JP7076731B2 - マグネシウム合金及びマグネシウム合金の製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金及びマグネシウム合金の製造方法 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 日本金属学会講演概要集(平成29年 8月23日)公益社団法人日本金属学会発行第204ページに発表
特許法第30条第2項適用 軽金属学会第133回秋期大会講演概要(平成29年10月 4日)一般社団法人軽金属学会発行第65-66ページに発表
本発明は、マグネシウム合金及びマグネシウム合金の製造方法に関する。
マグネシウム合金は、実用金属中最軽量の金属として知られており、アルミニウム合金に代わる軽量材料として鉄道、航空機、自動車などへの適用が検討されている。しかし、マグネシウム合金展伸材はアルミニウム合金に比べて強度や加工性に劣る。この点を克服し、マグネシウム合金の用途を拡大するために、新しい展伸材の開発を含む様々な研究が行われてきた。
従来の展伸マグネシウム合金は、強加工による結晶粒微細化や、希土類金属元素と亜鉛を合金元素として添加することで300MPaを超える強度を得ている(特許文献1参照)。しかし、従来技術により開発された合金には実用上多くの問題点が存在する。
特許文献1のように希土類金属を合金元素として添加した合金は優れた強度を有する。しかし、高価な希土類金属を使用するために原料コストが高くなる。また、容易に熱間加工などの1次加工や最終形状への2次加工ができないため製造コストも高い。したがって、自動車や鉄道などに適用できるような汎用的な材料が開発できる可能性は著しく低い。
また、強加工による結晶粒微細化により強度を向上させた展伸材が知られている(例えば非特許文献1参照)。しかし、変形組織が形成され、既に加工硬化した状態になっているため、室温での2次加工が著しく困難である。それだけでなく、大型部材を作製することも困難である。
一方、高強度合金の開発に加え、常温での加工性の向上に関する研究についてもこれまで多数行われている(特許文献2,3参照)。これらの報告例ではエリクセン値(IE値)によって常温の加工性が評価されている。
幾つかの報告において、合金元素添加や圧延プロセスの改良などによって、アルミニウム合金に匹敵する優れた常温での加工性を有する合金を開発した例が報告されている(特許文献3参照)。しかし常温加工性の向上に伴い強度が低下する傾向があった。
なお、特定の鋳造材や押出材において時効処理を用いて強度を改善した例も報告されている(特許文献4,5参照)。
特開2013-79436号公報 特開2004-10959号公報 特開2010-13725号公報 特開2002-266044号公報 特開2016-169427号公報
W.J.Kim, I.B.Park, S.H.Han, Scripta Materialia, 66(2012) 590 - 593,
ところで、例えば自動車のボディパネルの場合、機械的性質として求められる160MPaの0.2%耐力と8mm程度のエリクセン値を有する合金が求められており、多くの用途において、強度と常温での優れた2次加工性の両者を発現する合金が強く求められている。ところが従来のマグネシウム合金やマグネシウム合金の製造方法では、強度と常温における2次加工性とを十分に兼ね備えた汎用性の高い材料は得られていなかった。
そこで本発明では、常温を含む温度範囲における加工性と強度を両立させることが可能で、汎用性の高いマグネシウム合金及びマグネシウム合金の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のマグネシウム合金の第一の態様は、0.5~2.0質量%のZnと、0.3~0.8質量%のCaと、少なくとも0.2質量%~1.0質量%以下のZrと、を含有し、残部がMg及び不可避不純物からなり、Mg、Ca及びZnからなるナノメートルオーダーの直径の析出物がマグネシウム母相の(0001)面上に分散した組織を有することを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の第二の態様は、第一の態様において、析出物の数密度が、4.5×10 22 -3 ~5×10 23 -3 であることを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の第三の態様は、第一又は第二の態様において、さらに、Gdを0.1質量%以上2.0質量%以下で添加したことを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の第の態様は、第一から第三の態様の何れかにおいて、前記マグネシウム母相の結晶粒径の平均が5μm以上20μm以下であることを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の第の態様は、第一から第の態様の何れかにおいて、X線回折により測定した(0002)極点図の正規化したRD-TD面の板厚中央部における(0002)面の集積度が4.0未満であることを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の第の態様は、第一から第の態様の何れかにおいて、室温におけるエリクセン値が7.0mm以上であることを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の第七の態様は、第一から第六の態様の何れかにおいて0.2%耐力が180MPa以上であることを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の製造方法の第一の態様は、0.5~2.0質量%のZnと、0.3~0.8質量%のCaと、少なくとも0.2質量以上1.0質量%以下のZrと、を含有し、残部がMg及び不可避不純物からなり、Mg、Ca及びZnからなるナノメートルオーダーの直径の析出物がマグネシウム母相の(0001)面上に分散した組織を有し、Mg、Zn、Ca及びZrを溶解して鋳造固体を得る工程1と、前記鋳造固体を均質化処理して均質化固体を得る工程2と、前記均質化固体を熱間または温間で加工して有形固体を得る工程3と、前記有形固体を溶体化処理して冷却固体を得る工程4と、前記冷却固体を時効処理してマグネシウム合金を得る工程5と、を含むことを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の製造方法の第二の態様は、前記工程1において、0.1~2.0質量%のGdを添加することを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の製造方法の第の態様は、前記工程3において、前記均質化固体を450℃に再加熱することを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の製造方法の第の態様は、前記工程2において、400℃以上500℃以下で所定時間の均質化処理を行い、前記工程5において、140℃以上250℃以下の温度で所定時間の時効処理を行うことを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の製造方法の第の態様は、前記工程5において、前記マグネシウム合金の硬さが増大するまで時効処理することを特徴とする。
本発明は、常温を含む温度範囲における加工性と強度を両立させることが可能で、汎用性の高いマグネシウム合金及びマグネシウム合金の製造方法を提供することができる。
本発明の実施例及び比較例における工程1,2の説明図であって、(a)は実施例1,4,5、及び比較例1,2,4を、(b)は実施例2,3,6,7、及び比較例3,5を示す。 実施例1における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 実施例1における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 実施例1における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 実施例1における時効硬化曲線を示す。 実施例2における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 実施例2における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 実施例2における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 実施例2における時効硬化曲線を示す。 実施例2における時効処理材を観察した図であって、(a)は明視野透過電子顕微鏡像、(b)は3次元アトムマップ、(c)は(b)の3次元アトムマップの拡大図、(d)は(c)の長手方向の濃度プロファイルを示す図である。 実施例3における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 実施例3における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 実施例3における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 実施例3における時効硬化曲線を示す。 実施例4における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 実施例4における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 実施例4における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 実施例4における時効硬化曲線を示す。 