JP7075803B2 - 水系インク - Google Patents

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Description

本発明は、水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、微細なノズルからインク液滴を直接吐出し、記録媒体に付着させて、文字や画像が記録された印刷物等を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、記録媒体に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。近年特に、記録物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料を用いるものが主流となってきている。
ところで、顔料を用いる水系インクにおいては、顔料表面に水に親和性の高い官能基を付与して分散剤なしに、又はポリマー分散剤を用いて、顔料を水系媒体又はインクビヒクルに分散させて用いられる。しかし、顔料を用いる水系インクは、水系媒体又はインクビヒクルに均一に溶解する染料を用いるインクと異なり、長期間にわたって顔料粒子の分散状態を維持することが難しく、また、インク吐出ノズル部分でポリマーや顔料が固着してしまうことがある。
これらの問題点を改善する水系インクとして、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、耐水性、保存安定性、吐出性、定着性に優れた水系顔料分散体として、顔料をポリマー分散剤で水系媒体に分散させた水系顔料分散体であって、該ポリマー分散剤がカルボキシ基を有する水不溶性ポリマーであり、該カルボキシ基のうち少なくとも一部がアルカリ金属水酸化物で中和されており、かつ該カルボキシ基の一部が水不溶性多官能エポキシ化合物と反応させて得られる架橋構造を有し、水不溶性ポリマーの酸価と中和度と架橋度が特定の条件を満たす水系顔料分散体、及びそれを含有する水系インクが開示されている。
特許文献2には、乾燥性、保存安定性に優れた水系インクとして、着色剤、樹脂粒子、有機溶剤及び水を含有し、有機溶剤として、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド及びテトラメチル尿素等を併用する水系インクが開示されている。
国際公開第2017/115659号 特開2017-14359号公報
特許文献1の水系顔料分散体は、顔料を分散するポリマー分散剤を架橋剤によって架橋し、強固な皮膜を得ることができるため、室温ではインクの安定性はある程度確保できる。しかしながら、保存安定性、記録媒体に対する定着性、吐出ノズルの目詰まり防止性等において改善の余地があった。
また、特許文献2の水系インクは、アミド系溶剤を使用すると吐出ノズルの目詰まり防止性が悪化する傾向があり、目詰まり防止性の改善が求められる。また、特許文献2の水系インクは、記録媒体に対する定着性等において満足できるものではない。
本発明は、インク吐出ノズルでの顔料やポリマーの固着による吐出ノズルの目詰りを抑制でき、記録媒体に対する定着性、高温下における保存安定性にも優れた水系インクを提供することを課題とする。
本発明者らは、インク吐出ノズル部分のように、インクビヒクルが存在する環境では流体状態を維持でき、一方、印刷時のように、記録媒体面と接触しインクビヒクルがなくなる環境では強固な皮膜を形成できる性能を有し、かつ目詰まり防止性、保存安定性に優れる水系インクの開発を目指した。そして、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)を水不溶性多官能エポキシ化合物によって架橋してなるポリマー中に顔料を含有させ、該カルボキシ基の少なくとも一部がアルカリ金属化合物で中和されており、中和された水不溶性ポリマー(A)の酸価と中和度と架橋度が特定の条件を満たすポリマーを用い、かつ、アミド系溶剤と組み合わせることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、顔料を含有するポリマー粒子及びアミド系溶剤を含有する水系インクであって、
顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマーが、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)と水不溶性多官能エポキシ化合物による架橋構造を有し、
該水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基の少なくとも一部はアルカリ金属化合物で中和されており、かつ、中和された水不溶性ポリマー(A)の酸価と中和度と架橋度が、下記条件1及び2を満たし、
該アミド系溶剤が、下記一般式(1)で表される化合物であり、その含有量がインク中3質量%以上28質量%以下である、水系インクを提供する。
条件1:〔(100-中和度-架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が-30mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
条件2:〔(架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が80mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である。
ここで、中和度は「アルカリ金属化合物のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
Figure 0007075803000001

(式中、R及びRは、各々独立して、メチル基又はエチル基を示し、Rは、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は炭素数3以上8以下のシクロアルキル基を示す。)
本発明によれば、インク吐出ノズルで揮発性成分が揮発して固形分濃度が高まったとしても、分散安定性が優れているため吐出ノズルの目詰まりを抑制することができ、また印刷時のように、記録媒体面と接触しインクビヒクルがなくなる環境では強固な皮膜を形成できる優れた定着性を有し、更には、高温下で保管しても製造直後の性能を保持できる優れた保存安定性を有する水系インクを提供することができる。
[水系インク]
本発明の水系インクは、顔料を含有するポリマー粒子及びアミド系溶剤を含有する水系インクであって、顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマーが、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)と水不溶性多官能エポキシ化合物による架橋構造を有し、
該水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基の少なくとも一部はアルカリ金属化合物で中和されており、かつ、中和された水不溶性ポリマー(A)の酸価と中和度と架橋度が、下記条件1及び2を満たし、
該アミド系溶剤が、下記一般式(1)で表される化合物であり、その含有量がインク中3質量%以上28質量%以下である、水系インクである。
条件1:〔(100-中和度-架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が-30mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
条件2:〔(架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が80mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である。
ここで、中和度は「アルカリ金属化合物のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
Figure 0007075803000002
式(1)中、R及びRは、各々独立して、メチル基又はエチル基を示し、Rは、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は炭素数3以上8以下のシクロアルキル基を示す。
なお、「水系」とは、顔料を分散させる媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
本発明の水系インクは、保存安定性に優れ、良好な印刷物を得ることができるため、フレキソ印刷インキ用、グラビア印刷インキ用、又はインクジェットインク用の水系顔料分散体として好適に用いることができ、また、本発明の水系インクは、インクジェット記録方式における定着性、吐出ノズルの目詰り防止性に優れることから、インクジェット記録用水系インクとして用いることが好ましい。
