JP2009035455A - 半導体単結晶の製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】炉内圧を制御することにより、N型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶の品質の向上および製造歩止まりを向上し、炉外へのガスの流出を防止することにより、作業者に与える悪影響を回避するとともに、クリーンルームの汚染を回避することができ、通常炉内圧品および高炉内圧品の両方の製造に適合したシリコン単結晶製造装置を提供する。
【解決手段】半導体単結晶製造装置1に、排気ライン20、30、圧力調整弁21、開放弁31を設置する。コントローラ40は、圧力検出手段50の検出値Pに基づいて、半導体単結晶が所望する低抵抗値になるように、圧力調整弁21を制御する。圧力検出手段50で検出された炉内圧力Pが異常値P2に達した場合に、開放弁31が開放されるように、開放弁31を制御する。
【選択図】図2

Description

本発明は、半導体単結晶の製造装置に関し、特に、炉内に不活性ガスを供給し、炉内のガスを排気口から排気ラインを介して、排気しつつ、炉内でドーパントが添加された半導体単結晶を製造する装置に関する。
(従来の実施技術)
近年、ディスクリート半導体デバイスなどに使用されるシリコンウェーハ、つまりN型の電気的特性を有し、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗のシリコンウェーハを、歩留まりよく製造したいとの要請がある。
ここで、N型の揮発性のドーパントとは、アンチモンSb、赤燐P、砒素Asなどである。低抵抗とは、20/1000Ωcm以下となる抵抗値のことをいうものとする。
図1は、従来のシリコン単結晶製造装置1の構成を示す。この従来装置1は、上述した高濃度、低抵抗のシリコンウェーハよりも低濃度、高抵抗となるシリコンウェーハ、たとえば抵抗値で1Ωcm以上となるシリコンウェーハの製造を想定して構築されている。
従来装置1では、CZ炉2内に不活性ガスが供給され、炉内のガスを排気口4、5から通常排気ライン10を介して、排気させつつ、CZ炉2内でドーパントが添加されたシリコン単結晶インゴットが製造される。
CZ炉2内では、CZ(チョクラルスキー)法により、融液からドーパントが添加されたシリコン単結晶インゴットが引上げ、成長される。
CZ炉2内と外気を遮断することで炉2内は高真空に維持される。すなわち、CZ炉2には不活性ガスとしてのアルゴンガスが供給され、CZ炉2の排気口4、5から真空ポンプ8によって排気される。これにより炉2内は所定の圧力に減圧される。
単結晶引上げのプロセス(1バッチ)の間で、CZ炉2内には種々の蒸発物が発生する。
そこで、真空ポンプ8によって、CZ炉2内が真空引きされ、CZ炉2内のガスが蒸発物とともに、通常排気ライン10を介して排気される。これによりCZ炉2内から蒸発物が除去される。通常排気ライン10には、通常圧力調整弁11が設けられている。通常圧力調整弁11では、通常の真空領域(以下、通常炉内圧領域という)に対応する圧力範囲、つまり0.1〜13.3kPaでCZ炉2内の圧力が調整される。このように、CZ炉2内の圧力が通常炉内圧領域内の所望する圧力に保持されつつ、シリコン単結晶インゴットが引上げ、成長されることで、低濃度、高抵抗のシリコン単結晶インゴット(以下、適宜、通常炉内圧品という)が製造される。
したがって、上述した従来装置1を用いて、N型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗のシリコン単結晶インゴットを製造しようとするときには、上述した通常炉内圧領域の制御に適合した通常圧力調整弁11を用いて、CZ炉2内の圧力を調整せざるを得ないことになっていた。
(各特許文献にみられる従来技術)
特許文献1には、化合物半導体単結晶を液体封止引上げ法(LEC法)により引上げ成長させるに際して、炉内圧を調整することにより、結晶中の炭素濃度を制御するという発明が記載されている。
特許文献2には、シリコン単結晶をCZ法により引上げ成長させるに際して、融液に接する雰囲気の圧力を調整することにより、融液表面の酸素濃度を制御するという発明が記載されている。
特許文献3には、シリコン単結晶をCZ法により引上げ成長させるに際して、CZ炉内の圧力を調整することによりCZ炉内のガスガイドと融液との間を流れる不活性ガスの融液表面近傍の流速を制御するという発明が記載されている。
特開平9−221390号公報 特開平7−232990号公報 特開平5−70279号公報
本発明者は、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗のシリコン単結晶インゴットを、既存の装置1で製造しようとするときに、つぎのような課題を見出し、本発明の知見を得るに至った。
すなわち、CZ炉2内で、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗のシリコン単結晶インゴットを製造するには、揮発性故に、融液からのドーパントの蒸発を抑制する必要がある。
仮に、CZ炉2内の圧力を高くしないとすると、引上げ工程で融液からの蒸発が活発となり、ドーパントを含んだガスが多量に排気されてしまい、シリコン単結晶インゴットの抵抗値が所望する値から外れて高くなってしまう。
そこで、既存の通常圧力調整弁11を流用して、通常炉内圧領域よりも高い圧力範囲13.3〜93.3kPa(以下、亜真空領域という)に、CZ炉2内の圧力を調整して、揮発性のドーパントの蒸発を抑制してシリコン単結晶のドーパント濃度を所望する高濃度に維持する必要がある。
しかしながら、通常圧力調整弁11は、本来、通常炉内圧領域(0.1〜13.3kPa)の制御に適合する圧力調整弁であり、この通常炉内圧領域内で制御性よく調整されるように構成されている。このため、同じ通常圧力調整弁11を流用して通常炉内圧領域よりも低真空度、高圧の亜真空領域(13.3〜93.3kPa)で調整しようとすると、制御性能が格段に落ちることになる。これにより、CZ炉2内の圧力変動が大きくなり、融液からのドーパントの蒸発量が変動し、シリコン単結晶インゴットの抵抗値や酸素濃度が大きく変動してしまう。この結果、シリコン単結晶インゴットの抵抗値を所望する低抵抗値に安定させることができなくなり、N型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗のシリコン単結晶インゴット(以下、適宜、高炉内圧品という)の品質の低下および製造歩止まりの低下を招くおそれがある。
