JP7073848B2 - 積層造形用サポート材 - Google Patents
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本発明はこのような背景下において、モデル材としてポリプロピレンを用いた場合でも、造形を安定的に行うことのできる、モデル材との接着性に優れる積層造形用サポート材を提供することを課題とする。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂と酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする積層造形用サポート材。
(2)前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂を10~80質量部含有することを特徴とする前記(1)記載の積層造形用サポート材。
(3)更に酸変性ブロック共重合体を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の積層造形用サポート材。
(4)前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、前記酸変性ブロック共重合体を2~20質量部含有することを特徴とする前記(3)記載の積層造形用サポート材。
(5)前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が酸変性ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の積層造形用サポート材。
(6)前記ポリビニルアルコール系樹脂が側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の積層造形用サポート材。
なお、本明細書において、(メタ)アリルとはアリルあるいはメタリル、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリル、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味する。
以下に各樹脂について説明する。
PVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とケン化されずに残存したビニルエステル構造単位から構成される。
なお、本実施形態においてPVA系樹脂の水溶液の粘度は、JIS K 6726に準拠して測定した20℃における4重量%水溶液の粘度である。
なお、ケン化度はJIS K 6726に準拠して測定されたものである。
R1~R6は、全て同一であっても異なっていてもよいが、すべて水素原子であることが側鎖の末端が一級水酸基となり更に酸変性ポリオレフィン系樹脂の官能基との反応性が向上する点で望ましい。
Xは、製造時あるいは使用時の安定性の点で、単結合、炭素数6以下のアルキレン基(特にメチレン基)、あるいは-CH2OCH2-が好ましく、中でも、熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で単結合が最も好ましい。
かかる変性率は、1H-NMR(300MHzプロトンNMR、d6-DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出する。
なお、本実施形態において側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂の水溶液の粘度は、JIS K 6726に準拠して測定した20℃における4重量%水溶液の粘度である。
なお、ケン化度はJIS K 6726に準拠して測定されたものである。
すなわち、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示されるビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法などにより、製造することができる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂は酸がグラフトされたポリオレフィン系樹脂である。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、例えば、オレフィンモノマーとカルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーを共重合したり、ポリオレフィン系樹脂にカルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーをグラフトしたりすることにより得られる。
ここで、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体とは、それぞれ、エチレン、プロピレン、またはブテンをモノマー単位の50モル%以上の組成で含有する樹脂を言う。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
カルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。これらのうち、特に無水マレイン酸は、PVA系樹脂やブロック共重合体との相溶性が良いことから好適である。
本実施形態の積層造形用サポート材には、更に酸変性ブロック共重合体を含有することが好ましい。酸変性ブロック共重合体は、未変性ブロック共重合体と不飽和カルボン酸無水物または不飽和ジカルボン酸の1種または2種以上とを加熱下に反応させて得られる、側鎖に水酸基と反応し得る官能基を有するブロックを有するブロック共重合体である。積層造形用サポート材中に酸変性ブロック共重合体を有することで、特に、引き剥がし性、成型安定性を向上させることができる。
なお、かかる水素添加により、例えばブタジエンの1,2-結合によるブタジエン単位は、ブチレン単位(-CH2-CH(CH2-CH3)-)となり、1,4-結合によって生成するブタジエン単位は二つの連続したエチレン単位(-CH2-CH2-CH2-CH2-)となるが、通常は前者が優先して生成する。
まず、芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと、共役ジエン化合物、あるいはイソブチレンの重合体ブロックを有するブロック共重合体の製造法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、アルキルリチウム化合物などを開始剤とし、不活性有機溶媒中で芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物、あるいはイソブチレンを逐次重合させる方法などを挙げることができる。
次に、この芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと共役ジエン化合物の重合体ブロックを有するブロック共重合体を水素添加する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、水素化ホウ素化合物などの還元剤を用いる方法や、白金、パラジウム、ラネーニッケルなどの金属触媒を用いた水素還元などを挙げることができる。
かかる酸価が低すぎると、官能基を導入した効果が充分に得られず、また、高すぎると架橋反応によりサポート材の溶融粘度が高くなりすぎる傾向がある。
酸価の調整に当たっては、官能基の導入量を調整するほかに、官能基を有するブロック共重合体と官能基を有しないブロック共重合体を混合して官能基の含有量を調整するなどする方法が挙げられる。
かかる重量平均分子量が大きすぎても小さすぎても、PVA系樹脂中に酸変性ブロック共重合体が均一分散したモルホロジーが得られず、樹脂の機械物性が低下する傾向がある。
なお、酸変性ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレンを標準として求めた値である。
なお、ここで言う粒度とは、レーザー回折法で測定した粒子径D50を指す。
本実施形態において、積層造形用サポート材は、例えば、上記の各成分の所定量を混合、加熱し溶融状態で混練した後、ストランド状に押出し、冷却して、リールに巻き取ることにより作製することができる。
具体的には各成分を予め混合したもの、もしくは別々に単軸または多軸の押出機に供給され、加熱溶融混練され、1穴もしくは多穴のストランドダイスから径1.5~3.0mmのストランド状に押出され、空冷または水冷等により冷却固化した後、リールに巻き取られる。ストランドの径は安定していることが必要で、また、リールに巻きつけられても破断しない程度の柔軟性と靭性を有し、積層造形の際、ヘッドに遅滞なく送り出される程度の剛性が必要である。
本実施形態の積層造形用サポート材を用いた積層造形物の製造方法について説明する。
積層造形に用いられる積層造形装置はモデル材とサポート材を各々押し出せるヘッドを複数個以上持つ熱溶融による積層造形ができるものであれば公知のものを用いればよく、例えば、フラッシュフォージ社製クリエイト、レイズ・エンタープライズ社製Eagleed、3Dシステムズ社製MBot Grid II、ストラタシス社製uPrint SE等のデュアルヘッドタイプの積層造形装置を用いることができる。
(1)PVA系樹脂の製造
