以下、図面を参照して、実施形態に係るX線CT装置を説明する。
以下の実施形態で説明するX線CT装置は、フォトンカウンティングCTを実行可能な装置である。すなわち、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、従来の積分型(電流モード計測方式)の検出器ではなく、フォトンカウンティング方式の検出器を用いて被検体を透過したX線を計数することで、SN比の高いX線CT画像データを再構成可能な装置である。なお、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置は、架台10と、寝台20と、コンソール30とを有する。
架台10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線に関するデータを収集する装置であり、高電圧発生回路11と、X線管12と、検出器13と、データ収集回路14と、回転フレーム15と、架台駆動回路16とを有する。また、架台10において、図1に示すように、X軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系を定義する。すなわち、X軸は水平方向を示し、Y軸は鉛直方向を示し、Z軸は架台10が非チルト時の状態における回転フレーム15の回転中心軸方向を示す。
回転フレーム15は、X線管12と検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台駆動回路16によって被検体Pを中心とした円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
X線管12は、後述する高電圧発生回路11により供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。
高電圧発生回路11は、X線管12に高電圧を供給する機能を有する電気回路であり、X線管12は、高電圧発生回路11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。すなわち、高電圧発生回路11は、X線管12に供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。高電圧発生回路11は、システム制御回路38による制御のもと、スキャン制御回路33から制御を受ける。
架台駆動回路16は、回転フレーム15を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線管12と検出器13とを旋回させる機能を有する電気回路である。架台駆動回路16は、システム制御回路38による制御のもと、スキャン制御回路33から制御を受ける。
検出器13は、光子計数型の検出器であり、被検体Pを透過したX線に由来する光を計数するための複数のX線検出素子(「センサ」或いは単に「検出素子」とも言う)を有する。一例を挙げれば、第1の実施形態に係る検出器13が有するX線検出素子は、シンチレータと光センサとにより構成される間接変換型の面検出器である。ここで、光センサは、例えばSiPM(Silicon photomultiplier)である。検出器13の各X線検出素子は、入射したX線光子に応じた電気信号(パルス)を出力する。なお、各X線検出素子が出力する電気信号のことを検出信号とも言う。すなわち、検出器13は、放射線を検出して検出信号を出力する検出素子を複数有する。この電気信号(パルス)の波高値は、X線光子のエネルギー値と相関性を有する。なお、検出器13は、直接変換型の面検出器であってもよい。
データ収集回路14は、検出器13の検出信号を用いた計数処理の結果である計数結果を収集する機能を有する電気回路である。データ収集回路14は、X線管12から照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子(X線光子)を計数し、当該計数した光子のエネルギーを弁別した結果を計数結果として収集する。そして、データ収集回路14は、計数結果を、コンソール30に送信する。なお、データ収集回路14のことを、DAS(Data Acquisition System)とも言う。
寝台20は、被検体Pを載せる装置であり、天板22と、寝台駆動装置21とを有する。天板22は、被検体Pが載置される板であり、寝台駆動装置21は、天板22をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動させる。なお、寝台駆動装置21は、天板22をX軸方向にも移動可能である。
なお、架台10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。なお、以下の実施形態では、架台10と天板22との相対位置の変化が天板22を制御することによって実現されるものとして説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、架台10が自走式である場合、架台10の走行を制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。
コンソール30は、操作者によるX線CT装置の操作を受け付けるとともに、架台10によって収集された計数結果を用いてX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール30は、図1に示すように、入力装置31と、ディスプレイ32と、スキャン制御回路33と、前処理回路34と、投影データ記憶回路35と、画像再構成回路36と、画像記憶回路37と、システム制御回路38とを有する。
入力装置31は、X線CT装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御回路38に転送する。例えば、入力装置31は、操作者からX線CT画像データを再構成する際の再構成条件や、X線CT画像データに対する画像処理条件等を受け付ける。また、例えば、入力装置31は、操作者からX線検出素子のキャリブレーションを実施する指示を受付ける。そして、入力装置31は、システム制御回路38を介して、スキャン制御回路33にX線CT画像データの再構成やキャリブレーションの実施を指示する。
