外の相の合計面積比率が5%以下である組織を有し、鋼板表面から板厚方向25μmの位置において、ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下である組織を有し、鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が90%以上98%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下かつ該マルテンサイト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下、残留オーステナイト相の面積比率が1%以上5%以下である組織を有する熱延鋼板とすることを特徴とする板厚が16.0mm以上25.4mm以下の高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、パイプラインや油井管、或いは土木・建築等の分野で用いられる鋼管素材として好適な、曲げ性、低温靭性に優れた高強度熱延鋼板が従来の熱延設備により得られ、工業的に極めて有用である。
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明高強度熱延鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%(mass%)を意味するものとする。
C :0.020%以上0.080%以下
Cは、鋼板の強度確保に必須の元素である。C含有量が0.020%に満たない場合、鋼板の強度確保が困難であるばかりか、Cr、Moなど焼入性向上元素を多量に添加することが必要となり、高コストとなる。一方、C含有量が0.080%を超えると、マルテンサイト相または残留オーステナイト相が過度に生成し、鋼板の靭性または曲げ性に悪影響を及ぼし、更には溶接性の劣化を招く。したがって、C含有量は0.020%以上0.080%以下とする。好ましくは0.040%以上0.070%以下である。
Si:0.05%以上0.50%以下
Siは、鋼板強度の確保に有用であり、その含有量を0.05%以上とすることで強度向上効果が認められる。しかし、Si含有量が0.50%を超えると、鋼板の溶接性が低下し、溶接継手靭性が低下する。したがって、Si含有量は0.05%以上0.50%以下とする。好ましくは0.15%以上0.40%以下である。
Mn:1.00%以上2.00%以下
Mnは、焼入性向上を介して鋼板の高強度化に寄与する元素であり、本発明においてはMn含有量を1.00%以上とする必要がある。一方、Mn含有量が2.00%を超えると、焼入性が過度に向上し、鋼板の靭性および曲げ性が大幅に低下する。したがって、Mn含有量は1.00%以上2.00%以下とする。好ましくは1.20%以上1.80%以下である。
P :0.001%以上0.020%以下
Pは、鋼板の靭性および溶接性に悪影響を及ぼすため、その含有量が低ければ低いほど好ましいが、0.020%以下であれば許容できる。一方、Pの過度の低減は生産性を阻害するので、P含有量の下限は0.001%とする。
S :0.0001%以上0.0050%以下
Sは、鋼中で粗大なMnSとして存在し、延性に悪影響を及ぼし、鋼板の曲げ性を低下させる。S含有量は少なければ少ないほど好ましいが、0.0050%以下であれば許容できる。一方、Sの過度の低減は生産性を阻害するので、S含有量の下限は0.0001%とする。
Al:0.005%以上0.050%以下
Alは、脱酸剤として用いられ、0.005%以上の含有で脱酸効果を発現する。一方、Al含有量が0.050%を超えると、介在物として鋼中に存在し、鋼板の曲げ性、靭性に悪影響を及ぼす。したがって、Al含有量は0.005%以上0.050%以下とする。好ましくは0.025%以上0.045%以下である。
N :0.0010%以上0.0060%以下
Nは、鋼中でAlおよびNbの析出物として存在し、結晶粒を微細化することにより、鋼板の靭性を向上させるのに有効な元素である。このような効果を得るためには、N含有量を0.0010%以上とする必要がある。一方、N含有量が0.0060%を超えて多量になると、鋼板の靭性が却って劣化する。したがって、N含有量は0.0010以上0.0060%以下とする。
Nb:0.040%以上0.080%以下
Nbは、結晶粒径を細粒化する元素であり、鋼板の強度および靭性の向上に寄与する。これらの効果の発現には、Nb含有量を0.040%以上とする必要がある。一方、Nb含有量が0.080%を超えると、鋼板の溶接性が劣化する。
したがって、Nb含有量は0.040%以上0.080%以下とする。好ましくは0.050%以上0.065%以下である。
Ti:0.005%以上0.050%以下
Tiは、析出強化により鋼板の強度向上に寄与する。その効果の発現には、Ti含有量を0.005%以上とする必要がある。一方、Ti含有量が0.050%を超えて過剰になると、鋼板の靭性および溶接性が劣化する。したがって、Ti含有量は0.005%以上0.050%以下とする。好ましくは0.010%以上0.030%以下である。
Ca:0.0005%以上0.0050%以下
