JP2004107712A - 成形性に優れる展伸用マグネシウム薄板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる圧延Mg合金板を圧延した後、熱処理を行い、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101(上バー)1)面のX線強度]が1.0〜3.5となり、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が100〜300MPaであり、平均結晶粒径が3〜100μmであることを特徴とする成形性に優れる展伸用マグネシウム薄板およびその製造方法
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性、特に冷間でのプレス成形性に優れた安価な展伸用マグネシウム薄板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、展伸用マグネシウム合金板は、厚み数mm〜数十mmの鋳造スラブ、あるいは押し出しによる厚板を繰り返し熱処理、熱間圧延、温間圧延することにより薄板とされている。このように繰り返し熱処理、熱間圧延、温間圧延等され製造される薄Mg合金板は、室温〜温間域以下の温度、すなわち冷間での加工性が劣ると共に、経済性の点でも割高であり、広く使用されるに至ってない。
【0003】
近年、Mg合金は、Alよりも比重が小さく、比剛性が高く、また、軽量化できることから安価で、成形性に優れたMg合金板の要求が高まっていて、従来では、プレス成形性に優れたマグネシウム合金が、いくつか公開されている(例えば特許文献1〜3参照。)。一つには、200℃で、温間でのプレス成形性を改善するための組成、圧延条件(総圧下率40〜70%)について公開されている(例えば特許文献1参照。)。また、マグネシウムにリチウムを添加し、hcp構造のα相中にbcc構造のβ相を1部生成させるあるいはβ単相にすることにより冷間での延性や曲げ加工性を改善しているものもある(例えば特許文献2〜3参照。)。リチウムは活性な金属であるため工業的に大量に取り扱うには安全上問題があるばかりでなく、高価でマグネシウムの耐食性を著しく低下させる。
【0004】
また、マグネシウムを熱間加工する方法についても提案されている(例えば特許文献4〜7参照。)。これらは、熱間での加工を効率的に行うことを目的としており、成形性の改善を目的としてない。結晶粒微細化を目的とし大ひずみを付与する加工法や条件を検討したものが公開されている(例えば特許文献6参照。)。結晶粒径は1μm以下に微細化されているが、成形性の改善については言及されてない。また、形状が限定されるあるいは熱間鍛造を繰り返し行う必要があり、薄肉のマグネシウム合金板は作製できない。
また、温間での加工は、生産性が劣り、加熱設備を必要とし、特殊な潤滑油が必要となり、また、その脱脂が必要となり、多くの問題点を伴う。
【0005】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報として次のものがある。
【特許文献1】
特開6−293944号公報(第2〜第3頁)
【特許文献2】
特開6−25788号公報(第2〜第3頁)
【特許文献3】
特開9−41066号公報(第2〜第3頁)
【特許文献4】
特開5−293529号公報(第2〜第3頁)
【特許文献5】
特開6−81089号公報(第2〜第4頁)
【特許文献6】
特開2000−271693号公報(第2〜第4頁)
【特許文献7】
特開2001−252703号公報(第2〜第4頁)
【0006】
【発明が解決すべき課題】
上記したように、加工性、特に冷間での張り出し加工性、曲げ性などのプレス成形性に優れ、かつ経済性の点でも安価な薄Mg合金板を提供することを技術的課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、下記のマグネシウム合金が加工性に優れていることを見いだした。
請求項1記載の展伸用マグネシウム薄板は、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる圧延Mg合金板を圧延率5〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理をし、板厚が0.2〜2mmであり、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101(上バー)1)面のX線強度]が1.0〜3.5であり、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が100〜300MPaであり、平均結晶粒径が3〜100μmであることを特徴とする。
請求項3記載の展伸用マグネシウム薄板の製造方法は、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる圧延Mg合金板を圧延率5〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理をし、板厚が0.2〜2mmであり、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101(上バー)1)面のX線強度]が1.0〜3.5であり、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が100〜300MPaであり、平均結晶粒径が3〜100μmであることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記した展伸用マグネシウム薄板は、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる圧延Mg合金を圧延することにより、耳割れや破断を抑制しつつ、エリクセン値等の加工性に優れた板を作製する。各成分の適正な濃度範囲は下記の通りである。
【0009】
[Al量]
Al量は、添加量が多いほど、強度を改善する効果があり、強度の点で、1.0重量%以上添加する必要がある。2.0重量%を超えると、晶出物が溶体化せず、脆化し、加工性を低下させる。
[Zn量]
Zn量は、添加量が多いほど、耐食性を改善する効果があり、耐食性の点で0.5重量%以上添加する必要がある。2.0重量%を超えると、晶出物を生成し、脆化するため、加工性の点で問題がある。
[Mn量]
Mnは、添加量が多いほど、耐食性、加工性を改善する効果があり、0.05重量%以上添加することが必要である。1.0重量%を超えると、晶出物が溶体化せず、脆化し、加工性で問題がある。
