JP7077609B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコン単結晶の製造方法に関する。
従来、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する単結晶引き上げシステムにおいて、チャンバの圧力を制御する方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1の方法は、シリコン単結晶の引き上げ中に、チャンバを排気する真空ポンプの回転数をインバータによって調整することによって、チャンバの圧力を制御する。
特許文献2の方法は、排気配管の途中にバタフライバルブをコンダクタンスバルブとして設け、当該バタフライバルブの開度を調整することによって、チャンバの圧力を制御する。
特開平9-221381号公報 特公平7-77994号公報
しかしながら、特許文献1の方法のように、インバータによる真空ポンプの回転数の制御のみでは、特許文献2のようなバタフライバルブを用いる方法と比べて、圧力制御の応答性が悪くなる可能性がある。また、特許文献1の方法では、真空ポンプがクリーンルームの床下に配置されているため、クリーンルームのフットプリントが大きくなり、ユーティリティコストが増大する可能性がある。
一方、特許文献2のような方法では、バタフライバルブをクリーンルームの床下に配置すれば、真空ポンプをクリーンルームの床下に配置しなくても圧力制御の応答性を確保できるため、クリーンルームのフットプリントの増加を抑制でき、ユーティリティコストの増大も抑制できる。
しかしながら、特許文献2のような方法では、n型ドーパント(例えば、アンチモン、砒素、赤リン)を添加したシリコン単結晶を製造する場合、以下のような問題が生じる可能性がある。
n型ドーパントの沸点はシリコンの融点よりも低いため、融液中のドーパントがチャンバ雰囲気中へ蒸発してしまい、シリコン単結晶の抵抗率が所望の値よりも高くなってしまうおそれがある。このような不具合を抑制するために、n型ドーパントを添加したシリコン単結晶の育成時には、チャンバの圧力を高めることが一般的に行われている。このような圧力制御を特許文献2のような方法で行う場合、バタフライバルブの開度を小さくし、バタフライバルブの外縁と排気配管の内壁との隙間を小さくする。
しかし、チャンバの圧力を高めると、排気配管の内部における雰囲気中の蒸発物濃度が高くなり、ドーパントやSiOあるいはSiOなどの蒸発物が、当該バタフライバルブと排気配管との間の小さな隙間に堆積物として堆積するおそれがある。そして、この堆積物がバタフライバルブと排気配管とに固着すると、バタフライバルブを回転させることができず、チャンバの圧力を制御できなくなってしまう。
本発明の目的は、ユーティリティコストを抑制しつつ、応答性よくかつ適切にチャンバの圧力を制御可能なシリコン単結晶の製造方法を提供することにある。
本発明のシリコン単結晶の製造方法は、チャンバと、前記チャンバに接続された排気配管と、前記排気配管を介して前記チャンバを排気することで前記チャンバ内の圧力を調整する真空ポンプとを備える単結晶引き上げシステムを用いたシリコン単結晶の製造方法であって、前記排気配管の途中に、バタフライバルブをコンダクタンスバルブとして設け、前記製造方法は、前記排気配管を全閉にしているときの前記バタフライバルブの回転角度を0°とした場合、n型ドーパントを添加した前記シリコン単結晶の引き上げ中における前記チャンバの排気速度を最小にするタイミングにおいては、前記回転角度が9°以上となり、前記排気速度を最大にするタイミングにおいては、前記回転角度が90°未満となるように、前記真空ポンプの排気速度を調整することを特徴とする。
本発明によれば、チャンバの排気速度を最小にするタイミングにおいて、真空ポンプの排気速度を他のタイミングの場合と比べて小さくすることで、バタフライバルブの回転角度を9°以上にした状態でも、排気速度を最小にすることができる。これに対し、真空ポンプの排気速度を変更できない構成では、上記排気速度を得るためには、回転角度を9°未満にする必要があり、上述のように堆積物がバタフライバルブと排気配管とに固着してしまう。
したがって、本発明によれば、蒸発物をバタフライバルブの外縁と排気配管の内壁との間を通過させることができ、当該蒸発物が堆積物として堆積することを抑制できる。その結果、堆積物の固着によってチャンバの圧力が制御できなくなるという不具合を抑制できる。
