JP2017078220A - マグネシウム合金圧延材およびその製造方法ならびにプレス成型品 - Google Patents

マグネシウム合金圧延材およびその製造方法ならびにプレス成型品 Download PDF

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雄 吉田
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克仁 吉田
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Nozomi Kawabe
望 河部
宮永 倫正
Tomomasa Miyanaga
倫正 宮永
重晴 鎌土
Shigeharu Kamatsuchi
重晴 鎌土
大貴 中田
Taiki Nakata
大貴 中田
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Abstract

【課題】再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材およびその製造方法ならびにプレス成型品を提供する。
【解決手段】マグネシウム合金圧延材は、0.3質量%以上3質量%未満のAlと、0.1質量%以上1.5質量%以下の第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下の第2類元素と、を含有し、残部がMgおよび不可避不純物から形成され、マグネシウム合金圧延材の中央部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度の強度比Rcと、マグネシウム合金圧延材の端部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度の強度比Reと、を用いて、ΔR=|Rc−Re|/(Rc+Re)/2で定義される強度比差異ΔRが0.5以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、再結晶温度(ある金属の加工材を焼鈍した場合に再結晶が完了する下限の温度をいう。マグネシウム合金の場合は、その化学組成により変動し、220℃〜400℃程度である。本発明にかかるマグネシウム合金は、250℃〜350℃程度である。以下同じ。)以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材およびその製造方法ならびにプレス成型品に関する。
マグネシウムは、20℃における比重(密度g/cm3)が1.74であり、構造用に利用される金属材料の中で最も軽い金属であり、種々の元素を添加して合金化することにより、強度を高めることができる。また、マグネシウム合金は、比較的低融点であることから、リサイクルの際のエネルギーが少なくても済むため、リサイクルの観点からも好ましく、樹脂材料の代替として期待されている。そこで、近年、軽量化が要求されている携帯電話やモバイル機器などの小型携帯機器類や自動車部品の材料などにマグネシウム合金を利用する例が増加してきている。
しかし、マグネシウムおよびその合金は、塑性加工性に乏しいhcp構造(六方最密充填構造)を有するため、現在実用化されているマグネシウム合金製品は、ダイカスト、チクソモールド法などの射出成形を行なう鋳造法により製造されたものが主流である。しかしながら、かかる射出成形による鋳造法には、以下の問題がある。
1.引張強さ、延性、靱性などの機械的特性が低い。
2.金型に溶湯を導入するための湯道など、成形品に対して不要な部分が多く、材料歩留まりが悪い。
3.成形時の気泡巻き込みなどにより、成形品内部に巣が発生して、成形後に熱処理できない場合がある。
4.湯じわ、引け巣、バリなどの鋳造欠陥があるため、修正作業または除去作業が必要になる。
5.金型に塗布した離型剤が成形品に付着するため、その除去作業が必要である。
6.生産設備が高価であり、上記の不要な部分、修正作業、または除去作業などにより、製造コストが高い。
一方、鋳造により得られた素材に圧延、鍛造などの塑性加工を施した展伸材は鋳造材よりも機械的特性に優れる。しかし、マグネシウム合金は、上記のように塑性加工性に劣るため、上記の塑性加工を、マグネシウム合金を加熱して再結晶温度よりも高い温度で熱間圧延することが検討されている。たとえば、国際公開第2006/003899号(特許文献1)および特開2012−122112号公報(特許文献2)は、一対のロール(双ロール)を具える可動鋳型に溶湯を供給して連続鋳造を行なうとともに熱間圧延を行なうことにより圧延材を得ることを開示する。
国際公開第2006/003899号 特開2012−122112号公報
国際公開第2006/003899号(特許文献1)および特開2012−122112号公報(特許文献2)においては、双ロールを用いて連続的に鋳造および圧延を行なうことにより得られるマグネシウム合金圧延材は、表面品質が高いが、再結晶温度以下における延性が低いという問題点があった。
そこで、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材およびその製造方法ならびにプレス成型品を提供することを目的とする。
本発明のある態様にかかるマグネシウム合金圧延材は、0.3質量%以上3質量%未満のアルミニウムと、0.1質量%以上1.5質量%以下のカルシウム、ストロンチウム、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のマンガン、バナジウム、およびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成され、マグネシウム合金圧延材の中央部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(0002)の強度比Rcと、マグネシウム合金圧延材の端部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(0002)の強度比Reと、を用いて、ΔR=|Rc−Re|/(Rc+Re)/2で定義される強度比差異ΔRが0.5以下である。
本発明の別の態様にかかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、0.3質量%以上3質量%未満のアルミニウムと、0.1質量%以上1.5質量%以下のカルシウム、ストロンチウム、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のマンガン、バナジウム、およびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成されるマグネシウム合金を鋳造することにより鋳造材を得る鋳造工程と、鋳造材を圧延することにより圧延材を得る圧延工程と、圧延材を熱処理する圧延後熱処理工程と、を含む。
本発明のさらに別の形態にかかるプレス成型品は、上記の態様にかかるマグネシウム合金圧延材を用いたものである。
上記によれば、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材およびその製造方法ならびにプレス成型品が提供される。
本発明のある態様にかかるマグネシウム合金圧延材における第1析出物の一例を示す概略図である。 本発明のある態様にかかるマグネシウム合金圧延材における第2析出物の一例を示す概略平面図である。 本発明のある態様にかかるマグネシウム合金圧延材における結晶粒の結晶方位の配向の一例を示す透視概略図である。 本発明の別の態様にかかるマグネシウム合金圧延材の製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明のある態様にかかるマグネシウム合金圧延材における(0001)面の規格化結晶配向強度の最大値とエリクセン値との関係を示すグラフである。
<本発明の実施形態の説明>