ディスプレイ32は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御回路38による制御のもと、X線CT画像データを操作者に表示したり、入力装置31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
スキャン制御回路33は、後述するシステム制御回路38の制御のもと、高電圧発生回路11、検出器13、架台駆動回路16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10における計数結果の収集処理を制御する機能を有する電気回路である。スキャン制御回路33は、例えば、プロセッサであり、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、スキャン制御回路33は、位置決め画像(スキャノ画像)を収集する撮影及び診断に用いる画像を収集する本撮影(スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。ここで、第1の実施形態に係るX線CT装置においては、2次元のスキャノ画像(2次元スキャノ)を撮影するものとして説明する。図2は、2次元スキャノの撮影を説明するための図である。
図2の左図は、CT装置を正面(寝台20側)から見た図である。図2の左図に示すように、寝台20の天板22上には、被検体Pが配置されている。ここで、例えば、X線管12が0°の位置(図2の左図におけるY軸の正方向であって被検体Pに対して正面方向の位置)で撮影する場合、被検体Pの正面からの撮影がなされ、図2の右上図のような2次元スキャノが得られる。かかる場合、スキャン制御回路33は、X線管12aを0度の位置に固定して、天板22を定速移動させながら連続的に撮影を行うことで2次元スキャノを撮影する。或いは、スキャン制御回路33は、X線管12aを0度の位置に固定して、天板22を断続的に移動させながら、天板22の移動に同期して断続的に撮影を繰り返すことで2次元スキャノを撮影する。
また、スキャン制御回路33は、被検体に対して正面方向だけでなく、任意の方向(例えば、側面方向など)から位置決め画像を撮影することができる。例えば、X線管12が90°の位置(図2の左図におけるX軸の正方向であって被検体Pに対して側面方向の位置)で撮影した場合、被検体Pの側面からの撮影がなされ、図2の右下図のような2次元スキャノが得られる。なお、X線管12aの位置は、必要であれば、任意の複数の位置から撮影可能である。
前処理回路34は、データ収集回路14から送信された計数結果に対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なうことで、エネルギー弁別域ごとの投影データを生成する機能を有する電気回路である。また、前処理回路34は、データ収集回路14から送信された計数結果を、システム制御回路38による指示に応じてシステム制御回路38に出力する。前処理回路34は、例えば、プロセッサであり、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。
投影データ記憶回路35は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、前処理回路34により生成された投影データを記憶する。すなわち、投影データ記憶回路35は、X線CT画像データを再構成するための投影データを記憶する。画像記憶回路37は、例えば、NAND型フラッシュメモリやHDDであり、各種画像データを記憶する。
画像再構成回路36は、検出器13の検出信号に基づいてCT画像を再構成する機能を有する電気回路である。画像再構成回路36は、例えば、プロセッサであり、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。すなわち、画像再構成回路36は、投影データ記憶回路35が記憶する投影データを、例えば、逆投影処理することで、X線CT画像データを再構成する。逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。なお、画像再構成回路36は、例えば、逐次近似法により、再構成処理を行なっても良い。また、画像再構成回路36は、X線CT画像データに対して各種画像処理を行なうことで、画像データを生成する。画像再構成回路36は、再構成したX線CT画像データや、各種画像処理により生成した画像データを画像記憶回路37に格納する。
ここで、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果から生成された投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギーの情報が含まれている。このため、画像再構成回路36は、例えば、特定のエネルギー成分のX線CT画像データを再構成することができる。また、画像再構成回路36は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのX線CT画像データを再構成することができる。
また、画像再構成回路36は、例えば、各エネルギー成分のX線CT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のX線CT画像データを重畳した画像データを生成することができる。また、画像再構成回路36は、例えば、物質固有のK吸収端を利用して、当該物質の同定が可能となる画像データを生成することができる。画像再構成回路36が生成する他の画像データとしては、単色X線画像データや密度画像データ、実効原子番号画像データ等が挙げられる。
システム制御回路38は、架台10、寝台20及びコンソール30の動作を制御することによって、X線CT装置の全体制御を行う機能を有する電気回路である。具体的には、システム制御回路38は、スキャン制御回路33を制御することで、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。また、システム制御回路38は、前処理回路34や、画像再構成回路36を制御することで、コンソール30における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、システム制御回路38は、画像記憶回路37が記憶する各種画像データを、ディスプレイ32に表示するように制御する。
