JP6332432B2 - 造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法 - Google Patents

造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6332432B2
JP6332432B2 JP2016249086A JP2016249086A JP6332432B2 JP 6332432 B2 JP6332432 B2 JP 6332432B2 JP 2016249086 A JP2016249086 A JP 2016249086A JP 2016249086 A JP2016249086 A JP 2016249086A JP 6332432 B2 JP6332432 B2 JP 6332432B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pipe
roll
forming
open
steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016249086A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017124444A (ja
Inventor
勝 福村
勝 福村
岡部 能知
能知 岡部
広幸 城澤
広幸 城澤
井口 貴朗
貴朗 井口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Publication of JP2017124444A publication Critical patent/JP2017124444A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6332432B2 publication Critical patent/JP6332432B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Bending Of Plates, Rods, And Pipes (AREA)
  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、電縫鋼管の製造方法に関し、特に、油井用、自動車用、あるいは建築用などのうちで、ロール成形時の負荷が大きく成形そのものが困難で、かつ造管時に付加される加工歪によって管周方向の肉厚分布が不均一になりやすい、厚肉および高強度の熱延鋼板を素材とした造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法および造管歪が小さい電縫鋼管に関する。ここで、造管歪が小さいとは、熱延鋼板を管形状へ成形する過程で鋼管に加えられた歪が小さい、ということである。外径D、肉厚tの鋼管を製造する場合、理論上の成形歪量はt/Dとなる。従来のロール成形法では成形ロールへの巻き付き等により、一般的にt/Dの3倍以上の歪が発生しており、造管歪が小さい基準としては、目安としてt/Dの3倍よりも小さいことをいう。
電縫鋼管は、寸法精度が良好で表面肌が美麗であり、かつ生産性が高いという優れた特長を有しており、石油や天然ガスなどのラインパイプ用鋼管や自動車用の鋼管、建築用の鋼管等の幅広い用途に用いられている。近年では、従来に比べて高強度や厚肉の電縫鋼管が求められるようになり、電縫鋼管の素材となる熱延鋼板でも、従来よりも高強度な鋼板や厚肉の鋼板が開発され製造されつつある。ここで、厚肉とは前記熱延鋼板の板厚が12〜26mm、高強度とは前記熱延鋼板の引張強さが460MPa以上である場合をいう。
電縫鋼管は、図1に示すように、鋼板(鋼帯)を連続的に管形状にロール成形した後、鋼板(鋼帯)幅端部を溶接して製造される。電縫鋼管の製造設備は、通常、一つの成形ラインで、成形ロールの位置調整やロール交換を行うことにより、様々な外径や肉厚の鋼管を製造することが可能となっている。一つの成形ラインにおける鋼管の製造可能範囲は、厚肉側ではロールの成形力と駆動力により制約され、薄肉側では一般に縁波と呼ばれる鋼帯幅端部の座屈がロール成形中に発生することにより制限されている。
そこで、一つの成形ラインにおける管の製造可能範囲を拡大するため、様々な技術が開発されてきた。例えば、特許文献1には、粗、中間成形過程における帯状金属材料(半成形品)の内壁面内部から、その周方向における1点以上の位置で回転自在な内面ロールにより帯状金属材料進行方向に垂直な面内における材料の位置を規制することによって成形を行うことでエッジウェーブ(縁波)を防止することが開示されている。
また、特許文献2および3には、電縫鋼管成形ラインのフィンパススタンド群の前に、駆動ボトムロールと、上下方向に位置調整可能に設けられたトップロールと、このトップロールの両側に位置調整可能に設けられたインサイドロールと、コイルエッジ部の近くに作用する上下、左右方向に位置調整可能に設けられたアウトサイドロールとを、長手方向に複数段設け、前記駆動ボトムロールと前記トップロールにより十分な駆動力を得、前記インサイドロールと前記アウトサイドロールとの組合せにより薄肉材の腰折れを防止し、また、アウトサイドロールを長手方向に複数段配置することにより、エッジ伸びを防止することができて、薄肉材から厚肉材に亘り、フィンパススタンド前のオープンパイプ形状をフィンパスロールカリバーに近付けることができる電縫鋼管の成形装置が開示されている。
さらに、特許文献4には、CBR成形法を用いた溶接鋼管の製造方法において、最終のセンターベンド出側から第1フィンパスロール出側までの間で、両側部をケージロールで押されている素管の底部に近い両側部分を内面側から押えローラで肉厚方向に押すことにより、その間における素管の底部への曲げ応力の集中を緩和し、超薄肉、超高強度の帯板を小径に造管する場合でも、腰折れが生じず、フィンパスロール成形段階でエッジウェーブが生じることがない溶接鋼管の製造方法および装置が開示されている。
また、特許文献5には、開口部を有し、断面が管エッジ部、管側部、管底部およびそれらの境界部の各曲げ要素からなる縦長の小判型素管のフィンパスロール直前における断面形状または計画断面形状に関し、各曲げ要素領域の長さと帯板の幅との比、および各曲げ要素の曲げ半径と製品半径との比を適正範囲内に収めるように成形することを特徴の一つとするハイドロフォーミングに適した溶接管の製造方法が示されている。