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明のある実施形態にかかるマグネシウム合金圧延材は、0.3質量%以上3質量%未満のアルミニウムと、0.1質量%以上1.5質量%以下のカルシウム、ストロンチウム、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のマンガン、バナジウム、およびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成され、マグネシウム合金圧延材の中央部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(0002)の強度比Rcと、マグネシウム合金圧延材の端部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(0002)の強度比Reと、を用いて、ΔR=|Rc−Re|/(Rc+Re)/2で定義される強度比差異ΔRが0.5以下である。本実施形態のマグネシウム合金圧延材は、所定の化学組成と均質な結晶配向性を有していることから、後述する第1析出物および/または第2析出物が均一な析出状態で形成されやすく、圧延材全体に亘って再結晶温度以下で高い延性を有する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材は、(0001)面に一致または平行に配置される線状または面状の第1析出物を含むことができる。かかるマグネシウム合金圧延材は、第1析出物により、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべりを誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材において、第1析出物は、アルミニウムおよび第1類元素を含むことができる。第1析出物は、アルミニウムおよび第1類元素を含むことにより、(0001)面に一致または平行に配置される線状または面状の形状を取りやすい。このため、かかるマグネシウム合金圧延材は、(0001)面に一致または平行に配置される線状の第1析出物により、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべりを誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材は、アルミニウムおよび第2類元素を含む第2析出物をさらに含み、任意に特定される平面において、第2析出物の等面積円の直径を1nm以上100nm以下とし、第2析出物の面積占有率を0.5%以上5.0%以下とすることができる。かかるマグネシウム合金圧延材は、好適な大きさおよび好適な面積占有率の第2析出物により、結晶粒の粗大化が抑制されるため、再結晶温度以下で高い延性を有する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材は、マグネシウム合金圧延材を12%引張変形したときの任意に特定される平面における双晶の面積占有率を、8%以下とすることができる。かかるマグネシウム合金圧延材は、破壊の起点となる双晶の面積占有率が低いため、再結晶温度以下で高い延性を有する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材において、ランクフォード値(r値)を0.3以上2.5以下とすることができる。かかるマグネシウム合金圧延材は、好適な範囲の低いr値を有しているため、良好な深絞り性、良好な張出し性および良好な曲げ性を有する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材は、電子線後方散乱回折(以下、EBSDともいう)法による結晶粒の結晶方位分布測定において、球面調和関数法により算出された(0001)面の規格化結晶配向強度を8以下とすることができる。かかるマグネシウム合金圧延材は、規格化結晶配向強度が8以下の低い結晶配向性を有するため、エリクセン値が高くなり、良好な深絞り性、良好な張出し性および良好な曲げ性を有する。
本発明の別の実施形態にかかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、0.3質量%以上3質量%未満のアルミニウムと、0.1質量%以上1.5質量%以下のカルシウム、ストロンチウム、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のマンガン、バナジウム、およびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成されるマグネシウム合金を鋳造することにより鋳造材を得る鋳造工程と、鋳造材を圧延することにより圧延材を得る圧延工程と、圧延材を熱処理する圧延後熱処理工程と、を含む。本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法は、マグネシウム合金の圧延および熱処理により形成される第1析出物により、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべりを誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法は、鋳造工程後、圧延工程前に、鋳造材を熱処理する圧延前熱処理工程をさらに含むことができる。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、圧延前熱処理工程により形成される第2析出物により、マグネシウム合金圧延材の結晶粒の粗大化が抑制されるため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延後熱処理工程における熱処理温度を200℃以上400℃以下とすることができる。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、熱処理温度が200℃以上400℃以下の圧延後熱処理工程において、鋳造工程および圧延工程の少なくともいずれかの工程においてマグネシウム合金圧延材に形成された第1析出物を保持したまま、鋳造工程および圧延工程の少なくともいずれかの工程において発生した歪みが除去されるため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延後熱処理工程における熱処理温度を400℃より高く600℃以下とすることができる。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、鋳造工程および圧延工程の少なくともいずれかの工程においてマグネシウム合金圧延材に好ましくない析出物が形成され歪みが発生しても、熱処理温度が400℃より高く600℃以下の圧延後熱処理工程においてマグネシウム合金圧延材の好ましくない析出物および歪みが除去されるとともに、(0001)面の結晶配向強度が低下するため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
また、圧延後熱処理工程における熱処理温度が400℃より高く600℃以下のマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延後熱処理工程後に、熱処理された圧延材をさらに150℃以上250℃以下で熱処理する時効熱処理工程をさらに含むことができる。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、鋳造工程および圧延工程の少なくともいずれかの工程においてマグネシウム合金圧延材に好ましくない析出物が形成され歪みが発生しても、熱処理温度が400℃より高く600℃以下の圧延後熱処理工程においてマグネシウム合金圧延材の好ましくない析出物および歪みが除去されるとともに、(0001)面の結晶配向強度が低下し、その後の時効熱処理工程においてマグネシウム合金圧延材に形成される第1析出物により、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべりを誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
ここで、時効熱処理工程において、第1析出物の形成を促進させる観点から、時効熱処理工程前における圧延後熱処理工程直後のマグネシウム合金圧延材の冷却速度は、60℃/分以上が好ましく、6000℃/分以上がより好ましい。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延工程における総圧下率を10%以上80%以下とすることができる。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、総圧下率を10%以上80%以下とすることにより、結晶粒の結晶方位の配向性を低くして、エリクセン値が高く、良好な深絞り性、良好な張出し性および良好な曲げ性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