また、第1の実施形態に係るシステム制御回路38は、図1に示すように、算出機能38aと、制御機能38bと、受付機能38cとを実行する。ここで、例えば、図1に示すシステム制御回路38の構成要素である算出機能38aと、制御機能38bと受付機能38cとが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でシステム制御回路38内に記録されている。システム制御回路38は、例えば、プロセッサであり、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態のシステム制御回路38は、図1のシステム制御回路38内に示された各機能を有することとなる。なお、算出機能38aは算出部の一例であり、制御機能38bは制御部の一例であり、受付機能38cは受付部の一例である。また、算出機能38a、制御機能38b及び受付機能38cの詳細については、後述する。
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置は、フォトンカウンティング方式の検出器を用いてX線CT画像データを再構成する。
ここで、X線CT装置は、例えば、スキャノ画像を用いて設定された撮影条件で本撮影を行なう。図3は、本撮影の撮影条件設定を説明するための図である。図3では、ディスプレイ32を表示領域32aと表示領域32cとに2分割した場合を示す。図3の表示領域32aには、X線管12が0°の位置で撮影した2次元スキャノを示す。ここで、操作者が、2次元スキャノ上において、注目断面32bを選択した場合、X線CT装置は、表示領域32cに、スキャンFOV(Field of View)である再構成領域32dと、スキャン条件のパラメータとを表示する。なお、図3に示す例では、X線CT装置は、スキャン条件のパラメータとして、管電圧x(kV)、管電流y(mA)及び回転速度z(R/s)とを表示する。
ところで、フォトンカウンティングCTでは、光子の数を計数することで、X線の量を測定する。単位時間当たりの光子数が多いほど、強いX線となる。また、個々の光子は、異なるエネルギーを有するが、フォトンカウンティングCTでは、光子のエネルギー計測を行なうことで、X線のエネルギー成分の情報を得ることが可能である。すなわち、フォトンカウンティングCTでは、1種類の管電圧でX線を照射することで収集されたデータを複数のエネルギー成分に分けて画像化することが可能である。例えば、フォトンカウンティングCTでは、K吸収端の違いを利用した物質の同定が可能となる画像データを得る。
ここで、被検体中心部では、X線の吸収量が多く、検出器へ入射するX線フォトンが少ない。このため、被検体中心部を透過した投影データのエネルギースペクトルは、正確で、正確に物質弁別した再構成画像を得られる。一方、被検体辺縁やX線吸収の少ない部位では、検出器へ入射するX線フォトンが多くなり、パイルアップが生じる場合がある。ここで、パイルアップとは、高カウントレート時には検出器での光子の計数が間に合わないため、光子の数え落としが生じる現象である。このように、被検体辺縁やX線吸収の少ない部位を透過した投影データのエネルギースペクトルが不正確になる場合、正確に物質弁別した再構成画像を得られなくなる。
また、収集した投影データにエネルギースペクトルが不正確な投影データが含まれる場合、エネルギースペクトルが正確な領域の投影データだけを用いて画像を再構成することになる。しかしながら、撮影後、再構成した画像に観察したい領域が含まれない場合がある。このような場合、再撮影が必要になったり、正確な診断を行えなかったりする。
そこで、第1の実施形態に係るX線CT装置は、本スキャンの前に、スペクトル再構成可能領域を操作者が把握することを可能にするため、スペクトル再構成可能領域を推測する処理を実行する。例えば、X線CT装置は、被検体をX線でスキャンすることで取得された当該被検体の画像からエネルギースペクトルに関する出力値を算出する。そして、X線CT装置は、エネルギースペクトルに関する出力値に基づいて被検体に対応するスペクトル再構成可能領域を予測し、スペクトル再構成可能領域をディスプレイ32に表示する。以下では、図4から図8を用いて、第1の実施形態に係るスペクトル再構成可能領域を推測する処理の動作について詳細に説明する。図4から図8は、第1の実施形態を説明するための図である。なお、以下では、2次元スキャノにおいて、図3に示す注目断面32bが選択されたものとして説明する。
算出機能38aは、被検体をX線でスキャンすることで取得された当該被検体の画像からエネルギースペクトルに関する出力値を算出する。例えば、算出機能38aは、前処理回路34に指示して、前処理回路34から2次元スキャノを取得する。ここで、算出機能38aは、画像として少なくとも1方向からの2次元スキャノを取得する。例えば、算出機能38aは、X線管12が0°の位置で撮影した2次元スキャノと、X線管12が90°の位置で撮影した2次元スキャノとを取得する。なお、算出機能38aは、1方向からの2次元スキャノを取得してもよい。例えば、算出機能38aは、X線管12が0°の位置で撮影した2次元スキャノを取得する。或いは、算出機能38aは、X線管12が90°の位置で撮影した2次元スキャノを取得する。また、算出機能38aは、X線管12が任意の位置で撮影した2次元スキャノを取得してもよい。
続いて、算出機能38aは、画像における出力値をビューごとに算出する。例えば、算出機能38aは、2次元スキャノからエネルギースペクトルに関する出力値を算出する。図4の上図は、入射線量に応じた出力値を示す。ここで、図4の上図に示す入射線量がA1である場合、例えば、図4の左下図に示すX線スペクトルS1が得られる。また、図4の上図に示す入射線量がA2である場合、例えば、図4の右下図に示すX線スペクトルS2が得られる。算出機能38aは、各X線スペクトルから画像における出力値をビューごとに算出する。なお、2次元スキャノの撮影時のスキャン条件は、本スキャンのスキャン条件よりもX線照射量が低い条件が設定される場合がある。そこで、算出機能38aは、2次元スキャノの撮影時のスキャン条件とX線スペクトルとを用いて、本スキャンのスキャン条件におけるX線スペクトルを推定し、出力値を算出する。例えば、算出機能38aは、X線管12が0°の位置で撮影した2次元スキャノから、本スキャンのスキャン条件におけるX線管12が0°の位置でのX線スペクトルを推定して、出力値を算出する。また、算出機能38aは、X線管12が90°の位置で撮影した2次元スキャノから、本スキャンのスキャン条件におけるX線管12が90°の位置でのX線スペクトルを推定して、出力値を算出する。
