以下、図面を参照して、実施形態に係るX線CT装置を説明する。
以下の実施形態で説明するX線CT(Computed Tomography)装置は、フォトンカウンティングCTを実行可能な装置である。すなわち、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、従来の積分型(電流モード計測方式)の検出器ではなく、フォトンカウンティング方式の検出器を用いて被検体を透過したX線を計数することで、S/N比の高いX線CT画像データを再構成可能な装置である。なお、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台10と、寝台20と、コンソール30とを有する。
架台10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線に関するデータを収集する装置であり、X線高電圧装置11と、X線発生装置12と、X線検出器13と、データ収集回路14と、回転フレーム15と、架台制御装置16とを有する。また、架台10において、図1に示すように、X軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系を定義する。すなわち、X軸は水平方向を示し、Y軸は鉛直方向を示し、Z軸は架台10が非チルト時の状態における回転フレーム15の回転中心軸方向を示す。
回転フレーム15は、X線発生装置12とX線検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台制御装置16によって被検体Pを中心とした円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
X線発生装置12は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置である。X線発生装置12は、X線管12aと、ウェッジ12bと、コリメータ12cとを有する。
X線管12aは、X線高電圧装置11から高電圧の供給を受けて、陰極(フィラメントと呼ぶ場合もある)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。すなわち、X線管12aは、X線高電圧装置11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。
また、X線管12aは、ファン角及びコーン角を持って広がるX線ビームを発生する。例えば、X線管12aは、X線高電圧装置11の制御により、フル再構成用に被検体Pの全周囲でX線を連続曝射したり、ハーフ再構成用にハーフ再構成可能な曝射範囲(180度+ファン角)でX線を連続曝射したりすることが可能である。また、X線管12aは、X線高電圧装置11の制御により、予め設定された位置(管球位置)でX線(パルスX線)を間欠曝射したりすることが可能である。また、X線高電圧装置11は、X線管12aから曝射されるX線の強度を変調させることも可能である。例えば、X線高電圧装置11は、特定の管球位置では、X線管12aから曝射されるX線の強度を強くし、特定の管球位置以外の範囲では、X線管12aから曝射されるX線の強度を弱くする。
ウェッジ12bは、X線管12aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ12bは、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
コリメータ12cは、鉛板等によって構成され、一部にスリットを有する。例えば、コリメータ12cは、後述するX線高電圧装置11の制御により、ウェッジ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲をスリットにより絞り込む。
なお、X線発生装置12のX線源は、X線管12aに限定されるものではない。例えば、X線発生装置12は、X線管12aに代えて、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームと衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとによって構成されてもよい。
X線高電圧装置11は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路から構成され、X線管12aに印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管12aが照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置から構成される。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。例えば、X線高電圧装置11は、X線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。また、X線高電圧装置11は、コンソール30の処理回路37から制御を受ける。
架台制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される処理回路とモータ及びアクチュエータ等の駆動機構から構成される。架台制御装置16は、コンソール30に取り付けられた入力インターフェース31もしくは架台10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台10の動作制御を行う機能を有する。例えば、架台制御装置16は、入力信号を受けて回転フレーム15を回転させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線管12aとX線検出器13とを旋回させる制御や、架台10をチルトさせる制御、及び寝台20及び天板22を動作させる制御を行う。架台制御装置16は、コンソール30の処理回路37から制御を受ける。
また、架台制御装置16は、X線管12aの位置を監視しており、X線管12aが所定の回転角度(撮影角度)に到達するとデータ収集回路14に対してデータの取り込みを開始するタイミングを示すビュートリガ信号を出力する。例えば、回転撮影における全ビュー数が2460ビューである場合、架台制御装置16は、X線管12aが円軌道上を約0.15度(=360/2460)移動する毎にビュートリガ信号を出力する。
X線検出器13は、複数の検出素子から成り、計数した光子数に応じた信号を出力する光子計数型検出器の一例である。X線検出器13は、例えば、X線管12aの焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子(「センサ」或いは単に「検出素子」とも言う)が配列された複数のX線検出素子列から構成される。X線検出器13は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向に複数配列された構造を有する。X線検出器13の各X線検出素子は、X線発生装置12から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号(パルス)をデータ収集回路14へと出力する。なお、各X線検出素子が出力する電気信号のことを検出信号とも言う。図2は、第1の実施形態に係るX線検出器13を説明するための図である。
X線検出器13は、図2に示すように、X線光子を検出する検出素子130と、検出素子130に接続されて、検出素子130が検出したX線光子を計数するASIC(Application Specific Integrated Circuit)134とからなる検出部を複数有する光子計数型検出器である。なお、図2の例では、複数の検出部のうち1つの検出部を図示している。また、以下では、X線検出器13が直接変換型の検出器である場合について説明する。
各検出素子130は、半導体131と、カソード電極132と、複数のアノード電極133とを有する。ここで、半導体131は、テルル化カドミウム(CdTe)やテルル化亜鉛カドミウム(CZT)等の半導体である。また、アノード電極133のそれぞれが個々の検出画素(「画素」とも言う)に対応する。検出素子130は、X線光子が入射すると、検出素子130に入射したX線を直接電荷に変換してASIC134に出力する。
なお、以下では、X線検出器13が直接変換型の半導体検出器である場合について説明するが、これに限らず、例えばX線検出器13として、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとから構成される間接変換型の検出器を用いることもできる。シンチレータアレイは、複数のシンチレータから構成され、シンチレータは入射X線エネルギーに応じた数の光を出力するシンチレータ結晶にて構成される。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板で構成される。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管等の光センサから構成される。ここで、光センサは、例えばPD(Photodiode)やAPD(Avalanche Photodiode)やSiPM(Silicon photomultipliers)などである。
ASIC134は、検出素子130が出力した個々の電荷を弁別することで、検出素子130に入射したX線光子の数を計数する。また、ASIC134は、個々の電荷の大きさに基づく演算処理を行なうことで、計数したX線光子のエネルギーを計測する。ASIC134は、例えば、コンデンサ134aと、増幅回路134bと、波形整形回路134cと、コンパレータ回路134d、カウンタ134eとを有する。なお、ASIC134は、計数回路の一例である。
