JP2004115862A - 成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性、特に、冷間でのプレス成形性に優れた安価な展伸用マグネシウム薄板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を圧延した後、熱処理を行うことによって形成され、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が130〜300MPa、平均結晶粒径が3〜100μmとされてなること。
【選択図】 なし
【解決手段】Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を圧延した後、熱処理を行うことによって形成され、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が130〜300MPa、平均結晶粒径が3〜100μmとされてなること。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性、特に冷間でのプレス成形性に優れた安価な展伸用マグネシウム薄板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、展伸用マグネシウム合金板は、厚み数mm〜数十mmの鋳造スラブ、あるいは押し出しによって成形された厚板に対し、繰り返し熱処理、熱間圧延、温間圧延等を施して薄板にすることによって製造されるようになっていた。このように、繰り返し熱処理、熱間圧延、温間圧延等を施されて製造された薄Mg合金板は、室温〜温間域以下の温度、すなわち冷間での加工性が劣ると共に、経済性の点でも割高であり、広く使用されるには至っていなかった。
【0003】
しかし、近年、Mg合金は、Alよりも比重が小さく、比剛性が高く、また、軽量化できる等の利点から、安価で、成形性に優れたMg合金板の要求が高まっている。
【0004】
これまでにも、良好なプレス成形性を目的としたマグネシウム合金として、特開平6−293944号公報、特開平6−25788号公報及び特開平9−41066号公報に記載のものが提案されている。
【0005】
特開平6−293944号は、200℃で、温間でのプレス成形性を改善するための組成、圧延条件について示したものである。
【0006】
特開平6−25788号公報及び特開平9−41066号公報は、マグネシウムにリチウムを添加し、hcp構造のα相中にbcc構造のβ相を1部生成させるか、あるいはβ単相にすることによって、冷間での延性や曲げ加工性を改善することを目的としている。しかし、リチウムは活性な金属であるため、工業的に大量に取り扱うには安全上問題があるばかりでなく、高価で、しかもマグネシウムの耐食性を著しく低下させるといった欠点を有している。
【0007】
上記の他にも、マグネシウムの熱間加工に関するものとして、例えば、特開平5−293529号公報、特開平6−81089号公報、特開2000−271693号公報及び特開2001−252703号公報に記載のものが提案されているが、これらは、いずれも熱間での加工を効率的に行うことを目的としており、成形性の改善を目的としてはいない。
【0008】
その上、特開2000−271693号公報においては、結晶粒微細化を目的として大ひずみを付与する加工法や条件が検討されており、結晶粒径が1μm以下に微細化されているが、成形性の改善については何ら言及されてない。また、形状が限定され、あるいは熱間鍛造を繰り返し行う必要があり、薄肉のマグネシウム合金板は作製することができない。
【0009】
さらに、温間での加工は、生産性が劣り、加熱設備を必要とし、特殊な潤滑油が必要となり、また、その脱脂が必要となる等、多くの問題点を伴うものであった。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−293944号公報
【特許文献2】
特開平6−25788号公報
【特許文献3】
特開平9−41066号公報
【特許文献4】
特開平5−293529号公報
【特許文献5】
特開平6−81089号公報
【特許文献6】
特開2000−271693号公報
【特許文献7】
特開2001−252703号公報
【0011】
【発明が解決すべき課題】
このように、従来は、成形性に優れ、かつ製造コストが安価な薄Mg合金板については、何らの有効な提案もなされていなかった。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、加工性、特に冷間での張り出し加工性、曲げ性などのプレス成形性に優れ、かつ経済性の点でも安価な成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の請求項1に係る成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板は、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を、圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行うことによって形成され、板厚が0.2〜2mm、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が130〜300MPa、結晶粒径が3〜100μmとされてなることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に係る成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