実施例5における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 実施例5における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 実施例5における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 実施例5における時効硬化曲線を示す。 実施例6における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 実施例6における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 実施例6における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 実施例6における時効硬化曲線を示す。 実施例7における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 実施例7における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 実施例7における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 実施例7における時効硬化曲線を示す。 比較例1における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 比較例1における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 比較例1における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 比較例1における時効硬化曲線を示す。 比較例2における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 比較例2における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 比較例2における溶体化処理材と時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 比較例2における時効硬化曲線を示す。 比較例3における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 比較例3における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 比較例3における溶体化処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 比較例3における時効硬化曲線を示す。 比較例4における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 比較例4における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 比較例4における溶体化処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 比較例4における時効硬化曲線を示す。 比較例5における溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。 比較例5における溶体化処理材の(0002)極点図を示す。 比較例5における溶体化処理材の引張応力-ひずみ曲線を示す。 比較例5における時効硬化曲線を示す。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明のマグネシウム合金は、0.5質量%以上2.0質量%以下のZn(亜鉛)と、0.3質量%以上0.8質量%以下のCa(カルシウム)と、少なくとも0.2質量%のZr(ジルコニウム)と、を含有し、残部がMg(マグネシウム)及び不可避不純物からなる合金である。
特に、底面の配向度を低下させ、より優れた室温成形性のために、さらに、Gd(ガドリニウム)を0.1質量%以上2.0質量%以下で添加してもよい。優れた室温成形性を得る上での好適なGdの添加量は0.3質量%である。Gdの濃度が0.1質量%以下の場合は、底面の配向度の低下には効果的ではないので好ましくない。Gdの濃度が2.0質量%以上の場合は、第2相粒子の形成により加工性が著しく損なわれ、かつ材料コストも高くなるので好ましくない。
このマグネシウム合金は、Mg、Zn、Ca、Zrを固溶したMgからなるマグネシウム母相と、Zn、Ca、Zrのうちの1種以上を含む析出物とを有している。マグネシウム合金の形態は、特に限定されず、例えば板材等の各種素材の形態であってもよく、中間体や最終製品の形態であってもよい。
本発明のマグネシウム合金のマグネシウム母相の平均結晶粒径は、溶体化処理後に、5~20μmであるのがよい。結晶粒径が過剰に大きいと、クラックの起点となる変形双晶の形成が容易となり、常温での成形加工性を著しく低下させることになるため好ましくない。
本発明のマグネシウム合金における時効後の析出物は、Mg、Ca、Znよりなる析出物である。
Mg、Ca、Znよりなる析出物は、マグネシウム母相の(0001)面上に分散したG.P.ゾーン(G.P.Zone(Guinier. Preston. Zone))と呼ばれるナノサイズの析出物である。Mg、Ca、Znよりなる析出物を時効処理中に形成することで、合金の強度を向上することができる。
析出物が分散しているとは、微細なナノオーダーの析出物が多数析出している状態であればよい。マグネシウム合金の時効処理材で観察されるMg、Ca、Znよりなる析出物(G.P.Zone)は板状析出物であってもよいが、特に限定されない。
本発明のマグネシウム合金に含有されるZnの割合は、0.5質量%以上2.0質量%以下とするのがよい。Znの割合は、望ましくは0.8質量%以上がよい。時効処理においてG.P.Zoneを高密度に形成させるためである。
Znの含有割合が少ないと、結晶の配向度が高くなるので優れた常温加工性が得られない。一方で過剰であると、合金の融点が下がり、溶体化処理後の冷却時に割れる可能性があるだけでなく、時効硬化能が著しく低下し易いため好ましくない。
本発明のマグネシウム合金に含有されるCaの割合は、0.3質量%以上0.8質量%以下とするのが好ましい。Caの添加により、(0002)極の集積度を低下させ、時効処理においてG.P.Zoneを高密度に形成させるためである。
Caの含有割合が少ないと、後述する有用な析出物を得にくく、一方、Caの含有割合が過剰であると、MgとCaよりなる析出物が形成し、成形性や延性の低下を招くため好ましくない。
本発明のマグネシウム合金に含有されるZrの割合は、少なくとも0.2質量%とするのがよい。Zrの割合は、望ましくは0.2質量%以上である。また、Zrの割合は、1.0質量%以下とするのがよい。
また、析出物(G.P.Zone)の数密度は、高いことが好ましい。数密度が過剰に低いと、ナノ析出物による強度を向上する効果が得にくくなるため好ましくない。G.P.Zoneの数密度は、4.5×1022-3~5×1023-3であるのが好適である。これにより、T6処理によって30~90MPa程度の強度増加が期待できる。
結晶粒の配向度は、(0002)極点図の正規化したRD-TD面の板厚中央部における(0002)面の集積度が4.0未満とされている。これにより結晶粒の配向度を低くすることができ、優れた成形性を得ることができる。
本発明のマグネシウム合金は、室温におけるエリクセン値が7.0mm以上、望ましくは7.5mmであるのがよい。これによりマグネシウム合金の常温でのプレス等の加工性を向上することができ、加熱状態での加工性も一層向上することができる。
このエリクセン値(I.E.値)とは、エリクセン試験により外周部を固定した薄板に球頭パンチを一定のスピードで押し当てることで薄板を変形させて、材料に破断が生じるまでのくぼみの高さによって常温での加工性を評価するものである。
本発明のマグネシウム合金は、常温での加工性を向上しつつも、溶体化処理後の0.2%耐力が146MPa以上であるのがよい。本発明のマグネシウム合金は、破断伸びが20%以上であるのがよい。さらにビッカース硬さの増分が少なくも8HV以上であるのが望ましい。本発明のマグネシウム合金の時効処理材の0.2%耐力は、180MPa以上、望ましくは200MPaであるのが好ましい。0.2%耐力は降伏強度とも呼ばれる。
次に、マグネシウム合金の製造方法について説明する。
本発明のマグネシウム合金の製造方法は、Mg、Zn、Ca及びZrを溶解して鋳造して鋳造固体を得る工程1と、鋳造固体を均質化処理して均質化固体を得る工程2と、均質化固体を熱間または温間で加工して有形固体を得る工程3と、有形固体を溶体化処理して冷却固体を得る工程4と、冷却固体を時効処理してマグネシウム合金を得る工程5と、を含んでいる。
(工程1:鋳造)
工程1では、0.5~2.0質量%のZnと、0.3~0.8質量%のCaと、少なくとも0.2質量%のZrと、を含有し、残部がMg及び不可避不純物からなる合金成分を溶解して鋳造固体を作製する。溶解の際に用いる溶解炉や鋳造固体のサイズは特に限定はされるものではなく、所望の組成の鋳造固体が作製できればよい。
(工程2:均質化処理)
工程2では、鋳造固体を300℃以上500℃以下で所定時間の均質化処理を行うことで均質化固体を作製する。