本発明のさらに別の実施形態にかかるプレス成型品は、上記の実施形態にかかるマグネシウム合金圧延材を用いたものである。本実施形態のプレス成型品は、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材を用いてプレス成形したものであるため、従来のマグネシウム合金圧延材の温間プレス加工温度よりも低い温度で成形することができ、熱収縮による寸法変化が少なく、加熱による表面酸化が抑えられ表面性状に優れる利点がある。さらに、シリコン(Si)を配合する特殊な高温用潤滑油を必要とせず、汎用の潤滑油を使用できるため、成形後の表面へのSiの付着がなく、洗浄性にも優れる。
<本発明の実施形態の詳細>
[実施形態1:マグネシウム合金圧延材]
図1および図2を参照して、本発明のある実施形態にかかるマグネシウム合金圧延材1は、0.3質量%以上3質量%未満のアルミニウム(Al)と、0.1質量%以上1.5質量%以下のカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のマンガン(Mn)、バナジウム(V)、およびジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成され、マグネシウム合金圧延材の中央部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(0002)の強度比Rcと、マグネシウム合金圧延材の端部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(0002)の強度比Reと、を用いて、ΔR=|Rc−Re|/(Rc+Re)/2で定義される強度比差異ΔRが0.5以下である。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、所定の化学組成と均質な結晶配向性を有していることから、後で詳述する第1析出物および/または第2析出物が均一な析出状態で形成されやすく、圧延材全体に亘って再結晶温度以下で高い延性を有する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、0.3質量%以上3質量%未満のAlと、0.1質量%以上1.5質量%以下のCa、Sr、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のMn、V、およびZrからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成されている。
ここで、原子番号が57番から64番までのランタノイドとは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、およびガドリニウム(Gd)をいう。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1に含有されるAlは、第1類元素とともに第1析出物を形成しやすい観点から、0.3質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、Alが多すぎると粗大なAl−第1類元素化合物を形成しやすく第1析出物が減少する観点から、3質量%未満であり、1.5質量%以下が好ましく、1.2質量%以下がより好ましい。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1に含有される第1類元素は、それらの元素の合計が、Alとともに第1析出物を形成しやすい観点から、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、第1類元素が多すぎると粗大なAl−第1類元素化合物および/または粗大なMg−第1類元素化合物(特に、Mg−Ca化合物)が形成されてマグネシウム合金圧延材1の延性が阻害される観点から、1.5質量%以下であり、1.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましい。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1に含有される第2類元素は、それらの元素の合計が、Alとともに第2析出物を形成しやすい観点から、0.05質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、第2類元素が多すぎると粗大なAl−第2類元素化合物が形成されてマグネシウム合金圧延材1の延性が阻害される観点から、1.5質量%以下であり、1.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましい。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、上記のMg、第1類元素および第2類元素以外の残部がMgおよび不可避不純物であり、すなわち、大部分がMgからなる合金である。ここで、不可避不純物は、特に制限はなく、たとえば、シリコン(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などが挙げられ、マグネシウム合金圧延材1の耐食性が高い観点から、それらの不純物の合計が、0.15質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。特に、耐食性を高めるのに有害な不可避不純物であるFe、NiおよびCoの合計は、0.05質量%未満が好ましく、0.01質量%以下がより好ましい。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1に含有されるMg、Al、第1類元素、第2類元素および不可避不純物の種類および含有量は、ICP−OES(誘導結合プラズマ−発光分光)法、EPMA(電子プローブ微小分析)法などにより測定される。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、マグネシウム合金圧延材の中央部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(0002)の強度比Rc(すなわち、Rc=Ic(0002)/Ic(10-10))と、マグネシウム合金圧延材の端部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(0002)の強度比Re(すなわち、Re=Ie(0002)/Ie(10-10))と、を用いて、ΔR=|Rc−Re|/(Rc+Re)/2で定義される強度比差異ΔRが0.5以下である。ここで、マグネシウム合金圧延材の端部とは、マグネシウム合金圧延材の中央部から隣り合う方向が45°の等角度で伸びる8方向の端部のいずれかであって、強度比差異ΔRが最大となる端部を意味する。本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、均質な配向性を有する観点から、ΔRが、0.5以下であり、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.2以下である。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、上記のように、強度比差異ΔRが0.5以下と均質な結晶配向性を有し、さらに、0.3質量%以上3質量%未満のAlと、0.1質量%以上1.5質量%以下の第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下の第2類元素と、を含有しているため、マグネシウム合金圧延材の部位によらず再結晶温度以下で高い延性を有する。
図1に示すように、本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、結晶格子10CLが六角形柱状である六方晶系の結晶構造を有しており、(0001)面10cに一致または平行に配置される線状または面状の第1析出物を含むことが好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材1は、第1析出物11により、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべり((0001)面10c以外の面におけるすべり)を誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1に含まれることが好ましい第1析出物11は、極めて小さいナノ析出物である。第1析出物11は、線状または面状の形状をしており、厚さが0.2nm〜10nm程度であり、長さまたは等面積円の直径が5nm〜1000nm程度であり、GP(ギニエ・プレストン)ゾーンも含まれる。第1析出物11は、(0001)面10cに一致または平行に配置される。このため、第1析出物11を含むマグネシウム合金圧延材1は、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべりを誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有する。
