JP5966441B2 - 耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた溶接鋼管およびその製造方法 - Google Patents

耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた溶接鋼管およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、石油や天然ガスの輸送に使用されるラインパイプ用溶接鋼管およびその製造方法に関し、特に、海底に敷設されるラインパイプに用いられる溶接鋼管およびその製造方法に関する。
海底に敷設されるラインパイプは、敷設時に鋼管外面側から高い外圧を受け圧潰する可能性がある。そのため、海底に敷設されるラインパイプには、高い耐圧潰性能が求められる。耐圧潰性能は、ラインパイプの形状と管周方向の圧縮降伏応力によって支配され、一般的に、管径が小さく、管厚が大きいほど、形状がより真円に近いほど、また、管周方向の圧縮降伏応力が大きいほど耐圧潰性能が優れることが知られている。そのため、海底に敷設されるラインパイプは、造管した状態で十分な圧縮降伏応力を有することが望ましいが、一般的なUOE鋼管やJCO−E鋼管のように鋼材を冷間加工した後、拡管により冷間成形される鋼管の場合、最終工程である拡管で大きな引張負荷を受け、そのバウシンガー効果に起因して圧縮降伏応力が低下することが知られている。
従って、鋼管の耐圧潰性能を確保するためには、鋼管素材となる鋼材の降伏応力を高く設計する、あるいは、管厚を厚くする必要がある。しかしながら、降伏応力を上げる、あるいは管厚を厚くするためには、ともに合金コストの増大や母材および溶接熱影響部の靱性の劣化を助長するため、過度に降伏応力や管厚を厚くすることなく、耐圧潰性能を確保できる溶接鋼管の製造方法を確立することが求められている。
このような要求に対し、特許文献1および2には、UOE鋼管造管時のOプレス圧縮率と拡管率とをパラメータに、圧縮率/拡管率で示される比を最適な範囲まで低減することによって、造管後における鋼管の圧縮降伏応力の低下を抑制する方法が開示されている。例えば、特許文献2には、圧縮率/拡管率を0.35以上にする技術が開示されている。また、特許文献2では、拡管率を極めて大きくすることにより、造管後における鋼管の圧縮降伏応力の低下を抑制する方法も開示されている。
非特許文献1には、通常、拡管により冷間成形を行うところを縮径により形状を整えることにより、圧縮試験時のバウシンガー効果の発生を抑制し、さらに加工硬化により極めて良好な圧縮降伏応力を確保する方法が開示されている。
特許文献3には、拡管率2%の拡管を行った後、縮径率4%の縮径を行うことにより、耐圧潰性能を向上させる技術が開示されている。
特許文献4〜8には、造管後に熱処理、もしくはコーティング加熱による低温ひずみ時効により、造管工程で鋼管に付与された背応力(Back Stress)を低減し、鋼管の圧縮降伏応力の低下を抑制する方法が開示されている。
また、特許文献9および10には、鋼材の組織に含まれるMAを分解することや、フェライト+ベイナイト組織のベイナイトの硬さを低下させることでミクロ組織を均一化し、バウシンガー効果の発生量を低減することで圧縮降伏応力を向上させる方法が開示されている。
特開2002−102931号公報 特開2003−340518号公報 特開平9−1233号公報 特開平9−3545号公報 特開2002−295736号公報 特開2003−342639号公報 特開2004−35925号公報 特開2010−235993号公報 特開2009−275261号公報 特開2010−84171号公報