均質化処理では、鋳造固体中に存在する合金元素分布を均質化し、溶湯の冷却中に形成される析出物をマグネシウム母相に固溶させる。
Znが高濃度にマクロ偏析している領域では、450℃で熱処理を開始すると合金が融解するおそれがある。そのため、まず300℃で熱処理することで、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制してZnを分散した後、400℃以上500℃以下において所定時間の熱処理を施すことで、Znの分布を均質化して均質化固体を得る。
均質化処理の条件は特に限定されるものではなく、鋳造固体や合金元素成分に応じて設定することができ、所定の温度及び時間の条件における熱処理により合金元素がマグネシウム母相に固溶できればよい。
(工程3:熱間または温間加工)
工程3では、均質化固体を温間における圧延により板材に加工することで、板状の有形固体を作製する。
圧延では、試料温度、ロール温度、圧下率、ロール周速、通過数、試料の中間熱処理の有無、中間熱処理の温度及び時間などの圧延条件を設定して、均質化固体を板材に加工する。
表1は、工程3の例として、後述する実施例及び比較例のマグネシウム合金の圧延条件を示している。記号A~Fは、各マグネシウム合金の化学組成と圧延前の均質化処理条件を区別するために付した。
表1に示すように各マグネシウム合金は、以下の化学組成を有している。
A:
化学組成:Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zr
均質化処理条件:300℃で4時間保持後、昇温速度7.5℃/hで450℃まで昇温、その後6時間保持後、水冷
B:
化学組成:Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr
均質化処理条件:300℃で4時間保持後、昇温速度7.5℃/hで450℃まで昇温、その後6時間保持し、300℃まで空冷した後に水冷
C:
化学組成:Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr-0.3Gd
均質化処理条件:300℃で4時間保持後、昇温速度7.5℃/hで450℃まで昇温、その後6時間保持し、300℃まで空冷した後に水冷
D:
化学組成:Mg-0.8Zn-0.8Ca-0.4Zr
均質化処理条件:300℃で4時間保持後、昇温速度7.5℃/hで450℃まで昇温、その後6時間保持後、水冷
E:
化学組成:Mg-0.8Zn-0.8Ca-0.2Zr
均質化処理条件:300℃で4時間保持後、昇温速度7.5℃/hで450℃まで昇温、その後6時間保持後、水冷
F:
化学組成:Mg-1.6Zn-0.4Zr
均質化処理条件:300℃で4時間保持後、昇温速度7.5℃/hで450℃まで昇温、その後6時間保持し、300℃まで空冷した後に水冷
Figure 0007076731000001
表1に示す最終圧延工程の試料加熱温度が、中間熱処理の温度である。この中間熱処理温度の上限値は500℃、下限値は300℃であることが好ましい。
300℃以下で中間熱処理を行うと、変形組織が再結晶しないので、圧延性が悪くなる。また、熱処理中にG.P.Zoneが形成して試料の強度が上がるので、圧延性が悪くなる。さらには底面が強く配向して、優れた室温成形性の発現が期待できない組織が形成される。500℃以上で中間熱処理を行うと、酸化や発火のおそれがある。また、底面が強く配向して、優れた室温成形性の発現が期待できない組織が形成される可能性がある。
最終圧延工程における試料再加熱は、試料再加熱を行う場合は、全てのパス間で行うことが好ましい。
試料再加熱は、所定の温度にて、2~60分間保持することが好ましい。さらに好ましくは2~10分間である。特に、5分間程度が好ましい。試料再加熱の時間が2分未満の場合は、組織が再結晶せず、圧延性が低下するので好ましくない。再結晶を起こすためには10分で十分である。逆に、試料再加熱の時間10分以上の場合は、試料が酸化したり、組織が粗大化したりして、逆に圧延性が低下するだけでなく、生産効率にも大きく低下するので好ましくない。
試料再加熱後は、所定の試料温度まで試料を空冷した後に、圧延を開始する。
試料温度及びロール温度は圧延中に試料が割れない程度に低くしてもよい。また圧下率は圧延中に試料が割れない程度に大きくしてもよい。試料の中間熱処理は圧延途中で行う熱処理であり、冷却過程においてクラックが生じず、かつ局所的な融解が起きない範囲の高温で行ってもよい。
熱間または温間加工は特に圧延加工に限定されるものではなく、微細組織が作製できる展伸加工法であればよく、例えば双ロール鋳造圧延をはじめ鍛造や押出加工など如何なる方法でもよい。
(工程4:溶体化処理)
工程4では、板状の有形固体を溶体化処理し、これを冷却することで冷却固体を作製する。溶体化処理では、有形固体を熱処理することで、熱間または温間加工中に形成された微細析出物をマトリックス中に固溶させ、かつ再結晶させて組織を形成する。
熱間または温間加工後に溶体化処理を施すことで、結晶粒の配向をランダムに配向させることができ、優れた成形性を付与することができる。溶体化処理では、有形固体に応じ350℃から500℃の溶体化処理温度で、15分から24時間の溶体化処理時間保持することで行う。ただし、熱処理時間の長時間化は製造コストの増加につながるので必要以上の時間を行う必要はない。
(工程5:時効処理)
工程5では、冷却固体を熱処理により時効硬化処理することで、溶体化処理された冷却固体に析出した析出物を分散させて強度を付与して、本発明のマグネシウム合金を作製する。ここでは商用マグネシウム合金では従来使われなかった時効処理を用いることで、マグネシウム合金の大幅な強化を達成することができる。
時効処理では、140~250℃の温度で所定時間の時効処理を行う。時効処理を行う時間は、マグネシウム合金の硬さが増大する時間、好ましくはマグネシウム合金の硬さが最大となる時間行う。
時効処理時間は5分~24時間とすることが好ましい。時効時間が短すぎると十分な数密度の析出物が形成しないので強度増加が期待できない。逆に時効時間が長すぎると析出相がG.P.Zoneから安定相に変化するので大きな強化が期待できないので好ましくない。
このようにして製造される本発明のマグネシウム合金は、0.5~2.0質量%のZnと、0.3~0.8質量%のCaと、少なくとも0.2質量%のZrと、を含有し、残部がMg及び不可避不純物からなり、Mg、Ca及びZnからなるナノメートルオーダーの析出物がマグネシウム母相の(0001)面上に分散している合金である。
上記のようなマグネシウム合金及びその製造方法によれば、圧延後に溶体化処理を施すことで結晶粒の配向をランダムに配向させることができ、これにより優れた成形性を付与することができる。また結晶粒の配向をランダムに配向させることで強度が急激に低下するが、時効処理によりナノサイズの析出物を形成させることで成形性、強度、延性を両立させることが可能である。
さらに、これらのマグネシウム合金及びその製造によれば、常温を含む温度範囲における加工性と強度とを両立させることが可能な汎用性の高いマグネシウム合金が得られる。例えば自動車のボディパネル等の自動車材料として、適用が可能な機械的性質として求められる耐力や常温加工性を実現することができる。
高価かつ資源の少ない重希土類金属元素を用いることなく、比較的安価な合金元素からなり、また既存の設備を利用して単純な圧延と熱処理の組み合わせよりなる熱処理や加工により、従来の商用マグネシウム合金板材を大きく上回る優れた成形性と室温強度を発現させることができる。これにより例えば自動車応用に要求される特性を満たすことも可能である。
上記実施形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば上記マグネシウム合金の製造方法では、熱間または温間加工後に溶体化処理した状態のマグネシウム合金を絞り、曲げなどの各種の加工を施して成形体を作製し、その後に時効処理を施すことで強化する例について説明したが、熱間または温間加工後に溶体化処理及び時効処理してマグネシウム合金を作製し、その後絞り、曲げなどの各種の加工を施して成形体を作製することも可能である。
その場合、マグネシウム合金の製造方法としては、熱間または温間加工後に溶体化処理して時効処理を施さない状態で完了することもでき、加工材料の製造方法として本発明を適用することが可能である。
次に、本発明の実施例について説明する。
なお、合金組成は全て質量%にて記載している。Mg以外の元素であるZn、Ca、Zr、Gdの前に記載している数字は、各元素の質量%を示している。以下において、合金組成の末尾に括弧内に示す試料A~Fは表1の化学組成(wt.%)に対応している。
[実施例1]
合金組成:Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zr(試料A)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:400℃で1時間
時効処理:170℃で4時間
(工程1:鋳造)
高周波誘導溶解炉(ULVAC社製、FMI-I-20F)を用いて、Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型を用いて鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(a)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の均質化処理を行い、水焼き入れによって冷却することで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