また、チャンバの排気速度を最大にするタイミングにおいて、真空ポンプの排気速度を他のタイミングの場合と比べて大きくすることで、バタフライバルブの回転角度を90°未満にした状態でも、排気速度を大きくできる。これに対し、真空ポンプの排気速度を変更できない構成では、回転角度を90°、つまり排気配管を全開にしても、上記排気速度を得られない可能性がある。
したがって、本発明によれば、バタフライバルブの回転角度を90°未満にした状態でも排気速度を大きくすることができ、チャンバの圧力を適切に制御できる。
以上のことから、ユーティリティコストを抑制しつつ、応答性よくかつ適切にチャンバの圧力を制御可能なシリコン単結晶の製造方法を提供できる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記シリコン単結晶における抵抗率が狙いの抵抗率の上限値以上となる部分を育成するときの前記チャンバの平均排気速度を、前記上限値未満となる部分を育成するときの平均排気速度よりも小さくすることが好ましい。
本発明によれば、狙いの抵抗率の上限値以上となる部分においてドーパントの蒸発を抑制でき、狙いの抵抗率の上限値未満となる製品合格領域を増やすことができる。
なお、シリコン単結晶における抵抗率が狙いの抵抗率の上限値となる結晶位置は、前のバッチで製造したシリコン単結晶の抵抗率を測定し、その測定結果に基づいて判断してもよいし、引き上げ条件から予測してもよい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記単結晶引き上げシステムに、前記真空ポンプに供給する電力の周波数を調整するインバータを設け、前記製造方法は、前記インバータを用いて前記周波数を制御することで、前記真空ポンプの排気速度を調整することが好ましい。
本発明によれば、インバータによって真空ポンプに供給する電力の周波数を調整するだけの簡単な方法で、応答性よくかつ適切にチャンバの圧力を制御できる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記インバータの周波数を15Hz以上60Hz以下の範囲で制御することが好ましい。
本発明によれば、インバータにより制御される最大の周波数を、商用電源の周波数である60Hz以下にしているため、周波数変換器を用いることなくチャンバの圧力を制御できる。
また、周波数を15Hz以下にする場合には、真空ポンプの回転速度が小さくなりすぎるため、真空ポンプの熱を拡散できず、局所的に温度が上がってしまい、真空ポンプの筐体が変形するおそれがある。
本発明では、周波数を15Hz以上に制御するため、真空ポンプの筐体の変形を抑制できる。
本発明の第1,第2実施形態に係る単結晶引き上げシステムの構成を示す模式図。 (A),(B),(C)は、前記第1,第2実施形態におけるバタフライバルブの回転角度と排気配管の開閉状態との関係を示す模式図。 前記第1,第2実施形態における単結晶引き上げシステムのブロック図。 前記第1,第2実施形態におけるシリコン単結晶の製造方法を示すタイミングチャート。 前記第2実施形態における参照値と電力の設定周波数との関係を示すグラフ。 本発明の実施例における結晶位置とArガスの設定流量との関係を示すグラフ。 本発明の実施例における結晶位置とチャンバの設定圧力との関係を示すグラフ。 本発明の実施例における結晶位置と電力の設定周波数との関係を示すグラフ。 本発明の実施例における結晶位置とバタフライバルブの回転角度との関係を示すグラフ。 本発明の実施例における参照値と電力の設定周波数との関係を示すグラフ。 本発明の実施例における結晶位置と抵抗率との関係を示すグラフ。 本発明の実施例における結晶位置と抵抗率との関係を示すグラフ。
[第1実施形態]
〔単結晶引き上げシステムの構成〕
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、単結晶引き上げシステム1は、引き上げ装置10を備えている。引き上げ装置10は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶SMの製造に用いられ、クリーンルームCRの床FCの下に設置されている。引き上げ装置10は、メインチャンバ11と、当該メインチャンバ11の上部にゲートバルブ12を介して設置されたプルチャンバ13とから構成されるチャンバ14を備えている。
