JP5413496B2 - 表面品質および延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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(1)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部を50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、しかる後に、前記仕上圧延工程における仕上圧延を、1パス当たりの圧下率が(1.1×一様伸び)%以下(ここで、一様伸び:950℃まで加熱したのちAr3変態点以下まで冷却し、ついで950℃まで再加熱して高温引張試験を行ったときに、得られた応力−歪曲線における一様伸び値(%))である圧延とすることを特徴とする、引張強さTSが490MPa以上で、深さ100μm以上の表面割れがない表面品質に優れ、CTOD試験で−10℃での限界開口変位量δcが0.25mm以上である延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。
(2)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間で、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、さらに、仕上圧延を、1パス当たりの圧下率が(1.1×一様伸び)%以下(ここで、一様伸び:950℃まで加熱したのちAr3変態点以下まで冷却し、ついで950℃まで再加熱して高温引張試験を行ったときに、得られた応力−歪曲線における一様伸び値(%))である圧延として行い、所定寸法形状の熱延板とすることを特徴とする、引張強さTSが490MPa以上で、深さ100μm以上の表面割れがない表面品質に優れ、CTOD試験で−10℃での限界開口変位量δcが0.25mm以上である延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.3%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記巻取工程における前記熱延板の巻取り温度を350〜700℃とし、巻き取ったのちの冷却速度をコイル中央部で5〜20℃/hとすることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法で製造された熱延鋼板であって、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイニティックフェライト単相からなる組織とを有し、引張強さTSが490MPa以上であることを特徴とする深さ100μm以上の表面割れがない表面品質およびCTOD試験で−10℃での限界開口変位量δcが0.25mm以上である延性亀裂伝播特性に優れた熱延鋼板。
(6)(5)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.3%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする熱延鋼板。
C:0.02〜0.08%、
Cは、鋼の強度を上昇させる作用を有する元素であり、本発明では所望の高強度を確保するために、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.08%を超える過剰な含有は、パーライト等の第二相の組織分率を増大させ、母材靭性および溶接熱影響部靭性を低下させる。このため、Cは0.02〜0.08%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.05%である。
Siは、固溶強化、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させるが、同時に靭性を低下させる作用を有し、また、Siは電縫溶接時にSiの酸化物を形成し、電縫溶接部の靭性を低下させる。このため、本発明では、Siはできるだけ低減することが望ましいが、0.5%までは許容できることから、Siは0.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.3%以下である。
Mnは、焼入性を向上させる作用を有し、焼入性向上を介し鋼板の強度を増加させる。また、Mnは、MnSを形成しSを固定することにより、Sの粒界偏析を防止してスラブ(鋼素材)割れを抑制する。このような効果を得るためには、0.8%以上の含有を必要とする。一方、1.8%を超える含有は、偏析を助長し、セパレーションの発生を増加させる。この偏析を消失させるには、1300℃を超える温度に加熱する必要があり、このような熱処理を工業的規模で実施することは現実的でない。このため、Mnは0.8〜1.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.9〜1.7%である。
Pは、鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、鋼の強度を上昇させる作用を有する。しかし、0.025%を超えて過剰に含有すると溶接性が低下する。このため、Pは0.025%以下に限定した。なお、好ましくは0.015%以下である。
S:0.005%以下
Sは、Pと同様に鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、0.005%を超えて過剰に含有すると、スラブ割れを生起させるとともに、熱延鋼板においては粗大なMnSを形成し、延性の低下を生じさせる。このため、Sは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.10%を超える含有は、電縫溶接時の、溶接部の清浄性を著しく損なう。このようなことから、Alは0.005〜0.10%に限定した。なお、好ましくは0.005〜0.08%である。
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、過剰な含有はスラブ鋳造時の割れを多発させる。このため、Nは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
Nb:0.03〜0.10%
Nbは、オーステナイト粒の粗大化、再結晶を抑制する作用を有する元素であり、熱間仕上圧延におけるオーステナイト未再結晶温度域圧延を可能にするとともに、炭窒化物として微細析出することにより、溶接性を損なうことなく、少ない含有量で熱延鋼板を高強度化する作用を有する。このような効果を得るためには、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える過剰な含有は、熱間仕上圧延中の圧延荷重の増大をもたらし、熱間圧延が困難となる場合がある。このため、Nbは0.03〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.07%である。
Tiは、窒化物を形成しNを固定しスラブ(鋼素材)割れを防止する効果を有するとともに、炭化物として微細析出することにより、鋼板を高強度化させる。このような効果は、0.005%以上の含有で顕著となるが、0.05%を超える含有は析出強化により降伏点が著しく上昇する。このため、Tiは0.005〜0.05%に限定した。なお、好ましくは0.005〜0.03%である。
Cuは、焼入れ性を向上させるとともに、固溶強化あるいは析出強化により鋼板の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は熱間加工性を低下させる。このため、Cuは0.005〜0.5%に限定することが好ましい。