コンデンサ134aは、検出素子130が出力した電荷を蓄積する。増幅回路134bは、検出素子130に入射したX線光子に応答してコンデンサ134aに集電される電荷を積分・増幅して電気量のパルス信号として出力する回路である。このパルス信号の波高或いは面積は、光子のエネルギーと相関性を有する。
ここで、ASIC134において、増幅回路134bには、時定数(τ(ns))が設定される。ここで、時定数とは、増幅回路134bにおける積分時間を示す。言い換えると、各ASIC134の時定数は、各ASIC134における積分時間で定まる。また、ASIC134ではホワイトノイズが発生する。時定数がホワイトノイズの周波数より大きい場合、ホワイトノイズがキャンセルされるので、周波数特性が良くなり、ノイズが低減される。この結果、時定数がホワイトノイズの周波数より大きい場合には、物質弁別能が向上することになる。
波形整形回路134cは、増幅回路134bから出力されるパルス信号の周波数特性を調整し、かつゲイン及びオフセットを与えることによってパルス信号の波形を整形する回路である。
コンパレータ回路134dは、入射した光子への応答パルス信号の波高或いは面積を、弁別すべき複数のエネルギー帯域に対応して予め設定された閾値と比較し、閾値との比較結果を後段のカウンタ134eに出力する回路である。
カウンタ134eは、対応するエネルギー帯域毎に応答パルス信号の波形の弁別結果をカウントし、光子の計数結果をデジタルデータとしてデータ収集回路14に出力する。
データ収集回路14(DAS:Data Acquisition System)は、X線検出器13の各検出素子130から計数処理の結果を収集して、検出データを生成する回路である。言い換えると、データ収集回路14は、X線検出器13による計数結果を収集する。ここで、検出データは、例えば、サイノグラムである。サイノグラムとは、X線管12aの各位置において各検出素子130に入射した計数処理の結果を並べたデータである。データ収集回路14は、ビュートリガ信号に同期して、X線検出器13から各ビュー角度における計数処理の結果を収集して、サイノグラムを生成する。データ収集回路14は、計数処理の結果を、一定間隔(ビュー)毎に出力もしくは記憶回路35に保存する処理と、計数処理の結果をリセットする処理とを繰り返すことにより、必要周分のデータを取得する。
また、データ収集回路14は、X線検出器13に対して各種制御信号を送信する。図3は、第1の実施形態に係るデータ収集回路14を説明するための図である。図3に示すように、データ収集回路14は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)14aを有する。また、図3に示すように、データ収集回路14は、例えば、リジッドフレキシブル基板17によってX線検出器13と接続される。リジッドフレキシブル基板17は、部品を搭載する硬さと強度を持ったリジッド配線板部分と、折り曲げ可能なフレキシブル配線板とを一体化した基板である。FPGA14aは、例えば、架台制御装置16からビュートリガ信号を受信し、受信したビュートリガ信号に基づいて、X線検出器13を制御する。なお、データ収集回路14は、収集部の一例であり、FPGA14aは、設定部の一例である。
なお、データ収集回路14から出力されたデータを検出データと称し、検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、チャネル間のゲイン補正処理、パイルアップ補正処理、応答関数補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生データと称する。また、検出データ及び生データを総称して投影データと称する。
寝台20は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、寝台駆動装置21と、天板22と、基台23と、ベース(支持フレーム)24とを備えている。
天板22は、被検体Pが載置される板である。ベース24は、天板22を支持する。基台23は、ベース24を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置21は、被検体Pが載置された天板22を天板22の長軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動するモータあるいはアクチュエータである。なお、寝台駆動装置21は、天板22をX軸方向にも移動可能である。
なお、天板移動方法は、天板22だけを移動させてもよいし、寝台20のベース24ごと移動する方式であってもよい。また、立位CTである場合には、天板22に相当する患者移動機構を移動させる方式であってもよい。
なお、架台10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。なお、以下の実施形態では、架台10と天板22との相対位置の変化が天板22を制御することによって実現されるものとして説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、架台10が自走式である場合、架台10の走行を制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。また、架台10の走行と天板22とを制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。
コンソール30は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台10によって収集された計数結果を用いてX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール30は、図1に示すように、入力インターフェース31と、ディスプレイ32と、記憶回路35と、処理回路37とを有する。
入力インターフェース31は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路37に出力する。例えば、入力インターフェース31は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、処理回路37によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって構成される。
記憶回路35は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。記憶回路35は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。
処理回路37は、例えば、システム制御機能371、前処理機能372、再構成処理機能373、画像処理機能374、スキャン制御機能375、表示制御機能376、及び決定機能377を実行する。ここで、例えば、図1に示す処理回路37の構成要素であるシステム制御機能371、前処理機能372、再構成処理機能373、画像処理機能374、スキャン制御機能375、表示制御機能376、及び決定機能377が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路35内に記録されている。処理回路37は、例えば、プロセッサであり、記憶回路35から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路37は、図1の処理回路37内に示された各機能を有することとなる。
システム制御機能371は、入力インターフェース31を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路37の各種機能を制御する。
前処理機能372は、データ収集回路14から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、チャネル間のゲイン補正処理、パイルアップ補正処理、応答関数補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施して生データを生成する。なお、前処理機能372は、補正部の一例である。
再構成処理機能373は、前処理機能372にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってX線CT画像データを生成する。再構成処理機能373は、再構成したX線CT画像データを記憶回路35に格納する。なお、全てのビンの情報を画素毎に加算して全エネルギー情報を含むデータから再構成したX線CT画像データのことを「ベース画像」とも言う。
ここで、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果から生成された投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギーの情報が含まれている。このため、再構成処理機能373は、例えば、特定のエネルギー成分のX線CT画像データを再構成することができる。また、再構成処理機能373は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのX線CT画像データを再構成することができる。