本発明の水系インクは、インク吐出ノズルで揮発性成分が揮発して固形分濃度が高まったとしても、分散安定性に優れるため、優れた目詰り防止性を有し、優れた定着性と、高温下で保管しても製造直後の性能を保持できる優れた保存安定性を有する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明においては、顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマー(以下、単に「ポリマー」ともいう)が、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)と水不溶性多官能エポキシ化合物による架橋構造を有していることで、ポリマーが顔料から脱離しにくいため、水系インクの高温下における保存安定性が高まると考えられる。また、水不溶性多官能エポキシ化合物は、顔料表面近傍に存在して架橋反応を進行させるため、水溶性の架橋剤を用いる場合よりもポリマーが顔料から脱離しにくくなり、有機溶媒等のインクビヒクルを含むインクを高温下で保存する場合においても保存安定性に優れると考えられる。
また、顔料を含有するポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマー(A)に存在するカルボキシ基の少なくとも一部がアルカリ金属化合物で中和されているため、強い電荷反発が得られ、顔料の分散安定性が高められ、インク吐出ノズル部分で顔料やポリマーの固着が低減される。また、アルカリ金属化合物は、分子サイズが小さいので、顔料やポリマーの固形物に対するインクビヒクルの浸透が容易となり、固着物の堆積を抑制することに優れると考えられる。
さらに、水系インクがアミド系溶剤を特定量含有することにより、顔料を含有するポリマー粒子とアミド系溶剤がインク中に共存する事で、記録媒体面上でインクの浸透過程において、顔料を含有するポリマー粒子の造膜性が向上し、強固な被膜を形成する事で定着性が向上すると考えられる。
<顔料>
本発明に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
上記の顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明において、顔料は、インク吐出ノズルにおける顔料やポリマーの固着を抑制し、高温下における保存安定性及び耐目詰まり性を向上させる観点から、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、単に「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)として含有される。そして、水系インクは、少なくとも顔料含有ポリマー粒子とアミド系溶剤と水を含有する。
<顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマー>
本発明に用いられる、顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマーは、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)(以下、単に「水不溶性ポリマー(A)」又は「水不溶性ポリマー」ともいう)から調製されるものであり、該カルボキシ基のうち少なくとも一部が水不溶性多官能エポキシ化合物により架橋されてなるポリマーである。また、ポリマーを構成する水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基の少なくとも一部はアルカリ金属化合物で中和されている。さらに、水不溶性ポリマー(A)の酸価と中和度と架橋度が、前記条件1及び2を満たす。
本発明においては、カルボキシ基の中和剤としてアルカリ金属化合物を使用することで、中和後に発現する電荷反発力が大きくなり、水系インクを高温下で長期間保存する場合の増粘や凝集の発生を抑制し、更に保存安定性が向上すると考えられる。
本発明で用いられるポリマーは、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)の少なくとも一部をアルカリ金属化合物で中和した状態で顔料を水系媒体に分散した後、水不溶性多官能エポキシ化合物と架橋させることによって、水系媒体中で形成される。このため前記ポリマーは単離されないが、水不溶性ポリマー(A)の酸価、中和度、及び架橋度との関係で、その状態が表現される。
(水不溶性ポリマー(A))
水不溶性ポリマー(A)は、顔料分散作用を発現する顔料分散剤としての機能と、記録媒体への定着剤としての機能を有する。
水不溶性ポリマー(A)は、未中和の状態では勿論、そのカルボキシ基の一部を中和した後でも水不溶性である。本発明では、未中和又は中和した水不溶性ポリマー(A)の水分散体に対して、レーザー光や通常光による観察でチンダル現象が認められる場合、又は、実施例記載のレーザー粒子解析システムを用いる測定方法により平均粒径が観測される場合、のいずれかの場合を満たせば、「水不溶性」と判断する。
水不溶性ポリマー(A)の酸価はカルボキシ基に由来するが、好ましくは200mgKOH/g以上、より好ましくは220mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは320mgKOH/g以下、より好ましくは300mgKOH/g以下、更に好ましくは270mgKOH/g以下である。酸価が前記の範囲であれば、カルボキシ基及びその中和されたカルボキシ基の量は十分であり、顔料の分散安定性が確保される。またポリマーと水系媒体の親和性と、ポリマーと顔料との相互作用とのバランスの点からも好ましい。
水不溶性ポリマー(A)の酸価は、構成するモノマーの質量比から算出することができる。また、適当な有機溶媒(例えば、MEK)に該ポリマーを溶解又は膨潤させて滴定する方法でも求めることができる。
水不溶性ポリマー(A)と水不溶性多官能性エポキシ化合物とを架橋させて得られるポリマーの存在形態としては、顔料に吸着している状態、顔料を含有している状態(顔料を内包(カプセル化)している粒子形態、顔料を均一に分散した粒子形態を含む)、及び顔料を吸着していない形態がありうる。顔料の分散安定性の観点から、本発明においては顔料含有ポリマー粒子の形態が好ましく、顔料を含有し顔料を内包している粒子形態がより好ましい。
用いられる水不溶性ポリマー(A)としては、ポリエステル、ポリウレタン、及びビニル系ポリマーから選ばれる1種以上が挙げられるが、水系インクの保存安定性を向上させる観点から、ビニル化合物、ビニリデン化合物、及びビニレン化合物から選ばれる1種以上のビニルモノマーの付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
ビニル系ポリマーである水不溶性ポリマー(A)としては、顔料含有ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性、保存安定性を向上させる観点から、(a)カルボキシ基含有ビニルモノマー(以下、「(a)成分」ともいう)と、(b)疎水性ビニルモノマー(以下、「(b)成分」ともいう)とを含むビニルモノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるポリマーが好ましい。このビニル系ポリマーは、(a)成分由来の構成単位と(b)成分由来の構成単位を有する。このビニル系ポリマーは、上記と同様の観点から、更に(c)マクロモノマー(以下、「(c)成分」ともいう)由来の構成単位や、(d)ノニオン性モノマー(以下、「(d)成分」ともいう)由来の構成単位を含有することができる。
〔(a)カルボキシ基含有ビニルモノマー〕
(a)カルボキシ基含有ビニルモノマーとしてはカルボン酸モノマーが挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等から選ばれる1種以上が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上がより好ましい。
〔(b)疎水性ビニルモノマー〕
(b)疎水性ビニルモノマーとしては、炭素数1以上22以下のアルキル基又は炭素数6以上22以下のアリール基を有するアルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が好ましく挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1以上22以下、好ましくは炭素数6以上18以下のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。以下における「(メタ)」も同義である。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、分子量500未満であり、炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレン、α-メチルスチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(b)疎水性モノマーは、前記のモノマーを2種以上使用してもよく、スチレン系モノマーと芳香族基含有(メタ)アクリレートを併用してもよい。