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル85部、メタノール460部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン7.6部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.32部投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、重合開始0.5時間後に酢酸ビニル765部を8時間滴下(滴下速度95.6部/時間)した。重合開始から2.5時間目と4.5時間目にアゾビスイソブチロニトリルを0.2部ずつ追加し、酢酸ビニルの重合率が85%となった時点で、m-ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
また、式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量は、1H-NMR(300MHzプロトンNMR、d6-DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、2モル%であった。
上記のPVA系樹脂(A)100部と、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社製「アドマーQF500」(商品名))34部と、カルボン酸基を有するスチレン/エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEBS)(旭化成株式会社製「タフテックM1943」(商品名)、スチレン含有量20質量%、酸価10mgCH3ONa/g)8.6部を、混合しドライブレンドした。これを二軸押出機に供給し、下記条件で溶融混練し、直径1.75mmのストランド状に押出して、ベルト上で空冷し、リールに巻き取り、サポート材を得た。
〔溶融混練条件〕
押出機:株式会社テクノベル製 15mmφ L/D=60
押出温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=150/170/180/190/200/210/220/220/220(℃)
回転数:200rpm
吐出量:1.5kg/時
3Dプリンター(Ninjabot社製「FDM-200HW-X」(商品名))に上記で得られたサポート材(フィラメント)とポリプロピレンのモデル材(フィラメント)(Verbatim製「PP Filament 1.75mm-Transparent」(商品名))をセットし、接着性評価用の造形物を作製した。具体的な作製方法は以下の通りである。
図1に示すように、まず、プラットフォーム5(造形台)上に、矢印Y方向を積層方向として、下から第1のサポート材構成部1,1’、モデル材構成部2,2’、第2のサポート材構成部3の順に積層し、積層物を作製した。なお、第1のサポート材構成部1’及びモデル材構成部2’は最終的に積層物から取り除かれる部分であり、樹脂充填率(Infill)30%で作製した。次に、積層物をプラットフォーム5から引き剥がし、更に第1のサポート材構成部1’及びモデル材構成部2’を引き剥がし、接着性評価用造形物10を作製した。
同様に、サポート材のモデル材に対する接着性を評価した。具体的に、図2に示すように、接着性評価用造形物10のモデル材構成部2の突出部2aと第2のサポート材構成部3の突出部3aにチャックを挟み、相反する方向に5mm/minの速度で引っ張った際の剥離強度を測定した。
剥離強度が350N以上であるものは接着強度が強く接着性に優れると評価できる。なお、接着強度350N以上で、接着部分の剥離が起こる前に、サポート材やモデル材が破壊された場合は、「材破」と評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの仕込み量を10部にし、重合時間を短くして、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(B)(以下、「PVA系樹脂(B)」と言う。)を得た。
得られたPVA系樹脂(B)のケン化度は、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析したところ、88モル%であった。また平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ390であった。
また、式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量は、2.5モル%であった。
実施例2で得られたPVA系樹脂(B)100部と、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社製「アドマーQF500」(商品名))43部を、混合しドライブレンドした。これを二軸押出機に供給し、実施例1と同じ条件でサポート材を得た。
得られたサポート材を用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2で得られたPVA系樹脂(B)100部と、カルボン酸基を有するスチレン/エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEBS)(旭化成株式会社製「タフテックM1943/H1043ブレンド品」(商品名)、スチレン含有量58質量%、酸価2mgCH3ONa/g)43部を、混合しドライブレンドした。これを二軸押出機に供給し、実施例1と同じ条件でサポート材を得た。
得られたサポート材を用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの仕込み量を13.6部とし、重合時間を短くして、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(C)(以下、「PVA系樹脂(C)」と言う。)を得た。
得られたPVA系樹脂(C)のケン化度は、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析したところ、88モル%であった。また平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ350であった。
また、式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量は、3モル%であった。
得られたサポート材を用いて、実施例1と同様に評価を行った。なお、接着性の評価では、第2のサポート材構成部はモデル材構成部に接着しなかった。結果を表1に示す。
未変性のPVA系樹脂(D)(以下、「PVA系樹脂(D)」と言う。)を用いた。
PVA系樹脂(D)のケン化度は、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析したところ、72モル%であった。また平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ550であった。
得られたサポート材を用いて、実施例1と同様に評価を行った。なお、接着性の評価では、第1のサポート材構成部と第2のサポート材構成部のいずれもモデル材構成部に接着しなかった。結果を表1に示す。
2、2’ モデル材構成部
3 第2のサポート材構成部
1a、2a、3a 突出部
5 プラットフォーム
10 接着性評価用造形物
Claims (5)
- 100質量部のポリビニルアルコール系樹脂と、20~60質量部の酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有する積層造形用サポート材であって、
前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、酸変性ブロック共重合体ではなく、
前記酸変性ブロック共重合体は、ハードセグメントとソフトセグメントを有し、
前記ハードセグメントが、芳香族ビニル化合物の重合体ブロックであり、
前記ソフトセグメントが、共役ジエン化合物の重合体ブロック、前記共役ジエン化合物の重合体ブロックに残存する二重結合の一部または全部が水素添加されたブロック、あるいはイソブチレンの重合体ブロックであることを特徴とする積層造形用サポート材。 - 更に前記酸変性ブロック共重合体を含有することを特徴とする請求項1記載の積層造形用サポート材。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、前記酸変性ブロック共重合体を2~20質量部含有することを特徴とする請求項2記載の積層造形用サポート材。
- 前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が酸変性ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の積層造形用サポート材。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂が側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の積層造形用サポート材。
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