板の製造方法は、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を、圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行い、板厚を0.2〜2mm、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]を1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度を130〜300MPa、平均結晶粒径を3〜100μmにすることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、上記のように、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を、圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行うことによって、板厚が0.2〜2mm、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が130〜300MPa、結晶粒径が3〜100μmとされた成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板を安価に得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板およびその製造方法の実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態における成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板を製造するには、まず、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる鋳造ビレットを押し出すことにより、耳割れや破断を抑制しつつ、エリクセン値等の加工性に優れた板を作製する。各成分の適正な濃度範囲は下記の通りである。
[Al量]
Al量は、添加量が多いほど、強度を改善する効果があり、強度の点で、1.0重量%以上添加する必要がある。2.0重量%を超えると、晶出物が溶体化せず、脆化し、高速での押出し性に問題がある。
[Zn量]
Zn量は、添加量が多いほど、耐食性を改善する効果があり、耐食性の点で0.5重量%以上添加する必要がある。2.0重量%を超えると、晶出物を生成し、脆化するため、高速での押出し性の点で問題がある。
[Mn量]
Mnは、添加量が多いほど、耐食性、加工性を改善する効果があり、0.05重量%以上添加することが必要である。1.0重量%を超えると、晶出物が溶体化せず、脆化し、押出し性で問題がある。
[Fe、Si、Cu、Nb、Ca量]
押し出し性、加工性の点で、有害な成分であり、極力少ない方が望ましい。不可避に含まれる含有量については、Feは、0.005重量%未満、Siは0.05重量%未満、Cuは0.04重量%未満、Nbは0.005重量%未満が望ましい。
【0018】
以上の組成を持ったMg合金のビレットを押し出す。押し出し条件としては、押し出し温度の範囲が350〜500℃、押し出し速度が1〜100m/分、押し出し比50以上、望ましくは100以上、厚みが0.5〜2.5mmの範囲が望ましい。
【0019】
次に、このように押し出したマグネシウム合金を圧延後の板厚が0.2〜2mmの範囲になるように、冷間圧延を施す。冷間圧延の場合、圧延率は、15〜35%の範囲が好ましい。この冷間圧延は、1回または、2回以上の圧延で行うのが好ましい。圧延率は15〜35%の範囲が適し、圧延後の所定の熱処理を行うことにより張り出し性は大きく向上し、エリクセン値が市販材のレベルである4mmを超え、5〜7mmの値となる。
【0020】
15%未満、及び35%を超えると、この後の熱処理後のエリクセン値が4mm未満で加工性が良くない。
【0021】
そして、1回または2回以上の圧延を行った後、最後に熱処理を行う。熱処理温度は、200〜450℃の範囲が好ましい。この熱処理により、ひずみの回復、再結晶が生じ、結晶配向が適切な状態となり、加工性が改善されると考えられる。この温度範囲以外では、エリクセン値が4mm未満となり、十分な加工性は得られない。
【0022】
このように作製した成形性に優れた展伸用マグネシウム合金の結晶配向すなわちX線回折によるX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]は1.0〜3.5程度となる。降伏強度は圧延方向に対して平行方向及び直角方向とも130〜300MPaの範囲にあり、結晶粒径が3〜100μmであることが適する。降伏強度が130MPa未満では、強度が不十分であり、300MPaを超えると、加工性が不十分となる。
【0023】
結晶粒径は3μm未満では、製造上経済的に困難であり、逆に、100μmを超えると、肌荒れなどにより加工性が劣る。
【0024】
【実施例】
本発明について、さらに、以下の実施例を参照して具体的に説明する。
(実施例1)
Al−1.1重量%、Zn−0.7重量%、Mn−0.27重量%、残部がMg及び不可避の不純物からなる組成を有するビレットを温度400℃、押し出し速度5m/分の条件で押し出しを行い、板厚を0.52mmとした。更に、2回通板して冷間圧延を行い、板厚0.4mmの展伸用マグネシウム合金薄板を得た。
【0025】
上記のように、作製したマグネシウム合金の特性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、比較例1は、スラブの押出し、温間圧延、熱処理及び冷間圧延の工程を経て製造されたMg合金である。評価方法は下記に示す通り。