〔(c)マクロモノマー〕
(c)マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有し、数平均分子量が500以上、好ましくは1,000以上、そして、100,000以下、好ましくは10,000以下の化合物である。重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
なお、マクロモノマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(c)マクロモノマーとしては、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー、シリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS-6(S)、AN-6(S)、HS-6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
〔(d)ノニオン性モノマー〕
(d)ノニオン性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2~30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1~30、その中のエチレングリコール:n=1~29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートが好ましく、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレートがより好ましい。
商業的に入手しうる(d)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM-20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社のブレンマーPE-90、同200、同350等、PME-100、同200、同400等、PP-500、同800、同1000等、AP-150、同400、同550等、50PEP-300、50POEP-800B、43PAPE-600B等が挙げられる。
上記(a)~(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
以上のとおり、本発明で用いられるカルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上の(a)カルボキシ基含有ビニルモノマー由来の構成単位と、炭素数1以上22以下のアルキル基又は炭素数6以上22以下のアリール基を有するアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー及び芳香族基含有モノマーから選ばれる1種以上の(b)疎水性ビニルモノマー由来の構成単位を含有するビニル系ポリマーであることが好ましく、更に(c)マクロモノマー由来の構成単位、及び(d)ノニオン性モノマー由来の構成単位を含有するビニル系ポリマーであることがより好ましい。
(モノマー混合物中又はポリマー中における各成分又は構成単位の含有量)
前記(a)~(d)成分又はその構成単位の含有量は、顔料含有ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性、保存安定性を向上させる観点から、以下のとおりである。
(a)成分の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下である。
(b)成分の含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは23質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
(c)成分を含有する場合、(c)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは22質量%以下である。
(d)成分を含有する場合、(d)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
[(a)成分/(b)成分]の質量比は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.40以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。
また、(c)成分を含有する場合、[(a)成分/〔(b)成分+(c)成分〕]の質量比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.6以下である。
(水不溶性ポリマー(A)の製造)
水不溶性ポリマー(A)は、前記モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、炭素数3以上5以下のケトン類、エーテル類、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましく、メチルエチルケトン又はそれと水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t-ブチルペルオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上であり、そして好ましくは5モル以下、より好ましくは2モル以下である。
重合連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、2-メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の連鎖移動剤を用いることができる。
また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよい。
好ましい重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。重合時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
本発明において、ポリマーを用いて顔料を分散する方法としては、任意の公知の方法を用いることができるが、後述する顔料含有ポリマー粒子の水分散体とすることが好ましい。
上記の重合方法で得られる水不溶性ポリマー溶液は、顔料含有ポリマー粒子の水系インクの生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶媒を除去せずに、含有する有機溶媒を後述する工程1に用いる有機溶媒としてそのまま利用することが好ましい。
水不溶性ポリマー溶液の固形分濃度は、顔料含有ポリマー粒子の水系インクの生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
本発明で用いられる水不溶性ポリマー(A)の数平均分子量は、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは20,000以下、より好ましくは18,000以下である。また重量平均分子量は、好ましくは6,000以上、より好ましくは8,000以上であり、そして、好ましくは80,000以下、より好ましくは40,000以下である。ポリマーの分子量が前記の範囲であれば、顔料への吸着力が十分であり分散安定性を発現することができる。
なお、数平均分子量の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕
顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(顔料含有ポリマー粒子)は、水系顔料分散体として下記の工程1~3を有する方法により、効率的に製造することができる。
工程1:カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)、有機溶媒、中和剤としてアルカリ金属化合物、顔料、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程2:工程1で得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体A」ともいう)を得る工程
工程3:工程2で得られた顔料水分散体Aを、水不溶性多官能エポキシ化合物で架橋処理し、顔料を含有する架橋された水不溶性ポリマー(A)粒子の水系顔料分散体(以下、「水系顔料分散体B」ともいう)を得る工程
(工程1)
工程1では、まず、水不溶性ポリマー(A)を有機溶媒に溶解させ、更に中和剤としてアルカリ金属化合物、顔料、水、及び必要に応じて、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。各成分の混合順序に特に制限はないが、水不溶性ポリマー(A)を有機溶媒に溶解し、これに中和剤、水、顔料の順に加えることが好ましい。
