以下、図面を参照して、実施形態に係るX線CT装置を説明する。
以下の実施形態で説明するX線CT(Computed Tomography)装置は、フォトンカウンティングCT(PCCT)を実行可能な装置である。すなわち、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、従来の積分型(電流モード計測方式)の検出器ではなく、フォトンカウンティング方式の検出器を用いて被検体を透過したX線を計数することで、S/N比の高いX線CT画像データを再構成可能な装置である。なお、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台10と、寝台20と、コンソール30とを有する。
架台10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線に関するデータを収集する装置であり、X線高電圧装置11と、X線発生装置12と、X線検出器13と、データ収集回路14と、回転フレーム15と、架台制御装置16とを有する。また、架台10において、図1に示すように、X軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系を定義する。すなわち、X軸は水平方向を示し、Y軸は鉛直方向を示し、Z軸は架台10が非チルト時の状態における回転フレーム15の回転中心軸方向を示す。
回転フレーム15は、X線発生装置12とX線検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台制御装置16によって被検体Pを中心とした円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
X線発生装置12は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置である。X線発生装置12は、X線管12aと、ウェッジ12bと、コリメータ12cとを有する。
X線管12aは、X線高電圧装置11から高電圧の供給を受けて、陰極(フィラメントと呼ぶ場合もある)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。すなわち、X線管12aは、X線高電圧装置11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。
また、X線管12aは、ファン角及びコーン角を持って広がるX線ビームを発生する。例えば、X線管12aは、X線高電圧装置11の制御により、フル再構成用に被検体Pの全周囲でX線を連続曝射したり、ハーフ再構成用にハーフ再構成可能な曝射範囲(180度+ファン角)でX線を連続曝射したりすることが可能である。また、X線管12aは、X線高電圧装置11の制御により、予め設定された位置(管球位置)でX線(パルスX線)を間欠曝射したりすることが可能である。また、X線高電圧装置11は、X線管12aから曝射されるX線の強度を変調させることも可能である。例えば、X線高電圧装置11は、特定の管球位置では、X線管12aから曝射されるX線の強度を強くし、特定の管球位置以外の範囲では、X線管12aから曝射されるX線の強度を弱くする。
ウェッジ12bは、X線管12aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ12bは、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
コリメータ12cは、鉛板等によって構成され、一部にスリットを有する。例えば、コリメータ12cは、後述するX線高電圧装置11の制御により、ウェッジ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲をスリットにより絞り込む。
なお、X線発生装置12のX線源は、X線管12aに限定されるものではない。例えば、X線発生装置12は、X線管12aに代えて、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームと衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとによって構成されてもよい。
X線高電圧装置11は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路から構成され、X線管12aに印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管12aが照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置から構成される。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。例えば、X線高電圧装置11は、X線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。また、X線高電圧装置11は、コンソール30の処理回路37から制御を受ける。
架台制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される処理回路とモータ及びアクチュエータ等の駆動機構から構成される。架台制御装置16は、コンソール30に取り付けられた入力インターフェース31もしくは架台10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台10の動作制御を行う機能を有する。例えば、架台制御装置16は、入力信号を受けて回転フレーム15を回転させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線管12aとX線検出器13とを旋回させる制御や、架台10をチルトさせる制御、及び寝台20及び天板22を動作させる制御を行う。架台制御装置16は、コンソール30の処理回路37から制御を受ける。
また、架台制御装置16は、X線管12aの位置を監視しており、X線管12aが所定の回転角度(撮影角度)に到達するとデータ収集回路14に対してデータの取り込みを開始するタイミングを示すビュートリガ信号を出力する。例えば、回転撮影における全ビュー数が2460ビューである場合、架台制御装置16は、X線管12aが円軌道上を約0.15度(=360/2460)移動する毎にビュートリガ信号を出力する。
X線検出器13は、複数の検出素子から成り、計数した光子数に応じた信号を出力する光子計数型検出器の一例である。X線検出器13は、例えば、X線管12aの焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子(「センサ」或いは単に「検出素子」とも言う)が配列された複数のX線検出素子列から構成される。X線検出器13は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向に複数配列された構造を有する。X線検出器13の各X線検出素子は、X線発生装置12から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号(パルス)をデータ収集回路14へと出力する。この電気信号(パルス)の波高値は、X線光子のエネルギー値と相関性を有する。なお、各X線検出素子が出力する電気信号のことを検出信号とも言う。
また、X線検出器13は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとから構成される間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータから構成され、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶にて構成される。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板で構成される。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管等の光センサから構成される。ここで、光センサは、例えばSiPM(Silicon photomultiplier)である。