本発明は、こうした実情に鑑みて成されたものであり、炉内圧を制御性よく制御することにより、N型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶の品質の向上および製造歩止まりの向上を図ることを第1の解決課題とするものである。
さて、CZ炉2内で、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗のシリコン単結晶インゴット(高炉内圧品)を製造する際に、留意しなければならないことは、揮発性故に、融液から蒸発したドーパントが化合物アモルファスとなって、排気ライン10に大量に流れ込むということである。
仮に、ドーパントを含む大量の化合物アモルファスの排気ライン10への流入を長期間放置すると、排気ライン10の配管内部表面に化合物アモルファスが固着し、配管に固着物が堆積し、最終的には配管が閉塞するおそれがある。配管への化合物アモルファスの固着は、高炉内圧品に特有のものであり、通常炉内圧品を製造する際には、配管への固着という現象はみられない。
排気ライン10が化合物アモルファスによって閉塞したり、圧力調整弁11が故障したりすると、CZ炉2内のガスが真空ポンプ8側に排気されなくなり、CZ炉2内が異常に高圧化する。とりわけ、亜真空領域は、通常炉内圧領域よりも元々高圧であるため、炉内の圧力は迅速に異常な圧力まで上昇してしまう。
CZ炉2内の圧力が異常に上昇すると、CZ炉2内の高圧のガスが外部へ流出するおそれがある。そこで、これを防止するために CZ炉2内に入る不活性ガスの供給を止める措置をとることが考えられる。
しかし、この方法をとると、CZ炉2内の圧力上昇を抑制することは可能になるが、炉内圧力を下げることはできない。
仮に、CZ炉2内の圧力が亜真空領域の上限93.3kPaを超える異常圧まで上昇した状態で、CZ炉2内へのアルゴンガスの供給を止めたとすると、CZ炉2内の残存容量から炉内に閉じ込められた不活性ガスが熱せられる。このときCZ炉2内には、ガスの流れが無いためにガスによる熱交換が行われず、通常であれば温度上昇しない部分まで、閉じ込められた不活性ガスによって温度上昇してしまう。こうした炉内各部の温度上昇により炉体のOリングなどの各種シールが破損するおそれがある。このため炉体のシール性が良くない部分から炉体内に外気が入り込み、炉内の圧力を上昇させる。これにより逆に炉内から外部にガスが流出することになる。
この炉外に流出したガスは高温であるため、作業者を火傷させるおそれがある。またガス中に含まれる化合物アモルファスは、毒性のあるドーパント、つまり砒素As、アンチモンSbなどを含んでいるため、作業者の健康を損ねるおそれがある。さらには、化合物アモルファスの炉外への流出により、クリーンルームが汚染され、製品の品質の低下や製造歩留まりの低下を引き起こすことになりかねない。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、N型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶を製造するにあたり、炉外へのガスの流出を防止することにより、作業者に与える悪影響を回避するとともに、クリーンルームの汚染を回避して製品の品質の向上および製造歩止まりの向上を図ることを第2の解決課題とするものである。
上述したように、通常炉内圧品の製造を想定して構築された従来のシリコン単結晶製造装置1は、高炉内圧品の製造に必ずしも適したものではない。しかし、高炉内圧品の製造に適した新たなシリコン単結晶製造装置を別途構築しようとすると、設備のコストは増大するとともに、限られた設置スペースに配置できなくなるおそれがある。
そこで、本発明は、通常炉内圧品および高炉内圧品の両方の製造に適合した装置を、既存のシリコン単結晶製造装置1にわずかな変更を加えるだけで構築できるようにして、設備のコストを抑制するとともに、新たに炉を増やすことなく限られたスペースに装置を配置できるようにすることを第3の解決課題とするものである。
なお、上述した各特許文献に記載された炉内圧を調整する目的は、結晶中の炭素濃度を制御するためであったり、融液表面の酸素濃度を制御するためであったり、不活性ガスの流速を制御するためであったりするものであり、それら目的は、本発明の解決課題を何ら示唆するものではない。
第1発明は、
炉内に不活性ガスを供給し、炉内のガスを排気口から排気ラインを介して、排気しつつ、炉内でドーパントが添加された半導体単結晶を製造する半導体単結晶の製造装置において、
炉内で、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶を製造するに際して、
それぞれ独立して並列に設けられ、排気口に連通し、炉内のガスを排気する高炉内圧排気ラインおよび緊急用排気ラインと、
高炉内圧排気ラインに設けられ、揮発性のドーパントの蒸発を抑制して半導体単結晶のドーパント濃度を高濃度にするための亜真空領域に対応する圧力範囲で炉内の圧力を調整する圧力調整弁と、
緊急用排気ラインに設けられた開放弁と、
炉内の圧力を検出する圧力検出手段と、
圧力検出手段の検出値に基づいて、半導体単結晶が所望する低抵抗値になるように、圧力調整弁を制御する第1の制御手段と、
圧力検出手段で検出された炉内圧力が異常値に達した場合に、開放弁が開放されるように、開放弁を制御する第2の制御手段と
が備えられていること
を特徴とする。
第2発明は、
炉内に不活性ガスを供給し、炉内のガスを排気口から排気ラインを介して、排気しつつ、炉内でドーパントが添加された半導体単結晶を製造する半導体単結晶の製造装置において、
炉内で、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶と、該低抵抗品よりも高抵抗の半導体単結晶とを製造する装置であって、
それぞれ独立して並列に設けられ、排気口に連通し、炉内のガスを排気する高炉内圧排気ラインおよび通常排気ラインと、
通常炉内排気ラインに設けられ、高真空の範囲で炉内の圧力を調整する通常圧力調整弁と、
高炉内圧排気ラインに設けられ、通常圧力調整弁よりも口径サイズが小さく設定され、低真空の範囲で炉内の圧力を調整する高炉内圧用圧力調整弁と、
低抵抗の半導体単結晶を製造する際には、高炉内圧用圧力調整弁を制御し、高抵抗の半導体単結晶を製造する際には、通常圧力調整弁を制御する制御手段と
が備えられていること
を特徴とする。
第3発明は、