また、再構成処理機能373は、例えば、各エネルギー成分のX線CT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のX線CT画像データを重畳した画像データを生成する。また、再構成処理機能373は、例えば、物質固有のK吸収端を利用して、当該物質の同定が可能となる画像データを生成することができる。再構成処理機能373が生成する他の画像データとしては、単色X線画像データや密度画像データ、実効原子番号画像データ等が挙げられる。
また、X線CTの応用として、物質ごとにX線の吸収特性が異なることを利用して、被検体Pに含まれる物質の種別、存在量、密度等を弁別する技術がある。これを、物質弁別と言う。例えば、再構成処理機能373は、投影データに対して物質弁別を行い、物質弁別情報を得る。そして、再構成処理機能373は、物質弁別の結果である物質弁別情報を用いて物質弁別画像を再構成する。
再構成処理機能373は、CT画像を再構成するには、フルスキャン再構成方式及びハーフスキャン再構成方式を適用可能である。例えば、再構成処理機能373は、フルスキャン再構成方式では、被検体の周囲一周、360度分の投影データを必要とする。また、再構成処理機能373は、ハーフスキャン再構成方式では、180度+ファン角度分の投影データを必要とする。以下では、説明を簡単にするため、再構成処理機能373は、被検体の周囲一周、360度分の投影データを用いて再構成するフルスキャン再構成方式を用いるものとする。なお、再構成処理機能373は、再構成処理部の一例である。
画像処理機能374は、入力インターフェース31を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能373によって生成されたX線CT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像やレンダリング処理による3次元画像等の画像データに変換する。画像処理機能374は、変換した画像データを記憶回路35に格納する。
スキャン制御機能375は、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。例えば、スキャン制御機能375は、X線高電圧装置11、X線検出器13、架台制御装置16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10におけるスキャンの開始、スキャンの実行、及びスキャンの終了を制御する。具体的には、スキャン制御機能375は、位置決め画像(スキャノ画像、スキャノグラム)を収集する撮影及び診断に用いる画像を収集する本撮影(スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。
ここで、スキャン制御機能375は、2次元のスキャノ画像及び3次元のスキャノ画像を撮影することができる。例えば、スキャン制御機能375は、X線管12aを0度の位置(被検体Pに対して正面方向の位置)に固定して、天板22を定速移動させながら連続的に撮影を行うことで2次元のスキャノ画像を撮影する。或いは、スキャン制御機能375は、X線管12aを0度の位置に固定して、天板22を断続的に移動させながら、天板22の移動に同期して断続的に撮影を繰り返すことで2次元のスキャノ画像を撮影する。また、スキャン制御機能375は、被検体に対して正面方向だけでなく、任意の方向(例えば、側面方向など)から位置決め画像を撮影することができる。例えば、X線管12aが90度の位置(被検体Pに対して側面方向の位置)で撮影した場合、被検体Pの側面からの撮影がなされ、2次元のスキャノ画像が得られる。なお、X線管12aの位置は、必要であれば、任意の複数の位置から撮影可能である。
また、スキャン制御機能375は、スキャノ画像の撮影において、被検体に対する全周分の投影データを収集することで、3次元のスキャノ画像を撮影する。例えば、スキャン制御機能375は、ヘリカルスキャン或いはノンヘリカルスキャンによって被検体に対する全周分の投影データを収集する。ここで、スキャン制御機能375は、被検体の胸部全体、腹部全体、上半身全体、全身などの広範囲に対して本撮影よりも低線量でヘリカルスキャン或いはノンヘリカルスキャンを実行する。ノンヘリカルスキャンとしては、例えば、ステップアンドシュート方式のスキャンが実行される。
表示制御機能376は、記憶回路35が記憶する各種画像データを、ディスプレイ32に表示するように制御する。
決定機能377は、X線検出器13における各検出素子130の位置に応じた時定数を決定する。なお、決定機能377の詳細については後述する。
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、X線検出器13の出力信号(電荷)を積分し、波形整形した後に、信号レベルに応じて複数のウインドに分割して各ウインドの入射X線数をカウンタで計数する。X線CT装置1は、必要周分のデータを取得して、複数のエネルギーウインドでCT画像を取得する。ここで、出力信号(電荷)の処理時間は、ASIC134に設定された積分時間の時定数で決まる。
ここでは、比較例として、X線検出器13において、各ASIC134の時定数を一定値に設定する場合について説明する。すなわち、比較例では、全てのASIC134において、同じ値の時定数が設定されるものとする。図4及び図5を用いて比較例における課題について説明する。図4及び図5は、比較例を説明するための図である。
X線検出器13において、各検出素子130に入射するX線量は、X線検出器13における位置に応じて異なる。例えば、図4に示すように、X線検出器13の中央部は、被検体Pによる吸収量が大きいため、検出素子130に入射するX線量が低くなる。ここでは、説明の便宜上、X線量をn1(c/s)とする。一方で、X線検出器13の周縁部は、被検体Pによる吸収量が小さい、もしくはないため、検出素子130に入射するX線量が高くなる。ここでは、説明の便宜上、X線量をn2(c/s)とする。なお、X線検出器13の中央部は、X線検出器13のチャネル方向において、中央付近の領域を示し、X線検出器13の周縁部は、X線検出器13のチャネル方向において、中央から離れた周縁の領域を示す。
図5の上図は、X線量がn1である場合のX線の入射のタイミングを示し、図5の下図は、X線量がn2である場合のX線の入射のタイミングを示す。また、図5では、時定数がτ(ns)である場合を示す。図5の上図に示すように、入射するX線量が低い場合、各時定数の間に入射するX線の数は1以下である。このように、入射するX線量が低い場合には、パイルアップがほとんど発生しない。
一方、図5の下図に示すように、入射するX線量が高い場合、各時定数の間に入射するX線の数が2以上になる場合が起こり得る。すなわち、X線検出器13に入射するX線光子数が多い場合、時定数の間に別のX線が入射するパイルアップと呼ばれる現象が連続的に発生する。パイルアップが発生すると、計数するX線光子数及び検出したX線のエネルギー値が正しい値ではなくなり、最終的に得られる画質が劣化する。例えば、時定数の間に、60KeVのX線光子1個と、80KeVのX線光子1個とが入射した場合、X線検出器13は、140KeVのX線光子1個が入射したものと計測する。
そこで、時定数を極力短くしてパイルアップの影響を低く抑えて高い画質を得ることが考えられる。しかしながら、時定数を短くすると、時定数より低い周波数のホワイトノイズが除去できないため、ノイズの混入量が増加する。すなわち、時定数を短くすると、除去できないホワイトノイズが増加するため、周波数特性が悪くなる。この結果、ノイズが増加し、S/N比が低下する。また、時定数を短くすると、X線検出器13においてチャネル方向の中央部に入射するX線量が低い検出素子130では、物質弁別能が低下する。
逆に、時定数を長くすると、X線検出器13においてチャネル方向の中央部の検出素子130では、ノイズ低下により物質弁別能が向上するが、X線検出器13においてチャネル方向の周縁部の検出素子130では、パイルアップのため画質が劣化する。このように、比較例では、高い画質と高い物質弁別能とを両立するのが困難であった。
このようなことから、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、光子計数型検出器における各検出素子130の位置に応じた時定数を、各検出素子130に接続されたASIC134に撮影時に設定する。以下では、図6から図9を用いて、第1の実施形態を説明する。図6は、第1の実施形態に係るX線CT装置1による処理手順を示すフローチャートであり、図7から図9は、第1の実施形態を説明するための図である。
図6では、X線CT装置1の動作を説明するフローチャートを示し、各構成要素がフローチャートのどのステップに対応するかを説明する。ステップS1は、スキャン制御機能375に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35からスキャン制御機能375に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、スキャン制御機能375が実現されるステップである。ステップS1では、スキャン制御機能375は、スキャノグラムを撮影する。例えば、スキャン制御機能375は、X線管12aを0度の位置(被検体Pに対して正面方向の位置)に固定して、2次元のスキャノ画像を撮影する。
ステップS2は、決定機能377に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から決定機能377に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、決定機能377が実現されるステップである。ステップS2では、決定機能377は、時定数を決定する。