なお、X線検出器13は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子から構成される直接変換型の検出器であっても構わない。
データ収集回路14(DAS:Data Acquisition System)は、X線検出器13の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog-to-digital)変換器とから少なくとも構成され、X線検出器13の検出信号を用いた計数処理の結果である検出データを生成する。図2及び図3は第1の実施形態に係るデータ収集回路14を説明するための図である。
図2では、検出データの一例を示す。検出データは、例えば、サイノグラムである。サイノグラムとは、X線管12aの各位置において各検出素子に入射した計数処理の結果をエネルギー別に並べたデータである。図2に示すように、サイノグラムは、縦軸がビュー方向であり横軸がチャンネル方向である2次元直交座標系に、計数処理の結果をエネルギー別に並べたデータである。データ収集回路14は、例えば、X線検出器13におけるスライス方向の列単位で、サイノグラムを生成する。なお、このサイノグラムの種類としては、被検体を配置して投影した被検体サイノグラム、被検体を配置せずに投影した空気サイノグラムがある。これらのサイノグラムの画素値は検出されたフォトン数を示す。
図3では、計数処理の結果の一例を示す。図3に示すように、計数処理の結果は、エネルギービンごとのX線の光子数を割り当てたデータである。例えば、データ収集回路14は、X線管12aから照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子(X線光子)をビュー毎、チャネル毎に計数し、当該計数した光子のエネルギーを弁別して計数処理の結果とする。データ収集回路14は、生成した検出データをコンソール30へ転送する。なお、図3では、例えば、1keVごとに区切ったエネルギーの範囲であるエネルギービン毎のフォトン数で計数処理の結果を表したスペクトルを示す。また、X線管12aから照射されるX線のスペクトルは、X線管12aの管電圧や管電流、線源として用いるターゲットの種類などで決まり、被検体Pを通過する際に、その物質の状態に応じて各エネルギーのフォトン数が減ってスペクトルが変化する。
また、データ収集回路14は、図1に示すように、取得回路14aを有する。取得回路14aは、電気信号に対し複数の信号処理を施すことで複数の第1のX線情報を取得する。なお、取得回路14aについては後述する。
データ収集回路14から出力されたデータを検出データと称し、検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、チャネル間のゲイン補正処理、パイルアップ補正処理、応答関数補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生データと称する。また、検出データ及び生データを総称して投影データと称する。
寝台20は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、寝台駆動装置21と、天板22と、基台23と、ベース(支持フレーム)24とを備えている。
天板22は、被検体Pが載置される板である。ベース24は、天板22を支持する。基台23は、ベース24を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置21は、被検体Pが載置された天板22を天板22の長軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動するモータあるいはアクチュエータである。なお、寝台駆動装置21は、天板22をX軸方向にも移動可能である。
なお、天板移動方法は、天板22だけを移動させてもよいし、寝台20のベース24ごと移動する方式であってもよい。また、立位CTである場合には、天板22に相当する患者移動機構を移動させる方式であってもよい。
なお、架台10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。なお、以下の実施形態では、架台10と天板22との相対位置の変化が天板22を制御することによって実現されるものとして説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、架台10が自走式である場合、架台10の走行を制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。また、架台10の走行と天板22とを制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。
コンソール30は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台10によって収集された計数結果を用いてX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール30は、図1に示すように、入力インターフェース31と、ディスプレイ32と、記憶回路35と、処理回路37とを有する。
入力インターフェース31は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路37に出力する。例えば、入力インターフェース31は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、処理回路37によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって構成される。
記憶回路35は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。記憶回路35は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。
処理回路37は、例えば、システム制御機能371、前処理機能372、再構成処理機能373、画像処理機能374、スキャン制御機能375、表示制御機能376、導出機能377、及び選択機能378を実行する。ここで、例えば、図1に示す処理回路37の構成要素であるシステム制御機能371、前処理機能372、再構成処理機能373、画像処理機能374、スキャン制御機能375、表示制御機能376、導出機能377、及び選択機能378が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路35内に記録されている。処理回路37は、例えば、プロセッサであり、記憶回路35から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路37は、図1の処理回路37内に示された各機能を有することとなる。
システム制御機能371は、入力インターフェース31を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路37の各種機能を制御する。
前処理機能372は、データ収集回路14から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、チャネル間のゲイン補正処理、パイルアップ補正処理、応答関数補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施して生データを生成する。なお、前処理機能372は、補正部の一例である。
再構成処理機能373は、前処理機能372にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってX線CT画像データを生成する。再構成処理機能373は、再構成したX線CT画像データを記憶回路35に格納する。なお、全てのビンの情報を画素毎に加算して全エネルギー情報を含むデータから再構成したX線CT画像データのことを「ベース画像」とも言う。