用いる有機溶媒に制限はないが、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、水不溶性ポリマー(A)の溶解性、及び顔料への濡れ性、吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
水不溶性ポリマー(A)を溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
(中和)
水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基の少なくとも一部は、アルカリ金属化合物を用いて中和される。得られる分散体のpHは、取扱い性の観点から、好ましくは5.5以上、より好ましくは6以上であり、そして、部材の腐食抑制の観点から、好ましくは13以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは11以下である。
中和剤であるアルカリ金属化合物は、水や水系インク等の水系媒体中でアルカリ金属イオンを生じる化合物であり、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;リン酸、炭酸、ホウ酸等のアルカリ金属塩;アンモニア、アミン等の揮発性塩基性化合物等が挙げられる。これらの中では、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。また、該水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、上記の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基の中和度は、得られる水系インクの保存安定性及び耐目詰まり性を向上させる観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは35モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
ここで中和度とは、アルカリ金属化合物のモル当量数を水不溶性ポリマーのカルボキシ基のモル当量数で除した百分比(モル%)、即ち「アルカリ金属化合物のモル当量数/水不溶性ポリマーのカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。本発明では、中和度はアルカリ金属化合物のモル当量数から計算するため、アルカリ金属化合物を過剰に用いた場合は100モル%を超える。
(顔料混合物中の各成分の含有量)
顔料混合物中の各成分の含有量は、得られる水系顔料分散体の保存安定性、耐目詰まり性、及び生産性の観点から、以下のとおりである。
顔料の顔料混合物中の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12.5質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
水不溶性ポリマーの顔料混合物中の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは8質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
有機溶媒の顔料混合物中の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
水の顔料混合物中の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
顔料混合物中における水不溶性ポリマー(A)に対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー(A)〕は、得られる水系顔料分散体の保存安定性及び耐目詰まり性を向上させる観点から、好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは85/15以下、より好ましくは75/25以下、更に好ましくは70/30以下である。
(顔料混合物の分散処理)
工程1において、分散体を得るための分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程1における温度、とりわけ予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。分散時間は好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidic社製)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を小粒径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、そして、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは3回以上、より好ましくは10回以上であり、そして、好ましくは30回以下、より好ましくは25回以下である。
(工程2)
工程2では、工程1で得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を除去することで、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(顔料水分散体A)を得る。得られた顔料水分散体A中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
得られた顔料水分散体Aは、顔料含有ポリマー粒子が水を主媒体とする媒体中に分散しているものである。ここで、顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよいが、前述のように、水不溶性ポリマー(A)に顔料が内包された粒子形態であることが好ましい。
得られた顔料水分散体Aの不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体Aの分散安定性を向上させる観点及び水系インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
なお、顔料水分散体Aの固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体A中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは120nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
(工程3)
工程3では、得られる水系顔料分散体B及び水系インクの保存安定性及び耐目詰まり性を向上させる観点から、工程2で得られた顔料水分散体Aを、後述する水不溶性多官能エポキシ化合物(架橋剤)で架橋処理し、顔料を含有する架橋された水不溶性ポリマー(A)粒子の水系顔料分散体Bを得る。
この工程で、顔料含有ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基の一部を架橋し、顔料含有ポリマー粒子の表層部に架橋構造を形成させる。すなわち、本発明に係るポリマーは、顔料表面上で水不溶性ポリマー(A)と水不溶性多官能エポキシ化合物との架橋反応によって得られ、顔料水分散体A中の顔料含有ポリマー粒子に含まれる水不溶性ポリマー(A)が水不溶性多官能エポキシ化合物によって架橋され、顔料を含有する架橋された水不溶性ポリマー(A)粒子の水系顔料分散体Bとなる。
<水不溶性多官能エポキシ化合物>
本発明で用いられる水不溶性多官能エポキシ化合物(架橋剤)は、水を主体とする媒体中で効率よく水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基と架橋させる観点から、20℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が好ましくは55g以下、より好ましくは44g以下、更に好ましくは39g以下である。
また、水不溶性多官能エポキシ化合物は、得られる水系顔料分散体B及び水系インクの保存安定性及び耐目詰まり性を向上させる観点から、その水溶率は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
ここで、水溶率(質量%)とは、室温25℃にて水90質量部にエポキシ化合物10質量部を溶解したときの溶解率(質量%)をいい、より具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
水不溶性多官能エポキシ化合物としては、好ましくは分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、より好ましくはグリシジルエーテル基を有する化合物、更に好ましくは炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのグリシジルエーテル化合物である。
