JP5061887B2 - 拡管性に優れた油井用鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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の関係を満足する拡管加工後の耐食性に優れた拡管用油井鋼管が記載されている。しかし、特許文献3に記載された技術では、限界拡管率は高々30%以下であり、更なるコスト削減要求から、拡管率が30%を超える拡管性に優れた油井用鋼管が要求されている。
またさらに油井では、例えば特許文献4に記載されたような油井用鋼管同士をねじ継手で接続して使用している。このため、井戸中で鋼管を拡管すると、ねじ継手部も拡管されることになる。しかし、高拡管性を有するねじ継手は、現状ではまだ開発されておらず、ねじ継手を含め高い拡管率で拡管した場合には、ねじ継手部からガスや原油が漏れ出すことが懸念されている。
このような従来技術の問題に鑑み、本発明は、拡管性に優れ、とくに拡管後の継手部からのガス、原油等の漏れを防止できる、安価な、油井用鋼管およびその製造方法を提供することを目的とする。
(1)油井内に挿入された状態で拡管される油井用鋼管であって、前記油井用鋼管が、質量%で、C:0.10%以上0.35%以下、Si:0.31%以下、Mn:0.10〜3.50%、P:0.07%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、Cr:2.0%以下、W:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、降伏強さ:350MPa以上、n値:0.08以上を有し、かつn値と均一伸びu-Elとが次(2)式
n>0.007×(25−u-El)‥‥‥(2)
(ここで、n:n値、u-El:均一伸び(%))
を満足する鋼管であり、該油井用鋼管の端面側が拡管加工され、該拡管加工された部位の端面側に溶接用開先を有することを特徴とする拡管性に優れた油井用鋼管。
拡管率=[{(プラグ外径)−(素管内径)}/(素管内径)]×100(%)‥‥(1)
(ここで、プラグ外径:拡管用工具(プラグ)の外径(mm)、素管内径:鋼管端面部の加工前内径(mm))
で定義される拡管率で3%以上であることを特徴とする油井用鋼管。
A群:Cu:3.5%以下、
B群:Ni:2.0%以下、
C群:Mo:2.0%以下、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.0005〜0.01%
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする油井用鋼管。
n>0.007×(25−u-El)‥‥‥(2)
(ここで、n:n値、u-El:均一伸び(%))
を満足する拡管性に優れた油井用鋼管の製造方法。
(5)(4)において、前記焼戻処理が、Ac1変態点以上Ac3変態点以下の二相温度域に加熱する処理であることを特徴とする油井用鋼管の製造方法。
拡管率=[{(プラグ外径)−(素管内径)}/(素管内径)]×100(%) ‥‥(1)
(ここで、プラグ外径:拡管用工具(プラグ)の外径(mm)、素管内径:鋼管端面部の加工前内径(mm))
で定義される拡管率で3%以上であることを特徴とする油井用鋼管の製造方法。
A群:Cu:3.5%以下、
B群:Ni:2.0%以下、
C群:Mo:2.0%以下、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.0005〜0.01%
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする油井用鋼管の製造方法。
拡管率=[{(プラグ外径)−(素管内径)}/(素管内径)]×100(%) ‥‥(1)
(ここで、プラグ外径:拡管用工具(プラグ)の外径(mm)、素管内径:鋼管端面部の加工前内径(mm))
で定義される。拡管率が3%未満では、油井内での高拡管に対応することができにくい。なお、ここでいう「油井内での高拡管」とは、油井内での拡管率が10%以上の拡管をいうものとする。
n>0.007×(25−u-El)‥‥‥(2)
(ここで、n:n値、u-El:均一伸び(%))
を満足するn値を有することが好ましいという知見を得ている。n値が(2)式を満足できない場合には、所望の更なる優れた拡管性を確保することが難しくなる。なお、均一伸びu-Elは、管軸方向を引張方向とする引張試験片を用いてJIS Z 2241の規定に準拠して測定した値を用いるものとする。
C:0.35%以下
Cは、鋼管強度に関係する重要な元素であり、所望の強度を確保するために、0.04%以上含有することが望ましいが、0.35%を超えて多量に含有すると、鋼管製造時に焼割れを発生する恐れが増大する。このため、Cは0.35%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.30%以下である。
Siは、通常の製鋼過程において脱酸剤として有用な元素である。このような効果を得るために0.05%以上含有することが望ましいが、1.5%を超える含有は、熱間加工性、さらには靭性を低下させる。このため、Siは1.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは1.0%以下である。
Mnは、固溶して鋼管強度を増加させる作用を有するとともに、n値向上に有効に寄与する元素である。油井用鋼管として所望の強度を確保するために0.10%以上含有することが望ましいが、3.50%を超える多量の含有は、靭性に悪影響を及ぼすとともに、鋼管製造時に焼割れを発生する恐れを増大させる。このため、Mnは0.10〜3.50%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.50〜3.50%である。