圧延装置(ウエノテックス株式会社製、H9132)を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
図1(a)に示すように、粗圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。図1(a)に示すように、最終圧延工程では、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を400℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図2に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像(ニコン社製、Eclipse LV-100)を示す。切片法により算出した結晶粒径は9.0μmであった。結晶粒径は、米国材料試験協会(ASTM)のlineal intercept method (E112-13)に則って算出した。
図3に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度(Maximum random distribution、m.r.d.又は集合組織強度とも呼ばれる)は3.2であった。集合組織強度は(0002)面集合組織の相対強度(ランダムに配向した時を1とする)を示す尺度である。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間4時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図4に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。図5に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表2に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、エリクセン試験(試験器:エリクセン社製、111型)により評価した成形性(index Erichsen value)であるエリクセン値が7.7mm、降伏強度(0.2%耐力)が146MPa、引張強さが220MPa、破断伸びが30%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表2に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が187MPa、引張強さが247MPa、破断伸びが25%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が187MPaまで著しく増加していた。
Figure 0007076731000002
表3に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが59.3HV、ピーク硬さに達するまでの時間が4時間、時効処理による硬さの増分は11HVであった。
Figure 0007076731000003

なお、実施例1で測定した光学顕微鏡像、結晶粒径、集積度、引張応力-ひずみ曲線、時効硬化曲線、エリクセン値、降伏強度、引張強さ、破断伸び等の機械的強度は、後述する実施例2~8及び比較例1~6においても同様に測定した。
[実施例2]
合金組成:Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr(試料B)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:400℃で1時間
時効処理:170℃で2時間
(工程1:鋳造)
実施例1と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(b)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の熱処理を行う。次いで、鋳造固体を熱処理炉から取り出した後、鋳造固体が300℃になるまで空冷してから水焼き入れすることで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(b)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(b)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を400℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図6に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は9.0μmであった。結晶粒径は、実施例1と同様にASTM(E112-13)に則って算出した。図7に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は3.4であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間2時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図8に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。図9に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表4に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1と同様に評価したエリクセン値が8.2mm、降伏強度が163MPa、引張強さが245MPa、破断伸びが34%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表4に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が204MPa、引張強さが258MPa、破断伸びが31%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が204MPaまで著しく増加していた。
Figure 0007076731000004
表5に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが62.9HV、ピーク硬さに達するまでの時間が2時間、時効処理による硬さの増分は9.4HVであった。
Figure 0007076731000005
図10は、実施例2における時効処理材を観察した図であって、(a)は明視野透過電子顕微鏡像、(b)は3次元アトムマップ、(c)は(b)の3次元アトムマップの拡大図、(d)は(c)の長手方向の元素分析を示す図である。
透過型電子顕微鏡としては、FEI社の走査透過電子顕微鏡(Titan、 G2 80-200)を用いた。透過電子顕微鏡像はTEM像と呼ぶ。 図10(a)の[0101]、[01(バー)10]方位から得た明視野TEM像の右上方向に矢印で示すように、長手方向が[01(バー)10]であるG.P.Zoneの存在が確認できた。
図10(a)に示すように、G.P.Zoneの形状は板状で、マグネシウム母相の(0001)面に形成されている。又、G.P.Zoneのサイズは、直径が4~5nmで厚みが1原子層である。

3次元アトムプローブ(3 dimensional atom Probe, 3DAPとも呼ぶ)は、試料に高電圧を印加し、試料の表面から電界蒸発するイオンを、質量分析装置で検出して、個々に検出されたイオンを深さ方向へ連続的に検出し、検出された順番にイオンを並べることにより、3次元の原子分布を測定する方法である。3次元アトムプローブは、国立研究開発法人物質・材料研究機構の発明者(宝野和博)が自作し、イオン分析には、カメカ社製の質量分析装置(ADLD detector)を用いた。
図10(b)及び(c)の3次元アトムプローブの計測範囲は、それぞれ50nm×50nm×110nm、3nm×3nm×10nmであり、図10(b)及び(c)に示すように、図10(a)で観察したG.P.Zoneが、ZnとCaとZnよりなることが確認できた。数密度は、8.0×1022-3であった。 図10(d)に示す濃度プロファイルは、図10(c)に示す3次元アトムマップより求めたものである。図10(d)に示すように、図10(a)で観察したG.P.Zoneが、Mg、Ca及びZnよりなることが確認できた。
[実施例3]
合金組成:Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr-0.3Gd(試料C)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:400℃で1時間
時効処理:170℃で4時間
Gdを添加したのは、Gdの添加によってマグネシウム母相の底面の配向度を更に低下させることができ、より優れた室温成形性が期待できるからである。
より優れた室温成形性のために、さらに、Gdを0.1~2.0質量%添加してもよい。特に、底面の配向度を低下させ、優れた室温成形性を得る上での好適なGdの添加量は0.3質量%である。Gdの濃度が0.1質量%以下の場合は、底面の配向度の低下には効果的ではないので好ましくない。Gdの濃度が2.0質量%以上の場合は、MgGdのような第2相粒子の形成により加工性が著しく損なわれるのみならず、材料コストも高くなるので好ましくない。