メインチャンバ11には、n型ドーパントが添加されたシリコン融液Mを収容する坩堝15と、メインチャンバ11内の圧力を測定する圧力計16とが設けられている。また、メインチャンバ11の底部には、当該底部を連通する排気孔111が設けられている。
プルチャンバ13には、Arガスなどの不活性ガスや大気をメインチャンバ11に導入するガス導入部131が接続されている。また、プルチャンバ13には、メインチャンバ11に導入される不活性ガスの流量を測定する流量計17が設けられている。
また、単結晶引き上げシステム1は、排気配管21と、スクラバ22と、真空ポンプ23と、インバータ24と、メインバルブ25と、コンダクタンスバルブとして機能するバタフライバルブ26とを備えている。
排気配管21は、メイン配管211を備えている。このメイン配管211の一端は、その内部がメインチャンバ11の排気孔111に連通するように接続されている。メイン配管211の他端には、スクラバ22が設けられている。スクラバ22は、真空ポンプ23を通過した蒸発物を泥化する。
メイン配管211におけるスクラバ22よりもチャンバ14側には、真空ポンプ23が設けられている。
真空ポンプ23は、メインポンプ231と、このメインポンプ231よりもチャンバ14側に設けられたブースタポンプ232とから構成されている。メインポンプ231およびブースタポンプ232は、圧力を下げることを主目的とし、真空到達度を0.1kPa未満と高くできる(高真空にできる)装置である。
真空ポンプ23には、インバータ24を介して電源27が接続されている。電源27は、60Hz以下の周波数の電力を供給する商用電源によって構成されている。インバータ24は、電源27からの電力の周波数を調整して、それぞれメインポンプ231およびブースタポンプ232に供給するメイン用インバータ241およびブースタ用インバータ242から構成されている。電力の周波数が大きい場合、メインポンプ231およびブースタポンプ232の回転数が大きくなるため、排気速度も大きくなり、周波数が小さい場合、排気速度も小さくなる。真空ポンプ23の排気速度は、2m/min以上16m/min以下であることが好ましい。
メイン配管211におけるブースタポンプ232よりもチャンバ14側には、メインバルブ25が設けられている。
メイン配管211には、メインバルブ25を挟んだ両側に接続されたU字状のバイパス配管212が設けられている。バイパス配管212は、排気配管21を構成し、メイン配管211と比べて細くなっている。バイパス配管212には、バタフライバルブ26が設けられている。なお、バイパス配管212の内径が小さいほど、排気速度を最小にするときのバタフライバルブ26の回転角度を大きくできるが、内径が小さいと、バタフライバルブ26の回転角度を最大(90°)にしても所望の最大の排気速度を得られない可能性がある。このような観点から、本実施形態では、内径が30mmのバイパス配管212を用いる。バイパス配管212の内径およびバタフライバルブ26の外径は、25mm以上70mm以下が好ましい。
バタフライバルブ26は、図2(A)に示すように、バルブ駆動部262の駆動によって、回転軸261を中心に回転可能に構成されている。バタフライバルブ26は、図2(A)に示すように、バイパス配管212を全閉にしているときの回転角度αを0°、図2(B)に示すように、全開にしているときの回転角度αを90°とした場合、図2(C)に示すように、回転角度αを0°以上90°未満の範囲で調整できるように構成されている。なお、図2(A)~(C)における矢印Eは、排気方向を表し、同図中上側がチャンバ14側で、下側が真空ポンプ23側である。
メインバルブ25、バタフライバルブ26は、クリーンルームCRの床FCの下に設置されている。スクラバ22、真空ポンプ23、インバータ24および電源27は、ポンプ室PRの床FPの下に設置されている。
また、図3に示すように、単結晶引き上げシステム1は、引き上げシステム制御装置28を備えている。
引き上げシステム制御装置28は、圧力計16と、流量計17と、ガス導入部131と、メインポンプ231と、ブースタポンプ232と、メイン用インバータ241と、ブースタ用インバータ242と、メインバルブ25と、バルブ駆動部262とを制御可能に構成されている。
引き上げシステム制御装置28は、シリコン単結晶SMの製造時の各種構成を制御するための制御用データを、図示しないメモリに記憶している。制御用データは、例えば、図4に示すように、シリコン単結晶SMの結晶位置に応じて設定されたArガスの設定流量と、チャンバ14の設定圧力と、インバータ24の設定周波数とに関するデータを備えている。設定周波数が大きくなると、本発明の設定排気速度が大きくなり、設定周波数が小さくなると、本発明の設定排気速度が小さくなる。