Pは、熱間加工性を低下させるとともに、耐硫化物応力腐食割れ性を劣化させる元素であり、本発明ではその含有量は可及的に少ないことが望ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。そのため、本発明ではPは、工業的に比較的安価に実施可能でかつ、熱間加工性、耐硫化物応力腐食割れ性を低下させない範囲である、0.07%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05%以下である。
Sは、パイプ造管過程における熱間加工性を著しく劣化させる元素であり、本発明ではその含有量は可及的に少ないことが望ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。そのため、本発明ではSは、通常の工程でのパイプ製造が可能な範囲である0.01%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.007%以下である。
Alは、強力な脱酸剤として作用するとともに、Nと結合し結晶粒を微細化する作用を有する元素である。このような効果を安定して確保するために0.005%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Alは0.05%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.03%である。
A群:Cr:2.0%以下、Cu:3.5%以下のうちから選ばれた1種または2種、
A群:Cr、Cuはいずれも、耐腐食性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Cuは、保護皮膜を強固にして鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性等の耐腐食性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は0.2%以上の含有で顕著となるが、3.5%を超える含有は、高温で粒界にCuSが析出し、熱間加工性を低下させる。このため、Cuは3.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜1.0%である。
B群:Niは、靭性の向上に有効に寄与する元素である。また、Cuを含有する場合には圧延時の割れを防止するのに有効に寄与する。このような効果を得るためには0.1%以上含有することが望ましいが、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、Niは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.5%である。
C群:Mo、V、Nb、Ti、Zr、B、Wはいずれも、鋼管強度を増加させる作用を有する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Moは、焼入れ性の向上を介して、鋼管強度の増加に寄与する元素であるが、硫化水素が存在する環境下では耐硫化物応力腐食割れ性をも向上させる元素でもある。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが望ましいが、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、Moは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜0.8%である。
Nbは、鋼の強度増加、さらには靱性向上に有効に寄与する元素である。このような効果は0.01%以上の含有で顕著となるが、0.20%を超える含有は、靱性を低下させる。このため、Nbは0.20%以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.12%である。
Zrもまた、鋼管強度を増加させ、耐応力腐食割れ性をも改善する作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で顕著となるが、一方、0.20%を超える含有は、靱性を劣化させる。このため、Zrは0.20%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.10%である。
Wもまた、鋼管強度を増加させ、耐応力腐食割れ性を改善する作用を有する元素である。このような効果は、0.2%以上の含有で顕著となるが、一方、W:3.0%を超える含有は、靱性を劣化させる。このため、Wは1.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜0.8%である。
D群:Caは、SをCaSとして固定しS系介在物を球状化する作用により、介在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、水素のトラップ能を下げる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.0005%以上の含有が必要であるが、0.01%を超える含有は、CaOの増加を招き、耐CO2腐食性、耐孔食性が低下する。このため、Caは0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001〜0.005%である。
つぎに、本発明油井用鋼管の好ましい製造方法を、素管とする鋼管を継目無鋼管とした場合を例にして説明する。なお、本発明では鋼管は、継目無鋼管に限定されるものではなく、溶接鋼管(電縫鋼管)としてもよいのは言うまでもない。
なお、焼戻処理に代えて、Ac1変態点超えAc3変態点未満の二相域の温度に加熱し冷却する、二相域処理としてもよい。また、焼戻処理、二相域処理は少なくとも2回繰り返す処理としてもよい。これにより、拡管性がさらに向上する。
さらに、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
