JP5087966B2 - 表面品質および延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
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(1)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部を50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、前記表層部の温度を逆変態が完了するAc3変態点以上の温度まで復熱させ、しかる後に仕上圧延工程を施すことを特徴とする表面品質および延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。
(2)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間または圧延パスを行わず、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、前記表層部の温度が逆変態が完了するAc3変態点以上の温度になるまで復熱させ、さらに仕上圧延を行い所望寸法形状の熱延板とすることを特徴とする表面品質および延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。
(3)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、前記表層部の温度が逆変態が完了するAc3変態点以上の温度になるまで復熱させ、ついで、前記仕上圧延工程を施し、該仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間または圧延パスを行わず、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、前記表層部の温度が逆変態が完了するAc3変態点以上の温度になるまで復熱させ、さらに仕上圧延を行い所望寸法形状の熱延板とすることを特徴とする表面品質および延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記仕上圧延工程における仕上圧延は、1パス当たりの圧下率が15〜50%の圧延であることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.3%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記巻取工程における前記熱延板の巻取り温度を350〜700℃とし、巻き取ったのちの冷却速度をコイル中央部で5〜20℃/hとすることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
C:0.02〜0.08%、
Cは、鋼の強度を上昇させる作用を有する元素であり、本発明では所望の高強度を確保するために、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.08%を超える過剰な含有は、パーライト等の第二相の組織分率を増大させ、母材靭性および溶接熱影響部靭性を低下させる。このため、Cは0.02〜0.08%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.05%である。
Siは、固溶強化、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させるが、同時に靭性を低下させる作用を有し、また、Siは電縫溶接時にSiの酸化物を形成し、電縫溶接部の靭性を低下させる。このため、本発明では、Siはできるだけ低減することが望ましいが、0.5%までは許容できることから、Siは0.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.3%以下である。
Mnは、焼入性を向上させる作用を有し、焼入性向上を介し鋼板の強度を増加させる。また、Mnは、MnSを形成しSを固定することにより、Sの粒界偏析を防止してスラブ(鋼素材)割れを抑制する。このような効果を得るためには、0.8%以上の含有を必要とする。一方、1.8%を超える含有は、偏析を助長する。この偏析を消失させるには、1300℃を超える温度に加熱する必要があり、このような熱処理を工業的規模で実施することは現実的でない。このため、Mnは0.8〜1.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.9〜1.7%である。
Pは、鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、鋼の強度を上昇させる作用を有する。しかし、0.025%を超えて過剰に含有すると溶接性が低下する。このため、Pは0.025%以下に限定した。なお、好ましくは0.015%以下である。
S:0.005%以下
Sは、Pと同様に鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、0.005%を超えて過剰に含有すると、スラブ割れを生起させるとともに、熱延鋼板においては粗大なMnSを形成し、延性の低下を生じさせる。このため、Sは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.10%を超える含有は、電縫溶接時の、溶接部の清浄性を著しく損なう。このようなことから、Alは0.005〜0.10%に限定した。なお、好ましくは0.08%以下である。
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、過剰な含有はスラブ鋳造時の割れを多発させる。このため、Nは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
Nb:0.03〜0.10%
Nbは、オーステナイト粒の粗大化、再結晶を抑制する作用を有する元素であり、熱間仕上圧延におけるオーステナイト未再結晶温度域圧延を可能にするとともに、炭窒化物として微細析出することにより、溶接性を損なうことなく、少ない含有量で熱延鋼板を高強度化する作用を有する。このような効果を得るためには、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える過剰な含有は、熱間仕上圧延中の圧延荷重の増大をもたらし、熱間圧延が困難となる場合がある。このため、Nbは0.03〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.07%である。
Tiは、窒化物を形成しNを固定しスラブ(鋼素材)割れを防止する効果を有するとともに、炭化物として微細析出することにより、鋼板を高強度化させる。このような効果は、0.005%以上の含有で顕著となるが、0.05%を超える含有は析出強化により降伏点が著しく上昇する。このため、Tiは0.005〜0.05%に限定した。なお、好ましくは0.005〜0.03%である。
Cu、Ni、Cr、Mo、Vはいずれも、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を増加させる元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Niは、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を増加させるとともに、靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましいが、0.5%を超えて含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Niは0.005〜0.5%に限定することが好ましい。
