JP2017078196A - 鋼管用厚肉熱延鋼帯の製造方法および角形鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.06〜0.2%、Si:0.03%以下、Mn:0.2〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.002〜0.015%、Al:0.005〜0.07%、 N:0.006%以下、およびTi:0.01〜0.05%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる成分組成を有する鋼素材を、粗圧延出側温度:900〜1050℃の条件で粗圧延し、30〜150秒空冷し、仕上圧延入り側温度:850〜1000℃、圧下率:50%以上、および仕上圧延出側温度:750〜850℃の条件で仕上圧延し、4〜10秒空冷し、前記仕上圧延によって得た鋼帯の表面で、冷却停止温度:300℃以上、550℃未満、前記冷却停止温度までの平均冷却速度:50〜200℃/sの条件で水冷し、巻取温度:500〜600℃の条件で巻き取る、鋼管用厚肉熱延鋼帯の製造方法。
【選択図】 図1
Description
(1)角形鋼管のじん性を向上させるためには、Tiを添加した鋼を用い、熱延鋼帯を製造する際の仕上圧延後に急冷を行って、TiCを微細に析出させるとともに、フェライトを細粒化することが有効である。
(2)しかし、TiCが多量に析出すると、強度、特に降伏強度が上昇し、その結果、降伏比が高くなってしまう。また、TiCが線状に析出し、じん性が低下する。
(3)上記(2)の現象を抑制するには、TiCとTiSとを複合的に析出させることにより、フェライトの細粒化に寄与するTiCの量を制御することが有効である。
(1)質量%で、
C :0.06〜0.2%、
Si:0.03%以下、
Mn:0.2〜1.0%、
P :0.03%以下、
S :0.002〜0.015%、
Al:0.005〜0.07%、
N :0.006%以下、および
Ti:0.01〜0.05%
を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる成分組成を有する鋼素材を、
粗圧延出側温度:900〜1050℃の条件で粗圧延し、
30〜150秒空冷し、
仕上圧延入り側温度:850〜1000℃、圧下率:50%以上、および仕上圧延出側温度:750〜850℃の条件で仕上圧延し、
4〜10秒空冷し、
前記仕上圧延によって得た鋼帯の表面で、冷却停止温度:300℃以上、550℃未満、前記冷却停止温度までの平均冷却速度:50〜200℃/sの条件で水冷し、
巻取温度:500〜600℃の条件で巻き取る、鋼管用厚肉熱延鋼帯の製造方法。
前記丸形鋼管を冷間成形して角形鋼管とする、角形鋼管の製造方法。
本発明の鋼管用厚肉熱延鋼帯の製造方法においては、所定の成分組成を有する鋼素材を用いることが重要である。そこで、まず、本発明において鋼の成分組成を上記のように限定する理由を説明する。なお、成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
Cは固溶強化元素であり、YSを過度に上昇させることなくTSを向上させる作用を有しているため、低YR化に寄与する。また、Cは、Tiと炭化物を形成して、細粒化によりじん性を向上させる作用を有している。前記効果を得るために、C含有量を0.06%以上とする。一方、C含有量が過剰となると、かえってじん性が低下する。そのため、C含有量は0.2%以下とする。なお、C含有量は、0.09〜0.16%とすることが好ましい。
Mnは固溶強化元素であり、Cと同様、低YR化に寄与する。この効果を得るために、Mn含有量を0.2%以上とする。一方、Mn含有量が過剰であるとMnSが析出しやすくなるため、本発明が意図するTiSによるTiCの制御が妨げられる。そのため、Mn含有量は1.0%以下とする。なお、Mn含有量は、0.4〜0.8%とすることが好ましい。
Si含有量が高いと、熱間圧延時に赤スケールが発生しやすくなる。赤スケール部は、スケール剥離後の表面粗さが大きいため、仕上圧延後の水冷の際に冷却水との接触面積が大きくなる。その結果、局所的に冷却速度が速くなり、マルテンサイトが析出しやすくなる。マルテンサイトが析出すると、最終的に得られる角形鋼管におけるじん性が低下するとともに、角部で割れが生じやすくなる。そのため、本発明ではSi含有量を0.03%以下とする。本発明のように仕上圧延後、300〜550℃の範囲といった低温域まで急冷する場合には、上記のようにSi含有量を抑制することが特に重要である。なお、Si含有量は、0.02%以下とすることが好ましい。