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr-0.3Gdの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(b)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の熱処理を行う。次いで、鋳造固体を熱処理炉から取り出した後、鋳造固体が300℃になるまで空冷してから水焼き入れすることで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(b)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(b)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を400℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図11に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は7.5μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。図12に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は3.1であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間4時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図13に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図14に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表6に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が8.1mm、降伏強度が162MPa、引張強さが245MPa、破断伸びが32%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表6に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が195MPa、引張強さが263MPa、破断伸びが30%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が195MPaまで著しく増加していた。
Figure 0007076731000006
表7に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが59.7HV、ピーク硬さに達するまでの時間が4時間、時効処理による硬さの増分は7.9HVであった。
Figure 0007076731000007
[実施例4]
合金組成:Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zr(試料A)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:450℃で1時間
時効処理:170℃で4時間
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(a)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の均質化処理を行い、水焼き入れによって冷却することで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(a)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(a)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を450℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図15に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は13.7μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。図16に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は3.7であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間4時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図17に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図18に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表8に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が7.7mm、降伏強度が136MPa、引張強さが227MPa、破断伸びが31%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表8に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が198MPa、引張強さが261MPa、破断伸びが27%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が198MPaまで著しく増加していた。
Figure 0007076731000008
表9に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが62.8HV、ピーク硬さに達するまでの時間が4時間、時効処理による硬さの増分は15.7HVであった。
Figure 0007076731000009
[実施例5]
合金組成:Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zr(試料A)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:500℃で1時間
時効処理:170℃で4時間
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型で鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(a)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の均質化処理を行い、水焼き入れによって冷却することで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(a)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(a)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を500℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図19に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は9.0μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。図20に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は3.2であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間4時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図21に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図22に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表10に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が7.5mm、降伏強度が129MPa、引張強さが230MPa、破断伸びが28%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表10に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が218MPa、引張強さが273MPa、破断伸びが23%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が218MPaまで著しく増加していた。
Figure 0007076731000010
表11に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが65.7HV、ピーク硬さに達するまでの時間が4時間、時効処理による硬さの増分は15HVであった。
Figure 0007076731000011
[実施例6]
合金組成:Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr(試料B)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:430℃で1時間
時効処理:170℃で4時間
