面取り加工装置(1)は、端部(E1,E2)間で圧縮可能なコイルばね(C)を搬送しながらコイルばね(C)の端部(E1,E2)を研磨して面取り加工を施すものである。
この面取り加工装置(1)は、コンベヤ(11)と、一対のガイド部(13a,13b)と、研磨機(15)と、押圧部(17)とを備える。コンベヤ(11)は、コイルばね(C)を搬送するものである。一対のガイド部(13a,13b)は、コンベヤ(11)の搬送方向に交差する幅方向で対向配置され、コンベヤ(11)上のコイルばね(C)の両端部(E1,E2)をそれぞれガイドする。研磨機(15)は、一対のガイド部(13a,13b)にガイドされたコイルばね(C)の端部を研磨する。押圧部(17)は、コンベヤ(11)上に配置され、研磨機(15)による研磨時にコイルばね(C)をコンベヤ(11)に対して押圧して転動させる。
一対のガイド部(13a,13b)は、コンベヤ(11)の幅方向での間隔を部分的に小さくし、研磨機(15)での研磨時にコイルばね(C)を圧縮する圧縮部(31)を有する。
圧縮部(31)は、一対のガイド部(13a,13b)に対して一体又は別体に設けることが可能である。圧縮部(31)を一対のガイド部(13a,13b)に対して別体とする場合、圧縮部(31)は、一対のガイド部(13a,13b)よりも高硬度な材質で形成され、一対のガイド部(13a,13b)の少なくとも一方に支持されてもよい。
押圧部(17)は、コンベヤ(11)の搬送方向において少なくとも研磨機(15)の研磨開始位置手前から研磨終了位置にわたり、圧縮部(31)は、搬送方向の上流側に一対のガイド部(13a,13b)の幅方向での間隔を漸次小さくするテーパ部(33)を備えてもよい。この場合、テーパ部(33)の始点(33a)及び終点(33b)は、搬送方向における押圧部(17)の上流側の端部(17a)と研磨開始位置との間に配置してもよい。
面取り加工装置(1)は、コイルばね(C)の両端部(E1,E2)のうちの異なる対象端部をそれぞれ研磨して面取り加工を施す相互に分離した第1面取り部(5)及び第2面取り部(7)を備えてもよい。
第1面取り部(5)及び第2面取り部(7)のそれぞれは、コンベヤ(11)、一対のガイド部(13a,13b)、研磨機(15)、押圧部(17)、圧縮部(31)を備える。
一対のガイド部(13a,13b)は、双方を固定的に設けてもよいが、一方を他方に対して可動にしてもよい。この場合、一対のガイド部(13a,13b)は、固定ガイド部(13a)と可動ガイド部(13b)とで構成する。固定ガイド部(13a)は、コイルばね(C)の対象端部をガイドする。可動ガイド部(13b)は、固定ガイド部(13a)に対してコンベヤ(11)の幅方向で変位可能であり、コイルばね(C)の非対象端部をガイドする。
第1面取り部(5)及び第2面取り部(7)を固定する場合は、第1面取り部(5)及び第2面取り部(7)間でコイルばね(C)を連携させる連繋部(9)を備える。連繋部(9)の一実施形態では、第1面取り部(5)からコイルばね(C)を移乗させて第2面取り部(7)へと搬送する。
第1面取り部(5)及び第2面取り部(7)の少なくとも一方を可動とする場合は、第1面取り部(5)及び第2面取り部(7)のコンベヤ(11)の搬送方向が相互に一致し、第1面取り部(5)及び第2面取り部(7)を相対的に幅方向に移動自在とする。
押圧部(17)は、少なくとも搬送方向における研磨開始位置手前から研磨終了位置にわたり、研磨開始位置手前において幅方向で膨出する膨出部(17c,17d)を有してもよい。
面取り加工装置(1)は、押圧部(17)をコンベヤ(11)に対して近接離間可能に支持し、近接離間によってコイルばね(C)を押圧する荷重を調整可能とする支持部(47)と、押圧部(17)の荷重を検出する荷重センサー(49)とを備えてもよい。この場合、支持部(47)は、荷重センサー(49)の検出結果に基づき押圧部(17)を近接離反して荷重を調整する。
面取り加工装置(1)は、コンベヤ(11)上でのコイルばね(C)の姿勢を取得する姿勢取得部(27)と、姿勢取得部(27)で取得したコイルばね(C)の姿勢を判断する姿勢判断部(3)と、コンベヤ(11)上に進退可能に支持された遮断部材(25)とを備えてもよい。この構成では、コイルばね(C)がコンベヤ(11)の幅方向に対する傾斜量が閾値以上の場合に、遮断部材(25)をコンベヤ(11)上に進出させてコイルばね(C)の搬送を遮断する。
面取り加工装置(1)は、研磨機(15)を、コイルばね(C)に対する進出移動量によって面取り量の調整を可能としてもよい。この場合、面取り加工装置(1)は、進出移動を制御する進出移動制御部(3)と、コイルばね(C)の面取り量を取得する面取り量取得部(43a,43b)と、面取り量取得部(43a,43b)で取得したコイルばね(C)の面取り量が所定値か否かを判断する面取り量判断部(3)とを更に備えてもよい。この構成では、面取り量が所定値から外れている場合に、進出移動制御部(3)が面取り量を所定値とするように研磨機(15)の進出移動量を調整する。
研磨機(15)は、回転によって外周で研磨を行う周回状の砥石を有してもよい。この場合、面取り加工装置(1)は研磨機(15)の回転速度を制御する回転速度制御部(3)と、研磨機(15)の外径を検出する検出部(41)とを備えてもよい。この場合、回転速度制御部(3)は、検出部(41)で検出した研磨機(15)の外径に応じて回転速度を調整して周速度が一定となるようにする。
[面取り加工装置の構造]
図1は、本発明の実施例1に係る面取り加工装置を示す概略平面図であり、図2は、面取り加工装置の概略正面図である。
面取り加工装置1は、制御部3による制御の下、コイルばねCを搬送しながら、コイルばねCの両端部E1,E2を面取り加工するものである。面取り加工は、外面取りをすることであり、コイルばねCの端面F1,F2によるエッジを除去して面取りをする。