さらに、フィンパスロール成形直前の小判型素管(オープン管)の断面形状に関しては、フィンパスロールの成形荷重を低減する厚肉電縫管の製造方法として、製造される円管の外周円の半径とオープン管の管底部近傍における円管の中心と外表面までの距離との関係が適正範囲となるように中間成形する製造方法が特許文献6に開示され、また、オープン管の外周の縦径と横径の比が適正範囲となるように中間成形する製造方法が特許文献7に開示されている。
特開昭56−66323号公報 特開平04−178221号公報 特開平04−178222号公報 特開2005−66679号公報 特開2000−343135号公報 特開2015−147226号公報 特開2015−167973号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜4に開示された方法は、薄肉材に発生する縁波の防止には有効であったが、厚肉および/または高強度の電縫鋼管を製造する場合に問題となるロールの成形力や駆動力の不足を解消するには不十分であった。特に、厚肉および/または高強度の熱延鋼板を用いて電縫鋼管を製造しようとする際には、ケージロール群による成形で、管断面全体にわたって一様な歪ないし曲率とすることは困難であった。前記ケージロール群による成形を施す場合、しばしば、電縫鋼管の管底部に相当する熱延鋼板の板幅の中央付近に曲げ歪が集中し、その他の領域では曲率が小さい中間成形形状となることが多かった。その結果、最終的には管周方向で加工硬化の度合いが不均一で、降伏応力が管周方向位置で異なり、また肉厚の変動が大きい鋼管製品になるという問題があった。
また、特許文献5に記載の溶接管の製造方法では、厚肉および/または高強度の熱延鋼板を素材とした鋼管の場合、図1に示すエッジ成形機3を適用した場合においても、特に管エッジ先端部が曲がりにくく、結果として、特許文献5で開示されている適正条件の一つ、例えば、(管エッジ部曲げ長さ)/(帯板幅)=0.2〜0.4,(管エッジ部曲げ半径)/(製品半径)=1.0〜1.4といった範囲内に収めることが困難となり、厚肉および/または高強度の電縫鋼管には適用できない場合があることがわかった。極端な場合、管エッジ部から板幅方向に板厚の3倍程度までの幅領域は、ほとんど平坦で、曲率半径が無限大に近くなり、上記の規定上限をはるかに超えた。
特許文献6および特許文献7は、本発明と対象とする鋼管が同じであるが、それぞれ以下の問題点があった。
特許文献6に記載された発明は、オープン管の底部に接する円管の中心位置に対し、円周方向角度0≦θ≦45°の領域で、断面形状を規定するものであり、その主旨から形状の対称性を考慮したとしても−45°≦θ≦45°のオープン管底部を含む円周方向に90°領域の形状のみを規定している。よって、特に曲がりにくいオープン管を形成する鋼帯の幅端部付近の形状がフィンパス成形時に及ぼす影響について考慮していない。そのため、オープン管を形成する鋼帯の幅端部付近の曲げ変形が小さい場合には、管底部付近での歪の増大が発生し易くなり、結果として肉厚の変動幅が所定肉厚の±2%の範囲を超えるという問題があった。
また、特許文献7に記載された発明は、フィンパスロール成形直前のオープン管の断面形状の縦径と横径の比率のみを規定するものでありフィンパス成形に対するオープン管の曲率分布や形状様式の影響については考慮されていない。そのため、オープン管の管底部で曲げ歪が集中して曲率が大きいか、もしくは、オープン管を形成する鋼帯の幅端部付近の曲げ変形が小さく曲率が小さいかのいずれか一方が顕著でありながら、縦径と横径という指標では、他方と相殺され、問題なしと判断される条件下でも、結果として成形後、局所的に歪が集中し、肉厚の変動幅が所定肉厚の±2%の範囲を超える場合があるという問題があった。
本発明の目的は、造管によって付加される加工歪が小さく、かつ管周方向の分布が一様な電縫鋼管を製造することであり、特にその実現が困難な厚肉および/または高強度の電縫鋼管の製造方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、フィンパスロール入り側の半成形品(オープン管)の断面形状とフィンパス成形後の管周方向の加工歪分布の間には相関があり、フィンパス成形後の加工歪量すなわち加工硬化量を低減し、かつ管周方向の加工歪分布を一様化できる最適なオープン管の断面形状が存在すること、および、フィンパス成形前のケージロールによる成形過程で前記オープン管の内面側の管底部近傍をロールで押圧する方法により、前記オープン管を最適な断面形状に成形できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の要旨からなる。
[1] 鋼帯をケージロール群により中間成形する中間成形工程と、フィンパスロール群により管状に仕上成形する仕上成形工程と、該仕上成形工程後に前記鋼帯の幅端部を電気抵抗溶接して管とする溶接工程と、を有する電縫鋼管の製造方法において、
前記仕上成形工程の最初の成形を施す上ロール、下ロールおよびサイドロールで構成される第1フィンパスロールの前記下ロールの中心軸を通りオープン管の進行方向と直交する断面に、前記第1フィンパスロールの入側での前記オープン管の進行方向と直交する前記オープン管の断面を、前記オープン管の底部の外表面と前記下ロールのカリバー底Cを一致させて投影した際に、前記オープン管を形成する鋼帯の幅端部の外表面側角部Aと前記上ロールのフィン基端部Bとを含む直線である圧下方向線と前記オープン管の外表面との距離の最大値Smと、前記圧下方向線と前記カリバー底Cとの距離Scと、の比R1(=Sc/Sm)が下記(1)式を満たすように前記オープン管を中間成形することを特徴とする造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法。
0.70 ≦ R1 ・・・・・ (1)
[2] 前記圧下方向線と前記オープン管の外表面との距離が最長となる前記圧下方向線上の点Fと前記カリバー底Cから前記圧下方向線へ下ろした垂線の足Eとの距離EFと、前記上ロールのフィン基端部Bから前記点Eまでの距離BEと、の比R2(=EF/BE)が下記(2)式を満たすように前記オープン管を中間成形することを特徴とする[1]に記載の造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法。
R2 ≦ 0.33 ・・・・・ (2)
[3] 前記オープン管を形成する鋼帯の対向する両幅端部におけるそれぞれの外表面の接線が交差してなす前記オープン管側の交差角Xが120°以上となるように前記オープン管を中間成形することを特徴とする[1]または[2]に記載の造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法。
