JP5381234B2 - 圧縮強度の高いラインパイプの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、石油や天然ガス輸送用のラインパイプに関し、特に、高い耐コラプス性能が要求される深海用ラインパイプへの使用に好適な、圧縮強度が高いラインパイプの製造方法に関する。
近年のエネルギー需要の増大に伴い、石油や天然ガスパイプラインの開発が盛んとなり、ガス田や油田の遠隔地化や輸送ルートの多様化のため、海洋を渡るパイプラインが数多く開発されている。
海底パイプラインに使用されるラインパイプには水圧によるコラプス(圧潰)を防止するため、陸上パイプラインよりも管厚が厚いものが用いられ、より高い真円度も要求される。ラインパイプの材質には外圧によって管周方向に生じる圧縮応力に対抗するため高い圧縮強度が必要となる。
海底パイプラインの設計にはDNV規格(OS F−101)が適用される場合が多いが、本規格では外圧によるコラプス圧力を決定する因子として、パイプの管径D及び管厚t、真円度、そして材料の引張降伏強度fyを用いる。
しかし、パイプのサイズと強度が同じであっても、パイプの製造方法によってコラプス圧力が変化することから、降伏強度には製造方法によって異なる係数(αfab)が掛けられることになる。
この係数はシームレスパイプの場合は1.0すなわち引張降伏強度がそのまま適用できるが、UOEプロセスで製造されたパイプ(以下、パイプ)の場合は、パイプの圧縮強度が引張強度よりも低下するため、係数として0.85が与えられている。
UOE鋼管は造管の最終工程で拡管プロセスがあり管周方向に引張変形が与えられた後に圧縮を受けることになるため、バウシンガー効果によって降伏強度が低下することが、係数として0.85が与えられる要因となっている。
すなわち、耐コラプス性能を高めるためには、パイプの圧縮強度を高めることが必要であるが、冷間成形で拡管プロセスを経て製造されるパイプの場合は、バウシンガー効果による強度低下が問題となっていた。
UOE鋼管の耐コラプス性向上に関しては多くの検討がなされており、特許文献1には通電加熱で鋼管を加熱し拡管を行った後に一定時間以上温度を保持する方法が開示されている。
この方法によれば、拡管によって導入された転位が回復・再結晶を通じて減少するため圧縮降伏強度が上昇するが、拡管後に5分以上通電加熱を続ける必要があり、生産性が劣る。
同様に、特許文献2は拡管後に加熱を行いバウシンガー効果による降伏強度低下を回復させる方法に関し、鋼管外表面を内表面より高い温度に加熱することで、外表面側の引張変形を受けた部分のバウシンガー効果を回復し内表面側の圧縮の加工硬化を維持する方法が記載されている。
また、特許文献3にはNb,Tiを添加した鋼からの鋼板製造工程で熱間圧延後の加速冷却をAr温度以上から300℃以下まで行い、UOEプロセスで鋼管とした後に加熱を行う方法が提案されている。
一方、拡管後に加熱を行わずに鋼管の成形方法によって圧縮強度を高める方法としては、特許文献4にO成型時の圧縮率をその後の拡管率よりも大きくする方法が開示されている。この方法によれば実質的に管周方向の引張予歪が無いためバウシンガー効果が発現されず高い圧縮強度が得られる。
また、特許文献5には、圧縮強度の低いシーム溶接部近傍と当該溶接部から180°の位置の直径が鋼管の最大径となるようにすることで耐コラプス性能を高める方法が開示されている。
特開平9−49025号公報 特開2003−342639号公報 特開2004−35925号公報 特開2002−102931号公報 特開2003−340519号公報
しかしながら、特許文献2の方法では鋼管の外表面と内表面の加熱温度と加熱時間を別々に管理することは実製造上、特に大量生産においては極めて困難であり、また、特許文献3の方法は鋼板製造における加速冷却停止温度を300℃以下の低い温度にする必要があるため、鋼板の歪が大きくなりUOEプロセスで鋼管とした場合の真円度が低下し、さらにはAr温度以上から加速冷却を行うために比較的高い温度で圧延を行う必要があり靱性が劣化するという問題があった。
特許文献4記載の方法は、拡管率が低いと鋼管の真円度を維持することが困難となり鋼管の耐コラプス性能が劣化させることになりかねない。また、特許文献5記載のようにシーム溶接部が長径になるようにしても、実際のパイプラインの敷設時においてコラプスが問題になるのは海底に到達したパイプが曲げ変形を受ける部分(サグベンド部)であり、鋼管のシーム溶接部の位置とは無関係に円周溶接され海底に敷設されるため、実際上は何ら効果を発揮しない。
そこで、本発明は上記課題を解決し、海底パイプラインへ適用するために必要な高強度と優れた靱性を有し、高い圧縮強度を有するラインパイプを、鋼管成形において特殊な成形条件を必要とせず、鋼板製造条件の制御と造管後の熱処理によって製造する製造方法を提供することを目的とする。
