特許文献1では、反応室の上流側の配管に濃度測定器が設置されている。このため、反応室の上流側の配管が長く、反応室に到達するまでにガスが流れる経路の長さが長い。したがって、蒸気圧の低いガス等を用いる場合、反応室の上流側の配管内をガスが流れているときに、その配管の内部に成膜用原料が析出し易く、ガス中の成膜用原料の濃度が低下し易い。このため、反応室に供給されるガス中の成膜用原料の濃度が安定しないという問題がある。
特許文献2では、反応室の上流側の配管に濃度測定器が設置されていないので、特許文献1の問題は生じない。しかしながら、特許文献2では、反応室にガスを供給している状態では、バイパス管にガスが流れないので、濃度測定器による測定を行うことができない。すなわち、成膜処理を実施しながらガス中の成膜用原料の濃度を測定することができない。
したがって、本明細書では、反応室に供給されるガス中の成膜用原料の濃度を安定させながら、成膜処理中にガス中の成膜用原料の濃度を測定することが可能な技術を提供する。
本明細書が開示する成膜装置は、基板の表面に膜を成長させる。この成膜装置は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給器と、前記成膜用原料の供給源を収容する原料容器と、前記キャリアガス供給器から前記原料容器に前記キャリアガスを導入する原料容器供給管と、前記原料容器供給管に設置されているとともに前記原料容器供給管を流れるキャリアガスの流量を制御する第1流量制御器と、前記原料容器内で生成された原料ガスを前記原料容器から排出する原料容器排出管と、反応室と、前記原料容器排出管から前記反応室にガスを供給する反応室供給管と、前記反応室供給管に設置されているとともに前記反応室供給管を流れるガスの流量を制御する第2流量制御器と、前記反応室からガスを排出する反応室排出管と、反応室バイパス管と、圧力制御器と、濃度測定器を備えている。前記反応室バイパス管は、上流端が前記反応室供給管に接続されており、下流端が前記反応室排出管に接続されており、内部にガスが流れる。前記圧力制御器は、前記反応室バイパス管に設置されている。前記圧力制御器は、前記圧力制御器よりも上流側であり、前記第2流量制御器よりも上流側であり、前記第1流量制御器よりも下流側の空間の圧力を制御する。前記濃度測定器は、前記圧力制御器よりも下流側の前記反応室バイパス管に設置されており、前記反応室バイパス管内を流れるガスに含まれる前記成膜用原料の濃度を測定する。前記原料容器排出管から供給される前記原料ガスが、前記反応室供給管と前記反応室バイパス管とに分岐して流れるように構成されている。
なお、基板は、半導体基板であってもよいし、半絶縁基板や絶縁基板等の他の基板であってもよい。
この成膜装置では、成膜用原料を含むガスが、反応室供給管、反応室及び反応室排出管によって構成される主経路と、反応室バイパス管との両方に流れる。ガスは、主経路と反応室バイパス管とに分岐して流れるので、成膜用原料の濃度が略同じガスが、主経路(すなわち、反応室)と反応室バイパス管とに流れる。したがって、濃度測定器が測定する濃度(すなわち、反応室バイパス管内を流れるガスに含まれる成膜用原料の濃度)は、反応室供給管を通って反応室に供給されるガス(第2流量制御器を通過するガス)に含まれる成膜用原料の濃度と略等しい。したがって、この成膜装置によれば、反応室にガスを供給しながら、ガス中の成膜用原料の濃度を測定することができる。すなわち、この成膜装置によれば、反応室内で成膜処理を実施しながら、反応室に供給されるガス中の成膜用原料の濃度を測定することができる。また、この成膜装置では、反応室バイパス管に濃度測定器が設置されているので、反応室よりも上流側の配管に濃度測定器を設置する必要がない。このため、反応室よりも上流側の配管の長さを短くすることができる。このため、反応室よりも上流側の配管の内部に成膜用原料が析出し難く、反応室に供給されるガスの濃度を安定させることができる。
なお、反応室の圧力を制御するために、反応室排出管と反応室バイパス管との接続点よりも下流側の配管に、圧力制御機構を設けてもよい。
前記原料容器を有する上記成膜装置の一例では、前記原料容器内に収容されている前記成膜用原料の前記供給源が、固体であってもよい。