[4] 前記電縫鋼管が、肉厚が12〜26mmの電縫鋼管であることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法。
[5] 前記電縫鋼管が、肉厚と外径の比が2〜20%の電縫鋼管であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法。
[6] 電気抵抗溶接による溶接部を有する電縫鋼管であって、前記電縫鋼管の肉厚の変動幅が、溶接部を上にしたときの管底部から−90°〜+90°の範囲で、所定の肉厚を基準として±2%の範囲にあることを特徴とする造管歪が小さい電縫鋼管。
[7] 前記肉厚が12〜26mmであることを特徴とする[6]に記載の造管歪が小さい電縫鋼管。
[8] 肉厚と外径の比が2〜20%であることを特徴とする[6]または[7]に記載の造管歪が小さい電縫鋼管。
[9] 前記電縫鋼管を形成する鋼帯が、引張強さが460MPa以上の熱延鋼板であることを特徴とする[6]ないし[8]のいずれかに記載の造管歪が小さい電縫鋼管。
本発明により、鋼管成形による素材(鋼板)の加工硬化の度合いを表す相当塑性歪のピーク値を従来比で3%程度低減し、管周方向の加工歪分布の均一性を向上させた厚肉および/または高強度の電縫鋼管を製造することができる。
これにより、鋼管の成形が安定するとともに、鋼管製品としての加工性も向上する。
電縫鋼管製造ラインの1例を示す模式図である。 本発明の1実施形態を示す模式図である。 フィンパスロール成形前のオープン管の進行方向と直交する該オープン管の断面形状を示す模式図である。 オープン管の底部の外表面と第1フィンパスロールの下ロールのカリバー底Cを一致させて投影した模式図である。 第1フィンパスロールによる成形過程における、オープン管の外表面とサイドロールのカリバー面との接触状況を示す模式図である。 図4にオープン管を形成する鋼帯の幅端部に作用する圧下方向線と該圧下方向線からオープン管の外表面までの距離S(Y)を併記した模式図である。 第1フィンパスロールによる成形過程における、オープン管の外表面と下ロールのカリバー面との接触状況を示す模式図である。 R1とR2の異なる比較例と本発明例のオープン管の断面形状を模式的に示す図である。 第1フィンパスロール成形後の管断面における相当塑性歪の管周方向分布と第1フィンパスロール入側でのオープン管の断面形状との関係を示す図である。 溶接工程後の鋼管の進行方向と直交する断面における相当塑性歪の管周方向の分布を示すグラフである。 溶接工程後の鋼管の進行方向と直交する鋼管の断面における板厚歪の管周方向の分布を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、電縫鋼管の製造設備の一例である。電縫鋼管の素材である鋼帯は、ケージロール群4で中間成形されてオープン管とされた後、フィンパスロール群5で仕上成形される。仕上成形の後は、前記鋼帯の幅端部を電気抵抗溶接して、電縫鋼管とされる。ここで、鋼帯は、炭素鋼の熱延鋼板を例とすることが出来る。
本発明に係るケージロール群4は図2に示すように3つのゾーンに分かれており、そのうちの最下流ゾーン(#3ゾーン)には、インナーロールが備えられている。
従来のケージロール群、すなわちインナーロールを具備していないケージロール群による中間成形では、仕上成形直前(第1フィンパスロールの入側)の半成形品(以下、オープン管という)の進行方向と直交する該オープン管の断面は、図3に示すような縦長の形状となる。図4は、第1フィンパスロールの成形ロール(上ロール、下ロール、サイドロール)のうちの、前記下ロールの中心軸を通りオープン管の進行方向と直交する第1フィンパスロールの断面に、前記第1フィンパスロールの入側でのオープン管の進行方向と直交する前記オープン管の断面を、前記オープン管の底部の外表面と前記下ロールのカリバー底Cを一致させて投影した図である。ここで、図4(a)は、前記オープン管が従来の方法で中間成形され、前記オープン管の断面が縦長の形状となった場合の例を示す図であり、図4(b)は、図2に示したインナーロールを使用し、前記オープン管を本発明法の条件を満たす断面形状に中間成形した場合の例を示す図である。
第1フィンパスロールにおいては、上ロールと接触するオープン管を形成する鋼帯の幅端部の外表面側角部Aと下ロールと接触する前記オープン管の底部の外表面とを作用点とした圧下曲げ変形により、オープン管の断面形状が図4に示した形状から、前記下ロールの中心軸を通りオープン管の進行方向と直行する断面における上ロール、下ロール、サイドロールのカリバー面で形成される孔型の形状とほぼ類似の図7に示すような形状に成形される。
そこで、図4(a)または図4(b)のそれぞれの場合について、前記オープン管の外周面と第1フィンパスロール成形中の前記成形ロールのカリバー面との接触状況、および仕上成形後の鋼管の管周方向の歪分布などに及ぼす影響を調べた。その結果を図5(a)と図5(b)に示す。図5(a)、(b)は第1フィンパスロールによる成形過程における、オープン管の外表面とサイドロールのカリバー面との接触状況を示す図であり、後述する図7(a)、(b)におけるオープン管の外表面とサイドロールのカリバー面との接触部位を拡大した図である。
図4(a)に示すように、前記オープン管の断面の形状が極端な縦長になっている場合、すなわち、第1フィンパスロールによる成形において前記オープン管に対する前記下ロールと前記上ロールによる圧下量が大きい場合、前記オープン管の外表面と前記下ロールのカリバー面とが一様に接触せず、接触部と非接触部の境界付近に曲げ変形による加工歪が集中して発生するため、加工歪の管周方向の分布が不均一になる。その結果、電縫鋼管の管周方向の肉厚が変動してしまう。さらに、前記オープン管の外表面とロールのカリバー面との局所的な接触は、図5(a)に示すように、前記オープン管の外表面とサイドロールのカリバー面との間でも発生し、その場合はオープン管を形成する鋼帯の変形は管周方向で一層不均一になり、製造された電縫鋼管の管周方向の肉厚の変動と加工歪分布も、より不均一になることがある。
上述のような問題の発生を防止するためには、第1フィンパスロールでの成形において、図5(b)に示すように、オープン管の外表面と下ロールのカリバー面とが下ロールのカリバー底Cを始点として接触部分を拡大していく形態で、前記オープン管を形成する鋼帯が上ロールと前記下ロールによる圧下によって曲げ成形加工されることが好ましい。