なお、制御部3は、面取り加工装置1の各部を制御するコンピューターであり、データライン3aにより各部に接続されている。データライン3aに代えて、無線通信を利用してもよい。制御部3は、CPU等のプロセッサーやROM、RAM、HDD、SSD等のメモリーデバイスを有する。
面取り対象のコイルばねCは、本実施例において圧縮ばね等の両端部E1,E2間で圧縮可能なものである。ただし、コイルばねCは、引張ばねのように両端部E1,E2間で圧縮不能なものであってもよい。
また、本実施例のコイルばねCは、軸方向の全域にわたって径が一定であるが、軸方向で径を変化させたものとしてもよい。コイルばねCの素線の断面形状は、円形であるが、楕円形、矩形等の他の断面形状とすることが可能である。また、コイルばねCの材質は、金属のみならず、樹脂等であってもよい。
本実施例の面取り加工装置1は、第1面取り部5及び第2面取り部7と、連繋部9とを備えている。
第1面取り部5及び第2面取り部7は、相互に分離し、それぞれコイルばねCの両端部E1,E2のうちの異なる対象端部を研磨して面取り加工を施す。第1面取り部5及び第2面取り部7の分離は、第1面取り部5及び第2面取り部7間が物理的に分離又は分割していることをいう。
これら第1面取り部5及び第2面取り部7は、後述する搬送方向の長さが、それぞれ従来の面取り加工装置の半分以下に短く設定されている。ただし、第1面取り部5及び第2面取り部7の長さは、それぞれ従来の面取り加工装置に対して短ければよい。
なお、コイルばねCの対象端部とは、コイルばねCの両端部E1,E2のうちの第1面取り部5及び第2面取り部7において面取りの対象となる端部をいう。これら対象端部は、コイルばねCの特定の端部ではなく、第1面取り部5にコイルばねCが供給された時点で決まる。
つまり、第1面取り部5上に供給されたコイルばねCの後述する一対のガイド部13a,13bの一方(固定ガイド部13a)でガイドされる端部E1,E2の一方が、第1面取り部5の対象端部となる。第2面取り部7の対象端部は、第1面取り部5の対象端部とは軸方向の反対側の端部E1,E2の他方である。
ただし、本実施例では、理解容易のため、端部E1が第1面取り部5の対象端部であり、端部E2が第2面取り部7の対象端部であるものとして説明する。
かかる第1面取り部5及び第2面取り部7は、コイルばねCの搬送方向が一致し、相対的に幅方向に移動不能に固定的に設けられている。第1面取り部5及び第2面取り部7のコイルばねCの搬送方向は、異ならせることも可能である。
第2面取り部7は、第1面取り部5での面取り後の面取りを行うため、第1面取り部5に対して搬送方向の後方に位置している。また、第1面取り部5及び第2面取り部7は、幅方向にもずれて位置し、図1において上下対称に構成されている。
第1面取り部5及び第2面取り部7のそれぞれは、コンベヤ11と、一対のガイド部13a,13bと、研磨機15と、押圧部17とを備えている。なお、第1面取り部5及び第2面取り部7は、基本的に同一構成であるため、第1面取り部5についてのみ説明する。第2面取り部7については、第1面取り部5の説明において符号を括弧書きで示し、必要に応じて別途説明する。
コンベヤ11は、コイルばねCを搬送するものである。本実施例のコンベヤ11は、ベルトコンベヤであり、ローラー19に巻き回されたベルト21を備える。ベルト21は、ゴム等の弾性体である。なお、コンベヤ11は、チェーンコンベヤやローラーコンベヤ等を採用することも可能である。
コンベヤ11にローラーコンベヤを用いる場合は、搬送方向の研磨機15に対応した部分において、ベルトコンベヤやチェーンコンベヤを併用するのが好ましい。搬送方向は、コンベヤ11によってコイルばねCを搬送する方向であり、コンベヤ11の走行方向に一致する。
コンベヤ11の幅方向の寸法(幅)は、加工対象となり得る最も長いコイルばねCを搬送可能とする程度に設定されている。幅方向とは、コンベヤ11の搬送方向に交差する方向である。幅方向には、搬送方向に直交した方向に加え、搬送方向に直交した方向に対して僅かに傾斜した方向も含まれる。
コンベヤ11へのコイルばねCの供給は、ロボットアーム、他のコンベヤ等の適宜の搬送機構によって行うことが可能である。本実施例では、コンベヤ11の搬送方向の上流に位置するプッシャー23が、コンベヤ11との間に順次供給されたコイルばねCをコンベヤ11上に押し込む。プッシャー23は、例えばシリンダー装置23aの先端に取り付けられたプレート部材によって構成することが可能である。
なお、第2面取り部7のプッシャー23は、連繋部9によってコンベヤ11との間に順次供給されたコイルばねCをコンベヤ11上に押し込む。ただし、第1面取り部5及び第2面取り部7の何れにおいても、コイルばねCは、搬送機構によって直接コンベヤ11上へ供給してもよい。
コンベヤ11上に供給されたコイルばねCは、コンベヤ11の幅方向に沿っているのが好ましい姿勢となる。幅方向に対して所定値以上に傾斜したコイルばねCは、面取り不良や詰まりを生じる可能性がある。このため、本実施例では、そうした所定値以上に傾斜したコイルばねCの搬送を遮断部材25によって遮断するようになっている。
遮断部材25は、コンベヤ11上に進退可能に支持された部材である。遮断部材25の出没方向は、本実施例において上下である。ただし、遮断部材25は、コンベヤ11上に進退可能である限り、弧状に出没動作するものであってもよい。このため、遮断部材25の出没は、直動機構や回転機構等の適宜の駆動機構によって行えばよい。
この遮断部材25は、コンベヤ11上への進出によってコイルばねCの搬送を遮断する。遮断部材25の形状は、コイルばねCの搬送を阻止できればよく、一対のガイド部13a,13b間に位置可能であればよい。本実施例では、遮断部材25が幅方向に沿った平面矩形状の部材となっている。