ここで、出力値を以下のように定義する。ここでは説明の便宜上、本スキャンのスキャン条件における管電圧を120kVpとし、各エネルギービンのカウントをCi(i=1〜120keV)として出力値を算出する場合について説明する。
例えば、算出機能38aは、各エネルギービンのカウントの全出力値を出力値として算出する。かかる場合、出力値は、以下の式(1)で表される。
また、例えば、算出機能38aは、パイルアップした各エネルギービンのカウントのパイルアップカウント値を出力値として算出してもよい。かかる場合、出力値は、以下の式(2)で表される。
また、例えば、算出機能38aは、エネルギービンの計数値と代表値から得られるエネルギー積分値を出力値として算出してもよい。かかる場合、例えば、エネルギービンの中央値をEiとした場合、出力値は、以下の式(3)で表される。
また、例えば、算出機能38aは、パイルアップしたエネルギービンの代表値のパイルアップエネルギー積分値を出力値として算出してもよい。かかる場合、例えば、エネルギービンの中央値をEiとした場合、出力値は、以下の式(4)で表される。
図5を用いて算出機能38aによる出力値の算出処理の一例を説明する。図5では、X線管12が0°の位置で撮影した2次元スキャノを用いて、再構成領域32dにおける位置P1と位置P2における出力値を算出する場合について説明する。位置P2は、被検体辺縁のピクセルに対応し、位置P1は、被検体辺縁と被検体中心との略中間の位置であり被検体中心部のピクセルに対応する。
図5に示すように、算出機能38aは、位置P1のX線スペクトルS11を取得し、位置P2のX線スペクトルS21を取得する。被検体中心部ではX線の吸収が多いので、被検体中心部に対応する位置P1のX線スペクトル11には、120keVを超えるエネルギーカウントが含まれない。また、被検体辺縁ではX線の吸収が少ないので、被検体辺縁に対応する位置P2のX線スペクトル21には、120keVを超えるエネルギーカウントが含まれる。すなわち、位置P2では、本来120keVを超えるエネルギーのX線光子は存在しないが、パイルアップによって、120keVを超えるエネルギーカウントが擬似的に計数される。
そして、算出機能38aは、取得した各X線スペクトルから画像における出力値をビューごとに算出する。なお、図5では、位置P1及び位置P2についてのみX線スペクトルを取得して出力値を算出する場合について説明したが、算出機能38aは、再構成領域32d内の全ての位置のX線スペクトルを取得して出力値を算出する。
そして、算出機能38aは、算出した画像ごとの出力値から全ビューにおける出力値を算出する。ここで、例えば、算出機能38aは、X線管12が0°の位置で撮影した2次元スキャノと、X線管12が90°の位置で撮影した2次元スキャノとを取得する場合、取得した2次元スキャノからX線管12が0°の位置の出力値及びX線管12が90°の位置の出力値を算出する。また、算出機能38aは、人体のアキシャル面が楕円形状に近似できることを利用して、取得した2次元スキャノから、X線管12が0°の位置及びX線管12が90°の位置以外の出力値を推測する。図6の縦軸は出力値を示し、図6の横軸はビュー方向を示す。図6では、図5に示した位置P1及び位置P2について算出した全ビューにおける出力値を示す。
例えば、算出機能38aは、図6に示すように、取得した2次元スキャノ以外の他のビューでの出力値を人体が楕円であることを利用して推測し、推測した他のビューでの出力値をビュー方向にプロットする。より具体的には、算出機能38aは、位置P1の全ビューにおける出力値を示すグラフ12を生成し、位置P2の全ビューにおける出力値を示すグラフ22を生成する。なお、算出機能38aは、カウントレート(単位時間当たりの出力値)やパイルアップオーバー値(単位時間当たりのパイルアップカウント値)等を出力値として用いる。なお、算出機能38aは、被検体Pの体型に応じて推測する出力値を調整してもよい。
制御機能38bは、エネルギースペクトルに関する出力値に基づいて被検体に対応するスペクトル再構成可能領域を予測する。一例をあげると、制御機能38bは、算出機能38aによって図6に示すグラフが生成された場合、図6に示すように出力値Thを閾値とする。ここで、例えば、管電圧が120kVpの場合、理論上は、120keVを超えるエネルギーのフォトンは存在しないはずである。このため、120keVを超える領域をパイルアップと考え、120keVを閾値に設定してもよい。もしくは、回路の時定数等から、所定のカウントレート以上を閾値に設定してもよい。
そして、制御機能38bは、再構成領域のうち全ビューにおける出力値が所定の閾値以下である領域を、スペクトル再構成可能領域であると予測する。例えば、制御機能38bは、図6のグラフ12に示すように、位置P1における出力値が全ビュー方向において閾値以下であるので、位置P1をスペクトル再構成可能領域であると予測する。また、制御機能38bは、図6のグラフ22に示すように、位置P2における出力値が全ビュー方向において閾値以下ではないので、位置P2をスペクトル再構成可能領域ではないと予測する。制御機能38bは、位置P1及び位置P2以外の各位置(ピクセル)においても、全ビューのプロジェクションデータに対して、出力値が閾値以下であるか否かを判定する。
なお、概ね、スキャンFOVの中心ではカウントレートが低く、スキャンFOVの外縁ほどカウントレートが高い。このため、制御機能38bは、例えば、スキャンFOVの領域を中心領域と外縁領域とに分け、外縁領域についてパイルアップ等のエネルギースペクトルが不正確な領域を重点的に判定してもよい。また、制御機能38bは、例えば、スキャンFOVの中心から同心円を描出して同心円上の任意の位置を代表点とし、この代表点において出力値が閾値以下であるか否かを判定してもよい。そして、制御機能38bは、ある位置において出力値が閾値を超えた場合、この位置を含む同心円の外側をスペクトル再構成しない領域に予測する。なお、かかる場合、算出機能38aは、全ての位置から出力値を算出せずに、代表点のみからX線スペクトルを取得して出力値を算出するようにしてもよい。