〔シリコン単結晶の製造方法〕
次に、単結晶引き上げシステム1を用いたシリコン単結晶SMの製造方法について説明する。
まず、単結晶引き上げシステム1の引き上げシステム制御装置28は、アンチモン、砒素、赤リンなどn型ドーパントを添加したシリコン単結晶SMを製造する。シリコン単結晶SMの直胴部における狙いの抵抗率は、アンチモンの場合、10mΩ・cm以上50mΩ・cm以下、砒素の場合、1.2mΩ・cm以上4.0mΩ・cm以下、赤リンの場合、0.5mΩ・cm以上1.3mΩ・cm以下とすることが好ましい。シリコン単結晶SMの直径は、特に限定されず、例えば、100mm、125mm、150mm、200mm、300mm、450mmであってもよい。
シリコン単結晶SMの引き上げ工程において、引き上げシステム制御装置28は、ガス導入部131を制御して、Arガス(不活性ガス)を導入する。また、引き上げシステム制御装置28は、バタフライバルブ26を閉じるとともに、メインバルブ25を開き、真空ポンプ23の駆動によって、チャンバ14の圧力を0.5kPa以上5kPa以下にする。そして、坩堝15を加熱してシリコン融液Mを生成する。
次に、引き上げシステム制御装置28は、バタフライバルブ26を開くとともに、メインバルブ25を閉じて、チャンバ14を0.5kPa以上5kPa未満の不活性ガス雰囲気に維持する。そして、引き上げシステム制御装置28は、シリコン融液Mにn型ドーパントを添加した後、チャンバ14の圧力を5kPa以上80kPa以下にして、坩堝15を回転させつつ上昇させ、シリコン融液Mからシリコン単結晶SMを引き上げる。
この引き上げ工程の際、結晶位置が、図4に実線で示すような0からS1の第1の結晶領域を育成するときには、チャンバ14の排気速度を小さくすることが好ましい。シリコン単結晶SMの狙いの抵抗率の上限値を図4に示すAとした場合、シリコン単結晶SMの抵抗率プロファイルは、図4に実線で示すようなプロファイルになる。S1は、シリコン単結晶SMの抵抗率が狙いの抵抗率の上限値Aとなる部分である。この第1の結晶領域においてチャンバ14の排気速度を小さくすることが好ましい理由は、以下の通りである。
第1の結晶領域の育成時には、直胴部SM2の抵抗率を低くして抵抗率が上限値A未満となる製品合格領域を増やすために、ドーパントの蒸発を抑制することが好ましい。そこで、引き上げシステム制御装置28は、第1の結晶領域育成時の平均排気速度を、後述する第2の結晶領域育成時の平均排気速度よりも小さくしてドーパントの蒸発を抑制する。
なお、0の結晶位置は、第1の結晶領域に直胴部SM2の上端が含まれていればよく、肩部SM1の上端や途中、あるいは、直胴部SM2の上端であってもよい。
第1の結晶領域の育成中の排気速度を小さくするために、引き上げシステム制御装置28は、制御用データに基づいて、Arガスの流量がF1(L/min)となり、電源27から真空ポンプ23(メインポンプ231およびブースタポンプ232)に供給する電力の周波数が60Hz以下のH1(Hz)となるように、ガス導入部131およびインバータ24を制御する。さらに、引き上げシステム制御装置28は、圧力計16によるチャンバ14の圧力(以下、チャンバ14の圧力を「炉内圧」という)の実測値がP2(kPa)と等しくなるように、バルブ駆動部262を制御してバタフライバルブ26の回転角度αを調整する。この回転角度の調整に際し、電力の周波数を最小値にすることで、真空ポンプ23の回転数が最小値になり、真空ポンプ23の排気速度も最も小さくなる。このため、バタフライバルブ26の回転角度αを9°以上のA1(°)に調整した状態でも、炉内圧の実測値を最大値であるP2(kPa)にすることができ、チャンバ14の排気速度を最小にすることができる。
このように、最も小さく調整されたときの回転角度αを9°以上にすることで、図2(C)に示すように、バタフライバルブ26とバイパス配管212との間に隙間Pが確保され、蒸発物は、バタフライバルブ26と内壁213との間において、二点鎖線で示すように堆積物DPとして堆積することなく、真空ポンプ23で吸引される。
その後、引き上げシステム制御装置28は、結晶位置が、図4に実線で示すようなS1からS2の第2の結晶領域を育成するときには、チャンバ14の排気速度を徐々に大きくすることが好ましい。S2の結晶位置は、テール部の下端である。