水不溶性多官能エポキシ化合物の分子量は、反応のし易さ、及び得られる顔料含有ポリマー粒子の保存安定性を高める観点から、好ましくは120以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上であり、そして、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下である。
水不溶性多官能エポキシ化合物のエポキシ基の数は、効率よくカルボキシ基と架橋させて顔料含有ポリマー粒子の保存安定性等を高める観点から、1分子あたり好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、1分子あたり好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。1分子内に5以上のエポキシ基を有するものは市場入手性が乏しいので、反応性と経済性の両立という観点から、特に3以上4以下が好ましい。
水不溶性多官能エポキシ化合物の具体例としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中では、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(水溶率31%)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(水溶率27%)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(水溶率0%)から選ばれる1種以上が好ましい。
(架橋反応)
本発明においては、水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基の一部をアルカリ金属化合物で中和して顔料を分散させ、顔料水分散体Aを得た後、更に該水不溶性ポリマーが有するカルボキシ基の一部を水不溶性多官能エポキシ化合物と反応させて架橋構造を形成させて、系内で得られた架橋ポリマーで顔料を水系媒体に分散させた水系顔料分散体Bとする。その際、得られる水系顔料分散体B及び水系インクの保存安定性、耐目詰まり性を向上させる観点から、下記の条件1及び2を満たす量で、好ましくは更に条件3を満たす量で、アルカリ金属化合物及び水不溶性多官能エポキシ化合物を用いる。
〔条件1〕
条件1は、〔(100-中和度-架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が-30mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
ここで、中和度は「アルカリ金属化合物のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
条件1は、保存安定性や耐目詰まり性を高めるために必要な顔料分散体におけるポリマーの未中和のカルボキシ基量を示すものであり、水不溶性ポリマー(A)の酸価、中和度、架橋度で決定される。条件1の値が30mgKOH/g以下であれば、該ポリマーを用いて顔料分散体を調製したときに顔料表面の電荷量が十分であり、また該ポリマーの水不溶性も十分となり、優れた保存安定性を発現できる。
条件1の値は、好ましくは25mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下、更に好ましくは5mgKOH/g以下である。この時、該値が-30mgKOH/g以上であれば優れた保存安定性を発現することができる。該値が-30mgKOH/g未満となる場合は、中和度が高すぎるか、又は架橋度が高すぎることを意味し、前者ではポリマーの水親和性が高くなりすぎ、また後者では残存するカルボキシ基量が少なくなりすぎて電荷量が不充分となるため、十分な保存安定性を発現することができない。条件1の値は、好ましくは-20mgKOH/g以上、より好ましくは-10mgKOH/g以上、更に好ましくは-5mgKOH/g以上である。
〔条件2〕
条件2は、〔(架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が80mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である。
条件2は、保存安定性や耐目詰まり性を高めるために必要な架橋されたカルボキシ基量を示す。水系顔料分散体Bにおいて、顔料粒子の耐目詰まり性を高めるためにはこの架橋されたカルボキシ基量の条件も重要である。条件2の値が80mgKOH/g以上であれば、ポリマーの水不溶性を十分に高めることができ、顔料への吸着が強固になり、保存安定性を高めることができる。一方、条件2の値が180mgKOH/g以下であれば、ポリマーの疎水性は十分であり顔料に強固に吸着することができ、水系顔料分散体B中に存在するカルボキシアニオンの量も十分で顔料粒子の凝集を抑制することができる。
条件2の値は、好ましくは90mgKOH/g以上、より好ましくは95mgKOH/g以上、更に好ましくは100mgKOH/g以上、より更に好ましくは110mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは170mgKOH/g以下、より好ましくは160mgKOH/g以下、更に好ましくは155mgKOH/g以下である。
〔条件3〕
条件3は、〔(中和度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が80mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である。
条件3は、保存安定性や耐目詰まり性を高めるために必要な中和されたカルボキシ基量を示す。水系顔料分散体Bにおいて、顔料粒子の耐目詰まり性を高めるためにはこの中和度の条件を満たすことが好ましい。条件3の値が180mgKOH/g以下であれば、水系顔料分散体B中に存在するカルボキシアニオンの量が適切であり保存安定性を高め、条件3の値が80mgKOH/g以上であれば、カルボキシアニオンの量が十分であり電荷反発が強く、顔料粒子の凝集が起こり難くなる。
条件3の値は、好ましくは90mgKOH/g以上、より好ましくは95mgKOH/g以上、更に好ましくは100mgKOH/g以上、より更に好ましくは110mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは175mgKOH/g以下、より好ましくは170mgKOH/g以下、更に好ましくは160mgKOH/g以下である。
前記条件1及び2を各々独立に満たし、好ましくは更に条件3を満たせば所望の性能を発揮できる。ポリマーの顔料への吸着性と、ポリマーの電荷反発による保存安定性を高める観点から、条件2の値は条件3の値よりも小さいこと、即ち、[条件2の値≦条件3の値]であることがより好ましい。
[条件3の値-条件2の値]は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上であり、ポリマーが顔料から脱離することを抑制する観点から、好ましくは80以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
水不溶性多官能エポキシ化合物とポリマー(水不溶性ポリマー(A))のカルボキシ基との架橋反応は、ポリマーで顔料を分散した後に行うことが好ましい。
その反応温度は、反応の完結と経済性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、より更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。
また、その反応時間は、上記と同様の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは8時間以下、更に好ましくは6時間以下である。
架橋された水不溶性ポリマー(A)の架橋度は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。架橋度はポリマーの酸価と架橋剤のエポキシ基の当量から計算される見かけの架橋度である。即ち、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
得られる水系顔料分散体BのpHは、顔料分散体の保存安定性を高め、部材の腐食抑制の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上であり、そして、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下である。
pHの測定法は、JIS Z8802に準拠するが、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
[水系インクの製造]
本発明の水系インクは、前記工程3で得られた顔料を含有する架橋された水不溶性ポリマー(A)粒子の水系顔料分散体Bとアミド系溶剤と、必要に応じて更にその他の有機溶媒とを混合することにより製造することができる。水系顔料分散体B、アミド系溶剤、その他の有機溶媒との混合方法に特に制限はない。
<アミド系溶剤>
本発明の水系インクに含有されるアミド系溶剤は、下記一般式(1)で表される。