ここで、決定機能377は、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を決定し、対応情報を生成する。例えば、決定機能377は、各検出素子130の計数結果から各検出素子130に入射するX線量を推定し、推定したX線量に基づく時定数を決定する。一例をあげると、決定機能377は、ステップS1で撮影されたスキャノグラムの計数結果から、検出素子130に入射するX線量を推定して、時定数を決定する。
決定機能377は、スキャノグラムの計数結果に対して、以下に示す閾値判定処理を行って時定数を決定する。例えば、決定機能377は、チャネル方向において、スキャノグラムの計数結果が閾値以上の領域を、検出素子130に入射するX線量が高線量であると推定し、高線量領域に選択する。そして、決定機能377は、高線量領域に該当する検出素子に接続されたASIC134の時定数を短くする。一方、決定機能377は、チャネル方向において、スキャノグラムの計数結果が閾値未満の領域を、検出素子130に入射するX線量が低線量であると推定し、低線量領域に選択する。そして、決定機能377は、低線量領域に該当する検出素子に接続されたASIC134の時定数を長くする。
より具体的には、チャネル方向の中央部は被検体Pによる吸収が大きいため、入射するX線の線量が低くなる。このため、決定機能377は、チャネル方向の中央部を低線量領域として選択し、図7に示すように、チャネル方向の中央部の時定数を長くする。また、チャネル方向の周縁部は、被検体Pによる吸収が小さいか或いは無いため、入射するX線の線量が高くなる。このため、決定機能377は、チャネル方向の周縁部を高線量領域として選択し、図7に示すように、チャネル方向の周縁部の時定数を短くする。
なお、決定機能377は、代表となるスライスにおいて閾値判定処理を行って時定数を決定し、決定した時定数を他のスライスにも同様に適用してもよいし、各スライス方向において、閾値判定処理をそれぞれ行って時定数を決定してもよい。また、代表スライスとは、例えば、スライス方向における中央のスライスである。
そして、決定機能377は、各検出素子と、当該検出素子に接続されたASIC134の時定数とを対応付けた対応情報を生成する。より具体的には、決定機能377は、図8に示すように、IDと時定数とを対応付けた対応情報を生成する。
ここで、対応情報における「ID」は、検出素子を一意に識別する識別子示し、「時定数」は、IDで識別される検出素子に接続されたASIC134の時定数を示す。また、図8に示す例では、時定数T1<時定数T2とし、「ID」が「yyyy」及び「zzzz」である検出素子130は、X線検出器13においてチャネル方向の周縁部の高線量領域に配置され、「ID」が「xxxx」である検出素子130は、X線検出器13においてチャネル方向の中央部の低線量領域に配置されるものとする。一例をあげると、決定機能377は、「ID」が「yyyy」及び「zzzz」である検出素子に接続されるASIC134の時定数が「T1」であると決定し、「ID」が「xxxx」である検出素子に接続されるASIC134の時定数が「T2」であると決定する。
ステップS3は、FPGA14aにより実現されるステップである。ステップS4では、FPGA14aは、時定数を設定する。ここで、FPGA14aは、光子計数型検出器における各検出素子130の位置に応じた時定数を、各検出素子130に接続されたASIC134に撮影時に設定する。例えば、FPGA14aは、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を、各ASIC134に設定する。
一例をあげると、FPGA14aは、図8に示す対応情報を参照して、各ASIC134に時定数を設定する。すなわち、FPGA14aは、各検出素子130の計数結果から推定された、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を、各ASIC134に設定する。より具体的には、FPGA14aは、IDが「yyyy」及び「zzzz」である検出素子130に接続されるASIC134に時定数「T1」を設定する。また、FPGA14aは、IDが「xxxx」である検出素子130に接続されるASIC134に時定数「T2」を設定する。このようにして、FPGA14aは、入射するX線量が閾値未満である検出素子に接続されたASIC134に、入射するX線量が閾値以上である検出素子に接続されたASIC134よりも大きな時定数を設定する。なお、第1の実施形態では、撮影開始時に各ASIC134に設定された時定数は、撮影中は固定されたままである。
ステップS4は、スキャン制御機能375に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35からスキャン制御機能375に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、スキャン制御機能375が実現されるステップである。ステップS4では、スキャン制御機能375は、本スキャンを実行する。
ステップS5は、前処理機能372に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から前処理機能372に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、前処理機能372が実現されるステップである。ところで、ステップS4の本スキャンで得られる検出データは、各ASIC134において、異なる時定数で処理された結果得られる信号である。ここで、時定数が変わることで、パイルアップの発生率も変化する。パイルアップの発生率が変化することによって、例えば、カウント数が減り、スペクトルが高い方へシフトする割合が変化する。すなわち、異なる時定数が設定されたことによって、検出データには、カウント数及びスペクトルに変化が生じる。このようなことから、ステップS5では、前処理機能372は、検出データを補正する。言い換えると、前処理機能372は、データ収集回路14による計数結果を補正する。
図9では、検出データのカウント数を補正する場合について説明する。図9では、横軸は管電流値(mA)を示し、縦軸は検出したX線数を示す。ここで、照射するX線の線量に対して、検出されるX線数は、理論的には線形な関係になるはずである。例えば、図9のT0で示すように、照射するX線の線量が増加するにしたがって、検出されるX線数も線形に増加する。しかしながら、実測では、照射する線量の増加に伴い、検出されるX線数が頭打ちになってしまい非線形な関係になる。ここで、頭打ちになる線量は、時定数で決まる。例えば、時定数が大きくなればなるほど、検出されるX線数は低下する。このようなことから、前処理機能372は、各ASIC134に設定された時定数を特定し、各ASIC134における計数結果であるX線数を補正する。なお、以下では、時定数T1<時定数T2とし、時定数T1及び時定数T2において、照射するX線の線量に対して検出されるX線数が事前に計測されているものとする。
例えば、図9に示す例において、検出X線数がC1であり、時定数がT1である場合には、前処理機能372は、検出X線数をC1からC2に補正する。また、図9に示す例において、検出X線数がC1であり、時定数がT2である場合には、前処理機能372は、検出X線数をC1からC3に補正する。
ステップS6は、再構成処理機能373に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から再構成処理機能373に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、再構成処理機能373が実現されるステップである。ステップS6では、再構成処理機能373は、画像を再構成する。例えば、再構成処理機能373は、ステップS5で前処理機能372により補正された検出データに前処理を施した投影データに基づいて、ベース画像を生成する。すなわち、再構成処理機能373は、補正後の計数結果に基づいて画像を再構成する。
ステップS7は、表示制御機能376に対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から表示制御機能376に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、表示制御機能376が実現されるステップである。ステップS7では、表示制御機能376は、画像をディスプレイ32に表示する。
上述したように、第1の実施形態では、X線CT装置1では、X線検出器13における各検出素子130の位置に応じた時定数を、各検出素子に接続されたASIC134に撮影時に設定する。例えば、X線検出器13のチャネル方向において中央部である低線量領域に配置されている検出素子130に接続されたASIC134に、チャネル方向において周縁部である高線量領域に配置されている検出素子130に接続されたASIC134よりも大きな時定数を設定する。
これにより、例えば、X線検出器13のチャネル方向における中央部では、時定数が長いため、S/N比が向上し、物質弁別能が高くなる。一方、X線検出器13のチャネル方向における周縁部では、時定数が短いため、高線量下でもパイルアップの影響を受けにくくなり、ヒストグラムの変形が少なく、ほぼ正しい計数率を得ることができる。また、X線検出器13のチャネル方向における周縁部の高線量領域では、物質弁別する必要性が低く、物質弁別能が必要なのは、X線検出器13のチャネル方向における中央部の低線量領域である。このため、第1の実施形態に係るX線CT装置1によれば、高い画質を得ることができるとともに、高い物質弁別能を得ることが可能となる。