また、遮断部材25は、磁力、電磁力、粘着力等によってコイルばねCを吸着する機能を有してもよい。この場合、搬送を遮断したコイルばねCを、遮断部材25の退避によって除去することが可能となる。
かかる遮断部材25による遮断は、制御部3によって行われるようになっている。すなわち、制御部3は、コンベヤ11上のコイルばねCの姿勢を取得し、コイルばねCが幅方向に対する傾斜量が所定値以上の場合に遮断部材25をコンベヤ11上に進出させる。
なお、本実施例のコイルばねCの搬送の遮断は、第1面取り部5及び第2面取り部7の双方において可能であるが、第1面取り部5及び第2面取り部7の一方においてのみ可能としてもよい。
コイルばねCの姿勢の取得は、姿勢取得部としてのカメラ27によって行うことが可能である。カメラ27は、CCDカメラやCMOSカメラ等であり、コンベヤ11上のコイルばねCを撮像する。撮像方向は、本実施例において幅方向、つまりコイルばねCの軸方向である。ただし、撮像方向は、コイルばねCの姿勢を取得できる限り、上下方向等としてもよい。撮像した画像は、制御部3に送られる。制御部3では、姿勢判断部として、画像処理によってコイルばねCの姿勢を判断する。
なお、姿勢取得部としては、コイルばねCの変位、距離、ずれ、位置等を測定可能なレーザーセンサー、渦電流センサー、静電容量センサー等の各種のセンサーとしてもよい。また、姿勢判断部としては、別途のコンピューターである制御部を設けてもよい。
図3は、図1の面取り加工装置1の第1面取り部5のガイド部13a,13bを示す概略平面図である。
一対のガイド部13a,13bは、図1~図3のように、コンベヤ11の搬送方向に交差する幅方向で対向配置されている。これらガイド部13a,13bは、コンベヤ11上のコイルばねCの両端部E1,E2をそれぞれガイドする。
一対のガイド部13a,13bは、コイルばねCの両端部E1,E2をガイドして幅方向に位置決めるものであれば形状は任意である。ガイドとは、摺動を意味するが、常時摺動することではない。つまり、コイルばねCは、搬送中に幅方向に変位しても、その変位がガイド部13a,13bの一方によるガイドで制限される。
かかる一対のガイド部13a,13bは、搬送方向に沿った摺動用のガイド面29a,29bを有する構成であればよい。本実施例の一対のガイド部13a,13bは、断面矩形の長尺状の部材からなり、その長手方向に沿ってガイド面29a,29bを形成している。ガイド面29a,29bは、相互に平行な平面で構成される。
これら一対のガイド部13a,13bの搬送方向の長さは、従来のガイド部の半分以下になっている。これにより、一対のガイド部13a,13bは、平行度を高めることができ、且つ要求される平行度の許容幅を大きくできる。
平行度の許容幅は、搬送方向の研磨機15に対応した部分において、ガイド部13a,13b間の間隔を許容範囲内にできるガイド部13a,13bの平行度の範囲をいう。
ガイド部13a,13b間の間隔は、従来のように双方の研磨機15に対して一対のガイド部13a,13bの平行度を設定しようとすると、平行度によっては、一方の研磨機15に対応した部分では許容範囲内であっても、他方の研磨機15に対応した部分では大きく又は小さくなりすぎて許容範囲外となることがある。
このため、従来は、一方の研磨機15に対してのみガイド部13a,13b間の間隔が許容範囲内となる平行度を採用することはできなかった。これに対し、本実施例は、そのような平行度であっても採用することが可能となる。つまり、本実施例では、平行度の許容幅が大きくなる。
本実施例において、一対のガイド部13a,13bは、それぞれ固定ガイド部13a及び可動ガイド部13bとなっている。
固定ガイド部13aは、幅方向に移動しないように固定して設けられる。固定ガイド部13aの固定は、面取り加工装置1のフレーム(図示せず)等に対して行えばよい。この固定ガイド部13aは、コンベヤ11に幅方向で対向して配置されており、一部がコンベヤ11のベルト21に対して突出する。
この固定ガイド部13aの突出部分が、可動ガイド部13bと幅方向で対向し、コイルばねCの対象端部E1(E2)をガイドする。また、固定ガイド13aは、突出方向(上下方向)の先端に斜面13aaを備え、後述する研磨機15の砥石39との干渉を避けている。
なお、固定ガイド部13aは、図4の変形例のようにコンベヤ11上に位置させることも可能である。
可動ガイド部13bは、コイルばねCの非対象端部E2(E1)をガイドするものであり、固定ガイド部13aに対して幅方向で変位可能となっている。なお、一対のガイド部13a,13bは、双方を固定して設けることも可能である。
可動ガイド部13bの変位は、同一ロットのコイルばねCの面取り加工の開始前において、直動機構や回動機構等の駆動機構の動作によって行われる。駆動機構の動作は、ハンドル等の操作部の操作や電動モーター等によって行えばよい。
なお、可動ガイド部13bを変位させても、一対のガイド部13a,13bに要求される平行度の許容幅が大きくなっているので、その後の調整等が不要又は簡素化できる。同一ロットのコイルばねCは、同一長さを有するものとして設計されている。ただし、同一ロットのコイルばねCは、製造誤差を含むため、実際は同一長さではないことが多い。
かかる可動ガイド部13bの変位により、一対のガイド部13a,13b間の間隔は、コイルばねCの自由長にクリアランスを加えた程度に設定される。コイルばねCの自由長とは、外力が加わっていない状態のコイルばねCの長さをいう。ここでの自由長は、コイルばねCの設計時の自由長である。クリアランスは、コイルばねCの製造誤差や搬送の円滑等を考慮して設定すればよい。