Figure 0007075803000003
式中、R及びRは、各々独立して、メチル基又はエチル基を示し、Rは、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は炭素数3以上8以下のシクロアルキル基を示す。
である炭素数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基等が挙げられる。
である炭素数3以上8以下のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。
これらの中では、Rは、好ましくは炭素数1以上6以下、より好ましくは炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。
アミド系溶剤としては、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ペントキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ヘキトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-(2-エチルヘキトキシ)-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-オクトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ヘキトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-(2-エチルヘキトキシ)-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミドから選ばれる1種以上であり、より好ましくは3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミドから選ばれる1種以上である。
上記のアミド系溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(その他の有機溶媒)
その他の有機溶媒としては、好ましくは多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、及び含硫黄化合物から選ばれる1種以上、より好ましくは多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、水系インクの耐目詰まり性を更に向上させる観点から、沸点が90℃以上250℃以下の多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。有機溶媒を2種以上使用する場合は、沸点の加重平均値は、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
多価アルコールの好適例としては、エチレングリコール(沸点197℃)、ジエチレングリコール(沸点244℃)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール(沸点188℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール(沸点210℃)、1,3-ブタンジオール(沸点208℃)、1,4ブタンジオール(沸点230℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点203℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点242℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(沸点196℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(沸点178℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点190℃)、1,2,3-ブタントリオール(沸点175℃)、ペトリオール(沸点216℃)等から選ばれる1種以上が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルの好適例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点122℃)、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル(沸点160℃)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点158℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点90℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点227℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点100℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
本発明の水系インクには、更に必要に応じて、水系インクに通常用いられる保湿剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加し、更にフィルター等によるろ過処理を行うことができる。
水系インクの各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
(顔料の含有量)
水系インク中の顔料の含有量は、水系インクの印刷濃度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく7質量%以下である。
(水系顔料分散体Bの含有量)
水系インク中の顔料を含有する架橋された水不溶性ポリマー(A)粒子の水系顔料分散体Bの含有量は、保存安定性及び耐目詰まり性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、より更に好ましくは6.5質量%以上であり、そして、好ましくは17質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは9質量%以下である。
(アミド系溶剤の含有量)
水系インク中の一般式(1)で表されるアミド系溶剤の合計含有量は、水系インクの保存安定性を向上させ、吐出ノズルの目詰まりを抑制する観点から、3質量%以上28質量%以下である。アミド系溶剤の合計含有量は、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
(その他の有機溶媒の含有量)
アミド系溶剤以外のその他の有機溶媒の合計含有量は、水系インクの保存安定性を向上させ、吐出ノズルの目詰まりを抑制する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
((顔料を含有するポリマー粒子/アミド系溶剤)の質量比)
アミド系溶剤に対する顔料を含有するポリマー粒子の質量比(顔料を含有するポリマー粒子/アミド系溶剤)は、水系インクの保存安定性を向上させ、吐出ノズルの目詰まりを抑制する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下である。
(水系インク物性)
水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは120nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
水系インクの32℃の粘度は、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9mPa・s以下、更に好ましくは7mPa・s以下である。
水系インクのpHは、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは7.2以上、更に好ましくは7.5以上である。そして、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9.5以下である。
[インクジェット記録方法]
本発明の水系インクは、公知のインクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像等を記録することができる。
インクジェット記録装置としては、サーマル式及びピエゾ式があるが、ピエゾ式のインクジェット記録用水系インクとして用いることがより好ましい。
用いることができる記録媒体としては、高吸水性の普通紙、低吸水性のコート紙及びフィルムが挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられ、フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。
以下の調製例、製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