Caは、鋼板の靭性を劣化させるMnSの析出形態を変化させ、靭性の向上に寄与する。この効果の発現には、Ca含有量を0.0005%以上とする必要がある。一方、Ca含有量が0.0050%を超えると、鋼中にCa系介在物が過剰に存在し、鋼板の曲げ性に悪影響を及ぼす。したがって、Ca含有量は0.0005%以上0.0050%以下とする。好ましくは0.0010%以上0.0025%以下である。
以上の成分が基本の成分であるが、本発明の高強度熱延鋼板は、上記成分に加えて更に、選択元素として必要に応じて、V:0.001%以上0.100%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下、Ni:0.01%以上0.50%以下、Cr:0.01%以上0.50%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、B:0.0001%以上0.0040%以下のうちから選ばれる1種以上を含有してもよい。
V :0.001%以上0.100%以下
Vは、鋼板強度確保に寄与し、その効果の発現にはV含有量を0.001%以上とすることが好ましい。一方、V含有量が0.100%を超えて過剰になると、鋼板の靭性および溶接性が劣化するおそれがある。したがって、Vを含有する場合には、その含有量を0.001%以上0.100%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.020%以上0.080%以下である。
Cu:0.01%以上0.50%以下
Cuは、鋼板の強度向上に寄与し、この効果を発現させるためにはCu含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cu 含有量が0.50%を超えると、熱間脆性の要因となる。したがって、Cuを含有する場合には、その含有量を0.01%以上0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.10%以上0.40%以下である。
Ni:0.01%以上0.50%以下
Niは、鋼板の強度向上および靭性向上に寄与する。このような効果を発現させるためには、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Ni含有量は、0.50%を超えても構わないが、0.50%を超えるとその効果が飽和する傾向にある。したがって、Niを含有する場合には、その含有量を0.01%以上0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.10%以上0.30%以下である。
Cr:0.01%以上0.50%以下
Crは、焼入性向上を介して鋼板の高強度化に寄与する。特に板厚中央位置においてパーライト、フェライト生成を抑制し、後述する所望のマルテンサイトまたは残留オーステナイトを有する鋼板を得るためには、Cr含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cr含有量が0.50%を超えると、鋼板の溶接性が大幅に低下するおそれがある。したがって、Crを含有する場合には、その含有量を0.01%以上0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.10%以上0.40%以下である。
Mo:0.01%以上0.50%以下
Moは、焼入性向上を介して鋼板の強度向上に寄与する。特に板厚中央位置においてパーライト、フェライト生成を抑制し、後述する所望のマルテンサイトおよび残留オーステナイトを有する鋼板を得るためには、Mo含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Mo含有量が0.50%を超えると、過度にマルテンサイト相が生成し、鋼板の曲げ性および靭性が大幅に低下するおそれがある。したがって、Moを含有する場合には、その含有量を0.01%以上0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.10%以上0.30%以下である。
B :0.0001%以上0.0040%以下
Bは、焼入性向上を介して鋼板の高強度化に寄与する。このような効果を発現させるためには、B含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。一方、B 含有量が0.0040%を超えると、鋼板を溶接する際、溶接部の靭性に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、Bを含有する場合には、その含有量を0.0001%以上0.0040%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.0005%以上0.0015%以下である。
なお、本発明の高強度熱延鋼板において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えばCo、W、Pb、Sn等が挙げられ、これらの元素の含有量はそれぞれ0.0050%以下であれば許容することができる。