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(b)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の熱処理を行う。次いで、鋳造固体を熱処理炉から取り出した後、鋳造固体が300℃になるまで空冷してから水焼き入れすることで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(b)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(b)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を430℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図23に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は8.2μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。図24に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は3.4であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間4時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図25に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図26に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表12に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が8.0mm、降伏強度が165MPa、引張強さが245MPa、破断伸びが31%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表12に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が215MPa、引張強さが272MPa、破断伸びが30%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が215MPaまで著しく増加していた。
Figure 0007076731000012
表13に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが65.8HV、ピーク硬さに達するまでの時間が4時間、時効処理による硬さの増分は11.6HVであった。
Figure 0007076731000013
[実施例7]
合金組成:Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr-0.3Gd(試料C)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:430℃で1時間
時効処理:170℃で4時間
Gdを添加したのは、Gdの添加によってマグネシウム母相の底面の配向度を更に低下させることができ、より優れた室温成形性が期待できるからである。
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr-0.3Gdの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(b)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の熱処理を行う。次いで、鋳造固体を熱処理炉から取り出した後、鋳造固体が300℃になるまで空冷してから水焼き入れすることで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(b)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(b)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を430℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図27に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は9.0μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。図28に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は3.2であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間4時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図29に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図30に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表14に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が8.1mm、降伏強度が161MPa、引張強さが241MPa、破断伸びが35%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表14に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が200MPa、引張強さが257MPa、破断伸びが28%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が200MPaまで著しく増加していた。
実施例7は、実施例3と同じ試料Cを用いた。溶体化処理温度を430℃とした点が、実施例3(溶体化処理温度は400℃)とは異なる。他の条件は実施例3と同様にして、マグネシウム合金を製造した。実施例7では、実施例3と同様にGdを0.3質量%添加したが、実施例3とほぼ同様の機械的強度やエリクセン値が得られた。
Figure 0007076731000014
表15に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが61.2HV、ピーク硬さに達するまでの時間が4時間、時効処理による硬さの増分は9.9HVであった。
Figure 0007076731000015
[比較例1]
合金組成:Mg-0.8Zn-0.8Ca-0.4Zr(試料D)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:400℃で1時間
時効処理:170℃で2時間
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-0.8Zn-0.8Ca-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(a)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の均質化処理を行い、水焼き入れによって冷却することで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(a)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(a)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を400℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図31に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は10.0μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。図32に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は3.1であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間2時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図33に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図34に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表16に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が6.5mm、降伏強度が148MPa、引張強さが224MPa、破断伸びが28%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表16に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が187MPa、引張強さが245MPa、破断伸びが25%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が187MPaまで著しく増加していた。
Figure 0007076731000016
表17に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが57.4HV、ピーク硬さに達するまでの時間が2時間、時効処理による硬さの増分は8.1HVであった。