炉内に不活性ガスを供給し、炉内のガスを排気口から排気ラインを介して、排気しつつ、炉内でドーパントが添加された半導体単結晶を製造する半導体単結晶の製造装置において、
炉内で、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶と、該低抵抗品よりも高抵抗の半導体単結晶とを製造する装置であって、
それぞれ独立して並列に設けられ、排気口に連通し、炉内のガスを排気する高炉内圧排気ラインおよび通常排気ライン並びに緊急用排気ラインと、
通常炉内排気ラインに設けられ、高真空の範囲で炉内の圧力を調整する通常圧力調整弁と、
高炉内圧排気ラインに設けられ、通常圧力調整弁よりも口径サイズが小さく設定され、低真空の範囲で炉内の圧力を調整する高炉内圧用圧力調整弁と、
緊急用排気ラインに設けられた開放弁と、
炉内の圧力を検出する圧力検出手段と、
低抵抗の半導体単結晶を製造する際には、高炉内圧用圧力調整弁を制御し、高抵抗の半導体単結晶を製造する際には、通常圧力調整弁を制御する第1の制御手段と、
圧力検出手段で検出された炉内の圧力が異常値に達した場合に、開放弁が開放されるように、開放弁を制御する第2の制御手段と
が備えられていること
を特徴とする。
第1発明では、図2に示すように、半導体単結晶製造装置1に、高炉内圧排気ライン20と、圧力調整弁21と、圧力検出手段50と、第1の制御手段40とが備えられる。
高炉内圧排気ライン20は、炉2内のガスを排気口4、5から真空ポンプ8を介して外部の安全な場所に排気する。
高炉内圧排気ライン20には、圧力調整弁21が設けられている。この圧力調整弁21は、揮発性のドーパントの蒸発を抑制して半導体単結晶のドーパント濃度を高濃度にするための亜真空領域に対応する圧力範囲で炉2内の圧力を調整するものである。
圧力検出手段50では、炉2内の圧力Pが検出される。
コントローラ40は、圧力検出手段50の検出値Pに基づいて、半導体単結晶が所望する低抵抗値になるように、圧力調整弁21を制御する(図3:ステップ101〜107)。
第1発明によれば、圧力調整弁21は、亜真空領域で制御性よく圧力が調整されるように構成されている。このため、図1に示す既存の圧力調整弁11と比較して亜真空領域における炉内圧の制御性能が格段に向上する。この結果、半導体単結晶の抵抗値を所望する低抵抗値に安定させることができるようになり、高炉内圧品であるN型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶の品質を向上させることができ、製造歩止まりが向上する。
さらに第1発明では、緊急用排気ライン30と、開放弁31と、第2の制御手段40が備えられている。
緊急用排気ライン30は、高炉内圧排気ライン20とは独立して並列に設けられ、排気口4、5に連通して、炉2内のガスを排気する。
開放弁31は、緊急用排気ライン30に設けられている。
第2の制御手段40は、圧力検出手段50で検出された炉内圧力Pが異常値P2に達した場合に、開放弁31が開放されるように、開放弁31を制御する(図4:ステップ201〜206)。これにより、ドーパントを含む大量の化合物アモルファスが高炉内圧排気ライン20へ流入して、高炉内圧排気ライン20が化合物アモルファスの固着、堆積によって閉塞したり、あるいは圧力調整弁21が故障したりして、炉2内が異常に高圧化したとしても、開放弁31が開放されて、炉2内のガスが、排気口4、5から、高炉内圧排気ライン20とは独立して設けられた緊急用排気ライン30を通って、真空ポンプ8を介して外部の安全な場所に排気される。
よって、本第1発明によれば、N型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶を製造するにあたり、炉2外へのガスの流出を未然に防止することができ、作業者に与える悪影響を回避できるとともに、クリーンルームの汚染が回避されて製品の品質、製造歩止まりが向上する。
第1発明は、図2に示すように、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30以外に他の排気ライン10が設けられた構成であってもよく、図6に示すように、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30のみが設けられた構成であってもよい。
第2発明は、既存の半導体単結晶装置1(図1)に、新たな排気ライン20、圧力調整弁21を増設し、既存の制御手段40で行なわれる処理内容を変更するだけで、装置を構築することができる。すなわち、通常炉内圧品および高炉内圧品の両方の製造に適合した装置を、既存の半導体単結晶製造装置1(図1)にわずかな変更、つまり新たな排気ライン20、圧力調整弁21を増設する等だけで容易に構築することができる。これにより、設備コストを抑制できるとともに、新たに炉を増やすことなく限られた設置スペースに装置を配置することができる。ここで、図1に示す既存の半導体単結晶製造装置1と同じく、通常排気ライン10に設けられた通常圧力調整弁11を、制御手段40で制御して、炉2内の圧力を調整することによって、高抵抗の半導体単結晶(通常炉内圧品)が製造される。通常炉内圧品は、通常炉内圧領域で酸素濃度等の引上げ条件が定められている。このため、通常炉内品を、従来と変わらない引上げ条件にて、高品質に歩留まりよく製造することができる。
第2発明は、図2に示すように、高炉内圧排気ライン20、通常排気ライン10以外に他の排気ライン30が設けられた構成であってもよく、図7に示すように、高炉内圧排気ライン20、通常排気ライン10のみが設けられた構成であってもよい。
第3発明では、第2発明の構成に加えて、緊急用排気ライン30と、開放弁31と、第2の制御手段40が備えられている。
第3発明によれば、第2発明と同様の効果が得られる。
さらに、第3発明によれば、第1発明と同様に、圧力検出手段50で検出された炉内圧力Pが異常値P2に達した場合に、開放弁31が開放されるように、開放弁31を制御する(図4;ステップ201〜206)ようにしたので、炉2内が異常に高圧化したとしても、開放弁31が開放されて、炉2内のガスが、排気口4、5から、高炉内圧排気ライン20、通常排気ライン10とは独立して設けられた緊急用排気ライン30を通って、真空ポンプ8を介して外部の安全な場所に排気される。
よって、本第3発明によれば、炉2外へのガスの流出を未然に防止することができ、作業者に与える悪影響を回避できるとともに、クリーンルームの汚染が回避されて製品の品質、製造歩止まりが向上する。
以下、図面を参照して本発明に係る半導体単結晶の製造装置の実施の形態について説明する。