そして、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域をディスプレイ32に表示する。図7では、説明の便宜上、ディスプレイ32を複数の表示領域に分割した場合の1つの表示領域32cのみを図示している。また、図7では、例えば2次元スキャノにおいて選択された注目断面についての再構成領域32d及びスペクトル再構成可能領域32eを示す。図7の左図では、再構成領域32dとスペクトル再構成可能領域32eとが一致する。例えば、制御機能38bは、再構成領域32dの全ての領域において、全ビューにおける出力値が所定の閾値以下であると予測した場合、図7の左図に示すように、再構成領域32dと一致するスペクトル再構成可能領域32eをディスプレイ32の表示領域32cに表示する。
図7の右図では、再構成領域32dの一部の領域がスペクトル再構成可能領域32eである。例えば、制御機能38bは、再構成領域32dのうち一部の領域において、全ビューにおける出力値が所定の閾値以下であると予測した場合、図7の右図に示すように、再構成領域32dの一部の領域であるスペクトル再構成可能領域32eをディスプレイ32に表示する。
受付機能38cは、予測されたスペクトル再構成可能領域についての設定を操作者から受け付ける。ここで、受付機能38cは、予測されたスペクトル再構成可能領域についての設定として、スペクトル再構成可能領域を決定する操作及びスペクトル再構成可能領域を変更する操作の少なくとも一方を受け付ける。
図8では、ディスプレイ32を表示領域32aと表示領域32cとに2分割した場合を示す。図8の表示領域32aには、X線管12が0°の位置で撮影した2次元スキャノを示す。また、図8では、操作者により2次元スキャノ上において注目断面32bが選択された場合について説明する。かかる場合、ディスプレイ32の表示領域32cには、再構成領域32dと、スペクトル再構成可能領域32eと、スキャン条件のパラメータとが表示される。なお、図8の例では、スキャン条件のパラメータとして、管電圧x(kV)、管電流y(mA)及び回転速度z(R/s)とが表示される場合を示す。また、図8に示すように、ディスプレイ32の表示領域32cには、決定ボタン32fが表示される。
ここで、操作者は、例えば、図8に示す再構成領域32dとスペクトル再構成可能領域32eとを参照し、スペクトル再構成可能領域32eに観察したい領域が含まれているか否かを確認する。そして、操作者は、スペクトル再構成可能領域32eに観察したい領域が含まれていると判定した場合、決定ボタン32fを選択する。受付機能38cは、決定ボタン32fの選択を受け付けた場合、スペクトル再構成可能領域を決定する操作を受け付けたと判定する。これにより、本スキャンの条件が確定する。
また、操作者は、スペクトル再構成可能領域32eを変更する操作を受け付ける。例えば、操作者は、スペクトル再構成可能領域32eに観察したい領域が含まれていないと判定した場合、スペクトル再構成可能領域32eを変更する操作を行う。より具体的には、操作者は、図8に示すスペクトル再構成可能領域32eが小さすぎて観察したい領域が含まれていないと判定した場合、表示領域32cにおいてスペクトル再構成可能領域32eの境界線を選択し、スペクトル再構成可能領域32eを広げる操作を行う。このようにして、受付機能38cは、操作者からスペクトル再構成可能領域を拡大する設定を受け付ける。
一方で、再構成領域32dのうち一部の領域がスペクトル再構成可能領域32eであっても、心臓等小さい領域の観察を目的とする場合には、予測されたスペクトル再構成可能領域32eが広すぎる場合がある。かかる場合、操作者は、表示領域32cにおいてスペクトル再構成可能領域32eの境界線を選択し、スペクトル再構成可能領域32eを小さくする操作を行う。このようにして、受付機能38bは、操作者からスペクトル再構成可能領域を縮小する設定を受け付ける。
そして、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域32eの変更に応じたスキャン条件のパラメータを設定する。言い換えると、制御機能38bは、設定されたスペクトル再構成可能領域32eを新たにスキャンする際のパラメータを設定し、設定したパラメータをディスプレイ32に表示する。例えば、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域の拡大に応じて単位時間当たりのX線照射量を低下させたパラメータを設定し、スペクトル再構成可能領域の縮小に応じて単位時間当たりのX線照射量を増加させたパラメータを設定する。
より具体的には、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域を拡大する場合には、架台回転速度を遅くし、かつ、管電流を低く設定する。また、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域を縮小する場合には、架台回転速度を速くし、かつ、管電流を高く設定する。なお、スキャン条件のパラメータのうち変更するパラメータを予め指定しておいてもよいし、設定値を優先的に固定しておくパラメータを予め指定しておいてもよい。例えば、制御機能38bは、心臓等の動きのある臓器に適したスキャン条件として架台回転速度を速くするように設定する。また、スキャン対象に応じたスキャン条件のパラメータをプリセットとして保持しておいてもよい。