ここで、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果から生成された投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギーの情報が含まれている。このため、再構成処理機能373は、例えば、特定のエネルギー成分のX線CT画像データを再構成することができる。また、再構成処理機能373は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのX線CT画像データを再構成することができる。
また、再構成処理機能373は、例えば、各エネルギー成分のX線CT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のX線CT画像データを重畳した画像データを生成する。また、再構成処理機能373は、例えば、物質固有のK吸収端を利用して、当該物質の同定が可能となる画像データを生成することができる。再構成処理機能373が生成する他の画像データとしては、単色X線画像データや密度画像データ、実効原子番号画像データ等が挙げられる。
また、X線CTの応用として、物質ごとにX線の吸収特性が異なることを利用して、被検体Pに含まれる物質の種別、存在量、密度等を弁別する技術がある。これを、物質弁別と言う。例えば、再構成処理機能373は、投影データに対して物質弁別を行い、物質弁別情報を得る。そして、再構成処理機能373は、物質弁別の結果である物質弁別情報を用いて物質弁別画像を再構成する。
再構成処理機能373は、CT画像を再構成するには、フルスキャン再構成方式及びハーフスキャン再構成方式を適用可能である。例えば、再構成処理機能373は、フルスキャン再構成方式では、被検体の周囲一周、360度分の投影データを必要とする。また、再構成処理機能373は、ハーフスキャン再構成方式では、180度+ファン角度分の投影データを必要とする。以下では、説明を簡単にするため、再構成処理機能373は、被検体の周囲一周、360度分の投影データを用いて再構成するフルスキャン再構成方式を用いるものとする。なお、再構成処理機能373は、再構成処理部の一例である。
画像処理機能374は、入力インターフェース31を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能373によって生成されたX線CT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像やレンダリング処理による3次元画像等の画像データに変換する。画像処理機能374は、変換した画像データを記憶回路35に格納する。
スキャン制御機能375は、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。例えば、スキャン制御機能375は、X線高電圧装置11、X線検出器13、架台制御装置16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10におけるスキャンの開始、スキャンの実行、及びスキャンの終了を制御する。具体的には、スキャン制御機能375は、位置決め画像(スキャノ画像、スキャノグラム)を収集する撮影及び診断に用いる画像を収集する本撮影(スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。
ここで、スキャン制御機能375は、2次元のスキャノ画像及び3次元のスキャノ画像を撮影することができる。例えば、スキャン制御機能375は、X線管12aを0度の位置(被検体Pに対して正面方向の位置)に固定して、天板22を定速移動させながら連続的に撮影を行うことで2次元のスキャノ画像を撮影する。或いは、スキャン制御機能375は、X線管12aを0度の位置に固定して、天板22を断続的に移動させながら、天板22の移動に同期して断続的に撮影を繰り返すことで2次元のスキャノ画像を撮影する。また、スキャン制御機能375は、被検体に対して正面方向だけでなく、任意の方向(例えば、側面方向など)から位置決め画像を撮影することができる。例えば、X線管12aが90度の位置(被検体Pに対して側面方向の位置)で撮影した場合、被検体Pの側面からの撮影がなされ、2次元のスキャノ画像が得られる。なお、X線管12aの位置は、必要であれば、任意の複数の位置から撮影可能である。
また、スキャン制御機能375は、スキャノ画像の撮影において、被検体に対する全周分の投影データを収集することで、3次元のスキャノ画像を撮影する。例えば、スキャン制御機能375は、ヘリカルスキャン或いはノンヘリカルスキャンによって被検体に対する全周分の投影データを収集する。ここで、スキャン制御機能375は、被検体の胸部全体、腹部全体、上半身全体、全身などの広範囲に対して本撮影よりも低線量でヘリカルスキャン或いはノンヘリカルスキャンを実行する。ノンヘリカルスキャンとしては、例えば、ステップアンドシュート方式のスキャンが実行される。
表示制御機能376は、記憶回路35が記憶する各種画像データを、ディスプレイ32に表示するように制御する。
導出機能377は、複数の第1のX線情報と、所定の物質の組成或いは当該所定の物質の減弱率に関する情報と信号処理との組み合わせに対応する複数の異なる第2のX線情報とに基づいて、X線検出器13へ入射したX線の透過経路上の所定の物質の組成或いは所定の物質の減弱率に関する弁別情報を導出する。選択機能378は、所定の物質の選択を受け付ける。なお、導出機能377及び選択機能378の詳細については後述する。
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、エネルギー毎のフォトン数を検出して、物質弁別を行う場合がある。ここで、例えば、PCCTでは、エネルギー積分を測定する積分型CTでは識別が困難な物質を識別できる。図4は、第1の実施形態を説明するための図である。例えば、図4には、ヨード20(mg/cm3)、カルシウム100(mg/cm3)、水のフォトンエネルギーごとの線減弱係数を示す。図4に示すように、線減弱係数はエネルギーによって異なる。また、図4に示すように、ヨードではK吸収端と呼ばれる33keVにおいて線減弱係数が不連続に変化する。これにより、ヨードとカルシウムとで線減弱係数の大小関係が入れ替わる。
ここで、積分型CTでは、フォトンをエネルギー毎に区別せずにまとめたエネルギー積分として測定する。このため、積分型CTにおいて再構成される線減弱係数は、照射したフォトンエネルギーにおける平均的な値となる。したがって、管電圧が33keV以上の場合、積分型CTは、ヨードやカルシウムより全エネルギー帯で線減弱係数が小さい水を区別できるが、線減弱係数の大小関係が入れ替わるヨードとカルシウムとを区別することが困難である。
一方、PCCTでは、エネルギー毎のフォトン数が検出できることから、エネルギー毎の減弱率が分かり物質が特定しやすくなる。このため、PCCTは、弁別性能の向上が期待されている。例えば、40keV付近のエネルギー帯ではヨード、カルシウム、水の線減弱係数の差が大きいことから、PCCTは、測定したスペクトルのうち40keV付近のエネルギー帯のデータだけを用いて再構成すれば、ヨード、カルシウム、水を十分に区別できる。また、各物質の密度は、積分型CTでは測定が困難であったが、PCCTでは、スペクトルデータを複数のエネルギー帯に分け、物質弁別手法を適用することで測定可能となる。
しかしながら、PCCTの性能は、検出したスペクトルの精度に大きく左右される。例えば、PCCTでは、X線量が多い場合にフォトンカウント値が飽和してしまい、スペクトルの精度が低下すると言う問題がある。
このようなことから、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、弁別情報導出処理を実行することで、X線量が多い場合でも物質弁別の性能と再構成画像の品質とを向上させる。すなわち、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、弁別情報導出処理として以下の処理を実行する。例えば、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、電気信号に対し複数の信号処理を施すことで複数の第1のX線情報を取得する。そして、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、複数の第1のX線情報と、所定の物質の組成或いは当該所定の物質の減弱率に関する情報と信号処理との組み合わせに対応する複数の異なる第2のX線情報とに基づいて、X線検出器13へ入射したX線の透過経路上の所定の物質の組成或いは所定の物質の減弱率に関する弁別情報を導出する。