発明者等は、ラインパイプの強度、靱性と造管後の熱処理による圧縮強度向上を両立させるために種々の実験を試みた結果、以下の知見を得るに至った。
1.母材靱性を高めるためには鋼板の熱間圧延での圧延仕上温度を低下し、組織を微細化することが有効であるが、造管後の熱処理によって圧縮強度を高めるには、圧延終了温度をAr温度以下に更に低下させ、フェライト相に一定量以上の加工を加えることが有効である。圧延時にフェライト相に大量に導入された可動転位が、造管後の加熱によって固溶炭素と結合する歪時効現象を促進することにより、大きな強度上昇が得られるためである。
2.具体的には、鋼材のC量とNb等の炭化物形成元素の添加量を適正化し、歪時効現象に必要な固溶Cを十分に確保することで、造管後の加熱処理によってより大きな強度上昇効果が得られる。
3.上記のような加工フェライトが存在することによって、バウシンガー効果の回復と歪時効による強度上昇が起きるため、造管後の熱処理が短時間であっても十分な効果が得られる。
4.Ar温度以下で圧延を終了したのちに加速冷却を施した鋼板の組織は、実質的に加工フェライトとベイナイトからなる組織となるが、加速冷却ままの状態で、特に鋼板表層付近にはベイナイト中にMA(島状マルテンサイト)と呼ばれる硬質相が形成される場合があり、このような硬質相がバウシンガー効果による強度低下を促進する。しかし、そこで、鋼板の加速冷却後に鋼板表層部を一定温度以上に加熱すると、MAが消失し、バウシンガー効果による強度低下を抑制することが可能となる。
本発明は、上記の知見に基づきなされたもので、
1.質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.015%以下、S:0.003%以下、Al:0.08%以下、Nb:0.005〜0.06%、Ti:0.007〜0.025%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、C(%)−0.065Nb(%)−0.025Mo(%)−0.057V(%)(但し、含有しない元素は0とする)が0.05以上である鋼を、
1000〜1200℃に加熱し、未再結晶温度域の圧下率が50%以上、かつAr温度以下の圧下率が10%以上で、圧延終了温度が(Ar−70℃)〜Arの熱間圧延を行って鋼板とし、引き続き10℃/秒以上の冷却速度で、300超え〜550℃まで加速冷却を行った後、冷間成形により鋼管形状とし、突き合せ部をシーム溶接後、拡管率が0.5〜1.5%で拡管して製造した鋼管に、表面温度が180〜300℃で、180℃以上に加熱される時間が1分以上、5分未満となる熱処理を行うことを特徴とする、圧縮強度の高いラインパイプの製造方法。
2.さらに質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、Ca:0.001〜0.004%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、1に記載の圧縮強度の高いラインパイプの製造方法。
3.加速冷却後に、鋼板表面温度が、450〜700℃で且つ、加速冷却停止時の鋼板温度より50℃以上高温となる温度に再加熱処理を施すことを特徴とする、1または2に記載の圧縮強度の高いラインパイプの製造方法。
本発明によれば、高い耐コラプス性能が要求される深海用ラインパイプへ適用することが可能な高強度と優れた靱性を有し、さらに圧縮強度の高いラインパイプが得られるので、産業上極めて有用である。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.化学成分
はじめに本発明の高強度高靱性鋼板が含有する化学成分の限定理由を説明する。なお、成分%は全て質量%を意味する。
C:0.05〜0.12%
Cは、加速冷却によって製造される鋼板の強度を高めるために最も有効な元素であり、さらに固溶Cとして存在させることで造管後の熱処理によって歪時効を起こし圧縮強度向上に有効に作用する元素でもある。しかし、0.05%未満では十分な効果が得られず、0.12%を超えると靱性や溶接性を劣化させる。従って、C量は0.05〜0.12%の範囲とする。より高い靭性が要求される場合は、0.05〜0.10%とすることが好ましい。
Si:0.5%以下
Siは脱酸のために添加するが、0.5%を越えると靭性や溶接性を劣化させる。従ってSi量は0.5%以下の範囲とする。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは鋼の強度および靭性の向上のため添加するが、1.0%未満ではその効果が十分ではなく、2.0%を越えると溶接性が劣化する。従って、Mn量は1.0〜2.0%の範囲とする。
P:0.015%以下