(第1実施例)
図2は、実施例のシリコン単結晶製造装置1の構成を示す。この実施例装置1は、揮発性でN型の高濃度、低抵抗のシリコンウェーハ(高炉内圧品)および高炉内圧品よりも低濃度、高抵抗のシリコンウェーハ(通常炉内圧品)を製造するための装置である。シリコン単結晶製造装置1は、クリーンルームに設置されている。
ここで、「N型の揮発性のドーパント」とは、アンチモンSb、赤燐P、砒素Asなどである。「低抵抗」とは、20/1000Ωcm以下となる抵抗値のことをいうものとする。
CZ炉2の排気口4、5は、CZ炉2の下側に設けられている。なお、本実施例では、CZ炉2の下側からガスが排気される構造を想定しているが、ガスの排気口の場所はCZ炉2のいずれの場所に設けられていてもよい。
CZ炉2の排気口4、5は、共通の排気ライン9aに連通している。
通常排気ライン10、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30はそれぞれ、独立して並列に設けられており、共通の排気ライン9aを介してCZ炉2の排気口4、5に連通している。
通常排気ライン10、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30には、共通の排気ライン9bが連通している。共通の排気ライン9bには、真空ポンプ8の吸入口8aが連通している。真空ポンプ8の吐出口8bは、クリーンルーム以外の安全な場所(大気)に連通している。なお、真空ポンプ8は、通常排気ライン10、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30に共通のものとしているが、もちろん通常排気ライン10、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30毎に個別の真空ポンプを設ける実施も可能である。
よって、通常排気ライン10、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30はそれぞれ、CZ炉2内のガスを排気口4、5から排出されたガスを、真空ポンプ8に送り外部の安全な場所に排気する。
実施例のシリコン単結晶製造装置1では、CZ炉2内に、アルゴンガスなどの不活性ガスが供給され、CZ炉内のガスを排気口4、5から通常排気ライン10、高炉内圧排気ライン20を通して、排気させつつ、CZ炉2内でドーパントが添加されたシリコン単結晶インゴットが製造される。
CZ炉2内では、CZ(チョクラルスキー)法により、融液からドーパントが添加されたシリコン単結晶インゴットが引上げ、成長される。
CZ炉2内と外気を遮断することで炉2内は高真空に維持される。すなわち、CZ炉2には不活性ガスとしてのアルゴンガスが供給され、CZ炉2の排気口4、5から真空ポンプ8によって排気される。これによりCZ炉2内は所定の圧力に減圧される。
単結晶引上げのプロセス(1バッチ)の間で、CZ炉2内には種々の蒸発物が発生する。
そこで、真空ポンプ8によって、CZ炉2内が真空引きされ、CZ炉2内のガスが蒸発物とともに、通常排気ライン10、高炉内圧排気ライン20を介して排気される。これによりCZ炉2内から蒸発物が除去される。
通常排気ライン10には、通常圧力調整弁11と遮断弁12が設けられている。通常圧力調整弁11は、バタフライバルブを有したスロットルバルブによって構成されている。遮断弁12は、エア駆動のボールバルブで構成されている。
通常圧力調整弁11は、通常炉内圧領域に対応する圧力範囲、つまり0.1〜13.3kPaでCZ炉2内の圧力を調整するように構成されている。
通常圧力調整弁11は、制御手段としてのコントローラ40によって制御される。
遮断弁12は、作業者の操作により手動制御される。
高炉内圧排気ライン20には、通常圧力調整弁11よりも口径サイズが小さく設定され、低真空の範囲でCZ炉2内の圧力を調整する高炉内圧用圧力調整弁21が設けられている。
高炉内圧排気ライン20には、遮断弁22が設けられている。高炉内圧用圧力調整弁21は、バタフライバルブを有したスロットルバルブによって構成されている。遮断弁22は、エア駆動のボールバルブで構成されている。
圧力調整弁21は、亜真空領域に対応する圧力範囲でCZ炉2内の圧力を調整するように構成されている。
ここで、亜真空領域とは、揮発性のドーパントの蒸発を抑制してシリコン単結晶インゴット内のドーパント濃度を高濃度にするための圧力範囲であり、上記通常炉内圧領域よりも高圧となる圧力範囲13.3〜93.3kPaのことである。
高炉内圧用圧力調整弁21は、コントローラ40によって制御される。
遮断弁22は、作業者の操作により手動制御される。
緊急用排気ライン30には、開放弁31が設けられている。開放弁31は、エア駆動のストップバルブで構成されている。開放弁31は、コントローラ40によって制御される。
つぎに、図8、図9、図10、図11を用いて、通常圧力調整弁11、高炉内圧用圧力調整弁21について説明する。
図8は、CZ炉2から真空ポンプ8に向かう不活性ガスの流れを概念的に示している。
1つの配管10または20を流れるガスの流量をQ、圧力調整弁11または21の上流側の圧力、つまりCZ炉2内の圧力をP、同圧力調整弁11または21の下流側の圧力をPBとすると、ガスの流量Qは、次式(1)で表される。
Q=C・(P−PB) …(1)
上記(1)式中のCは、圧力調整弁11または21のコンダクタンスであり、抵抗の逆数である。コンダクタンスCは、圧力調整弁11または21内の流路の形状と開口面積Aとによって基本的には決定される。ここで流路の形状は、ほぼ固定されていることから、開口面積Aを変化させて、圧力調整弁11または21のコンダクタンスCを変化させることが一般的である。また上記(1)式から明らかなように、圧力調整弁11または21のコンダクタンスCを調整することで、圧力調整弁11または21の上流側圧力(CZ炉2内圧力)Pを制御することができる。
よって、圧力調整弁11または21の開口面積Aを変化させて、圧力調整弁11または21のコンダクタンスCを調整し、それにより圧力調整弁11または21の上流側圧力(CZ炉2内圧力)Pを制御することができる。
コンダクタンスCは、抵抗の逆数であるため、開口面積Aが小さいとコンダクタンスCは小さくなり、開口面積Aが大きいとコンダクタンスCは大きくなる。
よって、圧力調整弁11または21の上流側圧力(CZ炉2内圧力)Pが比較的低い領域では、開口面積Aが大きいと制御性がよくなり、逆に圧力調整弁11または21の上流側圧力(CZ炉2内圧力)Pが比較的高い領域では、開口面積Aが小さいと制御性がよくなることがわかる。