第1析出物11がマグネシウム合金圧延材1に含まれることは、TEM(透過型電子顕微鏡)の回折スポットに<0001>方向に延びるストリーク(線状のコントラスト)が現れることにより、確認できる。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1において、第1析出物11は、Alおよび第1類元素を含むことが好ましく、Alおよび第1類元素で形成されていることがより好ましい。第1析出物11は、Alおよび第1類元素を含むことにより、(0001)面10cに一致または平行に配置される線状または面状の形状を取りやすい。このため、かかるマグネシウム合金圧延材1は、(0001)面10cに一致または平行に配置される線状の第1析出物により、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべりを誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有する。ここで、第1析出物11の化学組成は、EDS(エネルギー分散型X線分析)、3DAP(3次元アトムプローブ)により分析する。
図2に示すように、本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、Alおよび第2類元素を含む第2析出物12を含むことが好ましく、任意に特定される平面において、第2析出物12の等面積円の直径が1nm以上100nm以下であることが好ましく、第2析出物12の面積占有率が0.5%以上5.0%以下であることが好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材1は、好適な大きさおよび面積占有率の第2析出物12により、結晶粒10の粗大化が抑制されるため、再結晶温度以下で高い延性を有する。かかる第2析出物12は、TEMおよびSEMにより観察できる。第2析出物12は、結晶粒10の粒界10bおよび内部に位置する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1に含まれることが好ましい第2析出物12は、Alおよび第2類元素を含み、マグネシウム合金圧延材1の結晶粒の粗大化を抑制する観点から、Alおよび第2類元素で形成されていることが好ましい。かかる第2析出物12により、マグネシウム合金圧延材1の結晶粒の粗大化が抑制されるため、結晶粒の粒径が小さくなり、マグネシウム合金圧延材1は、再結晶温度以下で高い延性を有する。ここで、第2析出物12の化学組成は、EDS、3DAPにより分析する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、任意に特定される平面において、第2析出物12の等面積円の直径が、1nm以上100nm以下が好ましく、20nm以上70nm以下がより好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材1は、好適な大きさの第2析出物により、結晶粒の粗大化が抑制されるため、再結晶温度以下で高い延性を有する。ここで、第2析出物12の等面積円の直径とは、第2析出物12の面積と同じ面積を有する円の直径をいう。また、小さ過ぎる第2析出物12は、熱処理時に粒界移動の抵抗とならず、結晶粒の粗大化抑制効果が小さい観点から、第2析出物12の等面積円の直径は、1nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。また、大き過ぎる第2析出物12は、変形時の破壊起点となる観点から、第2析出物12の等面積円の直径は、100nm以下が好ましく、70nm以下がより好ましい。
なお、第2析出物12は、特に限定はされないが、その形状が塊状または棒状である場合が多い。また、第2析出物12は、特に限定はされないが、第1析出物11に比べて、厚さが大きく、全体も大きい場合が多い。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、任意に特定される平面において、第2析出物12の面積占有率が、0.5%以上5.0%以下が好ましく、1.5%以上4.0%以下がより好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材1は、好適な面積占有率の第2析出物12により、結晶粒の粗大化が抑制されるため、再結晶温度以下で高い延性を有する。ここで、第2析出物12の面積占有率が小さ過ぎると、熱処理時に粒界移動の抵抗とならず、結晶粒の粗大化抑制効果が小さい観点から、第2析出物12の面積占有率は、0.5%以上が好ましく、1.5%以上がより好ましい。また、第2析出物12の面積占有率が大きすぎると、変形時の破壊を生じやすい観点から、第2析出物12の面積占有率は、5.0%以下が好ましく、4.0%以下がより好ましい。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、マグネシウム合金圧延材を12%引張変形したときの任意に特定される平面における双晶の面積占有率が、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材1は、破壊の起点となる双晶の面積占有率が低いため、再結晶温度以下で高い延性を有する。双晶の面積占有率は、小さいほど好ましく、理想的には0%(すなわち双晶が形成されないこと)が望ましい。現在のところ、下限値は2.0%程度である。ここで、マグネシウム合金圧延材を12%引張変形したときの任意に特定される平面における双晶の面積占有率は、引張試験機により12%引張変形させた後の任意に特定される平面における双晶をEBSD(電子線後方散乱回折)法により測定し、その平面の全面積に対する双晶の面積の百分率を画像処理装置により測定する。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、r値(ランクフォード値)が、0.3以上2.5以下が好ましく、0.5以上2.0以下がより好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材1は、好適な範囲の低いr値を有しているため、良好な深絞り性、良好な張出し性および良好な曲げ性を有する。ここで、r値とは、試験片の長さ方向に一様な伸びを与えたときの厚さ方向の対数歪みεtに対する幅方向の対数歪みεwの比εw/εtをいう。また、r値が小さ過ぎると、マグネシウム合金圧延材の深絞り、張出しおよび/または曲げ時に、圧延材の厚さが減り過ぎて圧延材が破壊する観点から、r値は、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。また、r値が大き過ぎると、マグネシウム合金圧延材の張出しおよび/または曲げ時に、圧延材の厚さが減らないため圧延材面内に応力集中が生じ破壊する観点から、r値は、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。ここで、r値は、引張試験機に付属したr値測定装置により測定する。
図3を参照して、本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、結晶粒の結晶方位の配向性が低いことが好ましく、EBSD法による結晶粒10の結晶方位分布測定において、球面調和関数法により算出された(0001)面10cの規格化結晶配向強度が、8.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、3.6以下がさらに好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、総圧下率を10%以上80%以下とすることにより、結晶粒の結晶方位の配向性を低くして、エリクセン値が高く、良好な深絞り性、良好な張出し性および良好な曲げ性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
EBSD法とは、SEM(走査型電子顕微鏡)内で試料表面の1点に電子線を入射させ、生じる電子線後方散乱回折図形から試料を形成する個々の結晶粒の結晶方位を解析する手法である。EBSD法において用いられる試料表面は、特に制限はないが、圧延による結晶粒の結晶方位の配向性を評価しやすい観点から、圧延方向(以下、RD方向ともいう)および圧延される面の法線方向(以下、ND方向ともいう)に垂直な方向を幅方向(以下、TD方向ともいう)とした場合、TD方向に垂直なマグネシウム合金圧延材の断面、またはND方向に垂直なマグネシウム合金圧延材の表面または断面が好ましい。