[Fe、Si、Cu、Nb、Ca量]
加工性の点で、有害な成分であり、極力少ない方が望ましい。不可避に含まれる含有量については、Feは、0.005重量%未満、Siは0.05重量%未満、Cuは0.04重量%未満、Nbは0.005重量%未満が望ましい。
以上の組成を持ったスラブを熱間圧延、100℃以上の温度での温間圧延による圧延Mg合金板を冷間圧延する。
【0010】
このように圧延マグネシウム合金板を圧延後の板厚が0.2〜2mmの範囲になるように、冷間圧延を施す。冷間圧延の場合、圧延率は、5〜35%の範囲が好ましい。この冷間圧延は、1回または、2回以上の圧延で行うのが好ましい。圧延率は5〜35%の範囲が適し、圧延後の所定の熱処理を行うことにより張り出し性は大きく向上し、エリクセン値が市販材のレベルである4mmを超え、5〜7mmの値となる。
5%未満、及び35%を超えると、この後の熱処理後のエリクセン値が4mm未満で加工性が良くない。
1回または2回以上の圧延を行った後、熱処理を行う。熱処理温度は、200〜450℃の範囲が好ましい。この熱処理により、ひずみの回復、再結晶が生じ、結晶配向が適切な状態となり、加工性が改善されると考えられる。この温度範囲以外では、エリクセン値が4mm未満となり、十分な加工性は得られない。
このように作製した加工性に優れる展伸用マグネシウム合金の結晶配向すなわちX線回折によるX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101(上バー)1)面のX線強度]は1.0〜3.5程度となる。降伏強度は圧延方向に対して平行方向及び直角方向とも100〜300MPaの範囲にあり、結晶粒径が3〜100μmであることが適する。降伏強度が100MPa未満では、強度が不十分であり、300MPaを超えると、加工性が不十分となる。
結晶粒径は3μm未満では、製造上経済的に困難であり、逆に、100μmを超えると、肌荒れなどにより加工性が劣る。
【0011】
【実施例】
本発明について、さらに、以下の実施例を参照して具体的に説明する。
圧延Mg合金及び圧延条件、加熱条件を表1に示す。最終板厚は0.45mmにした。
【0012】
【表1】
【0013】
表1に示す条件で作製したマグネシウム合金の特性を評価した。評価結果を表2に示す。なお、比較例1〜2は、スラブの押出し、熱間圧延、温間圧延、熱処理の工程を通って製造された圧延Mg合金板を用いた評価方法は下記に示す通り。
[降伏強度及び伸びの評価]
JIS6号試験片を使って、引張試験にて測定し評価した。なお、表2において、RD平行は、圧延方向に対して平行方向に引張を行った試験結果であり、RD直角は圧延方向に対して直角に引張を行った試験結果を示す。
[張出し高さ(エリクセン値)の評価]
張出し高さは、エリクセン試験機によりマグネシウム合金薄板を張出しを行い、破断する前の最大張出し高さ(mm)を求めた。
[X線強度比の評価]
管球としてCuを用い、電圧50kV、電流190mAの条件で、X線強度を測定し、X線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101(上バー)1)面のX線強度]を求めた。
【0014】
評価結果を表2に示す。表2に示すように、本発明の展伸用マグネシウム合金薄板は市販のマグネシウム合金板(製造工程:スラブあるいはビレットの押し出し材→高圧下率での温間圧延あるいはさらに熱処理)と比べて張出し加工性に優れている。これは、従来法では、圧延による板厚減少率が高いため、板面に平行な底面の割合の高い圧延集合組織が発達するが、温間圧延あるいは熱処理後の圧延条件をコントロールすること(冷間での低圧下率での圧延および熱処理条件)により板面に平行な底面の割合の少ない集合組織が得られる。
このことは、X線回折結果から推察され、表2に示すような値を示す。集合組織の違いが、エリクセン値に影響しているものと推察される。
【0015】
【表2】
【0016】
【発明の効果】
本発明の展伸用マグネシウム合金板は、組成がAlを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を圧延率5〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行うことからなる。その結果、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101(上バー)1)面のX線強度]が1.0〜3.5となる。また、圧延方向に対して平行方向及び、直角方向の降伏強度が100〜300MPaであり、結晶粒径が3〜100μmであることを特徴とする。この本発明の展伸用マグネシウムは、スラブあるいはビレットからの押出し材を、高圧下率での温間圧延、あるいはさらに熱処理の行程で製造される市販材に比べて、張り出し加工性が著しく優れる。
Claims (2)
- Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる圧延Mg合金板を圧延率5〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行い、板厚が0.2〜2mmであり、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101(上バー)1)面のX線強度]が1.0〜3.5であり、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が100〜300MPaであり、結晶粒径が3〜100μmであることを特徴とする成形性に優れる展伸用マグネシウム薄板。
- Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1重量%含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる圧延Mg合金板を、圧延率5〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行い、板厚が0.2〜2mmであり、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101(上バー)1)面のX線強度]が1.0〜3.5であり、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が100〜300MPaであり、平均結晶粒径が3〜100μmであることを特徴とする成形性に優れる展伸用マグネシウム薄板の製造方法。
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