そこで、第1フィンパスロールの入側でのオープン管の進行方向と直交する該オープン管の断面の形状が前記曲げ成形加工の成形形態に及ぼす影響について調べた。図6は、下ロールの中心軸を含むオープン管の進行方向と直交する第1フィンパスロールの断面に、前記第1フィンパスロールの入側での前記オープン管の進行方向と直交する前記オープン管の断面を、前記オープン管の底部の外表面と前記下ロールのカリバー底Cを一致させて投影した図であり、オープン管を形成する鋼帯の幅端部が第1フィンパスロールによる成形で変位する方向を示す該幅端部の外表面側角部Aと第1フィンパスロールのフィン基端部Bを結ぶ直線である圧下方向線と、該圧下方向線上で前記フィン基端部Bから距離Yの位置における前記圧下方向線から前記オープン管の外表面までの距離S(Y)および距離S(Y)の最大値Smと、を併記している。
距離S(Y)の長さと、オープン管を形成する鋼帯の幅端部と下ロールのカリバー底Cを作用点とする圧下により曲げ加工力が加えられた場合の前記鋼帯の張出し変形形態と、は相関があり、距離S(Y)が最大となる前記鋼帯の位置Dで曲げモーメントが最大となり、前記張出し変形が始まる。圧下方向線からの距離が最大となるオープン管の外表面の位置Dが下ロールのカリバー底Cから離れた図6(a)の場合、図7(a)に示すように、フィンパスロールによる成形過程において曲げモーメントが最大となる位置Dが最初にフィンパスロールのカリバー面に接触し、カリバー底Cと位置Dとの間の位置で前記オープン管の外表面と前記下ロールのカリバー面との間に隙間が生じる。一方、位置Dが下ロールのカリバー底Cに一致する図6(b)の場合、図7(b)に示すように、オープン管の外表面と下ロールのカリバー面とが前記下ロールのカリバー底Cを始点として接触部分を拡大していく形態で変形が進み、前記オープン管の外表面と前記下ロールのカリバー面との間に隙間は発生しない。
したがって、第1フィンパスロールの成形ロール(上ロール、下ロール、サイドロール)のうち、前記下ロールの中心軸を含むオープン管の進行方向と直交する前記第1フィンパスロールの断面に、前記第1フィンパスロールの入側での前記オープン管の進行方向と直交する前記オープン管の断面を、前記オープン管の底部の外表面と前記下ロールのカリバー底Cを一致させて投影した際に、前記オープン管を形成する鋼帯の幅端部の外表面側角部Aと前記第1フィンパスロールのフィン基端部Bを含む直線(圧下方向線)から前記オープン管の外表面までの距離S(Y)が最大となる前記オープン管の外表面の位置Dが、前記下ロールのカリバー底Cに合致することが望ましく、少なくとも位置Dとカリバー底Cが下記の条件を満足するように中間成形する。
すなわち、前記圧下方向線から前記オープン管の外表面との距離の最大値をSm、前記圧下方向線と下ロールのカリバー底Cとの距離をScとするとき、Smに対するScの比R1(=Sc/Sm)が下記(1)式を満たすように前記オープン管を中間成形する。
0.70 ≦ R1 ・・・・・ (1)
位置Dとカリバー底Cとの位置関係はR1で決まり、R1=1のとき、曲げモーメントが最大となる位置Dがカリバー底Cに合致し、R1が1より小さくなると、位置Dがカリバー底Cから離れることを意味する。フィンパスロールによる成形では、曲げモーメントが最大となる位置Dで開始する前記オープン管を形成する鋼帯の張出し変形によって、位置D付近の前記オープン管の外表面が優先的にロールのカリバー面に接近・接触する。R1が0.70未満では、カリバー底Cと位置Dの間で前記オープン管の外表面とロールのカリバー面との間に隙間が発生し、結果的に位置D付近でロールのカリバー面と接触する位置において前記オープン管を形成する前記鋼帯に加わる加工歪が高くなるため、R1の下限値を0.70に限定した。なお、R1の上限値は、上記の定義から、必然的に位置Dがカリバー底Cに合致した際の1となり、R1の値が上限値の1に近いことが成形後の加工歪の管周方向分布を均一にするために好ましい。
また、前記距離Smが得られる前記圧下方向線上の点をF、前記距離Scが得られる前記圧下方向線上の点をEとするとき、距離BEに対する距離EFの比R2(=EF/BE)が下記(2)式を満たすように前記オープン管を中間成形することが好ましい。
R2 ≦ 0.33 ・・・・・ (2)
R2もR1と同様に位置Dとカリバー底Cとの位置関係を決める変数であり、R2=0のとき、曲げモーメントが最大となる位置Dがカリバー底Cと一致し、R2が0から大きくなるにつれ、位置Dがカリバー底Cから離れることを意味する。上述したように、フィンパスロールによる成形では、曲げモーメントが最大となる位置Dで開始する前記オープン管を形成する鋼帯の張出し成形によって、位置Dが優先的にロールのカリバー面に接近・接触する。この際に、R2が0.33超えの場合、カリバー底Cと位置Dの間で前記オープン管の外表面とロールのカリバー面との間に隙間が発生し、結果的に位置D付近でロールのカリバー面と接触する位置において前記オープン管を形成する前記鋼帯に加わる加工歪が高くなるため、R2の上限値を0.33に限定した。なお、R2の下限値は、前述の曲げモーメントが最大となる位置Dがカリバー底Cと一致した際の0となる。R2の値は0に近い方が成形後の加工歪の管周方向分布を均一にするためにより好ましい。
さらに、フィンパスロール入側でのオープン管を形成する鋼帯の対向する両幅端部におけるそれぞれの外表面の接線が交差してなす前記オープン管側の交差角Xが120°以上となるように前記オープン管を中間成形することが好ましい。
前記交差角Xが120°を下回り、より鋭角になれば、フィンパスロール群による仕上成形において、上ロールからの圧下が強まる影響で、管底部付近での加工歪が高くなり、仕上成形後の鋼管の管周方向の加工歪分布と肉厚変動が不均一になる傾向となる。なお、交差角Xの上限値については、フィンパスロールの成形ロールの形状にも依存するため、一義的に決定できないが、交差角Xが150°を超えた場合、オープン管を形成する鋼帯の対向する両幅端部を突合せ溶接する際に両幅端部の外表面が管の内側に入り込むという問題が発生することがあったため、より好ましい交差角Xの上限値は150°以下である。
上記のような条件を満たすオープン管の形状は、図2に示すように、ケージロール群による中間成形工程で、鋼帯の両側幅端部付近を外面側から押圧するケージロールと、成形中の鋼帯の内壁面側からその周方向における2点以上の位置を押圧するインナーロールとを用いて、鋼帯の材料進行方向に垂直な面内における位置を拘束することにより、実現できる。すなわち、前記オープン管の形状を上述の条件を満たすように成形するためには、図2に示すように、ケージロール群の最下流ゾーン(#3ゾーン)の1対のケージロール間で鋼帯の半成形品内壁面側からその周方向における2点以上の位置を押圧するインナーロールを用いて、前記1対のケージロールと前記インナーロールによって前記鋼帯の材料進行方向に垂直な面内における位置を拘束することが好ましい。