第2の結晶領域の育成時には、ドーパントの濃縮によってシリコン単結晶SMの抵抗率が下がり、異常成長が発生する(抵抗率が図4における異常成長が発生する抵抗率よりも下がる)おそれがある。そこで、引き上げシステム制御装置28は、第2の結晶領域を育成するときの平均排気速度を、第1の結晶領域を育成するときの平均排気速度よりも大きくしてドーパントの蒸発を促進し、ドーパントの濃縮を抑制することで、異常成長の発生を抑制する。
第2の結晶領域の育成中の排気速度を徐々に大きくするために、引き上げシステム制御装置28は、図4に示すように、Arガスの流量を多くし、電力の周波数を大きくするとともに、炉内圧を低くするためにバタフライバルブ26の回転角度αを大きくする。このような制御によって、第2の結晶領域の育成終了時には、Arガスの流量がF2(L/min)となり、電力の周波数が60Hz以下のH2(Hz)となる。そして、電力の周波数を最大値にすることで、真空ポンプ23の回転数が最大値になり、真空ポンプ23の排気速度も最も大きくなる。このため、バタフライバルブ26の回転角度αを90°未満のA2(°)に調整した状態でも、炉内圧の実測値を最小値であるP1(kPa)にすることができ、チャンバ14の排気速度を最大にすることができる。
なお、シリコン単結晶SMの狙いの抵抗率の上限値を、図4に示すようにAよりも小さいBとした場合、シリコン単結晶SMの抵抗率プロファイルは、図4に二点鎖線で示すようなプロファイルになる。この場合、シリコン単結晶SMの抵抗率が狙いの抵抗率の上限値BとなるS1は、上限値をAとした場合と比べてシリコン単結晶SMの下端側に位置する。このため、第1の結晶領域は、図4に二点鎖線で示すように、上限値をAとした場合よりも長くなる。その結果、ドーパントの蒸発を抑制する領域も、上限値をAとした場合よりも長くなる。
〔第1実施形態の作用効果〕
(1)チャンバ14の排気速度を最小にするタイミングにおいて、真空ポンプ23の排気速度を最も小さくすることで、バタフライバルブ26の回転角度を9°以上にした状態でも、排気速度を最小にすることができる。したがって、蒸発物をバタフライバルブ26とバイパス配管212との隙間Pを通過させることができ、堆積物の固着によって炉内圧を制御できなくなるという不具合を抑制できる。
また、チャンバ14の排気速度を最大にするタイミングにおいて、真空ポンプ23の排気速度を最も大きくすることで、バタフライバルブ26の回転角度を90°未満にした状態でも、排気速度を大きくでき、所望の炉内圧に適切に制御できる。
また、バタフライバルブ26をクリーンルームCRの床FCの下に配置するため、真空ポンプ23をクリーンルームCRの床FCの下に配置しなくても圧力制御の応答性を確保できる。したがって、クリーンルームCRのフットプリントの増加を抑制でき、ユーティリティコストの増大も抑制できる。
(2)真空ポンプ23の排気速度をシリコン単結晶SMの結晶位置に応じた設定周波数(設定排気速度)に調整し、炉内圧の実測値が設定圧力と等しくなるようにバタフライバルブ26の回転角度を調整するだけの簡単な方法で、排気速度を最大にするタイミングおよび最小にするタイミングのいずれにおいても、上述のように炉内圧を適切に制御できる。
(3)第1の結晶領域の育成中に、バタフライバルブ26とバイパス配管212との隙間Pに堆積した堆積物DPによってバタフライバルブ26が回転不能となる状況を回避できるため、その後の工程においてもバタフライバルブ26を所望の角度に回転させることができ、トラブルを起こすことなく所望の抵抗率のシリコン単結晶SMを製造できる。
(4)インバータ24を用いて電力の周波数を制御するだけの簡単な方法で、真空ポンプ23の排気速度を調整でき、応答性よくかつ適切に炉内圧を制御できる。
(5)インバータ24により制御される最大の周波数を、商用電源の周波数である60Hz以下にしているため、周波数変換器を用いることなく炉内圧を制御できる。また、周波数を15Hz以上に制御するため、真空ポンプ23の筐体の変形を抑制できる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態のシリコン単結晶SMの製造方法は、図1の単結晶引き上げシステム1を用いる点では第1実施形態と同じであり、引き上げシステム制御装置28による制御が第1実施形態とは異なる。
〔単結晶引き上げシステムの構成〕