T.Reichel,V.Pavlyk,S.Kyriakides,W.Y.Jang:Improved Collapse Resistance of Large Diameter Pipes for Deepwater Applications Using a New Impander Technology,Proceeding of the 8th International Pipeline Conference,IPC2010−31551(2010)
しかし、特許文献1および2で示されているようなUOE成形における最適な圧縮率/拡管率の比に造管条件を設定するためには、Oプレスの圧縮率を通常よりも極めて大きくする必要がある。Oプレスの圧縮率を増大させるためには、Oプレス機のプレス能力を増強する必要があり、新規設備の導入や設備の大規模な改造が必要となり、多くの費用を要する。さらに、圧縮降伏応力の確保が問題となる海底敷設用ラインパイプは、耐座屈性能確保の観点から厚肉で設計されることが多く、このことはOプレスのプレス荷重を増大させることとなる。また、拡管率を低下させることにより、最適な範囲にすることもできるが、鋼管の真円度を低下させることとなり、耐圧潰性能が劣化してしまう。
また、非特許文献1のように、拡管の代わりに縮径を行うことにより形状を確保しつつ圧縮降伏応力を高くすることができるが、この場合は、管周方向の引張降伏応力がバウシンガー効果により低下してしまい、内圧破壊性能が低下することになる。
また、特許文献3記載のように、拡管率2%の拡管を行った後、縮径率4%の縮径を行うことは、過度な加工硬化による表層硬さの上昇、靱性の劣化や拡管および縮径ダイスによる押し疵が鋼管表面に残ることが懸念される。
また、特許文献4〜8に記載のように、造管後のコーティング加熱条件を最適化することにより、低温ひずみ時効処理を行うことは、圧縮降伏応力の低下を抑制するという観点では絶大な効果があるが、鋼管の引張の応力−ひずみ曲線が造管後のラウンドハウス型からリューダース型に変わり、曲げ座屈性能などの鋼管の変形能を低下させる。さらに、コーティング加熱の条件は、使用するコーティング材によって変わり、必ずしも狙いとするコーティング加熱条件に合致させることができるとは限らず、コーティング加熱のかわりに熱処理によって低温ひずみ時効処理を行う場合は、工程が増えることにより生産性を著しく損なうこととなる。
また、特許文献9および10記載のように、加速冷却の直後に急速加熱を加えることで鋼材の特性および鋼管の形状の両面から耐圧潰性を向上させることができるが、鋼材製造工程に鋼材を急速に加熱できるオンライン熱処理設備が必要であり、簡便な方法とはいえない。
上述したように、従来の技術では、コストの増大、生産性の低下や耐内圧破壊性能の劣化を生じることなく、耐圧潰性能に優れたラインパイプ用溶接鋼管を製造することは、困難であった。
そこで、本発明では、高生産性、低コストで製造できる耐圧潰性能および耐内圧破壊性能の両方の特性を具現化できる高強度ラインパイプおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決するために、溶接鋼管の造管方法、特に溶接後の冷間成形における拡管、縮径の組合せおよびそれらの条件について鋭意検討し、以下の知見を得た。
まず、目標とする溶接鋼管の性能として、耐圧潰性能を支配する管周方向の圧縮降伏応力と耐内圧性能を支配する管周方向の引張降伏応力および曲げ座屈性能を支配する管長方向の引張降伏応力に着目し、それらの差を50MPa以下にすることで、上述した性能をバランス良く満たしながら、海底パイプラインの設計に適用されるDNV規格OS−F101で要求されるラインパイプの強度特性も満たし易くなると考えた。そこで、必要とする性能の下限値をDNV規格OS−F101で規定されるL420の要求強度の下限値以上とし、前記降伏応力相互の差を50MPa以下とした。