本実施例の可動ガイド部13bは、圧縮部31を有する。圧縮部31は、コンベヤ11の幅方向での間隔を部分的に小さくし、研磨機15での研磨時にコイルばねCを圧縮するものである。圧縮部31による間隔の減少量(圧縮部31の突出量)は、面取り対象のコイルばねCの自由長によって決まる。
具体的には、圧縮部31による間隔の減少量は、一対のガイド部13a,13b間の間隔がコイルばねCの設計時の自由長から予想される最大の製造誤差を引いた寸法よりも小さくなる範囲とする。ただし、コイルばねCの転動が圧縮により阻害されないようにする必要がある。
この圧縮部31は、可動ガイド部13bに一体に設けられ、可動ガイド部13bと同材質のステンレス鋼等によって形成されている。なお、圧縮部31は、可動ガイド部13bに代えて或いは可動ガイド部13bと共に固定ガイド部13aに設けてもよい。従って、圧縮部31は、可動ガイド部13b及び固定ガイド部13aの一方又は双方に設けることが可能である。
本実施例の圧縮部31は、搬送方向の両側にテーパ部33,35を備え、搬送方向のテーパ部33,35間に平面部37を備えている。これらテーパ部33,35及び平面部37を含めた圧縮部31の搬送方向の長さは、後述する研磨機15の砥石39の搬送方向の長さよりも長く設定されている。
搬送方向の上流側のテーパ部33は、下流側に向けて一対のガイド部13a,13bの幅方向での間隔を漸次小さくする。テーパ部33の始点33a及び終点33bは、後述する押圧部17の搬送方向における上流側の端部17aと研磨開始位置39aとの間に配置されている。
テーパ部33の始点33aは、そこから幅方向での一対のガイド部13a,13b間の間隔が減少し始め、テーパ部33の終点33bは、そこでテーパ部33による一対のガイド部13a,13b間の間隔の減少が終了する。
下流側のテーパ部35は、下流側に向けて一対のガイド部13a,13bの幅方向での間隔を漸次大きくする。テーパ部35の始点35a及び終点35bは、後述する研磨終了位置39bと搬送方向における押圧部17の下流側の端部17eとの間に配置されている。テーパ部35の始点35aは、そこから幅方向での一対のガイド部13a,13b間の間隔が増加し始め、テーパ部35の終点35bは、そこでテーパ部35による一対のガイド部13a,13b間の間隔の増加が終了する。
平面部37は、一対のガイド部13a,13b間の間隔を増減させずに遷移する部分である。この平面部37により、研磨機15で研磨している間は、一対のガイド部13a,13b間の幅方向での間隔を一定となる。
本実施例の平面部37は、搬送方向で研磨機15の砥石39の両端から突出する範囲で設けられている。ただし、平面部37は、搬送方向での両端を研磨機15の砥石39の両端に一致させてもよい。
なお、研磨機15で研磨している間において、一対のガイド部13a,13b間の間隔を変化させることも可能である。例えば、研磨機15で研磨している間において、一対のガイド部13a,13b間の間隔を搬送方向の下流側に向けて漸次大きくしてもよい。
圧縮部31は、図5の変形例のように可動ガイド部13bと別体に設けることも可能である。図5は、変形例に係る可動ガイド部13bを示す平面図である。この変形例の場合、圧縮部31は、可動ガイド部13bよりも高硬度な材質で形成され、可動ガイド部13bに支持される。圧縮部31の支持は、可動ガイド部13bに形成された支持凹部14に圧縮部31を入れ込んでボルト等によって締結することで行われる。
圧縮部31の材質は、高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼のような高硬度ステンレス鋼等とすることが可能である。これにより、コイルばねCを圧縮する際の圧縮部31の摩耗を低減することが可能である。なお、圧縮部31の材質は、ガイド部13a,13bの材質、コイルばねCの材質との関係で任意に設定される。
研磨機15は、対象端部E1(E2)をガイドする一対のガイド部13a,13bの一方である固定ガイド部13aに対して設けられ、対象端部E1(E2)を研磨する。本実施例の研磨機15は、回転によって外周で研磨を行う周回状の砥石39を有する。なお、砥石39に代えて、バイスやフライス等を採用することも可能である。
砥石39は、回転軸40が搬送方向に沿って配置されている。砥石39の外周の一部がコンベヤ11上に臨む。この砥石39は、コイルばねCに搬送方向の上流側の端部39aが研磨開始位置であり、下流側の端部39bが研磨終了位置である。
研磨の開始は、コイルばねCに対して進退自在な砥石39を、初期位置から進出移動してコイルばねCの対象端部E1(E2)に接触させて行われる。従って、実際の研磨が開始される研磨開始位置は、厳密には一定ではない。このため、本実施例では、最も早く研磨が開始することが可能な、搬送方向の上流側の砥石39の端部39aを研磨開始位置としている。
研磨の終了は、砥石39をコイルばねCの対象端部E1(E2)から離反させることで行われる。このため、実際の研磨が終了する研磨終了位置は、研磨開始位置と同様、厳密には一定ではない。このため、本実施例では、最も遅く研磨を終了することが可能な、搬送方向の下流側の砥石39の端部39bを研磨終了位置としている。
砥石39の回転は、電動モーター(図示せず)によって行われる。砥石39の回転速度は、回転速度制御部としての制御部3によって制御される。この回転速度の制御では、研磨機15の砥石39の外径に応じて回転速度を調整し、砥石39の周速度(外径×π×回転数)が一定となるようにする。
なお、本実施例の砥石39の回転速度の調整は、第1面取り部5及び第2面取り部7の双方において可能であるが、第1面取り部5及び第2面取り部7の一方においてのみ可能としてもよい。また、回転速度制御部としては、別途のコンピューターである制御部を設けてもよい。