以上のような原理に基づき、通常圧力調整弁11の口径サイズ(開口面積Aの最大値)を比較的大きく設定し、開口面積Aが大きい領域で調整することにより、低圧(高真空)の領域(通常炉内圧領域)における制御性を高めるとともに、高炉内圧用圧力調整弁21の口径サイズ(開口面積Aの最大値)を比較的小さく設定し、開口面積Aが小さい領域で調整することにより、高圧(低真空)の領域(亜真空領域)における制御性を高めるようにしている。
以下、圧力調整弁11、21を説明するために、具体的な数値を挙げるが、本明細書で掲げる数値は発明の理解のために例示したものであって、本発明は、明細書に記載された数値に限定されるわけではない。
図9、図10は、高炉内圧排気ライン20の配管の内径を32mmとし、亜真空領域に対応する圧力範囲を、高炉内圧用圧力調整弁21のバタフライバルブ21aの角度(以下、バルブ角度θ2)で調整したときの制御性と、通常排気ライン10の配管の内径を100mmとし、同亜真空領域に対応する圧力範囲を、通常圧力調整弁11のバタフライバルブ11aの角度(以下、バルブ角度θ1)で調整したときの制御性とを対比して説明する図である。
図9は、横軸をバルブ角度θ1、θ2(°)とし、縦軸を開口面積A(mm2)としたときの対応関係L1、L2を示している。同図9に示すように、圧力調整弁11、21の口径サイズはそれぞれ、配管10、20の内径に対応しているものとする。
なお、実施例では、圧力調整弁11、21がそれぞれ、スロットルバルブで構成され、バタフライバルブ11a、21aのバルブ角度θ1、θ2を変化させることで、開口面積Aを調整し、それによりコンダクタンスCを可変する構造を想定しているが、コンダクタンスCを可変できるのであれば、圧力調整弁11、21の構造は、スロットルバルブに限定されることなく、いかなる構造のものも本発明に適用することができる。
図9からわかるように、亜真空領域に対応する圧力範囲を制御するときには、開口面積Aが0から700mm2の範囲でバルブ角度θ1、θ2を調整しなければならない。一方、通常炉内圧領域に対応する圧力範囲を制御するときには、開口面積Aが700mm2から4000mm2の範囲でバルブ角度θ1、θ2を調整しなければならない。
高炉内圧用圧力調整弁21では、L2にて示すように、亜真空領域に対応する開口面積Aが0から700mm2の範囲を、バルブ角度θ2で0°から80°までの広い角度範囲を変化させることで調整することができる。これに対して、L1にて示すように、通常圧力調整弁11では、亜真空領域に対応する開口面積Aが0から700mm2の範囲を、バルブ角度θ1で67°から80°までの狭い角度範囲を変化させることでしか調整することができない。
なお、通常圧力調整弁11では、通常炉内圧領域に対応する開口面積Aが700mm2から4000mm2の範囲を、バルブ角度θ1を変化させることで調整できるが、高炉内圧用圧力調整弁21では、通常炉内圧領域に対応する開口面積Aが700mm2から4000mm2の範囲を、バルブ角度θ2の変化では調整できない。
一方、図10は、バルブ角度θ1、θ2と、開口面積Aの関係を示す。
図10(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、高炉内圧用圧力調整弁21は、バルブ角度θ2が55°から60°まで5°だけ変化するとき、開口面積Aは、122.8mm2から90.9mm2まで、31.9mm2だけ変化し、その開口面積Aの差は比較的小さい。一方、図9(e)、(f)、(g)、(h)に示すように、通常圧力調整弁11は、バルブ角度θ1が70°から75°まで5°だけ変化するとき、開口面積Aは、450.2mm2から254.3mm2まで、195.9mm2だけ変化し、その開口面積Aの差は比較的大きい。このように亜真空領域(開口面積A:0〜700mm2)における単位バルブ角度(5°)当りの開口面積Aの変化量は、通常圧力調整弁11に比べて高炉内圧用圧力調整弁21の方が格段に小さい。
以上のことから、開口面積Aが0〜700mm2の範囲で圧力が制御される亜真空領域では、バルブの口径サイズの小さい高炉内圧用圧力調整弁21の方が通常圧力調整弁11よりも圧力の制御性がよいことがわかる。
図11は、横軸を圧力P(kPa)とし、縦軸をバルブ角度θ1、θ2(°)としたときの対応関係L11、L21を示している。この実験データは、CZ炉2内に流量100l/minの不活性ガスを流して得られたものである。
図11は、亜真空領域内のうち13.3〜40.0kPaという圧力範囲におけるバルブ角度θ1、θ2の変化量を対比して示している。なお、13.3〜40.0kPaは、通常圧力調整弁11、高炉内圧用圧力調整弁21の両方が安定して圧力を制御できる範囲として選択したものである。
同図11のL11に示すように、亜真空領域内の同じ圧力範囲13.3〜40.0kPaを制御するに際して通常圧力調整弁11では、バルブ角度θ1が11.3°から19.1° までの7.8°しか変化しないのに対して、L21にて示すように、高炉内圧用圧力調整弁21では、バルブ角度θ2が27°から42°までの15°もの約倍程度の大きな変化量をもって制御することができる。よって、同じ圧力範囲を比較してもバルブの口径サイズの小さい高炉内圧用圧力調整弁21の方が通常圧力調整弁11よりも圧力の制御性が格段によいことがわかる。
また、同図11のAに示すように、亜真空領域内のうち高圧側では、通常圧力調整弁11は、バルブ角度θ1の変化に対して圧力Pの変化が不安定となるのに対して、Bにて示すように、高炉内圧用圧力調整弁21は、バルブ角度θ2の変化に対して圧力Pの変化が安定して追従する。よって亜真空領域内のうち高圧側の制御性をみても、バルブ口径サイズの小さい高炉内圧用圧力調整弁21の方が通常圧力調整弁11よりも圧力の制御安定性が格段によいことがわかる。
なお、上述の説明では、図10に示すように、圧力調整弁11、21の口径サイズがそれぞれ、配管10、20の内径に対応しているものとして説明したが、配管10、20の内径は同径とし、圧力調整弁11、21の口径サイズのみを異ならせる実施も可能である。
以下、通常圧力調整弁11、高炉内圧用圧力調整弁21を制御するコントローラ40の構成について説明する。
さて、図2に示すように、コントローラ40は、制御盤43と、通常圧力調整コントローラ41と、高炉内圧用圧力調整コントローラ42とを含んで構成されている。