球面調和関数法とは、EBSD法により測定した結晶方位の分布に一致する関数形を級数の形で探すものであり、結晶方位の解析においては一般化球面調和関数を用いて展開される。一般化球面調和関数は、結晶の3次元の回転角と配向強度の関係を表す関数であり、(0001)面などで表される結晶面はすべて3次元の回転角で表現できる。(0001)面の規格化結晶配向強度とは、(0001)面に相当する結晶の3次元の回転角における結晶配向強度を一般化球面調和関数を用いて計算し、一般化球面調和関数で表された結晶回転角と配向強度の関係において、全強度の分布の積分値が1となるように規格化されたときの(0001)面の結晶配向強度をいう。かかる規格化結晶配向強度は、結晶粒子に配向性が全くなく完全にランダムである場合は1となり、結晶粒子の配向性が極めて高い(たとえば、マグネシウム合金の温間圧延材の)場合は20程度まで高くなる。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1は、後述のように、少なくとも鋳造工程、圧延工程、および圧延後熱処理工程をこの順に経て製造されるため、圧延工程後には(0001)面10cの規格化結晶配向強度が8より大きく高い配向性を示す場合があるが、圧延後熱処理工程後には(0001)面10cの規格化結晶配向強度が8以下の低い配向性を示し、結晶粒の結晶方位のランダム化が見られる。このような結晶粒の結晶方位のランダム化のメカニズムは、明確にはされていないが、以下の少なくともいずれかに起因するものと推論される。
鋳造組織起因説として、鋳造時点で結晶粒の結晶方位が比較的ランダムな配向となっており、ランダムな配向を有する結晶粒が圧延後も残留し、これが圧延後熱処理により再結晶してランダムな配向を有する結晶粒が形成されると推論される。鋳造時点でランダムな配向となる原因は不明である。析出物起因説として、圧延の際に、上記の第1析出物11などの析出物の存在により誘起される非(0001)面すべりがそれらの析出物の近傍で生じるため、かかる非(0001)面すべりの転位が蓄積した部分が圧延後熱処理により再結晶してランダムな配向を有する結晶粒が形成されると推論される。粒界への濃度偏析起因説として、第1類元素の添加により、結晶粒の粒界近傍に第1類元素が高い濃度で偏析して、これが圧延後熱処理による再結晶の機構を、結晶方位変化の小さい不連続型から結晶方位変化の大きい連続型に変化させることによりランダムな配向を有する結晶粒が形成されると推論される。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材1の形状は、特に制限はないが、再結晶温度以下で高い延性を有する観点から、板状であることが好ましい。
[実施形態2:マグネシウム合金圧延材の製造方法]
図4を参照して、本発明の別の実施形態にかかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、0.3質量%以上3質量%未満のAlと、0.1質量%以上1.5質量%以下のCa、Sr、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のMn、V、およびZrからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有するマグネシウム合金を鋳造することにより鋳造材を得る鋳造工程S10と、鋳造材を圧延することにより圧延材を得る圧延工程S20と、圧延材を熱処理する圧延後熱処理工程S30と、を含む。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法は、所定の化学組成を有するマグネシウム合金材の圧延および熱処理により、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。特に、所定の化学組成を有するマグネシウム合金材の圧延および熱処理により、第1析出物が形成されやすく、かかる第1析出物により、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべり((0001)面以外の面におけるすべり)を誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
(マグネシウム合金)
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法に用いられるマグネシウム合金は、0.3質量%以上3質量%未満のAlと、0.1質量%以上1.5質量%以下のCa、Sr、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のMn、V、およびZrからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成される。かかる化学組成のマグネシウム合金を用いることにより、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。マグネシウム合金に含有されるMg、Al、第1類元素、および第2類元素については、実施形態1のマグネシウム合金圧延材に含有されるMg、Al、第1類元素、および第2類元素と同じであるため、ここでは繰り返さない。
(鋳造工程)
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法に含まれる鋳造工程S10において、マグネシウム合金を鋳造することにより鋳造材を得る鋳造方法は、特に制限はないが、マグネシウム合金の溶湯の急冷により結晶粒を小さくして微細な第1析出物を形成しやすい観点から、双ロールにより鋳造する方法が好ましい。
(圧延前熱処理工程)
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法は、鋳造工程S10後、圧延工程S20前に、鋳造材を熱処理する圧延前熱処理工程S13をさらに含むことが好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、圧延前熱処理工程により形成される第2析出物により、マグネシウム合金圧延材の結晶粒の粗大化が抑制されるため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
圧延前熱処理工程S13において、熱処理方法は、特に制限はないが、量産性が高い観点から、バッチ式熱処理法、連続式熱処理法などが好ましい。また、熱処理雰囲気は、特に制限はないが、生産コストが低い観点から、大気雰囲気、窒素雰囲気などが好ましい。熱処理温度は、特に制限はないが、第2析出物を形成する観点から、400℃より高く600℃以下が好ましく、420℃以上520℃以下がより好ましい。
(圧延方法)
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法に含まれる圧延工程S20において、鋳造材を圧延することにより圧延材を得る圧延方法は、特に制限はないが、生産性が高い観点から、リバース圧延法、タンデム圧延法などが好ましい。また、圧延温度は、特に制限はないが、圧延工程S20中に割れを生じさせない観点から、250℃以上450℃以下が好ましく、300℃以上380℃以下がより好ましい。ここで、圧延は、1回以上、複数回であってもよい。圧延工程S20中に割れを生じさせない観点から、圧延は、1回ではなく複数回に分けて行うことが好ましい。また、一回の圧延あたりの圧下率は、特に制限はないが、圧延工程S20中に割れを生じさせない観点から、10%以上40%未満が好ましく、20%以上30%以下がより好ましい。ここで、一回の圧延あたりの圧下率PR(%)は、マグネシウム合金圧延材のその一回の圧延について圧延前の厚さtOおよび圧延後の厚さtPを用いて、PR=100×(tO−tP)/tOで定義される。
(圧延後熱処理工程)
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法に含まれる圧延後熱処理工程S30において、熱処理方法は、特に制限はないが、量産性が高い観点から、バッチ式熱処理法、連続式熱処理法などが好ましい。また、熱処理雰囲気は、特に制限はないが、生産コストが低い観点から、大気雰囲気、窒素雰囲気などが好ましい。
ここで、圧延後熱処理工程S30における熱処理温度は、200℃以上400℃以下が好ましく、300℃以上380℃以下がより好ましい。かかる200℃以上400℃以下の熱処理温度の圧延後熱処理工程S30において、鋳造工程S10および圧延工程S20の少なくともいずれかの工程においてマグネシウム合金圧延材に形成された第1析出物を保持したまま、鋳造工程S10および圧延工程S20の少なくともいずれかの工程において発生した歪みが除去されるため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