砥石39の外径の取得は、センサーやカメラ等の検出部41によって行うことが可能である。センサーは、接触式変位センサー等の接触式センサーや光センサー等の非接触式センサーのような適宜の手法により外径を測定するものであればよい。カメラは、研磨機15の砥石39を撮像した画像により外径を取得可能とすればよい。カメラの場合は、砥石39の外径は、制御部3での画像処理によって求めればよい。
本実施例の砥石39は、コイルばねCに対する初期位置からの進出移動の移動量(進出移動量)を調整することによって研磨機15の面取り量の調整が可能となっている。本実施例の面取り量の調整は、第1面取り部5及び第2面取り部7の双方において可能であるが、第1面取り部5及び第2面取り部7の一方においてのみ可能としてもよい。
かかる面取り量の調整は、進出移動制御部としての制御部3によって行われる。すなわち、制御部3は、面取りが完了したコイルばねCから面取り量を取得し、取得した面取り量と所定値との差をなくすように砥石39の進出移動量を増減させる。なお、進出移動制御部としては、別途のコンピューターである制御部を設けてもよい。
面取り量の調整時期は、面取り加工中のロットと次のロットとの間である。従って、面取り加工中のロットで得られた面取り量に基づいて、次のロットの面取り加工開始時に面取り量を調整する。面取り量の調整に用いられる面取り済みのコイルばねCの面取り量は、ロット中の最後のコイルばねCの面取り量やロット中の一部又は全部のコイルばねCの面取り量の平均等とすることが可能である。
なお、面取り量の調整時期は、同一ロットのコイルばねCの加工中であってもよい。この場合、直前の面取り済みコイルばねCの面取り量を用いて、リアルタイムで研磨機15の面取り量が調整される。
進出移動量の増減は、ロット間において砥石39を一度初期位置に退避させる場合、単純に初期位置からの進出移動量を増減させればよい。ロット間において砥石39を退避させない場合は、砥石39を進出した状態において進退させることにより、結果として初期位置からの進出移動量を増減させればよい。リアルタイムの調整時には、砥石39を退避させないので、砥石39を進退させればよい。
砥石39の進退移動可能な支持は、直動機構や回転機構等の適宜の駆動機構によって行うことが可能である。面取り量の取得は、面取り量取得部としてのカメラ43a,43bを通じて行うことが可能である。
カメラ43a,43bは、第2面取り部7の砥石39の下流側において、コイルばねCの端面F1,F2を幅方向の両側から撮像する。撮像した画像に基づき、制御部3は、座面(図示せず)の面積や外径から面取り量を求めることができる。なお、面取り量の取得は、座面の外径をセンサーによって測定することで行ってもよい。座面は、面取り後に残ったコイルばねCの端面F1,F2である。
取得した面取り量に基づき、制御部3は、面取り量判断部として、コイルばねCの面取り量が所定値か否かを判断する。面取り量が所定値から外れている場合には、制御部3が面取り量が所定値となるように研磨機15の砥石39の進出移動量を増減させる。
図6は、図1の面取り加工装置1の要部を拡大して示す概略平面図である。なお、図6では、押圧部17のベース部材45の図示を省略している。
押圧部17は、図1~図3及び図6のように、コンベヤ11上に配置され、研磨機15による研磨時にコイルばねCをコンベヤ11に対して押圧して転動させる。この転動により、コイルばねCの対象端部E1(E2)の全周にわたって面取りを行うことを可能とする。この押圧部17は、コイルばねCをコンベヤ11に対して押圧して転動させる摩擦部材であればよいが、ゴム等の弾性を有するのが好ましい。
なお、転動とは、コイルばねCが軸周り回転しながら搬送方向に移動することをいう。コイルばねCの転動は、少なくとも砥石39の研磨開始位置39aから研磨終了位置39bに至るまで行われればよい。本実施例の転動では、コイルばねCを複数回軸周り回転させる。この複数回の軸周り回転により、面取りを確実に行うことを可能とする。
押圧部17は、搬送方向において研磨機15に対応した部分に設けられていればよい。本実施例では、搬送方向において研磨機15の前後にわたるように押圧部17を設ける。具体的には、押圧部17は、搬送方向において、研磨機15の研磨開始位置39aに対する上流から研磨終了位置39bに対する下流にわたって設けられている。この押圧部17の搬送方向の長さは、圧縮部31の搬送方向の長さよりも長く設定されている。
この押圧部17は、全体として研磨機15を避けて位置している。押圧部17の本体部17bは、研磨機15に対して幅方向で隣接し、搬送方向に沿って設けられた一定幅の帯状に形成されている。なお、押圧部17の本体部17bの幅は、コイルばねCを安定して転動させることができる範囲とされる。
押圧部17の本体部17bには、研磨開始位置39aに対する上流において、幅方向で膨出する膨出部17c,17dが備えられている。膨出部17c,17dは、押圧部17がコイルばねCを押圧し始める際に、コイルばねCの軸方向での押圧の偏りを抑制する。これにより、押圧の前から押圧に至るまでのコイルばねCの姿勢が安定する。なお、面取りに要求される精度等によっては、膨出部17c,17dを省略することも可能である。
本実施例の膨出部17c,17dは、本体部17bからそれぞれコイルばねCの両端部E1,E2に至るように幅方向に膨出している。膨出部17c,17dの膨出量は、一対のガイド部13a,13bが最も離間した状態で、図6のようにそれぞれガイド部13a,13bに対して平面視で所定のクリアランスを有する程度とする。或いは、膨出部17c,17dの膨出量は、図7のようにガイド部13a,13bに対して平面視で重なる程度とする。図7は、変形例に係る面取り加工装置1の概略平面図であり、図6と同様に押圧部17のベース部材45の図示を省略している。なお、膨出部17c,17dの膨出量は、押圧の前から押圧に至るまでのコイルばねCの姿勢を安定させることができる限りにおいて任意である。