以下では、第1の実施形態に係る弁別情報導出処理を説明する。図5は、第1の実施形態に係るX線CT装置1による処理手順を示すフローチャートである。図5では、X線CT装置1の動作を説明するフローチャートを示し、各構成要素がフローチャートのどのステップに対応するかを説明する。
ステップS1は、スキャン制御機能375に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35からスキャン制御機能375に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、スキャン制御機能375が実現されるステップである。ステップS1では、スキャン制御機能375は、指定された管電圧及び管電流でX線を被検体Pに照射させる。
ステップS2は、X線検出器13により実現されるステップである。ステップS2では、X線検出器13は、X線を検出する。例えば、X線検出器13は、チャネル毎に被検体Pを透過してきたX線を検出して電気信号に変換する。X線検出器13は、電気信号をデータ収集回路14に出力する。ステップS3は、データ収集回路14により実現されるステップである。ステップS3では、データ収集回路14は、投影データを生成する。
ステップS4は、取得回路14aにより実現されるステップである。ステップS4では、取得回路14aは、第1のX線情報を取得する。ここで言う、第1のX線情報とは、電気信号に対し複数の信号処理を施すことで得られる情報である。すなわち、取得回路14aは、電気信号に対し複数の信号処理を施すことで複数の第1のX線情報を取得する。
より具体的には、取得回路14aは、入力された電気信号に対して2つ以上の異なる信号処理を施し、1区間以上のエネルギー区間毎のX線フォトン数或いはX線フォトンのエネルギー和のいずれかを第1のX線情報としてチャネル毎に2つ以上取得する。一例をあげると、取得回路14aは、条件Aの信号処理として区関数1のX線エネルギー和PEを求めることで第1のX線情報を取得し、条件Bの信号処理として区関数1のX線フォトン数PNを求めることで第1のX線情報を取得する場合について説明する。すなわち、取得回路14aは、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンのエネルギーの和を取得し、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンの数を取得する。区関数を1としてフォトンを数えるとエネルギーを考慮しないトータルのフォトン数が得られる。また、区関数を1としてエネルギーの和を求めると従来CTと同様のエネルギー積分値が得られる。なお、取得回路14aは、取得した複数の第1のX線情報を導出機能377に受け渡す。
ステップS5は、選択機能378に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から選択機能378に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、選択機能378が実現されるステップである。ステップS5では、選択機能378は、所定の物質の選択を受け付ける。
例えば、PCCTにおいては、従来CTと同様にCT値の画像を再構成する場合や、物質弁別画像を再構成する場合がある。また、CT値の画像を再構成する場合と、物質弁別画像を再構成する場合とでは、それぞれ対象とする物質が異なる。そこで、選択機能378は、X線CT装置1を操作する操作者から、導出機能377による弁別の対象となる所定の物質の選択を受け付ける。
例えば、最終的に従来CTと同様の再構成画像を得たい場合、操作者は、一般的には物質として水のみを選択する。かかる場合、選択機能378は、対象とする物質として水のみを受け付ける。また、物質弁別を行いたい場合、操作者は、複数種類の物質として水に加えてヨードやカルシウムなどを選択する。かかる場合、選択機能378は、対象とする物質として水に加えてヨードやカルシウムなどを受け付ける。
ステップS6及びS7は、導出機能377に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から導出機能377に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、導出機能377が実現されるステップである。ステップS6では、導出機能377は、第2のX線情報を取得する。ここで、例えば、導出機能377は、ステップS4で取得した第1のX線情報と同じ信号処理条件の第2のX線情報を、ステップS4で取得した第1のX線情報と同じ数取得する。すなわち、導出機能377は、条件Aの信号処理と同じ信号処理条件の第2のX線情報と、条件Bの信号処理と同じ信号処理条件の第2のX線情報とを取得する。
ここで言う、第2のX線情報とは、所定の物質の組成或いは当該所定の物質の減弱率に関する情報と信号処理との組み合わせに対応する情報である。例えば、第2のX線情報は、第1のX線情報を取得する際に施した信号処理の組み合わせに対応する1区間以上のエネルギー区間毎のX線フォトン数或いはX線フォトンのエネルギー和のいずれかと、1以上の種類の物質の透過距離または減弱率に関する情報との対応関係を、実測やシミュレーションによって事前に求めておいた情報である。なお、第2のX線情報は、信号処理条件及び弁別の対象となる物質ごとに事前に求められる。
この第2のX線情報は、例えば、記憶回路35に記憶される。すなわち、記憶回路35は、所定の物質の組成或いは当該所定の物質の減弱率に関する情報と信号処理との組み合わせに対応する複数の異なる第2のX線情報を記憶する。図6及び図7を用いて、第2のX線情報として記憶される情報の一例について説明する。図6及び図7は、第1の実施形態を説明するための図である。
図6では、1物質の透過距離と、区間数1のX線エネルギー和とを対応付けた第2のX線情報を示す。図6に示すように、第2のX線情報は、「透過距離」と、「X線エネルギー和」とを対応付けた情報である。「透過距離」は、物質の透過距離を示す。例えば、「透過距離」には、「0(mm)」、「1(mm)」、「L(mm)」などの情報が格納される。「X線エネルギー和」は、区間数1のX線エネルギー和を示す。例えば、「X線エネルギー和」には、「PtnEneTbl[0]」、「PtnEneTbl[1]」、「PtnEneTbl[L]」などの情報が格納される。
一例をあげると、図6に示す第2のX線情報は、透過距離が0(mm)である場合のX線エネルギー和がPtnEneTbl[0]であり、透過距離が1(mm)である場合のX線エネルギー和がPtnEneTbl[1]であり、透過距離がL(mm)である場合のX線エネルギー和がPtnEneTbl[L]であることを示す。
図7では、1物質の透過距離と、区間数1のX線フォトン数とを対応付けた第2のX線情報を示す。図7に示すように、第2のX線情報は、「透過距離」と、「X線フォトン数」とを対応付けた情報である。「透過距離」は、物質の透過距離を示す。例えば、「透過距離」には、「0(mm)」、「1(mm)」、「L(mm)」などの情報が格納される。「X線フォトン数」は、区間数1のX線フォトン数を示す。例えば、「X線フォトン数」には、「PtnNumTbl[0]」、「PtnNumTbl[1]」、「PtnNumTbl[L]」などの情報が格納される。
一例をあげると、図7に示す第2のX線情報は、透過距離が0(mm)である場合のX線フォトン数がPtnNumTbl[0]であり、透過距離が1(mm)である場合のX線フォトン数がPtnNumTbl[1]であり、透過距離がL(mm)である場合のX線フォトン数がPtnNumTbl[L]であることを示す。
導出機能377は、ステップS6において、第2のX線情報として、図6に示すX線エネルギー和のテーブルPtnEneTbl[L]と、図7に示すX線フォトン数のテーブルPtnNumTbl[L]とを取得する。