[引張強度及び伸びの評価]
JIS6号試験片を使って、引張試験にて測定し評価した。なお、表1において、RD平行は、圧延方向に対して平行方向に引張を行った試験結果であり、RD直角は圧延方向に対して直角に引張を行った試験結果を示す。
[張出し高さ(エリクセン値)の評価]
張出し高さは、エリクセン試験機によりマグネシウム合金薄板の張出しを行い、破断する前の最大張出し高さ(mm)を求めた。
[X線強度比の評価]
管球としてCuを用い、電圧50kV、電流190mAの条件で、X線強度を測定し、X線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]を求めた。
【0026】
評価結果を表1に示す。表1に示すように、本発明の成形性に優れた展伸用マグネシウム合金薄板は市販のマグネシウム合金板(製造工程:スラブあるいはビレットの押し出し材→高圧下率での温間圧延→熱処理)と比べて張出し加工性に優れている。これは、従来法においては、圧延による板厚減少率が高いため、板面に平行な底面の割合の高い圧延集合組織が発達するが、押し出し加工度を高め、圧延条件をコントロールすること(冷間での低圧下率での圧延)により板面に平行な底面の割合の少ない集合組織が得られる。
【0027】
このことは、X線回折結果から推察され、表1に示すような値を示す。集合組織の違いが、エリクセン値に影響しているものと推察される。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板およびその製造方法によれば、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行う結果、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び、直角方向の降伏強度が130〜300MPa、結晶粒径が3〜100μmの展伸用マグネシウム薄板を得ることができる。
【0030】
このようにして製造された展伸用マグネシウムは、スラブあるいはビレットからの押出し材を、高圧下率での温間圧延、熱処理、冷間圧延等を経て製造される市販材に比べて、張り出し加工性が著しく優れている。さらに、このような成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板を、経済的困難性を伴わず安価に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性、特に冷間でのプレス成形性に優れた安価な展伸用マグネシウム薄板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、展伸用マグネシウム合金板は、厚み数mm〜数十mmの鋳造スラブ、あるいは押し出しによって成形された厚板に対し、繰り返し熱処理、熱間圧延、温間圧延等を施して薄板にすることによって製造されるようになっていた。このように、繰り返し熱処理、熱間圧延、温間圧延等を施されて製造された薄Mg合金板は、室温〜温間域以下の温度、すなわち冷間での加工性が劣ると共に、経済性の点でも割高であり、広く使用されるには至っていなかった。
【0003】
しかし、近年、Mg合金は、Alよりも比重が小さく、比剛性が高く、また、軽量化できる等の利点から、安価で、成形性に優れたMg合金板の要求が高まっている。
【0004】
これまでにも、良好なプレス成形性を目的としたマグネシウム合金として、特開平6−293944号公報、特開平6−25788号公報及び特開平9−41066号公報に記載のものが提案されている。
【0005】
特開平6−293944号は、200℃で、温間でのプレス成形性を改善するための組成、圧延条件について示したものである。
【0006】
特開平6−25788号公報及び特開平9−41066号公報は、マグネシウムにリチウムを添加し、hcp構造のα相中にbcc構造のβ相を1部生成させるか、あるいはβ単相にすることによって、冷間での延性や曲げ加工性を改善することを目的としている。しかし、リチウムは活性な金属であるため、工業的に大量に取り扱うには安全上問題があるばかりでなく、高価で、しかもマグネシウムの耐食性を著しく低下させるといった欠点を有している。
【0007】
上記の他にも、マグネシウムの熱間加工に関するものとして、例えば、特開平5−293529号公報、特開平6−81089号公報、特開2000−271693号公報及び特開2001−252703号公報に記載のものが提案されているが、これらは、いずれも熱間での加工を効率的に行うことを目的としており、成形性の改善を目的としてはいない。
【0008】
その上、特開2000−271693号公報においては、結晶粒微細化を目的として大ひずみを付与する加工法や条件が検討されており、結晶粒径が1μm以下に微細化されているが、成形性の改善については何ら言及されてない。また、形状が限定され、あるいは熱間鍛造を繰り返し行う必要があり、薄肉のマグネシウム合金板は作製することができない。
【0009】
さらに、温間での加工は、生産性が劣り、加熱設備を必要とし、特殊な潤滑油が必要となり、また、その脱脂が必要となる等、多くの問題点を伴うものであった。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−293944号公報
【特許文献2】
特開平6−25788号公報
【特許文献3】
特開平9−41066号公報
【特許文献4】
特開平5−293529号公報
【特許文献5】
特開平6−81089号公報
【特許文献6】
特開2000−271693号公報
【特許文献7】