このような構成においては、ガス中の成膜用原料が配管内に析出し易く、上流側の配管内でガス中の成膜用原料の濃度が低下し易い。したがって、反応室の上流側の配管を短くすることでより高い効果(反応室に供給されるガス中の成膜用原料の濃度を安定させる効果)を得ることができる。
前記供給源が固体である上記成膜装置の一例では、前記原料容器内に収容されている前記成膜用原料の前記供給源が、マグネシウムを供給してもよい。
上記成膜装置の一例は、成膜処理中に前記濃度測定器の測定結果を繰り返し記録する記録器をさらに有していてもよい。
この構成によれば、成膜処理中にガス中の成膜用原料の濃度をモニタリングすることができる。
また、前記濃度測定器の測定結果に基づいて前記第1流量制御器の流量をフィードバック制御してもよい。
また、本明細書は、成膜装置を用いた成膜処理を備える半導体装置の製造方法を提供する。前記成膜装置は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給器と、前記成膜用原料の供給源を収容する原料容器と、前記キャリアガス供給器から前記原料容器に前記キャリアガスを導入する原料容器供給管と、前記原料容器供給管に設置されているとともに前記原料容器供給管を流れるキャリアガスの流量を制御する第1流量制御器と、前記原料容器内で生成された原料ガスを前記原料容器から排出する原料容器排出管と、反応室と、前記原料容器排出管から前記反応室にガスを供給する反応室供給管と、前記反応室供給管に設置されているとともに前記反応室供給管を流れるガスの流量を制御する第2流量制御器と、前記反応室からガスを排出する反応室排出管と、反応室バイパス管と、圧力制御器と、濃度測定器を備えている。前記反応室バイパス管は、上流端が前記反応室供給管に接続されており、下流端が前記反応室排出管に接続されており、内部にガスが流れる。前記圧力制御器は、前記反応室バイパス管に設置されている。前記圧力制御器は、前記圧力制御器よりも上流側であり、前記第2流量制御器よりも上流側であり、前記第1流量制御器よりも下流側の空間の圧力を制御する。前記濃度測定器は、前記圧力制御器よりも下流側の前記反応室バイパス管に設置されており、前記反応室バイパス管内を流れるガスに含まれる前記成膜用原料の濃度を測定する。前記製造方法が、前記反応室内に基板を配置する工程と、前記反応室供給管、前記反応室、及び、前記反応室排出管を経由する経路に前記成膜用原料を含むガスを流すことによって前記反応室内に配置された前記基板の表面に膜を成長させる工程と、前記膜を成長させる前記工程と並行して、前記反応室バイパス管に前記成膜用原料を含むガスを流しながら、前記濃度測定器によって前記反応室バイパス管内を流れるガスに含まれる前記成膜用原料の濃度を測定する工程を有する。
この方法によれば、成膜工程と並行して、ガスに含まれる成膜用原料の濃度を測定することができる。また、この方法では、反応室バイパス管内でガス中の成膜用原料の濃度を測定するので、反応室の上流側の配管を短くすることができる。したがって、この方法によれば、反応室に供給されるガス中の成膜用原料の濃度を安定させることができる。
図1は、実施形態に係る成膜装置10を示している。成膜装置10は、Mg原料ガス供給器50と、Ga原料ガス供給器70と、N原料ガス供給器72と、成膜器20を有している。成膜器20は、反応室22を有している。各原料ガス供給器50、70、72から成膜器20の反応室22に原料ガスが供給される。成膜処理においては、反応室22内に基板80を配置し、基板80の表面に膜を成長させる。本実施形態では、基板80として窒化ガリウム系の半導体基板または半絶縁基板を使用する。本実施形態では、基板80の表面にp型のGaN(窒化ガリウム)の半導体膜を成長させる。Ga原料ガス供給器70は、Ga(ガリウム)を供給するためのGa原料ガスとしてトリメチルガリウムを含むガスを供給する。N原料ガス供給器72は、N(窒素)を供給するためのN原料ガスとしてアンモニアを含むガスを供給する。Mg原料ガス供給器50は、p型不純物であるMg(マグネシウム)を含むMg原料ガスとしてCp2Mg(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム)を含むガスを供給する。本実施形態ではGa原料ガス供給器70とN原料ガス供給器72の構成は一般的であるので、図1においてはMg原料ガス供給器50がGa原料ガス供給器70とN原料ガス供給器72よりも詳細に示されている。