Pは不可避的不純物として含まれるが、Pの含有量が増えると靭性及び溶接性を劣化させるため、P量の上限は0.015%とする。
S:0.003%以下
Sも不可避的不純物として含まれるが、Sの含有量が増えると靱性及び延性を劣化させるため、S量の上限は0.003%とする。
Al:0.08%以下
Alは脱酸剤として添加されるが、0.08%を超えると清浄度の低下により延性を劣化させる。従って、Al量は0.08%以下とする。
Nb:0.005〜0.06%
Nbは、圧延時の粒成長を抑制し、微細粒化により靭性を向上させる。しかし、Nb量が0.005%未満ではその効果がなく、0.06%を超えると炭化物として析出し歪時効に必要な固溶C量を低下させ、造管後の熱処理で高い強度上昇が得られない。また、溶接熱影響部においては焼入れ性が上昇しMA等の脆化組織によって靭性が劣化する。従って、Nb量は0.005〜0.06%の範囲とする。より高いHAZ靭性が必要とされる場合は、0.005〜0.040とすることが好ましい。
Ti:0.005〜0.025%
Tiは、TiNを形成してスラブ加熱時の粒成長を抑制するだけでなく、溶接熱影響部の粒成長を抑制し、母材及び溶接熱影響部の微細粒化により靭性を向上させる。しかし、Ti量が0.005%未満ではその効果がなく、0.025%を越えると靭性を劣化させる。従って、Ti量は0.005〜0.025%の範囲とする。
C(%)−0.065Nb(%)−0.025Mo(%)−0.057V(%)(但し、含有しない元素は0とする):0.05以上
本パラメータ式は固溶Cを確保するためのもので、Nb,後述する選択元素であるMo,Vを添加する場合は、本パラメータ式の値が0.05未満では固溶Cが不足するため、0.5以上となるように添加する。
本発明は固溶Cによる歪時効効果を有効に活用することで、造管後の熱処理によって鋼管の圧縮強度を高めるものであり、有効な固溶Cを確保することが重要となる。
一般に、鋼中のCはセメンタイトやMAとして析出するほか、Nb等の炭化物形成元素と結合し炭化物として析出し、固溶C量が減少する。このとき、C含有量に対してNb含有量が多すぎるとNb炭化物の析出量が多く十分な固溶Cが得られない。後述する本発明の選択元素であるMo及びVもNbと同様に炭化物を形成する元素であり、これらの元素も十分な固溶Cが得られる範囲で添加する必要がある。
本発明では、上記化学成分の他に、以下の元素を選択元素として添加することができる。
Cu:0.5%以下
Cuは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると溶接性が劣化する。従って、Cuを添加する場合は0.5%以下とする。
Ni:1%以下
Niは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、1%を超えて添加すると溶接性が劣化する。従って、Niを添加する場合は1.0%以下とする。
Cr:0.5%以下
Crは、焼入れ性を高めることで強度の上昇に有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると溶接性を劣化させる。従って、Crを添加する場合は0.5%以下とする。
Mo:0.5%以下
Moは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると溶接性が劣化する。従って、Moを添加する場合は0.5%以下とする。
V:0.1%以下
Vは靭性を劣化させずに強度を上昇させる元素であるが、0.1%を超えて添加するとNbと同様に炭化物として析出し固溶Cを減少させるため、Vを添加する場合は、0.1%以下とする。より高いHAZ靭性が要求される場合は、0.06%以下にすることが好ましい。
Ca:0.001〜0.004%
Caは硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素であるが、0.001%未満ではその効果がなく、0.004%を超えて添加しても効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性を劣化させる。従って、Caを添加する場合は0.001〜0.004%の範囲とする。
なお、本発明の鋼の残部はFe及び不可避的不純物であるが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の成分の含有、たとえば、靱性改善を目的として、0.0050%以下のMg及び/または0.02%以下のREM(希土類金属)の含有、を拒むものではない。
2.製造条件
本発明は、上述した化学成分を含有する鋼スラブを、加熱し熱間圧延を行った後、加速冷却を施し、引き続いて誘導加熱による焼戻しを行う製造方法である。以下に、鋼板の製造条件の限定理由について説明する。
スラブ加熱温度:1000〜1200℃