Niは、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を増加させるとともに、靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましいが、0.5%を超えて含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Niは0.005〜0.5%に限定することが好ましい。
Moは、焼入性を向上させるとともに、炭化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果は0.005%以上の含有で顕著となる。一方、0.3%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Moは0.005〜0.3%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.3%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
仕上圧延工程中に加速冷却を施す場合には、直列に並んだ圧延機の間で、少なくとも1回、パス間で、仕上圧延途中の熱延板に施すことが好ましい。仕上圧延工程中の加速冷却は、仕上圧延ミル内のクーラントを利用することにより行うことができる。なお、仕上圧延工程中の加速冷却も、仕上圧延工程前の加速冷却と同様に、圧延途中の熱延板の表層部が50℃/s以上の冷却速度で、Ar3変態点以下、好ましくは350℃以上の温度まで急冷、する冷却とする。
加速冷却の停止温度が、Ar3変態点以下では、表層部の組織がフェライト+オーステナイトの二相となり、表面欠陥の発生を避けるために、本発明では、加速冷却停止後の仕上圧延における1パス当たりの圧下率を、(1.1×一様伸び)%以下に限定する。なお、ここでいう「一様伸び」は、950℃まで加熱したのちAr3変態点以下まで冷却し、ついで950℃まで再加熱して高温引張試験を行ったときに、得られた応力−歪曲線における一様伸び値(%)をいう。1パス当たりの圧下率が、(1.1×一様伸び)%を超えて大きくなると、析出したフェライトに歪が集中し、表層に割れを誘発しやすくなる。
上記した製造条件で得られる熱延鋼板は、上記した組成を有し、かつベイニティックフェライト単相からなる組織とを有し、引張強さTSが490MPa以上であり、深さ100μm以上の表面欠陥(表面割れ)の発生がなく表面品質に優れ、CTOD試験における−10℃での限界開口変位量δcが0.25mm以上で延性亀裂伝播特性に優れた鋼板である。なお、ここで、「ベイニティックフェライト」とは、結晶粒内の転位密度が高く、低温で変態した、ラス間にセメンタイトの析出がほとんど見られないベイナイト相をいうものとする。
(1)組織観察
得られた熱延板から、組織観察用試験片を採取し、圧延方向に垂直な断面(C断面)を研磨、腐食して、走査型電子顕微鏡を用いて組織を観察した。
(2)表面品質試験
得られた熱延板について、鋼板の全域にわたり表面を目視または拡大鏡で観察し、割れの有無を調査し、表面品質を評価した。深さ100μm以上の割れ等の表面欠陥が発生した場合を×、発生しなかった場合を○として評価した。
(3)引張試験
得られた熱延板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるように、小型丸棒引張試験片を採取して、引張試験を実施し、引張強さTSを求めた。
(4)衝撃試験
得られた熱延板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−80℃での吸収エネルギー(J)を求めた。なお、試験片は3本とし、得られた吸収エネルギー値の算術平均をもとめ、その鋼板の吸収エネルギー値vE−80(J)とした。
(5)CTOD試験
得られた熱延板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにCTOD試験片を採取し、BS 7448:Part1 1991の規定に準拠して、試験温度:−10℃でCTOD試験を行い、−10℃での限界開口変位量δc(mm)を求め、延性亀裂伝播特性を評価した。
(6)DWTT試験
得られた熱延板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにDWTT試験片を採取し、ASTM E436の規定に準拠して、DWTT試験を実施し、DWTT温度(℃)(:延性破面率が85%となる温度)を求め、靭性を評価した。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
Ti:0.005〜0.05%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部を50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、しかる後に、前記仕上圧延工程における仕上圧延を、1パス当たりの圧下率が(1.1×一様伸び)%以下(ここで、一様伸び:950℃まで加熱したのちAr 3 変態点以下まで冷却し、ついで950℃まで再加熱して高温引張試験を行ったときに、得られた応力−歪曲線における一様伸び値(%))である圧延とすることを特徴とする、引張強さTSが490MPa以上で、深さ100μm以上の表面割れがない表面品質に優れ、CTOD試験で−10℃での限界開口変位量δcが0.25mm以上である延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。 - 質量%で、
C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
Ti:0.005〜0.05%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間で、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr3変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、さらに、仕上圧延を、1パス当たりの圧下率が(1.1×一様伸び)%以下(ここで、一様伸び:950℃まで加熱したのちAr 3 変態点以下まで冷却し、ついで950℃まで再加熱して高温引張試験を行ったときに、得られた応力−歪曲線における一様伸び値(%))である圧延として行い、所定寸法形状の熱延板とすることを特徴とする、引張強さTSが490MPa以上で、深さ100μm以上の表面割れがない表面品質に優れ、CTOD試験で−10℃での限界開口変位量δcが0.25mm以上である延性亀裂伝播特性に優れる熱延鋼板の製造方法。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.3%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板の製造方法。
- 前記巻取工程における前記熱延板の巻取り温度を350〜700℃とし、巻き取ったのちの冷却速度をコイル中央部で5〜20℃/hとすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法で製造された熱延鋼板であって、
質量%で、
C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
Ti:0.005〜0.05%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイニティックフェライト単相からなる組織とを有し、引張強さTSが490MPa以上であることを特徴とする深さ100μm以上の表面割れがない表面品質に優れ、CTOD試験で−10℃での限界開口変位量δcが0.25mm以上である延性亀裂伝播特性に優れた熱延鋼板。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.3%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項5に記載の熱延鋼板。
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