ステップS7では、導出機能377は、弁別情報を導出する処理を実行する。例えば、導出機能377は、複数の第1のX線情報と第2のX線情報とに基づいて、X線検出器13へ入射したX線の透過経路上の所定の物質の組成或いは所定の物質の減弱率に関する弁別情報を導出する。図8は、第1の実施形態に係る導出機能377による処理手順を示すフローチャートである。なお、図8に示す処理手順は、図5に示すステップS7の処理に対応する。
また、図8では、導出機能377の具体的な処理の例として、第1のX線情報が、条件Aの信号処理で取得された区関数1のX線エネルギー和PEと、条件Bの信号処理で取得された区関数1のX線フォトン数PNとの2つであり、求める情報が1物質の透過距離lの場合について説明する。
ステップS101では、導出機能377は、条件Aの第1のX線情報と、条件Aの第1のX線情報に対応する第2のX線情報との誤差を算出する。ここで、導出機能377は、ステップS4において取得回路14aにより条件Aの信号処理として得られたチャネル毎の第1のX線情報と、第2のX線情報との誤差を求める。ここで、誤差は、差分絶対値和、差分二乗和、及び相互相関のいずれかである。すなわち、導出機能377は、誤差として差分絶対値和や差分二乗和や相互相関などを用いる。
ステップS102では、導出機能377は、誤差に基づいて条件Aの弁別情報を特定する。ここで、条件Aにおける透過距離をl_peとした場合、l_peは、X線エネルギー和として取得した第1のX線情報と、対応する第2のX線情報との誤差の最小点作用素で表される。すなわち、l_pe=argminF(PE,ptnEneTbl[L])である。ここで、区関数が1なので、スカラ値の比較となり、差が最小の点を探索することになる。導出機能377は、探索には、例えば、全探索、階層探索、勾配法などの一般的な探索アルゴリズムを用いる。例えば、導出機能377は、差分が最小となる点或いは相関が高い点を、被検体Pの組成或いは減弱率に関する条件Aの弁別情報として求める。すなわち、導出機能377は、一つの第1のX線情報と、当該第1のX線情報に対応する第2のX線情報との誤差に基づいて、弁別情報を導出する。
ステップS103では、導出機能377は、条件Bの第1のX線情報と、条件Bの第1のX線情報に対応する第2のX線情報との誤差を算出する。ここで、導出機能377は、ステップS4において取得回路14aにより条件Bの信号処理として得られたチャネル毎の第1のX線情報と、第2のX線情報との誤差を求める。なお、かかる場合にも導出機能377は、誤差として差分絶対値和や差分二乗和や相互相関などを用いる。
ステップS104では、導出機能377は、誤差に基づいて条件Bの弁別情報を特定する。ここで、条件Bにおける透過距離をl_pnとした場合、l_pnは、X線フォトン数として取得した第1のX線情報と、対応する第2のX線情報との誤差の最小点作用素で表される。すなわち、l_pn=argminF(PN,ptnNumTbl[L])である。ここで、区関数が1なので、スカラ値の比較となり、差が最小の点を探索することになる。導出機能377は、探索には、例えば、全探索、階層探索、勾配法などの一般的な探索アルゴリズムを用いる。例えば、導出機能377は、差分が最小となる点或いは相関が高い点を、被検体Pの組成或いは減弱率に関する条件Bの弁別情報として求める。すなわち、導出機能377は、一つの第1のX線情報と、当該第1のX線情報に対応する第2のX線情報との誤差に基づいて、弁別情報を導出する。
ステップS105では、導出機能377は、条件Aの弁別情報と条件Bの弁別情報との一方を選択する。ここで、X線検出器13に到達したX線フォトン数が多い場合、すなわち、透過距離が短い場合にはX線エネルギー和PEで透過距離を推定した方が誤差を少なくでき、逆に、X線検出器13に到達したX線フォトン数が少ない場合、すなわち、透過距離が長い場合にはX線フォトン数PNで透過距離を推定した方が誤差を少なくできる。このようなことから、導出機能377は、X線の出力に基づいて決定される、弁別情報に関する閾値に基づいて、一つの第1のX線情報を特定し、弁別情報を導出する。図9は、第1の実施形態を説明するための図である。
図9では、第1のX線情報として区間数1のX線エネルギー和を取得した場合の第2のX線情報との誤差であるl_peを太線で示し、第1のX線情報として区間数1のX線フォトン数を取得した場合の第2のX線情報との誤差であるl_pnを実線で示す。なお、図9では、第1のX線情報として1keVごとに区切ったエネルギーの範囲であるエネルギービン毎のフォトン数を表すX線スペクトルを取得した場合の第2のX線情報との誤差を破線で示す。
図9に示すように、例えば、導出機能377は、l_peと、X線発生装置12で照射したX線量に基づいて決まる閾値Thとを比較する。この閾値Thは、X線検出器13を用いた実測や物理シミュレーションにより求められる。図9では、閾値Thは、透過距離が約5cm付近に設定される。そして、導出機能377は、l_peが閾値Th未満であればl_peをlとして選択し、l_peが閾値Th以上であればl_pnをlとして選択する。より具体的には、図9において閾値Th未満では、X線エネルギー和から導出した誤差がX線フォトン数から導出した誤差よりも小さく、閾値Th以上では、X線エネルギー和から導出した誤差がX線フォトン数から導出した誤差よりも大きい。
すなわち、導出機能377は、X線フォトンのエネルギーの和に基づいて、弁別情報を推定し、弁別情報に関する閾値Thより弁別情報の値が大きい場合には、X線フォトン数に基づいて、弁別情報を推定し、情報として算出する。
このようにして導出機能377は、複数の第1のX線情報の内、いずれの一つの第1のX線情報を特定し、当該特定された第1のX線情報に基づいて、弁別情報を導出することで、透過距離の長短によらず精度良く透過距離を推定することが可能となる。なお、導出機能377は、l_peとl_pnの最大値、最小値又は平均値をlとして選択してもよい。
ステップS106では、導出機能377は、全チャネルの弁別情報を選択したか否かを判定する。ここで、導出機能377は、全チャネルの弁別情報を選択したと判定しなかった場合(ステップS106、No)、ステップS101に移行する。一方、導出機能377は、全チャネルの弁別情報を選択したと判定した場合(ステップS106、Yes)、全チャネルの弁別情報を再構成処理機能373に出力する。
図5に戻る。ステップS8は、再構成処理機能373に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から再構成処理機能373に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、再構成処理機能373が実現されるステップである。ステップS8では、再構成処理機能373は、物質弁別画像を再構成する。例えば、再構成処理機能373は、弁別情報導出処理で求めた物質毎の透過距離や減弱率などのサイノグラムに対して、再構成処理を行うことで、投影断面の物質密度分布や線減弱計数の分布を得る。
上述したように、第1の実施形態に係るX線CT装置1では、複数の第1のX線情報と第2のX線情報とに基づいて、X線検出器13へ入射したX線の透過経路上の所定の物質の組成或いは所定の物質の減弱率に関する弁別情報を導出する。すなわち、第1の実施形態に係るX線CT装置1では、複数の信号処理を施して得られた異なる第1のX線情報から、物質の透過距離毎に適した信号処理に基づいて透過距離等を求める。これにより、第1の実施形態によれば、透過距離等を推定する際の誤差を少なくすることが可能になる。このように透過距離等の推定精度を向上させる結果、第1の実施形態によれば、再構成画像の品質を向上させることができる。
(第1の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態では、信号処理として、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンのエネルギーの和を取得し、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンの数を取得する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、検出したX線フォトン或いはX線フォトンのエネルギーを所定のエネルギー区間毎に数えてスペクトル(ヒストグラム)を求める信号処理を施してもよい。図10及び図11は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。