さらに、製造する電縫鋼管が、肉厚が12〜26mmおよび/または肉厚と外径の比が2〜20%の電縫鋼管であることが好ましい。肉厚が12mm未満および/または肉厚と外径の比が2%未満の場合には、従来方法でもフィンパスロールの成形荷重が低いことに加えて、前記インナーロールの押圧で鋼帯が腰折れするなどの極端な変形が懸念される。なお、肉厚が26mm超えおよび/または肉厚と外径の比が20%超えになると加工が著しく困難になるので、設備上の制約も多く、またコスト面でも不利になるため上限とした。
また、成形する鋼帯の強度が低い場合は、インナーロールの押圧で管内面に凹みが生ずる恐れがあるため、成形する鋼帯の引張強さは460MPa以上であることが好ましい。
なお、上記の説明は、フィンパスロール群5の最初の成形ロール(下側ロール、サイドロール、上側ロール)を用いて説明したが、これはフィンパスロール群5の最初の成形ロールの効果が大きいからで、フィンパスロール群5の第2番目以降の成形ロールについても、同様の効果が得られる。したがって、最初の成形ロールに限定されるものではない。
次に、管の肉厚については、例えば一般構造用炭素鋼鋼管のJIS規格では、サイズによる詳細規定が定められているものの、概ね±12.5〜10%程度を目安とする公差が許容されている。実際の製造においては、コイル原板の厚さが重要であるが、加えてコイル幅の設定により、最終管製品の管周長との比率である縮径率に応じて、通常は平均的な肉厚増加を制御することができる。ただし、肉厚増加は、オープン管を形成する鋼帯の幅端部の突き合わせ溶接部の付近が増肉するように加工されることが通常である。
これまで、オープン管の外表面と成形ロールのカリバー面との間の隙間や接触位置によって発生する局所的な加工歪について述べたが、体積一定の塑性変形であれば、管周方向の加工歪分布の不均一は、管周方向の肉厚分布の不均一を誘起する。このような、局所的な肉厚分布の不均一がある場合、コイル幅を再調整して製造し直すなどのコストの増大を招く場合がある。また、管周方向に局所的に肉厚が薄い箇所がある場合、管を使用中に応力や変形の集中を誘起することが想定される。よって、管周方向の肉厚分布はより均一であることが望ましく、本発明法を適用すれば、肉厚の変動幅が、溶接部を上にしたときの管底部から−90°〜+90°の範囲で、所定の肉厚を基準として±2%の範囲にあることが可能となる。
ここで、管底部から−90°〜+90°の範囲としたのは、その他の領域、すなわち突き合わせ溶接部に近い側の管半周分においては、上述のように、オープン管を形成する鋼帯の幅端部を突き合わせ溶接した溶接部の付近を増肉させることによる影響によって、増肉傾向が現れるため、管底部側の半周分の領域に限定した。
本発明で得られる電縫鋼管は、グレードがAPI規格X80級をはじめとする様々な強度レベルの電縫鋼管である。X80級より強度レベルが低い場合はいうまでもなく、また強度レベルが高い電縫鋼管であっても、設備能力上成形が可能であれば、本発明の適用が可能である。目的とするグレードに合わせて、素材となる鋼帯を適宜選択すればよい。API規格X80級の電縫鋼管の場合、鋼帯の化学組成の一例を挙げれば、質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜2.2%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.001〜0.05%であり、残部は鉄および不可避的不純物からなるものである。
ここで、上記の好ましい組成限定理由を簡単に説明する。
Cは、鋼の強度を向上させる作用を有する元素であり、所望の強度レベルを得るために、Cの含有量が0.01%以上であることが必要となる。一方、Cの含有量が0.12%を超えると、炭素当量の増加により溶接性が劣化するなどの悪影響がある。このため、Cの含有量を0.01〜0.12%の範囲に限定した。なお、より好ましくは0.02〜0.08%である。
Siは、固溶強化、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を向上する作用を有する。このような効果を得るためにはSiを0.01%以上含有することが必要である。一方、Siは、電縫溶接時にSiを含有する酸化物を形成し、溶接部の品質を低下させるとともに、溶接熱影響部の靭性を低下させるため、Siはできるだけ低減することが望ましいが、1.0%までは許容できる。このようなことから、Siの含有量を0.01〜1.0%に限定した。より好ましくは0.5%以下である。
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させる作用を有し、鋼板の強度を向上する。また、Mnは、MnSを形成しSを固定することにより、Sの粒界偏析を防止してスラブ割れを抑制する。このような効果を得るためには、Mnを0.5%以上含有することが必要となる。一方、Mnの含有量が1.8%を超えると、スラブ鋳造時の凝固偏析を助長し、鋼板にMn濃化部を生じさせ、その結果セパレーションの発生を増加させる。このMn濃化部を消失させるには、1300℃を超える温度にスラブを加熱する必要があり、このような熱処理を工業的規模で実施することは現実的ではない。このため、Mnの含有量を0.5〜2.2%の範囲に限定した。なお、より好ましくは0.9〜1.7%である。
Pは、鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、鋼の強度を上昇させる作用を有する。しかし、0.03%を超えて過剰に含有すると溶接性が低下する。このため、Pの含有量を0.03%以下に限定した。なお、より好ましくは0.02%以下である。
Sは、Pと同様に鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、Sを、0.005%を超えて過剰に含有すると、スラブ割れを生起させるとともに、熱延鋼板においては粗大なMnSを形成し、延性の低下を生じさせる。このため、Sの含有量を0.005%以下に限定した。なお、より好ましくは0.004%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、Alを0.005%以上含有することが望ましい。一方、Alの含有量が0.10%を超えると、電縫溶接時の溶接部の清浄性を著しく損なう。このため、Alの含有量を0.005〜0.10%に限定した。なお、より好ましくは0.005〜0.08%である。