Mg原料ガス供給器50は、キャリアガス供給器52、キャリアガス供給管54、原料容器供給管56、原料容器58、原料容器排出管60及び原料容器バイパス管62を有している。
キャリアガス供給器52は、キャリアガス供給管54の上流端に接続されている。キャリアガス供給器52は、キャリアガス供給管54内にキャリアガスを導入する。キャリアガスは、Mg原料と反応がなく、かつ、純度の高いガスが好ましく、本実施形態では水素ガスである。キャリアガスは、約250kPaの圧力で供給される。キャリアガス供給管54には、開閉弁54aが設置されている。開閉弁54aは、キャリアガス供給管54を開閉することができる。成膜処理中においては、開閉弁54aは開かれている。キャリアガス供給管54の下流端は、原料容器供給管56と原料容器バイパス管62に分岐している。キャリアガス供給管54内を下流端まで流れたキャリアガスは、原料容器供給管56と原料容器バイパス管62とに分かれ、それぞれの内部を流れる。
上述したように、原料容器供給管56の上流端は、キャリアガス供給管54の下流端に接続されている。原料容器供給管56の下流端は、原料容器58に接続されている。原料容器供給管56には、流量制御器56aと開閉弁56bが設置されている。流量制御器56aは、流量調整弁を内蔵しており、設定された流量のガスが原料容器供給管56内に流れるように流量調整弁の開度を調節する。本実施形態では、流量制御器56aの最大流量は約100sccmであり、流量制御器56aの設定流量は約50sccmとされている。流量制御器56aは、最大流量の約1%の誤差範囲内で流量を制御することができる。開閉弁56bは、流量制御器56aの下流側で、原料容器供給管56に設置されている。開閉弁56bは、原料容器供給管56を開閉することができる。原料容器58には、原料容器排出管60の上流端が接続されている。原料容器排出管60には、開閉弁60aが設置されている。開閉弁60aは、原料容器排出管60を開閉することができる。原料容器供給管56と原料容器排出管60とを接続するように、開閉弁61aが接続されている。成膜処理中においては、開閉弁56b、60aは開かれており、開閉弁61aは閉じられている。原料容器58内には、成膜用原料の供給源として、固体原料58aが配置されている。本実施形態では、固体原料58aは、固体のCp2Mgである。原料容器58内の固体原料58aは、約20℃に保たれている。キャリアガス供給管54から原料容器供給管56に流入したガスは、原料容器供給管56、原料容器58及び原料容器排出管60内を下流側へ流れる。キャリアガスが原料容器58内に流入すると、原料容器58内の固体原料58aが気化し、成膜用原料となるガス(Cp2Mgガス)が発生する。発生した成膜用原料は、キャリアガスと混合される。このため、原料容器58内で、成膜用原料(Cp2Mgガス)を高濃度に含む高濃度原料ガスが生成される。したがって、原料容器排出管60には、高濃度原料ガスが流れる。
上述したように、原料容器バイパス管62の上流端は、原料容器供給管56の上流端とともにキャリアガス供給管54の下流端に接続されている。つまり、原料容器バイパス管62の上流端は、キャリアガス供給管54の下流端と原料容器供給管56の上流端とに接続されている。原料容器バイパス管62の下流端は、原料容器排出管60と合流して、原料ガス供給管64になっている。すなわち、原料容器バイパス管62の下流端は、原料容器排出管60の下流端と原料ガス供給管64の上流端とに接続されている。原料容器バイパス管62には、流量制御器62aが設置されている。流量制御器62aは、流量調整弁を内蔵しており、原料容器バイパス管62内に設定された流量のガスが流れるように流量調整弁の開度を調節する。本実施形態では、流量制御器62aの最大流量は約1000sccmであり、流量制御器62aの設定流量は約450sccmとされている。流量制御器62aは、最大流量の約1%の誤差範囲内で流量を制御することができる。