また、圧延後熱処理工程S30における熱処理温度は、400℃より高く600℃以下が好ましく、450℃以上520℃以下がより好ましい。鋳造工程S10および圧延工程S20の少なくともいずれかの工程においてマグネシウム合金圧延材に好ましくない析出物が形成され歪みが発生しても、熱処理温度が400℃より高く600℃以下の圧延後熱処理工程S30において、マグネシウム合金圧延材の好ましくない析出物および歪みが除去されるとともに、(0001)面の結晶配向強度が低下するため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
(時効熱処理工程)
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延後熱処理工程S30における熱処理温度を400℃より高く600℃以下とし、圧延後熱処理工程S30後に、熱処理された圧延材をさらに150℃以上250℃以下で熱処理する時効熱処理工程S33をさらに含むことが好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、熱処理温度が400℃より高く600℃以下の圧延後熱処理工程S30においてマグネシウム合金圧延材の好ましくない析出物および歪みが除去され、その後の時効熱処理工程S33においてマグネシウム合金圧延材に形成される第1析出物により、双晶の形成が抑制されるとともに非(0001)面すべりを誘起するため、再結晶温度以下で高い延性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。
時効熱処理工程S33における熱処理温度は、第1析出物を形成しやすく観点から、150℃以上250℃以下が好ましく、175℃以上225℃以下がより好ましい。また、時効熱処理工程S33において第1析出物の形成を促進させる観点から、時効熱処理工程前における圧延後熱処理工程直後のマグネシウム合金圧延材の冷却速度は、60℃/分以上が好ましく、6000℃/分以上がより好ましい。
本実施形態のマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延工程における総圧下率は、10%以上80%以下が好ましく、20%以上60%以下がより好ましい。かかるマグネシウム合金圧延材の製造方法は、総圧下率を10%以上80%以下とすることにより、結晶粒の結晶方位の配向性を低くして、エリクセン値が高く、良好な深絞り性、良好な張出し性および良好な曲げ性を有するマグネシウム合金圧延材が得られる。ここで、総圧下率TPR(%)は、マグネシウム合金圧延材の全圧延について最初の圧延前の厚さtF0および最後の圧延後の厚さtFPを用いて、TPR=100×(tF0−tFP)/tF0で定義される。
[実施形態3:プレス成型品]
本発明のさらに別の実施形態にかかるプレス成型品は、上記の実施形態にかかるマグネシウム合金圧延材を用いたものである。本実施形態のプレス成型品は、再結晶温度以下で高い延性を有する実施形態1のマグネシウム合金圧延材を用いてプレス成形したものであるため、従来のマグネシウム合金材の温間プレス加工温度よりも低い温度で成形することができ、熱収縮による寸法変化が少なく、加熱による表面酸化が抑えられ表面性状に優れる利点がある。さらに、Siを配合する特殊な高温用潤滑油を必要とせず、汎用の潤滑油を使用できるため、成形後の表面へのSiの付着がなく、洗浄性にも優れる。
本実施形態のプレス成型品は、実施形態1のマグネシウム合金圧延材を用いてプレス成形したものであれば特に制限はなく、電子機器筐体、自動車外板、産業用機器部品などが挙げられる。
(実施例1)
1.鋳造
1.66質量%のAl、0.41質量%のCa、および0.45質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.02質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(以下、第1マグネシウム合金ともいう)のサンプルIを、溶解した後、双ロールにより鋳造して鋳造材を得た。溶解した溶湯の温度は700℃、双ロールの回転速度は2m/分とし、双ロール出口における鋳造材の温度は200℃であり、得られた鋳造材の厚さは4.1mmであった。得られた鋳造材を6等分に分割した。
2.圧延前熱処理
6等分された鋳造材のうち、2つの鋳造材については、圧延処理前熱処理を行なわなかった(サンプルI−A)。2つの鋳造材については、電気炉を用いて大気雰囲気中450℃で1時間の圧延前熱処理を行なった後、25℃の循環水冷により60000℃/分(1000℃/秒)の冷却速度で急冷した(サンプルI−B)。2つの鋳造材については、電気炉を用いて大気雰囲気中450℃で1時間の圧延前熱処理を行なった後、炉内冷却により0.5℃/分の冷却速度で徐冷した(サンプルI−C)。
3.圧延
上記の各2つのサンプルI−A、I−BおよびI−Cを、4段圧延機を用いて、350℃の温度で、6回の圧延により、厚さを4.1mmから1.0mmに圧延した。双ロールによるサンプルの送り速度は4m/分であり、1回の圧延あたりの圧下率は20%(6回の圧延の前後の総圧下率は75.6%)であった。
4.圧延後熱処理
上記の圧延後の各1つのサンプルI−A、I−BおよびI−Cを、電気炉を用いて大気雰囲気中350℃で1時間の圧延後熱処理Pを行なった。かかる圧延後熱処理Pにより、上記各1つのサンプルI−A、I−BおよびI−Cを、焼鈍した(サンプルI−A−P、I−B−PおよびI−C−P)。
上記の圧延後の別の各1つのサンプルI−A、I−BおよびI−Cを、電気炉を用いて大気雰囲気中450℃で1時間の圧延後熱処理Qを行ない、さらに、25℃の循環水冷により60000℃/分(1000℃/秒)の冷却速度で急冷し、25℃で1分間保持した。かかる圧延後熱処理Qにより、上記各1つのサンプルI−A、I−BおよびI−Cを、溶体化した後、電気炉を用いて大気雰囲気中200℃で30分間時効熱処理した(サンプルI−A−Q、I−B−QおよびI−C−Q)。
こうして得られたマグネシウム合金圧延材のサンプルI−A−P、I−B−P、I−C−P、I−A−Q、I−B−QおよびI−C−Qの結晶粒径(μm)、強度比差異ΔR、第1析出物の存在確認、第2析出物の等面積円の直径(nm)、第2析出物の面積占有率(%)、双晶の面積占有率(%)、(0001)面の規格化結晶配向強度、r値、伸び率(%)、エリクセン値(mm)、および限界絞り比を、表1にまとめた。
ここで、マグネシウム合金圧延材の各サンプルについて、結晶粒径(μm)は、EBSD(電子線後方散乱回折)法により、圧延方向に平行な断面における結晶粒径の断面積を測定し、その等面積円の直径により算出した。強度比差異ΔRは、各サンプルの中央部と中央部から隣り合う方向が45°の等角度で伸びる8方向の端部において、(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度および(0002)面に由来するX線回折ピーク強度を測定し、中央部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(0002)の強度比Rcと、8つの端部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(0002)の強度比Reとから、ΔR=|Rc−Re|/(Rc+Re)/2で定義される最も大きい強度比差異ΔRを算出した。結果を表1にまとめた。
また、マグネシウム合金圧延材の各サンプルについて、第1析出物の存在確認は、TEM(透過型電子顕微鏡)の回折スポットにおける<0001>方向に延びるストリークの発現により行なった。第2析出物の等面積円の直径(nm)は、SEM(走査型電子顕微鏡)像の画像処理により、圧延方向に平行な断面における第2析出物の断面積を測定し、その等面積円の直径を算出した。第2析出物の面積占有率(%)は、SEM像の画像処理により、圧延方向に平行な断面における全断面積および第2析出物の断面積を測定し、全断面積に対する第2析出物の断面積の百分率を算出した。双晶の面積占有率(%)は、EBSD法により得られた粒界性格分布図における双晶部分の画像処理により、圧延方向に平行な断面における測定視野面積および双晶の断面積を測定し、測定視野面積に対する双晶の断面積の百分率を算出した。(0001)面の規格化結晶配向強度は、圧延方向に平行な断面においてEBSD法により測定した結晶粒の結晶方位分布から球面調和関数法により算出した。結果を表1にまとめた。