次に、必要性能を満たすための造管条件について検討した。図1にUO成形後(Oプレス圧縮率は0.25%)に突合せ部を溶接し、拡管率1.15%の拡管を加えた後に、縮径率0.3〜1.3%の縮径を加えたときの、管周方向の圧縮および引張降伏応力と管長方向の引張降伏応力の関係を示す。
拡管ままでは、拡管によるバウシンガー効果により管周方向の圧縮降伏応力が著しく低下しているのに対して、縮径を加えることで顕著に管周方向の圧縮降伏応力が増大することがわかる。これは、縮径により加工硬化が加わったためである。
一方、管周方向の引張降伏応力は、縮径率が大きくなるほどバウシンガー効果により低下し、図1においては、縮径率0.5%程度で管周方向の圧縮降伏応力と管周方向の引張降伏応力がほぼ一致する。また、管長方向の引張降伏応力は縮径率が大きくなるほど大きくなる傾向にはあるが、影響度は小さかった。
以上のように、拡管率と縮径率を適切に制御することにより、鋼管の各方向の引張、圧縮負荷方向に対するバウシンガー効果と加工硬化を最適にでき、管周方向の圧縮降伏応力および引張降伏応力、管長方向の引張降伏応力の差を小さくすることが可能となる。
また、この最適な条件範囲は、下記式(2)の範囲であり、拡管と縮径の順番を逆にしてもほとんど同じ効果が得られることも別途確認した。
0.2≦S/E≦0.8 ・・・・・(2)
なお、Sは縮径率、E拡管率を表す。
さらに、鋼種の影響についても調査した結果、鋼管素材の応力−ひずみ曲線の形や異方性の強弱によって最適な造管条件が若干異なったが、式(2)の範囲内であれば、目標性能を満足できることも確認した。
本発明は、上記した知見をもとに、さらに検討を加えたもので、その要旨は以下の通りである。
[1] 鋼材を筒状に冷間加工し、その突合せ部を溶接し、拡管と縮径により冷間成形される溶接鋼管であって、管周方向の引張降伏応力CTと管周方向の圧縮降伏応力CCおよび管長方向の引張降伏応力LTがすべて420MPa以上であり、CT、CCおよびLT相互の差が50MPa以下であることを特徴とする耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた溶接鋼管。
[2] 鋼材を筒状に冷間加工し、その突合せ部を溶接し、拡管、縮径の順番に冷間成形される溶接鋼管の製造方法であって、拡管率Eを0.5〜1.5%、縮径率Sを0.2〜0.7%とし、下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた溶接鋼管の製造方法。
0.8%≦E+S≦1.8% ・・・・・(1)
0.2≦S/E≦0.8 ・・・・・・・(2)
[3] 鋼材を筒状に冷間加工し、その突合せ部を溶接し、縮径、拡管の順番に冷間成形される溶接鋼管の製造方法であり、縮径率Sを0.5〜1.5%、拡管率Eを0.2〜0.7%とし、下記式(1)および式(3)を満たすことを特徴とする耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた溶接鋼管の製造方法。
0.8%≦E+S≦1.8% ・・・・・(1)
0.2≦E/S≦0.8 ・・・・・・・(3)
なお、拡管率Eは、(拡管後の平均外径-拡管前の平均外径)/拡管前の平均外径×100%で表わす。縮径率Sは、(縮径前の平均外径-縮径後の平均外径)/縮径前の平均外径×100%で表わす。
本発明により、耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れる石油や天然ガスの輸送とりわけ海底パイプラインに使用させる厚肉高強度ラインパイプ用として好適な鋼材を冷間で成形し溶接して製造される高靱性溶接鋼管が得られるので、産業上極めて有用である。
拡管率1.15%の拡管後に、縮径率0.3〜1.3%の縮径を加えたときの、管周方向の圧縮、引張降伏応力および管長方向の引張降伏応力と縮径との関係を示す図である。
本発明に係る耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた溶接鋼管の強度特性および造管条件について説明する。