(1)水不溶性ポリマーの数平均分子量の測定
N,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフィー用)に、リン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)及びリチウムブロマイド(東京化成工業株式会社製、試薬)をそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK-GEL、α-M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
(2)顔料含有ポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELSZ-1000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度165°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度が5×10-3質量%(固形分濃度換算)になるように水で希釈して行った。
(3)顔料水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃、ゲージ圧-0.08MPaの環境下にて2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(4)エポキシ化合物の水溶率の測定
室温25℃にてイオン交換水90質量部及びエポキシ化合物10質量部(W1)をガラス管(25mmφ×250mmh)に添加し、該ガラス管を水温25℃に調整した恒温槽中で1時間静置した。次いで、該ガラス管を1分間激しく振とうした後、再び恒温槽中で12時間静置した。次いで、水から分離して沈殿又は浮遊する未溶解物を回収し、40℃、ゲージ圧-0.08MPaの環境下で6時間乾燥後、秤量(W2)した。以下の式により、水溶率(質量%)を算出した。
水溶率(質量%)={(W1-W2)/W1}×100
(5)顔料分散体のpHの測定
pH電極「6337-10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F-71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、20℃における顔料分散体のpHを測定した。
<ポリマーの調製>
調製例1
メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)46部、ベンジルアクリレート(和光純薬工業株式会社製、試薬)94部、スチレンマクロマー(東亞合成株式会社製、商品名:AS-6S、数平均分子量:6000、固形分濃度50%)40部(固形分として20部)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製、商品名:ブレンマーPP-800、プロピレンオキシド平均付加モル数13、末端:水酸基)40部を混合し、モノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン(MEK)20部及び2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、カルボキシ基を有するポリマー溶液(a)(ポリマーの数平均分子量:11000、酸価150mgKOH/g)を得た。
調製例2~4
調製例1において、表1に示すようにメタクリル酸、ベンジルアクリレート、スチレンマクロマー、ブレンマーPP-800の混合量を変更した以外は、調製例1と同様の手順でポリマー溶液(b)~(d)を得た。結果を表1に示す。
調製例5
アクリル酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)38.5部、スチレン(和光純薬工業株式会社製 試薬)152.5部、α-メチルスチレン(和光純薬工業株式会社製、試薬)9部を混合しモノマー混合液を調製した。反応容器内に、MEK20部、2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部及びアゾ系ラジカル重合開始剤(V-65)2.2部の混合液を入れ、以降は調製例1と同様にして、カルボキシ基を有するポリマー溶液(e)(ポリマーの数平均分子量:11000、酸価150mgKOH/g)を得た。
調製例6~9
調製例5において、表1に示すようにアクリル酸、スチレン、α-メチルスチレンの混合量を変更した以外は、調製例5と同様の手順でポリマー溶液(f)~(i)を得た。結果を表1に示す。
Figure 0007075803000004
<顔料水分散体Aの製造>
製造例A1
調製例1で得られたポリマー溶液(a)を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をMEK39.3部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分:16.9%、和光純薬工業株式会社製、容量滴定用)7.9部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が50%になるように中和し(中和度50モル%)、更にイオン交換水200部を加えた。この水系媒体中のポリマーはチンダル現象が認められ、水不溶性であることが確認された。
さらに、カーボンブラック顔料(キャボットスペシャルティケミカルズ社製、Monarch 800)58.3部を加え、ディスパー(浅田鉄工株式会社製、ウルトラディスパー:商品名)を用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間攪拌した。
得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で200MPaの圧力で10パス分散処理した。得られた分散液にイオン交換水250部を加え、攪拌した後、減圧下、60℃でMEKを完全に除去し、更に一部の水を除去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が20%の顔料水分散体A1を得た。結果を表2に示す。
製造例A2~A9
製造例A1において、調製例1で得られたポリマー溶液(a)の代わりに、調製例2で得られたポリマー溶液(b)、調製例3で得られたポリマー溶液(c)、調製例4で得られたポリマー溶液(d)、調製例5で得られたポリマー溶液(e)、調製例6で得られたポリマー溶液(f)、調製例7で得られたポリマー溶液(g)、調製例8で得られたポリマー溶液(h)、又は調製例9で得られたポリマー溶液(i)を減圧乾燥させて得られたポリマーを25部とし、5N水酸化ナトリウム水溶液の添加量を変えて、中和度50%とした以外は、製造例A1と同様の手順で顔料水分散体A2~A9を得た。結果を表2に示す。
製造例A10~A14
表1に示す製造例A7において、5N水酸化ナトリウム水溶液の添加量を変えて、中和度を表1に示すように変えた以外は、製造例A7と同様の手順で顔料水分散体A10~A14を得た。結果を表2に示す。
製造例A15~A16
表1に示す製造例A7において、5N水酸化ナトリウム水溶液に代えて、トリエチルアミン5.4部(製造例A15;中和度50モル%)、又は5N水酸化カリウム水溶液13.0部(製造例A16;中和度50モル%)とした以外は、製造例A7と同様の手順で顔料水分散体A15~A16を得た。結果を表2に示す。
Figure 0007075803000005
<水系顔料分散体Bの製造>
製造例B1
製造例A1で得られた顔料水分散体A1の100部(固形分20%)をねじ口付きガラス瓶に取り、水不溶性多官能エポキシ化合物(架橋剤)として、1分子内に3個のエポキシ基を有するトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX-321、分子量302、エポキシ価140、水溶率27%)1.1部(架橋度50モル%)を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。5時間経過後、室温まで降温し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過して、水系顔料分散体B1を得た。
製造例B2~B21
表3~5に示す顔料水分散体Aを用いて、表3~5に示す条件としたこと以外は、製造例B1と同様の手順で水系顔料分散体B2~B21を得た。
なお、比較例B21では、架橋剤として、水溶性のポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX-521、エポキシ当量183、水溶率100%)を使用した。
<水系インクの製造と評価試験>
実施例1~16、比較例1~12(水系インクの製造)
製造例で得られた各水系顔料分散体Bを用いて水系インクを製造した。