次に、本発明高強度熱延鋼板の組織の限定理由について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板は、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率が20%以上65%以下、ベイニティックフェライト相の面積比率が20%以上65%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下である組織を有する。また、本発明の高強度熱延鋼板は、鋼板表面から板厚方向25μmの位置において、ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下である組織を有する。
鋼板の曲げ成形時には、板厚内の中立面から外側で引張変形が生じ、最表層に向かうにつれ歪量は増大する。割れ判定は外観観察によって行われ、最表層に生じるくびれは微小クラックに相当し、微小割れと判断される。したがって、鋼板の曲げ性向上には、鋼板最表層の組織を制御することが重要である。一方、鋼板の靭性を確保するうえでは、ベイニティックフェライト相を活用することが有効である。ゆえに、本発明においては、鋼板表層の主たる組織を、ベイニティックフェライト相およびフェライト相とする。
フェライト相の面積比率:20%以上65%以下
ベイニティックフェライト相の面積比率:20%以上65%以下
鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率を20%以上、かつベイニティックフェライト相の面積比率を20%以上とすることで、鋼板最表層において軟質な組織が得られ、優れた曲げ性を確保できる。
鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率が20%未満になると、鋼板表層の軟質化が不十分となり、鋼板の曲げ性が低下する。一方、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率が65%を超えると、鋼板の靭性を確保することが困難になる。また、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が20%未満になると、鋼板の靭性を確保することができない。一方、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が65%を超えると、フェライト相の面積比率を確保することができず、鋼板の曲げ性が低下する。
以上の理由により、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率は20%以上65%以下とする。好ましくは40%以上60%以下である。また、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率は20%以上65%以下とする。好ましくは40%以上60%以下である。
マルテンサイト相の面積比率:1%以上5%以下
マルテンサイト相は、硬質であり鋼板の強度向上に寄与する。本効果を発揮させるためには、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、マルテンサイト相の面積比率を1%以上とする必要がある。一方、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、マルテンサイト相の面積比率が5%を超えると、鋼板の曲げ性および靭性に悪影響を及ぼす。したがって、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、マルテンサイト相の面積比率は1%以上5%以下とする。好ましくは1%以上3%以下である。
なお、鋼板表層の組織は、上記フェライト相、ベイニティックフェライト相およびマルテンサイト相のほかに、パーライト、セメンタイト、残留オーステナイト等を含有し得る。鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、これらの相の合計面積比率は、5%以下とすることが好ましく、3%以下とすることがより好ましく、0%とすることがより一層好ましい。
ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径:0.5μm以上4.0μm以下
鋼板の曲げ性向上には、鋼板最表層組織の制御が重要であり、特に組織の均一微細化が有効である。鋼板表面から板厚方向25μmの位置において、ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径が4.0μmを超えると、鋼板の曲げ性に悪影響を及ぼす。したがって、鋼板表面から板厚方向25μmの位置において、ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径は4.0μm以下とする。好ましくは3.0μm以下である。また、上記平均結晶粒径は細かくても構わないが、生産性、コストの観点から下限を0.5μmとする。
なお、鋼板表面から板厚方向25μmの位置における組織は、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置における組織とほぼ同様の組織を有する。