特開2001−252703号公報
【0011】
【発明が解決すべき課題】
このように、従来は、成形性に優れ、かつ製造コストが安価な薄Mg合金板については、何らの有効な提案もなされていなかった。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、加工性、特に冷間での張り出し加工性、曲げ性などのプレス成形性に優れ、かつ経済性の点でも安価な成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の請求項1に係る成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板は、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を、圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行うことによって形成され、板厚が0.2〜2mm、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が130〜300MPa、結晶粒径が3〜100μmとされてなることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に係る成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板の製造方法は、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を、圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行い、板厚を0.2〜2mm、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]を1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度を130〜300MPa、平均結晶粒径を3〜100μmにすることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、上記のように、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を、圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行うことによって、板厚が0.2〜2mm、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が130〜300MPa、結晶粒径が3〜100μmとされた成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板を安価に得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板およびその製造方法の実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態における成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板を製造するには、まず、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる鋳造ビレットを押し出すことにより、耳割れや破断を抑制しつつ、エリクセン値等の加工性に優れた板を作製する。各成分の適正な濃度範囲は下記の通りである。
[Al量]
Al量は、添加量が多いほど、強度を改善する効果があり、強度の点で、1.0重量%以上添加する必要がある。2.0重量%を超えると、晶出物が溶体化せず、脆化し、高速での押出し性に問題がある。
[Zn量]
Zn量は、添加量が多いほど、耐食性を改善する効果があり、耐食性の点で0.5重量%以上添加する必要がある。2.0重量%を超えると、晶出物を生成し、脆化するため、高速での押出し性の点で問題がある。
[Mn量]
Mnは、添加量が多いほど、耐食性、加工性を改善する効果があり、0.05重量%以上添加することが必要である。1.0重量%を超えると、晶出物が溶体化せず、脆化し、押出し性で問題がある。
[Fe、Si、Cu、Nb、Ca量]
押し出し性、加工性の点で、有害な成分であり、極力少ない方が望ましい。不可避に含まれる含有量については、Feは、0.005重量%未満、Siは0.05重量%未満、Cuは0.04重量%未満、Nbは0.005重量%未満が望ましい。
【0018】
以上の組成を持ったMg合金のビレットを押し出す。押し出し条件としては、押し出し温度の範囲が350〜500℃、押し出し速度が1〜100m/分、押し出し比50以上、望ましくは100以上、厚みが0.5〜2.5mmの範囲が望ましい。
【0019】
次に、このように押し出したマグネシウム合金を圧延後の板厚が0.2〜2mmの範囲になるように、冷間圧延を施す。冷間圧延の場合、圧延率は、15〜35%の範囲が好ましい。この冷間圧延は、1回または、2回以上の圧延で行うのが好ましい。圧延率は15〜35%の範囲が適し、圧延後の所定の熱処理を行うことにより張り出し性は大きく向上し、エリクセン値が市販材のレベルである4mmを超え、5〜7mmの値となる。
【0020】
15%未満、及び35%を超えると、この後の熱処理後のエリクセン値が4mm未満で加工性が良くない。
【0021】
そして、1回または2回以上の圧延を行った後、最後に熱処理を行う。熱処理温度は、200〜450℃の範囲が好ましい。この熱処理により、ひずみの回復、再結晶が生じ、結晶配向が適切な状態となり、加工性が改善されると考えられる。この温度範囲以外では、エリクセン値が4mm未満となり、十分な加工性は得られない。