原料容器排出管60の下流端まで流れた高濃度原料ガスと、原料容器バイパス管62の下流端まで流れたキャリアガスは、原料ガス供給管64内に流入し、原料ガス供給管64内で混合される。その結果、高濃度原料ガスよりも成膜用原料の濃度が低下したガスが、原料ガス供給管64内で生成される。原料ガス供給管64内のガスが、Mg原料ガスとして成膜器20に供給される。原料ガス供給管64の下流端は、成膜器20内で反応室供給管24と反応室バイパス管28に分岐している。原料ガス供給管64内を下流端まで流れたMg原料ガスは、反応室供給管24と反応室バイパス管28とに分かれ、それぞれの内部を流れる。
成膜器20は、反応室供給管24、反応室22、反応室排出管26、反応室バイパス管28を有している。
上述したように、反応室供給管24の上流端は、原料ガス供給管64の下流端に接続されている。反応室供給管24の下流端は、反応室22に接続されている。反応室供給管24には、流量制御器24aと開閉弁24bが設置されている。流量制御器24aは、流量調整弁を内蔵しており、反応室供給管24内に設定された流量のガスが流れるように流量調整弁の開度を調節する。本実施形態では、流量制御器24aの最大流量は約20sccmであり、流量制御器24aの設定流量は約10sccmとされている。流量制御器24aは、最大流量の約1%の誤差範囲内で流量を制御することができる。開閉弁24bは、流量制御器24aの下流側で、反応室供給管24に設置されている。開閉弁24bは、反応室供給管24を開閉することができる。反応室22には、反応室排出管26の上流端が接続されている。反応室排出管26には、開閉弁26aが設置されている。開閉弁26aは、反応室排出管26を開閉することができる。成膜処理中においては、開閉弁24b、26aは開かれている。反応室22内には基板80が配置される。反応室22は、図示しないヒータを備えている。ヒータによって、反応室22内に配置された基板80を加熱することができる。本実施形態の成膜処理では、基板80を約980℃に加熱する。反応室供給管24内を流れるMg原料ガスは、反応室22内に導入される。同時に、Ga原料ガス供給器70から反応室22にGa原料ガスが導入され、N原料ガス供給器72から反応室22にN原料ガスが導入される。Ga原料ガス、N原料ガス、及び、Mg原料ガスが混合されたガスが、反応室22内の基板80の表面に供給される。すると、基板80の表面にp型のGaNの結晶が析出する。これによって、基板80の表面にp型のGaN膜がエピタキシャル成長する。反応室22内のガスは、反応室排出管26に排出される。
上述したように、反応室バイパス管28の上流端は、反応室供給管24の上流端とともに原料ガス供給管64の下流端に接続されている。つまり、反応室バイパス管28の上流端は、原料ガス供給管64の下流端と反応室供給管24の上流端とに接続されている。反応室バイパス管28の下流端は、反応室排出管26と合流して、原料ガス排出管30になっている。すなわち、反応室バイパス管28の下流端は、反応室排出管26の下流端と原料ガス排出管30の上流端とに接続されている。原料ガス排出管30の下流部は分岐している。分岐した一方の管に真空ポンプ90が設置されており、分岐した他方の管に流量可変バルブ92が設置されている。真空ポンプ90と流量可変バルブ92は、反応室圧力制御機構の一部を構成している。反応室圧力制御機構は、さらに、反応室22内の圧力を測定する測定器(図示省略)を有する。流量可変バルブには、圧力調整用ガスが流れる。流量可変バルブ92は、反応室22内の圧力が指令値通りになるように圧力調整用ガスの流量をフィードバック制御する。真空ポンプ90が原料ガス排出管30内のガスを外部に排出することで、図1の矢印に示すようにガスの流れが生じる。流量可変バルブ92で圧力調整用ガスの流量を制御することで、反応室22の圧力を任意に調整することができる。反応室バイパス管28には、圧力制御器28a、濃度測定器28b及び開閉弁28cが設置されている。