スラブ加熱温度は、1000℃未満では十分な強度が得られず、1200℃を越えると、靱性やDWTT(落重引裂試験)特性が劣化する。従って、スラブ加熱温度は1000〜1200℃の範囲とする。
未再結晶域の圧下率:50%以上
熱間圧延工程において、高い母材靱性を得るには未再結晶温度域で十分な圧下を行い組織を微細化する必要がある。しかし、圧下率が50%未満では効果が不十分であるため、未再結晶域で圧下率を50%以上とする。なお、圧下率は複数の圧延パスで圧延を行う場合はその累積の圧下率とする。また、未再結晶温度はNb、Ti等の合金元素添加量によって変化するが、本発明におけるNb及びTi添加量では950℃以下の温度域での圧下率を50%以上とすればよい。
Ar温度以下の圧下率:10%以上
Ar温度はフェライト変態が開始する温度であり、Ar温度以下で圧延を行い加工フェライトを得ることが本発明の特徴である。しかし、Ar温度以下の圧下率が10%未満では十分な量の可動転位がフェライト相中に導入されず、造管後の熱処理による強度上昇効果が小さくなる。よって、Ar温度以下の圧下率を10%以上とする。
未再結晶域及びAr温度以下での圧下率の上限は特に規定しないが、圧下率が高すぎると、圧延のパス数が増え製造能率が低下するので、その上限を未再結晶域では90%、Ar温度以下で50%とすることが好ましい。
圧延終了温度:(Ar−70℃)〜Ar
本発明の特徴である加工フェライトを得るためには、フェライト生成温度であるAr温度以下で圧延を終了する必要がある。しかし、圧延終了温度が低すぎると鋼板の製造能率が低下するため、圧延終了温度は(Ar−70℃)〜Arの範囲とする。
なお、Ar温度は鋼の合金成分によって変化するため、製造する鋼について実験によって変態温度を測定して求めてもよいが、下式(1)で求めることもできる。
Ar(℃)=910−310C(%)−80Mn(%)−20Cu(%)−15Cr(%)−55Ni(%)−80Mo(%)・・・・・(1)
熱間圧延に引き続いて加速冷却を行う。加速冷却の条件は以下の通りである。
冷却速度:10℃/秒以上
加速冷却は高強度で高靱性の鋼板を得るために不可欠なプロセスであり、高い冷却速度で冷却することで変態強化による強度上昇効果が得られる。冷却速度が10℃/秒未満では十分な強度が得られないだけでなく、冷却中のセメンタイトの析出量が多く十分な固溶Cを確保できず、造管後の熱処理による強度上昇が得られない。よって加速冷却時の冷却速度の下限を10℃/秒とする。
冷却停止温度:300超え〜550℃
加速冷却によってベイナイト変態が進行し必要な強度が得られるが、冷却停止時の温度が550℃を超えると、ベイナイト変態が不十分であり、十分な強度が得られない。また,冷却停止時の鋼板平均温度が300℃以下では,鋼板表層部の硬度が高くなるだけでなく、鋼板に歪みを生じやすくなり成形性が劣化しパイプに成形したときの真円度が著しく劣化する。よって、冷却停止時の温度は300超え〜550℃の範囲とする。
加速冷却後の鋼板に再加熱処理を施す場合は、鋼板表面温度が、450〜700℃で且つ、加速冷却停止時の鋼板温度より50℃以上高温となる温度に再加熱処理を施す。
圧鋼板の加速冷却では鋼板表層部の冷却速度が速くまた鋼板内部に比べ表層部が低い温度まで冷却される。そのため、鋼板表層部にはMA(島状マルテンサイト)が生成されやすい。
このような硬質相はバウシンガー効果を促進するため、好ましくないものであるが、加速冷却後に鋼板の表層部を加熱してMAを分解することにより、バウシンガー効果による圧縮強度の低下を抑制することが可能となる。
しかし、再加熱時の鋼板表面温度が450℃未満ではMAの分解が十分でなく、また700℃を超えると、鋼板中央部の加熱温度も上昇するため大きな強度低下をまねく。よって、加速冷却後にMAの分解を目的に再加熱を行う場合は、再加熱時の鋼板表面温度を450〜700℃の範囲とする。
加速冷却後の再加熱を実施する手段としては、MAが多く存在する表層部のみを効率的に加熱できる誘導加熱を用いることが望ましい。また、再加熱による効果を得るには冷却停止時の温度よりも高い温度に加熱する必要があるため、再加熱時の温度は450〜700℃の範囲内であって、且つ冷却停止時の温度よりも50℃以上高い温度とする。
加速冷却後の再加熱処理によって回復・再結晶が起こり、造管後の熱処理による圧縮強度向上効果が低減する場合があるため、過度の回復・再結晶を防ぐように、鋼板中心部の加熱温度は500℃未満とすることが望ましい。
表層部では回復・再結晶によって可動転位が減少するが、表層部のみであればその影響は小さい。また、硬質相であるMAが分解されることによるバウシンガー効果抑制効果が大きいため、表層部での可動転位減少の効果を補い更に圧縮強度が向上する。