本発明の高強度熱延鋼板は、鋼板表層および最表層において上記の組織を有することに加えて、鋼板内部において、ベイニティックフェライト相を主相とし、少量のマルテンサイト相と残留オーステナイト相を含む組織を有する。具体的には、鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が90%以上98%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下かつ該マルテンサイト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下、残留オーステナイト相の面積比率が1%以上5%以下である組織を有する。
ベイニティックフェライト相の面積比率:90%以上98%以下
鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率を90%以上とすることにより、鋼板内部において均一な組織が得られ、優れた靭性を確保できる。鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が90%に満たない場合、他の相、例えばベイニティックフェライト相より強度が高いマルテンサイト相などが大量に混在し、鋼板の靭性が劣化する。一方、鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が98%を超えると、後述する所望のマルテンサイト相や残留オーステナイト相を確保することができず、鋼板の強度や曲げ性が低下する。したがって、鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率は90%以上98%以下とする。好ましくは95%以上98%以下である。
マルテンサイト相の面積比率:1%以上5%以下
マルテンサイト相は、硬質であり鋼板の強度向上に寄与する。本効果を発揮させるためには、鋼板の板厚中央位置において、マルテンサイト相の面積比率を1%以上とする必要がある。一方、鋼板の板厚中央位置において、マルテンサイト相の面積比率が5%を超えると、鋼板の靭性が劣化する。したがって、鋼板の板厚中央位置において、マルテンサイト相の面積比率は1%以上5%以下とする。好ましくは1.0%以上2.5%以下である。
マルテンサイト相の平均結晶粒径:0.5μm以上4.0μm以下
鋼板の板厚中央位置において、マルテンサイト相の平均結晶粒径が4.0μmを超えると、粗大なマルテンサイト相が粗に分布することになり、鋼板の曲げ性および靭性が劣化する。したがって、鋼板の板厚中央位置において、マルテンサイト相の平均結晶粒径は4.0μm以下とする。好ましくは2.0μm以下である。なお、上記平均結晶粒径は小さければ小さいほど好ましいが、生産性、コストの観点から下限は0.5μmとする。
残留オーステナイト相の面積比率:1%以上5%以下
残留オーステナイト相は、延性向上を通じ、鋼板の曲げ性など加工性向上に寄与する。本効果を発揮するためには、鋼板の板厚中央位置において、残留オーステナイト相の面積比率を1%以上とする必要がある。一方、鋼板の板厚中央位置において、残留オーステナイト相の面積比率が5%を超えると、亀裂の伝播経路として働き、鋼板の靭性が劣化する。したがって、鋼板の板厚中央位置において、残留オーステナイト相の面積比率は1%以上5%以下とする。好ましくは1%以上3%以下である。
なお、鋼板内部の組織には、上記したベイニティックフェライト相、残留オーステナイト相およびマルテンサイト相のほか、パーライト、セメンタイト、ベイナイト等を含んでもよい。鋼板の板厚中央位置において、パーライト、セメンタイト、ベイナイト等の合計面積比率は、5%以下とすることが好ましい。
また、本発明の高強度熱延鋼板の板厚は特に限定されないが、16.0mm以上25.4mm以下とすることが好ましい。
次に、本発明の高強度熱延鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板は、連続鋳造によって得られた上記組成を有するスラブ(鋳片)を、所定の温度域まで冷却し、再加熱後、粗圧延、仕上げ圧延を行ったのち、所定の条件にて冷却を行い、所定温度でコイルに巻き取ることにより製造することができる。
連続鋳造鋳片の冷却温度:600℃以下
本発明においては、連続鋳造鋳片を600℃以下の温度域に冷却したのち、再加熱して熱間圧延を施す。再加熱前の連続鋳造鋳片が600℃以下に冷却されない場合、鋳造組織を反映し、再加熱段階でのオーステナイトが粗大化し、熱延後の最終結晶粒径が粗大化し、鋼板の曲げ性、靭性が劣化する。したがって、連続鋳造鋳片を600℃以下の温度域に冷却する。好ましくは室温以上400℃以下の温度域に冷却する。
連続鋳造鋳片の再加熱温度:1050℃以上1300℃以下
連続鋳造鋳片の再加熱温度が1300℃を超えると、加熱中のオーステナイト粒が粗大化する結果、熱延後の最終結晶粒径が粗大化し、鋼板の曲げ性、靭性が劣化する。一方、連続鋳造鋳片の再加熱温度が1050℃未満では、Ti、Nbなど析出強化元素の固溶が不十分となり、所望の鋼板強度を確保することが困難となる。したがって、上記再加熱温度は1050℃以上1300℃以下とする。好ましくは1100℃以上1250℃以下である。
熱間圧延は、通常、粗圧延と仕上げ圧延からなるが、本発明において粗圧延の条件は特に限定されない。粗圧延後、以下の条件で仕上げ圧延を施す。また、仕上げ圧延中、以下の条件で鋼板冷却を実施する。
圧下率:40%以上90%以下