Moは、焼入性を向上させるとともに、炭化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果は0.005%以上の含有で顕著となる。一方、0.3%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Moは0.0005〜0.3%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.3%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
粗圧延工程を経て得られたシートバーには、仕上圧延工程を施すが、仕上圧延工程前に、加速冷却を施すことが好ましい。加速冷却は、シートバー等を冷却し、高靭化に有効な温度域に冷却して、その後の仕上圧延により、靭性を有効に向上させるために施す。加速冷却を施すことにより、高靭化に有効な温度域に冷却された板厚方向の領域が拡大でき、仕上圧延による靭性向上の程度を大きくすることができる。なお、仕上圧延工程前の加速冷却は、既存のFSB、ロール抜熱、ストリップクーラント等の冷却手段によって容易に行える。
加速冷却の冷却停止温度がAr3変態点超えの場合には、高靭化に有効な温度域に冷却される範囲が狭く、靭性の向上代が少ない。また、加速冷却の冷却停止温度がAc3変態点−100℃未満では、靭性の向上が望めないうえ、Ac3変態点以上の温度に復熱させることが困難となる。なお、ここで、「表層部の温度」は、放射温度計により測定される値とする。
なお、仕上圧延工程では、圧延パス間の時間は10s以内とすることが望ましい。というのは、仕上圧延は、複数の圧延機を並べて連続的に圧延を行うが、圧延機間では鋼板が高温であるため、転位の回復、再結晶、結晶粒の粗大化等が生じ、靭性が低下す恐れがあるためである。
仕上圧延工程中に加速冷却を施す場合には、少なくとも1回、圧延パス間または圧延パスを行わず、仕上圧延途中の熱延板に施すことが好ましい。ここでいう「圧延パスを行わず」とは、圧下を施さないパス、すなわち空パスを設けることを意味する。
仕上圧延工程を経て得られた熱延板は、巻取工程でコイル状に巻き取られる。本発明における巻取工程では、巻取り温度は350〜700℃とすることが好ましい。仕上圧延終了後、熱延板は、好ましくは冷却速度:10℃/s以上で、巻取り温度まで冷却される。巻取り温度が350℃未満では、鋼板各位置での温度ばらつきが大きくなり、材質ばらつきや形状のばらつきが生じ、さらには、コイラー能カによっては巻き取ることができない場合も生ずる。一方、巻取り温度が700℃を超えると、結晶粒が粗大化し、靭性が低下する。このようなことから、巻取り温度は350〜700℃とすることが好ましい。また、コイル状に巻き取ったのち、コイル中央部の冷却速度で5〜20℃/hで室温まで冷却することが好ましい。コイル状に巻き取ったのちの冷却速度が5℃/h未満では、結晶粒が粗大化し靭性が低下する。一方、冷却速度が20℃/hを超えて大きくなると、コイル中央部と外周、内周部との温度差が大きくなり、材質の不均一を招きやすい。なお、20℃/hを超える冷却速度は通常の巻取り設備では不可能で、冷却能力を向上させるための新たな設備投資が必要となる。
(1)表面品質試験
得られた熱延板について、鋼板の全域にわたり表面を目視で観察し、割れの有無を調査し、表面品質を評価した。割れ等の表面欠陥が発生した場合を×、発生しなかった場合を○として評価した。
(2)引張試験
得られた熱延板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるように採取した小径の丸棒試験片を用い、引張試験を実施し、降伏強さYSを求めた。
(3)衝撃試験
得られた熱延板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−80℃での吸収エネルギー(J)を求めた。なお、試験片は3本とし、得られた吸収エネルギー値の算術平均をもとめ、その鋼板の吸収エネルギー値vE−80(J)とした。
(4)CTOD試験
得られた熱延板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにCTOD試験片を採取し、BS 7448:Part1 1991の規定に準拠して、試験温度:−10℃でCTOD試験を行い、−10℃での限界開口変位置δc(mm)を求めた。
(5)DWTT試験
得られた熱延板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにDWTT試験片を採取し、ASTM E436の規定に準拠して、DWTT試験を実施し、DWTT温度(℃)(:延性破面率が85%となる最低温度)を求めた。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
Ti:0.005〜0.05%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部を50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、前記表層部の温度を逆変態が完了するAc3変態点以上の温度まで復熱させ、しかる後に仕上圧延工程を施すことを特徴とする表面品質および延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。 - 質量%で、
C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
Ti:0.005〜0.05%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間または圧延パスを行わず、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、前記表層部の温度が逆変態が完了するAc3変態点以上の温度になるまで復熱させ、さらに仕上圧延を行い所望寸法形状の熱延板とすることを特徴とする表面品質および延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。 - 質量%で、
C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
Ti:0.005〜0.05%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、前記表層部の温度が逆変態が完了するAc3変態点以上の温度になるまで復熱させ、ついで、前記仕上圧延工程を施し、該仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間または圧延パスを行わず、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、前記表層部の温度が逆変態が完了するAc3変態点以上の温度になるまで復熱させ、さらに仕上圧延を行い所望寸法形状の熱延板とすることを特徴とする表面品質および延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。 - 前記仕上圧延工程における仕上圧延は、1パス当たりの圧下率が15〜50%の圧延であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.3%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
- 前記巻取工程における前記熱延板の巻取り温度を350〜700℃とし、巻き取ったのちの冷却速度をコイル中央部で5〜20℃/hとすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
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