図10及び図11の横軸はエネルギーを示し、図10及び図11の縦軸はフォトン数を示す。図10に示すように、取得回路14aは、エネルギー区間の数を、区間a、区間b、区間c、区間d、区間e及び区間fの6つのエネルギー区間に分割する。また、図11に示すように、取得回路14aは、エネルギー区間の数を、区間aと区間bとの2つのエネルギー区間に分割する。図10や図11に示すように、取得回路14aは、区間の分割位置や分割数を変えることで、異なる第1のX線情報を取得する。また、取得回路14aは、区間の分割位置や分割数を変えることに加えて、フォトン数或いはフォトンのエネルギー和のどちらを用いるかを変えたりすることで、異なる第1のX線情報を取得するようにしてもよい。
このように、取得回路14aは、エネルギー区間の分割数及びエネルギー区間の分割位置の少なくともいずれかを変えて、X線フォトン数及びX線フォトンのエネルギーの和の少なくともいずれかを算出の対象とする信号処理、或いは、エネルギー区間の分割数及びエネルギー区間の分割位置を同一にして、X線フォトン数及びX線フォトンのエネルギーの和を算出の対象とする信号処理を施し、第1のX線情報を取得する。
また、弁別情報導出処理の別例として、条件Aの信号処理として区関数1のX線エネルギー和PEを求めることで第1のX線情報を取得し、条件Bの信号処理として区関数NのX線フォトン数PN[N](スペクトル)を求めることで第1のX線情報を取得して、1物質の透過距離lを導出する場合について説明する。かかる場合、記憶回路35には、条件Bの信号処理と同じ信号処理条件の第2のX線情報として、図12に示す第2のX線情報が記憶される。図12は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。なお、かかる場合、記憶回路35には、条件Aの信号処理と同じ信号処理条件の第2のX線情報として、図6に示す第2のX線情報が記憶される。
図12では、1物質の透過距離と、区間数NのX線フォトン数とを対応付けた第2のX線情報を示す。図12に示すように、第2のX線情報は、「透過距離」と、各区間のX線フォトン数として「区間aのX線フォトン数」、「区間bのX線フォトン数」、「区間NのX線フォトン数」とを対応付けた情報である。「透過距離」は、物質の透過距離を示す。例えば、「透過距離」には、「0(mm)」、「1(mm)」、「L(mm)」などの情報が格納される。
「区間aのX線フォトン数」は、区間aのX線フォトン数を示す。例えば、「区間aのX線フォトン数」には、「PtnNumTbl[0][a]」、「PtnNumTbl[1][a]」、「PtnNumTbl[L][a]」などの情報が格納される。
また、「区間bのX線フォトン数」は、区間bのX線フォトン数を示す。例えば、「区間bのX線フォトン数」には、「PtnNumTbl[0][b]」、「PtnNumTbl[1][b]」、「PtnNumTbl[L][b]」などの情報が格納される。
一例をあげると、図12に示す第2のX線情報は、透過距離が0(mm)である場合の区間aのX線フォトン数がPtnNumTbl[0][a]であり、区間bのX線フォトン数がPtnNumTbl[0][b]であり、区間NのX線フォトン数がPtnNumTbl[0][N]であることを示す。
そして、導出機能377は、条件Aの第1のX線情報と、条件Aの第1のX線情報に対応する第2のX線情報との誤差を算出し、誤差に基づいて条件Aの弁別情報を特定する。ここで、条件Aにおける透過距離をl_peとした場合、l_peは、X線エネルギー和として取得した第1のX線情報と、対応する第2のX線情報との誤差の最小点作用素で表される。すなわち、l_pe=argminF(PE,ptnEneTbl[L])である。
また、導出機能377は、条件Bの第1のX線情報と、条件Bの第1のX線情報に対応する第2のX線情報との誤差を算出し、誤差に基づいて条件Bの弁別情報を特定する。ここで、条件Bにおける透過距離をl_pnとした場合、l_pnは、区関数NのX線フォトン数PN[N]として取得した第1のX線情報と、対応する第2のX線情報との誤差の最小点作用素で表される。すなわち、l_pn=argminF(PN[N],ptnNumTbl[L][N])である。ここで、区関数がNの場合、ベクトルの比較になり、評価値としては前述の通り差分絶対値和(SAD)、差分二乗和(SSD)、相互相関(CC)等を用いる。
そして、導出機能377は、条件Aの弁別情報と条件Bの弁別情報との一方を選択する。ここで、X線検出器13に到達したX線フォトン数が多い場合、すなわち、透過距離が短い場合にはスペクトルで推定した方が誤差を少なくでき、逆に、X線検出器13に到達したX線フォトン数が少ない場合、すなわち、透過距離が長い場合にはX線エネルギー和PEで推定した方が誤差を少なくできる。このようなことから、導出機能377は、X線の出力に基づいて決定される、弁別情報に関する閾値に基づいて、一つの第1のX線情報を特定し、弁別情報を導出する。図13は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。
図13では、第1のX線情報として区間数1のX線エネルギー和を取得した場合の第2のX線情報との誤差であるl_peを太線で示し、第1のX線情報として区間数NのX線フォトン数PN[N](スペクトル)を取得した場合の第2のX線情報との誤差であるl_pnを破線で示す。なお、図13では、第1のX線情報として区間数1のX線フォトン数を取得した場合の第2のX線情報との誤差を実線で示す。
図13では、図9とは照射するX線条件が異なる場合の誤差を示している。具体的には、図9に比べてX線量が大きく、透過距離が約3cm以下の短い条件で、パイルアップにより透過距離の推定の誤差が大きくなっている様子が示されている。また、X線条件の違いにより、透過距離の特定に用いられるX線情報が、図9とは異なる様子が示されている。
図13に示すように、例えば、導出機能377は、l_peとX線発生装置12で照射したX線量に基づいて決まる閾値Thとを比較する。この閾値Thは、X線検出器13を用いた実測や物理シミュレーションにより求められる。図13では、閾値Thは、透過距離が約3cm付近に設定される。そして、導出機能377は、l_peが閾値Th未満であればl_pnをlとして選択し、l_peが閾値Th以上であればl_peをlとして選択する。より具体的には、図13において閾値Th未満では、区間数NのX線フォトン数PN[N](スペクトル)から導出した誤差が区間数1のX線エネルギー和から導出した誤差よりも小さく、閾値Th以上では、区間数NのX線フォトン数PN[N](スペクトル)から導出した誤差が区間数1のX線エネルギー和から導出した誤差よりも大きい。
すなわち、導出機能377は、エネルギー区間の数を1としたX線フォトンのエネルギーの和に基づいて、弁別情報を推定し、弁別情報に関する閾値Thより弁別情報の値が小さければ、エネルギー区間の数を2以上としたX線フォトンのエネルギーの和或いはX線フォトンの数に基づいて、弁別情報を推定し、情報として算出する。
このようにして導出機能377は、複数の第1のX線情報の内、いずれの一つの第1のX線情報を特定し、当該特定された第1のX線情報に基づいて、弁別情報を導出することで、透過距離の長短によらず精度良く透過距離を推定することが可能となる。より具体的には、造影剤のような、特定のエネルギーにK殻吸収端をもつヨウドやガドリニウムなどを含む組成では、K殻吸収端前後でエネルギー区間を分割することにより、推定精度を向上させることが可能になる。