なお、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域32eの変更を受け付けるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、受付機能38cは、パラメータの変更を受け付けてもよい。より具体的には、受付機能38cは、管電圧x(kV)、管電流y(mA)及び回転速度z(R/s)いずれかの数値を変更する操作を受け付けるようにしてもよい。かかる場合、算出機能38aは、変更後のスキャン条件のパラメータに基づいて、全ビューにおける出力値を算出する。例えば、算出機能38aは、変更後のスキャン条件のパラメータに基づいて、各ビューでのX線スペクトルを推定して、出力値を算出する。そして、制御機能38bは、エネルギースペクトルに関する出力値に基づいて被検体に対応するスペクトル再構成可能領域を予測してディスプレイ32に表示する。すなわち、制御機能38bは、パラメータの変更に応じて変更したスペクトル再構成可能領域をディスプレイ32に表示する。
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係るX線CT装置によるスペクトル再構成可能領域を推測する処理の手順を説明する。図9は、第1の実施形態に係るX線CT装置によるスペクトル再構成可能領域を推測する処理の手順を示すフローチャートである。ステップS101及びステップS102は、算出機能38aに対応するステップである。システム制御回路38がシステム制御回路38内に記録されている所定のプログラムを呼び出し実行することにより、算出機能38aが実現される。ステップS101では、算出機能38aは、2次元スキャノを取得する。例えば、算出機能38aは、X線管12が0°の位置で撮影した2次元スキャノと、X線管12が90°の位置で撮影した2次元スキャノとを取得する。
ステップS102では、算出機能38aは、2次元スキャノからエネルギースペクトルに関する出力値を算出する。例えば、算出機能38aは、各X線スペクトルから画像における出力値をビューごとに算出する。
ステップS103及びステップS104と、ステップS107及びステップS108とは、制御機能38bに対応するステップである。システム制御回路38がシステム制御回路38内に記録されている所定のプログラムを呼び出し実行することにより、制御機能38bが実現される。ステップS103では、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域を予測する。例えば、制御機能38bは、再構成領域のうち全ビューにおける出力値が所定の閾値以下である領域を、スペクトル再構成可能領域であると予測する。
ステップS104では、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域をディスプレイ32に表示する。例えば、制御機能38bは、再構成領域とスペクトル再構成可能領域とスキャン条件のパラメータとをディスプレイ32に表示する。
ステップS105及びステップS106は、受付機能38cに対応するステップである。システム制御回路38がシステム制御回路38内に記録されている所定のプログラムを呼び出し実行することにより、受付機能38cが実現される。ステップS105では、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域を決定する操作を受け付けたか否かを判定する。例えば、受付機能38cは、図8に示す決定ボタン32fを選択する操作を操作者から受け付けた場合に、スペクトル再構成可能領域を決定する操作を受け付けたと判定する。ここで、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域を決定する操作を受け付けたと判定した場合(ステップS105、Yes)、処理を終了する。
一方、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域を決定する操作を受け付けたと判定しなかった場合(ステップS105、No)、ステップS106に移行する。そして、ステップS106では、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域を変更する操作を受け付けたか否かを判定する。例えば、受付機能38cは、図8に示すスペクトル再構成可能領域32eを変更する操作を操作者から受け付けた場合に、スペクトル再構成可能領域を変更する操作を受け付けたと判定する。ここで、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域を変更する操作を受け付けたと判定しなかった場合(ステップS106、No)、ステップS105に移行して、スペクトル再構成可能領域を決定する操作を受け付けたか否かを引き続き判定する。
一方、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域を変更する操作を受け付けたと判定した場合(ステップS106、Yes)、ステップS107に移行する。ステップS107では、制御機能38bは、変更後のスペクトル再構成可能領域に応じたスキャン条件のパラメータを設定する。例えば、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域の拡大に応じて単位時間当たりのX線照射量を低下させたパラメータを設定し、スペクトル再構成可能領域の縮小に応じて単位時間当たりのX線照射量を増加させたパラメータを設定する。
そして、ステップS108では、制御機能38bは、変更後のスペクトル再構成可能領域と変更後のスキャン条件のパラメータとをディスプレイ32に表示する。例えば、制御機能38bは、再構成領域と変更後のスペクトル再構成可能領域と変更後のスキャン条件のパラメータとをディスプレイ32に表示する。ステップS108の終了後ステップS105に移行し、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域を決定する操作を受け付けたか否かを判定する。
上述したように、第1の実施形態に係るX線CT装置は、被検体をX線でスキャンすることで取得された当該被検体の画像からエネルギースペクトルに関する出力値を算出する。そして、第1の実施形態に係るX線CT装置は、エネルギースペクトルに関する出力値に基づいて被検体に対応するスペクトル再構成可能領域を予測し、スペクトル再構成可能領域をディスプレイ32に表示する。