仕上げ圧延における圧下率が40%に満たない場合、圧延再結晶による結晶粒微細化が不十分となり、結晶粒が粗大化し、鋼板の曲げ性、靭性が劣化する。微細粒を得るには圧下率が高いほうが好ましいが、仕上げ圧延における圧下率が90%を超えると、変形抵抗が高くなり、圧延が困難となる。したがて、仕上げ圧延の圧下率は40%以上90%以下とする。好ましくは50%以上80%以下である。
鋼板冷却(水冷)の回数:5回以上15回以下
鋼板冷却(水冷)1回あたりの冷却水の平均単位幅流量:200l/min/m以上2000l/min/m以下
本発明においては、仕上げ圧延中、スタンド間で鋼板表面に冷却水を噴射して鋼板冷却(水冷)を実施する。鋼板の板厚方向0.2mm位置および板厚方向25μmにおいて所望の組織を得るには、上記鋼板冷却(水冷)条件を最適化することが極めて重要となる。
鋼板冷却(水冷)の回数、すなわち鋼板表面に冷却水を噴射する回数が5回に満たない場合、または鋼板冷却(水冷)1回あたりの冷却水の平均単位幅流量が200l/min/mに満たない場合、特に巻き取り後の鋼板の表層における組織がフェライト相の少ない組織、または粗大な結晶粒を含んだ組織となり、鋼板の曲げ性が劣化、および靭性が劣化する。一方、鋼板冷却(水冷)の回数、すなわち鋼板表面に冷却水を噴射する回数が15回を超える場合、または鋼板冷却(水冷)1回あたりの冷却水の平均単位幅流量が2000l/min/mを超える場合、特に巻き取り後の鋼板の表層における組織がフェライト相の多い組織、また圧延加工組織と整粒の混粒組織となり、組織が不均一となる結果、鋼板の曲げ性が劣化する。
更に、上記回数が5回に満たない場合、または上記平均単位幅流量が200l/min/mに満たない場合、冷却が不足し、仕上げ圧延終了温度を後述する所定温度以下(820℃以下)にすることが困難になる。一方、上記回数が15回を超える場合、または上記平均単位幅流量が2000l/min/mを超える場合、仕上げ圧延温度を後述する所定温度以上(720℃以上)にすることが困難となる。その結果、所望の組織が得られず、鋼板の曲げ性および靭性が劣化する。
以上の理由により、鋼板冷却(水冷)の回数、すなわち鋼板表面に冷却水を噴射する回数は、5回以上15回以下とする。また、鋼板冷却(水冷)1回あたりの冷却水の平均単位幅流量は、200l/min/m以上2000l/min/m以下とする。好ましくは300l/min/m以上1500l/min/m以下である。
仕上げ圧延終了温度:720℃以上820℃以下
仕上げ圧延終了温度が720℃に満たない場合、圧延加工組織と整粒の混粒組織となり、組織が不均一となる。また、表層においてフェライト相が過剰になり、所望のベイニティックフェライト量が得られなくなる。それゆえ、仕上げ圧延終了温度が720℃未満になると、鋼板の曲げ性、靭性が劣化する。一方、仕上げ圧延終了温度が820℃を超えると、結晶粒が粗大化し、または鋼板表層において所望量のフェライト相が得られず、曲げ性、靭性が劣化する。したがって、仕上げ圧延終了温度は720℃以上820℃以下とする。好ましくは760℃以上820℃以下である。なお、これらの温度は、鋼板表面における温度である。仕上げ圧延終了後、以下の条件で加速冷却する。
仕上げ圧延終了後、加速冷却を開始するまでの時間:1s以上10s以内
仕上げ圧延終了後、加速冷却を開始するまでの時間が10秒を超えると、鋼板表層のスケールの厚みが厚くなり、冷却時に均一な冷却ができなくなる結果、均一微細な表層組織が得られず、鋼板の曲げ性が低下する。また、上記時間が10秒を超えると、結晶粒が粗大化して微細な組織が得られず、鋼板の曲げ性が低下する。したがって、仕上げ圧延終了後、加速冷却を開始するまでの時間は10秒以内とする。なお、仕上げ圧延終了後の加速冷却開始時間は早ければ早いほど好ましいが、生産性、コストの観点から下限は1秒とする。
600℃以下500℃以上の温度域の平均冷却速度:100℃/s以上500℃/s以下
転位密度の少ないポリゴナルフェライト相およびパーライト相の生成を抑制し、ベイニティックフェライト相を所望量確保して曲げ性と靭性の両立を図るには、600℃以下500℃以上の温度域の平均冷却速度を100℃/s以上とする必要がある。好ましくは150℃/s以上である。一方、上記温度域における冷却速度は速くても構わないが、平均冷却速度が500℃/sを超えると上記効果は飽和する傾向にある。なお、上記温度域および平均冷却速度は、鋼板表面における値である。
加速冷却終了温度:200℃以上400℃以下
加速冷却終了温度が400℃を超えると、板厚中央位置においてポリゴナルフェライト相またはパーライト相が過度に生成し、所望量のベイニティックフェライト相および残留オーステナイト相が得られず、鋼板の曲げ性および靭性が低下する。一方、加速冷却終了温度が200℃より低くなると、表層においてはマルテンサイト相の面積比率が多くなりすぎ、板厚中央位置においては所望量のベイニティックフェライト相が得られず、鋼板の曲げ性および靭性が低下する。したがって、加速冷却終了温度は200℃以上400℃以下とする。好ましくは240℃以上370℃以下である。なお、これらの加速冷却終了温度は、鋼板表面における温度である。
加速冷却終了後は、放冷し、巻き取る。
放冷