なお、低線量領域では、時定数が長いが、線量が低いためパイルアップによるヒストグラムの変形、計数率への影響は無視できる。また、高線量領域では、時定数が短いため、S/N比は小さくなるが、計数率には影響はなく、画質への影響を排除してもよい。このため、第1の実施形態に係るX線CT装置1では、上述した前処理機能372による補正処理を省略してもよい。
また、再構成処理機能373は、投影データに対して物質弁別を行い、物質弁別の結果である物質弁別情報を用いて物質弁別画像を再構成してもよい。ここで、物質弁別画像を再構成する場合には、検出データのカウント数を補正する処理に加えて、検出データのスペクトルを補正する処理が必要になる。以下では、再構成処理機能373による検出データのスペクトルを補正する処理について説明する。
X線検出器13が検出するX線のスペクトルS(E)と、X線検出器13に入射するX線のスペクトルS0(E)との関係は、応答関数R(E,nτ)を用いて以下の式1で表される。
ここで、S0(E)は、被検体Pに照射されるX線のスペクトルであり、μは当該パスの平均減弱係数であり、Lは当該パスの投影長である。また、応答関数R(E,nτ)には、X線量n及び時定数τが含まれる。この応答関数Rは、X線量n及び時定数τにより複数設定される。ここで、X線のスペクトルS(E)、被検体Pに照射されるX線のスペクトルS0(E)、応答関数R(E,nτ)は既知である。このため、再構成処理機能373は、式1から吸収量(−μL)を算出することが可能になる。すなわち、再構成処理機能373は、時定数の違いによる検出データのスペクトルの変化を加味して、物質弁別を行うことが可能になる。なお、ベース画像を生成する場合には、検出データのカウント数を補正すればよく、検出データに生じるスペクトルの差異を補正する必要はない。
(第1の実施形態の変形例)
なお、上述した実施形態では、時定数を加味した応答関数を用いて物質弁別する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ルックアップテーブルを用いて物質弁別を行ってもよい。かかる場合、ルックアップテーブルは、物質弁別する物質ごとの投影長に応じて事前に決定された検出スペクトルを記憶する。また、管電流及び管電圧を種々変更した撮影条件下で、ルックアップテーブルを事前に複数作成しておく。そして、再構成処理機能373は、検出データに対応する検出スペクトルをルックアップテーブルから探索することによって、物質弁別する。図10は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。
図10では、水とカルシウムとを物質弁別する場合を示す。図10に示すように、ルックアップテーブルは、水の厚さ5、10、15、20(cm)に対して、カルシウムの厚さを1、2、3、4(mm)と変化させた場合のヒストグラムを記憶する。一例をあげると、S(E)11は、水5cm、カルシウム1mmである場合のヒストグラムを示し、S(E)21は、水5cm、カルシウム2mmである場合のヒストグラムを示す。ここで、再構成処理機能373は、例えば、パイルアップを発生しやすい撮影条件下で作成したルックアップテーブルを用いて、検出データと類似するヒストグラムを特定することで、物質弁別を行う。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、各検出素子の位置に応じた時定数を、各検出素子に接続されたASIC134に撮影時に設定する場合について説明した。ここで、第1の実施形態では、撮影開始時に各ASIC134に設定された時定数は、撮影中は固定されたままである。
ところで、被検体Pの断面は円形ではなく、楕円形であることが多い。このため、図7に示すように時定数の短い領域と時定数の長い領域とを固定にすると、X線管12aが被検体Pの周囲を1回転するなかで、撮影角度によっては、長い時定数を設定した領域に高い線量のX線が入射する場合がある。このような場合、パイルアップによってカウント数が減ったり、スペクトルが高い方へシフトしたりする結果、画質が劣化する。
このようなことから、各検出素子130の位置に応じて設定した時定数を、撮影中固定したままにせずに、X線管12aの撮影角度に応じてダイナミックに変更してもよいものである。そこで、第2の実施形態では、撮影角度に応じた時定数を各ASIC134に設定する場合について説明する。
なお、第2の実施形態に係るX線CT装置1の構成は、決定機能377及びFPGA14aの一部が異なる点を除いて、図1に示すX線CT装置1の構成と同様である。このため、第2の実施形態では、決定機能377及びFPGA14aが実行する機能についてのみ説明する。
決定機能377は、各検出素子130に入射するX線量に基づく、撮影角度に応じた時定数を決定し、対応情報を生成する。例えば、決定機能377は、各検出素子130の計数結果から各検出素子130に入射するX線量を推定し、推定したX線量に基づく時定数を決定する。一例をあげると、決定機能377は、スキャノグラムの計数結果から、検出素子130に入射するX線量を推定して、時定数を決定する。なお、第2の実施形態では、スキャン制御機能375は、2方向から2次元のスキャノ画像を撮影する。例えば、スキャン制御機能375は、X線管12aを0度の位置(被検体Pに対して正面方向の位置)に固定して、2次元のスキャノ画像(0度のスキャノグラム)を撮影した後に、X線管12aを90度の位置(被検体Pに対して側面方向の位置)に固定して、2次元のスキャノ画像(90度のスキャノグラム)を撮影する。
決定機能377は、2方向から2次元のスキャノ画像の計数結果に対して、以下に示す閾値判定処理を行って時定数を決定する。言い換えると、決定機能377は、2方向からの2次元のスキャノ画像を用いて、各検出素子に入射するX線量を推定し、時定数を決定する。図11は、第2の実施形態を説明するための図である。
例えば、決定機能377は、チャネル方向において、0度のスキャノグラムの計数結果が閾値以上の領域を、検出素子130に入射するX線量が高線量であると推定し、図11に示すように、高線量領域H1に選択する。そして、決定機能377は、図11に示すように、高線量領域H1に該当する検出素子に接続されたASIC134の時定数を短くする。一方、決定機能377は、チャネル方向において、0度のスキャノグラムの計数結果が閾値未満の領域を、検出素子130に入射するX線量が低線量であると推定し、図11に示すように、低線量領域L1に選択する。そして、決定機能377は、図11に示すように、低線量領域L1に該当する検出素子に接続されたASIC134の時定数を長くする。
また、例えば、決定機能377は、チャネル方向において、90度のスキャノグラムの計数結果が閾値以上の領域を、検出素子130に入射するX線量が高線量であると推定し、図11に示すように、高線量領域H2に選択する。そして、決定機能377は、図11に示すように、高線量領域H2に該当する検出素子に接続されたASIC134の時定数を短くする。一方、決定機能377は、チャネル方向において、90度のスキャノグラムの計数結果が閾値未満の領域を、検出素子130に入射するX線量が低線量であると推定し、図11に示すように、低線量領域L2に選択する。そして、決定機能377は、図11に示すように、低線量領域L2に該当する検出素子に接続されたASIC134の時定数を長くする。
このように、決定機能377は、撮影角度が90度である場合には、撮影角度が0度である場合の低線量領域L1よりも狭い範囲を低線量領域L2に選択する。また、決定機能377は、撮影角度が90度である場合には、撮影角度が0度である場合の高線量領域H1よりも広い範囲を高線量領域H2に選択する。
なお、決定機能377は、代表となるスライスにおいて閾値判定処理を行って時定数を決定し、決定した時定数を他のスライスにも同様に適用してもよいし、各スライス方向において、閾値判定処理をそれぞれ行って時定数を決定してもよい。また、代表スライスとは、例えば、スライス方向における中央のスライスである。
そして、決定機能377は、各検出素子130と、撮影角度と、当該検出素子130に接続されたASIC134の時定数とを対応付けた対応情報を生成する。図12は、第2の実施形態を説明するための図である。例えば、決定機能377は、図12に示すように、IDとビュー数と時定数とを対応付けた対応情報を生成する。
ここで、対応情報における「ID」は、検出素子130を一意に識別する識別子示す。「ビュー数」は、架台制御装置16から受け付けたビュートリガ信号の積算値を示す。例えば、ビュー数には、ビュー数の範囲がN1以上N2未満であることを示す「N1≪N<N2」やビュー数の範囲がN2以上N3未満であることを示す「N2≪N<N3」等が格納される。なお、ビュー数は、X線管12aの撮影角度に対応する情報であり、X線管12aが1回転するごとにリセットされる。また、ここでは、X線管12aが0度の位置(被検体Pに対して正面方向の位置)をビュー数0とし、X線管12aは、撮影開始時に0度の位置から撮影を開始し、X線管12aが円軌道上を移動するごとにビュー数が積算されるものとする。「時定数」は、対応するビュー数における、IDで識別される検出素子に接続されたASIC134の時定数を示す。また、図12に示す例では、時定数T1<時定数T2とし、「ID」が「yyyy」である検出素子130は、X線検出器13においてチャネル方向の周縁部の高線量領域に配置され、「ID」が「xxxx」である検出素子130は、X線検出器13においてチャネル方向の中央部の低線量領域に配置されるものとする。また、「ID」が「yyyx」である検出素子130は、X線検出器13においてチャネル方向の中央部と周縁部との間の領域に配置され、撮影角度に応じて高線量領域にも低線量領域にもなり得るものとする。