Pは、じん性を低下させるので、P含有量は低い方が良い。そこで、本発明ではP含有量を0.03%以下とする。P含有量は、0.02%以下とすることが好ましい。
Sは、TiとTiSを形成し、仕上圧延後の水冷時に前記TiSを核にTiCが析出する。そのため、適切な量のSを含有させることによって、細粒化に寄与するTiC量を制御することができる。前記効果を得るために、S含有量は0.002%以上とする。一方、S含有量が過剰になるとMnSが析出しやすくなり、じん性が低下する。そのため、S含有量は0.015%以下とする。なお、S含有量は、0.003〜0.010%とすることが好ましい。
Alは、脱酸剤として添加される元素である。脱酸が不十分であると、Ti酸化物が生成し、本発明が意図するTiによる細粒化効果を得ることができない。そのため、Al含有量は0.005%以上とする。本発明のようにSi含有量を低く制御する鋼では、脱酸元素としてのAl含有量は重要である。一方、Al含有量が高すぎると、鋼が窒化しやすくなり、Tiが窒化物を形成してしまう。その結果、やはり、Tiによる細粒化を利用したじん性向上効果を得ることができない。そのため、Al含有量は0.07%以下とする。Al含有量は、0.01〜0.04%とすることが好ましい。
Nは、Tiと析出物を形成する。そのため、Nが過剰であると、TiSおよびTiCによる細粒化に寄与することのできるTiが実質的に減少し、その結果、じん性が低下する。そのため、N含有量は0.006%以下とする。N含有量は、0.004%以下とすることが好ましい。
Tiは、炭化物を析出することによって結晶粒を細粒化し、その結果、じん性を向上させる作用を有する元素である。前記効果を得るために、Ti含有量は0.01%以上とする。なお、この効果を得るためには、NおよびSの含有量も上述の範囲に制御することが重要である。一方、Ti含有量が過剰であると、析出物が多くなりすぎ、降伏比が高くなってしまう。そのため、Ti含有量は0.05%以下とする。Ti含有量は、0.02〜0.03%とすることが好ましい。
熱間圧延工程における粗圧延出側温度は、粗圧延時にTiSが多量に析出しないよう、900℃以上とする。一方、粗圧延出側温度が高すぎると、粗圧延された鋼(粗バー)の温度が、その後の仕上圧延における温度条件を満たすために必要な空冷時間が長くなりすぎてしまう。空冷時間が長すぎると、長手方向における端部((先端)T部、(後端)B部)と中間部(M部)とにおける材質差が大きくなってしまうことに加えて、粗バーが上反りすることにより仕上圧延の際に粗バーが詰まるというトラブルが発生しやすくなる。これを防止するために、粗圧延出側温度は1050℃以下とする。
粗圧延後の空冷(仕上前空冷)の時間は、後の仕上圧延でTiSを効率よく析出させるために、30秒以上とする。一方、空冷時間が長すぎると、長手方向における端部(T部、B部)と中間部(M部)との間で材質差が大きくなると共に、粗バーが上反りすることにより仕上圧延でトラブルが発生しやすくなる。そのため、空冷時間は150秒以下とする。
仕上圧延中にTiSを効率よく析出させるため、仕上圧延入り側温度は850〜1000℃とする。仕上圧延入り側温度が1000℃を超えるとTiS析出が十分ではなく、一方、仕上圧延入り側温度が850℃未満では仕上圧延より前にTiSが析出しやすいためである。
仕上圧延における圧下率は50%以上とする。仕上圧下率が低いと、TiS析出が不十分となるためである。なお、TiS析出のため、仕上圧延はタンデム圧延で実施することが好ましい。また、その場合、TiSのひずみ誘起析出のため、タンデム圧延は少なくとも3段以上で行うことが好ましい。
仕上圧延出側温度が750℃未満では、仕上圧延中にTiCが多量に析出し、じん性が低下する。これを防止するため、仕上圧延出側温度は750℃以上とする。一方、仕上圧延出側温度が850℃を超えると、細粒化によりじん性向上に寄与するTiCが、仕上圧延後の冷却の際に十分に析出しない。そのため、仕上圧延出側温度は850℃以下とする。
仕上圧延後、水冷を行う前に、4〜10秒間空冷する。これにより、フェライトが析出する際にTiCが線状(点列状)に並んで析出し、じん性が低下することを抑制する。
前記空冷後、鋼帯を水冷する。該水冷における冷却停止温度が300℃未満であると、マルテンサイトが析出して高強度化することにより、造管時に割れが発生しやすくなる。一方、冷却停止温度が550℃以上であると、TiCの析出が十分ではなく、細粒化によるじん性向上効果が得られない。そのため、冷却停止温度は300℃以上、550℃未満とする。