共通の排気ライン9aには、同排気ライン9a内を流れるガスの圧力を検出することで、間接的に、CZ炉2内の圧力Pを検出する圧力センサ50が設けられている。圧力センサ50は、第1の圧力センサ51と、第2の圧力センサ52とからなる。第1の圧力センサ51は、2接点出力の圧力スイッチで構成されている。第1の圧力センサ51では、圧力P1、P2が(P1<P2)接点出力値(しきい値)として設定されており、検出圧力Pがしきい値P1に達すると警報接点信号を出力し、圧力Pがしきい値P2に達すると異常接点信号を出力する。
第2の圧力センサ52は、アナログセンサで構成されており、CZ炉2内の現在の炉内圧力値Pが検出され、圧力モニタ値として出力する。
第1の圧力センサ51から出力された異常/警報接点信号は、制御盤43に入力される。また第2の圧力センサから出力された圧力モニタ値Pは、フィードバック量として、通常圧力調整コントローラ41、高炉内圧用圧力調整コントローラ42に入力される。
制御盤43には、後述するように、通常炉内圧条件または高炉内圧条件での製造を指示するスイッチが設けられている。
制御盤43は、上記スイッチによって通常炉内圧品製造のための通常炉内圧条件が指示されると、通常炉内圧条件に対応する設定圧力信号を生成して、通常圧力調整コントローラ41に対して出力する。設定圧力信号は、通常炉内圧領域内の目標圧力値Pr1に対応している。通常圧力調整コントローラ41は、目標圧力値Pr1と、圧力モニタ値Pとの偏差を零にするためのバルブ角度θ1を演算してバルブ角度信号として、通常圧力調整弁11に出力する。これにより通常圧力調整弁11のバタフライバルブ11aが作動されて、バルブ角度θ1が指令された角度まで変化する。
同様に、制御盤43は、スイッチによって高炉内圧品製造のための高炉内圧条件が指示されると、高炉内圧条件に対応する設定圧力信号を生成して、高炉内圧用圧力調整コントローラ42に対して出力する。設定圧力信号は、亜真空領域内の目標圧力値Pr2に対応している。高炉内圧用圧力調整コントローラ42は、目標圧力値Pr2と、圧力モニタ値Pとの偏差を零にするためのバルブ角度θ2を演算してバルブ角度信号として、高炉内圧用圧力調整弁21に出力する。これにより高炉内圧用圧力調整弁21のバタフライバルブ21aが作動されて、バルブ角度θ2が指令された角度まで変化する。
制御盤43では、異常接点信号が入力されると、開放弁31を開放させるための開信号が生成されて、開放弁31に対して出力される。これにより開放弁31がエア駆動のアクチュエータにより開弁され、緊急用排気ライン30が開かれる。なお、平常時は、制御盤43から閉信号が出力されており(開信号オフ)、開放弁31は閉弁され、緊急用排気ライン30は閉じられている。
以下、図3、図4のフローチャートを参照して、コントローラ40で行われる処理内容について説明する。
図3は、通常圧力調整弁11、高炉内圧用圧力調整弁21の制御処理手順を示すフローチャートである。
作業者が制御盤43のスイッチを操作して、引上げ条件として通常炉内圧品を製造するための通常炉内圧条件を指示、入力すると(ステップ101)、通常排気ライン10を使用するために、通常圧力調整弁11を開状態にするとともに、高炉内圧用圧力調整弁21を閉状態にするために、設定圧力信号を、通常圧力調整コントローラ41、高炉内圧用圧力調整コントローラ42に出力する。これにより、通常圧力調整弁11のバタフライバルブ11aが作動されて通常圧力調整弁11が開状態になるとともに、高炉内圧用圧力調整弁21のバタフライバルブ21aが作動されて高炉内圧用圧力調整弁21が閉状態になる(ステップ108)。
つぎに、通常炉内圧条件に対応する目標圧力値Pr1を示す設定圧力信号が生成されて、通常圧力調整コントローラ41に対して出力される。通常圧力調整コントローラ41では、目標圧力値Pr1と、第2の圧力センサ52で検出される圧力モニタ値Pとの偏差を零にするためのバルブ角度θ1を演算してバルブ角度信号として、通常圧力調整弁11に出力する。これにより通常圧力調整弁11のバタフライバルブ11aが作動されて、バルブ角度θ1が指令された角度まで変化する(ステップ109、110)。
第2の圧力センサ52で検出される圧力モニタ値Pが目標圧力値Pr1に達すると、シリコン単結晶インゴットの引上げが開始される(ステップ111)。これによりCZ炉2内の圧力が通常炉内圧領域内の所望する値に制御されつつ、低濃度、高抵抗のシリコン単結晶インゴットが通常炉内圧条件で引上げられる。通常炉内圧条件の引上げが終了すると(ステップ106)、つぎのバッチに備えて、引上げ条件の指示がクリアされて(ステップ107)、最初のステップ101に戻る。
作業者が制御盤43のスイッチを操作して、引上げ条件として高炉内圧品を製造するための高炉内圧条件を指示、入力すると(ステップ101)、高炉内圧排気ライン20を使用するために、高炉内圧用圧力調整弁21を開状態にするとともに、通常圧力調整弁11を閉状態にするために、設定圧力信号を、通常圧力調整コントローラ41、高炉内圧用圧力調整コントローラ42に出力する。これにより、通常圧力調整弁11のバタフライバルブ11aが作動されて通常圧力調整弁11が閉状態になるとともに、高炉内圧用圧力調整弁21のバタフライバルブ21aが作動されて高炉内圧用圧力調整弁21が開状態になる。なお、高炉内圧排気ライン20で圧力制御する際には、通常排気ライン10を閉状態にしてもよく、また通常排気ライン10の開度をあまり上げずに高炉内圧用圧力調整弁21のコンダクタンスよりも充分に小さいコンダクタンスにすることで、亜真空領域における圧力の制御性能を良好にすることができる(ステップ102)。
つぎに、高炉内圧条件に対応する目標圧力値Pr2を示す設定圧力信号が生成されて、高炉内圧用圧力調整コントローラ42に対して出力される。高炉内圧用力調整コントローラ42では、目標圧力値Pr2と、第2の圧力センサ52で検出される圧力モニタ値Pとの偏差を零にするためのバルブ角度θ2を演算してバルブ角度信号として、高炉内圧用圧力調整弁21に出力する。これにより高炉内圧用圧力調整弁21のバタフライバルブ21aが作動されて、バルブ角度θ2が指令された角度まで変化する(ステップ103、104)。
第2の圧力センサ52で検出される圧力モニタ値Pが目標圧力値Pr2に達すると、シリコン単結晶インゴットの引上げが開始される(ステップ105)。これによりCZ炉2内の圧力が亜真空領域内の所望する値に制御されつつ、揮発性でN型の高濃度、低抵抗のシリコン単結晶インゴットが高炉内圧条件で引上げられる。高炉内圧条件の引上げが終了すると(ステップ106)、つぎのバッチに備えて、引上げ条件の指示がクリアされて(ステップ107)、最初のステップ101に戻る。