一例をあげると、決定機能377は、「ID」が「yyyy」である検出素子130に接続されるASIC134の時定数が、ビュー数によらず「T1」であると決定する。また、決定機能377は、「ID」が「xxxx」である検出素子130に接続されるASIC134の時定数が、ビュー数によらず「T2」であると決定する。また、決定機能377は、「ID」が「yyyx」である検出素子130に接続されるASIC134の時定数が、ビュー数「N1≪N<N2」では「T2」であり、ビュー数「N2≪N<N3」では「T1」であり、ビュー数「N3≪N<N4」では「T2」であり、ビュー数「N4≪N<N1」では「T1」であると決定する。
FPGA14aは、光子計数型検出器における各検出素子130の位置に応じた時定数を、各検出素子130に接続されたASIC134に撮影時に設定する。例えば、FPGA14aは、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を、各ASIC134に設定する。
一例をあげると、FPGA14aは、図12に示す対応情報を参照して、各ASIC134に時定数を設定する。ここで、FPGA14aは、例えば、撮影開始時のビュー数に対応する時定数を各ASIC134に設定する。ここでは、撮影開始時のビュー数がN1であるものとする。FPGA14aは、IDが「yyyy」である検出素子130に接続されるASIC134に時定数T1を設定する。また、FPGA14aは、IDが「yyyx」及び「xxxx」である検出素子130に接続されるASIC134に時定数T2を設定する。すなわち、FPGA14aは、各検出素子130の計数結果から推定された、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を、各ASIC134に設定する。
更に、FPGA14aは、撮影中に、ビュー数に応じた時定数を各ASIC134に設定する。言い換えると、FPGA14aは、撮影開始前に設定した時定数を、撮影中固定したままにせずに、撮影角度に応じてダイナミックに変更する。図13は、第2の実施形態に係るFPGA14aによる処理手順を示すフローチャートである。
ステップS101からステップS106は、FPGA14aにより実現されるステップである。ステップS101では、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の開始を受け付けたか否かを判定する。ここで、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の開始を受け付けたと判定した場合(ステップS101、Yes)、ステップS102に移行する。一方、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の開始を受け付けたと判定しなかった場合(ステップS101、No)、ステップS101の判定処理を繰り返す。
ステップS102では、FPGA14aは、架台制御装置16からビュートリガ信号を受け付けたか否かを判定する。そして、FPGA14aは、架台制御装置16からビュートリガ信号を受け付けたと判定した場合(ステップS102、Yes)、ステップS103に移行する。一方、FPGA14aは、架台制御装置16からビュートリガ信号を受け付けたと判定しなかった場合(ステップS102、No)、ステップS102の判定処理を繰り返す。
ステップS103では、FPGA14aは、対応情報を読み出す。例えば、FPGA14aは、図12に示した対応情報を記憶回路35から読み出す。そして、ステップS104では、FPGA14aは、時定数を変更するか否かを判定する。例えば、FPGA14aは、ビュートリガ信号を受け付ける度に、現在のビュー数を更新する。そして、FPGA14aは、対応情報を参照して、各検出素子について、更新後のビュー数に対応する時定数と更新前のビュー数の時定数とを比較する。ここで、FPGA14aは、比較した時定数が異なっている場合に、時定数を変更すると判定する。一方、FPGA14aは、比較した時定数が同じである場合に、時定数を変更しないと判定する。
FPGA14aは、時定数を変更すると判定した場合(ステップS104、Yes)、ステップS105に移行する。一方、FPGA14aは、時定数を変更すると判定しなかった場合(ステップS104、No)、ステップS106に移行する。
ステップS105では、FPGA14aは、更新後のビュー数に対応する時定数を設定する。ステップS106では、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の終了を受け付けたか否かを判定する。ここで、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の終了を受け付けたと判定した場合(ステップS106、Yes)、撮影を終了する。一方、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の終了を受け付けたと判定しなかった場合(ステップS106、No)、ステップS102に移行して判定処理を実行する。
上述したように、第2の実施形態では、FPGA14aは、撮影中に、撮影角度に応じた時定数を各ASIC134に設定する。これにより、第2の実施形態によれば、X線管12aとX線検出器13とが1回転する間に撮影する全ての領域、角度で最適な時定数を設定することができる。このため、更に高い画質及び物質弁別能を得ることが可能となる。
なお、上述した第2の実施形態では、2方向からの2次元のスキャノ画像を用いて、各検出素子に入射するX線量を推定し、時定数を決定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、撮影角度に応じた時定数の決定には、3次元のスキャノ画像に基づいて、各検出素子に入射するX線量を推定し、時定数を決定してもよい。3次元のスキャノ画像に基づいて、各検出素子に入射するX線量を推定し、時定数を決定する場合、より撮影角度の範囲をより細かくして時定数を設定することが可能になる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、各検出素子130に入射するX線量をリアルタイムに算出し、算出したX線量に基づいて、時定数を設定する場合について説明する。なお、第3の実施形態に係るX線CT装置1の構成は、決定機能377及びFPGA14aの一部が異なる点を除いて、図1に示すX線CT装置1の構成と同様である。このため、第3の実施形態では、決定機能377及びFPGA14aが実行する機能についてのみ説明する。
決定機能377は、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を決定し、対応情報を生成する。例えば、決定機能377は、各検出素子130と、各検出素子130に入射するX線量と、当該各検出素子130に接続されたASIC134の時定数とを対応付けた対応情報を生成する。図14は、第3の実施形態を説明するための図である。例えば、決定機能377は、図14に示すように、IDとカウント数と時定数とを対応付けた対応情報を生成する。
ここで、対応情報における「ID」は、検出素子130を一意に識別する識別子示を示す。「カウント数」は、各検出素子130に入射するビュー単位のX線量を示す。例えば、「ID」が「yyyy」に対応する「カウント数」には、低線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC11未満であることを示す「C<C11」が格納される。また、例えば、「ID」が「yyyy」に対応する「カウント値」には、やや低線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC11以上C12未満であることを示す「C11≪C<C12」が格納される。また、例えば、「ID」が「yyyy」に対応する「カウント値」には、やや高線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC12以上C13未満であることを示す「C12≪C<C13」が格納される。また、例えば、「ID」が「yyyy」に対応する「カウント値」には、高線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC13以上であることを示す「C13≪C」が格納される。
なお、各検出素子130には、個体差によるばらつきがある。このようなことから、ID間で異なるカウント数を設定することが望ましい。例えば、「ID」が「yyyx」に対応する「カウント数」には、低線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC21未満であることを示す「C<C21」が格納される。また、例えば、「ID」が「yyyx」に対応する「カウント値」には、やや低線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC21以上C22未満であることを示す「C21≪C<C22」が格納される。また、例えば、「ID」が「yyyx」に対応する「カウント値」には、やや高線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC22以上C23未満であることを示す「C22≪C<C23」が格納される。また、例えば、「ID」が「yyyx」に対応する「カウント値」には、高線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC23以上であることを示す「C23≪C」が格納される。