次いで各鋼管に、表2に示す熱処理を施した。なお、一部の鋼管では熱間圧延まま(造管まま)とした。
また、上記した鋼管から、拡管試験材(鋼管:長さ300mm)を採取した。これら拡管試験材(鋼管)に、拡管試験材(鋼管)の内径より大きい各種外径を有するプラグを順次、プレスにより押し込み、亀裂が発生した時点のプラグ径を求め、次式
限界拡管率=[{(亀裂が発生したときのプラグ外径)−(試験材内径)}/(試験材内径)]×100(%)
で限界拡管率を算出した。
ついで、表2に示す特性を有する鋼管(素管)の両端面側に、表3に示す拡管率となるように、各種外径を有するプラグをプレスで押し込み、拡管加工を施し拡管加工部を形成した。なお、一部の鋼管では造管ままとした。拡管加工は、鋼管同士を突合せ溶接接合が可能なように、同一条件で少なくとも2本について行った。なお、拡管率は次(1)式
拡管率=[{(プラグ外径)−(素管内径)}/(素管内径)]×100(%) ‥‥(1)
(ここで、プラグ外径:拡管用工具(プラグ)の外径(mm)、素管内径:鋼管端面側の加工前内径(mm))
を用いて算出した。
得られた同一条件の鋼管の端部同士を突き合せて、GMAW溶接で溶接接合した。ついでさらに端面側拡管加工を含め、合計で20〜30%の拡管率となるように、拡管加工を施した後、水圧試験(圧力:100atm)を実施し、溶接継手部からの漏れの有無を確認した。
また、本発明の好適範囲を満足する本発明例は、降伏強さ:350MPa以上の強度を有し、限界拡管率が25%以上と、優れた拡管性を有する鋼管となっている。一方、本発明の好適範囲を外れる場合には、降伏強さが350MPa未満であるか、限界拡管率が低く拡管性が若干低下している。
Claims (7)
- 油井内に挿入された状態で拡管される油井用鋼管であって、
前記油井用鋼管が、質量%で、
C:0.10%以上0.35%以下、 Si:0.31%以下、
Mn:0.10〜3.50%、 P:0.07%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.05%以下、
Cr:2.0%以下、 W:1.0%以下
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、降伏強さ:350MPa以上、n値:0.08以上を有し、かつn値と均一伸びu-Elとが下記(2)式を満足する鋼管であり、
該油井用鋼管の端面側が拡管加工され、該拡管加工された部位の端面側に溶接用開先を有することを特徴とする拡管性に優れた油井用鋼管。
記
n>0.007×(25−u-El)‥‥‥(2)
(ここで、n:n値、u-El:均一伸び(%)) - 前記拡管加工の量が、下記(1)式で定義される拡管率で3%以上であることを特徴とする請求項1に記載の油井用鋼管。
記
拡管率=[{(プラグ外径)−(素管内径)}/(素管内径)]×100(%)‥‥(1)
ここで、プラグ外径:拡管用工具(プラグ)の外径(mm)
素管内径:鋼管端面部の加工前内径(mm) - 前記組成に加えてさらに、質量%で、下記A群〜D群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の油井用鋼管。
記
A群:Cu:3.5%以下、
B群:Ni:2.0%以下、
C群:Mo:2.0%以下、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.0005〜0.01% - 鋼管を素管として、
該素管が、質量%で、
C:0.10%以上0.35%以下、 Si:0.31%以下、
Mn:0.10〜3.50%、 P:0.07%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.05%以下、
Cr:2.0%以下、 W:1.0%以下
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼管であり、
該素管に、熱処理として、焼入れ処理および焼戻処理、または焼準処理および焼戻処理、あるいは焼戻処理を施したのち、前記素管の端面側に拡管加工を施し、ついで該拡管加工を施された部位の端面側に溶接用開先加工を施すことを特徴とし、降伏強さ:350MPa以上、n値:0.08以上を有し、かつn値と均一伸びu-Elとが下記(2)式を満足する拡管性に優れた油井用鋼管の製造方法。
記
n>0.007×(25−u-El)‥‥‥(2)
(ここで、n:n値、u-El:均一伸び(%)) - 前記焼戻処理が、Ac1変態点以上Ac3変態点以下の二相温度域に加熱する処理であることを特徴とする請求項4に記載の油井用鋼管の製造方法。
- 前記拡管加工の量が、下記(1)式で定義される拡管率で3%以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の油井用鋼管の製造方法。
記
拡管率=[{(プラグ外径)−(素管内径)}/(素管内径)]×100(%)‥‥(1)
ここで、プラグ外径:拡管用工具(プラグ)の外径(mm)
素管内径:鋼管端面部の加工前内径(mm) - 前記組成に加えてさらに、質量%で、下記A群〜D群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の油井用鋼管の製造方法。
記
A群:Cu:3.5%以下、
B群:Ni:2.0%以下、
C群:Mo:2.0%以下、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.0005〜0.01%
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JP2007334700A JP5061887B2 (ja) | 2007-12-26 | 2007-12-26 | 拡管性に優れた油井用鋼管およびその製造方法 |
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