1.強度特性
管周方向の引張降伏応力CT、管周方向の圧縮降伏応力CC、管長方向の引張降伏応力LT:420MPa以上
鋼管の降伏応力は高いほど、高圧操業や高深海への敷設が可能となり、高深海に敷設する天然ガス用ラインパイプは、そのほとんどがDNV規格OS−F101で規定されるL420、L450、L485のいずれかの強度特性が適用される。また、低強度材ではバウシンガー効果の発生が小さいため、本発明の手法を用いずとも降伏応力の差は小さい。従って、L420の強度を確保するために、管周方向の引張降伏応力CT、管周方向の圧縮降伏応力CCおよび管長方向の引張降伏応力LTは420MPaを下限値とした。好ましくは、L450の下限を確保するために、450MPa以上とするのがよい。
管周方向の引張降伏応力CT、管周方向の圧縮降伏応力CCおよび管長方向の引張降伏応力LT相互の差:50MPa以下
管周方向の引張降伏応力CTは耐内圧破壊特性を、管周方向の圧縮降伏応力CCは耐圧潰性能を支配する。一般的なUOE鋼管では、管周方向の圧縮降伏応力CCの方が小さくなる傾向にあり、耐圧潰性能を確保するために管厚を厚くして対応し、内圧に対しては過度に安全側の設計となる。
一方、UO成形後の縮径のみを行うなどして管周方向の引張降伏応力CTを小さくした場合、耐内圧破壊強度を確保するために管厚を厚くする必要があり、耐圧潰強度に対しては過度に安全側の設計となる。また、管軸方向の引張降伏応力LTが小さいと、海底での潮流や海底変動などの曲げ変形が加わったときや海上から海底に達するまでの部分に加わる引張変形に対する抵抗力が小さくなるため、管長方向の引張降伏応力LTは通常、管周方向の引張降伏応力CTに比べて小さいが、できるだけ高い方がよい。そのため、管周方向の引張降伏応力CT、管周方向の圧縮降伏応力CCおよび管長方向の引張降伏応力LT相互の差を50MPa以下にすることで、耐内圧破壊性能、耐圧潰性能および敷設環境下での変形防止を両立することができる。好ましくは40MPa以下である。
2.造管条件
鋼材を筒状に冷間加工
海底に敷設されるラインパイプは一般に厚肉25.4mmを超える厚肉であるため、鋼管素材は鋼材(厚鋼板もしくは板厚の厚い熱延鋼板)である必要がある。冷間加工の方法は、UO成形やJCO成形、プレスベンド成形などを選択できる。なお、UO成形では、曲げ加工に加えてOプレスの圧縮加工が加わるが、通常の製造条件では、最終特性に影響を与えないため、本発明では規定しない。
拡管方法
拡管は、一般的なメカニカル拡管および水圧拡管のいずれの方法を用いてもよい。
縮径方法
縮径は、Oプレスやそれと同様の装置による全長を同時に縮径する方法や、鋼管の矯正などに用いる縮径装置のような管長手方向に逐次縮径を行う方法のどちらの方法でも、得られる特性に差がないため、何れの方法を用いてもよい。
(A)拡管後に縮径を行う場合
図1にUO成形後(Oプレス圧縮率は0.25%)に突合せ部を溶接し、拡管率1.15%の拡管を加えた後に、縮径率0.3〜1.3%の縮径を加えたときの、管周方向の圧縮および引張降伏応力と管長方向の引張降伏応力の関係を示す。
拡管ままでは、拡管によるバウシンガー効果により管周方向の圧縮降伏応力が著しく低下しているのに対して、縮径を加えることで顕著に管周方向の圧縮降伏応力が増大することがわかる。これは、縮径により加工硬化が加わったためである。
一方、管周方向の引張降伏応力は、縮径率が大きくなるほどバウシンガー効果により低下し、図1の条件においては、縮径率0.5%程度で管周方向の圧縮降伏応力と管周方向の引張降伏応力がほぼ一致した。また、管長方向の引張降伏応力は縮径率が大きくなるほど大きくなる傾向にはあるが、影響度は小さかった。
上記したように、拡管と縮径を行う順番と条件を最適にすることにより、鋼管の各方向の引張、圧縮負荷方向に対するバウシンガー効果と加工硬化を最適にでき、管周方向の圧縮降伏応力および引張降伏応力、管長方向の引張降伏応力の差を小さくすることができる。