加速冷却終了後巻き取り前の放冷は、加速冷却時の冷却速度差に起因して生じている鋼板表層と鋼板中央部の温度差を解消し、板厚方向に均一な温度とするために必要である。また、上記放冷は、硬質化した鋼板表層を板中央部の熱により軟質化させ、良好な曲げ性を確保するのに重要である。放冷時間は特に限定されないが、10秒に満たない場合、板厚方向の温度は均一化するものの、鋼板表層の軟質化が不十分となり、十分な曲げ性を確保することが困難となる場合がある。一方、放冷時間は長くても構わないが、生産性を阻害するので上限は50秒で十分である。したがって、加速冷却終了後の放冷時間は、10秒以上50秒以下とすることが好ましい。より好ましくは15秒以上45秒以下である。
巻取り温度:350℃以上550℃以下
巻取り温度が550℃を超えると、ポリゴナルフェライト相およびパーライト相が生成し、鋼板を所望の組織とすることができず、優れた曲げ性、靭性が得られない。一方、巻取り温度が350℃未満の場合、ベイナイト変態が不十分となり、また残留オーステナイト相が残存せず、所望のベイナイト相、残留オーステナイト相の確保が困難となる結果、優れた曲げ性、靭性が得られない。したがって、巻取り温度は350℃以上550℃以下とする。好ましくは400℃以上540℃以下である。なお、これらの巻取り温度は、鋼板表面における温度である。また、加速冷却終了後の鋼板は、放冷することで、復熱により鋼板表面が加速冷却終了温度(200℃以上400℃以下)から巻取り温度(350℃以上550℃以下)に昇温する。
表1に示す組成のスラブ(連続鋳造鋳片、肉厚:220mm)を用いて、表2に示す温度に冷却したのち再加熱し、粗圧延後、表2に示す条件で鋼板冷却を実施しながら仕上げ圧延を施し、仕上げ圧延終了後、表2に示す条件で加速冷却および放冷し、表2に示す巻取り温度で所定の寸法(幅:1500mm)のコイルに巻き取り、16.0〜25.4mmの板厚の熱延鋼板(鋼帯)とした。
得られた熱延鋼板から試験片を採取し、以下に記載の組織観察、引張試験、衝撃試験および曲げ試験を実施した。
(1)組織観察
熱延鋼板の表面下0.2mm位置および板厚中央位置における組織を、走査型電子顕微鏡SEM(倍率:1000〜5000倍)を用いて各板厚位置で5視野以上観察して撮像し、表面下0.2mm位置におけるフェライト相、ベイニティックフェライト相およびマルテンサイト相の面積比率と、板厚中央位置におけるベイニティックフェライト相、マルテンサイト相、残留オーステナイト相およびパーライトの面積比率を測定した。フェライト相とベイニティックフェライト相との判別は、整粒かつ粒界が円滑な場合をフェライト相、それ以外の針状、ラス状な結晶粒をベイニティックフェライト相とした。また、熱延鋼板の表面下25μm位置における組織を、走査型電子顕微鏡SEM(倍率:2000倍)を用いて3視野以上観察して撮像し、ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径を測定した。
なお、板厚中央位置における残留オーステナイトの面積比率は、X線回折により求めた。具体的には、熱延鋼板から、板面に平行にX線回折用試験片を採取し、研削および研磨(化学研磨)し、研磨後の試験片表面を鋼板の板厚(1/2)t位置とした。その後、研磨後の試験片について、X線回折装置でMoのKα線を用いてbcc鉄の(200)、(211)、(220)面とfcc鉄の(200)、(220)、(311)面の積分強度を測定し、bcc鉄各面からの積分反射強度に占めるfcc鉄各面からの積分反射強度の強度比を求め、これを残留オーステナイトの面積比率とした。
また、板厚中央位置におけるマルテンサイト面積比率は、走査型電子顕微鏡の画像上で塊状かつ表面が平滑な領域をマルテンサイトと残留オーステナイトの合計とし、マルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積比率を求め、この合計面積比率からX線回折により求めた残留オーステナイトの面積比率を差し引くことにより求めた。
ベイニティックフェライト相(鋼板表面下25μm位置)の平均結晶粒径は、撮像したSEM写真を用いてベイニティックフェライト相の面積を測定するとともにベイニティックフェライトの粒を数え、ベイニティックフェライトの面積と粒数から平均粒面積aを算出し、粒径d=√aとする求積法により求めた。また、マルテンサイト(板厚中央位置)の平均結晶粒径も上記と同じ手法により求めた。
(2)引張試験
熱延鋼板の板厚中央位置から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるように、平板状の全厚引張試験片(板厚:全厚、平行部長さ:60mm、ゲージ間距離:50mm、ゲージ部幅:38mm)を採取し、ASTM E8M−04の規定に準拠して、室温で引張試験を実施し、引張強さTSを求めた。熱延鋼板の引張強さが650MPa以上である場合を、「高強度熱延鋼板」と評価した。
(3)シャルピー衝撃試験
熱延鋼板の板厚中央位置から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにVノッチ試験片(長さ55mm×高さ10mm×幅10mm)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、延性−脆性破面遷移温度(℃)を求めた。なお、試験片は3本とし、得られた延性−脆性破面遷移温度の算術平均を求め、その鋼板の延性−脆性破面遷移温度vTrsとした。vTrsが−80℃以下である場合を「靭性が良好である」と評価した。