前記水冷における平均冷却速度が50℃/s未満であると、TiCの析出が不十分となり、細粒化によるじん性向上効果を十分に得ることができない。一方、平均冷却速度が200℃/sを超える急冷では温度制御が困難となり、鋼帯の表面粗さのばらつきや、鋼板表面に部分的に水がたまる水のり等が原因で、局部的に高強度なところが出やすくなる。そのため、平均冷却速度は50〜200℃/sとする。なお、ここで平均冷却速度とは、水冷開始時から前記冷却停止温度に到達した時点までの間における平均冷却速度を意味する。
巻取温度が500℃未満であると、ベイナイト組織が析出しやすくなり、本発明において意図されるTiCの析出が不十分となり、その結果、じん性が劣化する。よって、巻取温度は500℃以上とする。一方、巻取温度が高すぎると、TiCが凝集粗大化し、YS、TSが下がると共に、じん性が劣化する。よって、巻取温度は600℃以下とする。なお、巻取温度は530〜580℃とすることが好ましい。
(実施例1)
得られた角形鋼管のそれぞれから、試験片の長さ方向が管軸方向となるように引張試験片を採取した。前記引張試験片は、角形鋼管の辺の中央部(平坦部)から採取し、JIS Z2201の5号試験片に仕上げた。得られた試験片を用いて、JIS Z2241に従い引張試験を行い、降伏強度(YS)、引張強さ(TS)、および伸び(El)を測定した。また、得られたYSおよびTSの値から、降伏比(YR)=(YS/TS)×100(%)を求めた。
同様に、得られた角形鋼管のそれぞれから、試験片の長さ方向が管軸方向となるように平坦部と角部からシャルピー衝撃試験片を採取した。前記シャルピー衝撃試験片は、試験片の中心が板厚外側の1/4となるように採取し、JIS Z2202の4号試験片に加工した。得られた試験片を用いて、JIS Z2242に従いシャルピー衝撃試験を行い、−20℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vE-20)を測定した。測定は、同様の方法で得た3つの試験片について行い、平均値をvE-20とした。−20℃でのシャルピー吸収エネルギーが70J以上であれば、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーを安定して70J以上とすることができる。
次に、Ti含有量の影響を評価するために、以下の実験を行った。まず、Ti含有量が異なり、他の成分の含有量がほぼ等しい9種の鋼素材を溶製した。Ti以外の成分は、C:0.11〜0.14%、Si:0.01〜0.02%、Mn:0.60〜0.72%、P:0.005〜0.012%、S:0.003〜0.005%、Al:0.021〜0.036%、N:0.0029〜0.0048%、残部のFeおよび不可避的不純物である。Ti含有量は0.002〜0.067%の間で変化させた。
熱延加熱温度:1200〜1215℃、
粗圧延出側温度:957〜999℃、
仕上前空冷時間:88〜97秒、
仕上圧延入側温度:888〜927℃、
仕上圧延圧下率:56〜61%、
仕上圧延出側温度:786〜817℃、
ROT前空冷時間:5〜7秒、
平均冷却速度:127〜163℃/s、
冷却停止温度:407〜435℃、
巻取前空冷時間:3〜5秒、
巻取温度:568〜589℃。
Claims (2)
- 質量%で、
C :0.06〜0.2%、
Si:0.03%以下、
Mn:0.2〜1.0%、
P :0.03%以下、
S :0.002〜0.015%、
Al:0.005〜0.07%、
N :0.006%以下、および
Ti:0.01〜0.05%
を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる成分組成を有する鋼素材を、
粗圧延出側温度:900〜1050℃の条件で粗圧延し、
30〜150秒空冷し、
仕上圧延入り側温度:850〜1000℃、圧下率:50%以上、および仕上圧延出側温度:750〜850℃の条件で仕上圧延し、
4〜10秒空冷し、
前記仕上圧延によって得た鋼帯の表面で、冷却停止温度:300℃以上、550℃未満、前記冷却停止温度までの平均冷却速度:50〜200℃/sの条件で水冷し、
巻取温度:500〜600℃の条件で巻き取る、鋼管用厚肉熱延鋼帯の製造方法。 - 請求項1に記載の鋼管用厚肉熱延鋼帯の製造方法で得た鋼管用厚肉熱延鋼帯を丸形鋼管に成形し、
前記丸形鋼管を冷間成形して角形鋼管とする、角形鋼管の製造方法。
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