濃度測定器28bは圧力制御器28aの下流側に配置されており、開閉弁28cは濃度測定器28bの下流側に配置されている。開閉弁28cは、反応室バイパス管28を開閉することができる。成膜処理中においては、開閉弁28cは開かれている。圧力制御器28aは、圧力制御器28aよりも上流側の配管内の圧力を一定の圧力に制御する。より詳細には、圧力制御器28aは、流量制御器56aより下流側、流量制御器62aより下流側、流量制御器24aより上流側及び圧力制御器28aより上流側の配管内の圧力を制御する。濃度測定器28bは、反応室バイパス管28内を流れるMg原料ガス中の成膜用原料(すなわち、Cp2Mgガス)の濃度を測定する。本実施形態では、濃度測定器28bは、フーリエ変換赤外分光方式の濃度測定器である。上述したように、原料ガス供給管64から成膜器20に供給されたMg原料ガスは、反応室供給管24と反応室バイパス管28に分かれて流れる。したがって、反応室供給管24内のMg原料ガス中の成膜用原料の濃度と、反応室バイパス管28内のMg原料ガス中の成膜用原料の濃度は、略等しい。このため、濃度測定器28bで反応室バイパス管28内のMg原料ガス中の成膜用原料の濃度を測定することで、反応室22に供給されるMg原料ガス中の成膜用原料の濃度を測定することができる。
濃度測定器28bには、記録器29が電気的に接続されている。濃度測定器28bは、成膜処理中に繰り返し成膜用原料の濃度(反応室バイパス管28内のMg原料ガス中の成膜用原料の濃度)を測定し、それらの測定値は記録器29に記憶される。
次に、成膜装置10を用いた成膜処理により半導体装置を製造する方法について説明する。まず、反応室22内に基板80を配置する。次に、開閉弁61aを閉じ、開閉弁54a、56b、60a、26a及び28cを開く。また、流量制御器56a、62a及び24aと圧力制御器28aの設定値を、所定値に設定する。また、キャリアガス供給器52によってキャリアガスの供給を開始するとともに、反応室に水素、窒素、アンモニアの混合ガスを基板上に供給し、原料ガス排出管30に設置されている真空ポンプ90を作動させることで、図1の矢印に示すガスの流れを生じさせる。ここで、図示していないが、上述した水素及び窒素を供給するガス供給器(原料ガスではないガスを供給する装置)が、反応室22に接続されている。また、上述したアンモニアは、N原料ガス供給器72から供給される。次に、基板80の温度を成膜温度まで上昇させる。基板80の温度が成膜温度に到達したら、濃度測定器28bの濃度値が一定値に達していることを確認し、Ga原料ガス供給器70を作動させて、反応室22にGa原料ガスを供給して、Ga原料ガスを既に供給されているアンモニアガスと反応させる。同時に、開閉弁24bを開く。これによって、反応室22にMg原料ガスが供給される。このため、基板80の表面にp型のGaNの結晶が析出し、その表面にp型のGaN膜が成長する。成長の直前に、濃度測定器の濃度値が一定値に達していることを確認しているから、Mg原料ガスが不安定なまま成膜を行うことを防ぐことができる。反応室22内の圧力は、流量可変バルブ92によって約600Torrに制御される。このため、基板80の表面に好適にGaN膜が成長する。また、反応室22には、流量制御器24aで設定された流量のMg原料ガスが供給される。流量制御器24aで設定されている流量(10sccm)が小さいので、p型不純物濃度が低いGaN膜を成長させることができる。
また、反応室22内でGaN膜を成長させる工程中に、反応室バイパス管28内にもMg原料ガスが流れる。反応室バイパス管28内のMg原料ガス中における成膜用原料の濃度は、濃度測定器28bによって測定される。測定された濃度は、流量制御器24aを通過して反応室22に供給されるMg原料ガス中における成膜用原料の濃度と略等しく、反応室22内のガス中における成膜用原料の濃度に比例する。したがって、反応室22で成膜処理を実施しながら、反応室22に供給されるMg原料ガス中のおける成膜用原料の濃度を測定することができる。濃度測定器28bは、成膜処理中に繰り返し成膜用原料の濃度を測定し、その測定結果は記録器29に記憶される。したがって、この方法によれば、成膜処理中に反応室22に供給されるMg原料ガス中の成膜用原料の濃度をモニタリングすることができる。したがって、濃度に異常が生じると、その異常をすぐに検知することができる。このため、異常時に成膜処理を停止することができ、異常が生じたまま成膜処理が継続されることを防止することができる。