かかる押圧部17は、コンベヤ11に対して近接離間可能に支持され、この近接離間によってコイルばねCを押圧する荷重を調整可能となっている。荷重の調整は、制御部3によって行われる。すなわち、制御部3は、押圧部17の荷重を取得し、取得した荷重と設定値との差をなくすように押圧部17をコンベヤ11に対して近接離間させる。
押圧部17の支持は、ベース部材45によって押圧部17の背面で行われている。ベース部材45は、斜面45aを有し、砥石39との干渉を避けている。このベース部材45が、支持部47によってコンベヤ11に対して近接離間移動可能に支持されている。
ベース部材45は、押圧部17を支持してコイルばねCに押し付けることができる程度の剛性が必要である。本実施例のベース部材45は、ステンレス鋼等の金属により形成されている。
支持部47は、直動機構や回転機構等の駆動機構によって構成することが可能である。この支持部47には、荷重センサー49が設けられている。荷重センサー49は、ロードセル等で構成され、押圧部17の荷重を検出する。検出した荷重は制御部3に入力される。
連繋部9は、第1面取り部5と第2面取り部7との間でコイルばねCを連繋させるものである。本実施例の連繋部9は、コイルばねCの幅方向に搬送するコンベヤからなる。連繋部9の搬送方向は、第1面取り部5及び第2面取り部7のコンベヤ11の幅方向であり、以下において連繋搬送方向と称する。なお、連繋部9としては、ロボットアーム等を用いてもよい。
連繋部9の連繋搬送方向の上流側の端部は、第1面取り部5の搬送方向において、第1面取り部5のコンベヤ11の下流側の端部に下流側で隣接して配置されている。これにより、第1面取り部5のコンベヤ11からコイルばねCを連繋部9に移乗可能とする。
また、連繋部9の連繋搬送方向の下流側の端部は、第2面取り部7の搬送方向において、第2面取り部7のコンベヤ11の上流側の端部に上流側で隣接して配置されている。これにより、連繋部9は、第1面取り部5から移乗したコイルばねCを上流側から下流側へ第2面取り部7に向けて搬送する。第2面取り部7側へ搬送されたコイルばねCは、第2面取り部7のプッシャー23によりコンベヤ11上に押し込まれる。
従って、連繋部9は、第1面取り部5からコイルばねCを移乗させて第2面取り部7へと搬送し、第1面取り部5及び第2面取り部7間でコイルばねCを連携させる構成となっている。
連繋部9の上流側及び下流側の端部は、第1面取り部5及び第2面取り部7の幅方向で、第1面取り部5及び第2面取り部7の固定ガイド部13aにそれぞれ対向している。これにより、第1面取り部5から連繋部9へのコイルばねCの移乗を固定ガイド部13aによってガイドする。また、第2面取り部7側へ搬送されたコイルばねCが、第2面取り部7の固定ガイド部13aに突き当たり、第2面取り部7のコンベヤ11に対して位置決められる構成となっている。
この位置決めが位置決めセンサー51によって検出され、プッシャー23がコイルばねCのコンベヤ11上への押し込みを行う。位置決めセンサー51は、固定ガイド部13aに設けた近接センサーや振動センサー等とすることができる。
[面取り加工]
面取り加工を行う際には、第1面取り部5及び第2面取り部7において、一対のガイド部13a,13b間の間隔を加工対象のコイルばねCの自由長にクリアランスを加えた寸法に設定する。この設定は、ハンドルの操作等により、研磨機15の位置決めとは関連のない可動ガイド部13bを変位させることで行うことができる。従って、可動ガイド部13bの変位後に研磨機15を変位させることによる研磨機15の可動ガイド部13bに対する位置決めが不要となる。このため、ガイド部13a,13b間の間隔設定が容易になる。
また、第1面取り部5及び第2面取り部7において、研磨機15の砥石39の進退移動量を設定して面取り量を所定値に設定する。
こうして面取り加工前の設定が完了すると、面取り加工が開始される。
面取り加工では、第1面取り部5及び第2面取り部7でコイルばねCの異なる対象端部E1及びE2の面取りをそれぞれ行う。
第1面取り部5では、まず順次供給されるコイルばねCをプッシャー23によってコンベヤ11上に押し込む。コンベヤ11上のコイルばねCは、その両端部E1,E2が一対のガイド部13a,13bにガイドされつつ、コンベヤ11のベルト21の走行によって研磨機15へ向けて搬送される。
このとき、コンベヤ11上のコイルばねCの姿勢がチェックされる。すなわち、カメラ27で撮像したコイルばねCの画像に基づき、制御部3がコイルばねCの姿勢を判断する。そして、幅方向に対するコイルばねCの傾斜量が所定値以上である場合は、遮断部材25をコンベヤ11上に進出させてコイルばねCの搬送を遮断する。
遮断されたコイルばねCは、作業者によって除去される。これにより、コイルばねCの面取り不良や詰まりが抑制される。このとき、コンベヤ11の駆動は、止める必要がない。その後は、遮断部材25を上げてコイルばねCの搬送を再開する。
なお、遮断部材25にコイルばねCが突き当たることでコイルばねCの姿勢が正されることがあるが、この場合は、コイルばねCを除去せずに遮断部材25を上げて、コイルばねCの搬送を再開すればよい。
研磨機15へ向けたコイルばねCの搬送途中において、コンベヤ11は、押圧部17によりコンベヤ11上への押圧が開始される。この押圧の開始時は、押圧部17が幅方向の膨出部17c,17dを有することにより、コイルばねCに軸方向(押圧部17の幅方向)で作用する押圧力の偏りが抑制される。この結果、コイルばねCは、押圧力の偏りによって生じる幅方向に対するコイルばねCの傾斜が抑制され、姿勢が安定する。
押圧の間は、荷重センサー49で押圧部17による押圧の荷重を検出する。この検出した荷重に基づき、制御部3が支持部47を制御して荷重を調整する。