Nbは、オーステナイト粒の粗大化、再結晶を抑制する作用を有する元素であり、熱間仕上圧延において、オーステナイト未再結晶温度域での圧延を可能にする。また、炭窒化物として微細析出することにより、溶接性を損なうことなく、少ない含有量で熱延鋼板を高強度化する作用を有する。このような効果を得るためには、Nbの含有量が0.01%以上であることを必要とする。一方、Nbの含有量が0.10%を超えると、熱間仕上圧延中の圧延荷重の増大をもたらし、熱間圧延が困難となる場合がある。このため、Nbの含有量を0.01〜0.10%の範囲に限定した。なお、より好ましくは0.03〜0.09%である。
Tiは、窒化物を形成しNを固定しスラブ割れを防止する作用を有する。また、炭化物として微細析出することにより、鋼板を高強度化させる。このような効果は、Tiの含有量が0.001%以上で顕著となるが、一方でTiの含有量が0.05%を超えると、析出強化により降伏点が著しく上昇する。このため、Tiの含有量を0.001〜0.05%の範囲に限定した。なお、より好ましくは0.005〜0.035%である。
以上が基本的な組成であるが、前記組成に加えて、鋼帯の強度を向上させるために、V:0.01〜0.10%、Mo:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%の中の1種または2種以上を含んでいてもよい。
Vは、焼入性を向上させるとともに、炭窒化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果は0.01%以上含有することで顕著となる。一方、含有量が0.10%を超えると、溶接性を劣化させる。このため、Vの含有量を0.01〜0.10%とすることが好ましい。なお、さらに好ましくは0.03〜0.08%である。
Moは、焼入性を向上させるとともに、炭窒化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果は0.01%以上含有することで顕著となる。一方、0.50%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Moの含有量を0.01〜0.50%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.30%である。
Crは、焼入性を向上させ、鋼板の強度を向上する作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上含有することで顕著となる。一方、含有量が1.0%を超えると、電縫溶接時に溶接欠陥を多発させる傾向となる。このため、Crの含有量を0.01〜1.0%に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは0.01〜0.80%である。
Cuは、焼入れ性を向上させるとともに、固溶強化あるいは析出強化により鋼板の強度を向上する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、含有量が0.50%を超えると熱間加工性を低下させる。このため、Cuの含有量を0.01〜0.50%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.10〜0.40%である。
Niは、焼入性を向上させ、鋼の強度を向上するとともに、鋼板の靭性をも向上する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.50%を超えて含有しても、その効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Niの含有量を0.01〜0.50%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.10〜0.45%である。
前記組成に加えて、さらにCa:0.0005〜0.005%、B:0.001%以下、REM:0.0005〜0.005%の中の1種または2種以上を含有してもよい。
Caは、SをCaSとして固定し、硫化物系介在物を球状化し、介在物の形態を制御する作用を有する元素である。また、介在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくし、水素のトラップ能を低下させる。このような効果を得るためには、Caを0.0005%以上含有させることが望ましいが、0.005%を超えて含有すると、CaOの増加を招き、耐食性、靭性を低下させる。このため、Caを含有する場合には、0.0005〜0.005%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0009〜0.003%である。
Bは、少量の含有で焼入れ性を顕著に向上させ、鋼板強度の増加に寄与する。このような効果は0.0003%以上の含有で顕著となるが、0.001%を超えて含有させても効果が飽和する。このようなことから、Bを含有する場合には0.001%以下に限定することが好ましい。
REMは、展伸した粗大な硫化物を球状の硫化物とする硫化物の形態制御に寄与する元素である。このような効果を得るためには、REMを0.0005%以上含有することが望ましいが、0.005%を超えて多量に含有すると、鋼板の清浄度を低下させる。そのため、REMは0.0005〜0.005%に限定することが好ましい。
熱延鋼板の製造は、API規格X80級レベルの鋼帯が得られるのであれば、特に限定されない。一例を挙げれば、上記した組成の鋼素材を、好ましくは1100〜1300℃に加熱する。加熱温度が1100℃未満では、変形抵抗が高く圧延負荷が増大し圧延能率が低下する。一方、加熱温度が1300℃を超えて高温になると、結晶粒が粗大して低温靭性が低下するうえ、スケール生成量が増大し表面性状が低下する恐れがある。このため、熱間圧延における加熱温度は1100〜1300℃とすることが好ましい。
ついで、加熱された鋼素材に熱間圧延を施す。
熱間圧延は、粗圧延と仕上げ圧延からなる圧延とする。粗圧延の条件はとくに限定する必要はなく、所定寸法形状のシートバーとすることができればよいが、粗圧延されたのちの仕上げ圧延では、未再結晶温度域での熱間圧延率を20%以上、仕上げ圧延終了温度:750℃以上に調整することが好ましい。また圧延機への負荷の観点から熱間圧下率は95%以下とすることが好ましい。