上述した成膜処理が終了したら、必要な半導体領域をイオン注入等によって形成して、半導体装置を製造することができる。
なお、実施形態の成膜装置10では、成膜用原料の供給源として蒸気圧の低い固体原料58aを用いている。ここで、固体原料とは、常用温度(20℃)で固体である原料を意味する。このため、成膜用原料を含むガスが原料容器58から反応室22まで流れる経路において、配管内(すなわち、原料容器排出管60、原料ガス供給管64及び反応室供給管24の内部)に固体原料が析出し易い。配管内における固体原料の析出量が多いと、Mg原料ガス中における原料の濃度が低下し、反応室22に供給されるMg原料ガス中の原料の濃度が不安定となる。しかしながら、この成膜装置10では、原料容器58から反応室22に至る経路上に濃度測定器が設置されていないので、当該経路が短い。また、流量制御器24aのガス経路方向の寸法は、フーリエ変換赤外分光方式の濃度測定器28bの寸法に比べて十分に小さい(例えば、1/4程度)ので、経路長に対する影響は小さい。これによって、当該経路の配管内に固体原料が析出することを抑制することができる。これによって、ガスが当該経路を流れるときにガス中の成膜用原料の濃度が低下することを抑制することができる。したがって、反応室22に安定した濃度でMg原料ガスを供給することができる。このため、この成膜装置10では、成長させる膜のp型不純物濃度を高精度に制御することができる。
また、Mg原料ガス中の成膜用原料の分圧が低すぎると、濃度測定器28bの検出精度が低下する。しかしながら、成膜装置10では、濃度測定器28b内を流れるMg原料ガス中の成膜用原料の分圧を高く維持したまま、反応室22に供給するMg原料ガスの流量を低くすることが可能とされている。すなわち、反応室22に供給されるMg原料ガスの流量(流量制御器24aで設定される流量)と濃度測定器28b内のMg原料ガスの圧力(すなわち、圧力制御器28aで設定される圧力)を独立して制御することができる。このため、反応室22に供給されるMg原料ガスの流量を小さくしても、濃度測定器28b内のMg原料ガスの圧力を高く維持することができる。その結果、濃度測定器28b内のMg原料ガス中の成膜用原料の分圧も高く維持することができる。このため、反応室22に供給するMg原料ガスの流量が小さい場合でも、Mg原料ガス中における成膜用原料の濃度を正確に測定することができる。このため、成膜装置10によれば、p型不純物濃度が低い膜を成長させる場合であっても、膜のp型不純物濃度を正確に制御することができる。なお、成膜装置10においては、濃度測定器28b内の成膜用原料の分圧P1は、P1=(F1・P2・P3)/(F2・P4)の計算式により表すことができる。なお、記号F1は流量制御器56aの流量を表し、記号P2は成膜用原料(すなわち、Cp2Mgガス)の蒸気圧を表し、記号P3は反応室22内の圧力を表し、記号F2は流量制御器56aと流量制御器62aの流量の合計値を表し、記号P4は原料容器58内の圧力を表す。また、反応室供給管24内を流れるMg原料ガス(すなわち、反応室22に供給されるMg原料ガス)中の成膜用原料のモル流量M1は、M1=(F1・P2・F4)/(F2・P4・M2)の計算式により表すことができる。なお、記号F4は流量制御器24aの流量を表し、記号M2は定数(22400cc/mol)を表す。P1/M1は、反応室22に供給される成膜用原料のモル流量あたりの分圧を表すが、上記2つの数式からP1/M1はP3/F4に比例することが分かる。成膜装置10では、圧力P3(流量可変バルブ92で制御される圧力)と流量F4(流量制御器24aで制御される流量)を独立して制御することができるので、P1/M1を自由に設定することができる。濃度測定器28bには検出下限があり、あとで比較例に示すような一般的な装置構成では、M1を小さくすればP1が小さくなり、一定濃度以下の成膜用原料を検出できない。本実施形態では、F4を小さくすることで実効的な濃度検出下限を高めることができるし、所望のM1はF1、P2、F2などのF4以外のパラメータで調整が可能である。したがって、より小さいM1に対して濃度測定器による検出が可能である。