同様にして、例えば、「ID」が「xxxx」に対応する「カウント数」には、低線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC31未満であることを示す「C<C31」が格納される。また、例えば、「ID」が「xxxx」に対応する「カウント値」には、やや低線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC31以上C32未満であることを示す「C31≪C<C32」が格納される。また、例えば、「ID」が「xxxx」に対応する「カウント値」には、やや高線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC32以上C33未満であることを示す「C32≪C<C33」が格納される。また、例えば、「ID」が「xxxx」に対応する「カウント値」には、高線量領域に相当するビュー単位のX線量として、カウント値がC33以上であることを示す「C33≪C」が格納される。
「時定数」は、対応するビュー単位のカウント数における、IDで識別される検出素子130に接続されたASIC134の時定数を示す。また、図14に示す例では、時定数V1<時定数V2<時定数V3<時定数V4とする。
一例をあげると、決定機能377は、「ID」が「yyyy」である検出素子130に接続されたASIC134の時定数が、カウント数が低線量領域に相当するX線量「C<C11」では「T4」であり、カウント数がやや低線量領域に相当するX線量「C11≪C<C12」では「T3」であり、カウント数がやや高線量領域に相当するX線量「C12≪C<C13」では「T2」であり、カウント数が高線量領域に相当するX線量「C13≪C」では「T1」であると決定する。
FPGA14aは、光子計数型検出器における各検出素子130の位置に応じた時定数を、各検出素子130に接続されたASIC134に撮影時に設定する。例えば、FPGA14aは、現在のビューより以前のビューにおいて各検出素子130に入射するX線量に基づいて、現在のビューにおける時定数を各検出素子130に接続されたASIC134に設定する。なお、第3の実施形態では、FPGA14aは、撮影開始時において最初のスキャン位置(ビュー番号1番)では、全てのASIC134に同一の時定数を初期値として設定するものとする。そして、FPGA14aは、撮影中、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を各ASIC134に設定する処理をビュー毎に実行するものとする。また、第3の実施形態では直前のビューの計数結果を使って時定数を設定する場合を説明するが、直前のビューの計数結果に限らず、現在のビューより以前のビューの計数結果を使って時定数を設定してもよい。
図15は、第3の実施形態に係るFPGA14aによる処理手順を示すフローチャートである。なお、図15に示すステップS201及びステップS202の処理は、図13に示すステップS101及びステップS102の処理と同様である。
ステップS203では、FPGA14aは、カウント値をカウンタ134eから取得する。例えば、FPGA14aは、現在のビューの直前のビューにおいて各検出素子130に入射するX線量に基づいて、現在のビューにおける時定数を各検出素子130に接続されたASIC134に設定する。
ここでは、まず、直前ビューの計数結果を取得する処理について説明する。FPGA14aは、直前ビューの計数結果をカウンタ134eから取得する。図16は、第3の実施形態を説明するための図である。図16では、架台制御装置16によるビュートリガ信号の出力タイミングを示す。図16に示すように、ビュートリガ信号の1周期は、両矢印16aで示す期間である。この1周期のビュートリガ信号は、前半の正パルス部と後半の負パルス部とからなる。FPGA14aは、この1周期のビュートリガ信号の期間に計数された計数結果をカウンタ134eから取得する。
そして、ステップS204では、FPGA14aは、対応情報を読み出す。例えば、FPGA14aは、図14に示した対応情報を記憶回路35から読み出す。そして、ステップS205では、FPGA14aは、時定数を変更するか否かを判定する。例えば、FPGA14aは、直前ビューの計数結果を取得する度に、対応情報を参照して各検出素子130について、直前ビューの計数結果に対応する時定数を特定する。そして、FPGA14aは、特定した時定数と、現在設定されている時定数とを比較する。ここで、FPGA14aは、比較した時定数が異なっている場合に、時定数を変更すると判定する。一方、FPGA14aは、比較した時定数が同じである場合に、時定数を変更しないと判定する。
FPGA14aは、時定数を変更すると判定した場合(ステップS205、Yes)、ステップS206に移行する。一方、FPGA14aは、時定数を変更すると判定しなかった場合(ステップS205、No)、ステップS207に移行する。
ステップS206では、FPGA14aは、直前ビューの計数結果に対応する時定数を設定する。例えば、FPGA14aは、IDが「yyyy」で識別される検出素子130の出力結果をカウントするカウンタ134eから取得した計数結果がC11以上C12未満の値である場合、IDが「yyyy」に対応するASIC134に時定数T3を設定する。また、例えば、FPGA14aは、IDが「yyyx」で識別される検出素子130の出力結果をカウントするカウンタ134eから取得した計数結果がC22以上C23未満の値である場合、IDが「yyyx」に対応するASIC134に時定数T2を設定する。
ステップS207では、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の終了を受け付けたか否かを判定する。ここで、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の終了を受け付けたと判定した場合(ステップS207、Yes)、撮影を終了する。一方、FPGA14aは、架台制御装置16から撮影の終了を受け付けたと判定しなかった場合(ステップS207、No)、ステップS202に移行して判定処理を実行する。
上述したように、第3の実施形態では、FPGA14aは、撮影中に、直前ビューの計数結果に基づく時定数を各ASIC134にビュー毎に設定する。これにより、第3の実施形態によれば、X線管12aとX線検出器13とが1回転する間に撮影する全ての領域、角度で最適な時定数を設定することができる。このため、更に高い画質及び物質弁別能を得ることが可能となる。
なお、再構成処理機能373は、投影データに対して物質弁別を行い、物質弁別の結果である物質弁別情報を用いて物質弁別画像を再構成してもよい。ここで、再構成処理機能373は、物質弁別画像を再構成する場合には、検出データのカウント数を補正する処理に加えて、第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例にて説明した、検出データのスペクトルを補正する処理を実行する。例えば、コンソール30の記憶回路35にも図13に示す対応情報を記憶させておく。そして、構成処理機能373は、物質弁別画像を再構成する際に、時定数の設定値を参照して、適切な応答関数を選定する。
(第3の実施形態の変形例)
なお、上述した第3の実施形態では、ビュートリガ信号の1周期分の時間でカウント値を算出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、1周期分のビュートリガ信号の前半部分或いは後半部分でカウント値を算出するようにしてもよい。言い換えると、FPGA14aは、過去ビューの期間のうち所定の期間に各検出素子130に入射するX線量に基づいて、現在のビューにおける時定数を各検出素子130に接続されたASIC134に設定する。図17は、第3の実施形態の変形例を説明するための図である。図17の上段では、1周期分のビュートリガ信号の前半部分でカウント値を算出する場合について説明し、図17の下段では、1周期分のビュートリガ信号の後半部分でカウント値を算出する場合について説明する。
より具体的には、FPGA14aは、図17の上段に示すように、ビュートリガ信号の前半の正パルス部17aのみからカウント数を算出して後半の負パルス部17bで時定数を選定し、次のビュートリガパルスの変化点17cで時定数を設定する。或いは、FPGA14aは、図17の下段に示すように、ビュートリガ信号の後半の負パルス部17dのみからカウント数を算出して前半の正パルス部17eで時定数を選定し、次のビュートリガパルスの変化点17fで時定数を設定する。このように、FPGA14aは、過去ビューの期間のうち前半部分或いは後半部分に各検出素子130に入射するX線量に基づいて、現在のビューにおける時定数を各検出素子130に接続されたASIC134に設定する。
これにより、FPGA14aは、時定数の選定及び時定数の設定のタイムラグをなくすことができる。なお、かかる場合、カウンタ134eは、X線CT画像データを再構成するためのビュートリガ信号の1周期分の計数結果とは別に、時定数を設定するための計数結果をFPGA14aに出力する。また、カウント値を算出する期間は、1周期分のビュートリガ信号の前半部分或いは後半部分に限定されるものではなく、1周期分のビュートリガ信号の前半部分の半分の期間或いは後半部分の半分の期間でもよい。