Figure 0007076731000017
[比較例2]
合金組成:Mg-0.8Zn-0.8Ca-0.2Zr(試料E)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:400℃で1時間
時効処理:170℃で4時間
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-0.8Zn-0.8Ca-0.2Zrの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(a)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の均質化処理を行い、水焼き入れによって冷却することで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(a)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(a)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を400℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図35に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は20.3μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。
図36に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は4.2であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間4時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図37に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)と工程5の時効処理材(T6)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図38に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表18に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が7.0mm、降伏強度が118MPa、引張強さが206MPa、破断伸びが28%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
表18に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、降伏強度が155MPa、引張強さが229MPa、破断伸びが25%であった。
このように、マグネシウム合金は、時効処理によって降伏強度が155MPaまで著しく増加していた。
Figure 0007076731000018
表19に示すように、得られたマグネシウム合金の機械的強度を測定したところ、ビッカース硬さが54.7HV、ピーク硬さに達するまでの時間が4時間、時効処理による硬さの増分は11.5HVであった。
Figure 0007076731000019
[比較例3]
合金組成:Mg-1.6Zn-0.4Zr(試料F)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:400℃で1時間
時効処理:170℃で0.5時間
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-1.6Zn-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(b)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の熱処理を行う。次いで、鋳造固体を熱処理炉から取り出した後、鋳造固体が300℃になるまで空冷してから水焼き入れすることで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(b)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(b)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を400℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図39に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は11.5μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。
図40に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は4.0であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間4時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図41に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図42に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表20に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が6.5mm、降伏強度が164MPa、引張強さが226MPa、破断伸びが36%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
Figure 0007076731000020
比較例3で得られたマグネシウム合金のビッカース硬さの時効時間に対する変化を測定したところ、時効硬化を示さず、ビッカース硬さは46.5HV程度であった。
[比較例4]
合金組成:Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zr(試料A)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:350℃で1時間
時効処理:170℃で2時間
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-0.8Zn-0.5Ca-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(a)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の均質化処理を行い、水焼き入れによって冷却することで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(a)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(a)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を350℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図43に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は8.0μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。図44に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は4.0であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間2時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図45に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)の引張応力-ひずみ曲線を示す。
図46に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表21に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が7.4mm、降伏強度が157MPa、引張強さが220MPa、破断伸びが30%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
Figure 0007076731000021
比較例4で得られたマグネシウム合金のビッカース硬さの時効時間に対する変化を測定したところ、時効硬化を示さず、ビッカース硬さは51.6HV程度であった。
[比較例5]
合金組成:Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zr(試料B)
粗圧延加工:試料温度100℃、ロール温度100℃
再加熱温度:450℃で5分
溶体化処理:350℃で1時間
時効処理:170℃で2時間
(工程1:鋳造)
実施例1等と同様に高周波誘導溶解炉を用いて、Mg-1.6Zn-0.5Ca-0.4Zrの組成の合金を溶解し、鋳型に鋳造して鋳造固体を作製した。鋳造固体の厚みを概略10mmとした。
(工程2:均質化処理)