第2実施形態の引き上げシステム制御装置28のメモリに記憶された制御用データは、図4に示すようなシリコン単結晶SMの結晶位置に応じて設定されたArガスの設定流量およびチャンバ14の設定圧力と、図5に示すような参照値に応じて設定されたインバータ24の設定周波数とに関するデータを備えている。参照値とは、Arガス流量の実測値を炉内圧の実測値で除した値である。
〔シリコン単結晶の製造方法〕
以下、第2実施形態におけるn型ドーパントを添加したシリコン単結晶SMの製造方法について説明する。なお、第1実施形態と同様の処理については、説明を省略もしくは簡略にする。
引き上げシステム制御装置28は、シリコン単結晶SMの第1の結晶領域を育成するときには、チャンバ14の排気速度を小さくするために、Arガスの流量が最小値のF1(L/min)となるように、ガス導入部131を制御する。次に、引き上げシステム制御装置28は、流量計17によるArガス流量の実測値を圧力計16による炉内圧の実測値で除した参照値を求め、この参照値に対応する設定周波数であるH1(Hz)となるように、インバータ24を制御する。そして、引き上げシステム制御装置28は、炉内圧が最大値のP2(kPa)と等しくなるように、バタフライバルブ26の回転角度αを調整する。
このとき、Arガスの流量が最小値であり、炉内圧が最大値であるため、参照値も最小値となる。その結果、設定周波数であるH1も、15Hz以上の最小値となる。さらに、真空ポンプ23の排気速度が最も小さくなるため、バタフライバルブ26の回転角度αを、第1実施形態と同様に、9°以上のA1(°)に調整した状態でも、炉内圧の実測値を最大値であるP2(kPa)にすることができ、チャンバ14の排気速度を最小にすることができる。その結果、蒸発物は、バタフライバルブ26と内壁213との間に堆積することなく、真空ポンプ23で吸引される。
その後、引き上げシステム制御装置28は、結晶位置がS1になるまで、チャンバ14の排気速度が最小となる状態を維持したまま、育成を継続する。
次に、引き上げシステム制御装置28は、第2の結晶領域の育成時にチャンバ14の排気速度を大きくするために、Arガスの流量を多くする。Arガスの流量が多くなると、参照値が大きくなり設定周波数も大きくなるため、バタフライバルブ26の回転角度αも大きくなるように調整される。このような制御によって、第2の結晶領域の育成終了時には、Arガスの流量が最大値であるF2(L/min)となり、電力の周波数も最大値である60Hz以下のH2(Hz)となる。このように真空ポンプ23の排気速度が最も大きくなるため、バタフライバルブ26の回転角度αを、第1実施形態と同様に、90°未満のA2(°)に調整した状態でも、炉内圧の実測値を最小値であるP1(kPa)にすることができ、チャンバ14の排気速度を最大にすることができる。その結果、蒸発物は、バタフライバルブ26と内壁213との間に堆積することなく、真空ポンプ23で吸引される。
〔第2実施形態の作用効果〕
第1実施形態の(1),(3)~(5)と同様の作用効果に加えて、以下のような作用効果がある。
(6)真空ポンプ23の排気速度を、参照値に応じた設定周波数(設定排気速度)に調整し、炉内圧の実測値が設定圧力と等しくなるようにバタフライバルブ26の回転角度を調整するため、不活性ガスの流量や炉内圧の実測値が設定値から外れた場合でも、この外れた値に応じて真空ポンプ23の排気速度を適切に調整できる。そして、この適切に調整された排気速度により生じた炉内圧の実測値が設定圧力と等しくなるように、バタフライバルブ26の回転角度を適切に調整できる。
したがって、不活性ガスの流量や炉内圧が設定値から外れても、排気速度を最大にするタイミングおよび最小にするタイミングにおいて、炉内圧を適切に制御できる。
[変形例]
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
例えば、インバータ24を用いた電力の周波数制御によって、真空ポンプ23の排気速度を調整したが、真空ポンプ23に供給する電力の周波数を変更することなく、真空ポンプ23の回転数を変更することで、排気速度を調整してもよい。真空ポンプ23の回転数を変更する方法としては、トルクコントローラや多段減速ギアを用いる方法が例示できる。
第2の結晶領域の育成中に、チャンバ14の排気速度が所定速度まで大きくなったら、その後、排気速度を維持してもよい。
次に、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実験1:バタフライバルブの回転角度と有転位化の発生との関係について]
<比較例1>
上記第1実施形態の単結晶引き上げシステム1を準備した。そして、n型ドーパントとして赤リンを添加したシリコン単結晶を製造した。