また、マグネシウム合金圧延材の各サンプルについて、r値は、室温(25℃)において、引張試験機により、標点間距離50mm×幅12.5mm×厚さ1mmのサンプルを圧延方向に5mm/分で引張ったときに、サンプルの幅方向の対数歪みεwおよび長さ方向の対数歪みεlをr値測定装置により測定し、厚さ方向の対数歪みεtをεt=−(εw+εl)の関係式から算出し、厚さ方向の対数歪みεtに対する幅方向の対数歪みεwの比εw/εtを算出した。伸び率(%)は、室温(25℃)において、引張試験機により、標点間距離50mm×幅12.5mm×厚さ1mmのサンプルを圧延方向に5mm/分で引張ったときに、破断するときの伸び率(引張前の長さL0に対する、引張後の長さLから引張前の長さL0を引いた差ΔL=L−L0の百分率100×(ΔL)/L0)を算出した。エリクセン値(mm)は、JIS Z2247:2006のエリクセン試験方法に準拠して室温(25℃)および150℃の雰囲気温度で測定した。絞り比は、室温(25℃)における直径4.4〜6.4cm×厚さ1mmのサンプルの深絞り試験において直径dが40mmの円筒状のパンチをサンプルに押し込み破断することなく絞り抜けるサンプルの最大の直径Dを測定し、パンチの直径dに対するサンプルの最大の直径Dの比を算出した。結果を表1にまとめた。
Figure 2017078220
(実施例2)
1.10質量%のAl、0.41質量%のCa、および0.67質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.015質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(以下、第2マグネシウム合金ともいう)のサンプルIIを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マグネシウム合金圧延材のサンプルII−A−P、II−B−P、II−C−P、II−A−Q、II−B−QおよびII−C−Qを得た。得られたマグネシウム合金圧延材のサンプルII−A−P、II−B−P、II−C−P、II−A−Q、II−B−QおよびII−C−Qの結晶粒径(μm)、強度比差異ΔR、第1析出物の存在確認、第2析出物の等面積円の直径(nm)、第2析出物の面積占有率(%)、双晶の面積占有率(%)、(0001)面の規格化結晶配向強度、r値、伸び率(%)、エリクセン値(mm)、および限界絞り比を、実施例1と同様にして算出し、表2にまとめた。
Figure 2017078220
(比較例1)
9.0質量%のAl、1.0質量%のZn、および0.3質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.005質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(以下、AZ91合金ともいう)のサンプルRI、6.0質量%のAl、1.0質量%のZn、および0.3質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.005質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(以下、AZ61合金ともいう)のサンプルRII、ならびに3.0質量%のAl、1.0質量%のZn、および0.3質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.005質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(以下、AZ31合金ともいう)のサンプルRIIIを用い、表3に示す条件において圧延前熱処理、圧延処理、圧延後熱処理、時効熱処理を行い、マグネシウム合金圧延材のサンプルRI−P、RII−P、RIII−P、およびRI−Qを得た。得られたマグネシウム合金圧延材のサンプルRI−P、RII−P、RIII−P、およびRI−Qの結晶粒径(μm)、強度比差異ΔR、第1析出物の存在確認、第2析出物の等面積円の直径(nm)、第2析出物の面積占有率(%)、双晶の面積占有率(%)、(0001)面の規格化結晶配向強度の最大値、r値、伸び率(%)、エリクセン値(mm)、および限界絞り比を、実施例1と同様にして算出し、表3にまとめた。
Figure 2017078220
表1〜表3から明らかなように、実施例1および2のマグネシウム合金圧延材は、比較例1のマグネシウム合金圧延材に比べて、25℃における伸び率および限界絞り比、ならびに25℃および150℃におけるエリクセン値がいずれも高く、25℃におけるr値が低く、再結晶温度以下で高い延性を有していた。
さらに、表1〜表3のサンプルI−A−P、I−B−P、I−C−P、I−A−Q、I−B−Q、I−C−Q、II−B−P、II−B−Q、およびRI−Pについて、規格化結晶配向強度の最大値とエリクセン値との関係を図5に示した。図5に示すように、規格化結晶配向強度が8以下のマグネシウム合金圧延材は、エリクセン値が、25℃で3以上、150℃で5以上と高くなり、高い延性を有することがわかった。
(実施例3)
1.鋳造
1.10質量%のAl、0.41質量%のCa、および0.67質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.015質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(第2マグネシウム合金)のサンプルIIを、溶解した後、双ロールにより鋳造して鋳造材を得た。溶解した溶湯の温度は700℃、双ロールの回転速度は2m/分とし、双ロール出口における鋳造材の温度は200℃であり、得られた鋳造材の厚さは4.1mmであった。得られた鋳造材を4等分に分割して4サンプルとした。
2.圧延前熱処理
上記の4サンプルについて、電気炉を用いて大気雰囲気中450℃で1時間の圧延前熱処理を行なった後、25℃の循環水冷により60000℃/分(1000℃/秒)の冷却速度で急冷した。
3.圧延
上記の4サンプルのうちの3つのサンプル(II−B−36、II−B−59およびII−B−68)を、4段圧延機を用いて、350℃の温度で、表4に示す条件で、双ロールを用いて圧延した。双ロールによるサンプルの送り速度は4m/分であった。圧延後の3つのサンプルおよび圧延しなかった残りの1つのサンプル(II−B−0)について、実施例1と同様にして(0001)面の規格化結晶配向強度を算出した。結果を表4にまとめた。
4.圧延後熱処理および時効熱処理
上記の圧延後の3つのサンプルについて、電気炉を用いて表4に示す条件で圧延後熱処理および時効熱処理を行なった。圧延後熱処理後および時効熱処理後のの上記3つのサンプルについて、実施例1と同様にして、(0001)面の規格化結晶配向強度を算出した。結果を表4にまとめた。
Figure 2017078220
表4から明らかなように、第2マグネシウム合金を用いた圧延前熱処理工程、圧延工程、圧延後熱処理工程および時効熱処理工程を経るマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延工程における総圧下率を10%以上80%以下としたことにより、(0001)面の規格化結晶配向強度は、圧延後では6.7以下であったものが圧延後熱処理後および時効熱処理後では4.3以下に低減し、結晶粒の配向性が低いマグネシウム合金圧延材が得られた。また、圧延工程における総圧下率を20%以上60%以下としたことにより、(0001)面の規格化結晶配向強度は、圧延後では6.7以下であったものが圧延後熱処理後および時効熱処理後では3.6以下に低減し、結晶粒の配向性が低いマグネシウム合金圧延材が得られた。
(実施例4)
3つのサンプルとしたこと、圧延前熱処理工程を行なわなかったこと以外は、実施例3と同様にして、マグネシウム合金圧延材を得た。実施例3と同様にして、圧延工程後、圧延後熱処理後および時効熱処理後の規格化結晶配向強度を算出した。結果を表5にまとめた。
Figure 2017078220
表5から明らかなように、第2マグネシウム合金を用いた圧延工程、圧延後熱処理工程および時効熱処理工程を経る(すなわち、実施例3から圧延前熱処理工程を除いた)マグネシウム合金圧延材の製造方法においても、圧延工程における総圧下率を20%以上60%以下としたことにより、(0001)面の規格化結晶配向強度は、圧延後では13.1以下であったものが圧延後熱処理後および時効熱処理後では5.8以下に低減し、結晶粒の配向性が低いマグネシウム合金圧延材が得られた。
(実施例5)