本発明は上述の方法によって製造された鋼板を用いて鋼管となすが、鋼管の成形方法は,UOEプロセスやプレスベンド等の冷間成形によって鋼管形状に成形する。その後,シーム溶接するが,溶接方法は十分な継手強度及び継手靱性が得られる方法であればよく,優れた溶接品質と製造能率の点からサブマージアーク溶接を用いることが好ましい。
突き合せ部の溶接を行った後に,溶接残留応力の除去と鋼管真円度の向上のため,拡管を行う。このときの拡管率は,所定の鋼管真円度が得られ,残留応力が除去される条件として,0.5〜1.5%とする。
本発明ではバウシンガー効果を回復し圧縮強度を向上するために、造管後に以下の加熱条件で、鋼管外表面を加熱処理する。
表面の加熱温度:180〜300℃
造管後の加熱処理によってバウシンガー効果が回復し、また、歪時効によって圧縮降伏強度が上昇する。しかし、その温度が180℃未満では十分な効果が得られず、300℃を超えるとその効果が飽和するか逆に強度低下を招くため、加熱温度は180〜300℃とする。加熱処理には鋼管の外面側から加熱可能な誘導加熱を用いることが好ましく、加熱温度は外表面の温度とする。
180℃以上の加熱時間:1分以上、5分未満
本発明では化学成分の調整による固溶Cの確保と、Ar温度以下での圧延による可動転位の増加によってバウシンガー効果の回復と歪時効による圧縮強度の上昇が速やかに起こるため、鋼管の加熱時間は1分以上あれば、所定の効果が得られる。また、5分以上に加熱してもその効果が飽和するだけでなく、鋼管の製造効率を著しく阻害するため、加熱時間を1分以上、5分未満とする。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜I)を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて板厚30mmの厚鋼板(No.1〜19)を製造した。鋼板製造条件を表2に示す。鋼板製造時の載荷熱処理は,加速冷却設備と同一ライン上に設置した誘導加熱炉を用いて再加熱を行った。この鋼板を用いて,UOEプロセスにより外径624mmの鋼管を製造し,その後誘導加熱により鋼管の加熱処理を行った。鋼管製造時の拡管率及び鋼管の加熱処理での加熱温度及び加熱時間も表2に併せて示す。
Figure 0005381234
Figure 0005381234
以上のようにして製造した鋼管の引張特性は、圧延垂直方向の全厚試験片を引張試験片として引張試験を行い、引張強度を測定した。圧縮試験は鋼管の管厚中央部より管周方向に直径20mm,長さ60mmの試験片を採取し,圧縮試験を行い圧縮の降伏強度を測定した。また,鋼管の管周方向より採取したDWTT試験片により延性破面率が85%となる温度を85%SATTとして求めた。
表2において、本発明例であるNo.1〜9はいずれも、化学成分および製造方法及びミクロ組織が本発明の範囲内であり、圧縮強度が500MPa以上の高圧縮強度であり,DWTT特性も良好であった。
一方,No.10〜19は、製造方法が本発明の範囲外であるか,化学成分が本発明の範囲外であるため圧縮強度が不足している。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.015%以下、S:0.003%以下、Al:0.08%以下、Nb:0.005〜0.06%、Ti:0.007〜0.025%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、C(%)−0.065Nb(%)−0.025Mo(%)−0.057V(%)(但し、含有しない元素は0とする)が0.05以上である鋼を、
    1000〜1200℃に加熱し、未再結晶温度域の圧下率が50%以上、かつAr温度以下の圧下率が10%以上で、圧延終了温度が(Ar−70℃)〜Arの熱間圧延を行って鋼板とし、引き続き10℃/秒以上の冷却速度で、300超え〜550℃まで加速冷却を行った後、冷間成形により鋼管形状とし、突き合せ部をシーム溶接後、拡管率が0.5〜1.5%で拡管して製造した鋼管に、表面温度が180〜300℃で、180℃以上に加熱される時間が1分以上、5分未満となる熱処理を行うことを特徴とする、圧縮強度の高いラインパイプの製造方法。
  2. さらに質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、Ca:0.001〜0.004%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の圧縮強度の高いラインパイプの製造方法。
  3. 加速冷却後に、鋼板表面温度が、450〜700℃で且つ、加速冷却停止時の鋼板温度より50℃以上高温となる温度に再加熱処理を施すことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の圧縮強度の高いラインパイプの製造方法。
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