なお、図3に示すフローチャートでは、1回のバッチ、1回の引き上げ工程で、亜真空領域における圧力の制御と、通常炉内圧領域における圧力の制御のいずれかが行なわれ、亜真空領域と通常炉内圧領域にまたがった圧力領域で圧力制御が行なわれないものとして説明した。しかし、亜真空領域と通常炉内圧領域にまたがった圧力領域で、1本のシリコン単結晶インゴットを引き上げる実施も可能である。この場合には、通常圧力調整弁11および高炉内圧用圧力調整弁21を、PID制御などの制御式を用いて、同時に制御する処理が行なわれる。
図4は、開放弁31の制御処理手順を示すフローチャートである。図4の処理は、図3と並行して行われるものとする。
作業者が制御盤43のスイッチを操作して、引上げ条件として高炉内圧品を製造するための高炉内圧条件を指示、入力すると(ステップ201)、ステップ202以降の警報/異常処理が行われる。これは、高炉内圧品の製造が行われる亜真空領域は、通常炉内圧領域よりも元々高圧であるため、CZ炉2内の圧力は迅速に異常な圧力まで上昇してしまうおそれがあるからである。
ステップ202では、第1の圧力センサ51から警報接点信号が出力されているか否かが判断される(ステップ202)。
検出圧力Pがしきい値P1に達し警報接点信号が出力されている場合には、図示しないブザーまたはパトライトなどの警報発令手段が作動して、作業者に警告が与えられる。なお、しきい値P1は、たとえば84.0kPaに設定される(ステップ203)。
つぎに、第1の圧力センサ51から異常接点信号が出力されているか否かが判断される(ステップ204)。
検出圧力Pがしきい値P2に達し異常接点信号が出力されている場合には、異常処置がとられる。開放弁31を開放させるための開信号が生成されて、開放弁31に対して出力される。これにより開放弁31がエア駆動のアクチュエータにより開弁され、緊急用排気ライン30が開かれる。また、これと同時に、CZ炉2内の圧力を目標圧力値に制御する圧力制御が中止される。なお、しきい値P2は、たとえば90.7kPaに設定される。(ステップ205、206)。
なお、図4では、引上げ条件として高炉内圧品を製造するための高炉内圧条件が指示されたときに、ステップ202以降の警報/異常処理が行われるものとして説明したが、通常炉内品を製造するための通常炉内圧条件が指示されたときにも、同様に、ステップ202以降の警報/異常処理を行ってもよい。
つぎに本第1実施例の効果について説明する。
(効果イ)本第1実施例によれば、亜真空領域で制御性よく圧力を調整することができる高炉内圧用圧力調整弁21が、高炉内圧排気ライン20に設けられ、コントローラ40で、この圧力調整弁21を制御するようにしている(図3のステップ101〜107)。このため、ドーパントの蒸発が抑制され所望するドーパント濃度に精度よく制御することができるようになる。これにより高炉内圧品であるN型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗のシリコン単結晶の品質を向上させることができ、製造歩止まりが向上する。
(効果ロ) また、本第1実施例によれば、コントローラ40は、圧力センサ51で検出されたCZ炉内圧力Pが異常値P2に達した場合に、開放弁31が開放されるように、開放弁31を制御するようにしている(図4のステップ201〜206)。このため、ドーパントを含む大量の化合物アモルファスが高炉内圧排気ライン20へ流入して、高炉内圧排気ライン20が化合物アモルファスの固着、堆積によって閉塞したり、あるいは圧力調整弁21が故障したりして、CZ炉2内が異常に高圧化したとしても、開放弁31が開放されて、CZ炉2内のガスを、排気口4、5から、高炉内圧排気ライン20とは独立して設けられた緊急用排気ライン30を通して、真空ポンプ8を介して外部の安全な場所に排気させることができる。
よって、本第1実施例によれば、N型の揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗のシリコン単結晶を製造するにあたり、CZ炉2外へのガスの流出を未然に防止することができ、作業者に与える悪影響を回避できるとともに、クリーンルームの汚染が回避されて製品の品質、製造歩止まりが向上する。
(効果ハ) また、本第1実施例によれば、通常炉内圧品および高炉内圧品の両方の製造に適合した装置を、既存の半導体単結晶製造装置1(図1)にわずかな変更、つまり新たな排気ライン20、圧力調整弁21を増設する等するだけで構築することができる。これにより、設備コストを抑制できるとともに、新たに炉を増やすことなく限られた設置スペースに装置を配置することができる。
ここで、図1に示す既存のシリコン単結晶製造装置1と同じく、通常排気ライン10に設けられた通常圧力調整弁11を、コントローラ40で制御して、CZ炉2内の圧力を従来と同様の通常炉内圧領域内で調整することによって、高抵抗の半導体単結晶(通常炉内圧品)が製造される。通常炉内圧品は、通常炉内圧領域で酸素濃度等の引上げ条件が定められている。このため、従来と代わらない引上げ条件にて通常炉内圧品を高品質に歩留まりよく製造することができる。
上述した第1実施例に対しては、適宜、省略ないしは変形した実施が可能である。
(第2実施例)
図5は、図2と対比すると、高炉内圧排気ライン20以外の他の通常排気ライン10、緊急用排気ライン30が省略された構成であり、CZ炉2から真空ポンプ8に連通する排気ラインとして、高炉内圧排気ライン20のみが設けられた構成である。
この第2実施例によれば、上述した効果イを得ることができる。
(第3実施例)
図6は、図2と対比すると、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30以外の他の通常排気ライン10が省略された構成であり、CZ炉2から真空ポンプ8に連通する排気ラインとして、高炉内圧排気ライン20、緊急用排気ライン30のみが設けられた構成である。
この第3実施例によれば、上述した効果イ、効果ロを得ることができる。
(第4実施例)
図7は、図2と対比すると、高炉内圧排気ライン20、通常排気ライン10以外の他の緊急用排気ライン30が省略された構成であり、CZ炉2から真空ポンプ8に連通する排気ラインとして、高炉内圧排気ライン20、通常排気ライン10のみが設けられた構成である。
この第4実施例によれば、上述した効果イ、効果ハを得ることができる。
なお、この第4実施例では、緊急用排気ライン30で行われる緊急時の開放処理を、通常排気ライン10で行わせるようにしてもよい。すなわち、高炉内圧排気ライン20の圧力調整弁21を制御しているときに、CZ炉2内の圧力が異常になった場合には、通常排気ライン10の圧力調整弁11を開放させることによって、緊急排気を行わせてCZ炉2内からの炉外へのガスの流出を回避することができる。