まず、Arガスの設定流量を図6および表1に示すように設定し、炉内圧の設定圧力を図7および表1に示すように設定し、電力の設定周波数を図8および表1に示すように設定した。
そして、引き上げシステム制御装置28は、シリコン単結晶の育成中、Arガスの流量、電力の周波数が、上記設定流量、設定周波数となるように、ガス導入部131およびインバータ24を制御するとともに、圧力計16による炉内圧の実測値が設定圧力と等しくなるように、バルブ駆動部262を制御してバタフライバルブ26の回転角度αを調整した。
最小回転角度は、図9および表1に示すように、7.2°であり、最大回転角度は72°であった。
1本のシリコン単結晶の製造後、バタフライバルブ26周辺に堆積した堆積物DPを全て除去してから、再度同じ条件でシリコン単結晶を製造することを繰り返し、シリコン単結晶に有転位化が発生した割合を確認した。シリコン単結晶10本のうち3本で有転位化が発生していたため、その原因を調べたところ、堆積物DPの固着によってバタフライバルブ26が固化していたことが分かった。
<比較例2>
表1に示すように、Arガスの設定流量以外は比較例1と同様の条件で、シリコン単結晶を製造した。
最小回転角度は、5.4°であり、最大回転角度は72°であった。
また、シリコン単結晶の製造と堆積物DPの除去とを繰り返したところ、9本のシリコン単結晶のうち3本で、バタフライバルブ26の固化による有転位化が発生していたことが分かった。
<実施例1>
表1に示すように、電力の設定周波数以外は比較例1と同様の条件で、シリコン単結晶を製造した。
最小回転角度は、19.8°であり、最大回転角度は72°であった。
また、シリコン単結晶の製造と堆積物DPの除去とを繰り返したところ、6本のシリコン単結晶の全てにおいて、バタフライバルブ26の固化による有転位化が発生していないことが分かった。
<実施例2>
表1に示すように、Arガスの設定流量を比較例2と同じ条件に設定したこと以外は実施例1と同様の条件で、シリコン単結晶を製造した。
最小回転角度は、13.5°であり、最大回転角度は72°であった。
また、シリコン単結晶の製造と堆積物DPの除去とを繰り返したところ、7本のシリコン単結晶の全てにおいて、バタフライバルブ26の固化による有転位化が発生していないことが分かった。
Figure 0007077609000001
<実施例3>
表2に示すように、電力の設定周波数を図10に示す参照値(Arガス流量の実測値/炉内圧の実測値)に基づき設定したこと以外は、実施例1と同様の条件で、シリコン単結晶を製造した。
引き上げシステム制御装置28は、シリコン単結晶の育成中、Arガスの流量が設定流量となるように、ガス導入部131を制御するとともに、流量計17によるArガス流量の実測値を圧力計16による炉内圧の実測値で除した参照値を求め、この参照値に対応する設定周波数となるように、バタフライバルブ26の回転角度αを調整した。参照値に基づく設定周波数を表2に示す。
最小回転角度は、18.0°であり、最大回転角度は72°であった。
また、シリコン単結晶の製造と堆積物DPの除去とを繰り返したところ、6本のシリコン単結晶の全てにおいて、バタフライバルブ26の固化による有転位化が発生していないことが分かった。
<実施例4>
表2に示すように、Arガスの設定流量および炉内圧を実施例2と同じ条件にしたこと以外は、実施例3と同様の条件で、シリコン単結晶を製造した。
最小回転角度は、13.5°であり、最大回転角度は76.5°であった。
また、シリコン単結晶の製造と堆積物DPの除去とを繰り返したところ、8本のシリコン単結晶の全てにおいて、バタフライバルブ26の固化による有転位化が発生していないことが分かった。
Figure 0007077609000002
<考察>
表1,2および図9に示すように、比較例1,2では、バタフライバルブ26の最小回転角度が9°未満であったのに対し、実施例1~4では、9°以上であった。
これは、実施例1~4では、電力の周波数を小さくすることで、バタフライバルブ26の最小回転角度を9°以上にしても、チャンバ14の排気速度を最小にできた一方で、比較例1,2では、電力の周波数を変更しないため、最小回転角度を9°未満にしないと、排気速度を最小にできなかったためと考えられる。
このことから、インバータ24によって電力の周波数を小さくし、真空ポンプ23の排気速度を小さくすることで、バタフライバルブ26の回転角度を9°以上にしても、チャンバ14の排気速度を最小にでき、バタフライバルブ26の固化による有転位化の発生を抑制できることが確認できた。