また、上述した第3の実施形態では、FPGA14aは、撮影開始時において最初のスキャン位置(ビュー番号1番)では、全てのASIC134に同一の時定数を初期値として設定するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、FPGA14aは、第1の実施形態で説明した方法を用いて、最初のスキャン位置(ビュー番号1番)の時定数を設定してもよい。すなわち、FPGA14aは、最初のスキャン位置(ビュー番号1番)では、図8に示す対応情報を参照して、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を、各検出素子130に接続されたASIC134に設定する。
また、上述した第3の実施形態では、ビュー毎に時定数を設定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、FPGA14aは、5ビュー毎など所定のビュー毎に時定数を設定するようにしてもよい。
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
また、上述した実施形態では、本スキャンの撮影前に、スキャノグラムを撮影して得られた2次元のスキャノ画像や3次元のスキャノ画像を用いて、時定数を決定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、同一の被検体の過去の画像や、他の医用画像診断装置により撮像された画像を用いて、時定数を決定してもよい。
また、決定機能377は、被検体の体型に係る情報から各検出素子130に入射するX線量を推定して時定数を決定してもよい。例えば、決定機能377は、3次元のスキャノ画像を再構成した再構成画像から被検体の体厚を体型に係る情報として取得し、各検出素子130に入射するX線量を推定する。より具体的には、決定機能377は、3次元のスキャノ画像を再構成したアキシャル画像における縦方向及び横方向の長さを被検体の体厚として取得して、体厚に応じたX線の減衰量から各検出素子130に入射するX線量を推定する。そして、決定機能377は、推定したX線量に対して、閾値判定処理を行って時定数を決定する。かかる場合、FPGA14aは、被検体の体型に係る情報から推定された、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を、各ASIC134に設定する。
また、決定機能377は、患者情報として記憶されている被検体の体型に係る情報から各検出素子130に入射するX線量を推定して時定数を決定してもよい。例えば、決定機能377は、患者情報として記憶回路35に記憶されている、被検体Pの身長、体重、胸囲、胴回りなどの情報を取得し、各検出素子130に入射するX線量を推定する。そして、決定機能377は、推定したX線量に対して、閾値判定処理を行って時定数を決定する。また、決定機能377は、入力インターフェース31を介して、被検体Pの身長、体重、胸囲、胴回りなどの情報の入力を操作者から受け付け、受け付けた情報から各検出素子130に入射するX線量を推定して、時定数を決定してもよい。かかる場合、FPGA14aは、患者情報として記憶されている被検体の体型に係る情報から推定された、各検出素子130に入射するX線量に基づく時定数を、各ASIC134に設定する。
また、上述した実施形態では、1つの閾値を設定して2種類の時定数を設定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の閾値を設定し、3種類以上の時定数を決定するようにしてもよい。かかる場合、FPGA14aは、決定された3種類以上の時定数を、各ASIC134にそれぞれ設定する。
なお、上述した実施形態では、検出素子130に入射するX線量に基づいて、時定数を決定するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、各検出素子に入射するX線量を推定せずに、チャネル方向の中央と辺縁部とで、異なるように時定数を設定してもよい。例えば、FPGA14aは、X線検出器13のチャネル方向において中央部である第1の領域に配置されている検出素子130に接続されたASIC134に、チャネル方向において周縁部である第2の領域に配置されている検出素子130に接続されたASIC134よりも大きな時定数を設定する。また、FPGA14aは、X線検出器13のチャネル方向において中央部から周縁部にかけて段階的に低くなるような時定数を設定してもよい。
更に、FPGA14aは、各検出素子に入射するX線量を推定せずに、撮影角度に応じた時定数を各ASIC134に設定するようにしてもよい。例えば、FPGA14aは、撮影角度に応じて、第1の領域の範囲と第2の領域の範囲とを変更し、変更後の第1の領域に配置されている検出素子130に接続されたASIC134に、変更後の第2の領域に配置されている検出素子130に接続されたASIC134よりも大きな時定数を設定してもよい。
また、上述した実施形態では、ASIC134がX線検出器13に配置されるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ASIC134は、データ収集回路14に配置されてもよい。
また、上述した実施形態では、再構成処理機能373は、投影データに対して物質弁別を行い、物質弁別情報を得るものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、再構成処理機能373は、画像データに対して物質弁別を行い、物質弁別情報を得てもよい。
上述した実施形態では、X線管12aとX線検出器13とを一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate−Type(第3世代CT)のX線CT装置1について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線CT装置には、第3世代CT以外にも、複数のX線検出素子を有するX線検出器がリング状に分散して固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate−Type(第4世代CT)がある。上述した実施形態は、第4世代CTにも適用可能である。また、第3世代CTと第4世代CTとを組み合わせたハイブリッド型のX線CT装置にも、上述した実施形態は、適用可能である。
また、上述した実施形態は、従来からの一管球型のX線CT装置にも適用可能であるし、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。
また、上述した実施形態では、処理回路37において複数の機能を実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の機能を独立の回路としてコンソール30内に設け、各回路がそれぞれの機能を実行するようにしてもよい。例えば、処理回路37が実行する決定機能377を決定回路として設け、決定回路が決定機能を実行してもよい。また、処理回路37が実行する前処理機能372を前処理回路として設け、前処理回路が前処理機能を実行してもよい。また、処理回路37が実行する再構成処理機能373を再構成処理回路として設け、再構成処理回路が再構成処理機能を実行してもよい。
また、上述した実施形態では、前処理機能372、決定機能377、及び再構成処理機能373をコンソール30内にて実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、外部のワークステーションにおいて、前処理機能372、決定機能377、及び再構成処理機能373を実行するようにしてもよい。
また、上述した実施形態において説明した時定数決定処理や物質弁別処理は、ソフトウェアによって実現することもできる。例えば、時定数決定処理は、上記の実施形態において決定機能377が行うものとして説明した処理の手順を規定した時定数決定プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。また、例えば、物質弁別処理は、上記の実施形態において前処理機能372及び再構成処理機能373が行うものとして説明した処理の手順を規定した物質弁別プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。これらの時定数決定プログラムや物質弁別プログラムは、例えば、ハードディスクや半導体メモリ素子等に記憶され、CPUやMPU等のプロセッサによって読み出されて実行される。また、この物質弁別プログラムは、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)やMO(Magnetic Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録されて、配布され得る。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはプロセッサの回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサの回路内にプログラムを組み込む代わりに、コンソール30が有する記憶回路35にプログラムを保存するように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、記憶回路35に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、高い物質弁別能を実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。