(第5実施例)
上述の説明では、真空領域を、2つの領域に区分し、それに応じて、高炉内圧排気ライン20、通常排気ライン10という2本の排気ラインおよびこれら排気ライン20、10に対応する2つの圧力調整弁21、11を設けて、それら排気ラインを流れる圧力を調整する実施を想定したが、本発明は、2つの真空領域、2本の排気ライン20、10、2つの圧力調整弁21、11に限定されるわけではない。亜真空領域における圧力を制御できる排気ライン、圧力調整弁を設けていさえすれば、真空領域を、3つ以上の領域に区分し、それに応じて、3本以上の排気ライン、およびこれら排気ラインに対応する3つ以上の圧力調整弁を設けて、それら排気ラインを流れる圧力を調整する実施も可能である。
なお、実施例では、半導体単結晶としてシリコン単結晶を製造する場合を想定して説明したが、本発明は、シリコン以外の半導体あるいはガリウム砒素などの化合物半導体を製造する場合にも同様にして適用することができる。また、実施例では、引上げ法として、CZ法を想定して説明したが、本発明は、引上げ方法は問わない。磁場印加引上げ法(MCZ法)によって半導体単結晶を引き上げる場合にも当然本発明を適用することができる。さらには、FZ法などのCZ法(MCZ法)とは異なる他の引き上げ法により半導体単結晶を引上げる場合にも本発明を適用することができる。
図1は、従来のシリコン単結晶製造装置の構成を示した図である。 図2は、第1実施例のシリコン単結晶製造装置の構成を示した図である。 図3は、コントローラで行われる処理内容について説明する図で、通常圧力調整弁、高炉内圧用圧力調整弁の制御処理手順を示すフローチャートである。 図4は、コントローラで行われる処理内容について説明する図で、開放弁の制御処理手順を示すフローチャートである。 図5は、第2実施例のシリコン単結晶製造装置の構成を示した図である。 図6は、第3実施例のシリコン単結晶製造装置の構成を示した図である。 図7は、第4実施例のシリコン単結晶製造装置の構成を示した図である。 図8は、CZ炉から真空ポンプに向かう不活性ガスの流れを概念的に示した図である。 図9は、横軸をバルブ角度とし、縦軸を開口面積としたときの対応関係を示した図である。 図10は、バルブ角度と、開口面積の関係を示した図である。 図11は、横軸を圧力とし、縦軸をバルブ角度としたときの対応関係を示した図である。
符号の説明
1 シリコン単結晶製造装置、 2 CZ炉、10 通常排気ライン、11 通常圧力調整弁、20 高炉内圧排気ライン、21 高炉内圧用圧力調整弁、30 緊急用排気ライン、31 開放弁、40、41、42、43 コントローラ、50、51、52 圧力センサ

Claims (3)

  1. 炉内に不活性ガスを供給し、炉内のガスを排気口から排気ラインを介して、排気しつつ、炉内でドーパントが添加された半導体単結晶を製造する半導体単結晶の製造装置において、
    炉内で、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶を製造するに際して、
    それぞれ独立して並列に設けられ、排気口に連通し炉内のガスを排気する高炉内圧排気ラインおよび緊急用排気ラインと、
    高炉内圧排気ラインに設けられ、揮発性のドーパントの蒸発を抑制して半導体単結晶のドーパント濃度を高濃度にするための亜真空領域に対応する圧力範囲で炉内の圧力を調整する圧力調整弁と、
    緊急用排気ラインに設けられた開放弁と、
    炉内の圧力を検出する圧力検出手段と、
    圧力検出手段の検出値に基づいて、半導体単結晶が所望する低抵抗値になるように、圧力調整弁を制御する第1の制御手段と、
    圧力検出手段で検出された炉内圧力が異常値に達した場合に、開放弁が開放されるように、開放弁を制御する第2の制御手段と
    が備えられていること
    を特徴とする半導体単結晶の製造装置。
  2. 炉内に不活性ガスを供給し、炉内のガスを排気口から排気ラインを介して、排気しつつ、炉内でドーパントが添加された半導体単結晶を製造する半導体単結晶の製造装置において、
    炉内で、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶と、該低抵抗品よりも高抵抗の半導体単結晶とを製造する装置であって、
    それぞれ独立して並列に設けられ、排気口に連通し、炉内のガスを排気する高炉内圧排気ラインおよび通常排気ラインと、
    通常炉内排気ラインに設けられ、高真空の範囲で炉内の圧力を調整する通常圧力調整弁と、
    高炉内圧排気ラインに設けられ、通常圧力調整弁よりも口径サイズが小さく設定され、低真空の範囲で炉内の圧力を調整する高炉内圧用圧力調整弁と、
    低抵抗の半導体単結晶を製造する際には、高炉内圧用圧力調整弁を制御し、高抵抗の半導体単結晶を製造する際には、通常圧力調整弁を制御する制御手段と
    が備えられていること
    を特徴とする半導体単結晶の製造装置。
  3. 炉内に不活性ガスを供給し、炉内のガスを排気口から排気ラインを介して、排気しつつ、炉内でドーパントが添加された半導体単結晶を製造する半導体単結晶の製造装置において、
    炉内で、揮発性のドーパントが高濃度に添加された低抵抗の半導体単結晶と、該低抵抗品よりも高抵抗の半導体単結晶とを製造する装置であって、
    それぞれ独立して並列に設けられ、排気口に連通し、炉内のガスを排気する高炉内圧排気ラインおよび通常排気ライン並びに緊急用排気ラインと、
    通常炉内排気ラインに設けられ、高真空の範囲で炉内の圧力を調整する通常圧力調整弁と、
    高炉内圧排気ラインに設けられ、通常圧力調整弁よりも口径サイズが小さく設定され、低真空の範囲で炉内の圧力を調整する高炉内圧用圧力調整弁と、
    緊急用排気ラインに設けられた開放弁と、
    炉内の圧力を検出する圧力検出手段と、
    低抵抗の半導体単結晶を製造する際には、高炉内圧用圧力調整弁を制御し、高抵抗の半導体単結晶を製造する際には、通常圧力調整弁を制御する第1の制御手段と、
    圧力検出手段で検出された炉内の圧力が異常値に達した場合に、開放弁が開放されるように、開放弁を制御する第2の制御手段と
    が備えられていること
    を特徴とする半導体単結晶の製造装置。
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