図1(b)に示すように、鋳造固体を300℃で4時間、その後に昇温速度7.5℃/時間で450℃まで昇温し、450℃で6時間の熱処理を行う。次いで、鋳造固体を熱処理炉から取り出した後、鋳造固体が300℃になるまで空冷してから水焼き入れすることで均質化処理を施し、均質化固体を作製した。この均質化処理では、鋳造時に形成されたMg-Zn相の初期溶融を抑制するために、まず300℃で熱処理し、その後400℃から500℃で熱処理することでZnの分布を均質化した。
(工程3:熱間または温間加工)
実施例1等と同様に圧延装置を用いて、ロールにより加圧可能な圧延通路に均質化固体を通過させることで、粗圧延工程と最終圧延工程とに分けて圧延処理を行い、有形固体を作製した。
粗圧延工程では、図1(b)に示すように、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、試料温度及びロール温度を300℃とし、圧下率15%で圧延通路を4回通過させて、厚み10mmの均質化固体を厚み5mmにまで圧延した。
粗圧延工程に引き続いて、最終圧延工程では、ロールの周速が2m/minの圧延装置を用い、中間熱処理を行いつつ実施した。最終圧延工程では、図1(b)に示すように、試料温度及びロール温度を100℃とし、圧下率23%で圧延通路を6回通過させた。圧延通路を通過させる毎に、試料再加熱温度450℃で5分間保持して空冷する中間熱処理を施しつつ最終圧延を行うことで、厚みを1mmまで圧延し、有形固体を作製した。中間熱処理を施すことにより静的再結晶させて、結晶粒の配向を弱めた。
(工程4:溶体化処理)
板状の有形固体を溶体化処理することで冷却固体を作製した。溶体化処理温度を350℃とし溶体化処理時間を1時間として加熱した。
図47に、冷却固体である溶体化処理材の光学顕微鏡像を示す。実施例1等と同様の光学顕微鏡を用いた。切片法により算出した結晶粒径は7.2μmであった。結晶粒径は、実施例1等と同様に、ASTM(E112-13)に則って算出した。
図48に、溶体化処理材のX線回折より得た(0002)極点図を示す。(0002)極の集積度は3.8であった。
(工程5:時効処理)
冷却固体に対し、時効温度170℃、時効時間2時間として時効処理を施して、時効処理材であるマグネシウム合金を得た。
図49に、工程4の冷却固体である溶体化処理材(T4)の引張応力-ひずみ曲線を示す。図50に、工程5の時効処理材(T6)の時効硬化曲線を示す。
表22に示すように、得られた冷却固体の機械的強度を測定したところ、実施例1等と同様に評価したエリクセン値が7.7mm、降伏強度が171MPa、引張強さが240MPa、破断伸びが33%であった。冷却固体は、優れた常温成形性を有する。
Figure 0007076731000022
比較例5で得られたマグネシウム合金のビッカース硬さの時効時間に対する変化を測定したところ、時効硬化を示さず、ビッカース硬さは55.4HV程度であった。
表23に、実施例と比較例における溶体化処理材(T4)の組織と特性を示す。表23の記号A~Fは、表1の記号A~Fに対応する。
Figure 0007076731000023
表24に、実施例と比較例における時効処理材(T6)の特性を示す。表24の記号A~Fも、表23と同様に表1の記号A~Fに対応する。
Figure 0007076731000024
実施例1~7のマグネシウム合金は、エリクセン値が7.0mm以上、望ましくは7.5mm以上である。マグネシウム母相の底面の配向度が低い。X線回折により取得した(0002)極の集積度が少なくとも4.0未満である。平均結晶粒径が5~20μmである。このため、実施例1~7のマグネシウム合金は、優れた常温加工性を有する。
上述した実施例1~7と比較例1~5から、マグネシウム合金が優れた常温加工性を有するためには、以下の事項を満足するとよいことが判明した。
(1)結晶粒の(0002)面の配向度が、X線回折により測定した集積度で4.0以下である。
(2)Zn添加量は、少なくとも0.8重量%以上である。時効処理においてG.P.Zoneを高密度に形成させるためである。
(3)Ca添加量は、少なくとも0.3重量%以上である。Caの添加により、(0002)極の集積度を低下させ、時効処理においてG.P.Zoneを高密度に形成させるためである。
(4)Zr添加量は、少なくとも0.2重量%以上である。
実施例1~7のマグネシウム合金は、降伏強度が180MPa以上、望ましくは200MPa以上である。結晶粒が微細である。母相に合金元素を固溶させている。析出物が分散している。このため、実施例1~7のマグネシウム合金は優れた常温加工性を有する。
強度を大きく強化するためには、母相の原子半径と大きな原子半径差を有する合金元素を高濃度に固溶させるとよい。強度を大きく強化するためには、サイズが微細で、数密度が高いほどよい。
上述した実施例1~7と比較例1~5から、優れた強度を得るには下記の点が満足されるとよいことが判明した。
(1)溶体化処理を400℃以上500℃以下で行うことにより、合金元素が母相に過飽和に固溶し、時効処理によって析出物が微細に分散し硬さ増加が得られるようになる。
(2)溶体化処理後に120MPa以上の降伏強度を有する。
(3)時効硬化によって微細析出物が形成し、強化できる。時効硬化量としては少なくとも8HV以上である。
(4)Zn添加量は、2.0重量%以下である。
(5)Zn添加量の上限は、好ましくは、1.0重量%である。Zn添加量が増加すると時効硬化量が低下する傾向にあり、必要とする7HV以上の硬さ増加を得るには1.0重量%までにZn添加量を抑えることが望ましい。
(6)少なくとも0.3重量%のCaを含む。Caは析出物の構成元素のひとつであるのでCaの添加が必要不可欠である。
(7)少なくとも0.2重量%のZrを含むこと。Zrは、1.0重量%以下である。
(8)結晶粒径は20μm以下であることが望ましい。
以上説明したように、本発明は、優れた常温成形性を有するマグネシウム合金板材並びにプレス成形体に関する。
板材は、室温エリクセン値が7.0mm以上、溶体化処理後の時効処理によって室温における降伏強度を180MPa以上に高められることを特徴とする。
0.5~2.0質量%のZn、0.3~0.8質量%のCa、少なくとも0.2質量%のZrを含有し、残部がMg及び不可避不純物からなる。
溶体化処理後に板材は平均結晶粒径が20μm以下で、(0002)極点図の正規化したRD-TD面の板厚中央部における(0002)極の集積度が4.0以下で、時効後にMg、Ca、Znよりなるナノ析出物が母相中に分散した組織を有する。
試料の製造方法は、上記の微細組織が作製できる展伸加工法であれば、圧延、双ロール鋳造圧延をはじめ、鍛造や押出加工など如何なる方法でもよい。
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。

Claims (12)

  1. 0.5~2.0質量%のZnと、
    0.3~0.8質量%のCaと、
    少なくとも0.2質量%以上1.0質量%以下のZrと、
    を含有し、
    残部がMg及び不可避不純物からなり、
    Mg、Ca及びZnからなる直径がナノメートルオーダーの析出物がマグネシウム母相の(0001)面上に分散した組織を有する、マグネシウム合金。
  2. 前記析出物の数密度が、4.5×10 22 -3 ~5×10 23 -3 である、請求項1に記載のマグネシウム合金。
  3. Gdを0.1~2.0質量%添加した、請求項1又は2に記載のマグネシウム合金。
  4. 前記マグネシウム母相の結晶粒径の平均が5~20μmである、請求項1~3の何れかに記載のマグネシウム合金。
  5. X線回折により測定した(0002)極点図の正規化したRD-TD面の板厚中央部における(0002)面の集積度が4.0未満である、請求項1~の何れかに記載のマグネシウム合金。
  6. 室温におけるエリクセン値が7.0mm以上である、請求項1~の何れかに記載のマグネシウム合金。
  7. 0.2%耐力が180MPa以上である、請求項1~6の何れかに記載のマグネシウム合金。
  8. 0.5~2.0質量%のZnと、
    0.3~0.8質量%のCaと、
    少なくとも0.2質量%以上1.0質量%以下のZrと、
    を含有し、
    残部がMg及び不可避不純物からなり、
    Mg、Ca及びZnからなる直径がナノメートルオーダーの析出物がマグネシウム母相の(0001)面上に分散した組織を有する、マグネシウム合金の製造方法であって、
    Mg、Zn、Ca及びZrを溶解して鋳造固体を得る工程1と、
    前記鋳造固体を均質化処理して均質化固体を得る工程2と、
    前記均質化固体を熱間または温間で加工して有形固体を得る工程3と、
    前記有形固体を溶体化処理して冷却固体を得る工程4と、
    前記冷却固体を時効処理してマグネシウム合金を得る工程5と、
    を含む、マグネシウム合金の製造方法。
  9. 前記工程1において、0.1~2.0質量%のGdを添加する、請求項8に記載のマグネシウム合金の製造方法。
  10. 前記工程3において、前記均質化固体を450℃に再加熱する、請求項8又は請求項9に記載のマグネシウム合金の製造方法。
  11. 前記工程2において、400℃以上500℃以下で所定時間の均質化処理を行い、
    前記工程5において、140~250℃の温度で所定時間の時効処理を行う、請求項8から請求項10のうち何れか一項に記載のマグネシウム合金の製造方法。
  12. 前記工程5において、前記マグネシウム合金の硬さが増大するまで時効処理する、請求項8から請求項11のうち何れか一項に記載のマグネシウム合金の製造方法。
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