(4)曲げ試験
熱延鋼板の幅1/4位置から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにJIS Z 2248の1号曲げ試験片を採取し、曲げ半径/板厚=2.0の180°U曲げ試験を実施した。曲げ外表面を目視で観察し、割れ(クラック、毛割れ)の発生が観察されない場合を「曲げ性が良好である」と評価した。
以上により得られた結果を、表3に示す。
Figure 0006146358
Figure 0006146358
Figure 0006146358
表3に示すように、発明例の熱延鋼板は、曲げ性および靭性(低温靭性)がいずれも良好であった。これに対し、比較例の熱延鋼板は、曲げ性および靭性(低温靭性)のいずれか一方、或いは双方において、十分な特性が得られなかった。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.020%以上0.080%以下、 Si:0.05%以上0.50%以下、
    Mn:1.00%以上2.00%以下、 P :0.001%以上0.020%以下、
    S :0.0001%以上0.0050%以下、 Al:0.005%以上0.050%以下、
    N :0.0010%以上0.0060%以下、 Nb:0.040%以上0.080%以下、
    Ti:0.005%以上0.050%以下、 Ca:0.0005%以上0.0050%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率が38%以上58%以下、ベイニティックフェライト相の面積比率が41%以上60%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下、かつ上記3相以外の相の合計面積比率が5%以下である組織を有し、
    鋼板表面から板厚方向25μmの位置において、ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下である組織を有し、
    鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が90%以上98%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下かつ該マルテンサイト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下、残留オーステナイト相の面積比率が1%以上5%以下である組織を有することを特徴とする板厚が16.0mm以上25.4mm以下の高強度熱延鋼板。
  2. 前記組成に加えて更に、質量%で、V:0.001%以上0.100%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下、Ni:0.01%以上0.50%以下、Cr:0.01%以上0.50%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、B:0.0001%以上0.0040%以下のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の組成からなる連続鋳造鋳片を、600℃以下の温度域に冷却した後、1050℃以上1300℃以下の温度域に再加熱し、粗圧延後、仕上げ圧延圧下率を40%以上90%以下とし、仕上げ圧延中に1回あたりの平均単位幅流量200l/min/m以上2000l/min/m以下の冷却水で5回以上15回以下の鋼板冷却をし、仕上げ圧延終了温度を720℃以上820℃以下の温度域とする仕上げ圧延を施し、該仕上げ圧延終了後1s以上10s以内に加速冷却を開始し、鋼板表面において、600℃以下500℃以上の温度域の平均冷却速度を100℃/s以上500℃/s以下とし、200℃以上400℃以下の加速冷却終了温度まで冷却し、加速冷却終了後、放冷し、その後、350℃以上550℃以下の温度域で巻き取り、鋼板表面から板厚方向0.2mmの位置において、フェライト相の面積比率が38%以上58%以下、ベイニティックフェライト相の面積比率が41%以上60%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下、かつ上記3相以外の相の合計面積比率が5%以下である組織を有し、鋼板表面から板厚方向25μmの位置において、ベイニティックフェライト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下である組織を有し、鋼板の板厚中央位置において、ベイニティックフェライト相の面積比率が90%以上98%以下、マルテンサイト相の面積比率が1%以上5%以下かつ該マルテンサイト相の平均結晶粒径が0.5μm以上4.0μm以下、残留オーステナイト相の面積比率が1%以上5%以下である組織を有する熱延鋼板とすることを特徴とする板厚が16.0mm以上25.4mm以下の高強度熱延鋼板の製造方法。
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