拡管率E :0.5〜1.5%
拡管は、鋼管の真円度を確保するために必要な工程である。拡管率Eが0.5%未満では、S/E:0.2〜0.8を満たす範囲内で真円度を得ることができないため、下限を0.5%とする。また、拡管率Eが1.5%超えでは、ダイスによる押し疵や過度な加工硬化による硬度上昇、靱性劣化が問題になるため、拡管率Eは0.5〜1.5%の範囲とする。
好ましくは、0.7〜0.12%の範囲である。
縮径率S :0.2〜0.7%
縮径は、主に強度特性を調整するために行い、拡管で十分でなかった真円度矯正を補助的に行う効果もある。縮径率Sが0.2%より小さくなると、管周方向圧縮降伏応力の上昇が十分でなく、0.7%を超えると管周方向引張降伏応力が低下し過ぎるため、縮径率Sは0.2〜0.7%の範囲とする。好ましくは、0.3〜0.6%の範囲である。
E+S:0.8〜1.8%
E+Sが0.8%未満では、真円度が十分に確保できず、また、強度特性の調整が十分に行えないため、下限を0.8%とする。一方、E+Sが1.8%を超えると加工硬化による硬度上昇や靱性劣化が顕著になるため、E+Sの合計は、0.8〜1.8%の範囲とする。好ましくは、1.0〜1.6%の範囲である。
S/E:0.2〜0.8
縮径率/拡管率は、管周方向引張降伏応力と管周方向圧縮降伏応力のバランスを支配し、S/Eが0.2未満では、管周方向の圧縮降伏応力が小さくなり、敷設時の外圧による破壊に対する抵抗力が下がる等の問題が生じる。一方、S/Eが0.8を越えると管周方向引張降伏応力が小さくなり、操業時の内圧による破壊に対する抵抗力が小さくなる等の問題が生じる。よって、S/Eは0.2〜0.8の範囲とする。好ましくは、0.3〜0.7の範囲である。
(B)縮径後に拡管を行う場合
次に、縮径後に拡管を行う場合について説明する。拡管と縮径の順番を逆にした本項においても、後述の実施例(縮径率は1.15%)のように拡管後に縮径を行う場合と同様の効果が得られる。
縮径率S:0.5〜1.5%
縮径は、鋼管の真円度を確保するために必要な工程である。縮径率Sが0.5%未満では、E/S:0.2〜0.8を満たす範囲内で真円度を得ることができないため、下限を0.5%とする。また、縮径率Sが1.5%を超えるとダイスによる押し疵や過度な加工硬化による硬度上昇、靱性劣化が問題になるため、縮径率Sは0.5〜1.5%の範囲とする。好ましくは、0.7〜0.12%の範囲である。
拡管率E:0.2〜0.7%
拡管は、主に強度特性を調整するために行い、縮径で十分でなかった真円矯正を補助的に行う効果もある。拡管率Eが0.2%未満では、圧縮降伏応力の上昇が十分でなく、拡管率Eが0.7%を超えると引張降伏応力が低下し過ぎるため、拡管率Eは0.2〜0.7%の範囲とする。好ましくは、0.3〜0.6%の範囲である。
E+S:0.8〜1.8%
E+Sが0.8%未満では、真円度が十分に確保できず、また、強度特性の調整が十分に行えないため、下限を0.8%とする。また、E+Sの合計が1.8%を超えると加工硬化による硬度上昇や靱性劣化が顕著になるため、拡管率Eと縮径率Sの合計を0.8〜1.8%の範囲とする。好ましくは、1.0〜1.6%の範囲である。
E/S:0.2〜0.8
E/Sは、管周方向の引張降伏応力と管周方向圧縮降伏応力のバランスを支配し、E/Sが0.2未満では、管周方向の圧縮降伏応力が小さくなり、敷設時の外圧による破壊に対する抵抗力が下がる等の問題が生じる。一方、E/Sが0.8を越えると管周方向引張降伏応力が小さくなり、操業時の内圧による破壊に対する抵抗力が小さくなる等の問題が生じる。このため、E/Sは0.2〜0.8の範囲とする。好ましくは、0.3〜0.7の範囲である。
3.鋼材の特性および製造方法