コイルばねCは、押圧部17により押圧されると、上部側で移動が止められると共に下部側でコンベヤ11によって移動されるため、転動する。この転動状態でコイルばねCが研磨機15の砥石39に至る。
また、研磨機15の砥石39に至る前より、一対のガイド部13a,13b間の間隔が圧縮部31によって小さくなっており、これに応じてコイルばねCが圧縮される。この圧縮は、押圧部17による押圧下で圧縮部31のテーパ部33により徐々に行われる。従って、コイルばねCの姿勢の安定性を保つことができる。
コイルばねCが砥石39に至る際には、圧縮部31の平面部37により一対のガイド部13a,13b間の間隔が小さくなった状態で一定に保たれている。このため、コイルばねCは、圧縮が完了した状態で姿勢の安定性が保たれている。
また、コイルばねCは、圧縮により対象端部E1が一対のガイド部13a,13bの固定ガイド部13aに突き当てられて位置決められる。結果として、コイルばねCが製造誤差を有していたとしても、コイルばねCの対象端部E1が砥石39に対して正確に位置決められる。
この位置決め状態且つ姿勢の安定性が保たれた状態において、コイルばねCの対象端部E1が、研磨機15の砥石39に接触して研磨される。この研磨は、設定された進出移動量で事前に進出状態とされた砥石39に、コイルばねCの対象端部E1が接触することで開始される。なお、砥石39は、ロットの最初のコイルばねCの面取り時に、砥石39を進出させてもよい。
研磨は、コイルばねCの転動に応じて対象端部E1の全周において行われる。このとき、コイルばねCの圧縮、弾性変形、コンベヤ11のベルト21の撓み等によって、コイルばねCの一回の軸周り回転では所望の面取り量で面取りすることができないことがある。これに対し、本実施例では、コイルばねCの転動による軸周り回転が複数回行われるため、所望の面取り量でコイルばねCの対象端部E1の面取りを安定して行うことができる。
また、研磨時には、コイルばねCが押圧部17によってコンベヤ11に対して押圧され、コイルばねCの姿勢の変動を抑制される。従って、本実施例では、より安定して面取りを行うことができる。
この研磨時には、砥石39の外径が検出部41によって検出される。検出された外径は、制御部3に入力される。制御部3は、検出された砥石39の外径に応じて、砥石39の回転速度を調整して周速度が一定となるようにする。これにより、砥石39の研磨能力を安定させて面取りを行うことができる。
こうして第1面取り部5でコイルばねCの端部E1,E2の一方である対象端部E1の面取りが完了する。面取り完了後は、押圧部17による押圧の下、圧縮部31のテーパ部35により徐々にコイルばねCの圧縮が解除される。圧縮の解除後は、コイルばねCが押圧部17から離脱し、連繋部9へと至る。
連繋部9に至ったコイルばねCは、連繋部9上に移乗して第2面取り部7へ向けて搬送される。第2面取り部7へ至ると、コイルばねCの面取りが行われていない端部E2が、第2面取り部7の固定ガイド部13aに突き当たる。これにより、コイルばねCがコンベヤ11に対して位置決められる。この位置決めに応じ、プッシャー23がコイルばねCをコンベヤ11上に押し込む。
こうして押し込まれた後は、第1面取り部5と同様に、コイルばねCの姿勢をチェックし、幅方向に対する傾斜量が所定値未満のコイルばねCの対象端部E2を研磨機15によって研磨する。
第2面取り部7でのコイルばねCの対象端部E2の面取りが完了し、コイルばねCが押圧部17から離脱すると、コイルばねCの面取りの状態がチェックされる。
すなわち、砥石39の下流側においてカメラ43a,43bで撮像したコイルばねCの端面F1,F2の画像に基づき、制御部3が座面の面積や外径から面取り量を求める。求めた面取り量は、制御部3のメモリーデバイス等に保持され、次のロットの面取り加工時の面取り量の調整に用いられる。すなわち、ロット中の最後のコイルばねCの面取り量やロット中の一部又は全部のコイルばねCの面取り量の平均が所定値から外れている場合は、制御部3が次のロットの面取り加工前に、研磨機15の砥石39の進出移動量を増減させて面取り量を所定値となるように設定する。
また、各コイルばねCから求められた面取り量と所定値との差が製品として許容されない閾値を越えているような場合は、作業者の手作業やロボットアーム等によってコイルばねCをコンベヤ11上から排除すればよい。
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の面取り加工装置1は、コイルばねCを搬送しながらそれぞれコイルばねCの両端部E1,E2のうちの異なる対象端部を研磨して面取り加工を施す相互に分離した第1面取り部5及び第2面取り部7を備えている。
第1面取り部5及び第2面取り部7のそれぞれは、コイルばねCを搬送するコンベヤ11と、コンベヤ11の幅方向で対向配置され、コンベヤ11上のコイルばねCの両端部E1,E2をそれぞれガイドする一対のガイド部13a,13bと、対象端部をガイドする一対のガイド部13a,13bの一方に対して設けられ、対象端部を研磨する研磨機15と、コンベヤ11上に配置され、研磨機15による研磨時にコイルばねCをコンベヤ11に対して押圧して転動させる押圧部17と、を備えている。
従って、第1面取り部5及び第2面取り部7のそれぞれにおいて、一対のガイド部13a,13bを完結させることができる。すなわち、第1面取り部5及び第2面取り部7では、それぞれ一対のガイド部13a,13bを短く形成して平行度を高めることができ、且つ一対のガイド部13a,13bに要求される平行度の許容幅を大きくでき、面取りの精度を向上することができる。
また、一対のガイド部13a,13bは、コイルばねCの対象端部をガイドする固定ガイド部13aと、この固定ガイド部13aに対してコンベヤ11の幅方向で変位可能であり、コイルばねCの非対象端部をガイドする可動ガイド部13bとで構成されている。