1.10質量%のAl、0.41質量%のCa、および0.23質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.015質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(第3マグネシウム合金)のサンプルIIIを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、マグネシウム合金圧延材を得た。実施例3と同様にして、圧延工程後、圧延後熱処理後および時効熱処理後の規格化結晶配向強度を算出した。結果を表6にまとめた。
Figure 2017078220
表6から明らかなように、第3マグネシウム合金を用いた圧延前熱処理工程、圧延工程、圧延後熱処理工程および時効熱処理工程を経るマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延工程における総圧下率を10%以上80%以下としたことにより、(0001)面の規格化結晶配向強度は、圧延後では6.9以下であったものが圧延後熱処理後および時効熱処理後では5.1以下に低減し、結晶粒の配向性が低いマグネシウム合金圧延材が得られた。また、圧延工程における総圧下率を20%以上60%以下としたことにより、(0001)面の規格化結晶配向強度は、圧延後では7.3以下であったものが圧延後熱処理後および時効熱処理後では3.7以下に低減し、結晶粒の配向性が低いマグネシウム合金圧延材が得られた。
(実施例6)
2.80質量%のAl、1.00質量%のCa、および1.00質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.015質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(第4マグネシウム合金)のサンプルIVを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、マグネシウム合金圧延材を得た。実施例3と同様にして、圧延工程後、圧延後熱処理後および時効熱処理後の規格化結晶配向強度を算出した。結果を表6にまとめた。
表6から明らかなように、第4マグネシウム合金を用いた圧延前熱処理工程、圧延工程、圧延後熱処理工程および時効熱処理工程を経るマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延工程における総圧下率を20%以上60%以下としたことにより、(0001)面の規格化結晶配向強度は、圧延後では7.7以下であったものが圧延後熱処理後および時効熱処理後では4.9以下に低減し、結晶粒の配向性が低いマグネシウム合金圧延材が得られた。
(実施例7)
0.30質量%のAl、0.60質量%のCe、および1.20質量%のMnを含み、残部がMgおよび0.015質量%の不可避不純物で形成されているマグネシウム合金(第5マグネシウム合金)のサンプルVを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、マグネシウム合金圧延材を得た。実施例3と同様にして、圧延工程後、圧延後熱処理後および時効熱処理後の規格化結晶配向強度を算出した。結果を表6にまとめた。
表6から明らかなように、第5マグネシウム合金を用いた圧延前熱処理工程、圧延工程、圧延後熱処理工程および時効熱処理工程を経るマグネシウム合金圧延材の製造方法において、圧延工程における総圧下率を20%以上60%以下としたことにより、(0001)面の規格化結晶配向強度は、圧延後では6.5以下であったものが圧延後熱処理後および時効熱処理後では3.7以下に低減し、結晶粒の配向性が低いマグネシウム合金圧延材が得られた。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 マグネシウム合金圧延材
10 結晶粒
10b 粒界
10c (0001)面
10CL 結晶格子
11 第1析出物
12 第2析出物
S10 鋳造工程
S13 圧延前熱処理工程
S20 圧延工程
S30 圧延後熱処理工程
S33 時効熱処理工程
ND 法線方向
RD 圧延方向
TD 横方向

Claims (14)

  1. 0.3質量%以上3質量%未満のアルミニウムと、0.1質量%以上1.5質量%以下のカルシウム、ストロンチウム、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のマンガン、バナジウム、およびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成され、
    マグネシウム合金圧延材の中央部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ic(0002)の強度比Rcと、前記マグネシウム合金圧延材の端部における(10−10)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(10-10)に対する(0002)面に由来するX線回折ピーク強度Ie(0002)の強度比Reと、を用いて、
    ΔR=|Rc−Re|/(Rc+Re)/2
    で定義される強度比差異ΔRが0.5以下であるマグネシウム合金圧延材。
  2. (0001)面に一致または平行に配置される線状または面状の第1析出物を含む請求項1に記載のマグネシウム合金圧延材。
  3. 前記第1析出物は、アルミニウムおよび前記第1類元素を含む請求項2に記載のマグネシウム合金圧延材。
  4. アルミニウムおよび前記第2類元素を含む第2析出物を含み、
    任意に特定される平面において、前記第2析出物の等面積円の直径が、1nm以上100nm以下であり、前記第2析出物の面積占有率が、0.5%以上5.0%以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金圧延材。
  5. マグネシウム合金圧延材を12%引張変形したときの任意に特定される平面における双晶の面積占有率が、8%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金圧延材。
  6. ランクフォード値が0.3以上2.5以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマグネシウム合金圧延材。
  7. 電子線後方散乱回折法による結晶粒の結晶方位分布測定において、球面調和関数法により算出された(0001)面の規格化結晶配向強度が8以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のマグネシウム合金圧延材。
  8. 0.3質量%以上3質量%未満のアルミニウムと、0.1質量%以上1.5質量%以下のカルシウム、ストロンチウム、および原子番号が57番から64番までのランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第1類元素と、0.05質量%以上1.5質量%以下のマンガン、バナジウム、およびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素である第2類元素と、を含有し、残部がマグネシウムおよび不可避不純物から形成されるマグネシウム合金を鋳造することにより鋳造材を得る鋳造工程と、
    前記鋳造材を圧延することにより圧延材を得る圧延工程と、
    前記圧延材を熱処理する圧延後熱処理工程と、を含むマグネシウム合金圧延材の製造方法。
  9. 前記鋳造工程後、前記圧延工程前に、前記鋳造材を熱処理する圧延前熱処理工程をさらに含む請求項8に記載のマグネシウム合金圧延材の製造方法。
  10. 前記圧延後熱処理工程における熱処理温度が200℃以上400℃以下である請求項8または請求項9に記載のマグネシウム合金圧延材の製造方法。
  11. 前記圧延後熱処理工程における熱処理温度が400℃より高く600℃以下である請求項8または請求項9に記載のマグネシウム合金圧延材の製造方法。
  12. 前記圧延後熱処理工程後に、熱処理された前記圧延材をさらに150℃以上250℃以下で熱処理する時効熱処理工程をさらに含む請求項11に記載のマグネシウム合金圧延材の製造方法。
  13. 前記圧延工程における総圧下率が10%以上80%以下である請求項8から請求項12のいずれか1項に記載のマグネシウム合金圧延材の製造方法。
  14. 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のマグネシウム合金圧延材を用いたプレス成型品。
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