すなわち、第1の実施形態では、本スキャンに先立って行われるスキャノ撮影で、エネルギースペクトルの出力値が閾値以上になる領域を推定し、物質弁別画像の再構成が可能な領域をスキャンFOV上に表示する。これにより、第1の実施形態によれば、操作者は、例えば、本スキャンを実行する前に、スペクトル再構成可能領域を把握することができる。
そして、スペクトル再構成可能領域が操作者の意図する範囲をカバーできていない場合、操作者は、意図する範囲が含まれるようスキャン条件を調整する。例えば、操作者は、スペクトル再構成可能領域を拡大する操作や縮小する操作を行う。かかる場合、第1の実施形態に係るX線CT装置は、スペクトル再構成可能領域の拡大に応じて単位時間当たりのX線照射量を低下させたスキャン条件のパラメータを設定し、スペクトル再構成可能領域の縮小に応じて単位時間当たりのX線照射量を増加させたスキャン条件のパラメータを設定する。
この結果、第1の実施形態によれば、最適なスペクトル再構成可能領域を設定することができる。また、第1の実施形態によれば、本スキャンを実行する前に、最適なスペクトル再構成可能領域を設定することができる結果、再撮影を行なうことを減らすことが可能になる。また、最適なスペクトル再構成可能領域を設定して本スキャンを実行することで、画像再構成回路36は、精度の高いスペクトル再構成画像を生成することができる。この結果、第1の実施形態によれば、正確な診断を行なうことができる。なお、スペクトル再構成画像は、例えば、物質弁別画像、単色X線画像等である。
また、画像再構成回路36は、スキャンFOV内のスペクトル再構成可能領域以外の領域については、エネルギー積分値で再構成画像を生成する。このようにして、画像再構成回路36は、再構成処理速度も向上させることが可能である。
(第1の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態では、1つの閾値を用いて、スペクトル再構成が可能な候補領域を予測する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の閾値を用いて、スペクトル再構成が可能な候補領域を予測してもよい。ここでは、第1の閾値及び第2の閾値の2つの閾値を用いる場合について説明する。
第1の閾値は、第1の実施形態で説明した閾値である。すなわち、第1の閾値は、出力値がスペクトル再構成可能領域であると予測する際に用いられる。第2の閾値は、第1の閾値よりも大きい値が設定される。この第2の閾値は、出力値を補正することによりスペクトル再構成が可能な候補領域を予測する際に用いられる。そして、例えば、制御機能38bは、出力値を補正することによりスペクトル再構成が可能な候補領域を更に予測し、予測した候補領域をディスプレイ32に更に表示する。図10は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。
図10では、説明の便宜上、ディスプレイ32を複数の表示領域に分割した場合の1つの表示領域32cのみを図示している。また、図10では、例えば2次元スキャノにおいて選択された注目断面についての再構成領域32d、スペクトル再構成可能領域32e及び候補領域32gを示す。
図10では、再構成領域32dの一部の領域がスペクトル再構成可能領域32eである。例えば、制御機能38bは、再構成領域32dのうち、全ビューにおける出力値が第1の閾値以下である領域を、図10に示すように、スペクトル再構成可能領域32eと予測する。更に、制御機能38bは、再構成領域32dのうち、全ビューにおける出力値が第1の閾値以下ではないが、第2の閾値以下である領域を候補領域32gとして予測する。
このように、第1の実施形態の変形例では、スペクトル再構成可能領域に加えて、出力値を補正することによりスペクトル再構成が可能な候補領域を設定する。これにより、第1の実施形態の変形例によれば、本スキャンを実行する前に、より広範囲にスペクトル再構成可能領域を設定することができる。この結果、広範囲な領域をスキャンする場合でも、スペクトル再構成画像を生成することが可能になる。
(第2の実施形態)
制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域を複数予測して、各スペクトル再構成可能領域を新たにスキャンする際のスキャン条件のパラメータを設定し、予測した各スペクトル再構成可能領域と各スペクトル再構成可能領域に対応するスキャン条件のパラメータとをディスプレイ32に表示するようにしてもよい。
図11は、第2の実施形態を説明するための図である。図11では、各スペクトル再構成可能領域及び各スペクトル再構成可能領域に対応するスキャン条件のパラメータについて3つの組み合わせをディスプレイ32に所定の順で表示する場合について説明する。例えば、制御機能38bは、スペクトル再構成可能領域を複数予測した場合、まず、図11の上図に示す組み合わせをディスプレイ32に表示する。なお、図11では、説明の便宜上、ディスプレイ32を複数の表示領域に分割した場合の1つの表示領域32cのみを図示している。また、図11では、ディスプレイ32の表示領域32cには、再構成領域32dと、スペクトル再構成可能領域32eと、スキャン条件のパラメータと、決定ボタン32fと、切替ボタン32hとが表示される。なお、図11に示す再構成領域32dは、例えば2次元スキャノにおいて選択された注目断面である。
図11の上図に示すスペクトル再構成可能領域32eは、3つの組み合わせのうち領域が最小である。ここで、操作者が切替ボタン32fを選択した場合、受付機能38cは、操作者からスペクトル再構成可能領域を変更する設定を受け付ける。そして、制御機能38bは、例えば、図11の中図に示す組み合わせをディスプレイ32に表示する。
図11の中図に示すスペクトル再構成可能領域32eは、図11の上図に示すスペクトル再構成可能領域32eよりも大きい。ここで、操作者が切替ボタン32fを選択した場合、受付機能38cは、操作者からスペクトル再構成可能領域を変更する設定を受け付ける。そして、制御機能38bは、例えば、図11の下図に示す組み合わせをディスプレイ32に表示する。
図11の下図に示すスペクトル再構成可能領域32eは、3つの組み合わせのうち領域が最大である。ここで、操作者が切替ボタン32fを選択した場合、受付機能38cは、操作者からスペクトル再構成可能領域を変更する設定を受け付ける。そして、制御機能38bは、例えば、図11の上図に示す組み合わせをディスプレイ32に表示する。なお、図11において、操作者が決定ボタン32fを選択した場合、受付機能38cは、スペクトル再構成可能領域を決定する操作を受け付けたと判定する。