なお、第1の実施形態の変形例では、条件Aの信号処理として区関数1のX線エネルギー和PEを求めることで第1のX線情報を取得し、条件Bの信号処理として区関数NのX線フォトン数PN[N](スペクトル)を求めることで第1のX線情報を取得して、1物質の透過距離lを導出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得回路14aは、条件Aの信号処理としてエネルギー区間の数を1としてX線フォトンのエネルギーの和を求めることで第1のX線情報を取得し、条件Bの信号処理としてエネルギー区間の数を2以上としてX線フォトンの数を取得するようにしてもよい。すなわち、取得機能14aは、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンのエネルギーの和と、エネルギー区間の数を2以上としてX線フォトンのエネルギーの和或いはX線フォトンの数を取得する。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、信号処理の一例としてX線フォトン数とX線エネルギー和として取得した第1のX線情報を用いる場合について説明した。第2の実施形態では、電気信号値に対する異なる閾値を用いた信号処理や異なる積分時間を用いた信号処理について説明する。なお、第2の実施形態に係るX線CT装置の構成例は、取得回路14a及び導出機能377が実行する一部の機能が異なる点を除いて、図1に示すX線CT装置1の構成例と同様であるので、同一の符号を付与し、詳細な説明を省略する。
(電気信号値に対する異なる閾値を用いた信号処理)
取得回路14aは、電気信号に対し複数の信号処理を施すことで複数の第1のX線情報を取得する。ここで、取得回路14aは、例えば、電気信号値に対する異なる閾値を用いて、電気信号からX線フォトンを検出する複数の信号処理を施し、検出したX線フォトン数を第1のX線情報として取得する。図14は、第2の実施形態を説明するための図である。
図14は、X線検出器13により検出された電気信号の一例を示す。図14の左図と図14の右図とでは同じ電気信号を示している。ここで、取得回路14aは、異なる閾値を用いて、X線フォトンを検出する。例えば、取得回路14aは、信号処理として、入力された電気信号または電気信号を整形した信号が所定の閾値を越えた場合にX線フォトンを検出したと判定する。
図14の左図では、閾値Th1を用いてX線フォトンを検出し、図14の右図では、閾値Th1よりも小さい値である閾値Th2を用いてX線フォトンを検出する場合を示す。例えば、取得回路14aは、図14の左図では、X線フォトン数を1として検出し、図14の右図では、X線フォトン数を2として検出する。このように、取得回路14aは、閾値を変える事で、異なる第1のX線情報を複数取得する。
続いて、導出機能377による処理について説明する。導出機能377は、複数の第1のX線情報と第2のX線情報とに基づいて、X線検出器13へ入射したX線の透過経路上の所定の物質の組成或いは所定の物質の減弱率に関する弁別情報を導出する。例えば、導出機能377は、複数の第1のX線情報の内、いずれの一つの第1のX線情報を特定し、当該特定された第1のX線情報に基づいて、弁別情報を導出する。一例をあげると、導出機能377は、第2のX線情報との誤差が最小となる第1のX線情報を特定し、透過距離を導出する。導出機能377の処理の具体例として、ここでは、第1のX線情報として、フォトン検出の閾値を異なるようにして、区関数1のX線フォトン数PNを2つ取得した場合について説明する。
フォトン検出において閾値を小さくするとエネルギーの小さいフォトンも検出可能となるがノイズによる誤検出も増える。一方、閾値を大きくすると誤検出は減るが、エネルギーの小さいフォトンが検出できなくなる。ここで、透過距離が長くなると減弱によってフォトン数が少なくなる。このため、透過距離が長い場合には、ノイズが多くても検出数を稼げる閾値が小さい信号処理から得られた第1のX線情報が有効である。一方、透過距離が短い場合は十分にフォトンが入射してくる。このため、透過距離が短い場合には、エネルギーの小さなフォトンを捨ててしまってもノイズの少ない、閾値が大きい信号処理から得られた第1のX線情報が正確な透過距離を推定するには有効である。このようなことから、導出機能377は、透過距離の閾値に基づいて、第1のX線情報を切り替えることで、より精度の良い透過距離を推定する。
(異なる積分時間を用いた信号処理)
また、例えば、取得回路14aは、別の信号処理として、異なる積分時間を用いて、電気信号からX線フォトンのエネルギーを算出する複数の信号処理を施し、算出したX線フォトンのエネルギー和を第1のX線情報として取得する。図15は、第2の実施形態を説明するための図である。
図15は、X線検出器13により検出された電気信号の一例を示す。図15の左図と図15の右図とでは同じ電気信号を示している。ここで、取得回路14aは、異なる積分時間を用いて、X線エネルギー和を算出する。例えば、取得回路14aは、入力された電気信号または電気信号を整形した信号を所定の時間累積する事でX線フォトンのエネルギーを求める処理があり、この累積時間を変えることで、異なる第1投影データを得ることが出来る。
図15の左図では、累積時間T1を用いてX線エネルギー和を算出し、図15の右図では、累積時間T1よりも長い時間である累積時間T2を用いてX線エネルギー和を算出する場合を示す。例えば、取得回路14aは、図15の左図では、X線エネルギー和をPE1として算出し、図15の右図では、X線エネルギー和をPE2として算出する。このように、取得回路14aは、積分時間を変える事で、異なる第1のX線情報を複数取得する。
続いて、導出機能377により処理について説明する。導出機能377は、複数の第1のX線情報と第2のX線情報とに基づいて、X線検出器13へ入射したX線の透過経路上の所定の物質の組成或いは所定の物質の減弱率に関する弁別情報を導出する。例えば、導出機能377は、複数の第1のX線情報の内、いずれの一つの第1のX線情報を特定し、当該特定された第1のX線情報に基づいて、弁別情報を導出する。一例をあげると、導出機能377は、第2のX線情報との誤差が最小となる第1のX線情報を特定し、透過距離を導出する。導出機能377の処理の具体例として、ここでは、第1のX線情報として、積分時間を異なるようにして区関数NのX線フォトン数PNを2つ取得した場合について説明する。
累積時間が長いとエネルギーを正確に取得できるが、累積時間中に次のフォトンが入射してくると数え落しが生じる。一方、累積時間が短いとフォトン数は正確に取得できるが、検出するエネルギーがばらついてしまう。このため、導出機能377は、物質弁別を行う際にはスペクトルの正確さが重要であるため、累積時間を短くした信号処理から得られた第1のX線情報を用いた方が良い。一方、物質弁別と同時に単一物質での再構成画像を得る際には、フォトン数が正確な方が再構成画像の画質が良くなる場合がある。このため、導出機能377は、物質弁別と同時に単一物質での再構成画像を得る際には、累積時間を短くした信号処理から得られた第1のX線情報と、累積時間を長くした信号処理から得られた第1のX線情報とを用いて、単一物質での透過距離精度と物質弁別の精度を両立する。
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
導出機能377は、所定の物質毎の弁別情報の精度を選択するようにしてもよい。例えば、導出機能377は、複数の物質の透過距離を推定する場合に、物質毎の推定精度を選択する。一例をあげると、導出機能377は、造影剤であるヨードの透過距離を正確に求めたい時に、他の物質の透過距離を荒く求めることで、ヨードの弁別画像を正確に出しつつ全体の処理時間を短くする。
ところで、上述した実施形態において例示した第2のX線情報は、実測の手間等の理由により透過距離の間隔が荒い場合がある。すなわち、第2のX線情報は、離散的である。このように透過距離の間隔が荒い場合には、正確な透過距離を導出できない可能性が高くなる。このため、導出機能377は、透過距離間隔が細かいテーブルを補間して生成し、細かい精度の透過距離の推定を可能とする。
例えば、導出機能377は、弁別情報導出処理時に、パラボラフィッティング等によって、テーブルの間隔より細かい精度の値を求めることで補間処理を実行してもよい。すなわち、導出機能377は、第2のX線情報を補間することによって、弁別情報をより細かい精度で算出する。なお、この補間処理は、弁別情報導出処理時に導出機能377によって実行されることに限定されるものではなく、実測によって第2のX線情報を取得したタイミングで他の処理回路などによって実行されてもよい。例えば、補間方法としては、線形近似、多項式近似、スプライン、バイキュービック等を適用してもよい。また、これらの各種補間方法を任意に組み合わせてもよい。また、例えば、透過距離によって用いる補間方法を変えたり、複数の補間方法の平均値を用いたりしてもよい。