鋼材の特性は特には規定しないが、420MPa以上の降伏応力を確保するために490MPa以上の引張強度があることが望ましい。好ましくは、520MPa以上である。
表1に化学成分を、表2に製造条件、引張特性を示す38mm厚の厚鋼板を鋼管素材として用いた。厚鋼板をUOプレスもしくは板端部から順次施すプレスで筒状に冷間加工し、その突合せ部を内外面2層のサブマージアーク溶接により接合した後、表3に示す条件で拡管および縮径加工を行い外径36インチ(914mm)の鋼管を製造した。拡管はすべてメカニカル拡管であり、縮径は0.3%以下のものはOプレスを用い、0.3%を超えるものについては、縮径装置により逐次縮径を行った。
Figure 0005966441
Figure 0005966441
管周方向の引張特性は、管周6時(0時は溶接シーム部)の管厚方向中央からΦ10mmの丸棒引張試験片を採取して測定した。管周方向の圧縮特性は、管周6時の管厚方向中央からΦ10mの円柱形試験片を採取して測定した。管軸方向の引張特性は、管周6時の管厚方向中央からΦ10mmの丸棒試験片を採取して行った。降伏応力はすべて0.5%アンダーロードを用いた。真円度は、管周方向の8点について外径を測定し、その最大値と最小値より式(4)で求めた。真円度は、外径の0.5%以内(4.57mm以内)を合格とした。
真円度=(Dmax−Dmin)/D ・・・(4)
D:公称外径、Dmax:測定最大外径、Dmin:測定最小外径
表3に各種造管条件で造管した際の試験結果を示す。
Figure 0005966441
本発明例である鋼管No.1〜5、11は、いずれも降伏応力の下限、降伏応力差および真円度が目標の範囲を満たしているが、比較例である鋼管No.6〜10、12は、いずれも降伏応力の下限、降伏応力差および真円度のうち、いずれかの特性を満たしていない。

Claims (3)

  1. 溶接シーム部を有する溶接鋼管であって、管周方向の引張降伏応力CTと管周方向の圧縮降伏応力CCおよび管長方向の引張降伏応力LTがすべて420MPa以上であり、前記CT、CCおよびLT相互の差が50MPa以下であることを特徴とする耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた海底に敷設されるラインパイプに用いられる溶接鋼管。
  2. 請求項1に記載の耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた海底に敷設されるラインパイプに用いられる溶接鋼管の製造方法であって、
    鋼材を筒状に冷間加工し、その突合せ部を溶接し、拡管、縮径の順番に冷間成形され、前記拡管での拡管率Eを0.5〜1.5%、前記縮径での縮径率Sを0.3〜0.7%とし、下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた海底に敷設されるラインパイプに用いられる溶接鋼管の製造方法。
    0.8%≦E+S≦1.8% ・・・・・(1)
    0.2≦S/E≦0.8 ・・・・・・・(2)
  3. 請求項1に記載の耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた海底に敷設されるラインパイプに用いられる溶接鋼管の製造方法であって、
    鋼材を筒状に冷間加工し、その突合せ部を溶接し、縮径、拡管の順番に冷間成形され、前記縮径での縮径率Sを0.5〜1.5%、前記拡管での拡管率Eを0.2〜0.7%とし、下記式(1)および式(3)を満たすことを特徴とする耐圧潰性能および耐内圧破壊性能に優れた海底に敷設されるラインパイプに用いられる溶接鋼管の製造方法。
    0.8%≦E+S≦1.8% ・・・・・(1)
    0.2≦E/S≦0.8 ・・・・・・・(3)
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