また、成膜装置10では、原料容器58に供給されるガスの流量が少なすぎると、固体原料58aが安定して気化しなくなり、成膜処理を安定して実施することができない。しかしながら、成膜装置10では、原料容器58を流れるガスの流量(流量制御器56aで制御される流量)と反応室22に供給されるMg原料ガスの流量(流量制御器24aで制御される流量)を独立して制御することができる。このため、流量制御器56aに流れるガスの流量を多くしても、反応室22に供給されるMg原料ガスの流量を小さくすることができる。これによっても、反応室22に供給されるMg原料ガスの流量を小さくしながら、成膜処理を行うことが可能となっている。流量制御器56aの設定流量を流量制御器24aの設定流量よりも大きくすることで、このような効果が得られる。この点でも、成膜装置10は、p型不純物濃度が低い膜を成長させることが可能とされている。
なお、図2は、比較例の成膜装置を示している。なお、図2では、比較例の成膜装置の構成のうち、実施形態(図1)の成膜装置10の構成に相当する部分については、図1と同じ参照番号を付している。図2に示すように、比較例の成膜装置は、反応室バイパス管を有していない。また、比較例の成膜装置では、濃度測定器28bが、原料容器排出管60に設置されている。
比較例の成膜装置では、原料容器58から反応室22に至る経路に濃度測定器28bが設置されているので、濃度測定器28bの内部の配管の分だけ当該経路が長い。このため、当該経路を構成する配管の内部に、固体原料が析出し易い。このため、当該経路をガスが流れる間に、Mg原料ガス中の成膜用原料の濃度が低下し易い。このため、反応室22に供給されるMg原料ガス中の成膜用原料の濃度を正確に制御することが困難である。これに対し、上述した実施形態の成膜装置10では、原料容器58から反応室22に至る経路が短いので、反応室22に供給されるMg原料ガス中の成膜用原料の濃度を正確に制御することが可能である。なお、実施形態の成膜装置10では、反応室22の上流側に流量制御器24aが配置されているが、流量制御器24aは濃度測定器28bに比べてサイズが小さく、流量制御器24aによる配管の長さの増加の影響は極めて小さい。
また、比較例の成膜装置では、反応室バイパス管28が存在しないので、原料容器58を流れたガスと原料容器バイパス管62を流れたガスの略全てが反応室22に供給される。このため、反応室22に供給されるMg原料ガス中の成膜用原料の濃度と、反応室22内の圧力とを独立して制御することができない。さらに、上述した通り、固体原料58aを安定して気化させるために原料容器58を流れるガスの流量(すなわち、流量制御器56aで制御される流量)を一定値以上とする必要がある。また、比較例の成膜装置では、反応室22に供給されるガスの流量は、原料容器58を流れるガスの流量と原料容器バイパス管62を流れるガスの流量の和となるので、反応室22に供給されるMg原料ガスの流量を上記一定値未満にすることができない。このため、比較例の成膜装置では、低流量での成膜処理ができない。これに対し、上述した実施形態の成膜装置10では、低流量でも正確な成膜処理が可能である。例えば、比較例の成膜装置において、流量制御器56aの最大流量が約100sccmであり、流量制御器56aの設定流量を約50sccmとし、固体原料58aの温度を−21℃に制御した場合には、反応室22に1.0nmol/minの流量で成膜用原料(すなわち、Cp2Mgガス)を供給することができる。この流量は、上述した実施形態の成膜装置10が反応室22に供給する原料の流量と略等しい。この流量は、p型不純物濃度が1×1017cm−3程度のp型不純物濃度の膜を成長させる場合の流量である。この場合において、実施形態では濃度測定器28bにおいて1.4mTorrの分圧が得られるのに対し、比較例では濃度測定器28bにおいて0.27mTorrの分圧しか得られない。