【0022】
このように作製した成形性に優れた展伸用マグネシウム合金の結晶配向すなわちX線回折によるX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]は1.0〜3.5程度となる。降伏強度は圧延方向に対して平行方向及び直角方向とも130〜300MPaの範囲にあり、結晶粒径が3〜100μmであることが適する。降伏強度が130MPa未満では、強度が不十分であり、300MPaを超えると、加工性が不十分となる。
【0023】
結晶粒径は3μm未満では、製造上経済的に困難であり、逆に、100μmを超えると、肌荒れなどにより加工性が劣る。
【0024】
【実施例】
本発明について、さらに、以下の実施例を参照して具体的に説明する。
(実施例1)
Al−1.1重量%、Zn−0.7重量%、Mn−0.27重量%、残部がMg及び不可避の不純物からなる組成を有するビレットを温度400℃、押し出し速度5m/分の条件で押し出しを行い、板厚を0.52mmとした。更に、2回通板して冷間圧延を行い、板厚0.4mmの展伸用マグネシウム合金薄板を得た。
【0025】
上記のように、作製したマグネシウム合金の特性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、比較例1は、スラブの押出し、温間圧延、熱処理及び冷間圧延の工程を経て製造されたMg合金である。評価方法は下記に示す通り。
[引張強度及び伸びの評価]
JIS6号試験片を使って、引張試験にて測定し評価した。なお、表1において、RD平行は、圧延方向に対して平行方向に引張を行った試験結果であり、RD直角は圧延方向に対して直角に引張を行った試験結果を示す。
[張出し高さ(エリクセン値)の評価]
張出し高さは、エリクセン試験機によりマグネシウム合金薄板の張出しを行い、破断する前の最大張出し高さ(mm)を求めた。
[X線強度比の評価]
管球としてCuを用い、電圧50kV、電流190mAの条件で、X線強度を測定し、X線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]を求めた。
【0026】
評価結果を表1に示す。表1に示すように、本発明の成形性に優れた展伸用マグネシウム合金薄板は市販のマグネシウム合金板(製造工程:スラブあるいはビレットの押し出し材→高圧下率での温間圧延→熱処理)と比べて張出し加工性に優れている。これは、従来法においては、圧延による板厚減少率が高いため、板面に平行な底面の割合の高い圧延集合組織が発達するが、押し出し加工度を高め、圧延条件をコントロールすること(冷間での低圧下率での圧延)により板面に平行な底面の割合の少ない集合組織が得られる。
【0027】
このことは、X線回折結果から推察され、表1に示すような値を示す。集合組織の違いが、エリクセン値に影響しているものと推察される。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板およびその製造方法によれば、Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%を含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行う結果、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び、直角方向の降伏強度が130〜300MPa、結晶粒径が3〜100μmの展伸用マグネシウム薄板を得ることができる。
【0030】
このようにして製造された展伸用マグネシウムは、スラブあるいはビレットからの押出し材を、高圧下率での温間圧延、熱処理、冷間圧延等を経て製造される市販材に比べて、張り出し加工性が著しく優れている。さらに、このような成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板を、経済的困難性を伴わず安価に製造することができる。
Claims (2)
- Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を、圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行うことによって形成され、板厚が0.2〜2mm、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]が1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度が130〜300MPa、結晶粒径が3〜100μmとされてなることを特徴とする成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板。
- Alを1.0〜2.0重量%、Znを0.5〜2.0重量%、Mnを0.05〜1.0重量%含有し、残部がMg及び不可避の不純物からなる押し出しMg合金板を、圧延率15〜35%の範囲で冷間圧延した後、200〜450℃の温度範囲で熱処理を行い、板厚を0.2〜2mm、X線回折でのX線強度比[(0002)面のX線強度]/[(101− 1)面のX線強度]を1.0〜3.5、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の降伏強度を130〜300MPa、平均結晶粒径を3〜100μmに形成することを特徴とする成形性に優れた展伸用マグネシウム薄板の製造方法。
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