また、上述した実施形態では、1物質の透過距離を求める場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、物質数が2以上の場合にも、弁別情報導出処理を適用可能である。図16は、その他の実施形態を説明するための図である。図16では、2物質の透過距離を求める場合の第2のX線情報の一例を示す。
図16では、2物質の透過距離と、区間数1のX線エネルギー和とを対応付けた第2のX線情報を示す。図16に示すように、第2のX線情報は、「物質aの透過距離」と、「物質bの透過距離」と、「X線エネルギー和」とを対応付けた情報である。「物質aの透過距離」は、物質aの透過距離を示す。例えば、「物質aの透過距離」には、「0(mm)」、「1(mm)」、「L(mm)」などの情報が格納される。また、「物質bの透過距離」は、物質bの透過距離を示す。例えば、「物質bの透過距離」には、「0(mm)」、「1(mm)」、「L(mm)」などの情報が格納される。
「X線エネルギー和」は、区間数1のX線エネルギー和を示す。例えば、「X線エネルギー和」には、「PtnEneTbl[0,0]」、「PtnEneTbl[1,0]」、「PtnEneTbl[La,Lb]」などの情報が格納される。
一例をあげると、図16に示す第2のX線情報は、物質aの透過距離が0(mm)であり、物質bの透過距離が0(mm)である場合のX線エネルギー和がPtnEneTbl[0,0]であり、物質aの透過距離が1(mm)であり、物質bの透過距離がLb(mm)である場合のX線エネルギー和がPtnEneTbl[1,Lb]であり、物質aの透過距離がLa(mm)であり、物質bの透過距離がLb(mm)である場合のX線エネルギー和がPtnEneTbl[La,Lb]であることを示す。
そして、導出機能377は、図16に示す第2のX線情報から物質a及び物質bの透過距離をそれぞれ求めて、X線エネルギー和で求めた物質aの推定距離が閾値より短ければX線エネルギー和で求めた推定距離を透過距離とする。また、物質aの推定距離が閾値より長ければX線フォトン数で求めた推定距離を透過距離とする。かかる場合、2物質の透過距離と、区間数1のX線フォトン数とを対応付けた第2のX線情報が記憶回路35に記憶されている。なお、閾値と比較するのは物質aの推定距離ではなく、物質bの推定距離でもよい。
また、上述した実施形態では、データ収集回路14内に取得回路14aを設け、取得回路14aにおいて、電気信号に対し複数の信号処理を施すことで複数の第1のX線情報を取得する取得機能を実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、コンソール30に取得回路を設け、取得機能を実行してもよい。或いは、処理回路37において、取得機能を実行してもよい。
また、上述した第1の実施形態又は第1の実施形態の変形例と、第2の実施形態とを組み合わせてもよい。例えば、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンのエネルギーの和と、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンの数を取得する際に、電気信号値に対する異なる閾値を用いて複数の第1のX線情報を取得してもよい。或いは、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンのエネルギーの和と、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンの数を取得する際に、異なる積分時間を用いて複数の第1のX線情報を取得してもよい。或いは、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンのエネルギーの和と、エネルギー区間の数を1としてX線フォトンの数を取得する際に、電気信号値に対する異なる閾値と、異なる積分時間とを用いて複数の第1のX線情報を取得してもよい。
また、上述した実施形態では、再構成処理機能373は、投影データに対して物質弁別を行い、物質弁別情報を得るものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、再構成処理機能373は、画像データに対して物質弁別を行い、物質弁別情報を得てもよい。
上述した実施形態では、X線管12aとX線検出器13とを一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)のX線CT装置1について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線CT装置には、第3世代CT以外にも、複数のX線検出素子を有するX線検出器がリング状に分散して固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)がある。上述した実施形態は、第4世代CTにも適用可能である。また、第3世代CTと第4世代CTとを組み合わせたハイブリッド型のX線CT装置にも、上述した実施形態は、適用可能である。
また、上述した実施形態は、従来からの一管球型のX線CT装置にも適用可能であるし、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。
また、上述した実施形態では、処理回路37において複数の機能を実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の機能を独立の回路としてコンソール30内に設け、各回路がそれぞれの機能を実行するようにしてもよい。また、処理回路37が実行する導出機能377を導出回路として設け、導出回路が導出機能を実行してもよい。また、処理回路37が実行する前処理機能372を前処理回路として設け、前処理回路が前処理機能を実行してもよい。また、処理回路37が実行する再構成処理機能373を再構成処理回路として設け、再構成処理回路が再構成処理機能を実行してもよい。
また、上述した実施形態では、前処理機能372、導出機能377、及び再構成処理機能373をコンソール30内にて実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、外部のワークステーションにおいて、前処理機能372、導出機能377、及び再構成処理機能373を実行するようにしてもよい。
また、上述した実施形態において説明した弁別情報導出処理は、ソフトウェアによって実現することもできる。例えば、弁別情報導出処理は、上記の実施形態において導出機能377が行うものとして説明した処理の手順を規定した弁別情報導出プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。この弁別情報導出プログラムは、例えば、ハードディスクや半導体メモリ素子等に記憶され、CPUやMPU等のプロセッサによって読み出されて実行される。また、この弁別情報導出プログラムは、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)やMO(Magnetic Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録されて、配布され得る。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはプロセッサの回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサの回路内にプログラムを組み込む代わりに、コンソール30が有する記憶回路35にプログラムを保存するように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、記憶回路35に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、物質弁別の性能と再構成画像の品質とを向上させるX線CT装置を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。