比較例では、濃度測定器28bの検出下限(約1mTorr)を下回り、成膜用原料の濃度を検出することが困難である。これに対し、実施形態によれば、濃度測定器28bにおいて高い分圧が得られるので、成膜用原料の濃度を検出できる。つまり、実施形態では、流量制御器56aを流れるガスと流量制御器62aを流れるガスの大部分が濃度測定器28bに流れるので、濃度測定器28bで高い分圧を得ることができ、濃度測定器28bで正確な測定が可能である。なお、比較例において成膜用原料の蒸気圧を高めるために、固体原料58aの温度を−8℃(Cp2Mgガス蒸気圧1.4mTorr)として、流量制御器56aの設定流量を10sccmとすることが考えられる。しかし、この場合には、原料容器58に流入するガスの流量が少なく、固体原料58aを安定して気化させることができない。実施形態では、このような問題も生じない。
図3、4は、実施形態の成膜装置10で製造可能な半導体装置を例示している。図3の半導体装置は、縦型のMOSFETである。図3のMOSFETは、GaN半導体基板の表面に、ゲート電極110、ソース電極112、ドレイン電極114、層間絶縁膜116、ゲート絶縁膜118を有している。半導体基板は、n+型のドレイン層120、n−型のドリフト層122、p型のボディ層124及びn+型のソース層126を有している。ボディ層124は、実施形態の成膜装置10によってエピタキシャル成長させた層である。ソース層126は、エピタキシャル成長させたp型のボディ層124にn型不純物をイオン注入することで形成されたn型層である。図3のMOSFETにおいて、閾値電圧として一般に3〜10Vが要求される。このような閾値を満たすために、ボディ層124のp型不純物濃度(Mg濃度)として5×1017cm−3以下の濃度が必要であり、深さ方向において均一な濃度プロファイルが必要である。実施形態の成膜装置10によれば、このようなボディ層124の成膜が可能である。図4の半導体装置は、横型のMOSFETである。図4のMOSFETでは、半絶縁基板230上にp型のボディ層224が設けられている。また、ボディ層224の一部に、n+型のドレイン層220とn+型のソース層226が形成されている。半導体層の表面には、ゲート電極210、ソース電極212、ドレイン電極214、層間絶縁膜216、ゲート絶縁膜218が配置されている。ボディ層224は、実施形態の成膜装置10によって半絶縁基板230上にエピタキシャル成長させた層である。ドレイン層220とソース層226は、エピタキシャル成長させたp型のボディ層224にn型不純物をイオン注入することで形成されたn型層である。図4のMOSFETにおいて、閾値電圧として一般に5V以下が要求される。このような閾値を満たすために、ボディ層224のp型不純物濃度(Mg濃度)として1×1017cm−3以下の濃度が必要である。実施形態の成膜装置10によれば、このようなボディ層224の成膜が可能である。
なお、上述した実施形態において、濃度測定器28bの測定値が一定となるように、流量制御器56a、62aの設定流量をフィードバック制御してもよい。この構成によれば、成長させる膜のp型不純物濃度をさらに正確に制御することが可能となる。
また、上述した実施形態において、流量制御器56aの精度は流量50sccmに対して誤差がプラスマイナス1sccmであり、流量制御器62aの精度は流量450sccmに対して誤差がプラスマイナス10sccmであり、流量制御器24aの精度は流量10sccmに対してプラスマイナス0.2sccmである。この条件で、反応室22に供給される原料の濃度の精度は5.9%である。このような構成によれば、成長させる膜のp型不純物濃度のばらつきを10%以下にでき、スイッチング素子(例えば、図3、4のMOSFET)を製造するときにその閾値電圧のばらつきを10%以下にすることができる。仮に上記フィードバック制御を行わなかったとしても、濃度測定器28bの測定値に基づいて規格から外れたウエハを除外することで、閾値電圧のばらつきを10%以下に制御しながらMOSFETを製造することができる。
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。