このようにして、第2の実施形態では、スペクトル再構成可能領域を複数予測して、各スペクトル再構成可能領域及び各スペクトル再構成可能領域に対応するスキャン条件のパラメータの組み合わせをディスプレイ32に所定の順で表示する。これにより、操作者は、本スキャンの実行前に、複数のスペクトル再構成可能領域を把握することが可能になる。この結果、第2の実施形態によれば、操作者は、複数の組み合わせの中から診断に適したスペクトル再構成可能領域を選択することができる。また、第2の実施形態によれば、本スキャンを実行する前に、最適なスペクトル再構成可能領域を設定することができる結果、再撮影を行なうことを減らすことが可能になる。また、最適なスペクトル再構成可能領域を設定して本スキャンを実行することで、画像再構成回路36は、精度の高いスペクトル再構成画像を生成することができる。この結果、第2の実施形態によれば、正確な診断を行なうことができる。
なお、第2の実施形態では、各スペクトル再構成可能領域及び各スペクトル再構成可能領域に対応するスキャン条件のパラメータについて3つの組み合わせをディスプレイ32に所定の順で表示する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能38bは、3つの組み合わせをディスプレイ32に並列表示してもよい。また、制御機能38bは、3つの組み合わせをディスプレイ32に並列表示する場合に、各組合せについて色を変えて表示してもよいし、3つの組み合わせの中から推奨する組み合わせを強調して表示するようにしてもよい。また、表示する組み合わせの数は、3つに限定されるものではなく任意に設定可能である。
また、第2の実施形態において、受付機能38cは、第1の実施形態と同様に、操作者からスペクトル再構成可能領域を拡大する設定や縮小する設定を受け付けてもよい。そして、制御機能38bは、操作者からスペクトル再構成可能領域を拡大する設定や縮小する設定を受け付ける。
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
上述した実施形態では、制御機能38bは、再構成領域のうち全ビューにおける出力値が所定の閾値以下である領域を、スペクトル再構成可能領域であると予測するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能38bは、再構成領域のうちハーフ再構成が可能な範囲のビューにおける出力値が所定の閾値以下である領域を、スペクトル再構成可能領域であると予測する。
また、上述した実施形態では、算出機能38aは、画像として少なくとも1方向からの2次元スキャノを取得するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、算出機能38aは、画像として過去に実行された本スキャンにより得られた画像を取得するようにしてもよい。かかる場合、算出機能38aは、投影データの実測値を出力値として算出する。
また、上述した実施形態では、X線CT装置において2次元スキャノを撮影するものとして説明したが、例えば、X線CT装置において3次元のスキャノ画像(3次元スキャノ)を撮影した場合には、算出機能38aは、画像として3次元スキャノを取得するようにしてもよい。かかる場合、スキャン制御回路33は、スキャノ画像の撮影において、被検体に対する全周分の投影データを収集することで、3次元のスキャノ画像を撮影する。例えば、スキャン制御回路33は、ヘリカルスキャン或いはノンヘリカルスキャンによって被検体に対する全周分の投影データを収集する。ここで、スキャン制御回路33は、被検体の胸部全体、腹部全体、上半身全体、全身などの広範囲に対して本撮影よりも低線量でヘリカルスキャン或いはノンヘリカルスキャンを実行する。ノンヘリカルスキャンとしては、例えば、上述のステップアンドシュート方式のスキャンが実行される。このように、スキャン制御回路33が被検体に対する全周分の投影データを収集することで、画像再構成回路36が、3次元のX線CT画像データ(ボリュームデータ)を再構成することができ、再構成したボリュームデータを用いて任意の方向から位置決め画像を生成することが可能になる。なお、位置決め画像を2次元で撮影するか、或いは、3次元で撮影するかは、操作者によって任意に設定する場合でもよく、或いは、検査内容に応じて予め設定される場合でもよい。
また、上述した実施形態において説明した算出機能38a、制御機能38b及び受付機能38cの機能は、ソフトウェアによって実現することもできる。例えば、算出機能38a、制御機能38b及び受付機能38cの機能は、上記の実施形態において算出機能38a、制御機能38b及び受付機能38cが行うものとして説明した処理の手順を規定したスペクトル再構成可能領域推測プログラムをコンピュータに実行させることで、実現される。このスペクトル再構成可能領域推測プログラムは、例えば、ハードディスクや半導体メモリ素子等に記憶され、CPUやMPU等のプロセッサによって読み出されて実行される。また、このスペクトル再構成可能領域推測プログラムは、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)やMO(Magnetic Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録されて、配布され得る。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはプロセッサの回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサの回路内にプログラムを組み込む代わりに、コンソール30が有する記憶回路にプログラムを保存するように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、最適なスペクトル再構成可能領域を設定することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。