水系インク全体に対する顔料濃度を5%、表3~5に示すように、アミド系溶剤を0~30%、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、試薬)を5~30%、アセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキシド10モル付加物)を0.5%とし、イオン交換水を加えて、全量が100%になるよう計量し、マグネチックスターラーで撹拌してよく混合し、1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過して、水系インクを得た。
得られた水系インクを用いて、下記の試験1~3を行った。結果を表3~5に示す。
なお、表3~5に記載のアミド系溶剤A~Bは、以下の化合物である。
アミド系溶剤A:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド
(出光興産株式会社製、商品名:エクアミドM100)
アミド系溶剤B:3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド
(出光興産株式会社製、商品名:エクアミドB100)
アミド系溶剤C:3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド
(特開2018-167142号公報の段落〔0056〕に記載の方法で合成した。)
試験1(耐目詰まり性:ノズル欠け数の評価)
インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型番:EM-930C、ピエゾ方式)に水系インクを装填し、XEROX社製の普通紙4200を用いて、100枚に全面ベタ印刷(ファインモード)し、100枚目の印刷物を観察し、白線(吐出されていないノズル数に相当)の数(ノズル欠け数)を計測した。次にクリーニング操作を行った後、更に100枚の全面ベタ印刷を行い、再度100枚目の印刷物を観察し、白線の発生本数を吐出ノズル幅当たりで計測して、以下の基準で耐目詰まり性を評価した。
なお、クリーニング操作は、操作プログラムによる強制的なインクの吸引排出処理であり、吸引ポンプにより負圧を作用させて記録ヘッドからインクを吸引排出させた後、ゴム弾性板からなるクリーニング部材により、記録ヘッドのインク吐出面をワイピングする操作である。
(評価基準)
A:100枚目の印字物及び200枚目の印刷物で白線発生なし。
B:100枚目の印字物及び200枚目の印刷物で白線発生が2本以下。
C:100枚目又は200枚目の印刷物で白線発生が3~5本。
D:100枚目又は200枚目の印刷物で白線発生が6本以上。
試験2(定着性:転写光学濃度の評価)
試験1(吐出性評価)で用いた印刷パターンを使用して、普通紙の代わりにコート紙(王子製紙株式会社製、OKトップコート、吸水量:4.9g/m)に4cm×4cmのベタ印字パターンを印刷して、温度23℃、湿度50%の環境で24時間放置した後、重さ460gのステンレス製おもりの底面(1インチ×1インチ)に、コート紙(王子製紙株式会社製、OKトップコート、吸水量:4.9g/m)を両面テープで貼り付けた。前記のベタ印字パターンの印字面上に、該印字面と前記おもりの底面に貼付されたコート紙が接触するように置いて、ベタ印字部分に対し、4インチの幅で10回往復擦過した。その後、おもり底面に貼付されたコート紙の黒の光学濃度として出力される値をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:スペクトロアイ、測定条件;観測視野角:2°、観測光源:D65、白色基準:Abs、偏光フィルター:なし、濃度基準:DIN)で計5点測定し、その平均値を求め、以下の基準で定着性を評価した。
(評価基準)
A:光学濃度の値が0.04未満である。
B:光学濃度の値が0.04以上0.06未満である。
C:光学濃度の値が0.06以上0.10未満である。
D:光学濃度の値が0.10以上である。
該光学濃度の値が0.06以下であれば十分な定着性が得られ実用に供することができ、好ましくは0.04以下である。
試験3(保存安定性の評価)
各水系インクを、株式会社マルエム社製のスクリュー管に密栓して60℃に設定した恒温室内にそれぞれ1週間静置した後、平均粒径を測定して、下記式から平均粒径増大率を算出した。平均粒径増大率が小さいほど凝集が抑制され、保存安定性が優れている。
平均粒径増大率(%)=〔(保存後のインクの平均粒径-インク調製に用いた水分散体の平均粒径)/インク調製に用いた水分散体の平均粒径〕×100
Figure 0007075803000006
Figure 0007075803000007
Figure 0007075803000008
表3~5から、実施例の水系インクは、インク吐出ノズルで揮発性成分が揮発して固形分濃度が高まったとしても、分散安定性が優れているため吐出ノズルの目詰まりを抑制することができ、また印刷時のように、記録媒体面と接触しインクビヒクルがなくなる環境でも強固な皮膜を形成できる優れた定着性を有し、更には、有機溶媒等のインクビヒクルを含むインクを高温下で保管しても製造直後の性能を保持できる優れた保存安定性を有することが分かる。

Claims (6)

  1. 顔料を含有するポリマー粒子及びアミド系溶剤を含有する水系インクであって、
    顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマーが、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(A)と水不溶性多官能エポキシ化合物による架橋構造を有し、
    該水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基の少なくとも一部はアルカリ金属化合物で中和されており、かつ、中和された水不溶性ポリマー(A)の酸価と中和度と架橋度が、下記条件1~3を満たし、
    該アミド系溶剤が、下記一般式(1)で表される化合物であり、その含有量がインク中3質量%以上28質量%以下である、水系インク。
    条件1:〔(100-中和度-架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が-30mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
    条件2:〔(架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が80mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である。
    条件3:〔(中和度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が80mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である。
    ここで、中和度は「アルカリ金属化合物のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(A)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
    Figure 0007075803000009

    (式中、R及びRは、各々独立して、メチル基又はエチル基を示し、Rは、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は炭素数3以上8以下のシクロアルキル基を示す。)
  2. アミド系溶剤に対する顔料を含有するポリマー粒子の質量比(顔料を含有するポリマー粒子/アミド系溶剤)が、0.25以上2.0以下である、請求項1に記載の水系インク。
  3. 更に、多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる沸点が250℃以下の有機溶媒を1種以上含み、インク中、10質量%以上40質量%以下である、請求項1又は2に記載の水系インク。
  4. 水不溶性多官能エポキシ化合物が、炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのグリシジルエーテル化合物である、請求項1~のいずれかに記載の水系インク。
  5. 水不溶性ポリマー(A)が、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有ビニルモノマー由来の構成単位と、炭素数1以上22以下のアルキル基又は炭素数6以上22以下のアリール基を有するアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー及び芳香族基含有モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマー由来の構成単位を含有するビニル系ポリマーである、請求項1~のいずれかに記載の水系インク。
  6. インクジェット記録用である、請求項1~のいずれかに記載の水系インク。
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