また、実施例1~4では、バタフライバルブ26の最大回転角度が90°未満であった。
これは、実施例1~4では、電力の周波数を大きくすることで、バタフライバルブ26の最大回転角度を90°未満にしても、チャンバ14の排気速度を最大にできたためと考えられる。
このことから、インバータ24によって電力の周波数を大きくし、真空ポンプ23の排気速度を大きくすることで、バタフライバルブ26の回転角度を90°未満にしても、チャンバ14の排気速度を大きくでき、所望の炉内圧に制御できることが確認できた。
[実験2:電力の設定周波数およびバタフライバルブの回転角度の変更の有無とシリコン単結晶の抵抗率との関係について]
比較例1,2、実施例1~4のシリコン単結晶からシリコンウェーハを切り出し、抵抗率分布を測定した。
Arガス流量を80L/minから100L/minの間で調整した比較例1、実施例1,3の結果を図11に示し、70L/minから90L/minの間で調整した比較例2、実施例2,4の結果を図12に示す。
図11,12に示すように、比較例1,2、実施例1~4の抵抗率分布に大きな差は見られなかった。
以上のことから、インバータ24によって電力の周波数を制御して、バタフライバルブ26の回転角度を調整しても、シリコン単結晶の抵抗分布に影響を与えないことが確認できた。
1…単結晶引き上げシステム、14…チャンバ、21…排気配管、23…真空ポンプ、26…バタフライバルブ、SM…シリコン単結晶、SM2…直胴部。

Claims (3)

  1. チャンバと、前記チャンバに接続された排気配管と、前記排気配管を介して前記チャンバを排気することで前記チャンバ内の圧力を調整する真空ポンプと、前記チャンバに導入する不活性ガスの流量を制御するガス導入部と、前記チャンバ内の圧力の実測値を測定する圧力計と、前記チャンバに導入される前記不活性ガスの流量の実測値を測定する流量計と、を備える単結晶引き上げシステムを用いたシリコン単結晶の製造方法であって、
    前記排気配管の途中に、バタフライバルブをコンダクタンスバルブとして設け、
    前記製造方法は、
    前記排気配管を全閉にしているときの前記バタフライバルブの回転角度を0°とした場合、n型ドーパントを添加した前記シリコン単結晶の引き上げ中における前記チャンバの排気速度を最小にするタイミングにおいては、前記回転角度が9°以上となり、前記排気速度を最大にするタイミングにおいては、前記回転角度が9°以上90°未満となるように、前記真空ポンプの排気速度を調整し、
    前記シリコン単結晶の結晶長に応じた前記チャンバの設定圧力および前記ガス導入部を制御することにより設定される前記不活性ガスの設定流量と、前記流量計により測定される前記不活性ガスの流量の実測値を前記圧力計により測定される前記チャンバの圧力の実測値で除した参照値に応じた前記真空ポンプの設定排気速度を予め設定しておき、
    前記シリコン単結晶の引き上げ中に、前記不活性ガスの設定流量に基づき前記ガス導入部を制御し、前記流量の実測値および前記圧力の実測値に基づき得られた前記参照値を求め、前記排気速度を前記参照値に対応する前記設定排気速度となるように前記真空ポンプの排気速度を調整するとともに、前記圧力の実測値が前記設定圧力と等しくなるように、前記バタフライバルブの回転角度を調整することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  2. 請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記単結晶引き上げシステムに、前記真空ポンプに供給する電力の周波数を調整するインバータを設け、
    前記製造方法は、
    前記インバータを用いて前記周波数を制御することで、前記真空ポンプの排気速度を調整することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  3. 請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記インバータの周波数を15Hz以上60Hz以下の範囲で制御することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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