仕上げ圧延後の冷却は、必要に応じて適切な手段を用いることが出来る。
巻取温度は、400〜580℃であればよい。巻取温度が580℃を超えると、Ti、Nbの炭窒化物の析出が促進され、鋼板の強度が高くなりすぎる可能性がある。一方で、400℃を下回るとTi、Nb炭窒化物の析出が不十分で、X80級以上の強度を得られなくなる場合がある。このため、巻取温度は400〜580℃の範囲に限定した。好ましくは460〜550℃である。
なお、上記の成分範囲、製造方法は、API規格X80級グレードの例であるが、目的とするグレードに合わせて、成分範囲、製造方法を適宜選択、調整できることは言うまでもない。
低炭素低合金鋼の鋼帯を素材として、強度レベルがAPI規格X56級で、外径600mm、肉厚25.4mmの電縫鋼管を、インナーロールの適用条件を調整することで、第1フィンパスロール入側のオープン管の断面形状を図8に示す3通りの形状として製造した。断面1はR1=0.44、R2=0.36、X=115.7°の比較例1、断面2はR1=0.69、R2=0.34、X=111.7°の比較例2、断面3はR1=0.86、R2=0.28、X=122.2°の本発明例である。これらの各鋼管について、製造過程における変形挙動を有限要素法を用いた成形計算により第1フィンパスロールによる成形後の相当塑性歪とスクイズロール成形後の相当塑性歪、および電縫溶接後の鋼管を形成する鋼帯の板厚歪を算出し、それぞれの管周方向分布を求めた。なお、前記相当塑性歪は、変形様式にかかわらず、塑性変形による加工硬化後の降伏応力(相当応力)を被加工材の真応力―真歪曲線を用いて求めるための指標となる塑性歪である。
第1フィンパスロールによる成形後の相当塑性歪の管周方向分布を図9に示す。第1フィンパスの下ロールと接触する管底部からの管断面周方向距離が0〜250mmの間で、断面1(比較例1、R1=0.44、R2=0.36、X=115.7°)の場合の相当塑性歪はピーク値が5%程度と大きく、管周方向分布が最も不均一であった。これに対し、断面3(本発明例、R1=0.86、R2=0.28、X=122.2°)では相当塑性歪のピーク値が2.5%(0.025)と小さく、断面1、断面2(比較例2、R1=0.69、R2=0.34、X=111.7°)の場合に比べ相当塑性歪の管周方向分布も均一であった。
次に、スクイズロール成形後の相当塑性歪の管周方向分布を図10に示す。図10に示すように、断面3(本発明例、R1=0.86、R2=0.28、X=122.2°)の場合の相当塑性歪が管周方向位置の全般にわたって相対的に小さく、当該領域にわたる相当塑性歪の平均値を用いて比較すると、断面1、2の場合に比べ0.8〜0.9%(0.008〜0.009)小さいことが確認できた。また、本発明例の相当塑性歪のピーク値は0.038であって、製造した電縫鋼管のt(肉厚)/D(外径)=0.04より小さく、造管歪が小さいことを確認できた。
さらに、仕上成形工程が完了し、鋼帯の幅端部を溶接した後の電縫鋼管を形成する鋼帯の板厚歪(Thickness strain)の管周方向分布においても、図11に示すように、断面3(本発明例)として製造した電縫鋼管を形成する鋼帯の板厚歪の管周方向分布が他の断面(比較例1、2)の場合に比べて、より一様となり、管底から周方向に±90°の範囲での板厚歪の変化量(板厚の変化率に相当)が±0.6%以内であった。
また、本発明の製造方法で、強度レベルがAPI規格X56〜X80級で、外径219〜610mm、肉厚12〜26mmの電縫鋼管を製造し、それぞれの鋼管について管周方向の各位置における肉厚、および管周方向の各位置から切り出した引張試験片を用いて管周方向各位置における降伏応力を測定し、造管による肉厚の変化率すなわち電縫鋼管を形成する鋼帯の板厚歪の変化量と降伏応力の上昇量すなわち加工硬化の大きさを評価した。その結果、肉厚が12〜26mmであり、肉厚と外径の比が2〜20%の範囲内であれば、肉厚の変化率は、管底部から周方向に±90°の範囲で、±1%の範囲にあり、降伏応力の上昇量は、素材の強度に応じて異なるが、一例として、API規格X65の場合、管底部で48.5MPa(相当塑性歪3.3%の加工硬化量に相当)、管底部から±90°の位置で30.3MPa(相当塑性歪1.9%の加工硬化量に相当)であることを確認した。
1 アンコイラ
2 レベラ
3 エッジ成形機
4 中間成形機(ケージロール群)
5 仕上成形機(フィンパスロール群)
6 加熱装置
7 スクイズロール
8 ビード切削機
9 サイザー
20 鋼帯
30 電縫鋼管
A オープン管の鋼帯幅端部の外表面側角部
B フィンパスロールのフィン基端部
C フィンパスロールの下ロールのカリバー底
D 圧下方向線からの距離が最大となるオープン管の外表面の位置

Claims (3)

  1. 鋼帯を、インナーロールを備えたケージロール群により中間成形する中間成形工程と、
    フィンパスロール群により管状に仕上成形する仕上成形工程と、
    該仕上成形工程後に前記鋼帯の幅端部を電気抵抗溶接して管とする溶接工程と、
    を有する電縫鋼管の製造方法において、
    前記仕上成形工程の最初の成形を施す上ロール、下ロールおよびサイドロールで構成される第1フィンパスロールの前記下ロールの中心軸を通りオープン管の進行方向と直交する断面に、前記第1フィンパスロールの入側での前記オープン管の進行方向と直交する前記オープン管の断面を、前記オープン管の底部の外表面と前記下ロールのカリバー底Cを一致させて投影した際に、
    前記オープン管を形成する鋼帯の幅端部の外表面側角部Aと前記上ロールのフィン基端部Bとを含む直線である圧下方向線と前記オープン管の外表面との距離の最大値Smと、前記圧下方向線と前記カリバー底Cとの距離Scと、の比R1(=Sc/Sm)が下記(1)式を満たし、かつ前記圧下方向線と前記オープン管の外表面との距離が最長となる前記圧下方向線上の点Fと前記カリバー底Cから前記圧下方向線へ下ろした垂線の足Eとの距離EFと、前記上ロールのフィン基端部Bから前記点Eまでの距離BEと、の比R2(=EF/BE)が下記(2)式を満たし、かつ前記オープン管を形成する鋼帯の対向する両幅端部におけるそれぞれの外表面の接線が交差してなす前記オープン管側の交差角Xが120°以上となるように、前記中間成形工程で、前記鋼帯の両側幅端部付近を外面側から押圧するケージロールと、成形中の前記鋼帯の内壁面側からその周方向における2点以上の位置を押圧する前記インナーロールとを用いて、前記鋼帯の材料進行方向に垂直な面内における位置を拘束するように前記オープン管を中間成形することを特徴とする造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法。