このため、本実施例では、可動ガイド部13bを変位させることでガイド部13a,13b間の間隔を設定し、異なる長さのコイルばねCに対応することができる。しかも、可動ガイド部13bを変位させても、一対のガイド部13a,13bに要求される平行度の許容幅が大きくなっているので、その後の調整等を不要に又は簡素化できる。しかも、研磨機15の位置決めとは関連のない可動ガイド部13bを変位させるため、ガイド部13a,13b間の間隔設定が容易になる。
連繋部9は、第1面取り部5からコイルばねCを移乗させて第2面取り部7へと搬送し、第1面取り部5及び第2面取り部7間でコイルばねCを連携させる。
従って、相互に分離した第1面取り部5及び第2面取り部7間において、コイルばねCを円滑且つ確実に搬送してコイルばねCの両端部E1,E2にそれぞれ面取り加工を行わせることができる。
一対のガイド部13a,13bは、コンベヤ11の幅方向での間隔を部分的に小さくし、研磨機15での研磨時にコイルばねCを圧縮する圧縮部31を有する。
従って、コイルばねCは、圧縮されて姿勢の安定性が保たれた状態で研磨が行われるので、この研磨による面取り精度を向上することができる。しかも、圧縮により、コイルばねCが製造誤差を有していたとしても、コイルばねCの対象端部を一対のガイド部13a,13bの一方である固定ガイド部13aに突き当てて位置決めることができる。この位置決め状態で研磨が行われるので、より面取り精度を向上することができる。
すなわち、コイルばねCを圧縮することで、コイルばねCの姿勢の安定性を保つことができ、且つ研磨される対象端部を研磨機15に対して位置決めることができ、面取り精度を向上することができる。
圧縮部31は、一対のガイド部13a,13bよりも高硬度な材質で形成され、一対のガイド部13a,13bの一方に支持されている。
従って、圧縮部31の摩耗を抑制することができると共に圧縮部31が摩耗しても容易に交換することができる。また、圧縮部31を交換することにより、コイルばねCの圧縮量を調整することもできる。
押圧部17は、コンベヤ11の搬送方向において少なくとも研磨機15の研磨開始位置39a手前から研磨終了位置39bにわたり、圧縮部31は、搬送方向の上流側に間隔を漸次小さくするテーパ部33を備え、テーパ部33の始点33a及び終点33bは、押圧部17の搬送方向における上流側の端部17aと研磨開始位置39aとの間に配置されている。
このため、押圧部17による押圧下でコイルばねCを徐々に圧縮することができ、且つ圧縮が完了した状態でコイルばねCの対象端部の研磨を行わせることができる。従って、コイルばねCの姿勢の安定性を確保でき、結果として面取り精度を向上することができる。
押圧部17は、少なくとも搬送方向における研磨開始位置39a手前から研磨終了位置39bにわたり、研磨開始位置39a手前において幅方向で膨出する膨出部17c,17dを有する。
従って、本実施例では、押圧部17によるコイルばねCの押圧が開始される際に、コイルばねCに軸方向で作用する押圧力の偏りが抑制され、姿勢が安定する。結果として、面取り精度を向上することができる。
第1面取り部5及び第2面取り部7は、押圧部17をコンベヤ11に対して近接離間可能に支持し、近接離間によってコイルばねCを押圧する荷重を調整可能な支持部47と、押圧部17の荷重を検出する荷重センサー49とを備え、支持部47が、荷重センサー49の検出結果に基づいて荷重を調整する。
従って、本実施例では、適切な荷重でコイルばねCを押圧することができ、研磨時にコイルばねCの姿勢及び転動等の円滑化並びに安定化を図ることができる。結果として、面取り精度を向上することができる。
面取り加工装置1は、第1面取り部5及び第2面取り部7のコンベヤ11上でのコイルばねCの姿勢を取得する姿勢取得部としてのカメラ27と、カメラ27で取得したコイルばねCの姿勢を判断する姿勢判断部としての制御部3と、第1面取り部5及び第2面取り部7のコンベヤ11上に進退可能に支持された遮断部材25とを備える。
そして、制御部3での判断結果に基づいて、コイルばねCのコンベヤ11の幅方向に対する傾斜量が閾値以上の場合に、遮断部材25がコンベヤ11上に進出してコイルばねCの搬送を遮断する。
従って、傾斜量が大きいコイルばねCが研磨機15まで搬送されることを阻止し、コイルばねCの面取り不良や詰まりを抑制することができる。このとき、コンベヤ11を停止させる必要がないので、続くコイルばねCの面取り加工を円滑に行わせることができる。
また、コイルばねCの姿勢が遮断部材25によって是正された場合は、遮断部材25を退避させれば、姿勢が是正されたコイルばねCの面取り加工を再開することもできる。
第1面取り部5及び第2面取り部7の研磨機15がコイルばねCに対して進出移動量に応じて面取り量の調整が可能であり、コイルばねCの面取り量を取得するカメラ43a,43bと、研磨機15の進出移動を制御する進出移動制御部及びカメラ43a,43bで取得したコイルばねCの面取り量が所定値か否かを判断する面取り量判断部としての制御部3とを備えている。
制御部3は、面取り量が所定値から外れている場合に、後のコイルばねCに対する面取り量が所定値となるように研磨機15の進出移動量を調整する。
従って、本実施例では、適切な面取り量の面取りを行うことができ、面取り精度を向上することができる。
研磨機15は、回転によって外周で研磨を行う周回状の砥石39を有し、第1面取り部5及び第2面取り部7の砥石39の回転速度を制御する回転駆動制御部としての制御部3と、砥石39の外径を検出する検出部41とを備える。
制御部3は、検出部41で検出した砥石39の外径に応じて、砥石39の回転速度を調整して周速度が一定となるようにする。
従って、本実施例では、砥石39の研磨能力を安定させ、面取り精度を向上することができる。