    0.70 ≦ R1 ・・・・・ (1)
    R2 ≦ 0.33 ・・・・・ (2)
  2. 前記電縫鋼管が、肉厚が12〜26mmの電縫鋼管であることを特徴とする請求項1に記載の造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法。
  3. 前記電縫鋼管が、肉厚と外径の比が2〜20%の電縫鋼管であることを特徴とする請求項1または2に記載の造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法。
JP2016249086A 2015-12-24 2016-12-22 造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法 Active JP6332432B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015250967 2015-12-24
JP2015250967 2015-12-24

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017124444A JP2017124444A (ja) 2017-07-20
JP6332432B2 true JP6332432B2 (ja) 2018-05-30

Family

ID=59363653

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016249086A Active JP6332432B2 (ja) 2015-12-24 2016-12-22 造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6332432B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103907988B (zh) * 2014-04-14 2016-04-20 湖北工业大学 一种富硒发芽米南瓜饮料及其制备方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111553035B (zh) * 2020-04-30 2023-08-08 日照钢铁控股集团有限公司 一种热基镀锌方管制管下料开口度设计方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59166321A (ja) * 1983-03-11 1984-09-19 Nippon Kokan Kk <Nkk> 電縫管の成形方法
JP4687498B2 (ja) * 2006-02-21 2011-05-25 住友金属工業株式会社 熱間電気抵抗溶接鋼管の製造方法
JP6007777B2 (ja) * 2012-12-18 2016-10-12 新日鐵住金株式会社 電縫鋼管の製造方法
JP2015147226A (ja) * 2014-02-05 2015-08-20 Jfeスチール株式会社 厚肉電縫管の製造方法
JP6090212B2 (ja) * 2014-03-07 2017-03-08 Jfeスチール株式会社 厚肉電縫管の製造方法
JP6222126B2 (ja) * 2015-01-30 2017-11-01 Jfeスチール株式会社 電縫鋼管およびその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103907988B (zh) * 2014-04-14 2016-04-20 湖北工业大学 一种富硒发芽米南瓜饮料及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017124444A (ja) 2017-07-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN113677448B (zh) 方形钢管及其制造方法以及建筑构造物
JP4442541B2 (ja) ラインパイプ向け低yr電縫鋼管の製造方法
TWI700136B (zh) 方鋼管的製造方法及方鋼管
JP6813140B1 (ja) 角形鋼管およびその製造方法、並びに建築構造物
JP6332432B2 (ja) 造管歪が小さい電縫鋼管の製造方法
JP2022033802A (ja) 角形鋼管および建築構造物
JP5732999B2 (ja) 高強度電縫鋼管およびその製造方法
CN113453816B (zh) 方形钢管及其制造方法以及建筑构造物
JP6658385B2 (ja) 鋼管の製造方法
TWI795923B (zh) 方形鋼管及其製造方法以及建築結構物
JP6222126B2 (ja) 電縫鋼管およびその製造方法
JP2018047506A (ja) 電縫鋼管およびその製造方法
JP7078029B2 (ja) 電縫鋼管およびその製造方法
JP2003286544A (ja) ハイドロフォーム加工性に優れた薄肉鋼管とその製造方法
JP6090212B2 (ja) 厚肉電縫管の製造方法
JP6984785B2 (ja) 角形鋼管およびその製造方法並びに建築構造物
JP7375946B2 (ja) 角形鋼管およびその製造方法ならびに建築構造物
JP6252454B2 (ja) 高強度厚肉電縫鋼管の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170721

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180123

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180307

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180403

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180416

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6332432

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250